IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 生田産機工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-レベラー 図1
  • 特許-レベラー 図2
  • 特許-レベラー 図3
  • 特許-レベラー 図4
  • 特許-レベラー 図5
  • 特許-レベラー 図6
  • 特許-レベラー 図7
  • 特許-レベラー 図8
  • 特許-レベラー 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-10
(45)【発行日】2023-03-20
(54)【発明の名称】レベラー
(51)【国際特許分類】
   B21D 1/05 20060101AFI20230313BHJP
【FI】
B21D1/05 K
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022094771
(22)【出願日】2022-06-12
【審査請求日】2022-06-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】599047745
【氏名又は名称】生田産機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100195752
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 一正
(72)【発明者】
【氏名】福井 淳仁
(72)【発明者】
【氏名】武田 一登
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-126069(JP,A)
【文献】特開平08-108416(JP,A)
【文献】特開2001-105026(JP,A)
【文献】実開平04-006313(JP,U)
【文献】特開2015-029992(JP,A)
【文献】特開2003-136137(JP,A)
【文献】特開昭55-136516(JP,A)
【文献】国際公開第2022/065258(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 1/00 - 1/05
B30B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
進行方向に進行する帯状金属板材の巻き歪等を矯正するレベラーであって、
前記進行方向と交差する方向に、かつ前記帯状金属板材の主平面に沿って並べられ、前記帯状金属板材の主平面上面に当接する円筒状の上ロールを複数有する上ロールユニットと、
前記進行方向と交差する方向に、かつ前記帯状金属板材の主平面に沿って並べられるとともに前記複数の上ロールと千鳥状に位置決めされ、前記帯状金属板材の主平面下面に当接する円筒状の下ロールを複数有する下ロールユニットと、
前記上ロールユニットを保持する上本体部と、
前記下ロールユニットを保持する下本体部と、
前記上本体部に対する前記上ロールユニットの位置、又は前記下本体部に対する前記下ロールユニットの位置を調整するとともに、その位置を保持するロール間距離調整機構と、
を備え、
前記上ロール及び前記下ロールが駆動軸を有していないことで、前記上本体部、又は前記下本体部の少なくともいずれか一方が前記進行方向に沿って有した本体部開放用回動軸を軸にして前記上本体部、又は前記下本体部のいずれか他方に対して回動して、前記上ロール及び前記下ロールのメンテナンスを可能とし、
前記ロール間距離調整機構は、進行方向上流側の上流側ロール間距離調整機構と、進行方向下流側の下流側ロール間距離調整機構とを有し、
上流側の前記上ロールと前記下ロールとの間の距離と、下流側の前記上ロールと前記下ロールとの間の距離とを異ならせることが可能であり、
前記上流側ロール間距離調整機構及び前記下流側ロール間距離調整機構とは共に、
前記上本体部又は前記下本体部に人が操作可能な操作部と、前記操作部の操作により移動するテーパースライダーを有するとともに、
前記テーパースライダーを有した前記上本体部における上ロールユニット、又は前記テーパースライダーを有した前記下本体部における下ロールユニットにテーパーアークコッターを有し、
前記テーパーアークコッターの傾斜面を前記テーパースライダーの端面が摺動して、前記上ロールと前記下ロールとの間の距離を変更可能とし、
前記テーパーアークコッターの傾斜面は、当該傾斜面の延伸方向と直交する断面が曲面であり、
前記テーパースライダーを備えた前記上本体部における上ロールユニット、又は前記テーパースライダーを備えた前記下本体部における下ロールユニットは、その中央部付近に備えた前記進行方向に長い長孔を有するとともに、
前記テーパースライダーを備えた前記上本体部、又は前記テーパースライダーを備えた前記下本体部は、ロール間距離調整用回動軸を有し、
前記ロール間距離調整用回動軸は、前記長孔に挿入されることを特徴とするレベラー。
【請求項2】
前記本体部開放用回動軸は、前記進行方向に沿うとともに、前記進行方向と交差する方向の奥側端部近傍に設けられることで、前記上本体部又は前記下本体部が前記進行方向と交差する方向の手前側から上方又は下方に開放可能であることを特徴とする請求項1に記載のレベラー。
【請求項3】
前記上ロール及び前記下ロールは、1本毎に交換が可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載のレベラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メンテナンス性を向上させた帯状金属板材の巻き歪等を矯正するレベラーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
帯状金属板材の巻き歪等を矯正するレベラーは、上側に複数の上ローラを並べ、下側に複数の下ローラを上ローラと千鳥状になるように並べ、この複数の上ローラと複数の下ローラとに当接させながら帯状金属板材を通過させることで巻き歪み等の反りを矯正するものである。
【0003】
こうしたレベラーは、帯状金属板材の厚みによって複数の上ローラと複数の下ローラとの間の距離を調整して当接力を変化させている。
また、上ロール及び下ロールは常に帯状金属板材に当接するものであるため、摩耗や汚れが発生することがある。そうすると、帯状金属板材に汚れの転写や凹凸が発生する恐れがあるため、定期的に上ロール及び下ロールの清掃や交換等のメンテナンスが必要となっている。
【0004】
特許文献1には、帯状金属板材の進行方向と交差する方向に有した回動軸により下ロールユニットを下方に回動することにより、上ロール及び下ロールを清掃するようにした事項が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
特許文献1:特開2003-136137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のものは、その機構を有するが故に専用の動力源やメンテナンス箇所の増加を招く上に、回動軸近辺の上ロール及び下ロール間の隙間が狭くメンテナンス性に問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決して、シンプルな構成で安価にメンテナンス性を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は、進行方向に進行する帯状金属板材の巻き歪等を矯正するレベラーであって、
前記進行方向と交差する方向に、かつ前記帯状金属板材の主平面に沿って並べられ、前記帯状金属板材の主平面上面に当接する円筒状の上ロールを複数有する上ロールユニットと、
前記進行方向と交差する方向に、かつ前記帯状金属板材の主平面に沿って並べられるとともに前記複数の上ロールと千鳥状に位置決めされ、前記帯状金属板材の主平面下面に当接する円筒状の下ロールを複数有する下ロールユニットと、
前記上ロールユニットを保持する上本体部と、
前記下ロールユニットを保持する下本体部と、
前記上本体部に対する前記上ロールユニットの位置、又は前記下本体部に対する前記下ロールユニットの位置を調整するとともに、その位置を保持するロール間距離調整機構と、
を備え、
前記上ロール及び前記下ロールが駆動軸を有していないことで、前記上本体部、又は前記下本体部の少なくともいずれか一方が前記進行方向に沿って有した本体部開放用回動軸を軸にして前記上本体部、又は前記下本体部のいずれか他方に対して回動して、前記上ロール及び前記下ロールのメンテナンスを可能とし、
前記ロール間距離調整機構は、進行方向上流側の上流側ロール間距離調整機構と、進行方向下流側の下流側ロール間距離調整機構とを有し、
上流側の前記上ロールと前記下ロールとの間の距離と、下流側の前記上ロールと前記下ロールとの間の距離とを異ならせることが可能であり、
前記上流側ロール間距離調整機構及び前記下流側ロール間距離調整機構とは共に、
前記上本体部又は前記下本体部に人が操作可能な操作部と、前記操作部の操作により移動するテーパースライダーを有するとともに、
前記テーパースライダーを有した前記上本体部における上ロールユニット、又は前記テーパースライダーを有した前記下本体部における下ロールユニットにテーパーアークコッターを有し、
前記テーパーアークコッターの傾斜面を前記テーパースライダーの端面が摺動して、前記上ロールと前記下ロールとの間の距離を変更可能とし、
前記テーパーアークコッターの傾斜面は、当該傾斜面の延伸方向と直交する断面が曲面であり、
前記テーパースライダーを備えた前記上本体部における上ロールユニット、又は前記テーパースライダーを備えた前記下本体部における下ロールユニットは、その中央部付近に備えた前記進行方向に長い長孔を有するとともに、
前記テーパースライダーを備えた前記上本体部、又は前記テーパースライダーを備えた前記下本体部は、ロール間距離調整用回動軸を有し、
前記ロール間距離調整用回動軸は、前記長孔に挿入されることを特徴とするレベラーを提供するものである。
【0009】
この構成により、上本体部が保持した上ロールユニット、又は下本体部が保持した下ロールユニットの少なくともいずれかが帯状金属板材の進行方向に沿って有した本体部開放用回動軸を軸にして回動することで、上ロール及び下ロールが露出して、ロール交換やロール清掃等のメンテナンス性を向上させることができる。
また、当該レベラーは、帯状金属板材が進行する駆動手段を有さないため、シンプルな構成で安価にメンテナンス性を向上させることができる。
また、上流側の前記上ロールと前記下ロールとの間の距離と、下流側の前記上ロールと前記下ロールとの間の距離とを異ならせた状態で、上本体部又は下本体部の開放後に閉じた場合でも上ロール及び下ロール間の距離を開放前の距離と同じに保つことができ、操作性を損なうことなくメンテナンス性を向上させることができる。
簡単な構成で、上本体部又は下本体部の開放後に閉じた場合でも上ロール及び下ロール間の距離を開放前の距離と同じに保つことができ、安価に操作性を損なうことなくメンテナンス性を向上させることができる。
さらに、シンプルかつ安価な構成で、スムーズに上流側の上ロールと下ロールとの間の距離と、下流側の上ロールと下ロールとの間の距離とを異ならせることができる。
【0016】
レベラーであって、前記本体部開放用回動軸は、前記進行方向に沿うとともに、前記進行方向と交差する方向の奥側端部近傍に設けられることで、前記上本体部又は前記下本体部が前記進行方向と交差する方向の手前側から上方又は下方に開放可能である構成としてもよい。
【0017】
この構成により、上本体部及び上ロールユニット、又は下本体部及び下ロールユニットが帯状金属板材の進行方向と交差する方向の手前側から上方又は下方に開放できるため、複数の上ロール及び複数の下ロールが大きく露出して、手前側から容易に上ロール及び下ロールの清掃や交換等のメンテナンスを行うことができる。
【0018】
レベラーであって、上ロール及び下ロールは、1本毎に交換が可能である構成としてもよい。
【0019】
この構成により、上ロール及び下ロールの1本毎のメンテナンスを容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のレベラーにより、メンテナンス性を向上させるとともに、上本体部又は下本体部の開放後に閉じた場合でも上ロール及び下ロール間の距離を開放前の距離と同じに保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施例1におけるレベラーの斜視図である。
図2】本発明の実施例1におけるレベラーの正面図である。
図3】本発明の実施例1におけるレベラーの左側面図である。
図4】本発明の実施例1におけるレベラーの上本体部を開放した場合を示す左側面図である。
図5】本発明の実施例1におけるレベラーの上本体部を開放した場合を示す正面図である。
図6】本発明の実施例1におけるレベラーのロール間距離調整機構を説明する概念図である。
図7】本発明の実施例1におけるレベラーの長孔とロール間距離調整用回動軸を説明する第1の概念図である。
図8】本発明の実施例1におけるレベラーの長孔とロール間距離調整用回動軸を説明する第2の概念図である。
図9】本発明の実施例1におけるレベラーの長孔とロール間距離調整用回動軸を説明する第3の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0022】
本発明の実施例1におけるレベラーを図1図9を参照して説明する。図1は、本発明の実施例1におけるレベラーの斜視図である。図2は、本発明の実施例1におけるレベラーの正面図である。図3は、本発明の実施例1におけるレベラーの左側面図である。図4は、本発明の実施例1におけるレベラーの上本体部を開放した場合を示す左側面図である。図5は、本発明の実施例1におけるレベラーの上本体部を開放した場合を示す正面図である。図6(a)は、本発明の実施例1におけるレベラーのロール間距離調整機構を説明する概念図であり、(b)は、テーパ―アークコッターのB-B´断面図である。図7は、本発明の実施例1におけるレベラーの長孔とロール間距離調整用回動軸を説明する第1の概念図である。図8は、本発明の実施例1におけるレベラーの長孔とロール間距離調整用回動軸を説明する第2の概念図である。図9は、本発明の実施例1におけるレベラーの長孔とロール間距離調整用回動軸を説明する第3の概念図である。
【0023】
実施例1におけるレベラー100は、正面視で左側から右側へとなる進行方向F(X方向)に主平面上面が上になるようにして帯状金属板材Wを進行させて巻き歪等を矯正するものである。また、レベラー100は、帯状金属板材Wを進行させるための駆動手段を有していない。そのため、コンパクトな構成を安価に実現できる。すなわち、X方向サイズが約330mm、Y方向サイズが約235mm、Z方向サイズが283mmであり、特にY方向サイズが小さいため作業台等の上に設置することができる。レベラー100の前工程ユニットPRIには、帯状金属板材Wの主平面下面位置を規制して進行方向Fに受け入れる導入ローR及び帯状金属板材Wの幅方向(Y方向)を規制する幅寄せローWRが設けられている(図1図2等参照)。
【0024】
なお、実施例1においては、帯状金属板材Wの進行方向を正面視で左から右としたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、帯状金属板材Wの進行方向を正面視で右から左としてもよい。また、導入ローR及び幅寄せローWRは必ずしも必須ではなく、必要に応じて変更されてもよい。
【0025】
レベラー100は、帯状金属板材Wを進行方向Fに進行させる駆動手段を有していない。このため、後工程に設けられるプレス機等の後工程ユニットPが有した駆動手段のロールPR1、ロールPR2等により駆動されて進行方向Fに進行させられる。また、従来は、レベラーにおける上ロール及び下ロールの進行方向F左側(Y方向)に駆動軸を有しているため上ロールユニットを手前側から上方に開放することが困難であったが、実施例1においては、レベラー100における上ロール11(11a、11b、11c、11d)及び下ロール21(21a、21b、21c、21d、21e)進行方向F左側(Y方向)に駆動軸を有していないことで、後述のように、上ロールユニット10を手前側から上方に開放して、上ロール11(11a、11b、11c、11d)及び下ロール21(21a、21b、21c、21d、21e)を大きく露出させてメンテナンス性を向上させることができる。
【0026】
つまり、レベラー100は、上本体部12と下本体部15とを有し、上本体部12は帯状金属板材Wの進行方向F左側(Y方向)端部近傍に有した本体部開放用回動軸36(36a、36b)を軸に回動することで、手前側から上方に上本体部12を開放することができる(図4参照)。
【0027】
上本体部12は、上ロールユニット10を移動可能に保持し、下本体部15は、下ロールユニット20を移動不能に保持している。つまり、上ロールユニット10は、上本体部12に下本体部20側の方向に移動可能に保持されており、これにより、後述するように、上ロールユニット10の下ロールユニット20に対する距離を調整することができる。
【0028】
上ロールユニット10は、円筒状の上ロール11(11a、11b、11c、11d)を4個有し、帯状金属板材Wの主平面上面に上から当接するように帯状金属板材Wの進行方向Fと直交する方向に帯状金属板材Wに沿って並べて保持している。また、下ロールユニット20は、円筒状の下ロール21(21a、21b、21c、21d、21e)を5個有し、帯状金属板材Wの主平面下面に下から当接するように帯状金属板材Wの進行方向Fと直交する方向に、かつ、上ロール11(11a、11b、11c、11d)に対して千鳥状になるように帯状金属板材Wに沿って並べて保持している。そして、帯状金属板材Wは上ロール11(11a、11b、11c、11d)に主平面上面が当接するとともに下ロール21(21a、21b、21c、21d、21e)に主平面下面が当接して、つまり上ロール11(11a、11b、11c、11d)と下ロール21(21a、21b、21c、21d、21e)との間に帯状金属板材Wを通すことにより、巻き歪等を矯正することができる(図2参照)。
【0029】
上ロール11(11a、11b、11c、11d)及び下ロール21(21a、21b、21c、21d、21e)は共に、φ36mmの断面円形状の金属円筒体の表面に厚さ約3mmのゴム等からなる弾性体を巻き付けている。各ロールの中心間の距離は46mmで配置されている。また、上ロール11(11a、11b、11c、11d)及び下ロール21(21a、21b、21c、21d、21e)の表面には、ゴム等の弾性体が巻き付けられていることで、帯状金属板材Wの表面に傷がつくことを防止している。
【0030】
なお、実施例1においては、上ロール11(11a、11b、11c、11d)及び下ロール21(21a、21b、21c、21d、21e)は共に、φ36mmの断面円形状で各上ロール中心間、及び各下ロール中心間の距離を46mmで配置するようにしたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、φ36mm以上の断面円形状としてもよいし、φ36mm以下の断面円形状としてもよい。また、各上ロール中心間、及び各下ロール中心間の距離は、上ロール及び下ロールの断面径により適宜設定してよい。
【0031】
また、実施例1においては、上ロールを4個、下ロールを5個としたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、上ロールを3個、下ロールを4個としてもよいし、上ロールを5個以上、下ロールを6個以上としてもよい。また、上ロールの数を下ロールの数より多くしてもよい。
【0032】
さらに、上ロールユニット10は、上ロール11(11a、11b、11c、11d)を帯状金属板材Wの進行方向Fと直交する方向に並べて保持し、下ロールユニット20は、下ロール21(21a、21b、21c、21d、21e)を帯状金属板材Wの進行方向Fと直交する方向に並べて保持するようにしたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、上ロール又は下ロールを並べる方向を帯状金属板材Wの進行方向Fと直交する方向よりもわずかに角度を有していてもよく、上ロール又は下ロールを並べる方向を帯状金属板材Wの進行方向Fと交差する方向であればよい。
【0033】
次に、上本体部12を回動させて開放する手段を説明する。上本体部12が閉じられている場合は、左右に設けた篏合鍔34(34a、34b)における一方が開口した篏合開口35(35a、35b)がそれぞれ開放レバー小径部37(37a、37b)に篏合している。また、上本体部開放ハンドル31(31a、31b)を締付方向(実施例1においては右方向。)に回すことで開放レバー小径部37(37a、37b)が短くなる方向に小径部仕切38(38a、38b)が移動して篏合鍔34(34a、34b)を締付け固定されている。
【0034】
上本体部12を開放する場合は、上本体部開放ハンドル31(31a、31b)を弛緩方向(実施例1においては左方向。)に回して開放レバー小径部37(37a、37b)が長くなる方向に小径部仕切38(38a、38b)を移動させて篏合鍔34(34a、34b)の締付けを緩める。そして、左右の上本体部開放ハンドル31(31a、31b)又は上本体部開放レバー32(32a、32b)を掴んで手前に倒すことで、篏合鍔34(34a、34b)の篏合開口35(35a、35b)を開放レバー小径部37(37a、37b)による締付から解放する。次に、左右の開放用レバー16(16a、16b)を掴んで上方に引き上げることで、上本体部12が本体部開放用回動軸36(36a、36b)を軸にして手前側から上方に約100度回動して開放させられる(図4参照)。
【0035】
これにより、複数の上ロール11(11a、11b、11c、11d)及び複数の下ロール21(21a、21b、21c、21d、21e)が手前側に大きく露出することとなり、清掃や交換等のメンテナンスを容易に行うことができる。従来のように、帯状金属板材Wの進行方向と交差する方向の軸により上本体部を回動させる場合だと、軸近傍の上ロール及び下ロールの露出が不十分でメンテナンスが困難であるが、実施例1のように、帯状金属板材Wの進行方向Fに沿った方向の軸により上本体部12を回動させる場合は、全ての上ロール11(11a、11b、11c、11d)及び下ロール21(21a、21b、21c、21d、21e)のメンテナンスが容易である(図5参照)。なお、実施例1においては、上ロール11(11a、11b、11c、11d)及び下ロール21(21a、21b、21c、21d、21e)は、それぞれの端部に設けた軸を凹部に嵌入し上から板材で取付ける構造としているため、板材を外すことにより、それぞれを個別に1本ずつ取り外して交換することができる。
【0036】
上本体部12を開放された状態から閉じる場合は、左右の開放用レバー16(16a、16b)を掴んで手前に倒すことで、上本体部12が本体部開放用回動軸36(36a、36b)を軸にして上方側から手前側に回動して閉じられる(図3参照)。次に、左右の上本体部開放ハンドル31(31a、31b)又は上本体部開放レバー32(32a、32b)を掴んで上方に引き上げることで、篏合鍔34(34a、34b)の篏合開口35(35a、35b)を開放レバー小径部37(37a、37b)に篏合させ、上本体部開放ハンドル31(31a、31b)を締付方向(実施例1においては右方向。)に回すことで開放レバー小径部37(37a、37b)が短くなる方向に小径部仕切38(38a、38b)が移動して篏合鍔34(34a、34b)を締付けることで閉じた状態を維持することができる。
【0037】
なお、実施例1においては、上本体部12が回動する角度を約100度としたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、100度以上としてもよいし、100度未満であってもよく、上ロール及び下ロールのメンテナンス性が向上する角度であればよい。
【0038】
実施例1における上本体部12は、上ロールユニット10を下ロールユニット20に対して接離可能に移動させてその状態を保持することができるロール間距離調整機構17を備えている。ロール間距離調整機構17を図6図9を参照して説明する。
【0039】
ロール間距離調整機構17は、進行方向F上流側の上流側ロール間距離調整機構17aと、進行方向F下流側の下流側ロール間距離調整機構17bとを備えている。そして、上流側ロール間距離調整機構17a及び下流側ロール間距離調整機構17bは共に、上本体部12に進行方向Fと交差する方向にロール間距離調整ネジ45(45a、45b)を有するとともに、ロール間距離調整ネジ45(45a、45b)に螺合して回転しながら移動可能なテーパースライダー43(43a、43b)を有している。テーパースライダー43(43a、43b)は、ロール間距離調整ハンドル41(41a、41b)を手で掴んで操作することで進行方向Fと交差する方向に移動させることができる。また、上本体部12は、引張バネ46(46a、46b)により常時、上ロールユニット10を上方(Z方向、上本体部12方向)に引っ張り上げている(図6における引張バネ46aは概念を示しており、図6で示す位置に設けられている訳ではない。)。また、ロール間距離調整ハンドル41(41a、41b)、及びロール間距離調整ネジ45(45a、45b)の回転をロックハンドル47(47a、47b)により禁止して、テーパースライダー43(43a、43b)の位置を固定することができる。
【0040】
上ロールユニット10は、テーパーアークコッター42(42a、42b)を有し、テーパーアークコッター42(42a、42b)は複数の上ロール11(11a、11b、11c、11d)と一体となって移動する。テーパースライダー43(43a、43b)は進行方向Fと交差する方向に設けられ、奥側(図6におけるY方向)にいくにしたがって下方(ーZ方向)に傾斜した摺動面44(44a、44b)を有している。
【0041】
引張バネ46(46a、46b)は、常時、上ロールユニット10を上方(Z方向、上本体部12方向。)に引っ張り上げている。そして、ロックハンドル47(47a、47b)を解除方向(実施例1においては左方向。)に回してロール間距離調整ネジ45(45a、45b)のロックを解除する。次に、ロール間距離調整ハンドル41(41a、41b)を奥側移動方向(実施例1においては右方向。)に回すことでロール間距離調整ネジ45(45a、45b)が右回転し、ロール間距離調整ネジ45(45a、45b)に螺合したテーパースライダー43(43a、43b)がテーパーアークコッター42(42a、42b)の傾斜面(摺動面)に沿って摺動し奥側(図6におけるY方向。)に移動する。それに伴って、引張バネ46(46a、46b)の引っ張り力により上ロールユニット10を上方(図6におけるZ方向。)に移動させて下ロールユニット20から離間させる。最後に、ロックハンドル47(47a、47b)をロック方向(実施例1においては右方向。)に回してロール間距離調整ネジ45(45a、45b)の回転をロックすれば、上ロールユニット10と下ロールユニット20との間の距離をそのままの状態で保持することができる。
【0042】
ロックハンドル47(47a、47b)を解除方向(実施例1においては左方向。)に回してロール間距離調整ネジ45(45a、45b)のロックを解除した後、逆に、ロール間距離調整ハンドル41(41a、41b)を手前移動方向(実施例1においては左方向。)に回すことでロール間距離調整ネジ45(45a、45b)が左回転し、ロール間距離調整ネジ45(45a、45b)に螺合したテーパースライダー43(43a、43b)がテーパーアークコッター42(42a、42b)の傾斜面に沿って摺動し手前側(図6におけるーY方向。)に移動する。それに伴って、引張バネ46(46a、46b)の引っ張り力に抗して上ロールユニット10を下方(図6におけるーZ方向。)に移動させて下ロールユニット20に接近させる。最後に、ロックハンドル47(47a、47b)をロック方向(実施例1においては右方向。)に回してロール間距離調整ネジ45(45a、45b)の回転をロックすれば、上ロールユニット10と下ロールユニット20との間の距離をそのままの状態で保持することができる。
【0043】
ここで、テーパーアークコッター42(42a、42b)の傾斜面(摺動面44(44a、44b))は、当該傾斜面と直交する方向の断面が曲面を有している(図6(b)参照)。これにより、後述のように、上流側ロール間距離調整機構17aによる上ロール11(11a、11b、11c、11d)と下ロール21(21a、21b、21c、21d、21e)との間の距離と、下流側ロール間距離調整機構17bによる上ロール11(11a、11b、11c、11d)と下ロール21(21a、21b、21c、21d、21e)との間の距離とを異なるものにすることができる。また、テーパースライダー43(43a、43b)の摺動面44(44a、44b)は青銅の鋳物等からなる滑り材で構成されている。これにより、テーパースライダー43(43a、43b)がテーパーアークコッター42(42a、42b)の傾斜面に沿って摺動しやすくなっている。
【0044】
なお、実施例1においては、テーパースライダーは奥側にいくにしたがって下方に傾斜した摺動面を有し、テーパースライダーは奥側にいくにしたがって下方に傾斜した摺動面を有するようにしたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、テーパースライダーは奥側にいくにしたがって上方に傾斜した摺動面を有し、テーパースライダーは奥側にいくにしたがって上方に傾斜した摺動面を有するようにしてもよい。この場合は、ロール間距離調整ハンドルの手前移動方向を逆方向に設定すればよい。
【0045】
次に、上流側ロール間距離調整機構17a及び下流側ロール間距離調整機構17bによる上ロール11(11a、11b、11c、11d)と下ロール21(21a、21b、21c、21d、21e)の動きについて図7図9を参照して説明する。
【0046】
上ロールユニット10は、その中央部付近に備えた進行方向Fに長い長孔13が上本体部12に有したロール間距離調整用回動軸14に回動可能に挿入されている。図7に示す状態は、上流側ロール間距離調整機構17aによる上ロールユニット10の下ロールユニットに対する距離と下流側ロール間距離調整機構17bよる上ロールユニット10の下ロールユニットに対する距離とがほぼ同じである。このときは、複数の上ロール11(11a、11b、11c、11d)と複数の下ロール21(21a、21b、21c、21d、21e)とがほぼ平行となっている。
【0047】
図8に示す状態は、上流側ロール間距離調整機構17aによる上ロールユニット10の下ロールユニットに対する距離が下流側ロール間距離調整機構17bによる上ロールユニット10の下ロールユニットに対する距離よりも小さい。このときは、上流側の上ロール11(11a、11b)と上流側の下ロール21(21a、21b)との間の距離が狭く、下流側の上ロール11(11c、11d)と下流側の下ロール21(21d、21e)との間の距離が広い。通常は、このように上ロール11と下ロール21との間の距離を調整して、上流側は帯状金属板材Wより狭く、下流側は帯状金属板材Wと同程度の広さに設定して使用することが多い。
【0048】
図9に示す状態は、逆に、上流側ロール間距離調整機構17aによる上ロールユニット10の下ロールユニットに対する距離が下流側ロール間距離調整機構17bによる上ロールユニット10の下ロールユニットに対する距離よりも大きい。このときは、上流側の上ロール11(11a、11b)と上流側の下ロール21(21a、21b)との間の距離が広く、下流側の上ロール11(11c、11d)と下流側の下ロール21(21d、21e)との間の距離が狭い。
【0049】
図7図9に示すように、上流側ロール間距離調整機構17a及び下流側ロール間距離調整機構17bの動きに応じて、長孔13の位置がロール間距離調整用回動軸14に対して横方向(X方向)に移動する。これにより、上ロール11(11a、11b、11c、11d)と下ロール21(21a、21b、21c、21d、21e)との進行方向F(X方向)の位置関係をほぼ同じに保つことができる。また、前述のテーパーアークコッター42(42a、42b)の傾斜面が当該傾斜面と直交する方向の断面が曲面を有していることによっても上流側ロール間距離調整機構17aと下流側ロール間距離調整機構17bの動きが異なって上ロールユニット10が上流側又は下流側に傾く場合もスムーズに動作させることができる。これらにより、スムーズに上流側ロール間距離調整機構17aによる上ロールと下ロールとの間の距離と、下流側ロール間距離調整機構17bによる上ロールと下ロールとの間の距離とを異なるものにすることができる。
【0050】
なお、実施例1においては、上本体部が帯状金属板材の進行方向に沿って配置した軸によって回動するようにしたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、下本体部が帯状金属板材の進行方向に沿って配置した軸によって回動するようにしてもよい。その場合、ロール間距離調整機構を下本体部に設けてもよい。また、上本体部及び下本体部の両方を帯状金属板材の進行方向に沿って配置した軸によって回動するようにしてもよい。
【0051】
また、実施例1においては、ロール間距離調整機構を回動本体部である上本体部に設けたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更してもよい。例えば、ロール間距離調整機構を回動しない下本体部に設けてもよい。
【0052】
さらに、実施例1においては、当該レベラー100の後工程におけるプレス機等が有した駆動手段により、帯状金属板材Wを進行方向Fに進行させるようにしたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、当該レベラー100の最後端に帯状金属板材Wの駆動手段を設けるようにしてもよい。
【0053】
このように、実施例1においては、行方向に進行する帯状金属板材の巻き歪等を矯正するレベラーであって、
前記進行方向と交差する方向に、かつ前記帯状金属板材の主平面に沿って並べられ、前記帯状金属板材の主平面上面に当接する円筒状の上ロールを複数有する上ロールユニットと、
前記進行方向と交差する方向に、かつ前記帯状金属板材の主平面に沿って並べられるとともに前記複数の上ロールと千鳥状に位置決めされ、前記帯状金属板材の主平面下面に当接する円筒状の下ロールを複数有する下ロールユニットと、
前記上ロールユニットを保持する上本体部と、
前記下ロールユニットを保持する下本体部と、を備え、
前記上本体部、又は前記下本体部の少なくともいずれかが前記進行方向に沿って有した本体部開放用回動軸を軸にして回動することを特徴とするレベラーにより、上本体部が保持した上ロールユニット、又は下本体部が保持した下ロールユニットの少なくともいずれかが帯状金属板材の進行方向に沿って有した本体部開放用回動軸を軸にして回動することで、上ロール及び下ロールが露出して、ロール交換やロール清掃等のメンテナンス性を向上させることができる。
また、当該レベラーは、帯状金属板材が進行する駆動手段を有さないため、シンプルな構成で安価にメンテナンス性を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明におけるレベラーは、帯状金属板材の巻き歪等を矯正する分野に広く用いることができる。
【符号の説明】
【0055】
10:上ロールユニット
11(11a、11b、11c、11d):上ロール
12:上本体部
13:長孔 14:ロール間距離調整用回動軸
15:下本体部
16(16a、16b):開放用レバー
17(17a、17b):ロール間距離調整機構
20:下ロールユニット
21(21a、21b、21c、21d、21e):下ロール
22(22a、22b):把手
30:上ロールユニット開放部
31(31a、31b):上本体部開放ハンドル
32(32a、32b):上本体部開放レバー
33(33a、33b):篏合突起
34(34a、34b):篏合鍔
35(35a、35b):篏合開口
36(36a、36b):本体部開放用回動軸
37(37a、37b):開放レバー小径部
38(38a、38b):小径部仕切
40:ロール間距離調整機構
41(41a、41b):ロール間距離調整ハンドル
42(42a、42b):テーパ―アークコッター
43(43a、43b):テーパースライダー
44(44a、44b):摺動面
45(45a、45b):ロール間距離調整ネジ
46(46a、46b):引張バネ
47(47a、47b):ロックハンドル
100:レベラー
R:導入ローラ
WR:幅寄せローラ
PRI:前工程ユニット
P:後工程ユニット
PR1:ロ
PR2:ロール
W:帯状金属板
F:進行方向
【要約】
【課題】メンテナンス性を向上させることを課題とする。
【解決手段】進行方向Fに進行する帯状金属板材Wの巻き歪等を矯正するレベラーであって、前記進行方向と交差する方向に、かつ前記帯状金属板材の主平面に沿って並べられ、前記帯状金属板材の主平面上面に当接する円筒状の上ロール11を複数有する上ロールユニット10と、前記進行方向と交差する方向に、かつ前記帯状金属板材の主平面に沿って並べられるとともに前記複数の上ロール11と千鳥状に位置決めされ、前記帯状金属板材の主平面下面に当接する円筒状の下ロール21を複数有する下ロールユニット20と、前記上ロールユニットを保持する上本体部12と、前記下ロールユニットを保持する下本体部15と、を備え、前記上本体部、又は前記下本体部の少なくともいずれかが前記進行方向に沿って有した本体部開放用回動軸36を軸にして回動することを特徴とするレベラー100とした。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9