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特許7242965シリコーン感圧接着剤並びにその調製及び使用のための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-10
(45)【発行日】2023-03-20
(54)【発明の名称】シリコーン感圧接着剤並びにその調製及び使用のための方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 183/04 20060101AFI20230313BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20230313BHJP
   C08G 77/00 20060101ALI20230313BHJP
   C08G 77/12 20060101ALI20230313BHJP
   C08G 77/20 20060101ALI20230313BHJP
   C09J 7/22 20180101ALI20230313BHJP
【FI】
C09J183/04
C09J7/38
C08G77/00
C08G77/12
C08G77/20
C09J7/22
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022532822
(86)(22)【出願日】2021-09-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-24
(86)【国際出願番号】 US2021049754
(87)【国際公開番号】W WO2022119613
(87)【国際公開日】2022-06-09
【審査請求日】2022-08-30
(31)【優先権主張番号】63/120,859
(32)【優先日】2020-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ケリー、エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】ハンナ、ヤン
【審査官】長部 喜幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-051916(JP,A)
【文献】特開2000-265150(JP,A)
【文献】特開平5-098238(JP,A)
【文献】特開平5-098240(JP,A)
【文献】特開2001-081436(JP,A)
【文献】特開2006-193598(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 183/00
C09J 7/00
C08G 77/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン感圧接着剤組成物であって、
(A)単位式(R SiO1/2(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO2/2のポリジオルガノシロキサンガム100重量部であって、式中、各Rは、独立して選択された1~10個の炭素原子のアルキル基であり、各Rは、独立して選択された2~10個の炭素原子を有するアルケニル基であり、下付き文字aは、0、1、又は2であり、下付き文字bは、0、1、又は2であり、下付き文字c≧0であり、下付き文字d≧0であり、(c+d)は、≧400,000Daの分子量を有する前記ガムを提供するのに十分な値を有し、量(b+d)は、前記ポリジオルガノシロキサンガムの重量に基づいて少なくとも0.01重量%のケイ素結合アルケニル含有量を提供するのに十分である、ポリジオルガノシロキサンガム100重量部と、
(B)単位式(R SiO1/2(R SiO1/2(SiO4/2(ZO1/2を有するポリオルガノシリケート樹脂であって、式中、R及びRは、上記のとおりであり、Zは、水素原子又は1~6個の炭素原子のアルキル基であり、下付き文字e、f、g、及びhは、各単位のモル分率を表し、e≧0、f>0、g>0、h≧0、及び量(e+f+g)=1であり、
出発物質(A)及び(B)は、1.5:1~0.5:1の、(B)の量と(A)の量とのモル比(樹脂:ガム比)を提供するのに十分な量で存在する、ポリオルガノシリケート樹脂と、
(C)単位式(R SiO1/2(R HSiO1/2(RHSiO2/2(R SiO2/2のポリオルガノハイドロジェンシロキサンであって、式中、Rは、上記のとおり、アルキル基としてであり、下付き文字k、m、i、及びjは、前記式中各単位の数を表し、kが0、1、又は2であり、mが、0、1、又は2であり、量(k+m)=2であり、i>0であり、かつj≧0であるような値を有し、量(i+j+k+m)は、5~2000の重合度を有する前記ポリオルガノハイドロジェンシロキサンを提供するのに十分であり、出発物質(A)、(B)、及び(C)は、10:1~50:1の、出発物質(C)中のケイ素結合水素原子と、出発物質(A)及び(B)中のアルケニル基とのモル比を提供するのに十分な量で存在する、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンと、
(D)
(d1)単位式(R SiO2/2のオクタアルキルシクロテトラシロキサン0.18~8.0重量部、
(d2)単位式(R SiO2/2のデカアルキルシクロペンタシロキサン0.17~8.8重量部、
(d3)単位式(R SiO2/2のドデカアルキルシクロヘキサシロキサン0.16~5.0重量部、及び
(d4)(d1)、(d2)、及び(d3)のうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択されるポリジオルガノシクロシロキサンを含む添加剤であって、
ただし、(d1)、(d2)、及び(d3)の合計量が、出発物質(A)100重量部当たり0.91~17.2重量部である、添加剤と、
(E)出発物質(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、及び(F)の合計重量に基づいて、10ppm~7,500ppmの重量の白金族金属を提供するのに十分な量のヒドロシリル化反応触媒と、
(F)ヒドロシリル化反応触媒抑制剤0.1~5重量部と、
(G)出発物質(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)、及び(G)の合計重量に基づいて、10重量%~90重量%の溶媒を提供するのに十分な量の有機溶媒と、を含み、
ただし、前記シリコーン感圧接着剤組成物はヒドロキシル官能性ポリジオルガノシロキサンガムを含まない、組成物。
【請求項2】
各Rがメチルであり、各Rが、ビニル、アリル、及びヘキセニルからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
(A)前記ポリジオルガノシロキサンガムが、400,000Da~1,000,000Daの数平均分子量及び0.01%~0.1%のアルケニル含有量を有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
(B)前記ポリオルガノシリケート樹脂が、3,000Da~10,000Daの数平均分子量及び0.6:1~1.1:1の、単官能性単位と四官能性単位との比を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
(C)前記ポリオルガノハイドロジェンシロキサンが、単位式(R SiO1/2(HRSiO2/2を有し、式中、Rは、上記のとおりであり、下付き文字iは、25℃で測定された10~30cStの粘度を前記ポリオルガノハイドロジェンシロキサンにもたらすのに十分である、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
出発物質(D)が、(d1)前記オクタアルキルシクロテトラシロキサン0.3重量部~7.5重量部、(d2)前記デカアルキルシクロペンタシロキサン0.41重量部~8.5重量部、及び(d3)前記ドデカアルキルシクロヘキサシロキサン0.28重量部~4.5重量部を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
任意選択的に、1)基材の表面を処理することと、
2)前記基材の前記表面に、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物を適用することと、
3)前記(G)溶媒の全て又は一部を除去することと、
4)前記組成物を硬化させ、それによって接着剤物品を形成することと、を含む、方法。
【請求項8】
前記基材がプラスチックフィルムであり、前記接着剤物品が保護フィルムである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記保護フィルムを被着体に適用することと、前記被着体を保護することと、その後、前記保護フィルムを除去することと、を更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記被着体が、器具又は電子デバイスの表面である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
デバイス組み立てプロセス、保管、輸送、及びそれらのうちの2つ以上の組み合わせ中に被着体を保護するための、請求項8に記載の方法によって調製された前記保護フィルムの使用。
【請求項12】
前記ポリジオルガノシクロシロキサンが、
(d1)単位式(R SiO2/2のオクタアルキルシクロテトラシロキサン0.27~8.0重量部、
(d2)単位式(R SiO2/2のデカアルキルシクロペンタシロキサン0.39~8.8重量部、
(d3)単位式(R SiO2/2のドデカアルキルシクロヘキサシロキサン0.26~1.2重量部、又は(d4)(d1)、(d2)、及び(d3)のうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記ポリジオルガノシクロシロキサンが、
(d1)単位式(R SiO2/2のオクタアルキルシクロテトラシロキサン0.18~4.01重量部、
(d2)単位式(R SiO2/2のデカアルキルシクロペンタシロキサン0.17~4.43重量部、
(d3)単位式(R SiO2/2のドデカアルキルシクロヘキサシロキサン0.16~1.02重量部、及び
(d4)(d1)、(d2)、及び(d3)のうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
任意選択的に、1)基材の表面を処理することと、
2)前記基材の前記表面に、請求項12又は13に記載の組成物を適用することと、
3)前記(G)溶媒の全て又は一部を除去することと、
4)前記組成物を硬化させ、それによって接着剤物品を形成することと、を含む、方法。
【請求項15】
前記基材がプラスチックフィルムであり、前記接着剤物品が保護フィルムである、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づき、2020年12月3日出願の米国特許仮出願第63/120,859号の利益を主張する。米国仮特許出願第63/120,859号は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
シリコーン感圧接着剤組成物並びにその調製方法及び使用が開示される。より具体的には、保護フィルム用途に有用な低マイグレーションを有するシリコーン感圧接着剤を形成するために硬化するシリコーン感圧接着剤組成物が本明細書に開示される。
序論
【0003】
保護フィルムは、器具の外装、例えば、家庭用器具内のフレーム及びバックプレートなどのプラスチックに適用される。保護フィルムは、製造及び消費者への輸送中の損傷(引っ掻きなど)に対してプラスチックの表面を保護する。保護フィルムは、加工性と相関する除去の容易な滑らかな湿潤性、器具の保管及び輸送に関連付けられた過酷な条件(例えば、温度)下で安定した性能を有するべきである。別の所望の特性は、例えば、保護フィルムが、器具を購入した後に消費者によって除去される場合、プラスチックの表面に保護フィルムがほとんど又は全く残っていないことである。
【0004】
シリコーン感圧接着剤は、そのような保護フィルムの製造のために提案されている。典型的なシリコーン感圧接着剤組成物は、主にシリコーンポリマー及びシリコーン樹脂からなり、ヒドロシリル化反応のために架橋剤及び白金触媒を必要とする。保護フィルムは、フィルム状の裏打ち基材上にシリコーン感圧接着剤組成物をコーティングし、当該組成物を硬化させて、基材上にシリコーン感圧接着剤層を生成することによって製造することができる。
【0005】
例えば、Mizunoらの米国特許第8,178,207号は、ヒトの目によって接着剤残留物を検出することができず、250℃以上の熱処理にさらされた場合でもシリコーン成分を移動させない、超低シリコーン移動特性を有する感圧接着剤層を与えるシリコーン系感圧接着剤組成物を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
保護フィルム用途での使用に好適なシリコーン感圧接着剤を形成するために硬化するシリコーン感圧接着剤組成物が望ましい。シリコーン感圧接着剤は、ガラス、金属、及びプラスチックなどの被着体に対して良好な接着性を有するべきである。本明細書で使用される場合、「良好な接着性」は、最初の接着性及び最小の接着変化であり、シリコーン感圧接着剤を被着体から消費者によって剥離するときの容易な除去、及びシリコーン感圧接着剤を被着体に取り付けるときの滑らかな湿潤性への任意の影響を防止することが望まれる。除去されると、シリコーン感圧接着剤は、これらの被着体に最小限の染色が残るか、又は全く染色が残らない。本明細書で使用される場合、「染色」とは、シリコーン感圧接着剤から被着体へのマイグレーションを指し、シリコーン感圧接着剤を除去した後に肉眼で見える被着体への暗色化又は他の変化をもたらす。
【0007】
シリコーン感圧接着剤組成物、その調製方法、及び保護フィルムを作製するための組成物の使用の方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書のシリコーン感圧接着剤組成物(組成物)は、(A)ポリジオルガノシロキサンガム、(B)ポリオルガノシリケート樹脂、(C)ポリオルガノハイドロジェンシロキサン、(D)ポリジアルキルシクロシロキサン、(E)ヒドロシリル化反応触媒、(F)ヒドロシリル化反応触媒抑制剤、及び(G)有機溶媒を含む。
(A)アルケニル官能性ポリジオルガノシロキサンガム
【0009】
組成物中の出発物質(A)は、ポリジオルガノシロキサンガム(ガム)である。ガムは、単位式(R SiO1/2(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO2/2を有し得、式中、各Rは、独立して選択された1~10個の炭素原子のアルキル基であり、各Rは、独立して選択された2~10個の炭素原子を有するアルケニル基であり、下付き文字aは、0、1、又は2であり、下付き文字bは、0、1、又は2であり、量(a+b)=2であり、下付き文字c≧0であり、下付き文字d≧0であり、量(c+d)は、≧400,000Daの分子量を有するガムを提供するのに十分な値を有し、量(b+d)は、ガムの重量に基づいて少なくとも0.01重量%のケイ素結合アルケニル含有量を提供するのに十分である。あるいは、量(b+d)は、少なくとも0.05%、あるいは少なくとも0.06重量%のアルケニル含有量を有するガムを提供するのに十分な値を有し得る。同時に、量(b+d)は、ガムの重量に基づいて最大0.1%、あるいは最大0.07%のアルケニル含有量を有するガムを提供するのに十分な値を有し得る。あるいは、量(c+d)は、400,000Da~1,000,000Da、あるいは500,000Da~900,000Da、あるいは600,000Da~800,000Daの分子量を有するガムを提供するのに十分な値を有し得る。
【0010】
のアルキル基は、メチル、エチル、プロピル(n-プロピル及び/又はイソプロピルを含む)、ブチル(n-ブチル、t-ブチル、sec-ブチル、及び/又はイソブチルを含む)、ペンチル(シクロペンチル、n-ペンチル、及び5個の炭素原子を有する分岐異性体種を含む)、ヘキシル(シクロヘキシル、n-へキシル、及び6個の炭素原子を有する分岐異性体種を含む)、ペプチル(シクロペプチル、n-ペプチル、及び7個の炭素原子を有する分岐異性体種を含む)、オクチル(シクロオクチル、n-オクチル、及び8個の炭素原子を有する分岐異性体種を含む)、ノニル(シクロノニル、n-ノニル、及び9個の炭素原子を有する分岐異性体種を含む)、及びデシル(シクロデシル、n-デシル、及び10個の炭素原子を有する分岐異性体種を含む)であり得る。あるいは、各Rは、メチル、エチル、プロピル、又はブチルであり得、あるいはメチル又はエチル、あるいはメチルである。
【0011】
のアルケニル基は、出発物質(C)のケイ素結合水素原子(SiH)とのヒドロシリル化反応を受けることが可能である。Rの好適なアルケニル基は、ビニル、アリル、及びヘキセニル、あるいはビニル、及びアリル、あるいはビニルからなる群から選択され得る。
【0012】
好適なガムの例としては、トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサン)コポリマー、ジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサンホモポリマー、ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサン)コポリマー、ジメチルヘキセニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルヘキセニルシロキサン)コポリマー、ジメチルヘキセニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサンホモポリマー、ジメチルヘキセニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルヘキセニルシロキサン)コポリマー、及びそれらのうちの2つ以上の組み合わせが挙げられる。ガムは、Hahnらの米国特許第3,983,298号、Aokiの同第7,728,080号、及びAokiの同第8,754,174号に記載のものなどの既知の方法、例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサン又は同様のオリゴマーを、ジメチルビニルシロキサン単位を有するシラン化合物又はシロキサン化合物、並びにジメチルシロキサン単位及び/若しくはメチルビニルシロキサン単位を有するシラン化合物又はシロキサン化合物と触媒的に重合することによって、作製され得る。当業者は、このように重合された反応生成物が低分子量の環状シロキサンを含有することを認識するであろうが、したがって、低分子環状シロキサンは、例えば、不活性ガスを導入することによって高温及び/又は減圧下でのストリッピング又は蒸留によって、完全に又は部分的に除去され得る。
【0013】
シリコーン感圧接着剤組成物で使用するために選択されたガムは、1つのガムであり得、又は2つ以上のガムを含み得、ガムは、分子量、アルキル基及び/又はアルケニル基の選択、末端シロキサン単位の種類、並びにポリマー骨格中のシロキサン単位の配列などの少なくとも1つの特性が異なる。
(B)ポリオルガノシリケート樹脂
【0014】
組成物は、(B)ポリオルガノシリケート樹脂(樹脂)を更に含む。樹脂は、単位式(R SiO1/2(R SiO1/2(SiO4/2(ZO1/2を含み得、式中、R及びRは、上記のとおりであり、Zは、水素原子又は1~6個の炭素原子のアルキル基であり、下付き文字e、f、g、及びhは、各単位のモル分率を表し、e≧0、f≧0、g>0、h≧0、及び量(e+f+g)=1である。下付き文字e、f、及びgは、単官能性単位、すなわち、単位(R SiO1/2)及び(R SiO1/2)と、四官能性単位、すなわち、式(SiO4/2)の単位とのモル比が0.6:1~1.1:1、あるいは0.9:1~1.1:1の比率で存在するような値を有し得る。下付き文字hは、樹脂の重量に基づいて、最大5.0重量%、あるいは0~4.5%、あるいは0~4.0%、あるいは0~3.5%、あるいは0~3.0%、あるいは0~2.5%、あるいは0~2.0%、あるいは0.5~1.5%、あるいは0~1.1%の樹脂(ZO1/2)基含有量をもたらすのに十分な値を有し得る。あるいは、Zは水素であり得、樹脂は、樹脂の重量に基づいて、0~5.0%、あるいは0~4.5%、あるいは0~4.0%、あるいは0~3.5%、あるいは0~3.0%、あるいは0~2.5%、あるいは0~2.0%、あるいは0.5~1.5%、あるいは0.9%~1.1%のヒドロキシル基含有量を有し得る。樹脂は、任意選択的に、最大20%の、例えば、式(R SiO2/2)の二官能性単位、及び/又は式(RSiO3/2)の三官能性単位を更に含み得る。樹脂は、GPCによって測定された3,000Da~10,000Da、あるいは4,000Da~10,000Da、あるいは5,000Da~8,000Da、あるいは6,000Da~7,000Daの数平均分子量(Mn)を有し得る。あるいは、樹脂は、5,000Da~50,000Da、あるいは8,000Da~40,000Da、あるいは10,000Da~30,000Da、あるいは13,000Da~20,000Daの重量平均分子量(Mw)を有し得る。
【0015】
ポリオルガノシリケート樹脂は、Berryらの米国特許第8,017,712号、及び本明細書に引用された参考文献、並びにBrownらの米国特許第10,351,742号、及び本明細書に引用された参考文献に開示されているものなどの既知の方法によって調製され得る。ポリオルガノシリケート樹脂はまた、Midland,Michigan,USAのDow Silicones Corporation、Albany,New York,USAのMomentive Performance Materials、及びEast Brunswick,New Jersey,USAのBluestar Silicones USA Corp.などの様々な供給源から市販されている。例えば、DOWSIL(商標)MQ-1600 Solid Resin、DOWSIL(商標)MQ-1601 Solid Resin、及びDOWSIL(商標)MQ-1640 Flake Resinは、Dow Silicones Corporationから入手可能である。
【0016】
樹脂は、1.5:1~0.5:1、あるいは、1.25:1~0.6:1、あるいは1:1~0.7:1、あるいは0.9:1~0.8:1の(B)樹脂の量と(A)ガムの量とのモル比(すなわち、樹脂:ガム比)を提供するのに十分な量で組成物中に存在する。シリコーン感圧接着剤組成物で使用するために選択された樹脂は、1つの樹脂であり得、又は2つ以上の樹脂を含み得、樹脂は、分子量、アルキル基及び/又はアルケニル基の選択、末端シロキサン単位の種類、並びに分子量などの少なくとも1つの特性が異なる。
(C)ポリオルガノハイドロジェンシロキサン架橋剤
【0017】
出発物質(C)は、単位式(c1):(R SiO1/2(R HSiO1/2(RHSiO2/2(R SiO2/2を有し得るポリオルガノハイドロジェンシロキサンであり、式中、Rは、上記のとおりのアルキル基であり、下付き文字k、m、i、及びjは、式中各単位の数を表し、kが0、1、又は2であり、mが、0、1、又は2であり、量(k+m)=2であり、i>0であり、かつj≧0であるような値を有する。量(i+j+k+m)は、5~2000、あるいは10~1000、あるいは30~100、あるいは50~80の重合度を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンを提供するのに十分である。
【0018】
あるいは、k=2、m=0、及びj=0である場合、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、単位式(c2):(R SiO1/2(HRSiO2/2を有し得、式中、Rは、上記のようなアルキル基であり、下付き文字iは、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンに、#CP-52スピンドルを有するブルックフィールドDV-IIIコーンプレート型粘度計で25℃及び0.1~50RPMで測定された、10~50cSt、あるいは20~40cStの粘度をもたらすのに十分である。当業者は、粘度が増加するにつれて回転速度が低下することを認識し、この試験方法を使用して粘度を測定するときに適切な回転速度を選択することができるであろう。あるいは、下付き文字iは、30~100、あるいは50~80、あるいは60~70、あるいは70~80であり得る。
【0019】
組成物で使用するための好適なポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、
(c3)α,ω-ジメチルハイドロジェンシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルハイドロジェンシロキサン)、
(c4)α,ω-ジメチルハイドロジェンシロキシ末端ポリメチルハイドロジェンシロキサン、
(c5)α,ω-トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルハイドロジェンシロキサン)、
(c6)α,ω-トリメチルシロキシ末端ポリメチルハイドロジェンシロキサン、
(c7)α-ジメチルハイドロジェンシロキシ-ω-トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルハイドロジェンシロキサン)、
(c8)α-ジメチルハイドロジェンシロキシ-ω-トリメチルシロキシ末端ポリメチルハイドロジェンシロキサン、及び
(c9)これらのうちの2つ以上の組み合わせにより例示される。
【0020】
オルガノハロシランの加水分解及び縮合などのポリオルガノハイドロジェンシロキサンを調製する方法は、当該技術分野において、例えば、Speierらの米国特許第2,823,218号、Jeramらの米国特許第3,957,713号、及びHardmanらの米国特許第4,329,273号において周知である。ポリオルガノハイドロジェンシロキサンはまた、Morrisville,Pennsylvania,USAのGelest,Inc.から入手可能であるもの、例えば、HMS-H271、HMS-071、HMS-993、HMS-301、HMS-301R、HMS-031、HMS-991、HMS-992、HMS-993、HMS-082、HMS-151、HMS-013、HMS-053、HAM-301、及びHMS-HM271など、市販されている。
【0021】
シリコーン感圧接着剤組成物における使用のために選択されたポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、1つのポリオルガノハイドロジェンシロキサンであり得、又は2つ以上のポリオルガノハイドロジェンシロキサンを含み得、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、分子量、アルキル基の選択、末端シロキサン単位の種類、及びポリマー骨格中のシロキサン単位の配列などの少なくとも1つの特性が異なる。出発物質(A)、(B)、及び(C)は、10:1~50:1、あるいは15:1~45:1、あるいは20:1~40:1、あるいは25:1~35:1の、出発物質(C)中のケイ素結合水素原子と、出発物質(A)及び(B)中のアルケニル基とのモル比を提供するのに十分な量で存在する。
(D)ポリジアルキルシクロシロキサン
【0022】
出発物質(D)は、低分子量環状シロキサンである。より具体的には、出発物質(D)は、(d1)単位式(R SiO2/2のオクタアルキルシクロテトラシロキサン、(d2)単位式(R SiO2/2のデカアルキルシクロペンタシロキサン、(d3)単位式(R SiO2/2のドデカアルキルシクロヘキサシロキサン、及び(d4)(d1)、(d2)、及び(d3)のうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択されるポリジアルキルシクロシロキサンであり、Rは上記のとおり、アルキル基である。
【0023】
組成物中の出発物質(d1)の量は、出発物質(A)100重量部当たり、0.18~8.0重量部、あるいは0.27~8.0重量部、あるいは0.18重量部~4.01重量部であり得る。あるいは、出発物質(d1)の量は、出発物質(A)100重量部当たり、少なくとも0.18重量部、あるいは少なくとも0.27重量部、あるいは少なくとも0.30重量部、あるいは少なくとも0.33重量部、あるいは少なくとも0.35重量部であり得る。同時に、(d1)の量は、出発物質(A)100重量部当たり、最大8.0重量部、あるいは最大7.5重量部、あるいは最大7.0重量部、あるいは最大6.5重量部、あるいは最大6.0重量部、あるいは最大5.5重量部、あるいは最大5.0重量部、あるいは最大4.5重量部、あるいは最大4.1重量部、あるいは最大4.01重量部、あるいは最大4.0重量部であり得る。
【0024】
組成物中の出発物質(d2)の量は、出発物質(A)100重量部当たり、0.17~8.8重量部、あるいは0.17~4.43重量部、あるいは0.39重量部~8.8重量部であり得る。あるいは、出発物質(d2)の量は、出発物質(A)100重量部当たり、少なくとも0.17重量部、あるいは少なくとも0.39重量部、あるいは少なくとも0.41重量部、あるいは少なくとも0.43重量部、あるいは少なくとも0.45重量部、あるいは少なくとも0.47重量部、あるいは少なくとも0.49重量部、あるいは少なくとも0.51重量部であり得る。同時に、(d2)の量は、出発物質(A)100重量部当たり、最大8.8重量部、あるいは最大8.5重量部、あるいは最大8.0重量部、あるいは最大7.5重量部、あるいは最大7.0重量部、あるいは最大6.5重量部、あるいは最大6.0重量部、あるいは最大5.5重量部、あるいは最大5.0重量部、あるいは最大4.5重量部、あるいは最大4.43重量部、あるいは最大4.4重量部であり得る。
【0025】
組成物中の出発物質(d3)の量は、出発物質(A)100重量部当たり、0.16~5.0重量部、あるいは0.26重量部~5.0重量部、あるいは0.16~1.02重量部であり得る。あるいは、出発物質(d3)の量は、出発物質(A)100重量部当たり、少なくとも0.16重量部、あるいは少なくとも0.26重量部、あるいは少なくとも0.28重量部、あるいは少なくとも0.30重量部、あるいは少なくとも0.32重量部、あるいは少なくとも0.33重量部、あるいは少なくとも0.34重量部であり得る。同時に、(d3)の量は、出発物質(A)100重量部当たり、最大5.0重量部、あるいは最大4.5重量部、あるいは最大4.4重量部、あるいは最大4.0重量部、あるいは最大3.5重量部、あるいは最大3.0重量部、あるいは最大2.5重量部、あるいは最大2.4重量部、あるいは最大2.3重量部、あるいは1.02重量部であり得る。
【0026】
ポリジアルキルシクロシロキサンの出発物質(D)の総量、すなわち、組成物中の(d1)、(d2)及び/又は(d3)の合計量は、出発物質(A)100重量部当たり0.91~17.2重量部である。あるいは、出発物質(D)の総量は、出発物質(A)100重量部当たり、少なくとも0.91重量部、あるいは少なくとも0.93重量部、あるいは少なくとも0.95重量部、あるいは少なくとも0.97重量部、あるいは少なくとも0.99重量部、あるいは少なくとも1.0重量部、あるいは少なくとも1.1重量部、あるいは少なくとも1.2重量部であり得る。同時に、出発物質(D)の総量は、出発物質(A)100重量部当たり、最大17.2重量部、あるいは最大17重量部、あるいは最大16重量部、あるいは最大15重量部、あるいは最大14重量部、あるいは最大13重量部、あるいは最大12重量部、あるいは最大11重量部、あるいは最大10重量部、あるいは最大9重量部、あるいは最大8.9重量部、あるいは最大8.8重量部、あるいは最大8.5重量部、あるいは最大8重量部であり得る。
【0027】
ポリジアルキルシクロシロキサンは、当技術分野で既知であり、市販されている。例えば、2,2,4,4,6,6,8,8,-オクタメチルシクロテトラシロキサンなどのオクタアルキルシクロテトラシロキサン、2,2,4,4,6,6,8,8,-デカメチルシクロペンタシロキサンなどのデカアルキルシクロペンタシロキサン、及び2,2,4,4,6,6,8,8,10,10-ドデカメチルシクロヘキサシロキサンなどのドデカアルキルシクロヘキサシロキサンが当該技術分野で既知であり、Midland,Michigan,USAのDow Silicones Corporation、Morrisville,Pennsylvania,USAのGelest,Inc.、及びSt.Louis,Missouri,USAのMillipore Sigmaなどの様々な供給源から市販されている。
【0028】
本発明者らは驚くべきことに、本明細書の実施例において以下に記載されるように、(D)上記のポリジアルキルシクロシロキサンを含む、本明細書に記載のシリコーン感圧接着剤組成物を硬化させることが、シリコーン感圧接着剤を様々な被着体から除去した後の、人間の目に見える染色が減少したシリコーン感圧接着剤を形成したことを見出した。これは、以前の開示、例えば、米国特許第3,983,298号、同第7,728,080号、及び同第8,754,174号を考慮すると、特に驚くべきことであり、これらの全ては、感圧接着剤組成物を作製するために使用される出発物質から低分子量環状シロキサンを除去することを開示する。
(E)ヒドロシリル化反応触媒
【0029】
ヒドロシリル化反応触媒は、当該技術分野において既知であり、市販されている。ヒドロシリル化反応触媒としては、白金族金属触媒が挙げられる。このようなヒドロシリル化反応触媒は、E1)白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウム、及びイリジウムから選択される金属であり得る。あるいは、ヒドロシリル化反応触媒は、E2)そのような金属の化合物、例えば、クロリドトリス(トリフェニルホスファン)ロジウム(I)(Wilkinson触媒)、[1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ジクロロジロジウム若しくは[1,2-ビス(ジエチルホスフィノ)エタン]ジクロロジロジウムなどのロジウムジホスフィンキレート、塩化白金酸(Speier触媒)、塩化白金酸六水和物、二塩化白金、及びE3)化合物E2)と低分子量オルガノポリシロキサンとの錯体、又はE4)マトリックス若しくはコアシェル型構造中にマイクロカプセル化された白金族金属化合物であり得る。白金と低分子量オルガノポリシロキサンとの錯体としては、1,3-ジエチル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンと白金との錯体(Karstedt触媒)、及びテトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン中のPt(0)錯体(Ashby錯体)が挙げられる。あるいは、ヒドロシリル化反応触媒は、E5)樹脂マトリックス中にマイクロカプセル化された上記のような化合物又は錯体であり得る。白金含有触媒の具体例としては、六水和物の形態若しくは無水の形態のいずれかの塩化白金酸、又は、塩化白金酸をジビニルテトラメチルジシロキサンなどの脂肪族不飽和有機ケイ素化合物と反応させることを含む方法により得られる白金含有触媒、又はRoyの米国特許第6,605,734号に記載されたアルケン-白金-シリル錯体が挙げられる。アルケン-白金-シリル錯体は、例えば、0.015モルの(COD)PtClを、0.045モルのCOD及び0.0612モルのHMeSiClと混合することによって調製され得、CODはシクロオクタジエンを表し、Meはメチルを表す。他の例示的なヒドロシリル化反応触媒は、Speierの米国特許第2,823,218号、Ashbyの同第3,159,601号、Lamoreauxの同第3,220,972号、Chalkらの同第3,296,291号、Willingの同第3,419,593号、Modicの同第3,516,946号、Karstedtの同第3,814,730号、Chandraの同第3,928,629号、Leeらの同第3,989,668号、Leeらの同第4,766,176号、Leeらの同第4,784,879号、Togashiの同第5,017,654号、Chungらの同第5,036,117号、及びBrownの同第5,175,325号、並びにTogashiらの欧州特許第0347895(A)号に記載されている。ヒドロシリル化反応触媒は市販されており、例えば、SYL-OFF(商標)4000触媒及びSYL-OFF(商標)2700は、Dow Silicones Corporationから入手可能である。
【0030】
組成物中の触媒の量は、出発物質A)、B)、及びC)の選択、並びにアルケニル基及びケイ素結合水素原子のそれぞれの含有量、並びに組成物中に存在するF)ヒドロシリル化反応抑制剤の量を含む様々な要因に依存するが、しかしながら、触媒の量は、SiHとアルケニル基とのヒドロシリル化反応を触媒するのに十分であり、あるいは、触媒の量は、出発物質A)、B)、C)、D)、E)、及びF)の合計重量に基づいて10ppm~75000ppmの白金族金属を提供するのに十分である。
(F)ヒドロシリル化反応触媒抑制剤
【0031】
出発物質(F)は、ヒドロシリル化反応抑制剤(抑制剤)であり、それは抑制剤を省いた同じ出発物質の反応速度と比較して、出発物質(C)のケイ素結合水素原子と出発物質(A)及び(B)のアルケニル基との反応速度を変化させるために使用され得る。抑制剤は、アセチレン系アルコール、例えばメチルブチノール、エチニルシクロヘキサノール、ジメチルヘキシノール、及び3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、1-ブチン-3-オール、1-プロピン-3-オール、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3-メチル-1-ペンチン-3-オール、3-フェニル-1-ブチン-3-オール、4-エチル-1-オクチン-3-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、及び1-エチニル-1-シクロヘキサノール、並びにこれらの組み合わせ;例えば1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサンのようなメチルビニルシクロシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン、及びそれらの組み合わせによって例示されるシクロアルケニルシロキサンなどのオレフィン性シロキサン;エン-イン化合物、例えば3-メチル-3-ペンテン-1-イン、3,5-ジメチル-3-ヘキセン-1-イン、及びこれらの組み合わせ;ベンゾトリアゾールなどのトリアゾール類;ホスフィン;メルカプタン;ヒドラジン;アミン、例えばテトラメチルエチレンジアミン、3-ジメチルアミノ-1-プロピン、n-メチルプロパルギルアミン、プロパルギルアミン、及び1-エチニルシクロヘキシルアミン;フマル酸ジアルキル、例えばフマル酸ジエチルなど、フマル酸ジアルケニル、例えばフマル酸ジアリルなど、フマル酸ジアルコキシアルキル、マレイン酸エステル、例えばマレイン酸ジアリル及びマレイン酸ジエチルなど;ニトリル;エーテル;一酸化炭素;アルケン、例えばシクロオクタジエン、ジビニルテトラメチルジシロキサン;アルコール、例えばベンジルアルコール;並びにこれらの組み合わせによって例示される。代表的なオレフィン系シロキサンは、例えば米国特許3,989,667号に開示されている。代表的なアセチレン系アルコールは、例えば米国特許第3,445,420号に開示されている。
【0032】
あるいは、抑制剤は、シリル化アセチレン系化合物であり得る。理論に束縛されるものではないが、シリル化アセチレン系化合物を添加すると、シリル化アセチレン系化合物を含有していない、又は上記したものなどの有機アセチレン系アルコール抑制剤を含有する出発物質のヒドロシリル化による反応生成物と比較して、ヒドロシリル化反応から調製される反応生成物の黄変が低減すると考えられる。
【0033】
シリル化アセチレン系化合物は、(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)トリメチルシラン、((1,1-ジメチル-2-プロピニル)オキシ)トリメチルシラン、ビス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルシラン、ビス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)シランメチルビニルシラン、ビス((1,1-ジメチル-2-プロピニル)オキシ)ジメチルシラン、メチル(トリス(1,1-ジメチル-2-プロピニルオキシ))シラン、メチル(トリス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ))シラン、(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルフェニルシラン、(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルヘキセニルシラン、(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)トリエチルシラン、ビス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)メチルトリフルオロプロピルシラン、(3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オキシ)トリメチルシラン、(3-フェニル-1-ブチン-3-オキシ)ジフェニルメチルシラン、(3-フェニル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルフェニルシラン、(3-フェニル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルビニルシラン、(3-フェニル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルヘキセニルシラン、(シクロヘキシル-1-エチン-1-オキシ)ジメチルヘキセニルシラン、(シクロヘキシル-1-エチン-1-オキシ)ジメチルビニルシラン、(シクロヘキシル-1-エチン-1-オキシ)ジフェニルメチルシラン、(シクロヘキシル-1-エチン-1-オキシ)トリメチルシラン、及びそれらの組み合わせによって例示される。あるいは、シリル化アセチレン系化合物は、メチル(トリス(1,1-ジメチル-2-プロピニルオキシ))シラン、((1,1-ジメチル-2-プロピニル)オキシ)トリメチルシラン、又はそれらの組み合わせによって例示される。本明細書における抑制剤として有用なシリル化アセチレン系化合物は、当該技術分野において既知の方法により調製され得る。例えば、Bilgrienらの米国特許第6,677,407号では、酸受容体の存在下でクロロシランと上記のアセチレン系アルコールを反応させることにより上記のアセチレン系アルコールをシリル化することが開示されている。
【0034】
組成物中の抑制剤の量は、所望の反応速度、使用される特定の抑制剤、並びに出発物質(A)、(B)及び(C)の選択及び量を含む様々な因子に依存する。しかしながら、存在する場合、抑制剤の量は、出発物質A)100重量部当たり0.1~5重量部であり得る。
(G)有機溶媒
【0035】
組成物中の出発物質(G)は、有機溶媒である。有機溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、又はn-プロパノール等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン、又はメチルイソブチルケトン等のケトン、ベンゼン、トルエン、又はキシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、又はオクタン等の脂肪族炭化水素、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn-ブチルエーテル、プロピレングリコールn-プロピルエーテル、又はエチレングリコールn-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のグリコールエーテル;ミネラルスピリット;ナフサ;酢酸エチル、又はそれらの組み合わせであり得る。
【0036】
溶媒の量は、選択された溶媒の種類、並びに組成物に選択された他の出発物質の量及び種類を含む様々な要因に依存する。しかしながら、溶媒の量は、組成物中の全ての出発物質の合計重量に基づいて、10%~90%、あるいは20%~80%、あるいは30%~70%、あるいは40%~60%であり得る。溶媒は、例えば、1つ以上の出発物質の混合及び送達を容易にするために、組成物の調製中に添加され得る。例えば、ガム、樹脂、及び/又は触媒を溶媒中で送達してもよい。溶媒は、1つの溶媒又は2つ以上の溶媒の組み合わせであり得る。例えば、特定の触媒(例えば、塩化白金酸)は、アルコール溶媒中に溶解され得、ガム及び/又は樹脂は、トルエンなどの異なる溶媒中に溶解され得る。
【0037】
組成物は、充填剤を含まないか、又は組成物の0~30重量%などの限られた量の充填剤のみを含有し得る。理論に束縛されるものではないが、充填剤は、組成物を基材に適用するために使用されるコータ装置に凝集する場合があり、又はさもなければ固着する場合があると考えられる。充填剤はまた、感圧接着剤及びそれで形成された保護フィルムのヘイズを生成することによって光学特性を妨げ得る。更に、組成物は、ヘイズの増加などによって光学特性を妨げる他の成分を含まない場合がある。理論に束縛されるものではないが、ヒドロキシル官能性ポリジオルガノシロキサンガムは、感圧接着剤のヘイズ及び/又はマイグレーションに寄与し得ると考えられる。ネオペンタマーなどのポリオルガノシリケート樹脂の製造中に本質的に形成された特定の低分子量の副生成物もまた、感圧接着剤のヘイズ及び/又はマイグレーションに寄与し得ると更に考えられる。したがって、組成物はまた、ネオペンタマーを含まなくてもよい。
シリコーン感圧接着剤組成物の作製方法
【0038】
感圧接着剤組成物は、周囲温度又は高温での混合などの任意の都合のよい手法によって、全ての出発物質を組み合わせることを含む方法によって、調製することができる。例えば、感圧接着剤組成物を高温で調製する場合、及び/又は組成物を一液型組成物として調製する場合、抑制剤を、ヒドロシリル化反応触媒の前に添加し得る。出発物質のうちの1つ以上は、任意選択的に、感圧接着剤組成物に添加する前に脱揮され得る。例えば、(A)ガム及び/又は(B)樹脂は、任意選択的に真空及び/又は不活性ガス流と共にストリッピング(以前に脱揮しない場合)されて、感圧接着剤組成物で使用する前に製造の任意の揮発性副生成物を除去し得る。(B)樹脂及び(A)ガムの全て又は一部は、得られた樹脂/ガムブレンドを組成物の残りの出発物質に添加する前に、例えば、脱揮押出機を使用して組み合わせることができる。
【0039】
この方法は、1つ以上の出発物質を溶媒中に送達することを更に含み得る。例えば、ガム、樹脂、及び/又はヒドロシリル化反応触媒を、組成物中の他の出発物質のうちの1つ以上と組み合わせる場合に溶媒に溶解させてもよい。あるいは、樹脂は、任意選択的に、ガムの一部と組み合わせられた固体フレーク又は粉末として調製され得、その後、樹脂又は樹脂/ガムの組み合わせは、組成物の他の出発物質と組み合わせる前に溶媒中に溶解され得る。
【0040】
あるいは、感圧接着剤組成物は、例えば感圧接着剤組成物を使用前に長期間、例えば感圧接着剤組成物を基材上にコーティングする前に最大6時間保管する場合、複数部型組成物として調製してもよい。複数部型組成物において、ヒドロシリル化反応触媒は、ケイ素結合水素原子を有する任意の出発原料、例えばポリオルガノハイドロジェンシロキサンとは別個の部分に保存され、それらの部分は感圧接着剤組成物の使用直前に組み合わされる。
【0041】
例えば、複数部型組成物は、ガムの少なくともいくつか、ポリオルガノハイドロジェンシロキサン、溶媒の少なくともいくつか、及び任意選択的に上記の1つ以上の他の追加の出発物質を含む出発物質を、混合などの任意の都合のよい手法によって組み合わせることによって調製され得、ただし、ヒドロシリル化反応触媒が基部に含まれていない。硬化剤は、ガムの少なくともいくつか、ヒドロシリル化反応触媒、溶媒、及び任意選択的に、上記の1つ以上の他の追加の出発物質を、混合などの任意の都合のよい手法によって組み合わせることによって調製され得、ただし、ケイ素結合水素原子を有する任意の出発物質(ポリオルガノハイドロジェンシロキサンなど)が硬化剤部に含まれていない。出発物質は、周囲温度又は高温で組み合わされ得る。ヒドロシリル化反応抑制剤は、基部、硬化剤部、又は別個の追加部のうちの1つ以上に含まれてもよい。あるいは、ポリオルガノシリケート樹脂を、基部、硬化剤部、又は別個の追加部に添加してもよい。ポリジアルキルシクロシロキサンを、基部、硬化剤部、又は別個の追加部に添加してもよい。二部型組成物を使用するとき、基部の量と硬化剤部との重量比は、1:1~10:1の範囲であり得る。感圧接着剤組成物は、ヒドロシリル化反応により硬化して感圧接着剤を形成する。
使用方法
【0042】
上記の方法は、1つ以上の追加の工程を更に含んでもよい。上記のように調製した感圧接着剤組成物を使用して、基材上に接着剤物品、例えば、感圧接着剤(上記の感圧接着剤組成物を硬化させることにより調製する)を形成してもよい。ゆえに、この方法は、感圧接着剤組成物を基材に適用することを更に含み得る。
【0043】
感圧接着剤組成物を基材に適用することは、任意の都合のよい手法によって実行することができる。例えば、感圧接着剤硬化性組成物は、グラビアコーター、コンマコーター、オフセットコーター、オフセットグラビアコーター、ローラーコーター、リバースローラーコーター、エアナイフコーター、又はカーテンコーターにより基材上に適用され得る。
【0044】
基材は、感圧接着剤組成物を硬化させて基材上に感圧接着剤を形成するために使用する硬化条件(後述)に耐えることができる任意の材料であることができる。例えば、70℃以上、あるいは70℃~150℃以上の温度での熱処理に耐えることができる、任意の基材が好適である。このような基材に適切な材料の例として、ポリイミド(polyimide、PI)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone、PEEK)、ポリエチレンナフタレート(polyethylene naphthalate、PEN)、液晶ポリアリレート、ポリアミドイミド(polyamideimide、PAI)、ポリエーテルスルフィド(polyether sulfide、PES)、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate、PET)、ポリエチレン(polyethylene、PE)、又はポリプロピレン(polypropylene、PP)等のプラスチックフィルムが挙げられる。あるいは、基材は、アルミニウム箔又は銅箔などの金属箔であってもよい。基材の厚さは重要ではないが、厚さは5マイクロメートル~300マイクロメートルであってもよい。
【0045】
感圧接着剤の基材への結合を向上させるために、接着剤物品を形成するための方法は、感圧接着剤組成物を適用する前に基材を処理することを任意選択的に更に含んでもよい。基材の処理は、感圧接着剤組成物を基材に適用する前に、プライマーを適用すること、又は基材をコロナ放電処理、エッチング、若しくはプラズマ処理に供することなどの任意の都合のよい手法により実施してもよい。
【0046】
フィルム又はテープなどの接着剤物品は、上記の感圧接着剤硬化性組成物を上記の基材上に適用することにより調製され得る。方法は、任意で、硬化の前及び/又は最中に溶媒の全部又は一部を除去することを更に含んでもよい。溶媒の除去は、感圧接着剤組成物を完全には硬化させずに溶媒を気化させる温度で加熱すること、例えば70℃~120℃、あるいは50℃~100℃、あるいは70℃~80℃の温度で、溶媒の全て又は一部を除去するのに十分な時間(例えば30秒間~1時間、あるいは1分間~5分間)加熱すること、などの任意の都合のよい手法で実施してもよい。
【0047】
感圧接着剤組成物の硬化は、感圧接着剤組成物を硬化させるのに十分な時間(例えば、30秒間~1時間、あるいは1分間~5分間)、70℃~200℃、あるいは80℃~180℃、あるいは90℃~160℃、あるいは100℃~150℃の温度で加熱することにより実施してもよい。硬化速度を速める必要がある場合、又はプロセスオーブンの温度を下げる必要がある場合は、触媒濃度を上げることができる。これにより、基材上に感圧接着剤が形成される。硬化は、基材をオーブン内に入れることによって行うことができる。基材に適用する感圧接着剤組成物の量は具体的な用途に依存するが、硬化後、感圧接着剤の厚さが1マイクロメートル~100マイクロメートルとなり得るのに十分な量であり得、保護フィルムの場合、厚さは3マイクロメートル~80マイクロメートル、あるいは4マイクロメートル~50マイクロメートルであり得る。
【0048】
本明細書に記載の方法は、例えば、接着剤物品の使用前に感圧接着剤を保護するために、基材の反対側の感圧接着剤に除去可能な剥離ライナーを適用すること、を任意選択的に更に含んでもよい。剥離ライナーは、感圧接着剤組成物の硬化前、硬化中、又は硬化後に、あるいは硬化後に、適用することができる。
【0049】
上記のように調製された接着剤物品は、例えば、プラスチック、銅、若しくはステンレス鋼などの金属、及び/又はガラスを含み得る器具の外装を保護するための保護フィルムとしての使用に好適である。例えば、家電機器のフレーム及びバックプレートによって例示される器具を保護するための方法は、器具の表面に保護フィルム(すなわち、本明細書に記載の感圧接着剤を含む接着剤物品)を適用することを含み得る。この方法は、保管及びデバイスを輸送する後に保護フィルムを除去することを更に含む。保護フィルムは、器具の表面上に染色がないか、又は最小限の汚れで除去され得る。
【0050】
代替的な実施形態では、上述のように調製された接着剤物品は、スクリーンなどの電子デバイスの表面保護、又はスマートフォン若しくはタブレットなどのデバイスの組み立て、デバイスの保管、デバイスの輸送中の他の表面保護、又はそのようなデバイスのスクリーン保護のためのエンドユーザに使用されてもよい。選択された感圧接着剤及び基材は、典型的には、スクリーン保護用途向けに透過性である。接着剤物品は、保管及び輸送後に電子デバイスを損傷することなく除去することができる。
【実施例
【0051】
これらの実施例は、当業者に本発明を例示することを目的とするものであり、請求項に記載の本発明の範囲を制限するものとして解釈すべきではない。これらの実施例で使用した出発物質を表1に記載する。
【表1】
【0052】
表1では、DSCは、Midland,Michigan,USAのDow Silicones Corporationを指す。
比較例0(実験0)
【0053】
ヒドロキシル官能性ポリジオルガノシロキサンガムを含むシリコーン感圧接着剤組成物は、米国特許第8,178,207号に従って調製された。この組成物を基材上にコーティングし、以下に記載される参考2に従って硬化させた。得られた感圧接着剤シートを、以下の参考例3~7に従って評価した。この比較例の感圧接着剤は、参考例7における変色試験に失敗した。
参照例1:試料調製
【0054】
ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチル/メチルビニル)シロキサンガム(表1のA-1及び/又はA-2)の100重量部を、ポリメチルシリケート樹脂(B-1)及び(G-1)トルエンと混合して、41%溶液を形成した。溶液にポリジメチルシロキサン添加剤(表1のD-1~D-9のうちの1つ以上)を添加した。抑制剤(ETCH)(F-1)を添加し、得られた組み合わせをよく混合した。次いで、混合物中の白金の115ppmを標的とする量で触媒(E-1)を添加した。各試料(実験)の組成を以下の表2及び表3に示す。
【表2】
【表3】
【0055】
表2及び表3において、(C)は比較例を示し、(W)は実施例を示す。
参考例2-Si PSAコーティング及び硬化
【0056】
上記のように調製したシリコーン系感圧接着剤組成物を、SK Chemical(SKC)の商品名で販売されている25umPETフィルム上に適用した。硬化後の30umの厚さを有する感圧接着剤層を、コーティングされたフィルムを1000rpmの風速で100℃で2分間加熱することによって形成した。感圧接着剤シートを形成した。
参考例3-初期接着測定
【0057】
感圧接着剤細片を、参考例2に従って調製された感圧接着剤シートを1インチ幅の細片に切断することにより形成した。各細片を、ゴムローラーで発生させた2kgfの圧力下で、鏡面ステンレス鋼板(SUS304)の形態で被着体に接着させ、試験片を形成した。ステンレス鋼板(SUS304)への細片の接着強度を、ASTM D1000で指定された180度剥離試験に従って測定した。
参考例4-85℃/85%の湿度におけるエージングした状態の接着測定(接着安定性)
【0058】
試験片を85℃/85%水分のオーブン中で1日間(24時間)エージングしたことを除いて、参考例3で上述したように試料を調製した。室温に冷却した後、接着力を、参考例3のようにASTM D1000で指定された同じ180度剥離試験に従って測定した。
参考例5-プローブタック試験
【0059】
参考例2に記載されるように調製された接着剤層は、ASTM D2979で指定されたプローブタック試験に従って測定されたステンレスカラムの表面に粘着性を示した。感圧接着剤シートを切断して、シートを1インチ幅の細片に取得した。シリンダの形状のプローブを、細片が取り付けられた試験片と接触させ、それが0.5cm/秒の速度で1秒の滞留時間で剥離された場合に発生したタック特性(瞬間接着)を評価した。
参考例6-60℃/90%の湿度でのエージングした状態下でのマイグレーションチェック(染色試験)
【0060】
参考例2に記載されるように調製された感圧接着剤の染色を以下のように評価した。感圧接着剤シートを切断して、シートを2インチ幅の細片に取得し、次いで各細片を標的被着体(ポリカーボネート)の表面に取り付けて、試験片を作製した。
【0061】
試験片を60℃/90%の湿度条件で3日間保持し、次いで室温状態に冷却した。細片を被着体から剥がし、次いで感圧接着剤が被着体と接触する位置を肉眼で目視検査して、感圧接着剤が被着体上に残っている染色を生成したかどうかを決定した。強い染色が表面上に残った場合、5にスコアを付けた。表面上に、かすかに染色が残っているか又は染色が残っていない場合、1にスコアを付けた。各試料(実験)についての結果も以下の表4に示す。表4の「不合格」は、染色が悪く、本明細書に記載の保護フィルム用途などの特定の用途に望ましくないことを示す。
参考例7-200℃での硬化後状態下でのマイグレーションチェック(変色試験)
【0062】
参考例2に記載されるように調製された感圧接着剤の「変色」として呼ばれる染色を以下に評価し、試験方法は、ASTM D2244で指定された「CIELAB色空間」と称される。感圧接着テープは、参考例2に記載されるように調製されたシートを2インチ幅の細片に切断することによって得られ、次いで細片を銅フィルムの表面に取り付けて試験片を形成した。試験片を200℃で10分間保持し、次いで室温に冷却した。細片を銅フィルムから剥がし、次いで、シリコーンの残留物を、反射モードで曇ったメータと呼ばれるSpectro-meterによって測定した。マイグレーションと呼ばれるシリコーン残留物がCuフィルムの表面に残ると、Cuフィルムの表面色は、低輝度及び赤褐色になるように変更された。この変色は、Cuフィルムの表面上にどれだけシリコーン残留物が残ったかシリコーンマイグレーション強度と相関しており、色の変化は、ΔL、Δa、Δb、及びデルタEの各値と相関している。ΔLは、シリコーン残留物を有するCuフィルムと参照としてのCuフィルムとの間の明度の変化を意味する。値が負になっている場合、シリコーンマイグレーションによって引き起こされる低輝度と相関した。Δaは、シリコーン残留物を有するCuフィルムと参照としてのCuフィルムとの間の赤色の変化を表す。値が正になっている場合、シリコーンマイグレーションによって変化したCuフィルムの強い赤色と相関している。Δbは、シリコーン残留物を有するCuフィルムと参照としてのCuフィルムとの間の黄色の変化を表す。値が正になっている場合、強いシリコーンマイグレーションによってCuフィルムの色がより黄色に変化する。ΔEは、参照からのΔL、Δa、及びΔbの偏差であり、どのくらいCuフィルムの表面上に染色が残ったかを各光インデックス、L、a、及びbを比較することにより決定する。ΔEが正になっている場合、シリコーンマイグレーションによって引き起こされる強い染色又は変色を有するCuフィルム。
各インデックスの値を以下の式に従って計算し、各試料の結果を表4に示す。
・式(1):ΔL=L -L Cuフィルム
・式(2):Δa=a -a Cuフィルム
・式(3):Δb=b -b Cuフィルム
【数1】
【表4】
【0063】
表4において、「N/D」は、高視覚染色スコアを有する強い染色、及び「不合格」としてマークされた染色により、検出されないことを意味する。表2及び表3に記載される組成物を硬化させることによって調製されたシリコーン感圧接着剤は、<200gf/inの初期接着、<150gのタック特性、及び85℃/85%の湿度条件で24時間エージングした後の<400gf/inの接着変化を有する。最も重要なことは、シリコーン感圧接着剤が取り付けられている被着体の表面上の「変色」を残す「一種のシリコーンマイグレーション」として呼ばれる染色を最小限に抑えるか、又は全く提供しないことである。シリコーン感圧接着剤の「染色」は、肉眼でチェックされ、分光計によって検出される両方の試験方法によって測定される。例えば、比較例0に記載されているように調製され、参考例6において上述したように評価された実験0は、「合格」で視覚染色スコア「1.5」を有するが、参考例7において上述したように評価された実験0は、デルタE「4.65」で変色の高い偏差を示した。そのため、試料は両方の試験条件によって測定された染色を最小限に抑えるか又は全く提供しないため、実験0は不合格だった。実験1、実験3~実験9、実験13、及び実験17はまた、1つ又は両方の染色試験条件で不合格だった。本発明によるシリコーン感圧接着剤は、両方の試験条件下で染色を最小限に抑えるか、又は全く提供しないことが望ましい。
【0064】
実験1~7は、シリコーン感圧接着剤組成物のマイグレーション還元添加剤として様々な化合物をスクリーニングした。実験2は、特定のポリジアルキルシクロシロキサンが、組成物から作製されたシリコーン感圧接着剤の染色を低減するのに有用であることを示した。実験1及び3~9は比較であり、添加剤が使用されていない場合、又は環状の代わりに線状ポリジオルガノシロキサンが使用された場合、試験した条件下で染色性能が低かったことを示した。実験9~17は、本明細書に記載の範囲内の各ポリジアルキルシクロシロキサンの量を含有する感圧接着剤組成物が硬化した場合に、改善された染色特性が達成されたが、ポリジアルキルシロキサン種のうちの1つ以上がほとんど存在しないか、又は多すぎる場合、より多くの染色が1つ以上の被着体で観察されたことを示した。
【産業上の利用可能性】
【0065】
理論に束縛されるものではないが、染色をもたらし得るマイグレーションは、シリコーン感圧接着剤中の未反応のシリコーン種によって引き起こされると考えられている。マイグレーションを最小化又は排除するための以前の試みは、例えば、架橋剤の種類及び量を制御することによって、硬化シリコーン感圧接着剤の架橋密度を増加させること、ポリジオルガノシロキサンガムの官能基及び量を変化させること、直鎖及び環状ポリジオルガノシロキサンなどの揮発性未反応種の排除を含んだ。本発明者らは、驚くべきことに、本明細書に記載の種類及び量の特定の揮発性環状シロキサンを添加することにより、実際に染色を(増加させるのではなく)低減させることを見出した。
【0066】
上記の感圧接着剤組成物及び方法を使用して調製された保護フィルムを使用して、保管及び輸送中の引っ掻き傷などの損傷、又はデバイス内の組み立てプロセス中のダスト又は異物を吸引するなどの被毒から器具の表面を保護することができる。
用語の定義及び使用
【0067】
全ての量、比及び百分率は、特に指示しない限り、重量に基づく。組成物中の全ての出発物質の量は、総計100重量%である。発明の概要及び要約は、参照により本明細書に組み込まれる。冠詞「a」、「an」、及び「the」は、それぞれ明細書の文脈によって特に指示されない限り、1つ以上を指す。単数形は、別途記載のない限り、複数形を含む。用語「含むこと(comprising)」及びその派生語、例えば「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」は、本明細書において、それらの最も広い意味で、「含むこと(including)」、「含む(include)」、「から本質的になる(consist(ing) essentially of)」、及び「からなる(consist(ing) of)」)という見解を意味し、包含するように使用されている。実例を列記する「例えば(for example)」「例えば(e.g.,)」、「例えば(such as)」及び「が挙げられる(including)」の使用は、列記されている例のみに限定しない。したがって、「例えば(for example)」又は「例えば/など(such as)」は、「例えば、それらに限定されないが(for example, but not limited to)」又は「例えば、それらに限定されないが(such as, but not limited to)」を意味し、他の類似した、又は同等の例を包含する。
【0068】
添付の特許請求の範囲は、「発明を実施するための形態」を表現するために、及びそこに記載される特定の化合物、組成物、又は方法に限定されず、添付の特許請求の範囲の範疇の特定の実施形態間で異なり得ることを理解されたい。本明細書で様々な実施形態の具体的な特徴又は態様の記述が依拠している任意のマーカッシュ群に関して、異なる、特殊な及び/又は不測の結果が、全ての他のマーカッシュ群の要素から独立して、それぞれのマーカッシュ群の各要素から得られる場合がある。マーカッシュグループの各メンバーは、個別に、かつ又は組み合わせて依拠され得、添付の特許請求の範囲の範疇の具体的な実施形態に適切なサポートを提供する。
【0069】
更に、本発明の様々な実施形態を説明する際に依拠とされる任意の範囲及び部分範囲は、独立して及び包括的に、添付の特許請求の範囲内に入り、本明細書にその中の全部及び/又は一部の値が明記されていなくても、そのような値を包含する全範囲を説明及び想到するものと理解される。当業者は、列挙された範囲及び部分範囲が、本発明の様々な実施形態を十分に説明し、有効にし、そのような範囲及び部分範囲が、関連する半分、3分の1、4分の1、5分の1などに更に詳しく説明され得ることを容易に認識する。単なる一例として、範囲「1.0~17」は、下から3分の1、すなわち1~6.3、中間の3分の1、すなわち6.4~11.6、及び上から3分の1、すなわち11.7~17と更に詳述することができ、これらは個別的かつ集合的に添付の特許請求の範囲内であり、添付の特許請求の範囲内の特定の実施形態が個別的及び/又は集合的に依拠する場合があり、適切な根拠を提供し得る。加えて、「少なくとも」、「超」、「未満」、「以下」などの範囲を定義又は修飾する文言に関して、そのような文言が部分範囲及び/又は上限若しくは下限を含むことを理解されたい。更に、開示された範囲内の個々の数字は、依拠され得、添付の特許請求の範囲の範疇の具体的な実施形態に適切なサポートを提供する。例えば、範囲「1.0~17」は、様々な個々の整数、例えば、1.0、3.0、5.0、8.0、及び17並びに小数点(又は分数)を含む個別の数、例えば、1.2、4.1、4.8、8.7、及び8.8を含み、これは添付の特許請求の範囲内の特定の実施形態が依拠することがあり、適切な根拠を提供する。
【0070】
本明細書で使用される略語は、表5にて定義される。
【表5】
本発明の実施形態
【0071】
第1の実施形態では、シリコーン感圧接着剤組成物は、
(A)単位式(R SiO1/2(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO2/2のポリジオルガノシロキサンガム100重量部であって、式中、各Rは、独立して選択された1~10個の炭素原子のアルキル基であり、各Rは、独立して選択された2~10個の炭素原子を有するアルケニル基であり、下付き文字aは、0、1、又は2であり、下付き文字bは、0、1、又は2であり、下付き文字c≧0であり、下付き文字d≧0であり、(c+d)は、≧400,000Daの分子量を有するガムを提供するのに十分な値を有し、量(b+d)は、ポリジオルガノシロキサンガムの重量に基づいて少なくとも0.06重量%のケイ素結合アルケニル含有量を提供するのに十分である、ポリジオルガノシロキサンガム100重量部と、
(B)単位式(R SiO1/2(R SiO1/2(SiO4/2(ZO1/2を有するポリオルガノシリケート樹脂であって、式中、R及びRは、上記のとおりであり、Zは、水素原子又は1~6個の炭素原子のアルキル基であり、下付き文字e、f、g、及びhは、各単位のモル分率を表し、e≧0、f>0、g>0、h≧0、及び量(e+f+g)=1であり、
出発物質(A)及び(B)は、1.5:1~0.5:1の、(B)の量と(A)の量とのモル比(樹脂:ガム比)を提供するのに十分な量で存在する、ポリオルガノシリケート樹脂と、
(C)単位式(R SiO1/2(HRSiO2/2のポリオルガノハイドロジェンシロキサンであって、式中、Rは、上記のとおりであり、下付き文字iは、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンに10~30cStの粘度をもたらすのに十分であり、
出発物質(A)、(B)、及び(C)は、10:1~50:1の、出発物質(C)中のケイ素結合水素原子と、出発物質(A)及び(B)中のアルケニル基とのモル比を提供するのに十分な量で存在する、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンと
(D)
(d1)単位式(R SiO2/2のオクタアルキルシクロテトラシロキサン0.35~4.1重量部、
(d2)単位式(R SiO2/2のデカアルキルシクロペンタシロキサン0.51~4.5重量部、
(d3)単位式(R SiO2/2のドデカアルキルシクロヘキサシロキサン0.33~2.4重量部、及び
(d4)(d1)、(d2)、及び(d3)のうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択されるポリジアルキルシクロシロキサンであって、
ただし、(d1)、(d2)、及び(d3)の合計量は、総計して、出発物質(A)100重量部当たり1.2~8.9重量部となるポリジアルキルシクロシロキサンと、
(E)出発物質(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、及び(F)の合計重量に基づいて、10ppm~7,500ppmの重量の白金族金属を提供するのに十分な量のヒドロシリル化反応触媒と、
(F)ヒドロシリル化反応触媒抑制剤0.1~5重量部と、
(G)出発物質(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)、及び(G)の合計重量に基づいて、10重量%~90重量%の溶媒を提供するのに十分な量の有機溶媒と、を含み、
ただし、シリコーン感圧接着剤組成物はヒドロキシル官能性ポリジオルガノシロキサンガムを含まない。
【0072】
第2の実施形態では、第1の実施形態の組成物において、各Rがメチルであり、各Rがビニルである。
【0073】
第3の実施形態では、第1の実施形態(又は第2の実施形態)の組成物において、ガムが、600,000Da~800,000Daの数平均分子量、及び少なくとも0.06重量%のアルケニル含有量を有する。
【0074】
第4の実施形態では、第1の実施形態(又は第1~第3の実施形態のいずれか1つ)の組成物において、樹脂が、5,000Da~8,000Daの数平均分子量、及び0.9:1~1.1:1の単官能性単位と四官能性単位との比を有する。
【0075】
第5の実施形態では、第1の実施形態(又は第1~第4の実施形態のいずれか1つ)の組成物において、出発物質(D)が、(d1)オクタアルキルシクロテトラシロキサン0.36重量部~4.0重量部、(d2)デカアルキルシクロペンタシロキサン0.52重量部~4.4重量部、及び(d3)ドデカアルキルシクロヘキサシロキサン0.34重量部~2.3重量部を含む。
【0076】
第6の実施形態では、第1の実施形態(又は第1~第5の実施形態のいずれか1つ)の組成物において、(d1)、(d2)、及び(d3)の合計量が、総計して、出発物質(A)100重量部当たり1.3~8.8重量部となる。
【0077】
第7の実施形態では、方法は、
任意選択的に、1)基材の表面を処理することと、
2)シリコーン感圧接着剤組成物を基材の表面に適用することであって、シリコーン感圧接着剤組成物は、
(A)単位式(R SiO1/2(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO2/2のポリジオルガノシロキサンガム100重量部であって、式中、各Rは、独立して選択された1~10個の炭素原子のアルキル基であり、各Rは、独立して選択された2~10個の炭素原子を有するアルケニル基であり、下付き文字aは、0、1、又は2であり、下付き文字bは、0、1、又は2であり、下付き文字c≧0であり、下付き文字d≧0であり、(c+d)は、≧400,000Daの分子量を有するガムを提供するのに十分な値を有し、量(b+d)は、ポリジオルガノシロキサンガムの重量に基づいて少なくとも0.06重量%のケイ素結合アルケニル含有量を提供するのに十分である、ポリジオルガノシロキサンガム100重量部と、
(B)単位式(R SiO1/2(R SiO1/2(SiO4/2(ZO1/2を有するポリオルガノシリケート樹脂であって、式中、R及びRは、上記のとおりであり、Zは、水素原子又は1~6個の炭素原子のアルキル基であり、下付き文字e、f、g、及びhは、各単位のモル分率を表し、e≧0、f>0、g>0、h≧0、及び量(e+f+g)=1であり、
出発物質(A)及び(B)は、1.5:1~0.5:1の、(B)の量と(A)の量とのモル比(樹脂:ガム比)を提供するのに十分な量で存在する、ポリオルガノシリケート樹脂と、
(C)単位式(R SiO1/2(HRSiO2/2のポリオルガノハイドロジェンシロキサンであって、式中、Rは、上記のとおりであり、下付き文字iは、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンに10~30cStの粘度をもたらすのに十分であり、
出発物質(A)、(B)、及び(C)は、10:1~50:1の、出発物質(C)中のケイ素結合水素原子と、出発物質(A)及び(B)中のアルケニル基とのモル比を提供するのに十分な量で存在するポリオルガノハイドロジェンシロキサンと
(D)
(d1)単位式(R SiO2/2のオクタアルキルシクロテトラシロキサン0.27~8.0重量部、
(d2)単位式(R SiO2/2のデカアルキルシクロペンタシロキサン0.39~8.8重量部、
(d3)単位式(R SiO2/2のドデカアルキルシクロヘキサシロキサン0.26~5.0重量部、及び
(d4)(d1)、(d2)、及び(d3)のうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択されるポリジアルキルシクロシロキサンであって、
ただし、(d1)、(d2)、及び(d3)の合計量は、出発物質(A)100重量部当たり0.91~17.2重量部である、ポリジアルキルシクロシロキサンと、
E)出発物質(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、及び(F)の合計重量に基づいて、10ppm~7,500ppmの重量の白金族金属を提供するのに十分な量のヒドロシリル化反応触媒と、
(F)ヒドロシリル化反応触媒抑制剤0.1~5重量部と、
(G)出発物質(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)、及び(G)の合計重量に基づいて、10重量%~90重量%の溶媒を提供するのに十分な量の有機溶媒と、を含み、
ただし、シリコーン感圧接着剤組成物はヒドロキシル官能性ポリジオルガノシロキサンガムを含まない、適用することと、
3)溶媒の全て又は一部を除去することと、
4)組成物を硬化させ、それによって接着剤物品を形成することと、を含む。
【0078】
第8の実施形態では、第7の実施形態に記載の方法において、出発物質(D)は、
(d1)単位式(R SiO2/2のオクタアルキルシクロテトラシロキサン0.35~4.1重量部、
(d2)単位式(R SiO2/2のデカアルキルシクロペンタシロキサン0.51~4.5重量部、
(d3)単位式(R SiO2/2のドデカアルキルシクロヘキサシロキサン0.33~2.4重量部、及び
(d4)(d1)、(d2)、及び(d3)のうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され、
ただし、(d1)、(d2)、及び(d3)の合計量は、総計して、出発物質(A)100重量部当たり1.2~8.9重量部となる。
【0079】
第9の実施形態では、第7(又は第8)の実施形態において、基材がプラスチックフィルムであり、接着剤物品が保護フィルムである。
【0080】
第10の実施形態では、第9の実施形態の方法は、保護フィルムを被着体に適用することと、被着体を保護することと、その後、保護フィルムを除去することと、を更に含む。
【0081】
第11の実施形態では、第10の実施形態の方法において、被着体が、器具又は電子デバイスの表面である。
【0082】
第12の実施形態では、第7の実施形態(又は第7~第11の実施形態のいずれか1つ)の方法において、出発物質(D)が、(d1)オクタアルキルシクロテトラシロキサン0.36重量部~4.0重量部、(d2)デカアルキルシクロペンタシロキサン0.52重量部~4.4重量部、及び(d3)ドデカアルキルシクロヘキサシロキサン0.34重量部~2.3重量部を含む。
【0083】
第13の実施形態では、第7の実施形態(又は第7~第12の実施形態のいずれか1つ)の方法において、(d1)、(d2)、及び(d3)の合計量が、総計して、出発物質(A)100重量部当たり1.3~8.8重量部となる。
【0084】
第14の実施形態では、保護フィルムは、第7の実施形態の方法(あるいは第7~第9の実施形態のいずれか1つ)によって調製される。
【0085】
第15の実施形態では、第14の実施形態の保護フィルムは、組み立て、保管、輸送中、又はそれらのうちの2つ以上の組み合わせの間、被着体を保護するために使用される。
【0086】
第16の実施形態では、シリコーン感圧接着剤組成物は、
(A)単位式(R SiO1/2(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO2/2のポリジオルガノシロキサンガム100重量部であって、式中、各Rは、独立して選択された1~10個の炭素原子のアルキル基であり、各Rは、独立して選択された2~10個の炭素原子を有するアルケニル基であり、下付き文字aは、0、1、又は2であり、下付き文字bは、0、1、又は2であり、下付き文字c≧0であり、下付き文字d≧0であり、(c+d)は、≧400,000Daの分子量を有するガムを提供するのに十分な値を有し、量(b+d)は、ポリジオルガノシロキサンガムの重量に基づいて少なくとも0.06重量%のケイ素結合アルケニル含有量を提供するのに十分である、ポリジオルガノシロキサンガム100重量部と、
(B)単位式(R SiO1/2(R SiO1/2(SiO4/2(ZO1/2を有するポリオルガノシリケート樹脂であって、式中、R及びRは、上記のとおりであり、Zは、水素原子又は1~6個の炭素原子のアルキル基であり、下付き文字e、f、g、及びhは、各単位のモル分率を表し、e≧0、f>0、g>0、h≧0、及び量(e+f+g)=1であり、
出発物質(A)及び(B)は、1.5:1~0.5:1の、(B)の量と(A)の量とのモル比(樹脂:ガム比)を提供するのに十分な量で存在する、ポリオルガノシリケート樹脂と、
(C)単位式(R SiO1/2(HRSiO2/2のポリオルガノハイドロジェンシロキサンであって、式中、Rは、上記のとおりであり、下付き文字iは、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンに10~30cStの粘度をもたらすのに十分であり、
出発物質(A)、(B)、及び(C)は、10:1~50:1の、出発物質(C)中のケイ素結合水素原子と、出発物質(A)及び(B)中のアルケニル基とのモル比を提供するのに十分な量で存在するポリオルガノハイドロジェンシロキサンと
(D)
(d1)単位式(R SiO2/2のオクタアルキルシクロテトラシロキサン0.18~8.0重量部、
(d2)単位式(R SiO2/2のデカアルキルシクロペンタシロキサン0.17~8.8重量部、
(d3)単位式(R SiO2/2のドデカアルキルシクロヘキサシロキサン0.16~5.0重量部、及び
(d4)(d1)、(d2)、及び(d3)のうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択されるポリジアルキルシクロシロキサンであって、
ただし、(d1)、(d2)、及び(d3)の合計量は、総計して、出発物質(A)100重量部当たり1.2~8.9重量部となるポリジアルキルシクロシロキサンと、
(E)出発物質(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、及び(F)の合計重量に基づいて、10ppm~7,500ppmの重量の白金族金属を提供するのに十分な量のヒドロシリル化反応触媒と、
(F)ヒドロシリル化反応触媒抑制剤0.1~5重量部と、
(G)出発物質(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)、及び(G)の合計重量に基づいて、10重量%~90重量%の溶媒を提供するのに十分な量の有機溶媒と、を含み、
ただし、シリコーン感圧接着剤組成物はヒドロキシル官能性ポリジオルガノシロキサンガムを含まない。
【0087】
第17の実施形態では、第16の実施形態の組成物において、各Rがメチルであり、各Rがビニルである。
【0088】
第18の実施形態では、第16の実施形態(又は第17の実施形態)の組成物において、ガムが、600,000Da~800,000Daの数平均分子量、及び少なくとも0.06重量%のアルケニル含有量を有する。
【0089】
第19の実施形態では、第16の実施形態(又は第16~第18の実施形態のいずれか1つ)の組成物において、樹脂が、5,000Da~8,000Daの数平均分子量、及び0.9:1~1.1:1の単官能性単位と四官能性単位との比を有する。
【0090】
第20の実施形態では、第16の実施形態(又は第16~第19の実施形態のいずれか1つ)の組成物において、出発物質(D)が、(d1)オクタアルキルシクロテトラシロキサン0.18重量部~4.01重量部、(d2)デカアルキルシクロペンタシロキサン0.17重量部~4.43重量部、及び(d3)ドデカアルキルシクロヘキサシロキサン0.16重量部~1.02重量部を含む。
【0091】
第21の実施形態では、第16の実施形態(又は第16~第20の実施形態のいずれか1つ)の組成物において、(d1)、(d2)、及び(d3)の合計量が、総計して、出発物質(A)100重量部当たり1.3~8.8重量部となる。
【0092】
第22の実施形態では、方法は、
任意選択的に、1)基材の表面を処理することと、
2)シリコーン感圧接着剤組成物を基材の表面に適用することであって、シリコーン感圧接着剤組成物は、
(A)単位式(R SiO1/2(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO2/2のポリジオルガノシロキサンガム100重量部であって、式中、各Rは、独立して選択された1~10個の炭素原子のアルキル基であり、各Rは、独立して選択された2~10個の炭素原子を有するアルケニル基であり、下付き文字aは、0、1、又は2であり、下付き文字bは、0、1、又は2であり、下付き文字c≧0であり、下付き文字d≧0であり、(c+d)は、≧400,000Daの分子量を有するガムを提供するのに十分な値を有し、量(b+d)は、ポリジオルガノシロキサンガムの重量に基づいて少なくとも0.06重量%のケイ素結合アルケニル含有量を提供するのに十分である、ポリジオルガノシロキサンガム100重量部と、
(B)単位式(R SiO1/2(R SiO1/2(SiO4/2(ZO1/2を有するポリオルガノシリケート樹脂であって、式中、R及びRは、上記のとおりであり、Zは、水素原子又は1~6個の炭素原子のアルキル基であり、下付き文字e、f、g、及びhは、各単位のモル分率を表し、e≧0、f>0、g>0、h≧0、及び量(e+f+g)=1であり、
出発物質(A)及び(B)は、1.5:1~0.5:1の、(B)の量と(A)の量とのモル比(樹脂:ガム比)を提供するのに十分な量で存在する、ポリオルガノシリケート樹脂と、
(C)単位式(R SiO1/2(HRSiO2/2のポリオルガノハイドロジェンシロキサンであって、式中、Rは、上記のとおりであり、下付き文字iは、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンに10~30cStの粘度をもたらすのに十分であり、
出発物質(A)、(B)、及び(C)は、10:1~50:1の、出発物質(C)中のケイ素結合水素原子と、出発物質(A)及び(B)中のアルケニル基とのモル比を提供するのに十分な量で存在するポリオルガノハイドロジェンシロキサンと
(D)
(d1)単位式(R SiO2/2のオクタアルキルシクロテトラシロキサン0.18~8.0重量部、
(d2)単位式(R SiO2/2のデカアルキルシクロペンタシロキサン0.17~8.8重量部、
(d3)単位式(R SiO2/2のドデカアルキルシクロヘキサシロキサン0.16~5.0重量部、及び
(d4)(d1)、(d2)、及び(d3)のうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択されるポリジアルキルシクロシロキサンであって、
ただし、(d1)、(d2)、及び(d3)の合計量は、出発物質(A)100重量部当たり0.91~17.2重量部である、ポリジアルキルシクロシロキサンと、
(E)出発物質(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、及び(F)の合計重量に基づいて、10ppm~7,500ppmの重量の白金族金属を提供するのに十分な量のヒドロシリル化反応触媒と、
(F)ヒドロシリル化反応触媒抑制剤0.1~5重量部と、
(G)出発物質(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)、及び(G)の合計重量に基づいて、10重量%~90重量%の溶媒を提供するのに十分な量の有機溶媒と、を含み、
ただし、シリコーン感圧接着剤組成物はヒドロキシル官能性ポリジオルガノシロキサンガムを含まない、適用することと、
3)溶媒の全て又は一部を除去することと、
4)組成物を硬化させ、それによって接着剤物品を形成することと、を含む。
【0093】
第23の実施形態では、第22の実施形態の方法において、出発物質(D)が、
(d1)単位式(R SiO2/2のオクタアルキルシクロテトラシロキサン0.18~4.01重量部、
(d2)単位式(R SiO2/2のデカアルキルシクロペンタシロキサン0.17~4.43重量部、
(d3)単位式(R SiO2/2のドデカアルキルシクロヘキサシロキサン0.16~1.02重量部、及び
(d4)(d1)、(d2)、及び(d3)のうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され、
ただし、(d1)、(d2)、及び(d3)の合計量は、総計して、出発物質(A)100重量部当たり1.2~8.9重量部となる。
【0094】
第24の実施形態では、第22(又は第23)の実施形態の方法において、基材がプラスチックフィルムであり、接着剤物品が保護フィルムである。
【0095】
第25の実施形態では、第24の実施形態の方法は、保護フィルムを被着体に適用することと、被着体を保護することと、その後、保護フィルムを除去することと、を更に含む。
【0096】
第26の実施形態では、第25の実施形態の方法において、被着体が、器具又は電子デバイスの表面である。
【0097】
第27の実施形態では、保護フィルムは、第22の実施形態の方法(あるいは第22~第24の実施形態のいずれか1つ)の方法によって調製される。
【0098】
第28の実施形態では、第27の実施形態の保護フィルムは、組み立て、保管、輸送中、又はそれらのうちの2つ以上の組み合わせの間、被着体を保護するために使用される。