(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】電子鍵盤楽器のペダル装置
(51)【国際特許分類】
G10H 1/32 20060101AFI20230314BHJP
【FI】
G10H1/32 A
(21)【出願番号】P 2018189430
(22)【出願日】2018-10-04
【審査請求日】2021-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000116068
【氏名又は名称】ローランド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113608
【氏名又は名称】平川 明
(74)【代理人】
【識別番号】100123098
【氏名又は名称】今堀 克彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105407
【氏名又は名称】高田 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100178641
【氏名又は名称】増渕 敬
(72)【発明者】
【氏名】後藤 豊
(72)【発明者】
【氏名】北川 喜康
【審査官】中村 天真
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-180511(JP,A)
【文献】特開2013-205495(JP,A)
【文献】特開2009-258642(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10H 1/00-7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャーシと、前記シャーシに回動可能に支持されると共に踏み込み操作によって第1方向に回動するペダルと、前記ペダルの踏込量に応じて前記ペダルを前記第1方向とは逆の第2方向へ回動させようとする付勢力を前記ペダルに付与する第1付勢手段とを備える電子鍵盤楽器のペダル装置において、
前記ペダルにおける前記第1方向への回動時と前記第2方向への回動時の少なくとも一方において、前記ペダルの回動に対抗する抵抗力を前記ペダルに付与するダンパーを備
え、
前記ダンパーは、前記シャーシに固定される本体部と、前記本体部に対して所定の相対変位が可能な変位部とを有し、
前記ペダルと前記変位部とを係合させ、前記ペダルの回動に連動して前記変位部に前記本体部に対する前記所定の相対変位をさせる係合手段を備え、
前記ダンパーは、前記本体部に対する前記変位部の相対変位時に、前記変位部の相対変位に対抗する抵抗力を前記本体部から前記変位部に付与する、
ペダル装置。
【請求項2】
前記ダンパーは、前記ペダルにおける前記第2方向への回動時において、前記ペダルの回動に対抗する抵抗力を前記ペダルに付与する、
請求項1に記載のペダル装置。
【請求項3】
前記ダンパーは、前記変位部が前記本体部に対して相対的に回動することで前記本体部が前記変位部に前記抵抗力を付与するロータリーダンパーであって、
前記変位部の回動軸は、前記ペダルの回動軸と平行に設けられている、
請求項
1に記載のペダル装置。
【請求項4】
前記係合手段は、前記変位部と前記ペダルの一方に設けられると共に前記変位部の回動軸と偏心配置されるスライド軸部と、前記変位部と前記ペダルの他方に設けられると共に前記スライド軸部を受け入れるガイド孔とを有し、
前記ペダルの回動に連動して前記スライド軸部が、前記変位部の回動軸回りに周回すると共に前記ガイド孔の内壁に沿って摺動することによって前記変位部が前記本体部に対して回動する、
請求項
3に記載のペダル装置。
【請求項5】
前記第1付勢手段は、前記ペダルにおける回動軸よりも演奏者によって踏み込み操作される操作位置側に配設され、
前記係合手段は、前記ペダルの回動軸と前記第1付勢手段との間に配設されている、
請求項
4に記載のペダル装置。
【請求項6】
前記ペダルの踏込量が規定量を超えた場合に圧縮され、弾性力によって前記第2方向に前記ペダルを付勢する第2付勢手段を更に備える、
請求項1から
5の何れか1項に記載のペダル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子鍵盤楽器のペダル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アコースティックピアノの音色、操作性及び外観などを疑似的に再現した電子ピアノ等の電子鍵盤楽器が広く普及している。この種の電子鍵盤楽器に使用されるペダル装置として、レバー(ペダル)と連動し、レバーの揺動を抑制する揺動抑制部材と、支持部材に支持されると共に、揺動抑制部材に当接して摩擦力を発生させる摩擦発生部材とを備えるペダル装置がある(例えば、特許文献1)。また、ペダルの側面及びペダルをガイドするガイド部の少なくとも一方に回動するペダルに摩擦力を付与する摩擦材を備えるペダル装置がある(例えば、特許文献2)。これらのペダル装置によれば、ペダルに対する摩擦力を利用して回動に対抗する抵抗力をペダルに付与することで、ペダルの踏み込み量に対する操作荷重(反力)の特性にヒステリシス特性を持たせ、結果、アコースティックピアノのペダルに近い操作感覚を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-258642号公報
【文献】特開2013-205495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ペダルに所定の部材を押し当て、ペダルの回動時に生じるペダルと当該部材との摩擦力によって回動に対抗する抵抗力をペダルに付与する構成を採用すると、以下の問題を生じる。即ち、摩擦力によってペダルや当該部材が互いの接触部分において磨耗することで、摩擦力の低下を招き、結果、長期に亘って所望の荷重特性が得ることができない虞がある。
【0005】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、アコースティックピアノのペダルに近い操作感覚を長期間に亘って維持し得る、電子鍵盤楽器のペダル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の構成を採用した。即ち、本発明は、シャーシと、前記シャーシに回動可能に支持されると共に踏み込み操作によって第1方向に回動するペダルと、前記ペダルの踏込量に応じて前記ペダルを前記第1方向とは逆の第2方向へ回動させようとする付勢力を前記ペダルに付与する第1付勢手段とを備える電子鍵盤楽器のペダル装置において、前記ペダルにおける前記第1方向への回動時と前記第2方向への回動時の少なくとも一方において、前記ペダルの回動に対抗する抵抗力を前記ペダルに付与するダンパーを備える。
【0007】
本発明によると、ペダルの踏み込み操作において、ペダルの第2方向への回動時、即ち、復行程における操作荷重を、第1方向への回動時、即ち往行程における操作荷重よりも小さくすることができる。より具体的には、ダンパーがペダルの第2方向への回動時に抵抗力を付与する場合には、復行程におけるペダル荷重を軽減させることとなる。反対に、ダンパーがペダルの第1方向への回動時に抵抗力を付与する場合には、往行程におけるペダル荷重を増大させることとなる。また、ダンパーがペダルの第1方向への回動時及び第
2方向への回動時の双方において抵抗力を付与する場合には、復行程におけるペダル荷重を軽減させ、往行程におけるペダル荷重を増大させることとなる。何れの場合においても、踏み込み操作の復行程において往行程よりも操作荷重を小さくすることができる。その結果、アコースティックピアノのペダルと同様のヒステリシス特性を操作荷重に付与することができ、アコースティックピアノのペダルに近い操作感覚を実現することができる。更に、ペダルに所定の部材を押し当て、ペダルの回動時に生じるペダルと当該部材との摩擦力によって回動に対抗する抵抗力をペダルに付与する構成とした場合、以下のような問題が生じる。即ち、摩擦力によってペダルや当該部材が互いの接触部分において磨耗することで、長期に亘って所望の荷重特性が得られないという問題が生じる。一方、本発明は、耐久性の高いダンパーによってペダルに抵抗力を付与する構成としているため、上述した問題の発生を抑制することができ、長期に亘って所望の荷重特性が得ることができる。その結果、アコースティックピアノのダンパーペダルに近い操作感覚を長期間に亘って維持することができる。
【0008】
また、前記ダンパーは、前記ペダルにおける前記第2方向への回動時において、前記ペダルの回動に対抗する抵抗力を前記ペダルに付与してもよい。そうすることで、往行程においては、ダンパーが操作荷重に寄与せず、復行程においてダンパーによって操作荷重を軽減することとなる。そのため、付勢手段として、往行程において所定の荷重特性が得られるように設計されている既存のコイルばね等を流用することができる。
【0009】
また、前記ダンパーは、前記シャーシに固定される本体部と、前記本体部に対して所定の相対変位が可能な変位部とを有し、ペダル装置は、前記ペダルと前記変位部とを係合させ、前記ペダルの回動に連動して前記変位部に前記本体部に対する前記所定の相対変位をさせる係合手段を備え、前記ダンパーは、前記本体部に対する前記変位部の相対変位時に、前記変位部の相対変位に対抗する抵抗力を前記本体部から前記変位部に付与してもよい。そうすることで、ペダルの回動に連動して、ペダルの回動に対抗する抵抗力をペダルに付与することができる。
【0010】
更に、前記ダンパーは、前記変位部が前記本体部に対して相対的に回動することで前記本体部が前記変位部に前記抵抗力を付与するロータリーダンパーであって、前記変位部の回動軸は、前記ペダルの回動軸と平行に設けられていてもよい。そうすることで、ロータリーダンパーを寝かせる構成となるため、ペダル装置が上下に嵩張ることを抑制することができる。
【0011】
但し、本発明に係るダンパーにおける所定の相対変位としては、回転ではなく、並進を採用することもできる。ダンパーは、例えば、ロータリーダンパーでなく、シリンダーダンパーのように変位部が本体部に対して並進することで、変位部の並進に対抗する抵抗力を本体部から変位部に付与する構成としてもよい。
【0012】
また、前記係合手段は、前記変位部と前記ペダルの一方に設けられると共に前記変位部の回動軸と偏心配置されるスライド軸部と、前記変位部と前記ペダルの他方に設けられると共に前記スライド軸部を受け入れるガイド孔とを有し、前記ペダルの回動に連動して前記スライド軸部が、前記変位部の回動軸回りに周回すると共に前記ガイド孔の内壁に沿って摺動することによって前記変位部が前記本体部に対して回動してもよい。そうすることで、ペダルの回動に連動して当該回動に対抗する抵抗力をペダルに付与する構成を、簡単な構造で実現することができる。
【0013】
また、前記第1付勢手段は、前記ペダルにおける回動軸よりも演奏者によって踏み込み操作される操作位置側に配設され、前記係合手段は、前記ペダルの回動軸と前記第1付勢手段との間に配設されていてもよい。ペダル側に設けられたスライド軸部又はガイド孔の
ストロークが大きいと変位部側に設けられたスライド軸部又はガイド孔の偏心量を大きくする必要があることから、係合手段の配設位置はペダルの回動軸により近い方が好ましい。一方で、第1付勢手段については、ペダルの回動軸に近いほど所定の操作荷重を得るために必要な付勢力が大きくなり、第1付勢手段を大きくする必要があることから、第1付勢手段の配設位置はペダルの回動軸からより遠い方が好ましい。係合手段を第1付勢手段よりもペダルの回動軸寄りに配設することにより、係合手段と第1付勢手段の位置関係に起因する係合手段及び第1付勢手段の大型化を抑制することができる。
【0014】
また、本発明は、前記ペダルの踏込量が規定量を超えた場合に圧縮され、弾性力によって前記第2方向に前記ペダルを付勢する第2付勢手段を更に備えてもよい。これによると、ペダルの操作荷重を踏み込み量に応じて段階的に変化させることができ、アコースティックピアノのダンパーペダルに近い操作感覚を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態に係る電子鍵盤楽器のペダル装置の全体斜視図である。
【
図2】実施形態に係る電子鍵盤楽器のペダル装置の分解斜視図である。
【
図3】
図1のIII-III線における電子鍵盤楽器のペダル装置の断面図である。
【
図4】
図1のIV-IV線における電子鍵盤楽器のペダル装置の断面図である。
【
図5】
図1のV-V線における電子鍵盤楽器のペダル装置の断面図である。
【
図6】(a)は、第1ペダルの下面斜視図であり、(b)は、第3ペダルの下面斜視図である。
【
図7】実施形態に係るヒステリシス付与構造を示す斜視図である。
【
図8】ダンパーと第1係合部材との関係を示す図である。
【
図10A】第3ペダルが回動軸回りに回動したときのヒステリシス付与構造の挙動を説明するための図であって、第3ペダルが初期状態にある様子を示す図である。
【
図10B】第3ペダルが回動軸回りに回動したときのヒステリシス付与構造の挙動を説明するための図であって、第3ペダルの往行程における様子を示す図である。
【
図10C】第3ペダルが回動軸回りに回動したときのヒステリシス付与構造の挙動を説明するための図であって、第3ペダルが最大踏み込み状態に至った様子を示す図である。
【
図10D】第3ペダルが回動軸回りに回動したときのヒステリシス付与構造の挙動を説明するための図であって、第3ペダルの復行程における様子を示す図である。
【
図11】
図1のIII-III線における電子鍵盤楽器のペダル装置の断面図であり、(a)は、第1ペダルの初期状態を、(b)は、第1ペダルの踏み込み状態を、それぞれ図示している。
【
図12】
図1のIV-IV線における電子鍵盤楽器のペダル装置の断面図であり、(a)は、第3ペダルの初期状態を、(b)は、第3ペダルの規定状態を、(c)は、第3ペダルの踏み込み状態を、それぞれ図示している。
【
図13】第3ペダルの踏み込み量と操作荷重との関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して実施形態に係る電子鍵盤楽器のペダル装置について説明する。
図1は、実施形態に係る電子鍵盤楽器のペダル装置1の全体斜視図である。
図2は、実施形態に係る電子鍵盤楽器のペダル装置1の分解斜視図である。
図3は、
図1のIII-III線におけるペダル装置1の断面図、
図4は、
図1のIV-IV線におけるペダル装置1の断面図、
図5は、
図1のV-V線におけるペダル装置1の断面図である。また、
図6(a)は、第1ペダル20の下面斜視図であり、
図6(b)は、第3ペダル40の下面斜視図である。なお、図中の矢印U-D,L-R,F-Bは、電子鍵盤楽器のペダル装置1の
上下方向、左右方向、前後方向をそれぞれ示している。
【0017】
<構成>
まず、
図1及び
図2を参照して、実施形態に係る電子鍵盤楽器のペダル装置1(以下、単に「ペダル装置1」と称す)の全体構成について説明する。ペダル装置1は、電子ピアノ等の電子鍵盤楽器(図示せず)に使用され、電子鍵盤楽器で生成される楽音に各種の音響効果を与えるための装置である。ペダル装置1は、本体を形成するシャーシ10と、シャーシ10の左右方向に並設される第1ペダル20と、第2ペダル30と、第3ペダル40とを主に備えている。ペダル装置1は、第1ペダル20、第2ペダル30及び第3ペダル40のそれぞれが演奏者によって踏み込み操作されたときに、その踏み込み量に応じた電圧値を電子鍵盤楽器に出力する。これにより、ペダル装置1は、各ペダル20,30,40がアコースティックピアノのソフトペダル、ソステヌートペダル、ダンパーペダルと同様の音響効果を電子鍵盤楽器の楽音に与える。
【0018】
シャーシ10は、ABS樹脂などの樹脂材料から形成される上シャーシ10aと下シャーシ10bとにより構成される。シャーシ10は、上シャーシ10aと下シャーシ10bとが上下に重ね合わせて組み付けられることにより、第1ばね50、センサ60及び回路基板70を組み込むための内部空間Sを有する中空の箱状に形成される。なお、回路基板70からは、ペダル装置1を電子鍵盤楽器に接続するための接続ケーブル(図示せず)が延出している。
【0019】
第1ペダル20、第2ペダル30及び第3ペダル40は、アコースティックピアノにおけるソフトペダル、ソステヌートペダル及びダンパーペダルに対応する。各ペダル20,30,40は、真鍮や鉄などの金属材料によって長尺の板状に形成されており、前後方向に長手となるように配設されている。
図1及び
図2に示すように、各ペダル20,30,40は、後端部側がシャーシ10に支持されると共に、前端部側がシャーシ10の前方に露出している。各ペダル20,30,40において、シャーシ10に支持される支持位置は後端部側に位置し、演奏者によって踏み込み操作される操作位置は前端部側に位置している。各ペダル20,30,40は、前端部側の操作位置において演奏者によって踏み込み操作されることにより、シャーシ10に支持された後端部側の支持位置を支点として前端部が上限位置と下限位置との間で上下する範囲内で回動可能となっている。
【0020】
図2に示す符号A20,A30,A40は、それぞれ、各ペダル20,30,40の回動軸を示している。
図2に示すように、回動軸A20,A30,A40は左右方向と平行となるように設けられている。ここで、各ペダル20,30,40が踏み込み操作される前の状態(
図11(a)及び
図12(a)参照)を初期状態と称する。即ち、各ペダル20,30,40が初期状態にあるとき、踏み込み量は0であり、各ペダル20,30,40の前端部は上限位置にある。各ペダル20,30,40は、踏み込まれることで前端部が下がるように回動する。そして、踏み込み量が上限値に達すると、各ペダル20,30,40の前端部が下限位置に至る(
図11(b)及び
図12(c)参照)。この、各ペダル20,30,40の前端部が下限位置にある状態を、最大踏み込み状態と称する。また、各ペダル20,30,40は、後述する第1ばね50によって初期状態に復帰する方向に付勢されており、踏み込み解除後に前端部が上がるように回動することで最大踏み込み状態から初期状態に復帰する。踏み込み操作において、各ペダル20,30,40の前端部が下がる行程を往行程とし、前端部が上がる行程を復行程とする。また、各ペダル20,30,40の回動軸A20,A30,A40回りの回動方向について、往行程において前端部側が下がるように各ペダル20,30,40が回動する方向を第1方向R1とする。反対に、第1方向R1に対向する方向、即ち、復行程において前端部が上がるように各ペダル20,30,40が回動する方向を第2方向R2とする。
図3~
図5に、第1方向R1と第2方向R2を示す。
【0021】
図2に示すように、各ペダル20,30,40の下方には、第1ばね50が配設されている。第1ばね50は、各ペダル20,30,40を第2方向R2へ回動させようとする付勢力を各ペダル20,30,40の踏み込み量に応じて各ペダル20,30,40に付与するものであり、コイル状の圧縮ばねにより構成されている。第1ばね50は、各ペダル20,30,40の下方において伸縮方向が上下方向と一致するように立設されており、予圧縮された(与圧された)状態でシャーシ10と各ペダル20,30,40との間で保持されている。第1ばね50は、各ペダル20,30,40の踏み込み操作に伴って圧縮されることにより、その踏み込み量に応じた付勢力(以下「第1の付勢力」と称す)を弾性力によって各ペダル20,30,40に付与する。この付勢力は、踏み込み操作において、踏み込みに対抗する反力として作用する。第1ばね50は、「第1付勢手段」の異例である。
【0022】
また、各ペダル20,30,40の下方には、センサ60が配設されている。より詳細には、センサ60は、各ペダル20,30,40の下方に配設された回路基板70に搭載されており、各ペダル20,30,40の配置に対応する3か所の位置にそれぞれ配設されている。センサ60は、各ペダル20,30,40の踏み込み量を検出すると共に、その踏み込み量に応じた抵抗値を出力するものである。センサ60は、各ペダル20,30,40の踏み込み操作に伴って回動するレバー部61と、レバー部61の回動量、即ち、各ペダル20,30,40の踏み込み量に応じた抵抗値を出力する可変抵抗器(図示せず)とを備えて構成されている。このセンサ60から各ペダル20,30,40の踏み込み量に応じた抵抗値が出力されることにより、その抵抗値に応じた電圧値が接続ケーブル(図示せず)を介して電子鍵盤楽器に出力される。その結果、各ペダル20,30,40の踏み込み量に応じた音響効果が電子鍵盤楽器の楽音に与えられる。
【0023】
図2~
図5に示すように、シャーシ10の内部空間Sの後方側には、第1ペダル20、第2ペダル30及び第3ペダル40の配置にそれぞれ対応する3か所の位置に支持部11が設けられている。支持部11は、各ペダル20,30,40を支持するための部位であり、上シャーシ10aに形成された凸状の上支部11aと下シャーシ10bに形成された下支部11bとにより構成されている。
【0024】
また、シャーシ10の前面には、第1ペダル20、第2ペダル30及び第3ペダル40の配置にそれぞれ対応する3か所の位置に開口部12が設けられている。開口部12は、各ペダル20,30,40の前端部をシャーシ10の前方側に露出させるための部位である。開口部12は、上シャーシ10aに開口形成される正面視略矩形状の上口部12aと下シャーシ10bに開口形成される正面視略矩形状の下口部12bとにより構成されている。また、開口部12の上面及び下面には、クッション13,14が貼付されている。クッション13,14は、各ペダル20,30,40の回動を規制する部材であり、フェルトや発泡ウレタン等の緩衝材から構成されている。各ペダル20,30,40がクッション13に当接することにより、各ペダル20,30,40がそれ以上第2方向へ回動することが規制される。また、各ペダル20,30,40がクッション14に当接することにより、各ペダル20,30,40がそれ以上第1方向へ回動することが規制される。これにより、各ペダル20,30,40の上限位置及び下限位置が決定されている。また、各ペダル20,30,40がクッション13,14に当接する際の衝撃がクッション13,14自体によって緩和されるため、衝撃音の発生が抑制される。
【0025】
図2に示すように、第1ペダル20、第2ペダル30及び第3ペダル40の後端部の上面には、幅方向(左右方向)に沿って溝部20a,30a,40aが形成されている。溝部20a,30a,40aは、シャーシ10の支持部11に支持される部位であり、断面略U字状の窪みとして形成されている。溝部20a,30a,40aが形成する溝には、
上シャーシ10aの上支部11aが収容される。各ペダル20,30,40は、シャーシ10の上支部11aと下支部11bとによって溝部20a,30a,40aが挟持されることにより、シャーシ10に片持ちの状態で溝部20a,30a,40aを支点として回動可能に支持される。これにより、各ペダル20,30,40の回動軸A20,A30,A40が、それぞれ形成されている。
【0026】
また、
図3及び
図4に示すように、各ペダル20,30,40の下面であって、シャーシ10の内部空間Sに収容される領域には、アクチュエータ21,31,41がねじ15によって着脱可能に取り付けられている。アクチュエータ21,31,41は、各ペダル20,30,40の踏み込み量をセンサ60に伝達すると共に、その踏み込み量を規制するためのものであり、ポリアセタール樹脂などの樹脂材料から長尺の板状に形成されている。
【0027】
以下、アクチュエータ21,31,41の詳細構成について説明する。なお、アクチュエータ31は、アクチュエータ21と同一の構成であるので、アクチュエータ31の詳細構成については説明を省略する。
【0028】
まず、アクチュエータ21について説明する。
図3及び
図6(a)に示すように、アクチュエータ21の下面には、保持部21a、伝達部21b及びストッパー部21cが設けられている。保持部21aは、第1ばね50を保持するための部位であり、前後方向においてアクチュエータ21の略中央に突設されている。第1ペダル20には、保持部21aにおいて第1ばね50による第1の付勢力が付与される。
【0029】
伝達部21bは、第1ペダル20の踏み込み量をセンサ60に伝達するための部位であり、センサ60のレバー部61と対向する位置に突設されている。伝達部21bは、第1ペダル20の踏み込み操作においてセンサ60のレバー部61を押圧することにより、第1ペダル20の踏み込み量をセンサ60に伝達する。その結果、第1ペダル20の踏み込み量に応じた電圧値が電子鍵盤楽器に出力される。
【0030】
ストッパー部21cは、第1ペダル20の踏み込み量を規制するための部位であり、アクチュエータ21の前端部であってクッション14と対向する位置に突設されている。ストッパー部21cがクッション14に当接することにより、第1ペダル20の第1方向R1への回動が規制され、ペダル20の下限位置が決定されている。これにより、第1ペダル20の踏み込み量の上限が決定される。
【0031】
次に、アクチュエータ41について説明する。
図4及び
図6(b)に示すように、アクチュエータ41の下面には、保持部41a、伝達部41b及びストッパー部41cが設けられている。保持部41aは、第1ばね50を保持するための部位であり、アクチュエータ41の略中央部に形成されている。第3ペダル40には、保持部41aにおいて第1ばね50による第1の付勢力が付与される。
【0032】
伝達部41bは、第3ペダル40の踏み込み量をセンサ60に伝達するための部位であり、センサ60のレバー部61と対向する位置に突設されている。伝達部41bは、第3ペダル40の踏み込み操作に伴ってセンサ60のレバー部61を押圧することにより、第3ペダル40の踏み込み量をセンサ60に伝達する。その結果、第3ペダル40の踏み込み量に応じた電圧値が電子鍵盤楽器に出力される。
【0033】
ストッパー部41cは、第3ペダル40の踏み込み量を規制するための部位であり、アクチュエータ41の前端部であってクッション14と対向する位置に突設されている。ストッパー部41cがクッション14に当接することにより、第3ペダル40の第1方向R
1への回動が規制され、第3ペダル40の下限位置が決定されている。これにより、第3ペダル40の踏み込み量の上限が決定される。また、ストッパー部41cは、第2付勢力付与機構42を組み込むための内部空間Pを形成するように、下面の中央部が開放した中空形状を有している。
【0034】
第2付勢力付与機構42は、踏み込み操作における第3ペダル40の操作荷重を踏み込み途中で変化させるための機構であり、第2ばね43と可動ストッパー44とを含んで構成されている。第2付勢力付与機構42は、ストッパー部41cの内部空間Pに組み込まれることにより、アクチュエータ41と一体に第3ペダル40に取り付けられている。第2付勢力付与機構42は、「第2付勢手段」の一例である。
【0035】
第2ばね43は、第3ペダル40の踏み込み量が所定の踏み込み量(以下「規定量」と称す)を超えた場合に、第3ペダル40を第2方向R2に回動させようとする付勢力(以下、第2の付勢力)を第3ペダル40に付与するためのものである。なお、規定量は、踏み込み量の上限値未満となるように設定されている。第2ばね43は、コイル状の圧縮ばねにより構成されており、内部空間Pにおいて伸縮方向が上下方向と一致するように立設されている。より詳細には、第2ばね43は、予圧縮された(与圧された)状態で第3ペダル40と可動ストッパー44との間で保持されている。第2ばね43は、第3ペダル40の踏み込み量が規定量を超えた場合に、第3ペダル40の踏み込みに伴って圧縮されることにより、その踏み込み量に応じた第2の付勢力を弾性力によってペダル40に付与する。この付勢力は、踏み込み操作において踏み込みに対抗する反力として作用する。
【0036】
可動ストッパー44は、第2ばね43を保持するものであり、ABS樹脂などの樹脂材料から上面が開放した中空形状を有して形成されている。可動ストッパー44は、初期状態において、第2ばね43によって付勢されることにより、ストッパー部41cの下面よりも下方に突出している。可動ストッパー44は、第3ペダル40の踏み込み量が規定量に達したときに、クッション14に当接し、第3ペダル40が規定量を超えて更に踏み込まれた場合に、第2ばね43を圧縮しつつストッパー部41cの内部空間Pに進入する。第3ペダル40が規定量を超えて踏み込まれた場合には、可動ストッパー44の内部に第2ばね43が収容される。
【0037】
可動ストッパー44の上縁部には、鍔部44aが設けられている。鍔部44aは、可動ストッパー44の下限位置を規制するための部位であり、前後左右に張り出して形成されている。可動ストッパー44は、この鍔部44aがストッパー部41cの内側底面に当接することにより、下方側への移動が規制され、その下限位置が規制される。また、鍔部44aの下面には、フェルトや発泡ウレタン等の緩衝材から構成されるクッション45が貼付されている。可動ストッパー44は、このクッション45を介して鍔部44aがストッパー部41cの内側底面に当接することにより、その衝撃が緩和される。これにより、衝撃音を抑制することができる。
【0038】
ストッパー部41cの内部空間Pには、ガイド部41c1が設けられている。ガイド部41c1は、可動ストッパー44の進入を案内するための部位であり、可動ストッパー44の進入方向に延設されている。可動ストッパー44は、このガイド部41c1に沿ってストッパー部41cの内部空間Pに進入することにより、その進入が案内される。これにより、可動ストッパー44のがたつきを防止して、第2ばね43を精度良く圧縮することができる。
【0039】
また、ストッパー部41cの前端部には、カバー部41c2が下方側へ突設されている。カバー部41c2は、可動ストッパー44の前方側を覆うための部位であり、これにより、外観上の見た目を向上させると共に埃の侵入や指の挿入などの外的要因から可動スト
ッパー44が保護されている。
【0040】
図7は、実施形態に係るヒステリシス付与構造100を示す斜視図であり、
図8は、ダンパー80と第1係合部材91との関係を示す図であり、
図9は、上シャーシ10aの下面図である。
図9中において、ダンパー80を破線で示している。実施形態に係るペダル装置1は、踏み込み操作において第3ペダル40に作用する操作荷重にヒステリシスを付与するための構造(以下、ヒステリシス付与構造100)を備えている。
図7に示すように、ヒステリシス付与構造100は、ダンパー80と係合手段90とを含んで構成されている。また、係合手段90は、ダンパー80側に設けられた第1係合部材91と、第3ペダル40側に設けられた第2係合部材92とを含んで構成されている。以下、
図2、
図5、
図7~
図9を参照して、ペダル装置1が備えるヒステリシス付与構造100について詳細に説明する。
【0041】
ダンパー80は、第3ペダル40の回動時に第3ペダル40の回動方向に対向する抵抗力を発生させるロータリーダンパーである。
図2に示すように、ダンパー80は、第2ペダル30と第3ペダル40との間に配設されており、係合手段90を介して第3ペダル40に連結されている。
図8に示すように、ダンパー80は、円柱状の外形を有する本体部81と、本体部81の軸方向における一端面に突設された変位部82と、他端面に突設された被係止部83とを有する。
【0042】
本体部81は、シャーシ10に固定されると共に変位部82に抵抗力を付与する部位である。変位部82は、本体部81に対して所定の相対変位が可能な部位である。本例では、変位部82は、所定の相対変位としての回動が可能に設けられている。
図7に示す符号A80は、変位部82の回動軸を示す。回動軸A80は、本体部81の中心軸と一致している。また、変位部82は、回動軸A80に直交する断面において略矩形状を有しており、後述する第1係合部材91の第1係合部材913に嵌入可能となっている。
【0043】
被係止部83は、シャーシ10に係止されることで、本体部81の回動を規制する部位である。被係止部83は、本体部81の中心軸に直交する断面において略矩形状を有しており、本体部81と一体に形成されている。
【0044】
図9に示すように、上シャーシ10aの下面には、ダンパー80を収容保持するための収容部16が設けられている。収容部16は、下方が開放した中空形状を有しており、本体部81に対して前後左右から当接することで本体部81のシャーシ10に対する前後左右の移動を規制している。また、収容部16は、本体部81と一体に形成された被係止部83を係止することで、本体部81のシャーシ10に対する回動を規制している。また、
図2及び
図5に示すように、板形状を有するホルダー801が本体部81に下方から当接した状態で収容部16に取り付けられることで、本体部81が上シャーシ10aとホルダー801との間に挟まれた状態となっている。これにより、本体部81のシャーシ10に対する上下移動が規制され、本体部81がシャーシ10に対して固定されている。一方で、変位部82が本体部81に対して回動軸A80回りに回動することが許容されている。
図2及び
図7に示すように、ダンパー80は、回動軸A80が第3ペダル40の回動軸A40と平行となるようにシャーシ10に配設される。
【0045】
次に、係合手段90について説明する。係合手段90は、第3ペダル40と変位部82とを係合することで第3ペダル40の回動に連動して変位部82に所定の相対変位としての回動をさせるためのものである。
図7に示すように、係合手段90は、ダンパー80の変位部82に装着された第1係合部材91と第3ペダル40の上面に突設された第2係合部材92とを含んで構成されている。
【0046】
第1係合部材91は、略円柱状の外形を有する連結部911を有する。第1係合部材91は、連結部911の中心軸が回動軸A80に一致するようにして配設される。
図8に示すように、連結部911の変位部82側の端面には、変位部82が嵌入可能な嵌入穴911aが穿設されており、連結部911に変位部82が嵌入することで第1係合部材91が変位部82に装着されている。このとき、変位部82が矩形状断面を有することから、第1係合部材91の変位部82に対する回動が規制されている。そのため、第1係合部材91が回動軸A80回りに回動すると、それに伴って変位部82も回動軸A80回りに第1係合部材91の回動方向と同じ方向に回動する。
【0047】
また、第1係合部材91は、連結部911の第3ペダル40側の端面に突設されたスライド軸部912を有する。スライド軸部912は、円柱状の外形を有している。
図7に示すように、スライド軸部912の中心軸と回動軸A80は、互いに平行であって、且つ、スライド軸部912が回動軸A80に対して偏心配置されている。そのため、スライド軸部912が回動軸A80回りに周回すると、それに伴って第1係合部材91及び変位部82が回動軸A80回りにスライド軸部912の周回方向と同じ方向に回動する。
【0048】
第2係合部材92は、左右方向と直交する板形状を有して第3ペダル40の上面に突設されている。第2係合部材92は、アクチュエータ41の上面に形成されており、アクチュエータ41が第3ペダル40の下面に取り付けられることで、第3ペダル40に形成された貫通孔40bを挿通して第3ペダル40の上面に突出する。第2係合部材92には、スライド軸部912を受け入れると共に第3ペダル40の回動軸A40回りの回動に伴ってスライド軸部912を回動軸A80回りに周回させるためのガイド孔921が設けられている。ガイド孔921は、第2係合部材92の左右両面を貫通する貫通孔であり、第3ペダル40の前後方向に長尺な長孔に形成されている。
図7に示すように、ガイド孔921の内壁は、上下に対向すると共に互いに平行な上壁921aと下壁921bとを有する。上壁921aと下壁921bとの間隔寸法、即ち、ガイド孔921の短手方向の幅寸法は、スライド軸部912の直径寸法と略同等又は若干大きな寸法となっている。これにより、スライド軸部912がガイド孔921を長手方向(前後方向)にスライド可能となっている。
【0049】
次に、第3ペダル40の踏み込み操作に伴うヒステリシス付与構造100の挙動について説明する。
図10A~
図10Dは、第3ペダル40が回動軸A40回りに回動したときのヒステリシス付与構造100の挙動を説明するための図である。
図10Aは、第3ペダル40が初期状態にある様子を示し、
図10Bは、第3ペダル40の往行程における様子を示し、
図10Cは、第3ペダル40が最大踏み込み状態に至った様子を示し、
図10Dは、第3ペダル40の復行程における様子を示す。
【0050】
図10Aに示すように、第3ペダル40が初期状態にあるとき、スライド軸部912がガイド孔921の下壁921bに支持されている。これにより、第1係合部材91は、スライド軸部912が回動軸A80の前方であって回動軸A80と略同じ高さに位置する姿勢に維持されている。ここで、スライド軸部912の回動軸A80回りの周回方向、即ち、第1係合部材91及び変位部82の回動軸A80回りの回動方向について、スライド軸部912が
図10Aに示す状態から下がるように回動する方向を第3方向R3とする。また、その反対方向、即ち、スライド軸部912が
図10Cに示す状態から上がるように回動する方向を、第4方向R4とする。
図10A~
図10Dに第3方向R3及び第4方向R4を示す。
【0051】
図10Aに示す状態から第3ペダル40の踏み込み操作が開始し、第3ペダル40が回動軸A40回りに第1方向に回動することにより、
図10Bに示すように、ガイド孔921の上壁921aがスライド軸部912に上方から押し当たる。これにより、第3ペダル
40の往行程において、スライド軸部912は、回動軸A80回りに第3方向R3へ周回する。これに伴い、第1係合部材91及び変位部82も回動軸A80回りに第3方向R3へ回動する。また、スライド軸部912は、ガイド孔内において、上壁921aに沿って摺動しながら後退する。
【0052】
図10Cに示すように、第3ペダル40が最大踏み込み状態となることで、スライド軸部912が下限位置に至る。このときのスライド軸部912の回動軸A80に対する位置は、回動軸A80の前方であって回動軸A80よりも低い位置となる。また、このときのスライド軸部912のガイド孔921に対する位置は、ガイド孔内において最も後退した位置となる。
【0053】
図10Dに示すように、第3ペダル40の復行程においては、第3ペダル40が回動軸A40回りに第2方向R2へ回動することにより、ガイド孔921の下壁921bがスライド軸部912に下方から押し当たる。これにより、第3ペダル40の復行程において、スライド軸部912は、回動軸A80回りに第4方向R4へ周回する。これに伴い、第1係合部材91及び変位部82も回動軸A80回りに第4方向R4へ回動する。また、スライド軸部912は、ガイド孔内において、下壁921bを摺動しながら前進する。そして、第3ペダル40の復行程が終了し、第3ペダル40が初期状態に復帰すると、
図10Aに示す状態に戻る。
【0054】
以上のようにして、ヒステリシス付与構造100は、第3ペダル40と変位部82とを係合する係合手段90によって、第3ペダル40の回動に連動して変位部82を回動させることができる。ここで、実施形態に係るダンパー80は、所謂一方向式のロータリーダンパーである。即ち、ダンパー80は、第3ペダル40が第2方向R2へ回動する際の変位部82の回動方向(即ち、本例における第4方向R4)へ変位部82が回動する際に、本体部81が変位部82に抵抗を付与する構成となっている。このような特性を有するダンパー80としては、例えば、本体部81内部に保持したオイルの流体抵抗を利用することで抵抗力を発生させるオイル式のロータリーダンパーが挙げられる。但し、ダンパー80は、例えば、本体部81と変位部82との摩擦抵抗を利用することで抵抗力を発生させる摩擦式のロータリーダンパーであってもよい。
【0055】
このように、ダンパー80が第3ペダル40の第2方向R2への回動時に変位部82に対して抵抗力を付与することで、当該抵抗力が変位部82と第3ペダル40とを連結する係合手段90を介して第3ペダル40に伝達される。より詳しくは、変位部82の第4方向R4への回動に対抗する抵抗力は、変位部82に装着された第1係合部材91の連結部911に対して第2方向R2への周回に対抗する抵抗力として付与される。そして当該抵抗力は、連結部911に当接しているガイド孔921の下壁921bに作用する。これにより、ダンパー80は、第3ペダル40の復行程において、第3ペダル40に対して第2方向R2への回動に対抗する抵抗力を付与することができる。
【0056】
次に、
図11及び
図12を参照して、第1ペダル20,第2ペダル30及び第3ペダル40が踏み込み操作された場合の動作について説明する。
図11は、
図1のIII-III線におけるペダル装置1の断面図であり、
図11(a)は、第1ペダル20の初期状態を、
図11(b)は、第1ペダル20の最大踏み込み状態を、それぞれ示している。また、
図12は、
図1のIV-IV線におけるペダル装置1の断面図であり、
図11(a)は、第3ペダル40の初期状態を、
図11(b)は、第3ペダル40の規定状態を、
図11(c)は、第3ペダル40の最大踏み込み状態を、それぞれ示している。
【0057】
まず、
図11を参照して、第1ペダル20が踏み込み操作された場合の動作について説明する。なお、第2ペダル30が踏み込み操作された場合の動作は、第1ペダル20が踏
み込み操作された場合の動作と同様であるので、第2ペダル30が踏み込み操作された場合の動作については説明を省略する。
【0058】
図11(a)に示す初期状態から、第1ペダル20が踏み込み操作されると、第1ペダル20は、回動軸A20回りに第1方向R1へ回動する(往行程)。この場合、アクチュエータ21の伝達部21bによってセンサ60のレバー部61が押圧されることにより、第1ペダル20の踏み込み量がセンサ60によって検出される。その結果、第1ペダル20の踏み込み量に応じた電圧値が電子鍵盤楽器に出力され、電子鍵盤楽器の楽音にアコースティックピアノのソフトペダルと同様の音響効果が与えられる。このとき、第1ペダル20には、第1ペダル20を第2方向R2へ回動させようとする第1の付勢力が踏み込み操作に対抗する反力として第1ばね50によって付与される。これにより、アコースティックピアノのソフトペダルに近い操作感覚を演奏者に与えることができる。
【0059】
そして、
図11(b)に示す最大踏み込み状態になると、アクチュエータ21のストッパー部21cがクッション14に当接することにより、第1ペダル20の第1方向R1への回動が規制される。
【0060】
一方、
図11(b)に示す最大踏み込み状態から、第1ペダル20の踏み込みが解除されると、第1ペダル20は、第1ばね50の付勢力によって溝部20aを支点として第2方向R2へ回動する(復行程)。そして、
図11(a)に示す初期状態に復帰すると、クッション13に当接することにより、第1ペダル20の第2方向R2への回動が規制される。
【0061】
次に、
図12を参照して、第3ペダル40が踏み込み操作された場合の動作について説明する。
図12(a)に示す初期状態から、第3ペダル40が踏み込み操作されると、第3ペダル40は、回動軸A40回りに第1方向R1へ回動する(往行程)。この場合、アクチュエータ41の伝達部41bによってセンサ60のレバー部61が押圧されることにより、第3ペダル40の踏み込み量がセンサ60によって検出される。その結果、第3ペダル40の踏み込み量に応じた電圧値が電子鍵盤楽器に出力され、電子鍵盤楽器の楽音にアコースティックピアノのダンパーペダルと同様の音響効果が与えられる。このとき、第3ペダル40には、第3ペダル40を第2方向R2へ回動させようとする第1の付勢力が踏み込み操作に対抗する反力として第1ばね50によって付与されている。また、往行程においては、スライド軸部912がガイド孔921の上壁921aを摺動しながらスライド軸部912が第3方向R3へ周回する。これにより、第3ペダル40の回動に連動して第1係合部材91及び第1係合部材91が装着された変位部82も第3方向R3へ回動する。
【0062】
そして、往行程において、
図12(b)に示す規定状態(第3ペダル40の踏み込み量が規定量に達した状態)になると、第2付勢力付与機構42の可動ストッパー44がクッション14に当接する。また、
図12(b)に示す規定状態から更に第3ペダル40が踏み込まれると、可動ストッパー44が第2ばね43を圧縮しつつアクチュエータ41のストッパー部41cに進入する。このとき、第3ペダル40には、第1ばね50による第1の付勢力に加え、第3ペダル40を第2方向R2へ回動させようとする第2の付勢力が踏み込み操作に対抗する反力として第2ばね43によって付与される。
【0063】
そして、
図12(c)に示す最大踏み込み状態になると、アクチュエータ41のストッパー部41cがクッション14に当接することにより、第3ペダル40の第1方向R1への回動が規制される。
【0064】
一方、
図12(c)に示す最大踏み込み状態から、第3ペダル40の踏み込み操作が解
除されると、第3ペダル40は、第1ばね50及び第2ばね43の付勢力によって溝部40aを支点として第2方向R2へ回動する(復行程)。そして、第3ペダル40の踏み込み量が規定量よりも小さくなると、第2付勢力付与機構42の可動ストッパー44がクッション14から離れ、第2ばね43の弾性力による第3ペダル40を第2方向R2へ回動させようとする第2の付勢力の付与が解除される。そして、
図12(a)に示す初期状態になると、クッション13に当接することにより、第3ペダル40の上方側への回動が規制される。
【0065】
ここで、復行程においては、第3ペダル40の第2方向R2への回動に伴ってスライド軸部912がガイド孔921の下壁921bを摺動しながらスライド軸部912が第4方向R4へ周回する。これにより、第3ペダル40の回動に連動して第1係合部材91及び第1係合部材91が装着された変位部82も第4方向R4へ回動する。このとき、上述のように、ダンパー80において変位部82に対して第4方向R4への回動に対抗する抵抗力が付与される。これにより、当該抵抗力が変位部82と第3ペダル40とを連結する係合手段90を介して、第3ペダル40の第2方向R2への回動に対抗する抵抗力として第3ペダル40に付与される。そのため、復行程において最大踏み込み状態から規定状態に至るまでの間には、第3ペダル40を第2方向R2へ回動させようとする第1の付勢力及び第2の付勢力と第3ペダル40の第2方向R2への回動に対抗する抵抗力とが第3ペダル40に付与されている。また、復行程における規定状態から初期状態に至るまでの間には、第3ペダル40を第2方向R2へ回動させようとする第1の付勢力と、第3ペダル40の第2方向R2への回動に対抗する抵抗力とが第3ペダル40に付与されている。
【0066】
次に、
図13を参照して、第3ペダル40の踏み込み量と操作荷重との関係について説明する。
図13は、第3ペダル40の踏み込み量と操作荷重との関係を示したグラフである。なお、
図13において、初期状態から規定状態に至るまでの範囲を区間Aで示す。また、規定状態から最大踏み込み状態に至るまでの範囲を区間Bで示す。
【0067】
まず、往行程について説明する。往行程において初期状態から規定状態に至るまでの間は、第3ペダル40を第2方向R2へ回動させようとする第1の付勢力のみが第1ばね50の弾性力によって付与されているため、第3ペダル40の操作荷重は、踏み込み量の増加に伴って直線的に増加する。また、往行程における規定状態から最大踏み込み状態に至るまでの間は、第1の付勢力に加え、第3ペダル40を第2方向R2へ回動させようとする第2付勢力が第2ばね43の弾性力によって付与されている。そのため、第3ペダル40の操作荷重は、初期状態から規定状態に至るまでの間よりも大きな変化率で、踏み込み量の増加に伴って直線的に増加する。これにより、往行程において、第3ペダル40の操作荷重を踏み込み量に応じて段階的に変化させることができる。
【0068】
次に、復行程について説明する。復行程において最大踏み込み状態から規定状態に至るまでの間には、第3ペダル40を第2方向R2へ回動させようとする第1の付勢力及び第2の付勢力と第3ペダル40の第2方向R2への回動に対抗する抵抗力とが第3ペダル40に付与されている。そのため、復行程における最大踏み込み状態から規定状態に至るまでの操作荷重は、往行程における規定状態から最大踏み込み状態に至るまでの操作荷重よりも小さくなっている。
【0069】
また、復行程における規定状態から初期状態に至るまでの間には、第3ペダル40を第2方向R2へ回動させようとする第1の付勢力と第3ペダル40の第2方向R2への回動に対抗する抵抗力とが第3ペダル40に付与されている。そのため、復行程における規定状態から初期状態に至るまでの操作荷重は、往行程における初期状態から規定状態に至るまでの操作荷重よりも小さくなっている。なお、第3ペダル40の操作荷重は、最大踏み込み状態から規定状態に至るまでの間において、規定状態から初期状態に至るまでの間よ
りも大きな変化率で、踏み込み量の減少に伴って直線的に減少する。これにより、復行程においても、第3ペダル40の操作荷重を踏み込み量に応じて段階的に変化させることができる。
【0070】
このように、ペダル装置1の踏み込み操作では、復行程において、ダンパー80が第3ペダル40の第4方向R4への回動に対抗する抵抗力を第3ペダルに付与している。即ち、ダンパー80によって復行程におけるペダル荷重を軽減させている。そのため、復行程における第3ペダル40の操作荷重を往行程における操作荷重よりも小さくなっている。これにより、第3ペダル40の踏み込み操作において、アコースティックピアノのダンパーペダルに近い操作感覚を得ることができる。更に、第3ペダル40の操作荷重が踏み込み量に応じて段階的に変化することから、アコースティックピアノのダンパーペダルにより近い操作感覚を実現することができる。
【0071】
<作用・効果>
以上のように、実施形態に係るペダル装置1は、第3ペダル40における第2方向R2への回動時において、第3ペダル40の回動に対抗する抵抗力を第3ペダル40に付与するダンパー80を備えている。これによると、第3ペダル40が第2方向R2へ回動する際(復行程)における操作荷重を、第1方向R1へ回動する際(往行程)における操作荷重よりも小さくすることができる。
【0072】
アコースティックピアノのダンパーペダルを踏み込み操作した場合、操作荷重にヒステリシスが生じ、踏み込み操作の復行程において往行程よりも操作荷重が小さくなる傾向がある。実施形態に係るペダル装置1によると、復行程における操作荷重を、往行程における操作荷重よりも小さくすることができる。そのため、第3ペダル40の踏み込み操作において、アコースティックピアノのダンパーペダルと同様のヒステリシス特性を操作荷重に付与することができる。その結果、アコースティックピアノのダンパーペダルに近い操作感覚を実現することができる。
【0073】
ここで、第3ペダル40に所定の部材を押し当てる構成とし、第3ペダル40の回動時に第3ペダル40と当該部材との間に生じる摩擦力によって第3ペダル40に抵抗力を付与する構成とした場合、以下のような問題が生じる。即ち、摩擦力によって第3ペダル40や当該部材が互いの接触部分において磨耗することで、長期に亘って所望の荷重特性が得られないという問題が生じる。一方、実施形態に係るペダル装置1は、耐久性の高いダンパー80によって第3ペダル40に抵抗力を付与する構成としている。そのため、上述した問題の発生を抑制することができ、長期に亘って所望の荷重特性が得ることができる。即ち、アコースティックピアノのダンパーペダルに近い操作感覚を長期間に亘って維持することができる。
【0074】
なお、実施形態では、ダンパー80が第3ペダル40における第2方向R2への回動時において、第3ペダル40の回動に対抗する抵抗力を第3ペダル40に付与する構成としたが、ダンパー80の構成はこれに限定されない。即ち、ダンパー80は、第3ペダル40における第1方向R1への回動時において、第3ペダル40の回動に対抗する抵抗力を第3ペダル40に付与する構成としてもよい。即ち、ダンパー80を、変位部82が第3方向R3へ回動する際に本体部81が変位部82に抵抗を付与する構成としてもよい。そのように構成した場合、往行程においてダンパー80が第3ペダル40の第1方向R1への回動に対抗する抵抗力を第3ペダルに付与することとなる。即ち、ダンパー80によって往行程におけるペダル荷重を増大させることとなるため、復行程における第3ペダル40の操作荷重を往行程における操作荷重よりも小さくことができる。また、ダンパー80は、例えば、所謂双方向型のダンパーであって、第3ペダル40における第1方向R1への回動時と第2方向R2への回動時の双方において第3ペダル40の回動に対抗する抵抗
力を第3ペダル40に付与してもよい。その場合、往行程においてはペダル荷重が増大され、復行程においてはペダル荷重が軽減されることとなるため、復行程における第3ペダル40の操作荷重を往行程における操作荷重よりも小さくことができる。即ち、ダンパー80は、第3ペダル40における第1方向R1への回動時と第2方向R2への回動時の少なくとも一方において、第3ペダル40の回動に対抗する抵抗力を第3ペダル40に付与すればよい。そうすることで、第3ペダル40の踏み込み操作において、アコースティックピアノのダンパーペダルと同様のヒステリシス特性を操作荷重に付与することができ、アコースティックピアノのダンパーペダルに近い操作感覚を実現することができる。
【0075】
但し、実施形態に係るペダル装置1は、ダンパーが第3ペダル40における第2方向R2への回動時においてペダルの回動に対抗する抵抗力を第3ペダル40に付与する構成としている。これによると、往行程においては、ダンパー80が操作荷重に寄与せず、復行程においてダンパー80によって操作荷重を軽減することとなる。そのため、第1ばね50や第2ばね43として、往行程において所定の荷重特性が得られるように設計されている既存のコイルばねを流用することができる。
【0076】
また、ダンパー80は、シャーシ10に固定される本体部81と、本体部81に対して所定の相対変位としての回動が可能な変位部82とを有している。また、ペダル装置1は、第3ペダル40と変位部82とを係合させ、第3ペダル40の回動に連動して変位部82に本体部81に対して相対的に回動をさせる係合手段90を備えている。そして、ダンパー80は、本体部81に対する変位部82の回動時に、変位部82の回動に対抗する抵抗力を本体部81から変位部82に付与する構成としている。こうすることで、第3ペダル40の回動に連動して、第3ペダル40の回動に対抗する抵抗力を第3ペダル40に付与することができる。
【0077】
なお、所定の相対変位としては、回転ではなく、並進を採用することもできる。ダンパー80は、例えば、ロータリーダンパーでなく、シリンダーダンパーのように変位部82が本体部81に対して並進することで、変位部82の並進に対抗する抵抗力を本体部81から変位部82に付与する構成としてもよい。
【0078】
ここで、実施形態に係るペダル装置1は、ダンパー80として変位部82が本体部81に対して相対的に回動することで本体部81が変位部82に抵抗力を付与するロータリーダンパーを採用している。そして、変位部82の回動軸A80が第3ペダル40の回動軸A40と平行となるようにダンパー80を設けている。これによると、ロータリーダンパーを寝かせる構成となるため、ペダル装置1が上下に嵩張ることを抑制することができる。
【0079】
また、係合手段90は、変位部82に設けられると共に変位部82の回動軸A80と偏心配置されるスライド軸部912と、第3ペダル40に設けられると共にスライド軸部912を受け入れるガイド孔921とを有している。そして、係合手段90は、第3ペダル40の回動に連動してスライド軸部912が回動軸A80回りに周回すると共にガイド孔921の内壁に沿って摺動することによって、変位部82が本体部81に対して回動する構成としている。これによれば、簡単な構造で、第3ペダル40の回動に連動して、第3ペダル40の回動に対抗する抵抗力を第3ペダル40に付与することができる。なお、スライド軸部912とガイド孔921が設けられる位置を逆にしてもよい。即ち、スライド軸部912を第3ペダル40側に設け、ガイド孔921を第1係合部材91(変位部82)側に設けてもよい。また、変位部82と第1係合部材91とが一体に形成されていてもよく、第2係合部材92と第3ペダル40とが一体に形成されていてもよい。
【0080】
更に、実施形態に係るペダル装置1では、第1ばね50が第3ペダル40の回動軸A4
0よりも演奏者によって踏み込み操作される操作位置側に配設され、係合手段90が回動軸A40と第1ばね50との間に配設されている。即ち、係合手段90を第1ばね50よりも回動軸A40寄りに配設している。ここで、第3ペダル40の回動範囲を同一とした場合、ガイド孔921の配設位置が回動軸A40から遠いほど、第3ペダル40の回動時におけるガイド孔921の上下のストロークがより長くなる。そして、第3ペダル40の回動範囲を同一としてガイド孔921のストロークが長くなると、ガイド孔921に受け入れられるためのスライド軸部912の回動軸A80に対する偏心量を大きくする必要が生じ、係合手段90の大型化を招く虞がある。従って、係合手段90の配設位置は、回動軸A40により近い方が好ましい。一方、第1ばね50については、所定の操作荷重を得るために必要な第1ばね50の付勢力は、てこの原理に基づき、回動軸A40に近いほど大きくなる。そのため、第1ばね50の配設位置を回動軸A40に近くすると所定の操作荷重を得るために弾性力が必要となり、第1ばね50の大型化を招く虞がある。従って、第1ばね50の配設位置は、回動軸A40からより遠い方が好ましい。実施形態に係るペダル装置1は、係合手段90を第1ばね50よりも回動軸A40寄りに配設することにより、係合手段90と第1ばね50の位置関係に起因する係合手段90及び第1バネの大型化を抑制することができる。
【0081】
なお、実施形態に係るヒステリシス付与構造100は、アコースティックピアノにおけるソフトペダルやソステヌートペダルに対応する、第1ペダル20や第2ペダル30にも適用することができる。即ち、ダンパー80が第1ペダル20及び第2ペダル30の第2方向R2への回動時において第1ペダル20及び第2ペダル30回動に対抗する抵抗力を付与する構成としてもよい。アコースティックピアノのソフトペダルやソステヌートペダルの踏み込み操作においても、ダンパーペダルと同様に、復行程において往行程よりも操作荷重が小さくなるヒステリシスが生じる傾向がある。そのため、ヒステリシス付与構造100を第1ペダル20や第2ペダル30に適用することで、アコースティックピアノのソフトペダルやソステヌートペダルに近い操作感覚を実現することができる。
【0082】
また、実施形態に係るペダル装置1は、第3ペダル40の踏込量が規定量を超えた場合に圧縮され、弾性力によって第2方向R2に第3ペダル40を付勢する第2付勢力付与機構42を更に備えている。これによると、第3ペダル40の操作荷重を踏み込み量に応じて段階的に変化させることができる。ここで、アコースティックピアノのダンパーペダルには、踏み込み操作におけるダンパーの掛かり初めにペダル荷重が急激に増大するという特性を有している。ペダル装置1によれば、アコースティックピアノのダンパーペダルにより近い操作感覚を実現することができる。
【0083】
上記実施形態で挙げた材質及び形状は一例であり、他の材質や形状を採用することは当然可能である。例えば、上記実施形態では、第1ペダル20、第2ペダル30及び第3ペダル40が真鍮や鉄などの金属材料から長尺の板状に形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、ステンレス鋼などの他の金属材料から長尺の板状に形成してもよいし、ABS樹脂やPOM樹脂などの樹脂材料から長尺の板状に形成してもよい。
【0084】
上記実施形態では、ペダル装置1が第1ペダル20、第2ペダル30及び第3ペダル40の3本のペダルを備えて構成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、第3ペダル40のみを備えて構成してもよく、第1ペダル20又は第2ペダル30と第3ペダル40との2本のペダルを備えて構成してもよい。或いは、第3ペダル40を含む4本以上のペダルを備えて構成してもよい。
【0085】
上記実施形態では、第1ペダル20及び第2ペダル30がアコースティックピアノのソフトペダル及びソステヌートペダルにそれぞれ相当したが、必ずしもこれに限られるもの
ではない。第1ペダル20及び第2ペダル30を、ソフトペダル及びソステヌートペダルに相当する以外の他の音響効果を電子鍵盤楽器の楽音に与えるように構成してもよい。
【0086】
上記実施形態では、第1ばね50及び第2ばね43がコイル状の圧縮ばねにより構成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。弾性力によって第3ペダル40に付勢力を付与可能な他の弾性体によって第1ばね50及び第2ばね43を構成してもよい。他の弾性体としては、例えば、ゴム状弾性体や樹脂材料から構成される弾性体などが例示される。
【0087】
上記実施形態で説明した構成は、目的を逸脱しない範囲内で種々の変形改良が可能であることは容易に推察できるものである。
【符号の説明】
【0088】
1 電子鍵盤楽器のペダル装置
10 シャーシ
10a 上シャーシ(シャーシの一部)
10b 下シャーシ(シャーシの一部)
14 クッション(規制手段)
20,30,40 ペダル
41 アクチュエータ
41b 伝達部
41c ストッパー部
42 第2反力付与機構(第2反力付与手段)
43 第2ばね(第2反力付与手段の一部)
44 可動ストッパー(第2反力付与手段の一部)
50 第1ばね(第1反力付与手段)
60 センサ
70 基板
80 ダンパー
81 本体部
82 変位部
90 係合手段
91 第1係合部材
912 スライド軸部
92 第2係合部材
921 ガイド孔
100 ヒステリシス付与構造