(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】エアゾール型の水中油型乳化化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/73 20060101AFI20230314BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20230314BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20230314BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20230314BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20230314BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20230314BHJP
A61K 8/27 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/02
A61K8/06
A61Q17/04
A61K8/31
A61K8/86
A61K8/27
(21)【出願番号】P 2019056725
(22)【出願日】2019-03-25
【審査請求日】2022-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【氏名又は名称】坂本 智弘
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 百合香
【審査官】松本 要
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第03/082225(WO,A1)
【文献】特開2001-220338(JP,A)
【文献】特開2011-136965(JP,A)
【文献】特開2011-136966(JP,A)
【文献】特表平11-503760(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)分子量が1万以上である多糖系化合物、
(B)界面活性剤、
(C)紫外線散乱剤、および
(D)液化ガスを含有し、
前記(D)液化ガスが乳化されている、エアゾール型の水中油型乳化化粧料
であって、
前記(A)分子量が1万以上である多糖系化合物の含有量が、前記(D)液化ガスを除く成分の総重量の0.01~3質量%であり、
前記(B)界面活性剤の含有量が、前記(D)液化ガスを除く成分の総重量の0.1~5質量%であり、
前記(C)紫外線散乱剤の含有量が、前記(D)液化ガスを除く成分の総重量の2.5~30質量%であり、
前記(D)液化ガスの含有量が、20~80質量%であり、
前記(A)分子量が1万以上である多糖系化合物が、多糖類を基本骨格とし、炭素数6以上の直鎖または分岐のアルキル基またはアルケニル基を含有する基、または、カルボン酸基(カルボキシ基)またはカルボン酸金属塩基を含有する基を側鎖に有し、前記(A)分子量が1万以上である多糖系化合物の25℃における水への溶解度が、0.001質量%以上であるものである、化粧料。
【請求項2】
前記(B)界面活性剤が、非イオン性界面活性剤である、請求項1
に記載の化粧料。
【請求項3】
前記(B)界面活性剤が、9以上のHLB値を有する非イオン性界面活性剤である、請求項
2に記載の化粧料。
【請求項4】
前記(C)紫外線散乱剤が、疎水化処理されたものである、請求項1~
3のいずれか一項に記載の化粧料。
【請求項5】
前記(C)紫外線散乱剤が、表面が疎水化処理された金属酸化物の微粒子である、請求項
4に記載の化粧料。
【請求項6】
前記(D)液化ガスが、炭素数3~5の脂肪族炭化水素である、請求項1~
5のいずれか一項に記載の化粧料。
【請求項7】
日焼け止め化粧料である、請求項1~
6のいずれか一項に記載の化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線散乱剤を含有しており、高い紫外線防御能(高SPF及びPA)を有し、かつ、安定性および使用性にも優れたエアゾール型の水中油型乳化化粧料、特に日焼け止め化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
液化ガスが乳化しているエアゾール型の乳化化粧料は、吐出すると、破泡によってパチパチと弾ける音を発するフォームを形成し、その弾ける感触や音で、爽快な心地よい使用感が得られる。このようなエアゾール型の乳化化粧料として、特許文献1には、セルロース系増粘剤(具体的には、ヒドロキシエチルセルロース)と架橋型アクリル系増粘剤を含有する水性原液、および炭素数が3~5である脂肪族炭化水素とジメチルエーテルを含有する液化ガスからなり、水中油型エマルジョンを形成することを特徴とするゲルスプレー用エアゾール組成物が開示されている。
【0003】
水中油型乳化化粧料は、油中水型と比較して、みずみずしく、さっぱりした使用感触を与える基剤として化粧料に広く用いられている。水中油型乳化基剤を日焼け止め化粧料に用いる場合、内相(油相)に紫外線吸収剤および/または紫外線散乱剤を配合するのが一般的であり、高い紫外線防御能(高SPF及びPA)を達成するためには、紫外線散乱剤を用いることが望ましい。
【0004】
ここで、一般に、紫外線吸収剤は油溶性であり、水中油型乳化化粧料の内相(油相)に配合することが容易である一方、紫外線散乱剤は粉末、特には疎水化処理された粉末であり、水中油型乳化化粧料の内相(油相)に配合すると、乳化系が不安定になる傾向がある。そのため、水中油型乳化化粧料の内相(油相)に紫外線散乱剤を配合する場合、紫外線散乱剤の凝集を防止し、乳化系を安定化させる目的で、例えば、外相(水相)に水溶性増粘剤を配合する、あるいは、内相(油相)に分散剤を配合すること等が行われている。
【0005】
しかしながら、液化ガスが乳化しているエアゾール型の水中油型乳化化粧料の場合、乳化している液化ガスの影響により、紫外線散乱剤のような粉末、特に疎水化処理された粉末を内相(油相)に配合すると、その凝集を防止し、乳化系を安定に維持することは極めて困難である。その結果として、紫外線散乱剤が内相(油相)に配合された、液化ガスが乳化しているエアゾール型の水中油型乳化化粧料を得ることは極めて困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、紫外線散乱剤を含有しており、高い紫外線防御能(高SPF及びPA)を有し、かつ、安定性および使用性にも優れた、液化ガスが乳化しているエアゾール型の水中油型乳化化粧料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の各項に関する。
【0009】
[1] (A)分子量が1万以上である多糖系化合物、(B)界面活性剤、(C)紫外線散乱剤、および(D)液化ガスを含有し、前記(D)液化ガスが乳化されている、エアゾール型の水中油型乳化化粧料。
[2] 前記(D)液化ガスの含有量が、20~80質量%である、前記項[1]に記載の化粧料。
[3] 前記(A)分子量が1万以上である多糖系化合物の25℃における水への溶解度が、0.001質量%以上である、前記項[1]または[2]に記載の化粧料。
[4] (A)分子量が1万以上である多糖系化合物が、多糖類を基本骨格とし、炭素数6以上の直鎖または分岐のアルキル基またはアルケニル基を含有する基、または、カルボン酸基(カルボキシ基)またはカルボン酸金属塩基を含有する基を側鎖に有するものである、前記項[1]~[3]のいずれか一項に記載の化粧料。
[5] 前記(B)界面活性剤が、非イオン性界面活性剤である、前記項[1]~[4]のいずれか一項に記載の化粧料。
[6] 前記(B)界面活性剤が、9以上のHLB値を有する非イオン性界面活性剤である、前記項[5]に記載の化粧料。
[7] 前記(C)紫外線散乱剤が、疎水化処理されたものである、前記項[1]~[6]のいずれか一項に記載の化粧料。
[8] 前記(C)紫外線散乱剤が、表面が疎水化処理された金属酸化物の微粒子である、前記項[7]に記載の化粧料。
[9] 前記(D)液化ガスが、炭素数3~5の脂肪族炭化水素である、前記項[1]~[8]のいずれか一項に記載の化粧料。
[10] 日焼け止め化粧料である、前記項[1]~[9]のいずれか一項に記載の化粧料。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、紫外線散乱剤を含有しており、高い紫外線防御能(高SPF及びPA)を有し、かつ、安定性および使用性にも優れた、液化ガスが乳化しているエアゾール型の水中油型乳化化粧料を提供することができる。
【0011】
本発明のエアゾール型の水中油型乳化化粧料は、ミセルを形成するための(B)界面活性剤とともに、(A)分子量が1万以上である多糖系化合物、好ましくは、多糖類を基本骨格とし、炭素数6以上、より好ましくは炭素数10~40の直鎖または分岐のアルキル基を含有する基、または、カルボン酸基(カルボキシ基)またはカルボン酸金属塩基を含有する基を側鎖に有する多糖系化合物を用いることにより、液化ガスが乳化しているエアゾール型の水中油型乳化化粧料においても、紫外線散乱剤の凝集を効果的に防止し、乳化安定性を向上させている。そして、その結果として、安定性および使用性に優れた、紫外線散乱剤が内相(油相)に配合され、液化ガスが乳化しているエアゾール型の水中油型乳化化粧料を得ることを可能にしている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のエアゾール型の水中油型乳化化粧料(以下、単に「水中油型乳化化粧料」または「乳化化粧料」ともいう)は、(A)分子量が1万以上である多糖系化合物、(B)界面活性剤、(C)紫外線散乱剤、および(D)液化ガスを必須成分として含有し、(D)液化ガスも乳化されているものである。
【0013】
本発明の乳化化粧料に用いられる(A)分子量が1万以上である多糖系化合物(以下、単に「多糖系化合物」ともいう)は、多糖類またはその誘導体を基本骨格とし、分子量が1万以上である化合物である。ここで、分子量とは、化合物の分子量または重量平均分子量であり、例えば、GPC法(ゲル浸透クロマトグラフィー)により測定することができる。
【0014】
(A)多糖系化合物の分子量または重量平均分子量は、10,000以上であり、50,000以上であることが好ましく、100,000以上であることがより好ましく、300,000以上であることがより好ましく、550,000以上であることが特に好ましい。(A)多糖系化合物の分子量または重量平均分子量の上限値は、特に限定されないが、通常、10,000,000以下であり、7,000,000以下であることが好ましく、5,000,000以下であることがより好ましく、2,000,000以下であることがより好ましい。ある実施態様においては、(A)多糖系化合物の分子量または重量平均分子量は、1,000,000以下であることが好ましく、800,000以下であることがより好ましく、750,000以下であることが特に好ましいことがある。
【0015】
(A)多糖系化合物は、通常、水溶性であることが好ましく、具体的には、25℃における水への溶解度が、0.001質量%以上であることが好ましい。
【0016】
紫外線散乱剤の凝集を防止し、乳化安定性を向上する効果が高いことから、(A)分子量が1万以上である多糖系化合物としては、セルロース等の多糖類を基本骨格とし、炭素数6以上、より好ましくは炭素数10~40の直鎖または分岐のアルキル基またはアルケニル基、より好ましくは炭素数6以上、より好ましくは炭素数10~40の直鎖または分岐のアルキル基を含有する基を側鎖に有するものが好ましい。
【0017】
側鎖の炭素数6以上の直鎖または分岐のアルキル基またはアルケニル基は、炭素数10~40のアルキル基またはアルケニル基であることが好ましく、炭素数12~36のアルキル基またはアルケニル基であることがより好ましく、炭素数14~24のアルキル基またはアルケニル基であることが特に好ましい。
【0018】
(A)多糖系化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、多糖類またはその誘導体を基本骨格とし、そのヒドロキシル基の水素原子の一部または全部が、炭素数6以上、好ましくは炭素数10~40の直鎖または分岐鎖のアルキル基またはアルケニル基を有するアルキルグリセリルエーテル基またはアルケニルグリセリルエーテル基で置換されたものが好ましい。
【0019】
上記の多糖系化合物の基本骨格となる多糖類またはその誘導体としては、例えば、セルロース、グアーガム、スターチ、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルグアーガム、ヒドロキシエチルスターチ、メチルセルロース、メチルグアーガム、メチルスターチ、エチルセルロース、エチルグアーガム、エチルスターチ、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルグアーガム、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルグアーガム、ヒドロキシエチルメチルスターチ、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルグアーガム、ヒドロキシプロピルメチルスターチ等が挙げられ、中でも、セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースが好ましい。また、これらの多糖類(またはその誘導体)のメチル基、エチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基等の置換基は、単一の置換基で置換されたものであってもよく、2種以上の置換基で置換されたものであってもよく、その構成単糖残基当たりの置換度は、特に限定されるものではないが、0.1~10が好ましく、0.5~5がより好ましい。
【0020】
上記のアルキルグリセリルエーテル基またはアルケニルグリセリルエーテル基としては、炭素数6以上、好ましくは炭素数10~40、より好ましくは炭素数12~36、特に好ましくは炭素数14~24の直鎖または分岐鎖のアルキル基またはアルケニル基を有するアルキルグリセリルエーテル基またはアルケニルグリセリルエーテル基であることが好ましい。その具体例としては、2-ヒドロキシ-3-アルコキシプロピル基、2-アルコキシ-1-(ヒドロキシメチル)エチル基、2-ヒドロキシ-3-アルケニルオキシプロピル基、2-アルケニルオキシ-1-(ヒドロキシメチル)エチル基が挙げられる。これらの基は、多糖分子(基本骨格となる多糖類)に結合しているヒドロキシエチル基やヒドロキシプロピル基等のヒドロキシル基の水素原子と置換していてもよい。
【0021】
(A)多糖系化合物におけるアルキルグリセリルエーテル基またはアルケニルグリセリルエーテル基の置換度は、特に限定されないが、構成単糖残基当たり0.001~1が好ましく、0.002~0.5がより好ましく、0.003~0.1が特に好ましい。
【0022】
特に好ましい(A)多糖系化合物としては、セルロースを基本骨格とし、炭素数6以上、より好ましくは炭素数10~40、より好ましくは炭素数12~36、特に好ましくは炭素数14~24の直鎖または分岐のアルキル基を含有する基を側鎖に有するもの、すなわち、疎水変性アルキルセルロースが挙げられ、ある実施態様においては、炭素数14~22、より好ましくは炭素数14~20の直鎖または分岐のアルキル基により疎水変性されたアルキルセルロースが特に好ましい。このような疎水変性アルキルセルロースとしては、例えば、下記一般式(I)で表される化合物が挙げられる。
【0023】
【化1】
[式中、Rは、同一でも異なってもよく、水素原子、炭素原子数が1~4のアルキル基、基-[CH
2CH(CH
3)O]
m-H(式中、mは、1~5、好適には1~3の整数である)、基-CH
2CH
2OH、及び、基-CH
2CH(OH)CH
2OR’(式中、R’は、炭素原子数が10~40、好適には14~22のアルキル基である)から選ばれる1種以上の基であり、ただし、基-CH
2CH(OH)CH
2OR’を必ず含む。Aは、基-(CH
2)
q-(qは、1~3の整数であり、好適には1である)であり、nは、100~10000、好適には500~5000の整数である。]
【0024】
前記式(I)で表される疎水変性アルキルセルロースは、例えば、基本骨格となるセルロースエーテル誘導体、例えば、メチルセルロース(式(I)のRが水素原子またはメチル基)、エチルセルロース(式(I)のRが水素原子またはエチル基)、プロピルセルロース(式(I)のRが水素原子またはプロピル基)、ブチルセルロース(式(I)のRが水素原子またはブチル基)、ヒドロキシプロピルセルロース[式(I)のRが水素原子またはヒドロキシプロピル基(-[CH2CH(CH3)O]m-H(式中、mは、1~5、好適には1~3の整数である)]、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(式(I)のRが水素原子、メチル基またはヒドロキシプロピル基)等に対して、炭素数10~40、好適には14~22の長鎖アルキル基導入用化合物、例えば、下記式(II)で表される長鎖アルキルグリシジルエーテルを、アルカリ触媒の存在下で接触、反応させて、得ることができる。
【0025】
【化2】
[式中、R’は、炭素原子数が10~40、好適には14~22のアルキル基である。]
【0026】
疎水変性アルキルセルロースに導入される基-CH2CH(OH)CH2OR’の含有量は、特に限定されないが、通常、疎水変性アルキルセルロース全体に対して0.1~5.0質量%程度であることが好ましい。このような含有率とするためには、上記のセルロースエーテル誘導体と長鎖アルキルグリシジルエーテルの反応の際のモル比や、反応時間、アルカリ触媒の種類等を適宜選択して、疎水変性アルキルセルロースを製造すればよい。セルロースエーテル誘導体と長鎖アルキルグリシジルエーテルの反応後、反応物の中和・濾過・洗浄・乾燥・篩分等の精製工程を行ってもよい。
【0027】
上記の水溶性セルロースエーテル誘導体のうち、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等を基本骨格とし、導入される長鎖アルキルグリシジルエーテルにおけるR’が炭素数18のステアリル基(-C18H37)であるステアロキシヒドロキシプロピルセルロースを特に好ましい例として挙げることができる。
【0028】
疎水変性アルキルセルロースとしては、市販品を用いることもでき、例えば、サンジェロース90L(ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロース;大同化成工業(株)製)、Natrosol Plus 330cs(Ashland社製)、Polysurf 67cs(Ashland社製)等を好適に用いることができる。
【0029】
(A)多糖系化合物としては、多糖類またはその誘導体を基本骨格とし、そのヒドロキシル基の水素原子の一部または全部が、スルホアルキル基またはその塩で置換されたものも挙げられる。基本骨格となる多糖類またはその誘導体としては、上記と同様のものが挙げられ、スルホアルキル基またはその塩としては、例えば、ヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数1~5のスルホアルキル基またはその塩が好ましい。スルホアルキル基の具体例としては、2-スルホエチル基、3-スルホプロピル基、3-スルホ-2-ヒドロキシプロピル基、2-スルホ-1-(ヒドロキシメチル)エチル基等が挙げられ、その一部または全部がNa、K等のアルカリ金属、Ca、Mg等のアルカリ土類金属、アミン類等の有機カチオン基、アンモニウムイオン等との塩となっていてもよい。
【0030】
(A)分子量が1万以上である多糖系化合物としては、カルボン酸基(カルボキシ基;-COOH)またはカルボン酸金属塩基(-COOM(式中、Mは、金属原子である。))を含有する基を側鎖に有するものも好ましい。カルボン酸金属塩基を形成する金属カチオン(M)としては、特に限定されるものではないが、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属が挙げられる。
【0031】
カルボン酸基(-COOH)またはカルボン酸金属塩基(-COOM)を含有する基を側鎖に有する多糖系化合物としては、特に限定されないが、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカリウム、カルボキシエチルセルロースナトリウムや、サクシノグルカン等が挙げられる。
【0032】
カルボン酸基(-COOH)またはカルボン酸金属塩基(-COOM)を含有する基を側鎖に有する多糖系化合物としては、市販品を用いることもでき、例えば、セロゲン(カルボキシメチルセルロースナトリウム;第一工業製薬(株)製)、レオザン(サクシノグルカン;ソルベイ日華(株)製)等を好適に用いることができる。
【0033】
本発明の乳化化粧料における(A)分子量が1万以上である多糖系化合物の含有量は、乳化系の安定性の点から、通常、(D)液化ガスを除く成分の総質量の0.01~3質量%であることが好ましく、0.01~1質量%であることがより好ましく、0.01~0.2質量%であることが特に好ましい。
【0034】
本発明の乳化化粧料に用いられる(B)界面活性剤は、特に限定されず、化粧料に配合可能な界面活性剤であればよいが、通常、非イオン性界面活性剤であることが好ましい。
【0035】
(B)界面活性剤としては、例えば、脂肪酸グリセリド、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の多価アルコールエステル型の非イオン性界面活性剤、高級アルコールアルキレンオキシド縮合物、脂肪酸アルキレンオキシド縮合物、ソルビタン脂肪酸エステルのオキシアルキレン縮合物、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロック共重合体等のオキシアルキレン縮合型の非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0036】
(B)界面活性剤としては、HLB値が9以上、より好ましくは10以上、特に好ましくは12以上である非イオン性界面活性剤が好ましい。9以上のHLB値を有する非イオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、イソステアリン酸PEG-60グリセリル等の脂肪酸ポリオキシアルキレングリセリル、PEG-100水添ヒマシ油、PEG-60水添ヒマシ油等のポリオキシアルキレン水添ヒマシ油、ヤシ脂肪酸グリセリル、ラウリン酸グリセリル等の脂肪酸グリセリル、パルミチン酸ソルビタン、ヤシ脂肪酸ソルビタン等の脂肪酸ソルビタンエステル等が挙げられる。
【0037】
ある実施態様においては、(B)界面活性剤が、水添ヒマシ油アルキレンオキシド縮合物(以下「水添ヒマシ油系非イオン性界面活性剤」ともいう)であることが好ましいことがある。水添ヒマシ油系非イオン性界面活性剤も、好ましくは9以上、より好ましくは10以上、特に好ましくは12以上のHLB値を有することが好ましい。水添ヒマシ油系非イオン性界面活性剤の具体例としては、特に限定されないが、PEG200-水添ヒマシ油、PEG100-水添ヒマシ油、PEG60-水添ヒマシ油、PEG80-水添ヒマシ油、PEG55-水添ヒマシ油、PEG50-水添ヒマシ油、PEG40-水添ヒマシ油、PEG35-水添ヒマシ油、PEG30-水添ヒマシ油、PEG25-水添ヒマシ油、PEG20-水添ヒマシ油、イソステアリン酸PEG60-水添ヒマシ油、イソステアリン酸PEG50-水添ヒマシ油、イソステアリン酸PEG40-水添ヒマシ油、イソステアリン酸PEG30-水添ヒマシ油、ラウリン酸PEG60-水添ヒマシ油、ラウリン酸PEG50-水添ヒマシ油、ラウリン酸PEG40-水添ヒマシ油、ラウリン酸PEG30-水添ヒマシ油、PCAイソステアリン酸PEG30-水添ヒマシ油、PCAイソステアリン酸PEG40-水添ヒマシ油、PCAイソステアリン酸PEG60-水添ヒマシ油、コハク酸PEG50-水添ヒマシ油、トリイソステアリン酸PEG60-水添ヒマシ油、トリイソステアリン酸PEG50-水添ヒマシ油等が挙げられる。
【0038】
本発明の乳化化粧料における(B)界面活性剤の含有量は、乳化系の安定性と良好な使用感の点から、通常、(D)液化ガスを除く成分の総質量の0.1~5質量%であることが好ましく、0.5~3質量%であることがより好ましく、1~2質量%であることが特に好ましい。
【0039】
本発明の乳化化粧料に用いられる(C)紫外線散乱剤は、特に限定されず、化粧料に通常用いられる、公知の紫外線散乱剤いずれも用いることができる。
【0040】
(C)紫外線散乱剤としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物等が挙げられ、さらには、酸化チタン被覆マイカ、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆タルク、酸化チタン被覆ガラスフレーク等の、金属酸化物で被覆された複合粉体も挙げられる。(C)紫外線散乱剤としては、通常、金属酸化物の微粒子、特に、酸化チタンの微粒子、及び酸化亜鉛の微粒子が好ましい。金属酸化物の微粒子、より好ましくは酸化チタンの微粒子、及び酸化亜鉛の微粒子の平均粒径は、特に限定されないが、通常、25~100nm程度が好ましい。
【0041】
(C)紫外線散乱剤は、表面が疎水化処理されていることが好ましく、表面が疎水化処理された金属酸化物の微粒子、より好ましくは表面が疎水化処理された酸化チタンの微粒子、または、表面が疎水化処理された酸化亜鉛の微粒子であることが特に好ましい。表面疎水化処理の方法としては、従来公知の方法いずれでもよく、例えば、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルポリシロキサン、トリメチルシロキシケイ酸、シリコーン樹脂等によるシリコーン処理;パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルコール等によるフッ素処理;N-アシルグルタミン酸等によるアミノ酸処理;レシチン処理;金属石鹸処理;脂肪酸処理;アルキルリン酸エステル処理等が挙げられる。
【0042】
本発明の乳化化粧料における(C)紫外線散乱剤の含有量は、十分な紫外線防御能と、乳化系の安定性および良好な使用感の点から、通常、(D)液化ガスを除く成分の総質量の2.5~30質量%であることが好ましく、3~30質量%であることがより好ましく、4~20質量%であることが特に好ましい。
【0043】
本発明の乳化化粧料においては、さらに、乳化系の安定性の点から、(A)分子量が1万以上である多糖系化合物と(B)界面活性剤の含有比率(質量比)[(A)/(B)]は、1.54以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましく、1以下であることがより好ましく、0.5以下であることが特に好ましい場合がある。この比率の下限値は、特に限定されないが、通常は0.001以上であることが好ましい。
【0044】
また、乳化系の安定性の点から、(A)分子量が1万以上である多糖系化合物と(C)紫外線散乱剤の含有比率(質量比)[(A)/(C)]は、0.02以下であることが好ましく、0.015以下であることがより好ましく、0.01以下であることが特に好ましい場合がある。この比率の下限値は、特に限定されないが、通常は0.002以上であることが好ましい。
【0045】
日焼け止め化粧料である場合、本発明の乳化化粧料は、油相または水相中に油溶性または水溶性の紫外線吸収剤をさらに含有することが好ましい。紫外線吸収剤を配合することにより、(C)紫外線散乱剤と協働して、UVA領域からUVB領域に渡る広い波長範囲で、より優れた紫外線防御能を発揮して、高SPF及び高PAを達成できることがある。安定性の点からは、油溶性紫外線吸収剤を油相に配合することが好ましい。
【0046】
本発明で用いることができる油溶性紫外線吸収剤としては、例えば、安息香酸誘導体、サリチル酸誘導体、ケイ皮酸誘導体、ジベンゾイルメタン誘導体、β,β-ジフェニルアクリラート誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ベンジリデンショウノウ誘導体、フェニルベンゾイミダゾール誘導体、トリアジン誘導体、フェニルベンゾトリアゾール誘導体、アントラニル誘導体、イミダゾリン誘導体、ベンザルマロナート誘導体、4,4-ジアリールブタジエン誘導体等が挙げられる。以下に、その具体例及び商品名を列挙するが、これらに限定されるものではない。
【0047】
安息香酸誘導体としては、パラ-アミノ安息香酸(PABA)エチル、エチル-ジヒドロキシプロピルPABA、エチルヘキシル-ジメチルPABA(例えば、ISP社製「エスカロール507」)、グリセリルPABA、PEG-25-PABA(例えば、BASF社製「ユビナールP25」)、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル(例えば、BASF社製「ユビナールAプラス」)等が挙げられる。
【0048】
サリチル酸誘導体としては、ホモサレート(ロナ/EMインダストリーズ社製「ユーソレックス(Eusolex)HMS」)、エチルヘキシルサリチレート(例えば、ハーマン・アンド・レイマー社製「ネオ・ヘリオパン(NeoHeliopan)OS」)、ジプロピレングリコールサリチレート(例えば、スケル社製「ディピサル(Dipsal)」)、TEAサリチラート(例えば、ハーマン・アンド・レイマー社製「ネオ・ヘリオパンTS」)等が挙げられる。
【0049】
ケイ皮酸誘導体としては、オクチルメトキシシンナメートまたはメトキシケイ皮酸エチルヘキシル(例えば、ホフマン-ラ・ロシュ社製「パルソールMCX」)、メトキシケイ皮酸イソプロピル、メトキシケイ皮酸イソアミル(例えば、ハーマン・アンド・レイマー社製「ネオ・ヘリオパンE1000」)、シンノキセート、DEAメトキシシンナメート、メチルケイ皮酸ジイソプロピル、グリセリル-エチルヘキサノエート-ジメトキシシンナメート、ジ-(2-エチルヘキシル)-4’-メトキシベンザルマロネート等が挙げられる。
【0050】
ジベンゾイルメタン誘導体としては、4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン(例えば、DSM ニュートリション ジャパン株式会社製「パルソール1789」)等が挙げられる。
【0051】
β,β-ジフェニルアクリレート誘導体としては、オクトクリレン(例えば、BASF社製「ユビナールN539」)等が挙げられる。
【0052】
ベンゾフェノン誘導体としては、ベンゾフェノン-1(例えば、BASF社製「ユビナール400」)、ベンゾフェノン-2(例えば、BASF社製「ユビナールD50」)、ベンゾフェノン-3またはオキシベンゾン(例えば、BASF社製「ユビナールM40」)、ベンゾフェノン-4(例えば、BASF社製「ユビナールMS40」)、ベンゾフェノン-5、ベンゾフェノン-6(例えば、ノルクアイ社製「ヘリソーブ(Helisorb)11」)、ベンゾフェノン-8(例えば、アメリカン・シアナミド社製「スペクトラ-ソーブ(Spectra-Sorb)UV-24」)、ベンゾフェノン-9(例えば、BASF社製「ユビナールDS-49」)、ベンゾフェノン-12等が挙げられる。
【0053】
ベンジリデンショウノウ誘導体としては、3-ベンジリデンショウノウ(例えば、シメックス社製「メギゾリル(Mexoryl)SD」)、4-メチルベンジリデンショウノウ、ベンジリデンショウノウスルホン酸(例えば、シメックス社製「メギゾリルSL」)、メト硫酸ショウノウベンザルコニウム(例えば、シメックス社製「メギゾリルSO」)、テレフタリリデンジショウノウスルホン酸(例えば、シメックス社製「メギゾリルSX」)、ポリアクリルアミドメチルベンジリデンショウノウ(例えば、シメックス社製「メギゾリルSW」)等が挙げられる。
【0054】
フェニルベンゾイミダゾール誘導体としては、フェニルベンゾイミダゾールスルホン酸(例えば、メルク社製「ユーソレックス232」)、フェニルジベンゾイミダゾールテトラスルホン酸二ナトリウム(例えば、ハーマン・アンド・レイマー社製「ネオ・ヘリオパンAP」)等が挙げられる。
【0055】
トリアジン誘導体としては、アニソトリアジン(例えば、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製「チノソーブ(Tinosorb)S」)、エチルヘキシルトリアゾン(例えば、BASF社製「ユビナールT150」)、ジエチヘキシルブタミドトリアゾン(例えば、シグマ3V社製「ユバソーブ(Uvasorb)HEB」)、2,4,6-トリス(ジイソブチル-4’-アミノベンザルマロナート)-s-トリアジン等が挙げられる。
【0056】
フェニルベンゾトリアゾール誘導体としては、ドロメトリゾールトリシロキサン(例えば、ローディア・シミー社製「シラトリゾール(Silatrizole)」)、メチレンビス(ベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール)(例えば、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製「チノソーブM」)等が挙げられる。
【0057】
アントラニル誘導体としては、アントラニル酸メンチル(例えば、ハーマン・アンド・レイマー社製「ネオ・ヘリオパンMA」)等が挙げられる。
【0058】
イミダゾリン誘導体としては、エチルヘキシルジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリンプロピオナート等が挙げられる。
【0059】
ベンザルマロナート誘導体としては、ベンザルマロナート官能基を有するポリオルガノシロキサン(例えば、ポリシリコーン-15;DSMニュートリション ジャパン社製「パルソールSLX」)等が挙げられる。
【0060】
4,4-ジアリールブタジエン誘導体としては、1,1-ジカルボキシ(2,2’-ジメチルプロピル)-4,4-ジフェニルブタジエン等が挙げられる。
【0061】
本発明の乳化化粧料における紫外線吸収剤の含有量は、特に限定されないが、通常、(D)液化ガスを除く成分の総質量の1~25質量%であることが好ましく、3~20質量%であることがより好ましく、5~18質量%であることが特に好ましい。
【0062】
本発明の乳化化粧料は、上記の必須成分(A)~(C)及び紫外線吸収剤、並びに、後述する(D)液化ガス以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、他の成分、例えば、化粧料に通常配合される各種成分を含有することができる。本発明の乳化化粧料に配合してもよい他の成分としては、液状、固形または半固形の油分(具体的には、炭化水素油、エステル油、油脂、高級アルコール、高級脂肪酸、シリコーン油等が挙げられ、揮発性油及び非揮発性油のいずれであってもよい)、保湿剤、水溶性高分子等の増粘剤、炭素数1~6の低級アルコール、pH調整剤、キレート剤、酸化防止剤、各種薬剤等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
保湿剤としては、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類;グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセリン類;ソルビトール、マンニトール、マルチトール、キシリトール、エリスリトール等の糖アルコール類;フルクトース、グルコース、ガラクトース、マルトース、ラクトース、トレハロース等の糖類が挙げられる。
【0064】
増粘剤(水溶性高分子)としては、アラビアガム、トラガントガム、ガラクタン、グアガム、キャロブガム、カラヤガム、ジェランガム、カラギーナン等の植物系高分子;キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、プルラン等の微生物系高分子;コラーゲン、カゼイン、アルブミン、ゼラチン等の動物系高分子;カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプン等のデンプン系高分子;アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸系高分子等が挙げられる。
【0065】
各種薬剤としては、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、アスコルビン酸グルコシド、ビタミンB6塩酸塩、パントテニルエチルエーテル等のビタミン類;トラネキサム酸等の美白剤、殺菌剤、消炎剤、防腐剤、植物抽出液、アミノ酸、清涼剤等が挙げられる。
【0066】
本発明の化粧料は、水中油型乳化化粧料であり、外相(連続相)としての水相と、内相(分散相)としての油相とを含有する。外相の水相を構成する水の配合量は、内相の油相を構成する油分等の種類や配合量に応じて適宜選択されるが、通常、(D)液化ガスを除く成分の総質量の20~80質量%が好ましく、30~60質量%であることが特に好ましい。
【0067】
本発明の化粧料においては、(D)液化ガス以外の成分、すなわち、上記の(A)多糖系化合物、(B)界面活性剤、(C)紫外線散乱剤、及び紫外線吸収剤、その他の成分から水中油型乳化化粧料の原液が構成される。
【0068】
本発明の水中油型乳化化粧料の原液の温度30℃における粘度は、通常、2,000mPa・s以下であることが好ましく、1,000mPa・s以下であることがより好ましい。原液の温度30℃における粘度が2,000mPa・sを超えると、(D)液化ガスと乳化しにくくなる傾向がある。原液の温度30℃における粘度の下限値は、特に限定されないが、通常、200mPa・s以上であることが好ましく、400mPa・s以上であることがより好ましい。
【0069】
本発明の化粧料は、水中油型乳化化粧料であり、外相(連続相)としての水相と、内相(分散相)としての油相とを含有し、さらに、(D)液化ガスも水相中に乳化して、油相を構成している。(D)液化ガスは、容器内では乳化しているが、外部に吐出されると気化(揮発)して、原液((D)液化ガス以外の成分から構成される水中油型乳化化粧料の原液)を発泡させてフォームを形成する。
【0070】
(D)液化ガスとしては、容器内では水相中に乳化し、外部に吐出されると気化(揮発)するものであれば特に限定されず、エアゾール組成物で通常用いられているものいずれも用いることができるが、炭素数3~5の脂肪族炭化水素を用いることが好ましい。具体的には、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン等が挙げられる。
【0071】
本発明の乳化化粧料における(D)液化ガスの含有量は、特に限定されないが、良好な使用感などの点から、通常、乳化化粧料の総質量に対して、20~80質量%であることが好ましく、40~70質量%であることが特に好ましい。
【0072】
本発明のエアゾール型の水中油型乳化化粧料は、例えば、(D)液化ガス以外の成分、すなわち、(A)多糖系化合物、(B)界面活性剤、(C)紫外線散乱剤、及び紫外線吸収剤、その他の成分から構成される原液を公知の水中油型乳化化粧料の製造方法に従って調製し、得られた原液と(D)液化ガスとを耐圧容器内に充填し、容器を振盪するなどして、液化ガスを原液と乳化させることによって、製造することができる。
【0073】
より具体的には、(D)液化ガス以外の成分のうち、油相成分である油分や親油性成分を混合して油相とし、それとは別に、水相成分である水や水性成分を混合して水相とし、最後に、水相成分を攪拌しながら油相成分を添加して乳化することによって、水中油型乳化化粧料の原液を調製することができる。そして、得られた原液と(D)液化ガスとを耐圧容器内に充填し、容器の開口部にエアゾールバルブを固着して容器を密封した後、容器を振盪するなどして、容器内で液化ガスを原液と乳化させることによって、本発明のエアゾール型の水中油型乳化化粧料を製造することができる。なお、液化ガスは、原液を充填した耐圧容器にエアゾールバルブを固着した後にエアゾールバルブを通じて充填してもよく、エアゾールバルブを固着する直前にアンダーカップ充填により充填してもよい。さらに、エアゾールバルブに噴射部材を取り付けることによって、エアゾール製品となる。
【0074】
本発明のエアゾール型の水中油型乳化化粧料は、日焼け止め化粧料として特に好適に用いることができ、また、紫外線防御効果に優れたスキンケア、メーキャップまたは毛髪化粧料としても好適に用いることができる。本発明の乳化化粧料は、耐水性にも優れ、水やお湯で洗い流しても紫外線防御効果を持続することができる。また、本発明の乳化化粧料は、振動安定性に優れ、振動させても乳化安定性が維持されるため、携帯用化粧料としても好適である。
【実施例】
【0075】
以下、具体例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、これらは本発明の技術的範囲を何ら限定するものではない。なお、以下の実施例等における含有量は特記しない限り質量%である。
【0076】
<実施例1~4、比較例1~3>
下記の表1に示す処方で、水中油型乳化化粧料の製造に通常用いられている方法に従って、すなわち、水相成分及び油相成分を別々に混合し、水相成分を攪拌しながら油相成分を添加して乳化し、水中油型乳化化粧料の原液を調製した。そして、表1に示すとおり、得られた原液とLPガス[プロパンとブタンの混合ガス]とを50:50の質量比で耐圧容器内に充填し、容器を振盪してLPガスを原液と乳化させて、エアゾール型の水中油型乳化化粧料を調製した。
【0077】
【0078】
なお、表1中の数値は質量部である。
実施例1、2で使用したステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロースの重量平均分子量は600,000であり、実施例3で使用したサクシノグルカンの重量平均分子量は6,000,000であり、実施例4で使用したカルボキシメチルセルロースナトリウムの重量平均分子量は60,000であり、比較例3で使用したヒドロキシエチルセルロースの重量平均分子量は736であった。
【0079】
調製したエアゾール型の水中油型乳化化粧料について、以下の要領で耐水性、振動安定性、及び使用時のパチパチ感を評価した。その結果を表2に示す。
【0080】
・耐水性の評価
各例の化粧料(試料)を2mg/cm2の量でSプレート(5×5cmのV溝PMMA板、SPFMASTER-PA01)に滴下し、60秒間指で塗布し、15分間乾燥させて塗膜を形成した。未塗布のプレートを対照として、形成した塗膜の吸光度(400~280nm)を株式会社日立製作所社製U-3500型自記録分光光度計にて測定し、得られた測定データから水浴前の吸光度積算値を求めた。
次いで、測定したプレートを水に浸漬し、30分間そのまま水中で攪拌した(3-1モーターで300rpm)。その後、表面の水滴がなくなるまで15~30分間程度乾燥させた後、再び吸光度を測定し、得られた測定データから水浴後の吸光度積算値を求めた。
そして、以下の式から、水浴後の吸光度積算値の変化率(%)を算出した。
水浴後の吸光度積算値の変化率(%)=
(水浴後の吸光度積算値)/(水浴前の吸光度積算値)×100
耐水性の評価結果
〇:水浴後の吸光度積算値が75%以上。
×:水浴後の吸光度積算値が75%未満。
【0081】
・振動安定性の評価
各例の化粧料(試料)を密閉容器に充填し、25℃において600~2400rpmの範囲で速度を一定の周期で変化させながら120分間振動させ、それらの状態を目視及び実使用試験にて評価した。
振動安定性の評価結果
〇:変化無し。
×:振動により乳化破壊が生じて製品として使用不可となった。
【0082】
・使用時のパチパチ感の評価
5人を対象に、官能評価を実施した。各例の化粧料(試料)を肌に滴下し、指で塗布して、パチパチ感を感じるかを確認して、評価した。
パチパチ感の評価結果
〇:パチパチ感を強く感じる。
×:パチパチ感をあまり感じない。
【0083】
【0084】
本発明の条件を満たす実施例1~4の水中油型乳化化粧料は、使用時にパチパチ感を強く感じるエアゾール型の水中油型乳化化粧料であり、耐水性、振動安定性も優れていた。一方、紫外線散乱剤である、表面が疎水化処理された酸化亜鉛の微粒子を含有しない比較例1の水中油型乳化化粧料は、耐水性が劣り、水浴後には紫外線防御効果を持続できなかった。多糖系化合物を含有しない比較例2の水中油型乳化化粧料と、分子量が736である多糖系化合物を含有する比較例3の水中油型乳化化粧料は、振動安定性が劣り、振動試験後には乳化安定性を維持できなかった。