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  • 特許-刃先交換式エンドミルのエンドミル本体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】刃先交換式エンドミルのエンドミル本体
(51)【国際特許分類】
   B23C 5/10 20060101AFI20230314BHJP
【FI】
B23C5/10 D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019026705
(22)【出願日】2019-02-18
(65)【公開番号】P2020131338
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】北嶋 純
(72)【発明者】
【氏名】神原 正史
(72)【発明者】
【氏名】坂本 千波
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 翔太
(72)【発明者】
【氏名】桑原 怜也
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0254540(US,A1)
【文献】再公表特許第2015/129768(JP,A1)
【文献】再公表特許第2015/129769(JP,A1)
【文献】特開2014-151435(JP,A)
【文献】特開2013-78828(JP,A)
【文献】特開2013-78827(JP,A)
【文献】実開平1-87818(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23C 5/10,5/20-5/24;
B23B 51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線回りに回転される上記軸線を中心とした円柱状のエンドミル本体の先端部外周に、切刃を備えた切削インサートが着脱可能に取り付けられるインサート取付座が形成されており、
上記インサート取付座は、互いに交差する方向に延びる第1の壁面と第2の壁面とを備え、
上記第1の壁面はエンドミル回転方向を向き、上記第2の壁面は上記エンドミル本体の軸線方向の先端側を向き、
または、
上記第1の壁面は上記エンドミル本体の軸線方向先端側とエンドミル回転方向とを向くとともに、上記第2の壁面は上記エンドミル本体の軸線方向後端側とエンドミル回転方向とを向き、
これら第1の壁面と第2の壁面とが交差する隅角部には、上記インサート取付座と上記エンドミル本体の外周面に開口して内周側に延びる溝孔部が形成されるとともに、
上記エンドミル本体の外周面には、上記溝孔部の開口部からエンドミル回転方向とは反対側に延びる溝部が形成されていて、
上記溝孔部のエンドミル回転方向を向く内周面と上記溝部の溝底との交差部が、上記溝孔部のエンドミル回転方向とは反対側を向く内周面と上記エンドミル本体の外周面との交差稜線部よりも、上記エンドミル本体の内周側に位置していることを特徴とする刃先交換式エンドミルのエンドミル本体。
【請求項2】
上記溝部は、上記軸線を中心とする円の接線方向に延びていることを特徴とする請求項1に記載の刃先交換式エンドミルのエンドミル本体。
【請求項3】
上記溝部は、上記軸線を中心とする円の円周方向に延びていることを特徴とする請求項1に記載の刃先交換式エンドミルのエンドミル本体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸線回りに回転される上記軸線を中心とした円柱状のエンドミル本体の先端部外周に、切刃を備えた切削インサートが着脱可能に取り付けられるインサート取付座が形成された刃先交換式エンドミルのエンドミル本体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
このような刃先交換式エンドミルのエンドミル本体として、例えば特許文献1には、少なくとも一つ切削インサートを保持する少なくとも一つのインサートポケット(インサート取付座)を有するカッタ本体(エンドミル本体)であって、少なくとも一つのインサート取付座はベース(底面)をほぼ横断する隣接する側壁と後壁(第1、第2の壁面)を具えたものが記載されている。
【0003】
インサート取付座の底面は切削インサートをインサート取付座に固定するための締め付けねじを受け入れるねじ山付きの孔を具え、エンドミル本体の先端側を向く第1の壁面は少なくとも一つの切削インサートの所与の副側面に当接する軸方向位置決め面を具え、エンドミル回転方向を向く第2の壁面はそれの中心の凹み領域の両側に位置決めされる二つの突出した接線方向の位置決め面を具え、これらの接線方向の位置決め面は少なくとも一つの切削インサートの所与の内側端面に当接するようにされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2007-520360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この特許文献1に記載されたエンドミル本体には、第1の壁面と第2の壁面とが交差する隅角部に、インサート取付座とエンドミル本体の外周面に開口して内周側に延びる溝孔部が形成されている。この溝孔部は、インサート取付座の第1の壁面と第2の壁面に当接する切削インサートの副側面と内側端面との交差稜線部に形成された切刃が、インサート取付座と干渉するのを避けるための逃げ部あるいはぬすみ部とされるものであり、同様の溝孔部はインサート取付座の底面と第1の壁面とが交差する隅角部や底面と第2の壁面とが交差する隅角部にも形成されている。
【0006】
しかしながら、例えば横型マシニングセンタ等によってエンドミル本体の軸線を横向きにして、被削材の横向きに開口した凹孔部を切削加工する場合などには、切削によって生成された切屑が凹孔部の底面に溜まってしまい、この底面を切削加工するときに切屑がエンドミル回転方向を向く溝孔部の内周面とエンドミル本体外周面との交差稜線部に噛み込まれて溝孔部の開口部に引っ掛かり、この溝孔部の開口部からエンドミル本体1の外周面に巻き付いてしまう。
【0007】
そして、こうして溝孔部に引っ掛かってエンドミル本体の外周面に巻き付いた切屑は、エンドミル本体の外周面と被削材の凹孔部の内周面との間で擦り付けられることにより加熱されてエンドミル本体の外周面に溶着してしまい、そのまま切削加工を続けると溶着した切屑によって被削材の加工面が傷付けられて、加工面の仕上げ面精度が損なわれることになる。
【0008】
本発明は、このような背景の下になされたもので、上述のように溝孔部のエンドミル本体外周面への開口部に切屑が引っ掛かるのを防いで、エンドミル本体の外周面に切屑が溶着するのを防止することが可能な刃先交換式エンドミルのエンドミル本体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明は、軸線回りに回転される上記軸線を中心とした円柱状のエンドミル本体の先端部外周に、切刃を備えた切削インサートが着脱可能に取り付けられるインサート取付座が形成されており、上記インサート取付座は、互いに交差する方向に延びる第1の壁面と第2の壁面とを備え、上記第1の壁面はエンドミル回転方向を向き、上記第2の壁面は上記エンドミル本体の軸線方向の先端側を向き、または、上記第1の壁面は上記エンドミル本体の軸線方向先端側とエンドミル回転方向とを向くとともに、上記第2の壁面は上記エンドミル本体の軸線方向後端側とエンドミル回転方向とを向き、これら第1の壁面と第2の壁面とが交差する隅角部には、上記インサート取付座と上記エンドミル本体の外周面に開口して内周側に延びる溝孔部が形成されるとともに、上記エンドミル本体の外周面には、上記溝孔部の開口部からエンドミル回転方向とは反対側に延びる溝部が形成されていて、上記溝孔部のエンドミル回転方向を向く内周面と上記溝部の溝底との交差部が、上記溝孔部のエンドミル回転方向とは反対側を向く内周面と上記エンドミル本体の外周面との交差稜線部よりも、上記エンドミル本体の内周側に位置していることを特徴とする。
【0010】
このように構成された刃先交換式エンドミルのエンドミル本体では、エンドミル本体の外周面に、溝孔部の開口部からエンドミル回転方向とは反対側に延びる溝部が形成されていて、溝孔部のエンドミル回転方向を向く内周面と溝部の溝底との交差部が、溝孔部のエンドミル回転方向とは反対側を向く内周面とエンドミル本体の外周面との交差稜線部よりも、エンドミル本体の内周側に位置しているので、エンドミル本体の回転に伴い、溝孔部のエンドミル回転方向とは反対側を向く内周面とエンドミル本体の外周面との交差稜線部を乗り越えた切屑が、溝孔部のエンドミル回転方向を向く内周面と溝部の溝底との交差部に噛み込まれることがなく、溝孔部のエンドミル本体外周面への開口部に引っ掛かることもない。
【0011】
このため、上述したエンドミル本体の軸線を横向きにして被削材の凹孔部を切削加工する場合のように、凹孔部の底面に切屑が溜まりやすいような状況で切削加工を行うときでも、溝孔部の開口部に引っ掛かった切屑がエンドミル本体の外周面に巻き付いて外周面と凹孔部の内周面との間で擦り付けられることにより溶着を生じるのを防ぐことができる。従って、このような切屑の溶着によって加工面が傷付けられることもなく、被削材の加工面を高品位に仕上げることができる。
【0012】
ここで、上記溝部は、上記軸線を中心とする円の接線方向に延びていてもよい。これにより、エンドミル回転方向とは反対側で溝部をエンドミル本体の外周面に切り上げることができるので、エンドミル本体の剛性を確保することができ、安定した切削加工を行うことができる。
【0013】
また、上記溝部は、上記軸線を中心とする円の円周方向に延びていてもよい。これにより、溝部がエンドミル本体の軸線を中心とする円の接線方向に延びている場合とは逆に、溝部がエンドミル本体の外周面に切れ上がることがなくなるので、この切れ上がった部分とエンドミル本体の外周面との交差稜線部に切屑が噛み込まれるような事態が生じるのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、溝孔部に引っ掛かった切屑がエンドミル本体の外周面に巻き付いて外周面と被削材の内周面との間で擦り付けられることにより溶着を生じるのを防ぐことができ、加工面の仕上げ面精度の高い高品位の切削加工を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1の実施形態を示す刃先交換式エンドミルの先端部の斜視図である。
図2図1に示す実施形態の刃先交換式エンドミルの側面図である。
図3図2におけるYY断面図である。
図4図2におけるZZ断面図である。
図5】本発明の第2の実施形態を示す刃先交換式エンドミルの先端部の斜視図である。
図6図5に示す実施形態の刃先交換式エンドミルの側面図である。
図7図6におけるYY断面図である。
図8図6におけるZZ断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1図4は、本発明の第1の実施形態に係わる刃先交換式エンドミルの先端部を示すものである。本実施形態の刃先交換式エンドミルのエンドミル本体1は、鋼材等の金属材料によって軸線Oを中心とした円柱状に形成されており、その先端部(図2および図3において左側部分)の外周には切削インサート2が着脱可能に取り付けられるインサート取付座3が形成されている。本実施形態では、複数(3つ)のインサート取付座3が周方向に間隔をあけて形成されている。
【0017】
このようなエンドミル本体1は、インサート取付座3に切削インサート2が取り付けられて刃先交換式エンドミルを構成する。そして、このように構成された刃先交換式エンドミルは、図示されない後端側のシャンク部が横型マシニングセンタ等の工作機械の主軸に把持されて、軸線O回りにエンドミル回転方向Tに回転されつつ、通常は軸線Oに垂直な方向に送り出されることより、インサート取付座3に取り付けられた切削インサート2の切刃によって被削材を切削加工する。
【0018】
切削インサート2は、エンドミル本体1よりも高硬度の超硬合金等の金属材料によって多角形の板状に形成され、具体的に本実施形態では平行四辺形の板状に形成されており、互いに反対側を向く2つの多角形面(平行四辺形面)21と、これらの多角形面21の周りに配置されて多角形面21の2つの長辺に連なる互いに反対側を向く2つの長側面22および多角形面21の2つの短辺に連なる互いに反対側を向く2つの短側面23とを備えている。
【0019】
ただし、2つの多角形面21は、これらの多角形面21の中心を通るインサート中心線に関して180°回転対称形状であるとともに、2つの多角形面21に関して表裏反転対称形状でもある。すなわち、上記インサート中心線方向に一方の多角形面(平行四辺形面)21に対向する方向から見たとき、この一方の多角形面(平行四辺形面)21の鋭角コーナ部の反対側に他方の多角形面(平行四辺形面)21の鈍角コーナ部が配置され、一方の多角形面(平行四辺形面)21の鈍角コーナ部の反対側に他方の多角形面(平行四辺形面)21の鋭角コーナ部が配置される。
【0020】
これら2つの多角形面21と長側面22との交差稜線部には、長側面22をすくい面とする主切刃24が形成されるとともに、長側面22と短側面23との交差稜線部には主切刃24の両端部に連なる副切刃25が形成されている。主切刃24と副切刃25とが交差するコーナ部には1/4凸円弧等の凸曲線状のコーナ刃が形成されている。なお、これら主切刃24と副切刃25の周辺において長側面22は、主切刃24および副切刃25から離れて内側に向かうに従い凹むように傾斜して形成されている。
【0021】
また、切削インサート2には、切削インサート2を貫通する上記インサート中心線を中心とする断面円形の取付孔26が形成されて2つの多角形面21の中央に開口している。さらに、長側面22には、この取付孔26と同軸となるような円筒面状の表面を有する凸部27が、主切刃24の内側の凹んだ部分に亙って主切刃24を越えない高さで形成されており、この凸部27と主切刃24および副切刃25から凹んで傾斜する部分を除いた部分の長側面22は平面状とされている。
【0022】
このような切削インサート2が取り付けられるインサート取付座3は、本実施形態ではエンドミル本体1の外周側を向く底面3aと、エンドミル回転方向T側を向く第1の壁面3bと、エンドミル本体1の軸線O方向の先端側を向く第2の壁面3cとを備えており、これらの底面3aと第1の壁面3bと第2の壁面3cとは、それぞれ互いに交差する方向に形成されている。なお、底面3aの中央にはネジ孔3dが形成されている。
【0023】
また、インサート取付座3のエンドミル回転方向T側には、エンドミル本体1の先端面に開口してインサート取付座3に連通し、インサート取付座3を越えてエンドミル本体1の後端側に延びるチップポケット4が形成されている。インサート取付座3は、このチップポケット4とエンドミル本体1の先端面および外周面とに開口する凹所として形成されている。
【0024】
このようなインサート取付座3に、切削インサート2は、1つの多角形面21を底面3aに密着させるとともに、1つの長側面22を第1の壁面3bに当接させ、また1つの短側面23を第2の壁面3cに当接させて着座させられ、上記取付孔26に挿通されたクランプネジ5が上記ネジ孔3dにねじ込まれることによって着脱可能に取り付けられる。こうして取り付けられた切削インサート2は、エンドミル本体1の外周側においてエンドミル回転方向Tに向けられた主切刃24と、この主切刃24のエンドミル本体1先端側に連なる副切刃25によって被削材に切削加工を行う。
【0025】
ここで、インサート取付座3の第1の壁面3bと第2の壁面3cとが交差する隅角部には、インサート取付座3とエンドミル本体1の外周面とに開口する断面円形の第1の溝孔部6aが形成されている。また、インサート取付座3の底面3aと第1の壁面3bとが交差する隅角部にも、インサート取付座3とエンドミル本体1の先端面に開口する断面円形の第2の溝孔部6bが形成されるとともに、底面3aと第2の壁面3cとが交差する隅角部にも、インサート取付座3とチップポケット4に開口する第3の溝孔部6cが形成されている。
【0026】
これら第1~第3の溝孔部6a~6cは、切削加工に使用されない切刃(主切刃24および副切刃25)や、切削インサート2の長側面22と短側面23との交差稜線部を収容して、切削インサート2がインサート取付座3と干渉するのを避けるためものであり、第1の溝孔部6aにはエンドミル本体1の後端側を向いてエンドミル回転方向Tとは反対側に位置する副切刃25が収容される。また、第2の溝孔部6bにはエンドミル本体1の内周側とエンドミル回転方向Tとは反対側に位置する主切刃24が収容され、第3の溝孔部6cにはエンドミル本体1の内周側に位置する長側面22とエンドミル本体1の後端側を向く短側面23との交差稜線部が収容される。
【0027】
なお、エンドミル本体1の外周面には、エンドミル本体1の軸線O方向にエンドミル本体1の先端面から第1の溝孔部6aの開口部を越えた位置まで、周方向にはチップポケット4の僅かにエンドミル回転方向Tとは反対側の位置からインサート取付座の第1の壁面3bおよび第1の溝孔部6aを僅かに越えた位置までに、円筒面状の外周面を軸線Oに平行な平面によって切り欠くようにして面取り面1aが形成されており、第1の溝孔部6aはこの面取り面1aに開口している。
【0028】
そして、このエンドミル本体1の外周面には、第1の溝孔部6aの開口部からエンドミル回転方向Tとは反対側に延びる溝部7が形成されている。従って、このような溝部7が形成されることにより、図4に示すように第1の溝孔部6aのエンドミル回転方向Tを向く内周面と溝部7の溝底との交差部Pは、第1の溝孔部6aのエンドミル回転方向Tとは反対側を向く内周面とエンドミル本体1の外周面(面取り面1a)との交差稜線部Qよりも、交差部Pにおける溝部7の溝深さdの分だけエンドミル本体1の内周側に位置することになる。
【0029】
ここで、本実施形態における溝部7は、溝底面が軸線Oに平行な断面において図3に示すように凹円弧状をなすように形成されており、この溝底面の最も凹んだ溝底を結ぶ溝底線が第1の溝孔部6aの中心線と交差して軸線Oに垂直な平面上に延びるように形成されている。また、本実施形態では、溝部7は、軸線Oを中心とする円の接線方向に延びており、すなわち上記溝底線が図4に示すように軸線Oを中心とする円の接線方向に延びていて、面取り面1aよりもエンドミル回転方向Tの反対側でエンドミル本体1の外周面に切れ上がっている。
【0030】
なお、エンドミル回転方向T側において、溝部7の軸線O方向の幅は、第1の溝孔部6aの開口部の幅と等しくされており、溝部7の溝底面とエンドミル本体1の外周面(面取り面1a)との交差稜線部が、第1の溝孔部6aのエンドミル回転方向Tとは反対側を向く内周面とエンドミル本体1の外周面(面取り面1a)との上記交差稜線部Qと滑らかに繋がるように形成されている。これにより、溝部7と第1の溝孔部6aの開口部とは、エンドミル本体1の外周側から見て図2に示すように、概略長円状(楕円状)あるいは卵形を呈するように形成される。
【0031】
このようなエンドミル本体1に切削インサート2を取り付けた刃先交換式エンドミルにより、上述のような横型マシニングセンタ等の工作機械によって被削材に横向きに開口した凹孔部の内周面を切削加工する場合、切削によって生成された切屑が溜まった凹孔部の底面を切削するときでも、エンドミル本体1の外周面において第1の溝孔部6aの開口部からエンドミル回転方向Tとは反対側に延びる溝部7の溝底と第1の溝孔部6aのエンドミル回転方向Tを向く内周面との交差部Pが、第1の溝孔部6aのエンドミル回転方向Tとは反対側を向く内周面とエンドミル本体1の外周面との交差稜線部Qよりも、エンドミル本体1の内周側に位置しているので、凹孔部の底面に溜まった切屑が上記交差稜線部Qを乗り越えても上記交差部Pに噛み込まれるのを防ぐことができる。
【0032】
このため、切屑がエンドミル本体1の外周面に開口する第1の溝孔部6aに引っ掛かってエンドミル本体1外周面に巻き付くのを防ぐことができ、こうして巻き付いた切屑がエンドミル本体1の外周面と被削材の内周面との間で擦り付けられて溶着を生じるのを防ぐことができる。従って、上記構成の刃先交換式エンドミルのエンドミル本体によれば、このようにエンドミル本体1の外周面に溶着した切屑によって被削材の加工面が傷付けられることもなく、加工面の仕上げ面精度を向上させて高品位の切削加工を行うことが可能となる。
【0033】
また、本実施形態では、上記溝部7が、エンドミル本体1の軸線Oを中心とする円の接線方向に延びており、上述のようにエンドミル回転方向Tの反対側においてエンドミル本体1の外周面に切れ上がっている。このため、本実施形態によれば、このような溝部7を形成しても、エンドミル本体1の先端部の剛性を確保することができ、安定した切削加工を行うことができる。
【0034】
ただし、この第1の実施形態では、このように溝部7がエンドミル本体1の軸線Oを中心とする円の接線方向に延びて、エンドミル回転方向Tの反対側でエンドミル本体1の外周面に切れ上がっているが、図5図8に示す本発明の第2の実施形態のように、溝部7がエンドミル本体1の軸線Oを中心とする円の円周方向に延びていてもよい。なお、これら図5図8に示す第2の実施形態において、図1図4に示した第1の実施形態と共通する部分には同一の符号を配してある。
【0035】
このような第2の実施形態の刃先交換式エンドミルのエンドミル本体1では、第1の実施形態のように溝部7がエンドミル回転方向Tの反対側においてエンドミル本体1の外周面に切れ上がることがなく、エンドミル回転方向Tとは反対側のチップポケット4に開口するので、切れ上がった溝部7とエンドミル本体1の外周面との交差稜線部に切屑が噛み込まれるようなこともなくなり、切屑の引っ掛かりを一層確実に防いで溶着の防止を図ることができる。
【0036】
なお、これら第1、第2の実施形態では、多角形(平行四辺形)の板状に形成された切削インサート2が、互いに反対側を向く2つの多角形面(平行四辺形面)21をエンドミル本体1の径方向に向けるとともに、これらの多角形面21の周りに配置された2つの長側面22のうち1つをすくい面としてエンドミル回転方向Tに向け、このすくい面とされた長側面22の辺稜部に形成された主切刃24および副切刃25を切削に使用する、いわゆる縦刃式のエンドミル本体1とされているが、多角形板状の切削インサートの多角形面をすくい面としてエンドミル回転方向Tに向け、この多角形面の辺稜部に形成された切刃を切削に使用するものであってもよい。
【0037】
このような場合には、すくい面としてエンドミル回転方向Tに向けられた多角形面とは反対のエンドミル回転方向Tとは反対側を向く多角形面が密着するインサート取付座の底面が、エンドミル本体1の軸線O方向を向く壁面と交差する方向に延びるエンドミル回転方向Tを向く壁面となる。
【0038】
また、第1、第2の実施形態と同様に縦刃式のエンドミル本体1であっても、例えば正三角形の板状の切削インサートを取り付ける場合などには、第1の壁面はエンドミル本体1の軸線O方向先端側とエンドミル回転方向Tとを向くとともに、第2の壁面はエンドミル本体1の軸線O方向後端側とエンドミル回転方向Tとを向いて、これら第1の壁面と第2の壁面とが互いに交差する方向に延びていてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 エンドミル本体
1a 面取り面
2 切削インサート
3 インサート取付座
3a インサート取付座3の底面
3b 第1の壁面
3c 第2の壁面
4 チップポケット
5 クランプネジ
6a 第1の溝孔部(エンドミル本体1の外周面に開口して内周側に延びる溝孔部)
7 溝部
24 主切刃(切刃)
25 副切刃(切刃)
O エンドミル本体1の軸線
T エンドミル回転方向
P 第1の溝孔部6aのエンドミル回転方向Tを向く内周面と溝部7の溝底との交差部
Q 第1の溝孔部6aのエンドミル回転方向Tとは反対側を向く内周面とエンドミル本体1の外周面(面取り面1a)との交差稜線部Q
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8