IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社神島組の特許一覧

<>
  • 特許-小割用工具および小割方法 図1A
  • 特許-小割用工具および小割方法 図1B
  • 特許-小割用工具および小割方法 図2
  • 特許-小割用工具および小割方法 図3
  • 特許-小割用工具および小割方法 図4
  • 特許-小割用工具および小割方法 図5
  • 特許-小割用工具および小割方法 図6
  • 特許-小割用工具および小割方法 図7
  • 特許-小割用工具および小割方法 図8
  • 特許-小割用工具および小割方法 図9
  • 特許-小割用工具および小割方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】小割用工具および小割方法
(51)【国際特許分類】
   E21C 27/12 20060101AFI20230314BHJP
【FI】
E21C27/12
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022152083
(22)【出願日】2022-09-26
【審査請求日】2022-09-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】399048869
【氏名又は名称】株式会社神島組
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】神島 昭男
(72)【発明者】
【氏名】神島 充子
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特許第7087251(JP,B1)
【文献】特開2019-124009(JP,A)
【文献】特開2016-160703(JP,A)
【文献】特許第6963339(JP,B1)
【文献】特許第6842144(JP,B1)
【文献】特許第6387505(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21C 25/00-51/00
E21B 1/00-49/10
B01C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大割破砕物を小割する小割用工具であって、
中央に上下方向に貫通する中央貫通孔が設けられることで上方からの平面視で環形状に仕上げられるとともに前記大割破砕物を上方から覆いながら近接可能に設けられる台座と、
上下方向に延設された軸体構造を有し、前記中央貫通孔に対して上方から圧入されて前記台座に固定される第1先端部と、外部から打撃力を受ける第1後端部と、前記第1後端部で受けた打撃力を前記台座に伝達する中央部と、を有する軸状体と、
前記第1先端部において下面から上方に窪んだ凹部で構成される、圧入取付部位に圧入される第2後端部と、前記第2後端部が前記圧入取付部位に圧入されることで前記台座の下面から下方に突設されて破砕部として機能する第2先端部と、を有する中央破砕部材と、
前記中央貫通孔の周辺において前記台座に貫通して設けられる周辺貫通孔で構成される、圧入貫通部位に圧入される第3後端部と、前記第3後端部が前記圧入貫通部位に圧入されることで前記台座の下面から下方に突設されて破砕部として機能する第3先端部と、を有する周辺破砕部材と、を備え、
前記軸状体は、前記中央貫通孔への前記第1先端部の圧入によって発生する前記中央貫通孔と前記第1先端部との焼付きによって前記台座に固着され、
前記中央破砕部材は、前記圧入取付部位への前記第2後端部の圧入によって発生する前記圧入取付部位と前記第2後端部との焼付きによって前記軸状体に固着され、
前記周辺破砕部材は、前記圧入貫通部位への前記第3後端部の圧入によって発生する前記圧入貫通部位と前記第3後端部との焼付きによって前記台座に固着される、
ことを特徴とする小割用工具。
【請求項2】
請求項1に記載の小割用工具であって、
前記圧入貫通部位は下方に進むのに伴って内径が広がる第2裾広がり形状を有する一方、前記第2裾広がり形状に対応して前記第3後端部は上方に進むのに伴って外径が小さくなる先細り形状を有し、
前記周辺破砕部材は、前記第3後端部が前記圧入貫通部位から上方に突出した状態で、前記台座に固着され、前記第3後端部に対して外部から下方に向かって押下可能となっている、小割用工具。
【請求項3】
請求項1に記載の小割用工具であって、
前記圧入貫通部位は下方に進むのに伴って内径が広がる第2裾広がり形状を有する一方、前記第2裾広がり形状に対応して前記第3後端部は上方に進むのに伴って外径が小さくなる先細り形状を有し、
前記周辺破砕部材は、前記第3後端部が前記圧入貫通部位に埋没した状態で、前記台座に固着され、上方から前記圧入貫通部位に挿入される第1押出棒により前記第3後端部に対して外部から下方に向かって押下可能となっている、小割用工具。
【請求項4】
請求項2または3に記載の小割用工具であって、
前記第3後端部および前記圧入貫通部位のうちの少なくとも一方に対し、潤滑剤を下方に注入するための溝が設けられている、小割用工具。
【請求項5】
大割破砕物を小割する小割用工具であって、
中央に上下方向に貫通する中央貫通孔が設けられることで上方からの平面視で環形状に仕上げられる台座と、前記台座の下面から下方に向かって突設される先細り形状の周辺破砕部材とが一体化され、前記周辺破砕部材を前記大割破砕物に対向させながら近接可能に設けられる破砕ヘッドと、
上下方向に延設された軸体構造を有し、前記中央貫通孔に対して上方から圧入されて固定される第1先端部と、外部から打撃力を受ける第1後端部と、前記第1後端部で受けた打撃力を前記台座に伝達する中央部と、を有する軸状体と、
前記第1先端部において下面から上方に窪んだ凹部で構成される、圧入取付部位に圧入される第2後端部と、前記第2後端部が前記圧入取付部位に圧入されることで前記台座の下面から下方に突設されて破砕部として機能する第2先端部と、を有する中央破砕部材と、を備え、
前記軸状体は、前記中央貫通孔への前記第1先端部の圧入によって発生する前記中央貫通孔と前記第1先端部との焼付きによって前記台座に固着され、
前記中央破砕部材は、前記圧入取付部位への前記第2後端部の圧入によって発生する前記圧入取付部位と前記第2後端部との焼付きによって前記軸状体に固着される、
ことを特徴とする小割用工具。
【請求項6】
請求項1、2、3または5に記載の小割用工具であって、
前記圧入取付部位は下方に進むのに伴って内径が広がる第1裾広がり形状を有する一方、前記第1裾広がり形状に対応して前記第2後端部は上方に進むのに伴って外径が小さくなる先細り形状を有し、
前記軸状体は、その上端部から前記圧入取付部位に連通して外部から下方に向かって押下される第2押出棒を挿通するための押出用貫通孔を有する、小割用工具。
【請求項7】
請求項6に記載の小割用工具であって、
前記第2後端部および前記圧入取付部位のうちの少なくとも一方に対し、潤滑剤を下方に注入するための溝が設けられている、小割用工具。
【請求項8】
請求項1、2、3または5に記載の小割用工具であって、
前記台座の上面周縁部のうち前記軸状体を中心として互いに軸対称な複数の周縁部位をそれぞれ上方に付勢する付勢部をさらに備える、小割用工具。
【請求項9】
請求項1、2、3または5に記載の小割用工具を用いて大割破砕物を小割する小割方法であって、
前記大割破砕物の上方に前記小割用工具を配置する工程と、
前記軸状体の前記第1後端部に対して下方に向けた外力を付与することで、互いに異なる位置で複数の前記破砕部の後端部により前記大割破砕物を打撃して破砕する工程と、を備えることを特徴とする小割方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、岩盤、岩石、コンクリート構造物などの被破砕物を破砕した際に生じる比較的大きな破片(以下「大割破砕物」という)を小割するための小割用工具および当該工具を用いた小割方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば岩盤破砕を伴う現場では、発破や本願発明者が開発した楔式岩盤破砕機によって岩盤を破砕するが、破砕粒度はある程度の分布を持ち、大割破砕物はそのままでは大き過ぎ、搬出作業に支障を来す。このため、岩盤破砕後に、大割破砕物を更に小さく破砕する、いわゆる小割作業が行われることがある。この小割作業を効率的に行うために、特許文献1に記載の小割用工具および小割方法が提案されている。
【0003】
この小割用工具は、先細り形状の破砕部を台座の下面から突設させたものである。そして、大割破砕物の上方から台座を大割破砕物に近接することで、台座の近接方向と直交する仮想面内において、複数の破砕部の先端部が互いに異なる位置で大割破砕物を打撃することで、小割作業が実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第7087251号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記小割用工具では、小割作業中に破砕部に対して多大な荷重と振動が加わる。そのため、特許文献1に記載されているように、破砕部を溶接によって台座に連結した構造を有する小割用工具により比較的低硬度の大割破砕物を小割するケースについては特段の問題は発生しないが、大割破砕物の硬度が上昇するのに伴い、溶接個所の破損により破砕部が台座から外れる可能性が高くなり、小割用工具の寿命を縮めるという問題がある。また、小割用工具の短寿命化は小割作業のラニングコストの増大を招く。
【0006】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、大割破砕物を効率的に小割することができる小割用工具の長寿命化および小割作業の低ラニングコスト化を図ることができる、小割用工具および当該工具を用いた小割方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の第1の態様は、大割破砕物を小割する小割用工具であって、中央に上下方向に貫通する中央貫通孔が設けられることで上方からの平面視で環形状に仕上げられるとともに大割破砕物を上方から覆いながら近接可能に設けられる台座と、上下方向に延設された軸体構造を有し、中央貫通孔に対して上方から圧入されて台座に固定される第1先端部と、外部から打撃力を受ける第1後端部と、第1後端部で受けた打撃力を台座に伝達する中央部と、を有する軸状体と、第1先端部において下面から上方に窪んだ凹部で構成される、圧入取付部位に圧入される第2後端部と、第2後端部が圧入取付部位に圧入されることで台座の下面から下方に突設されて破砕部として機能する第2先端部と、を有する中央破砕部材と、中央貫通孔の周辺において台座に貫通して設けられる周辺貫通孔で構成される、圧入貫通部位に圧入される第3後端部と、第3後端部が圧入貫通部位に圧入されることで台座の下面から下方に突設されて破砕部として機能する第3先端部と、を有する周辺破砕部材と、を備え、軸状体は、中央貫通孔への第1先端部の圧入によって発生する中央貫通孔と第1先端部との焼付きによって台座に固着され、中央破砕部材は、圧入取付部位への第2後端部の圧入によって発生する圧入取付部位と第2後端部との焼付きによって軸状体に固着され、周辺破砕部材は、圧入貫通部位への第3後端部の圧入によって発生する圧入貫通部位と第3後端部との焼付きによって台座に固着される、ことを特徴としている。
【0008】
また、この発明の第2の態様は、大割破砕物を小割する小割用工具であって、中央に上下方向に貫通する中央貫通孔が設けられることで上方からの平面視で環形状に仕上げられる台座と、台座の下面から下方に向かって突設される先細り形状の周辺破砕部材とが一体化され、周辺破砕部材を大割破砕物に対向させながら近接可能に設けられる破砕ヘッドと、上下方向に延設された軸体構造を有し、中央貫通孔に対して上方から圧入されて固定される第1先端部と、外部から打撃力を受ける第1後端部と、第1後端部で受けた打撃力を台座に伝達する中央部と、を有する軸状体と、第1先端部において下面から上方に窪んだ凹部で構成される、圧入取付部位に圧入される第2後端部と、第2後端部が圧入取付部位に圧入されることで台座の下面から下方に突設されて破砕部として機能する第2先端部と、を有する中央破砕部材と、を備え、軸状体は、中央貫通孔への第1先端部の圧入によって発生する中央貫通孔と第1先端部との焼付きによって台座に固着され、中央破砕部材は、圧入取付部位への第2後端部の圧入によって発生する圧入取付部位と第2後端部との焼付きによって軸状体に固着される、ことを特徴としている。
【0009】
さらに、この発明の第3の態様は、上記小割用工具を用いて大割破砕物を小割する小割方法であって、大割破砕物の上方に小割用工具を配置する工程と、軸状体の第1後端部に対して下方に向けた外力を付与することで、互いに異なる位置で複数の破砕部の先端部により大割破砕物を打撃して破砕する工程と、を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明によれば、小割用工具の寿命を伸ばすとともに、小割作業の低ラニングコスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A】本発明に係る小割用工具および当該工具を用いた小割方法の第1実施形態を示す図である。
図1B】小割用工具を下方から見た図である。
図2】小割用工具の台座を示す図である。
図3】小割用工具の分解組立図である。
図4】第1実施形態における台座に対する軸状体、中央破砕部材、周辺破砕部材の装着および取り外し手順を模式的に示す図である。
図5】第2実施形態における台座に対する軸状体、中央破砕部材、周辺破砕部材の装着および取り外し手順を模式的に示す図である。
図6】本発明に係る小割用工具の第3実施形態を示す図である。
図7】小割用工具の台座の他の例を示す図である。
図8】小割用工具の台座の別の例を示す図である。
図9】小割用工具の台座のさらに別の例を示す図である。
図10】本発明に係る小割用工具の第4実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1Aは本発明に係る小割用工具および当該工具を用いた小割方法の第1実施形態を示す図であり、図1Bは小割用工具を下方から見た図である。また、図2は小割用工具の台座を示す図であり、同図(a)が小割用工具を上方から見た図であり、同図(b)が同図(a)のB-B線矢視断面図であり、同図(c)が小割用工具を下方から見た図である。さらに、図3は小割用工具の分解組立図である。なお、これらの図面および後で説明する図面においては、理解容易の目的で、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。
【0013】
この小割用工具1は、図1Aに示すように、岩盤破砕を伴う現場において使用されるバックホウ等の建設車両100に取り付けられ、岩盤を破砕した際に発生する大割破砕物200を更に小さく破砕するための工具である。より詳しくは、建設車両100のアーム101にブラケット102を介して油圧ブレーカー103が取り付けられている。この油圧ブレーカー103はブレーカー本体(図示省略)を備えている。また、このブレーカー本体は、中央部にシリンダーを有している。そして、不図示の油圧供給源から切換弁を介してシリンダーへ圧油を供給することにより、シリンダー内に摺嵌されるピストンが軸方向に前後進可能になっている。
【0014】
ブレーカー本体の先端部(図1Aの下方側端部)に、小割用工具1が装着される。この小割用工具1は、図1A図1B図2および図3に示すように、中央に上下方向Zに貫通する中央貫通孔21が設けられることで上方からの平面視で円環形状に仕上げられたリング状の台座2を有している。台座2の下面22は、地面に置かれた大割破砕物200や積み上げられた大割破砕物200の全体あるいは一部を上方から覆うことが可能な平面サイズを有している。そして、この台座2では、中央貫通孔21は図2(b)に示すように下方に進むのに伴って内径が小さくなる先細り形状を有しており、次に説明する軸状体3の先端部31が圧入されて取り付けられる部位、つまり軸状体固定用の圧入貫通部位として機能する。また、この中央貫通孔21を取り囲むように4個の周辺貫通孔23が本発明の「圧入貫通部位」の一例として設けられている。
【0015】
中央貫通孔21に対し、軸状体3が取り付けられる。軸状体3は、図3に示すように、上下方向Zに延設された軸体構造を有し、中央貫通孔21に対して上方から圧入されて台座2に固定される先端部31と、外部から打撃力を受ける後端部32と、後端部32で受けた打撃力を台座2に伝達する中央部33と、を有する。より詳しくは、軸状体3の先端部31は下方に進むのに伴って外径が小さくなる先細り形状を有している。このように軸状体3の先端部31は中央貫通孔21に対して圧入自在に構成されている。なお、先端部31において下面から上方に窪んだ凹部34が本発明の「圧入取付部位」の一例として設けられている。したがって、軸状体3の先端部31が中央貫通孔21に圧入されると、その際に発生する中央貫通孔21の内壁面と先端部31との焼付きによって軸状体3が台座2に固着される。なお、圧入時に振動を適宜加えてもよく、この点については以下に説明する圧入固着においても同様である。
【0016】
こうした固着処理により、凹部34の開口は下方を臨む状態で軸状体3が台座2に固着される。本実施形態では、凹部34は、図3に示すように、下方に進むのに伴って内径が広がる第1裾広がり形状を有している。そして、当該凹部34に対し、中央破砕部材4が圧入されて軸状体3に固着される。この中央破砕部材4は、後端部41および先端部42を有する。後端部41は、凹部34の形状、つまり第1裾広がり形状に対応し、上方に進むのに伴って外径が小さくなる先細り形状を有している。そして、中央破砕部材4は、凹部(圧入取付部位)34への後端部41の圧入によって発生する凹部34の内壁面と後端部41との焼付きによって軸状体3に固着される。その結果、先端部42が台座2の下面22から下方に突設されて本発明の「破砕部」として機能する。
【0017】
また、本実施形態では、大割破砕物200の打撃に伴う中央破砕部材4の摩耗を考慮し、超硬芯44が、その下端部が先端部42から下方に突出するように、先端部42に取り付けられている。すなわち、常温において先端部42に設けられた凹部(図4中の符号43)の内径が超硬芯44の外径よりも若干小さくなるように、凹部43が加工されている。この先端部42を高温に加熱して凹部43の内径を予め超硬芯44の外径よりも若干広げておく。そして、超硬芯44の上端部が先端部42の凹部43に挿入された後、先端部42の温度を常温まで低下させる。これによって、先端部42に対して超硬芯44が強固に固定される。この超硬芯44は、先端部42よりも高い硬度を有している。このため、超硬芯44を設けていない場合に比べ、先端部42の耐摩耗性が向上し、工具の長寿命化が可能となる。この点については、次に説明する周辺破砕部材5においても同様である。
【0018】
各周辺貫通孔(圧入貫通部位)23は、図2および図3に示すように、下方に進むのに伴って内径が広がる第2裾広がり形状を有している。そして、周辺貫通孔23に周辺破砕部材5が固着される。周辺破砕部材5は、下方から周辺貫通孔23に圧入される後端部51と、後端部51が周辺貫通孔23に圧入されることで台座2の下面22から下方に突設されて破砕部として機能する先端部52と、を有する。周辺破砕部材5の後端部51は、周辺貫通孔23の形状、つまり第2裾広がり形状に対応し、上方に進むのに伴って外径が小さくなる先細り形状を有している。そして、周辺破砕部材5は、周辺貫通孔(圧入貫通部位)23への後端部51の圧入によって、図1Aに示すように、後端部51が台座2の上面24から上方に突出する。また、この圧入時において発生する周辺貫通孔23の内壁面と後端部51との焼付きによって、周辺破砕部材5が台座2に固着される。その結果、先端部52が台座2の下面22から下方に突設されて本発明の「破砕部」として機能する。また、中央破砕部材4と同様に、周辺破砕部材5の凹部53に対しても超硬芯54を設けることで、上記理由により、先端部52の耐摩耗性が向上し、工具の長寿命化が可能となる。
【0019】
このように本実施形態では、5本の破砕部(=1つの先端部42+4つの先端部52)が、図1Bに示すように、台座2を下方から見た平面視で、マトリックス状に配置されている、つまり台座2の下面22内で二次元的に分散配置されている。したがって、特許文献1と同様に、上記のように構成された小割用工具1を大割破砕物200の上方から下降させると、5本の破砕部のうち複数の破砕部が大割破砕物200に当接し、大割破砕物200の破砕に寄与する。なお、破砕の進行形態については、特許文献1と同一であるため、ここでは説明を省略する。
【0020】
ここで、本実施形態と特許文献1に記載の装置とを外観および機能動作を比較すると、実質的に近似しているが、台座2に固定するための構造および固着力は大きく相違している。すなわち、特許文献1では溶接により破砕部を台座2に固着しているのに対し、本実施形態では圧入する(適宜、振動を追加する)ことで焼付きを発生させて固着している。より詳しくは、軸状体3は、中央貫通孔21への先端部31の圧入(+振動)によって発生する中央貫通孔21の内壁面と先端部31との焼付きによって台座2に固着される。中央破砕部材4は、凹部(圧入取付部位)34への後端部41の圧入(+振動)によって発生する凹部34の内壁面と後端部41との焼付きによって軸状体3に固着される。つまり、軸状体3の先端部31を介して台座2に固着される。また、周辺破砕部材5は、周辺貫通孔23(圧入貫通部位)への後端部51の圧入(+振動)によって発生する周辺貫通孔23の内壁面と後端部51との焼付きによって台座2に固着される。例えば図3中の1点鎖線で示すように、中央貫通孔21への先端部31の挿入、凹部34への後端部41の挿入および周辺貫通孔23への後端部51の挿入を行うことで仮組立状態の小割用工具1を鋼板などの硬質構造体上にセットし、超硬芯44、54を鋼板の上面に当接させたままでブレーカー103などにより打撃力を軸状体3の後端部32に与えることで上記圧入および振動を小割用工具1に加え、これによって、上記焼付き(=中央貫通孔21の内壁面と先端部31との焼付き+凹部34の内壁面と後端部41との焼付き+周辺貫通孔23の内壁面と後端部51との焼付き)を一括して発生させてもよい。また、別の方法により、上記焼付きを一括または個別に発生させ、台座2に対して軸状体3、中央破砕部材4および周辺破砕部材5を固着させてもよい。
【0021】
このように、本実施形態では、機械構造物を設計する上で回避すべきとされていた「焼付き」を利用することで、台座2に対する軸状体3、中央破砕部材4および周辺破砕部材5の固着力を特許文献1に記載の発明よりも高めている。したがって、小割用工具1の寿命を伸ばし、小割作業のラニングコスト低下を図ることができる。
【0022】
ところで、上記のように台座2に対して軸状体3、中央破砕部材4および周辺破砕部材5が装着された小割用工具1は、図4の(a)欄に示す状態で、大割破砕物200(図1A参照)の小割に使用される。そして、小割用工具1の稼働に伴って中央破砕部材4および周辺破砕部材5が消耗し、小割能力が低下することがある。また、小割用工具1の一部が破損することもある。これらを考慮し、本実施形態では、図3に示すように、軸状体3に押出棒61、62をセットするための貫通孔35が軸状体3の軸線に沿って上下方向Zに設けられ、凹部34に連通している。また、図示を省略するが、軸状体3において、上下方向Zに延びる複数本の溝が先端部31の(+Z)側端部に設けられている。中央破砕部材4において、上下方向Zに延びる複数本(本実施形態では3本)の溝45が後端部41の(+Z)側端部に設けられている。さらに、周辺破砕部材5において、上下方向Zに延びる複数本(本実施形態では3本)の溝55が後端部51の(+Z)側端部に設けられている。これら貫通孔35、溝45、55は、台座2から軸状体3、中央破砕部材4や周辺破砕部材5を取り外す際に潤滑剤の注入経路として機能し、図4の(b)欄および(c)欄に示すようにして、軸状体3、中央破砕部材4、周辺破砕部材5の取り外しが実行される。
【0023】
図4は第1実施形態における台座に対する軸状体、中央破砕部材、周辺破砕部材の装着および取り外し手順を模式的に示す図である。ここで、(b)欄および(c)欄を参照しつつ、軸状体3、中央破砕部材4および周辺破砕部材5の全てを台座2から取り外す手順について説明するが、一部のみを取り外すことも可能である。ただし、軸状体3を取り外す場合には、中央破砕部材4の取り外し作業を伴う。
【0024】
図4の(b)欄に示すように、中央破砕部材4および周辺破砕部材5の取り外しは、2段階動作M1、M2を含む。つまり、貫通孔35および溝45、55を利用して潤滑剤(例えば呉工業株式会社製の「クレ5-56」)を焼付き箇所およびそれらの近傍に注入する(動作M1)。そして、貫通孔35に押出棒61を(+Z)方向側から挿入した後で押出棒61の(+Z)方向側端部に対してブレーカー103などにより打撃力を加える(動作M2)。また、台座2の上面24から上方に突出した後端部51に対してブレーカー103などにより打撃力を加える(動作M2)。これらによって、中央破砕部材4および周辺破砕部材5が(-Z)方向に取り外される。
【0025】
また、図4の(c)欄に示すように、軸状体3の取り外しも、2段階動作M3、M4を含む。つまり、先端部31に設けられた溝(図示省略)を利用して潤滑剤を焼付き箇所およびそれらの近傍に注入する(動作M3)。そして、凹部34の(-Z)方向側の開口から押出棒62を挿入し、押出棒62の(+Z)方向端部に設けられた段差部を、凹部34と貫通孔35との接続部で形成される段差部に係止させた後で、押出棒62の(-Z)方向側端部に対してブレーカー103などにより打撃力を加える(動作M4)。これらによって、軸状体3が台座2から(+Z)方向に取り外される。
【0026】
このように、本実施形態では、台座2に対して軸状体3、中央破砕部材4および周辺破砕部材5を取り外し可能となっており、消耗または破損した部品(台座2、軸状体3、中央破砕部材4、周辺破砕部材5)を取り替え、図4の(a)欄に示すように、装着することで再使用可能となっている。その結果、小割用工具1のランニングコストを抑制することができる。
【0027】
図5は第2実施形態における台座に対する軸状体、中央破砕部材、周辺破砕部材の装着および取り外し手順を模式的に示す図である。第2実施形態が第1実施形態と大きく相違する点は、後端部51が台座2の上面24から上方に突出しない、つまり周辺貫通孔23内に埋設される形で周辺破砕部材5が台座2に固着される点と、それに対応して周辺破砕部材5を取り外すための専用の押出棒63が用いられる点とである。なお、それ以外の構成および取り外し手順は第1実施形態と基本的に同一である。したがって、以下のおいては、相違点を中心に説明し、同一構成および動作については同一符号を付して説明を省略する。
【0028】
図5の(b)欄に示すように、中央破砕部材4および周辺破砕部材5の取り外しは、2段階動作M1、M2を含む。つまり、貫通孔23、35および溝45、55を利用して潤滑剤を焼付き箇所およびそれらの近傍に注入する(動作M1)。そして、貫通孔23、35にそれぞれ押出棒63、61を(+Z)方向側から挿入した後で押出棒63、61の(+Z)方向側端部に対してブレーカー103などにより打撃力を加える(動作M2)。
【0029】
ところで、特許文献1に記載されているように、作業員の建設車両100の操作により小割用工具1が下降したときに、大割破砕物200に対する5本の破砕部(=1つの先端部42+4つの先端部52)の当接タイミングや当接個数などは不規則である。また、破砕部が大割破砕物200に当接した直後に大割破砕物200が回転して傾いたり、大割破砕物200の表面を滑ったりすることがある。また、両者が同時に発生することもある。したがって、各破砕部を介して台座2に与えられる応力は変動し、小割用工具1の姿勢も変化する。その結果、小割作業を安定して行うことが難しくなることがある。そこで、小割用工具1の姿勢を安定化させる安定化機構を小割用工具1に追加装備してもよい(第3実施形態)。
【0030】
図6は本発明に係る小割用工具の第3実施形態を示す図である。この第3実施形態が第1実施形態と相違している点は、台座2の上面周縁部のうち軸状体3を中心として互いに軸対称な複数の周縁部位にアイボルト7が固定されている点と、各アイボルト7と油圧ブレーカー103に取り付けられたアタッチメント104との間に安定化機構8が介挿されている点とである。安定化機構8は、ターンバックル81およびコイルバネ82が直列に介挿された連結部材83で構成されている。コイルバネ82は台座2を上方に付勢しており、本発明の「付勢部」の一例に相当している。安定化機構8の下端部は、台座25の周縁部において上下方向Zに貫通して設けられた貫通孔25に挿通されたアイボルト7に接続される一方、上端部はアタッチメント104に接続されている。そして、小割用工具1を使用する前に、各ターンバックル81を調整することで台座2に作用する付勢力を均一化することができる。こうした調整を行った小割用工具1を小割処理に使用した際に、破砕部の一部が大割破砕物200に当接して小割用工具1の姿勢が変動しようとしても、コイルバネ82の付勢力によって小割用工具1の姿勢変動が抑制される。その結果、小割作業を安定して行うことが可能となるとともに、小割用工具1の破損などを効果的に防止することができる。なお、安定化機構8の上方端については、上記アタッチメント104以外に、ブレーカー本体に装着してもよい。また、安定化機構8の個数も「2」に限定されるものではなく、3以上であってもよい。
【0031】
上記した実施形態では、先端部31、42、52がそれぞれ本発明の「第1先端部」、「第2先端部」および「第3先端部」の一例に相当している。また、後端部32、41、51がそれぞれ本発明の「第1後端部」、「第2後端部」および「第3後端部」の一例に相当している。また、押出棒63、61がそれぞれ本発明の「第1押出棒」および「第2押出棒」の一例に相当している。軸状体3の貫通孔35が本発明の「押出用貫通孔」の一例に相当している。
【0032】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば上記実施形態では、5個の破砕部(=1つの先端部42+4つの先端部52)を、台座2を下方から見た平面視で、マトリックス状および先端部42を中心として対称に二次元的に分散配置しているが、先端部52の個数は「4」に限定されるものではなく、例えば図7に示すように、「3」であってもよい。また、配置態様も、ランダムに二次元的に分散配置してもよい。
【0033】
また、上記実施形態では、台座2に設ける周辺貫通孔23の個数を周辺破砕部材5の個数と一致させているが、例えば図8に示すように周辺破砕部材5の個数よりも多くの周辺貫通孔23を設けてもよい。この場合、任意の周辺貫通孔23に周辺破砕部材5を圧入して固着してもよく、小割用工具1の汎用性を高めることができる。
【0034】
また、上記実施形態では、台座2の下面22を略水平面に仕上げているが、下面形状はこれに限定されるものではなく、例えば下方に向けて凹状に湾曲した湾曲面であってもよい。また、これに応じて周辺破砕部材5の先端部52が中央破砕部材4の先端部42の先端延長先を向くように配置してもよい。
【0035】
また、上記実施形態では、上方からの平面視で円環形状に仕上げられたリング状の台座2を用いるが、環形状全般、例えば図9に示すように矩形体の中央に円形貫通孔を設けた形状に仕上げられた台座2を用いてもよい。
【0036】
また、上記実施形態では、潤滑剤を注入するための溝を軸状体3、中央破砕部材4および周辺破砕部材5に設けているが、それらの代わり又はそれらと一緒に、中央貫通孔21の内壁面、凹部34の内壁面(圧入取付部位)、および周辺貫通孔23の内壁面(圧入貫通部位)に溝を設けてもよい。これらによって、潤滑剤を焼付き箇所およびそれらの近傍に効率的に注入することができる。
【0037】
また、上記実施形態では、台座2の周辺貫通孔23に周辺破砕部材5を圧入することで台座2に周辺破砕部材5を固着しているが、例えば図10に示すように、台座2と周辺破砕部材5とを一体化した破砕ヘッド9を用いてもよい(第4実施形態)。
【0038】
図10は本発明に係る小割用工具の第4実施形態を示す図である。この第4実施形態では、破砕ヘッド9は、台座2に相当する台座部位91を有しており、当該台座部位91の中央に対して中央貫通孔21に相当する貫通孔92が上下方向Zに貫通して設けられている。この中央貫通孔92に対して軸状体3の先端部31が圧入されて固着される。また、第4実施形態では、上下方向Zに延設された円柱形状の金属体を下方から削り出すことで中央貫通孔92を取り囲むように4個の下方突起部93が形成される。各下方突起部93は下方に進むのに伴って外径が小さくなる先細り形状を有し、周辺破砕部材5の先端部52に相当している。なお、図10中の符号94は、超硬芯を示しており、第1実施形態ないし第3実施形態における超硬芯54に相当する。したがって、周辺破砕部材5の交換は不可である点を除き、第1実施形態ないし第3実施形態に係る小割用工具1と同様の構成を有しており、小割用工具1の寿命を伸ばすとともに、小割作業の低ラニングコスト化を図ることができる。
【0039】
さらに、上記実施形態では、岩盤掘削現場で発生した大割破砕物200を破砕対象としているが、その他の現場、例えば道路解体現場や建造物解体現場などで発生する大割破砕物を破砕する際にも、本発明に係る小割用工具を使用することで小割作業を効率的に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
この発明は、岩盤、岩石、コンクリート構造物などの被破砕物を破砕した際に生じる大割破砕物を小割するための小割技術全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1…小割用工具
2…台座
3…軸状体
4…中央破砕部材
5…周辺破砕部材
9…破砕ヘッド
21,92…中央貫通孔
22…(台座の)下面
23…周辺貫通孔(圧入貫通部位)
24…(台座の)上面
31,42,52…先端部
32,41,51…後端部
33…中央部
34…凹部(圧入取付部位)
45,55…溝
61…(第2)押出棒
63…(第1)押出棒
82…コイルバネ(付勢部)
200…大割破砕物
Z…上下方向
【要約】
【課題】大割破砕物を効率的に小割することができる小割用工具の長寿命化および小割作業の低ラニングコスト化を図る。
【解決手段】この発明では、軸状体は、中央貫通孔への第1後端部の圧入によって発生する中央貫通孔と第1後端部との焼付きによって台座に固着され、中央破砕部材は、圧入取付部位への第2後端部の圧入によって発生する圧入取付部位と第2後端部との焼付きによって軸状体に固着され、周辺破砕部材は、圧入貫通部位への第3後端部の圧入によって発生する圧入貫通部位と第3後端部との焼付きによって台座に固着される。
【選択図】図3
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10