(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】エアゾール型毛髪化粧品
(51)【国際特許分類】
A61K 8/49 20060101AFI20230314BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20230314BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20230314BHJP
A61Q 5/10 20060101ALI20230314BHJP
A61Q 5/12 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
A61K8/49
A61K8/02
A61Q5/00
A61Q5/10
A61Q5/12
(21)【出願番号】P 2017177050
(22)【出願日】2017-09-14
【審査請求日】2018-12-12
【審判番号】
【審判請求日】2021-04-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【氏名又は名称】大谷 保
(72)【発明者】
【氏名】駒場 真吾
【合議体】
【審判長】阪野 誠司
【審判官】齊藤 真由美
【審判官】冨永 保
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-326812(JP,A)
【文献】特開昭63-258403(JP,A)
【文献】特開2009-137877(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99, A61Q 1/00-90/00
CAPLUS/MEDLINE/KOSMET/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物又はその塩である成分(A)、
アルカリ剤、並びに、
増粘剤 0.5~3質量%、
を含有し、25℃における粘度が14,000~25,000mPa・sである毛髪化粧料原液と、噴射剤である圧縮窒素とを、二重構造を有するエアゾール容器に充填したエアゾール型毛髪化粧品であり、
前記増粘剤が、
カルボキシビニルポリマー又はその塩、あるいは、
カルボキシメチルセルロース又はその塩と、カルボキシビニルポリマー又はその塩との組み合わせ、
のうちいずれか1種であり、
前記エアゾール容器から吐出された毛髪化粧料の比容積が
0.9~1.5mL/gである、エアゾール型毛髪化粧品。
【化1】
〔式中、破線はπ結合の存在又は不存在を示す。R
1は水酸基又はアセトキシ基を示す。R
2は水素原子、又は-COOR(Rは水素原子、メチル基又はエチル基)を示す。R
3は水素原子、アセチル基、メチル基又はエチル基を示す。〕
【請求項2】
前記毛髪化粧料原液中の前記アルカリ剤の含有量が0.01~10質量%である、請求項1に記載のエアゾール型毛髪化粧品。
【請求項3】
前記毛髪化粧料原液が、さらに界面活性剤を0.01~10質量%含有する、請求項1又は2に記載のエアゾール型毛髪化粧品。
【請求項4】
前記毛髪化粧料が染毛剤又はコンディショニング剤である、請求項1~3のいずれか1項に記載のエアゾール型毛髪化粧品。
【請求項5】
前記増粘剤がカルボキシメチルセルロースナトリウム及びカルボキシビニルポリマーである、請求項1~4のいずれか1項に記載のエアゾール型毛髪化粧品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール型毛髪化粧品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、白髪染め用の染毛剤として、メラニン前駆体である、5,6-ジヒドロキシインドール、5,6-ジヒドロキシインドリン又はこれらの誘導体を使用した空気酸化型染毛剤が知られている。これらメラニン前駆体は酸化剤を使用しないため染毛剤に用いた場合にも毛髪の痛みが少なく、また染毛剤用染料としての簡便性も高い。
【0003】
一方、前記メラニン前駆体は空気中の酸素により酸化されることから、該前駆体を含有する毛髪化粧料製品の包装を一度開封すると、空気中の酸素と接触して該前駆体が酸化重合し、使用前にメラニン色素に変換されてしまうおそれがある。前記メラニン前駆体は重合してしまうと毛髪に浸透せず染着できないので、毛髪化粧料製品の染毛力が徐々に低下してしまうという問題があった。そこで、例えば特許文献1では、前記メラニン前駆体を含有する一剤型染毛剤組成物に酸化防止剤を配合すると共に、エアゾール形態とすることで、繰り返し使用しても染色力を維持できる空気酸化型染毛剤を提供できることを開示している。
また、特許文献2では、染色性の良好なエアゾール型染毛剤組成物として、メラニン前駆体である特定の化合物の2種以上、芳香族アルコール、特定の非イオン界面活性剤、及び増粘ポリマーを含有し、pHが特定の範囲にあるエアゾール原液を使用したエアゾール型一剤式染毛剤組成物を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-322038号公報
【文献】特開2007-326802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の実施例に記載の染毛剤組成物は、噴射剤として液化石油ガス(LPG)を用い、これと、前記メラニン前駆体を含有し、粘度が18000mm2/sのエアゾール原液とをエアゾール容器に充填してエアゾール形態としている。この場合、エアゾールの吐出物は泡状の染毛剤組成物となる。しかしながら、この泡状の染毛剤組成物は変形し難く、濡れた手や毛髪への密着性も低く、その結果、手から落ち易く毛髪へもなじみ難い。また、泡状の染毛剤組成物は嵩高いため、単位体積あたりのメラニン前駆体の含有量が低下し、毛髪へ塗布した際に毛髪に接触するメラニン前駆体の量が少なくなる。さらに、泡状の染毛剤組成物は空気と接触する面積が大きくなるため、メラニン前駆体が毛髪へ浸透する前に酸化重合し易いという課題も見出された。
特許文献2の実施例には、粘度が2500mPa・sのエアゾール原液と噴射剤である窒素ガスとをエアゾール相溶性ビンに充填したエアゾール型一剤式染毛剤組成物が開示されている。しかしながら当該エアゾールの吐出物である染毛剤組成物は、特に濡れた毛髪へ塗布した場合には、塗布後に放置すると垂れ落ち易いことが判明した。
【0006】
本発明は、所定のメラニン前駆体を含有し、毛髪が乾燥状態及び湿潤状態のいずれの場合も塗布し易く、塗布後に放置しても垂れ落ちず、かつ染毛性の高いエアゾール型毛髪化粧品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、所定のメラニン前駆体を含有するエアゾール型毛髪化粧品において、エアゾール原液である毛髪化粧料原液の粘度を所定の範囲に設定し、かつ噴射剤として圧縮窒素を用いることにより上記課題を解決できることを見出した。
すなわち本発明は、下記一般式(1)で表される化合物又はその塩である成分(A)を含有し、25℃における粘度が10,000mPa・s以上100,000mPa・s以下である毛髪化粧料原液と、噴射剤である圧縮窒素とをエアゾール容器に充填したエアゾール型毛髪化粧品に関する。
【化1】
〔式中、破線はπ結合の存在又は不存在を示す。R
1は水酸基又はアセトキシ基を示す。R
2は水素原子、又は-COOR(Rは水素原子、メチル基又はエチル基)を示す。R
3は水素原子、アセチル基、メチル基又はエチル基を示す。〕
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、所定のメラニン前駆体を含有し、毛髪が乾燥状態及び湿潤状態のいずれの場合も塗布し易く、塗布後に放置しても垂れ落ちず、かつ染毛性の高いエアゾール型毛髪化粧品を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[エアゾール型毛髪化粧品]
本発明のエアゾール型毛髪化粧品は、下記一般式(1)で表される化合物又はその塩の1種又は2種以上である成分(A)を含有し、25℃における粘度が10,000mPa・s以上100,000mPa・s以下である毛髪化粧料原液と、噴射剤である圧縮窒素とをエアゾール容器に充填したものである。
【化2】
〔式中、破線はπ結合の存在又は不存在を示す。R
1は水酸基又はアセトキシ基を示す。R
2は水素原子、又は-COOR(Rは水素原子、メチル基又はエチル基)を示す。R
3は水素原子、アセチル基、メチル基又はエチル基を示す。〕
【0010】
本発明における毛髪化粧料としては、染毛剤、シャンプー等の毛髪洗浄剤、コンディショニング剤、スタイリング剤等が挙げられる。これらの中でも、本発明の効果を得る観点から毛髪化粧料は染毛剤又はコンディショニング剤であることが好ましい。成分(A)を含有することから、本発明における毛髪化粧料は一剤式である。
また、本発明において毛髪化粧料原液とは、エアゾール型毛髪化粧品においてエアゾール容器に充填される原液(エアゾール原液)となる毛髪化粧料をいう。
本発明のエアゾール型毛髪化粧品は、使用する毛髪化粧料原液の25℃における粘度が10,000mPa・s以上100,000mPa・s以下であり、かつ、噴射剤が圧縮窒素であることを特徴とする。これにより、毛髪が乾燥状態及び湿潤状態のいずれの場合も塗布し易く、塗布後に放置しても垂れ落ちず、かつ染毛性の高いエアゾール型毛髪化粧品が得られる。
【0011】
(毛髪化粧料原液)
本発明のエアゾール型毛髪化粧品に使用する毛髪化粧料原液は、前記一般式(1)で表される化合物又はその塩である成分(A)を含有し、25℃における粘度が10,000mPa・s以上100,000mPa・s以下である。
【0012】
<成分(A)>
毛髪化粧料原液は、下記一般式(1)で表される化合物又はその塩である成分(A)を含有する。成分(A)は空気酸化により重合してメラニン色素に変換されるメラニン前駆体であり、毛髪の染色剤として作用する。
【化3】
〔式中、破線はπ結合の存在又は不存在を示す。R
1は水酸基又はアセトキシ基を示す。R
2は水素原子、又は-COOR(Rは水素原子、メチル基又はエチル基)を示す。R
3は水素原子、アセチル基、メチル基又はエチル基を示す。〕
成分(A)のメラニン前駆体は、一般式(1)で表される化合物であるインドール誘導体又はインドリン誘導体、又はこれらの塩であり、本発明においてはその1種又は2種以上の組み合わせを用いることができる。成分(A)は、本発明の効果を得る観点からインドール誘導体(すなわち、一般式(1)中の破線部分にπ結合が存在する)であることがより好ましい。
成分(A)の入手性及び染毛性の観点から、一般式(1)において、R
1は好ましくは水酸基であり、R
2は好ましくは水素原子又は-COOR(Rは水素原子、メチル基又はエチル基)、より好ましくは水素原子又は-COOHである。R
3は好ましくは水素原子である。
【0013】
前記一般式(1)で表される化合物としては、5,6-ジヒドロキシインドール、5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸、5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸メチル、5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸エチル、N-メチル-5,6-ジヒドロキシインドール、N-メチル-5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸、N-エチル-5,6-ジヒドロキシインドール、N-エチル-5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸、N-アセチル-5,6-ジヒドロキシインドール、N-アセチル-5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸、5-アセトキシ-6-ヒドロキシインドール、5-アセトキシ-6-ヒドロキシインドール-2-カルボン酸、
5,6-ジヒドロキシインドリン、5,6-ジヒドロキシインドリン-2-カルボン酸、5,6-ジヒドロキシインドリン-2-カルボン酸メチル、5,6-ジヒドロキシインドリン-2-カルボン酸エチル、N-メチル-5,6-ジヒドロキシインドリン、N-メチル-5,6-ジヒドロキシインドリン-2-カルボン酸、N-エチル-5,6-ジヒドロキシインドリン、N-エチル-5,6-ジヒドロキシインドリン-2-カルボン酸、N-アセチル-5,6-ジヒドロキシインドリン、N-アセチル-5,6-ジヒドロキシインドリン-2-カルボン酸、5-アセトキシ-6-ヒドロキシインドリン、5-アセトキシ-6-ヒドロキシインドリン-2-カルボン酸、等が挙げられる。
【0014】
前記一般式(1)で表される化合物の塩としては、該化合物の塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、乳酸塩、クエン酸塩等が挙げられ、なかでも臭化水素酸塩が好ましい。
また一般式(1)においてR2が-COOHである場合、一般式(1)で表される化合物の塩としては、そのカルボン酸塩(R2が-COO-X+(X+は陽イオン)である)が挙げられる。
【0015】
毛髪を自然な色合いに染める観点から、成分(A)としては5,6-ジヒドロキシインドール、5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸、5,6-ジヒドロキシインドリン、5,6-ジヒドロキシインドリン-2-カルボン酸、及びこれらの塩からなる群から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、5,6-ジヒドロキシインドール、5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸、及び5,6-ジヒドロキシインドリン臭化水素酸塩からなる群から選ばれる1種又は2種以上がより好ましく、5,6-ジヒドロキシインドール及び5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸からなる群から選ばれる1種又は2種がさらに好ましく、5,6-ジヒドロキシインドール及び5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸を併用することがよりさらに好ましい。
5,6-ジヒドロキシインドール及び5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸を併用する場合は、そのモル比は50:50~99:1の範囲とすることが好ましく、80:20~99:1の範囲とすることがより好ましく、85:15~95:5の範囲とすることがさらに好ましい。5,6-ジヒドロキシインドール及び5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸のモル比が上記範囲であると染毛性がより向上する。
5,6-ジヒドロキシインドールと5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸とのモル比は、逆相HPLCにより定量することができる。
【0016】
毛髪化粧料原液中の成分(A)の含有量は、染毛性向上の観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上であり、経済性の観点から、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下、よりさらに好ましくは0.8質量%以下、よりさらに好ましくは0.5質量%以下、よりさらに好ましくは0.3質量%以下である。
【0017】
<アルカリ剤>
毛髪化粧料原液は、アルカリ剤を含有することが好ましい。アルカリ剤は毛髪を膨潤させてキューティクルを開き、成分(A)等の染色剤成分を毛髪の内部まで浸透させる作用を有する。アルカリ剤としては、通常の染毛剤に使用されるアルカリ剤であれば特に制限なく用いることができる。
当該アルカリ剤としては、例えば、アンモニア水;モノ-、ジ-又はトリメタノールアミン、モノ-、ジ-又はトリエタノールアミン等のアルカノールアミン;メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、N-メチルエチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン等のアルキルアミン;ベンジルアミン等のアラルキルアミン;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の無機アルカリ化合物等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。アルカノールアミン、アルキルアミン、又はアラルキルアミンの炭素数は、水溶性の観点から、好ましくは10以下、より好ましくは8以下である。
なかでも、染毛性の観点からはアルカノールアミンが好ましく、モノアルカノールアミンがより好ましく、モノエタノールアミンがさらに好ましい。
【0018】
毛髪化粧料原液中のアルカリ剤の含有量は、高染毛性を得る観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、刺激性を抑制する観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7.5質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
【0019】
<増粘剤>
毛髪化粧料原液は、粘度を所定の範囲に調整するため、増粘剤を含有することが好ましい。
増粘剤としては、通常の毛髪化粧料に用いられるものであればよく、例えば、カラギーナン、デキストリン、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、キサンタンガム、カルボキシメチルキチン、キトサン等が挙げられる。
ここで、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体とは、C10-30アルキルアクリル酸とアクリル酸、メタクリル酸又はこれらの低級アルキルエステルとの共重合体であって、ショ糖のアリルエーテル又はペンタエリスリトールのアリルエーテルで架橋したものであり、ペムレンTR-1、ペムレンTR-2、カーボポールETD2020、カーボポール1342、カーボポール1382(以上、LubrizolAdvanced Materials社)等の市販品を用いることができる。
また、カルボキシビニルポリマーとして、カーボポール980、981(以上、LubrizolAdvanced Materials社)等の市販品を用いることができる。
カルボキシメチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体は、塩基との中和により、塩として用いてもよい。塩基としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属水酸化物;アンモニウム;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン由来のアンモニウム;アルギニン、リジン等の塩基性アミノ酸が挙げられ、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属水酸化物が好ましく、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムがより好ましい。
【0020】
増粘剤は、1種又は2種以上を用いることができる。なかでも、増粘剤としてはカルボキシメチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、又はこれらの塩からなる群から選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
【0021】
毛髪化粧料原液中の増粘剤の含有量は、粘度を所定の範囲に調整し、吐出した毛髪化粧料の塗布後の垂れ落ちを抑制する観点から、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、吐出した毛髪化粧料の毛髪への塗布性の観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
【0022】
<界面活性剤>
毛髪化粧料原液は、染毛性向上の観点、及び毛髪化粧料としての効果を有効に発現させる観点から、さらに、界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及び非イオン性界面活性剤が挙げられる。毛髪化粧料が染毛剤である場合は少なくとも非イオン性界面活性剤を含有することが好ましく、毛髪化粧料がコンディショニング剤である場合は少なくともカチオン性界面活性剤を含有することが好ましく、毛髪化粧料が毛髪洗浄剤である場合は少なくともアニオン性界面活性剤を含有することが好ましい。
【0023】
〔アニオン性界面活性剤〕
アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル又はアルケニルエーテル硫酸塩、アルキル又はアルケニル硫酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、飽和又は不飽和脂肪酸塩、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸塩、α-スルホ脂肪酸塩、N-アシルアミノ酸、リン酸モノ又はジエステル、スルホコハク酸エステル等が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を用いることができる。
アニオン性界面活性剤のアニオン性基の対イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン;カルシウムイオン、マグネシウムイオン等のアルカリ土類金属イオン;アンモニウムイオン;炭素数2又は3のアルカノール基を1~3個有するアルカノールアミン(例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等)が挙げられる。
なかでも、毛髪化粧料が毛髪洗浄剤である場合の洗浄性の観点から、アルキルエーテル硫酸塩及びアルキルエーテルカルボン酸塩からなる群から選ばれる1種又は2種以上が好ましい。上記アルキルエーテル硫酸塩としてはポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸等が挙げられ、アルキルエーテルカルボン酸塩としてはポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩等が挙げられる。
【0024】
〔カチオン性界面活性剤〕
カチオン性界面活性剤としては、モノ長鎖アルキル第4級アンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩が挙げられる。具体的には、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム等の塩化アルキルトリメチルアンモニウム;塩化アルキルベンザルコニウム等が挙げられ、塩化アルキルトリメチルアンモニウムが好ましく、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムが好ましい。
【0025】
〔両性界面活性剤〕
両性界面活性剤としては、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン等のベタイン系界面活性剤;ラウリルヒドロキシスルタイン等のスルタイン系界面活性剤;が挙げられる。なかでも、ベタイン系界面活性剤が好ましく、脂肪酸アミドプロピルベタインがより好ましい。脂肪酸アミドプロピルベタインは、炭素数8以上18以下、さらには炭素数10以上16以下のアシル基を有するものが好ましく、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、パーム核油脂肪酸アミドプロピルベタイン、及びヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインからなる群から選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
【0026】
〔非イオン性界面活性剤〕
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、高級脂肪酸ショ糖エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、高級脂肪酸モノ又はジエタノールアミド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、アルキルサッカライド系界面活性剤、アルキルアミンオキサイド、アルキルアミドアミンオキサイド等が挙げられる。これらのうち、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が好ましく、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、及びポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンアルキルエーテルからなる群から選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
【0027】
毛髪化粧料原液中の界面活性剤の含有量は、毛髪化粧料が染毛剤又はコンディショニング剤である場合には、染毛性向上の観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
毛髪化粧料が毛髪洗浄剤である場合は、染毛性向上及び洗浄性の観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは8質量%以上である。また、配合安定性の観点からは、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。
【0028】
<その他の成分>
毛髪化粧料原液は、前記成分の他、毛髪化粧料に通常使用される成分を、本発明の目的を損なわない範囲で適宜含有してもよい。当該成分としては、例えば、酸化防止剤、シリコーン、芳香族アルコール、成分(A)以外の染色剤、緩衝剤、油剤、増粘剤以外のポリマー、抗フケ剤、ビタミン剤、殺菌剤、抗炎症剤、防腐剤、キレート剤、保湿剤、パール剤、セラミド類、香料、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0029】
〔酸化防止剤〕
酸化防止剤としては、亜硫酸、アスコルビン酸、チオグリコール酸、L-システイン、N-アセチル-L-システイン及びそれらの塩が挙げられる。成分(A)の安定化、及び染色性向上の観点からは亜硫酸及びその塩、並びに、アスコルビン酸及びその塩からなる群から選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
酸化防止剤を用いる場合、その含有量は、毛髪化粧料中、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下である。
【0030】
〔シリコーン〕
シリコーンは、例えば毛髪化粧料が染毛剤、コンディショニング剤である場合は、使用後の毛髪の感触を向上させる効果を有する。また、毛髪化粧料が毛髪洗浄剤である場合は、泡の質感、泡の滑り感、洗浄時のきしみ低減、乾燥時の滑らかさを向上させる効果を有する。
当該シリコーンとしては、例えば、メチルポリシロキサン;メチルフェニルポリシロキサン;アモジメチコーン、アミノエチルアミノプロピルジメチコーン、アミノプロピルジメチコーン等のアミノ変性シリコーン;環状シリコーン;ポリエーテル変性シリコーン;脂肪酸変性シリコーン;アルコール変性シリコーン;アルコキシ変性シリコーン;エポキシ変性シリコーン;フッ素変性シリコーン;アルキル変性シリコーン等が挙げられる。これらのシリコーンは、1種又は2種以上を含有することができる。
なかでも、シリコーンとしてはメチルポリシロキサンが好ましい。
シリコーンを用いる場合、その含有量は、毛髪化粧料原液中、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上、よりさらに好ましくは2質量%以上であり、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは8質量%以下である。
【0031】
〔芳香族アルコール〕
毛髪化粧料原液は、染毛性向上の観点から、さらに芳香族アルコールを含有してもよい。芳香族アルコールとしては、ベンジルオキシエタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、γ-フェニルプロピルアルコール、桂皮アルコール、アニスアルコール、p-メチルベンジルアルコール、α,α-ジメチルフェネチルアルコール、α-フェニルエタノール、フェノキシエタノール等が挙げられる。これらのうち、ベンジルオキシエタノール及びベンジルアルコールからなる群から選ばれる1種以上が好ましく、ベンジルアルコールがより好ましい。
芳香族アルコールを用いる場合、その含有量は、毛髪化粧料原液中、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下である。
【0032】
〔成分(A)以外の染色剤〕
毛髪化粧料原液は、さらに、成分(A)以外の染色剤を含有することができる。当該染色剤としては、通常染毛剤に用いられる酸化染料中間体(プレカーサー及びカップラー)、直接染料が挙げられる。
酸化染料中間体におけるプレカーサーとしては、例えば、パラフェニレンジアミン、トルエン-2,5-ジアミン、2-クロロ-パラフェニレンジアミン、N-フェニルパラフェニレンジアミン、N,N-ビス(ヒドロキシエチル)パラフェニレンジアミン、2-メトキシメチルパラフェニレンジアミン、2-ヒドロキシエチルパラフェニレンジアミン、2-メトキシメチルパラフェニレンジアミン、3-メチル-4-アミノフェノール、パラアミノフェノール、パラメチルアミノフェノール、オルトアミノフェノール、2,4-ジアミノフェノール、ヒドロキシエトキシアミノピラゾロピリジン、2,3-ジアミノジヒドロキシピラゾロピラゾロン、ヒドロキシエトキシアミノピラゾロピリジン、2,3-ジアミノジヒドロキシピラゾロピラゾロン、4-アミノ-メタクレゾール、並びにこれらの塩からなる群から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
酸化染料中間体におけるカップラーとしては、例えば、メタフェニレンジアミン、2,4-ジアミノフェノキシエタノール、メタアミノフェノール、2-メチル-5-アミノフェノール、2-メチル-5-(2-ヒドロキシエチルアミノ)フェノール、レゾルシン、2-メチルレゾルシン、5-アミノオルトクレゾール、2,6-ジアミノピリジン、2-アミノ-3-ヒドロキシピリジン、パラアミノフェノール、オルトアミノフェノール、2-アミノ-4-(β-ヒドロキシエチル)アミノアニソール、1-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、ヒドロキノン、並びにこれらの塩からなる群から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
直接染料としては、酸性染料、ニトロ染料、分散染料、塩基性染料等が挙げられる。
成分(A)以外の上記染色剤は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0033】
成分(A)以外の染色剤を用いる場合、その含有量は、毛髪化粧料原液中、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上であり、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下である。
【0034】
〔水性媒体〕
毛髪化粧料原液は、通常、水性媒体を含有する。水性媒体としては、水;エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール;1,3-ブチレングリコール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール等の炭素数6以下の低分子ジオール及びトリオールが挙げられ、水が好ましい。毛髪化粧料原液中の水性媒体の含有量は適宜選択することができるが、通常、1~95質量%の範囲である。また、水性媒体中の水の含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは75質量%、さらに好ましくは85質量%以上であり、上限は100質量%である。
【0035】
<粘度>
毛髪化粧料原液は、25℃における粘度が10,000mPa・s以上100,000mPa・s以下である。毛髪化粧料原液の25℃における粘度が10,000mPa・s未満であると、吐出した毛髪化粧料を毛髪に塗布して放置すると垂れ落ち易くなる。また当該粘度が100,000mPa・sを超えると、吐出した毛髪化粧料が毛髪になじみ難く、塗布に時間がかかる。
吐出した毛髪化粧料の塗布後の垂れ落ちを抑制する観点から、毛髪化粧料原液の25℃における粘度は、好ましくは12,000mPa・s以上、より好ましくは14,000mPa・s以上である。また吐出した毛髪化粧料の塗布性、毛髪へのなじみ易さの観点からは、毛髪化粧料原液の25℃における粘度は、好ましくは90,000mPa・s以下、より好ましくは80,000mPa・s以下、さらに好ましくは50,000mPa・s以下、よりさらに好ましくは30,000mPa・s以下、よりさらに好ましくは25,000mPa・s以下である。
毛髪化粧料原液の25℃における粘度は、回転粘度計を用いて実施例に記載の方法により測定することができる。具体的には、25℃の毛髪化粧料原液中で、ヘリカルスタンド付きB型粘度計(東機産業(株)製、TVB10型)を用い、粘度が72000mPa・s以上の場合はTバースピンドルT-Cを使用し、8000mPa・s以上で72000mPa・s以下の場合は、TバースピンドルT-Bを使用し、更に8000mPa・s未満の場合は、TバースピンドルT-Aを使用して、回転速度10rpmで1分間回転させた後の値とする。
【0036】
<pH>
毛髪化粧料原液のpHは、染毛性向上の観点から、好ましくは8.0以上、より好ましくは8.5以上、さらに好ましくは9.0以上、よりさらに好ましくは9.5以上である。メラニン前駆体である成分(A)は塩基性条件で空気中の酸素と反応し、メラニン色素に変換されやすいためである。当該pHは、染毛性向上、及び毛髪へのダメージ抑制の観点から、好ましくは11.0以下、より好ましくは10.5以下である。
上記pHは25℃における測定値であり、具体的には実施例に記載の方法により測定できる。
【0037】
毛髪化粧料原液の製造方法は特に限定されない。例えば、成分(A)、及び必要に応じて用いられるその他の成分を水性媒体中に配合し、公知の攪拌装置等を用いて混合することにより製造できる。
【0038】
(圧縮窒素)
本発明のエアゾール型毛髪化粧品は、前記毛髪化粧料原液と、噴射剤である圧縮窒素とをエアゾール容器に充填したものである。噴射剤が圧縮窒素であると毛髪化粧料が発泡せず、吐出した毛髪化粧料が泡状ではなく原液と同じ性状になる。原液の性状としてはクリーム状、ジェル状が好ましい。
例えばエアゾール型毛髪化粧品に用いる噴射剤がLPGである場合、毛髪化粧料は泡状に吐出される。泡状の毛髪化粧料は嵩高いため、メラニン前駆体である成分(A)の単位体積あたりの含有量が低下し、毛髪へ塗布した際に毛髪に接触する成分(A)の量が少なくなり、染毛性が低下する。さらに、泡状に吐出された毛髪化粧料は空気と接触する面積が大きくなるため、成分(A)が毛髪へ浸透する前に酸化重合し易くなる。
これに対し、本発明のエアゾール型毛髪化粧品では毛髪化粧料が発泡せず、原液の性状のまま吐出されるので、毛髪に塗布した際に毛髪に接触する成分(A)の量が多くなり、また成分(A)が毛髪へ浸透する前に空気と接触して酸化重合することも少なくなるため、染毛性が向上すると考えられる。
【0039】
噴射剤である圧縮窒素の充填量は、適度な噴射速度を得るために、毛髪化粧料原液及び圧縮窒素の合計量を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下である。また、適度な噴射速度を得るために、圧縮窒素を充填した後のエアゾール容器の内圧が、25℃において好ましくは0.1MPa以上、より好ましくは0.3MPa以上であり、好ましくは1.0MPa以下、より好ましくは0.8MPa以下となるように調整する。
【0040】
(エアゾール容器)
毛髪化粧料原液及び圧縮窒素を充填するエアゾール容器は、毛髪化粧料の発泡を抑制して原液の性状で吐出する観点から、二重構造を有する容器(二重構造容器)であることが好ましい。二重構造容器は、例えば、上部に開口部を有する外容器1の内部に内袋2が収容されたエアゾール容器が挙げられる。二重構造容器の内袋2に毛髪化粧料原液を充填し、外容器1と内袋2との間に圧縮窒素を充填することが好ましい。
【0041】
前記エアゾール容器に毛髪化粧料原液及び圧縮窒素を充填し、エアゾール型毛髪化粧品が得られる。充填時には、クリンチと同時に脱気を行い、エアゾール容器内部に残存する空気を減少させることが好ましい。このような脱気操作は内容物の安定化の点でより効果的である。例えば、48kPa以下の圧力で脱気操作を行うことが好ましい。
【0042】
(比容積)
本発明のエアゾール型毛髪化粧品は、エアゾール容器から吐出される毛髪化粧料が泡状ではなく原液の性状になる。そのため、吐出された毛髪化粧料を毛髪に塗布した際に毛髪に接触する成分(A)の量が多くなり、また成分(A)が毛髪へ浸透する前に空気と接触して酸化重合することも少なくなるため、染毛性が向上する。
上記効果を得る観点から、エアゾール容器から吐出された毛髪化粧料の比容積は、好ましくは5.0mL/g以下、より好ましくは3.0mL/g以下、さらに好ましくは2.0mL/g以下、よりさらに好ましくは1.5mL/g以下である。また、吐出された毛髪化粧料の毛髪への塗布性の観点からは、当該比容積は、好ましくは0.8mL/g以上、より好ましくは0.9mL/g以上である。
吐出された毛髪化粧料の比容積は、具体的には実施例に記載の方法により測定できる。
【実施例】
【0043】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は実施例の範囲に限定されない。なお本実施例において、毛髪化粧料原液及びエアゾール型毛髪化粧品の評価は以下の方法により行った。
【0044】
〔pH測定〕
pHメーター(HORIBA Ltd.製、pHメーター本体:ポータブル型pHメータ D-71、電極:マイクロToupH電極 9618S-10D)を用いて、毛髪化粧料原液の25℃におけるpHを測定した。
【0045】
〔粘度測定〕
毛髪化粧料原液の粘度は、ヘリカルスタンド付きB型粘度計(東機産業(株)製、TVB10型粘度計)を用いて25℃で測定した。測定にはTバースピンドルT-Bを使用し、回転速度10rpmで1分間回転させた後の値を読み取った。
【0046】
〔毛髪化粧料の比容積の評価〕
各例で得られたエアゾール型毛髪化粧品を用いて、予め質量を計った100mLのビーカーに毛髪化粧料を吐出した。吐出10秒放置後のビーカー質量の増加分から毛髪化粧料の質量を求め、またビーカーの目盛から吐出した毛髪化粧料の体積を読み取り、次の式により比容積を算出した。
比容積(mL/g)=毛髪化粧料の体積(mL)/毛髪化粧料の質量(g)
【0047】
〔毛髪への塗布性の評価〕
長さ5cm、幅2.5cm、櫛歯密度が2本/cmのプラスチック製ブラシの上に毛髪化粧料を5g吐出し、そのまま質量20g、長さ30cm、幅5cmの毛髪トレスに塗布した。毛髪化粧料が毛髪トレス表面に塊が残ることなく、均一に伸ばされた状態になじむまでのコーミング回数にて塗布性を評価した。表1に示すコーミング回数が少ないほど、毛髪になじみやすく塗布性が良好であることを示す。
【0048】
〔塗布後の垂れ落ちの評価〕
質量20g、長さ30cm、幅5cmの毛髪トレスを水洗した後、タオルで拭き取りながら10gの水を含んだ湿潤状態に調整し、その後、吐出した毛髪化粧料20gを塗布した。毛髪トレスを垂直にして室温(25℃)にて5分間放置した後の状態を目視観察し、以下の基準で塗布後の垂れ落ちを評価した。
A:毛髪化粧料の垂れ落ちがなく、良好
B:毛髪化粧料の垂れ落ちが生じる
【0049】
〔染毛性の評価〕
中国人女性の乾燥した白髪トレス(長さ10cm、BM-W-A、株式会社ビューラックス)1gに、吐出した毛髪化粧料1gを塗布し、30℃雰囲気下にて5分間放置して染毛処理を行い、水洗した後、シャンプーし、水洗した。
上記染毛処理前の白髪トレスと、染毛処理後のトレスの色相(L*, a*, b*)を、色彩色差計(CR-400、コニカミノルタ株式会社)を用いて、トレス1本につき6点測定し、下記式に従い色差ΔEを算出した。ΔEの値が大きいほど染毛性が良好であると評価される。
【0050】
ΔE=〔(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2〕1/2
(Δ:染毛前後の各色相の変化量)
【0051】
〔エアゾール型毛髪化粧品の調製〕
実施例1、比較例1
表1に示す組成に従って、毛髪化粧料原液を調製した。
実施例1については、エアゾール容器である加圧吐出型の二重構造容器の内袋に、前記調製した毛髪化粧料原液を50g充填し、更に当該袋を外容器へ収容した後、内袋と外容器の間の空間に窒素ガスを0.6MPaとなるように0.3g充填し、エアゾール型毛髪化粧品とした。
比較例1については、前記調製した毛髪化粧料原液の50gをエアゾール用相溶性ビン(東京高分子(株)製)に詰めてクリンチし、噴射剤として液化石油ガスを0.34MPaとなるように5g充填し、エアゾール型毛髪化粧品とした。
以上調製したエアゾール型毛髪化粧品を用いて、前記評価を行った。結果を表1に示す。毛髪化粧料原液のpHはいずれも10.2であった。
【0052】
【0053】
なお、比較例2として下記処方の毛髪化粧料原液を調製し、実施例1と同じエアゾール容器(二重構造容器)を用い同じ方法にて充填し、エアゾール型毛髪化粧品とした。
毛髪化粧料原液の25℃における粘度は2,400mPa・s、吐出10秒放置後の毛髪化粧料の比容積は1.0mL/gであり、塗布後の垂れ落ち評価は「B」であった。
比較例2
・(A1)5,6-ジヒドロキシインドール、5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸混合物:
0.25質量%
・カルボキシビニルポリマー: 0.52質量%
・L-アスコルビン酸: 0.6質量%
・無水亜硫酸ナトリウム: 0.5質量%
・モノエタノールアミン: 3.0質量%
・リン酸: 0.7質量%
・精製水: バランス
・合計: 100質量%
【0054】
各例で用いた成分を以下に示す。なお、上述した各成分の配合量(質量%)は、いずれも有効成分量である。
・(A1)5,6-ジヒドロキシインドール、5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸混合物:特許第5570161号公報に記載された方法により製造したものを用いた。5,6-ジヒドロキシインドールと5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸とのモル比は90:10である。また、(A1)はH2O/エタノール=4/1(wt/wt)の1質量%溶液を調製し、これを原液に配合した。
・カルボキシメチルセルロースナトリウム:CMCダイセル<1350>(ダイセルファインケム(株)製)
・カルボキシビニルポリマー:カーボポール981POLYMER(Lubrizol Advanced Materials社製)
・ポリオキシエチレンアルキル(12~14)エーテル:ソフタノール90((株)日本触媒製)
・メチルポリシロキサン:シリコーンSH200C FLUID 10CS(東レ・ダウコーニング(株)製)
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明によれば、所定のメラニン前駆体を含有し、毛髪が乾燥状態及び湿潤状態のいずれの場合も塗布し易く、塗布後に放置しても垂れ落ちず、かつ染毛性の高いエアゾール型毛髪化粧品を提供できる。