(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】電動工具
(51)【国際特許分類】
B25F 5/00 20060101AFI20230314BHJP
B25F 5/02 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
B25F5/00 B
B25F5/02
B25F5/00 C
B25F5/00 G
(21)【出願番号】P 2018086915
(22)【出願日】2018-04-27
【審査請求日】2021-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】橋本 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】岡部 太郎
(72)【発明者】
【氏名】山田 英貴
【審査官】大光 太朗
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/121458(WO,A1)
【文献】国際公開第03/061913(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/067789(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F 5/00
B25F 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングに接続され、作業者によって把持されるハンドルと、
前記ハウジングに収容されるモータと、
前記ハウジングに接続され、前記モータの駆動力により駆動する先端工具と、
前記ハンドルに設けられ、作業者による操作が行われると前記モータが駆動し、作業者による操作が行われないと前記モータが駆動しない、第1操作部材と、
前記ハンドルに設けられ、前記モータが駆動しない状態で作業者による操作が行われると前記モータが駆動し、前記モータが駆動した状態で作業者による操作が行われると前記モータが駆動を停止する、第2操作部材と、
前記第2操作部材が操作され前記モータが駆動している状態において点灯する駆動状態表示部と、
作業者による操作によって前記モータの回転数を設定可能な第3操作部材と、
前記第3操作部材によって設定された前記モータの前記回転数を報知する回転数報知部と、
を備え、
前記先端工具は、前記ハウジングの前記ハンドルの長手方向における一端側に、前記ハンドルの長手方向に対して交差する交差方向に延びるように接続され、
前記ハンドルは、
前記ハンドルの長手方向に延びる延伸部と、
前記延伸部の前記ハンドルの長手方向における前記一端側から、前記ハンドルの長手方向と交差する前記先端工具の中心軸方向に延び、前記ハウジングと接続する、一端側接続部と、
前記延伸部の前記ハンドルの長手方向における他端側から、前記ハンドルの長手方向と交差する前記先端工具の中心軸方向に延び、前記ハウジングと接続する、他端側接続部と、
を有し、前記ハウジング、前記延伸部、前記一端側接続部及び前記他端側接続部によって囲われる内部空間を形成し、
前記第1操作部材は、前記内部空間に面するように前記延伸部に設けられ、
前記第2操作部材は、前記第1操作部材の前記ハンドルの長手方向における他端側の端部よりも、前記一端側に配置され、かつ、前記第1操作部材に対して、前記ハンドルの中心軸を挟んで反対側に設けられ、
前記第3操作部材及び前記
回転数報知部は、前記内部空間に面するように設けられ、
前記駆動状態表示部は、前記ハンドルの長手方向において、前記第1操作部材の前記他端側の端部よりも、前記一端側に配置され、かつ、前記第1操作部材に対して、前記ハンドルの中心軸を挟んで反対側に設けられ、
前記駆動状態表示部は、前記中心軸方向及び前記交差方向と直交する左右方向に見て、前記ハンドルの外形から突出しないように設けられることを特徴とする電動工具。
【請求項2】
前記第2操作部材は、前記ハンドルの長手方向における位置が、前記第1操作部材と重なるように設けられる請求項1に記載の電動工具。
【請求項3】
前記第1操作部材は、前記一端側接続部及び前記他端側接続部の延びる方向に突出し、作業者によって操作されると前記先端工具の中心軸方向に移動するトリガレバーである請求項1または2に記載の電動工具
【請求項4】
前記第1操作部材は、前記ハンドルの長手方向において前記一端側接続部と隣接して設けられ、
前記第2操作部材は、前記ハンドルの長手方向において前記一端側接続部と重なる位置に設けられる請求項1乃至3の何れか一項に記載の電動工具。
【請求項5】
前記第2操作部材はタクタイルスイッチである請求項1乃至4の何れか一項に記載の電動工具。
【請求項6】
前記モータの駆動力を前記先端工具の中心軸方向に沿って前記先端工具を打撃する打撃力に変換する動力変換機構を有する請求項1乃至5の何れか一項に記載の電動工具。
【請求項7】
前記第2操作部材が操作されて前記モータが駆動した状態で、前記第1操作部材が操作されると、前記モータが駆動を停止する請求項1乃至6の何れか一項に記載の電動工具。
【請求項8】
前記第1操作部材および前記第2操作部材の状態に基づいて前記モータの駆動を制御する制御部を有し、
前記モータはブラシレスモータである、請求項1乃至請求項7の何れか一項に記載の電動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動工具に関し、特にモータの回転を伝達する機構を備えた電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
ハンマやハンマドリル等の電動工具は、トリガレバー等の操作部材が設けられ、作業者によってトリガレバーが操作されると、ドリルビット等の先端工具に必要な動力が伝達される。
【0003】
従来の電動工具において、破砕作業のように、長時間に亘って連続して行われる作業が存在する。この破砕作業の実施時には、作業者がトリガレバーから手を離しても作業を続行可能であることが好ましい。すなわち、トリガレバーが引かれていなくともモータが作動状態に維持されることが好ましい。
【0004】
そこで、トリガレバーが操作されていなくともモータを作動状態に維持する機能を備えている電動工具がある。かかる機能は“オンロック機能”と呼ばれることがあり、本明細書においても必要に応じて上記機能をオンロック機能と呼ぶ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
オンロック機能を備える従来の電動工具では、オンロック機能を働かせるために2工程以上の操作が必要であったり、オンロック機能を実現するために部品点数の多い機械的機構を必要としたりし、作業性のさらなる改善が望まれた。また、オンロック機能を働かせるための操作部材がトリガレバー等の操作部材が離れた位置にあり、作業性のさらなる改善が望まれた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決すべく、以下に掲げる構成とした。
【0008】
本発明の電動工具は、 ハウジングと、前記ハウジングに接続され、作業者によって把持されるハンドルと、前記ハウジングに収容されるモータと、前記ハウジングに接続され、前記モータの駆動力により駆動する先端工具と、前記ハンドルに設けられ、作業者による操作が行われると前記モータが駆動し、作業者による操作が行われないと前記モータが駆動しない、第1操作部材と、前記ハンドルに設けられ、前記モータが駆動しない状態で作業者による操作が行われると前記モータが駆動し、前記モータが駆動した状態で作業者による操作が行われると前記モータが駆動を停止する、第2操作部材と、前記第2操作部材が操作され前記モータが駆動している状態において点灯する駆動状態表示部と、作業者による操作によって前記モータの回転数を設定可能な第3操作部材と、前記第3操作部材によって設定された前記モータの前記回転数を報知する回転数報知部と、を備え、前記先端工具は、前記ハウジングの前記ハンドルの長手方向における一端側に、前記ハンドルの長手方向に対して交差する交差方向に延びるように接続され、前記ハンドルは、前記ハンドルの長手方向に延びる延伸部と、前記延伸部の前記ハンドルの長手方向における前記一端側から、前記ハンドルの長手方向と交差する前記先端工具の中心軸方向に延び、前記ハウジングと接続する、一端側接続部と、前記延伸部の前記ハンドルの長手方向における他端側から、前記ハンドルの長手方向と交差する前記先端工具の中心軸方向に延び、前記ハウジングと接続する、他端側接続部と、を有し、前記ハウジング、前記延伸部、前記一端側接続部及び前記他端側接続部によって囲われる内部空間を形成し、前記第1操作部材は、前記内部空間に面するように前記延伸部に設けられ、前記第2操作部材は、前記第1操作部材の前記ハンドルの長手方向における他端側の端部よりも、前記一端側に配置され、かつ、前記第1操作部材に対して、前記ハンドルの中心軸を挟んで反対側に設けられ、前記第3操作部材及び前記回転数報知部は、前記内部空間に面するように設けられ、前記駆動状態表示部は、前記ハンドルの長手方向において、前記第1操作部材の前記他端側の端部よりも、前記一端側に配置され、かつ、前記第1操作部材に対して、前記ハンドルの中心軸を挟んで反対側に設けられ、前記駆動状態表示部は、前記中心軸方向及び前記交差方向と直交する左右方向に見て、前記ハンドルの外形から突出しないように設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、オンロック機能の有効・無効を少ない操作工程で切り換え可能、かつ、簡易な機構によってオンロック機能を構成した電動工具を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】ハンマドリルの構造を示す側方視断面図である。
【
図3】ハンマドリルの構造を示す背面図であり、
図1におけるA-A断面図である。
【
図4】ハンマドリルが備える各種回路を示すブロック図である。
【
図5】ブラシレスモータのオン・オフ制御の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の電動工具の実施形態について説明する。本実施形態に係る電動工具は、先端工具の一例であるドリルビット111を着脱可能なハンマドリルである。本実施形態に係るハンマドリルの用途は特に限定されないが、コンクリート壁や石材などの対象物に穴を開けたり、対象物を破砕したりする作業に適している。また、本実施形態に係るハンマドリルは、ドリルビット111に打撃力が伝達される一方、回転力は伝達されない第1動作モードと、ドリルビット111に少なくとも回転力が伝達される第2動作モードと、を有する。さらに本実施形態における第2動作モードでは、回転力に加えて打撃力がドリルビット111に伝達される。そこで、以下の説明では、第1動作モードを“ハンマモード”と呼び、第2動作モードを“ハンマドリルモード”と呼ぶ。
【0012】
図1に示されるように、ハンマドリル1は、シリンダハウジング2と、中間ハウジング3と、モータハウジング4と、からなるハウジング100を有する。ハウジング100には、作業者によって把持されるハンドル5が接続され、一体化している。ハンドル5は、長手方向Vが上下方向を向くように形成されており、ハンドル5の長手方向Vに延びる延伸部501と、ハンドル5の長手方向Vにおける一端側(上端側)からハンドル5の長手方向Vに交差する方向H(先端工具111の中心軸方向)に延びる一端側接続部502と、ハンドル5の長手方向Vにおける他端側(下端側)からハンドル5の長手方向Vに交差する方向に延びる他端側接続部503と、を有するU字形状を有する。シリンダハウジング2は全体として円筒形であり、シリンダハウジング2の長手方向一端(後端)とハンドル5との間に、中間ハウジング3及びモータハウジング4が配置されている。中間ハウジング3とモータハウジング4は上下に重なっており、ハンドル5の他端側接続部503がモータハウジング4に連結され、ハンドル5の一端側接続部502が中間ハウジング3に連結されている。尚、ハンドル5と中間ハウジング3及びモータハウジング4とは防振機構を介してそれぞれ連結されている。ドリルビット111は、ハンドル5の長手方向Vにおけるハウジング100の一端側(上端側)に、ハンドル5の長手方向Vに交差する方向Hに延びるように接続される。
【0013】
シリンダハウジング2の内部には、円筒形のシリンダ10及びリテーナスリーブ11が収容されている。シリンダ10及びリテーナスリーブ11は同心であり、リテーナスリーブ11の一部はシリンダハウジング2の先端から突出している。シリンダ10及びリテーナスリーブ11は相対回転不能に係合しており、シリンダ10に回転力が伝達されると、シリンダ10及びリテーナスリーブ11が中心軸を回転軸として一体回転する。また、不図示のドリルビット111の一部がリテーナスリーブ11に挿入される。リテーナスリーブ11に挿入されたドリルビット111は、リテーナスリーブ11に対して、回転方向には移動不能、かつ、軸方向には所定範囲で移動可能に係合する。よって、シリンダ10及びリテーナスリーブ11が回転すると、ドリルビット111に回転力が伝達され、ドリルビット111が回転する。また、ドリルビット111に打撃力が伝達されると、ドリルビット111は軸方向に所定範囲で往復動する。シリンダ10,リテーナスリーブ11及びドリルビット111の動きの詳細については後述する。
【0014】
シリンダ10内にはピストン20及び打撃子21が往復動可能に収容されている。また、シリンダ10とリテーナスリーブ11とに跨って中間子22が往復動可能に収容されている。これらピストン20,打撃子21及び中間子22は、シリンダ10の後方から前方に向かってこの順で一列に並んでいる。さらに、シリンダ10内であってピストン20と打撃子21との間には空気室23が設けられている。
【0015】
モータハウジング4内には、動力源であるモータ30が収容されている。モータ30は、インナーロータ型のブラシレスモータであって、筒形状のステータ31と、ステータ31の内側に配置されたロータ32と、ロータ32の内側に配置された出力軸33と、を有する。出力軸33はロータ32に固定されており、ロータ32を貫通して上下に伸びている。出力軸33の中心軸とシリンダ10及びリテーナスリーブ11の中心軸とは直交している。
【0016】
ロータ32から突出している出力軸33の上部は、モータハウジング4と中間ハウジング3との間の隔壁を貫通して中間ハウジング3の内側に進入している。中間ハウジング3内に突出している出力軸33の上端にはピニオンギヤ34が設けられている。中間ハウジング3内であって、出力軸33の近傍には、第1駆動軸40が回転自在に配置され、第1駆動軸40の近傍には第2駆動軸50が回転自在に配置されている。これら出力軸33,第1駆動軸40及び第2駆動軸50は互いに平行である。
【0017】
第1駆動軸40の下部にはピニオンギヤ34と噛合う第1ギヤ41が設けられており、第1駆動軸40の上部には偏心ピン42が設けられおり、この偏心ピン42がコンロッド43を介してピストン20に連結されている。
【0018】
第2駆動軸50の下部には第1ギヤ41と噛合う第2ギヤ51が設けられており、第2駆動軸50の上部にはベベルギヤ52が設けられており、このベベルギヤ52がシリンダの周囲に配置されているリングギヤ53と噛合っている。リングギヤ53は滑り軸受(メタル)を介してシリンダ10の外周面に装着されており、シリンダ10に対して自由に回転する。
【0019】
シリンダ10の外周面には、リングギヤ53に加えてスリーブ54が設けられている。スリーブ54は、シリンダ10と一体回転し、かつ、単独でシリンダ10の軸方向に往復スライドする。スリーブ54はスプリングによってリングギヤ53に近接する方向に常に付勢されている。
【0020】
中間ハウジング3の上面にはモード切替ダイヤル60が設けられている。モード切替ダイヤル60の回転操作によってハンマモードとハンマドリルモードとが切り替えられる。換言すれば、モード切替ダイヤル60の回転操作によって、ドリルビット111に打撃力のみが伝達される動力伝達経路と、ドリルビット111に打撃力及び回転力が伝達される動力伝達経路と、が選択的に形成される。動力伝達経路の詳細については後述する。
【0021】
図1に示されているモード切替ダイヤル60を第1方向に180度回転させると、
図1に示されるように、操作アーム61がシリンダ10の軸方向前方に移動する。すると、前進する操作アーム61によってスリーブ54が押され、スリーブ54がスプリングの付勢に抗して前方にスライドする。この結果、リングギヤ53とスリーブ54との係合が解除される。このようにしてリングギヤ53とスリーブ54との係合が解除されると、シリンダ10への回転力の伝達が遮断される。
【0022】
一方、
図1に示されているモード切替ダイヤル60を第2方向に180度回転させると、
図1に示されるように操作アーム61が後退する。すると、操作アーム61による押しが解除され、スリーブ54がスプリングの付勢によって後方にスライドする。この結果、リングギヤ53とスリーブ54とが係合する。このようにしてリングギヤ53とスリーブ54とが係合すると、シリンダ10に回転力が伝達される。
【0023】
図1に示されるように、ハンドル5には作業者によって操作される第1操作部材としてのトリガレバー70と、作業者によって操作される第2操作部材としてのオンロックボタン80とが設けられている。また、ハンドル5の内部には、トリガレバー70の操作に基づいてオン・オフされるメインスイッチ71が設けられている。オンロックボタン80は、ハンドル5の長手方向Vにおいて、トリガレバー70の下端側端部701よりも上端側に配置される。また、オンロックボタン80は、ハンドル5の長手方向Vにおける位置が、トリガレバー70と重なるように設けられる。この構成によれば、トリガレバー70とオンロックボタン80とが近接した位置に配置されるため、作業者はハンドル5を持ち替えることなくトリガレバー70とオンロックボタン80とを操作することができ、操作性が向上される。トリガレバー70は、ハンドル5の延伸部501における、ハウジング100側の面に設けられ、オンロックボタン80はドリルビット111の中心軸方向Hにおいて、延伸部501の中心軸504を挟んで反対側に設けられる。これにより、作業者がトリガレバー70の操作時に誤ってオンロックボタン80を操作し、モータ30が意図しない駆動を開始することを抑制できる。トリガレバー70は、ハンドル5の長手方向Vにおいて一端側接続部502と上下方向に隣接して設けられ、オンロックボタン80は、ハンドル5の長手方向Vにおける位置が一端側接続部502と重なる位置に設けられる。
【0024】
オンロックボタン80には、
図3に示すように、所定条件に従って点灯及び消灯する点灯部81(本実施形態ではLED)が内蔵されている。さらに、中間ハウジング3には、回転数設定ボタン91や報知部92を含む第3操作部材としての操作パネル90も設けられている。操作パネル90上の回転数設定ボタン91が押されると、その回数に応じてブラシレスモータ30の目標回転数が段階的に切り替わる。また、回転数設定ボタン91に隣接して、報知部92が設けられる。報知部92は複数のLEDから構成され、回転数設定ボタン91によって設定された目標回転数に応じて点灯するLEDの数が変化し、設定された目標回転数が報知される。操作パネル90は中間ハウジング3の後面、換言すると、ハンドル5側の面に設けられる。オンロックボタン80がハンドル5の後面に配置され、操作パネル90は中間ハウジング3の後面に配置されているため、作業者は後方からオンロックボタン80と操作パネル90とを同時に視認可能であり操作性がよい。
【0025】
次に、ハンマドリル1における動力伝達経路について説明する。
図1に示されるブラシレスモータ30が作動すると、出力軸33の回転がピニオンギヤ34及び第1ギヤ41を介して第1駆動軸40に伝達され、第1駆動軸40が回転する。また、出力軸33の回転がピニオンギヤ34,第1ギヤ41及び第2ギヤ51を介して第2駆動軸50に伝達され、第2駆動軸50が回転する。
【0026】
第1駆動軸40が回転すると、第1駆動軸40の上端に設けられている偏心ピン42が第1駆動軸40の中心軸を回転軸として回転する。すなわち、第1駆動軸40の中心軸の周囲を偏心ピン42が旋回する。この結果、コンロッド43を介して偏心ピン42と連結されているピストン20がシリンダ10内で往復動する。ピストン20が打撃子21から離反する方向に移動すると、つまりピストン20が後退すると、空気室23内の圧力が低下し、打撃子21が後退する。一方、ピストン20が打撃子21に近接する方向に移動すると、つまりピストン20が前進すると、空気室23内の圧力が上昇し、打撃子21が前進する。打撃子21が前進すると、該打撃子21によって中間子22が打撃され、中間子22によってドライバビット(不図示)が打撃される。このようにしてドライバビットに断続的に打撃力が伝達される。
【0027】
第2駆動軸50が回転すると、第2駆動軸50の上端に設けられているベベルギヤ52が回転し、ベベルギヤ52と噛合っているリングギヤ53が回転する。このとき、モード切替ダイヤル60の回転操作によってハンマモードが選択されていると、すなわち、
図1に示されるように、リングギヤ53とスリーブ54との係合が解除されていると、リングギヤ53の回転はシリンダ10に伝達されず、リングギヤ53はシリンダ10上で空転する。よって、ドライバビットに回転力は伝達されず、打撃力のみが伝達される。
【0028】
一方、モード切替ダイヤル60の回転操作によってハンマドリルモードが選択されていると、すなわち、
図1に示されるように、リングギヤ53とスリーブ54とが係合していると、リングギヤ53の回転がスリーブ54を介してシリンダ10に伝達され、シリンダ10及びリテーナスリーブ11が一体回転する。よって、リテーナスリーブ11に保持されているドライバビットには、断続的に打撃力が伝達され、かつ、連続的に回転力が伝達される。出力軸33、ピニオンギヤ34、第1ギヤ41、第1駆動軸40、偏心ピン42、コンロッド43、ピストン20、打撃子21、中間子22、第2駆動軸50、ベベルギヤ52、リングギヤ53、スリーブ54、シリンダ10、リテーナスリーブ11は動力伝達機構を構成する。
【0029】
次に、本実施形態に係るハンマドリル1が備える各種回路やブラシレスモータ30の回路構成などについて
図4を参照しながら説明する。
【0030】
ブラシレスモータ30(
図1)のステータ31は、U相,V相,W相に対応するコイルU1,V1,W1を備えている。一方、ブラシレスモータ30のロータ32(
図1)には、極性が異なる2種類の永久磁石が4つ設けられている。これら4つの永久磁石は、ロータ32の回転方向に沿って等間隔で配置されている。
図4に示されるように、ロータ32の近傍には3つの磁気センサS1,S2,S3が配置されている。これら磁気センサS1,S2,S3は、ロータ32の回転に伴う磁力変化を検出して電気信号をロータ位置検出回路101に出力する。本実施形態における磁気センサS1,S2,S3にはホール素子が用いられている。
【0031】
図4に示されるスイッチング回路102は、ステータ31のコイルU1,V1,W1への通電を制御する。スイッチング回路102の手前には、交流電流を直流電流に変換する整流回路103と、整流回路103から出力される直流電流の電圧を昇圧してスイッチング回路102に供給する力率改善回路104と、が配置されている。整流回路103は、4つのダイオード素子が互いに接続されたブリッジ回路である。力率改善回路104は、電界効果トランジスタと、電界効果トランジスタに対してPWM(Pulse Width Modulation)制御信号を出力する集積回路と、コンデンサと、を有し、スイッチング回路102において発生する高周波電流を制限値以下に抑制する。
【0032】
スイッチング回路102は、3相フルブリッジインバータ回路であり、並列接続された2つのスイッチング素子Tr1,Tr2と、並列接続された2つのスイッチング素子Tr3,Tr4と、並列接続された2つのスイッチング素子Tr5,Tr6と、を有する。それぞれのスイッチング素子は、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)である。スイッチング素子Tr1,Tr2はコイルU1に接続され、コイルU1に供給される電流を制御する。スイッチング素子Tr3,Tr4はコイルVIに接続され、コイルV1に供給される電流を制御する。スイッチング素子Tr5,Tr6はコイルWIに接続され、コイルW1に供給される電流を制御する。
【0033】
スイッチング素子Tr1,Tr3,Tr5は、力率改善回路104の正極側出力端子に接続されており、スイッチング素子Tr2,Tr4,Tr6は、力率改善回路104の負極側出力端子に接続されている。すなわち、スイッチング素子Tr1,Tr3,Tr5はハイサイド側であり、スイッチング素子Tr2,Tr4,Tr6はローサイド側である。
【0034】
尚、本実施形態では、コイルU1,V1,W1がスター結線されている。しかし、コイルU1,V1,W1の結線方式はスター結線に限られず、例えば、デルタ結線であってもよい。
【0035】
図4に示されているモータ制御ユニット105は、制御部としてのコントローラ106と、制御信号出力回路107と、ロータ位置検出回路101と、モータ回転数検出回路108と、を含んでいる。コントローラ106は、ブラシレスモータ30を制御するための信号を演算し、出力する。コントローラ106から出力される制御信号は、制御信号出力回路107を経てスイッチング回路102に入力される。ロータ位置検出回路101は、磁気センサS1,S2,S3から出力される電気信号に基づいてロータ32(
図1)の回転位置を検出し、ロータ32の回転位置を示す信号を出力する。ロータ位置検出回路101から出力される位置検出信号は、コントローラ106及びモータ回転数検出回路108に入力される。モータ回転数検出回路108は、ロータ32の回転数つまりモータ回転数を検出し、モータ回転数を示す信号を出力する。モータ回転数検出回路108から出力される回転数検出信号は、コントローラ106に入力される。コントローラ106は、モータ回転数が目標回転数に維持されるように、回転数検出信号に基づくフィードバック制御を実行する。
【0036】
図4に示されるコントローラ106には、
図1に示されるトリガレバー70の操作に伴ってメインスイッチ71から出力されるオン信号及びオフ信号が入力される。
図1に示されるトリガレバー70が作業者によって操作されると、その操作に応じてメインスイッチ71からオン信号又はオフ信号が出力される。具体的には、トリガレバー70が引かれるとメインスイッチ71からオン信号が出力され、トリガレバー70の引きが解除されるとメインスイッチ71からオフ信号が出力され、又はオン信号の出力が停止される。コントローラ106は、メインスイッチ71から出力されたオン信号を受信すると、メインスイッチ71がオンされたと判断する。一方、コントローラ106は、メインスイッチ71から出力されたオフ信号を受信するか、又はオン信号の受信が途絶えると、メインスイッチ71がオフされたと判断する。
【0037】
図4に示されるコントローラ106には、
図1に示されるオンロック80から出力されるオンロック信号が入力される。本実施形態におけるオンロックボタン80は、操作される度に信号を出力(送信)するタクタイルスイッチである。よって、
図4に示されるコントローラ106には、オンロックボタン80が操作される度にオンロック信号が入力される。言い換えれば、コントローラ106は、オンロックボタン80が押される度にオンロック信号を受信する。
【0038】
再び
図1を参照する。中間ハウジング3には、モード検出部としてのセンサ62が設けられている。このセンサ62は、モード切替ダイヤル60が所定位置に回転操作されると電気信号(モード検出信号)を出力(送信)する。センサ62から出力されたモード検出信号は、
図4に示されるコントローラ106に入力される。
図1に示されるモード切替ダイヤル60には永久磁石60aが内蔵されている。モード切替ダイヤル60が
図1に示される位置に回転操作されると、つまりハンマモードが選択されると、モード切替ダイヤル60に内蔵されている永久磁石60aがセンサ62の近傍(本実施形態では、センサ62の真上)に位置する。すると、永久磁石60aの磁力がセンサ62によって検出され、センサ62からモード検出信号が出力される。一方、モード切替ダイヤル60が
図1に示される位置に回転操作されると、つまりハンマドリルモードが選択されると、モード切替ダイヤル60に内蔵されている永久磁石60aがセンサ62から離反する。すると、永久磁石60aの磁力がセンサ62によって検出されなくなり、センサ62からのモード検出信号の出力が途絶える。よって、
図4に示されるコントローラ106は、モード検出信号の入力の有無によって、選択されている動作モードがハンマモードであるか否かを判断することができる。
【0039】
次に、
図4に示されるコントローラ106によって実行されるブラシレスモータ30の制御(オン・オフ制御)の一例について主に
図5を参照しながら説明する。尚、以下の説明では、ブラシレスモータ30を“モータ30”と略称する。
【0040】
電源ケーブルが電源に接続されると、コントローラ106(マイコン)が起動する(S1)。動作モードがハンマモードではない場合(S2:No)、コントローラ106は、メインスイッチ71がオンされているか否かを判断する(S3)。メインスイッチ71がオンされている場合(S3:Yes)、コントローラ16は、モータ30をオンする(S4)。以降、コントローラ106はステップS2~S4を繰り返し、モータ30の作動状態を維持する。ステップS2~S4を繰り返している間にメインスイッチ71がオフされると(S3:No)コントローラ106はモータ30を停止する(S5)。メインスイッチ71がオフされてから所定時間(例:15分)が経過していない場合(S6:No)、コントローラ106はステップS2~S6を繰り返し、モータ30の停止状態を維持する。ステップS2~S6を繰り返している間に、メインスイッチ71やオンロックボタン80等の操作部材が操作されないまま所定時間が経過すると(S6:Yes)、コントローラ106(マイコン)はシャットダウンし(S7)、ハンマドリル1は動作を停止する。
【0041】
ステップS2においてハンマモードが選択されている場合(S2:Yes)、コントローラ106は、メインスイッチ71がオンされているか否かを判断する(S8)。メインスイッチ71がオンされている場合(S8:Yes)、コントローラ16はモータ30をオンし(S9)、以降、コントローラ106はステップS2、S8、S9を繰り返す。ステップS8においてメインスイッチ71がオフされていると(S8:No)コントローラ106はモータ30を停止し(S10)、オンロックスイッチ80の状態を検出する(S11)。オンロックスイッチ80がオフされている場合、コントローラ106は、メインスイッチ71やオンロックスイッチ80が操作されないまま経過した時間を検出する(S12)。ステップ12において所定時間が経過していなければ(S12:No)、コントローラ106はハンマモードが選択されているか否かを判断し(S2)、所定時間が経過している場合(S12:Yes)、コントローラ106はシャットダウンし(S13)、ハンマドリル1は動作を停止する。
【0042】
ステップS11においてオンロックスイッチ80がオンされている場合(S11:Yes)、点灯部81(LED)が点灯し、モータ30が駆動する(S15)。換言すると、オンロック機能が有効になる。動作モードが引き続きハンマモードである場合(S16:No)、コントローラ106はオンロックスイッチ80が再度オンされたか否かを検出する(S17)。オンロックスイッチがオンされない場合(S17:No)、コントローラ106はステップS16、S17を繰り返す。ステップS17においてオンロックスイッチが再度オンされたことを検出した場合(S17:Yes)、点灯部81(LED)が消灯し(S18)、コントローラ106はモータ30を停止し(S19)、ステップS11へと戻る。換言すると、オンロック機能が無効となる。ステップS16においてハンマモードが選択されていない場合(S16:No)、点灯部81(LED)は消灯し(S20)、コントローラ106はモータを停止し(S21)、ステップ2へと戻る。換言すると、オンロック機能が無効となる。
【0043】
以上のように、ハンマモード選択時には、オンロックボタン80の一回の操作によってモータ30を起動させ、かつ、オンロック制御を実行させることができる。換言すれば、オンロック制御は、ハンマモード選択時にのみ実行され得る。また、オンロックボタン80に内蔵されているLEDの点灯により、オンロック制御が実行されていることが報知される。さらに、オンロック制御の実行中に動作モードの切り替えが行われると、ブレーキ工程を含む積極停止制御が実行される。よって、突然の回転力伝達による反動の発生が回避される。一方、オンロック制御の実行中にオンロックボタン80が操作されると、ブレーキ工程を含まない自然停止制御が実行される。換言すれば、オンロックボタン80の操作によってオンロック制御の実行を中止させ、モータ30を停止させることができる。よって、オンロックボタン80の操作が解除された直後にこれらが再び操作された場合であっても、モータ30の回転数がスムーズに立ち上がる。
【0044】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、本発明は、レシプロ型変換機構によってモータの回転運動がピストンの往復運動に変換される電動工具にも適用可能である。また、本発明における第1動作モードには、先端工具に打撃力のみが伝達される動作モードが含まれ、第2動作モータには、先端工具に回転力のみが伝達される動作モードが含まれる。
【0045】
尚、モータの回転を積極的に停止させるブレーキ工程を含まない自然停止制御は、積極停止制御よりも制動力が弱い停止制御の一例である。換言すれば、自然停止制御と積極停止制御とは、互いに制動力が異なる2つの停止制御の一例である。
【0046】
本発明には、制動力が相対的に小さい積極停止制御と、制動力が相対的に大きな積極停止制御とが所定条件に応じて選択的に実行される実施形態が含まれる。また、本発明には、積極停止制御における制動力が一定である実施形態のみでなく、制動力が変化する実施形態も含まれる。
【符号の説明】
【0047】
1…ハンマドリル、2…シリンダハウジング、3…中間ハウジング、4…モータハウジング、5…ハンドル、10…シリンダ、20…ピストン、30…ブラシレスモータ(モータ)、60…モード切替ダイヤル、62…センサ、70…トリガレバー、71…メインスイッチ、80…オンロックボタン