(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】共鳴音信号発生装置、共鳴音信号発生方法、共鳴音信号発生プログラムおよび電子音楽装置
(51)【国際特許分類】
G10H 1/00 20060101AFI20230314BHJP
G10H 1/18 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
G10H1/00 C
G10H1/18 Z
(21)【出願番号】P 2018190403
(22)【出願日】2018-10-05
【審査請求日】2021-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098305
【氏名又は名称】福島 祥人
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】牧野 貴昭
(72)【発明者】
【氏名】仲田 昌史
【審査官】大野 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-091395(JP,A)
【文献】特開2017-215382(JP,A)
【文献】特開平05-188950(JP,A)
【文献】特開2015-184392(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10H 1/00
G10H 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音高の指定を受け付ける指定受付部と、
指定された音高に対応する音信号の発生を指示する音信号指示部と、
複数の音高に基づく共鳴音を示す共鳴音信号を生成する生成部と、
一の音高の指定時に他の音高が指定されているか否かを判定する判定部と、
前記一の音高の指定時に前記他の音高が指定されていると判定された場合に前記生成部に
前記一の音高に基づいて前記他の音高において発生する共鳴音信号、および、前記他の音高に基づいて前記一の音高において発生する共鳴音信号の生成を指示し、前記一の音高の指定時に前記他の音高が指定されていないと判定された場合に前記生成部に共鳴音信号の生成を指示しない共鳴音指示部とを備えた、共鳴音信号発生装置。
【請求項2】
前記共鳴音指示部は、いずれかの音高の指定の解除時に他の音高が指定されている場合に前記生成部に前記他の音高において発生する共鳴音信号の生成を継続するように指示する、請求項1記載の共鳴音信号発生装置。
【請求項3】
前記共鳴音指示部は、いずれかの音高の指定の解除時に他のいずれの音高も指定されていない場合に前記生成部に共鳴音信号の生成を停止するように指示する、請求項1または2記載の共鳴音信号発生装置。
【請求項4】
ダンパ効果が割り当てられた複数の音高を含む第1の音高領域およびダンパ効果が割り当てられない1以上の音高を含む第2の音高領域における音高の指定を受け付ける指定受付部と、
指定された音高に対応する音信号の発生を指示する音信号指示部と、
複数の音高に基づく共鳴音を示す共鳴音信号を生成する生成部と、
一の音高の指定時に他の音高が指定されているか否かを判定する判定部と、
前記一の音高の指定時に前記他の音高が指定されていると判定された場合に、前記生成部に
前記一の音高に基づき、前記他の音高および前記第2の音高領域において発生する共鳴音信号、および、前記他の音高に基づき、前記一の音高および前記第2の音高領域において発生する共鳴音信号の生成を指示し、前記一の音高の指定時に前記他の音高が指定されていないと判定された場合に、前記一の音高に基づき、前記第2の音高領域において発生する共鳴音信号の生成を指示する共鳴音指示部とを備えた、共鳴音信号発生装置。
【請求項5】
前記共鳴音指示部は、いずれかの音高の指定の解除時に他のいずれの音高も指定されていない場合に、前記生成部に前記第2の音高領域において発生する共鳴音信号の生成を継続するように指示する、請求項4記載の共鳴音信号発生装置。
【請求項6】
前記第1の音高領域における前記複数の音高に対するダンパ効果の作用および解除を受け付ける複数ダンパ操作受付部をさらに備え、
前記共鳴音指示部は、前記ダンパ効果の作用の受付時に、指定されている音高および前記第2の音高領域において発生する共鳴音信号の生成を継続するように前記生成部に指示し、前記指定されている音高を除いて前記第1の音高領域において発生する共鳴音信号の生成を停止するように前記生成部に指示する、請求項4または5に記載の共鳴音信号発生装置。
【請求項7】
音高の指定を受け付けることと、
指定された音高に対応する音信号の発生を指示することと、
複数の音高に基づく共鳴音を示す共鳴音信号を生成することと、
一の音高の指定時に他の音高が指定されているか否かを判定することと、
前記一の音高の指定時に前記他の音高が指定されていると判定された場合に
前記一の音高に基づいて前記他の音高において発生する共鳴音信号、および、前記他の音高に基づいて前記一の音高において発生する共鳴音信号の生成を指示し、前記一の音高の指定時に
前記他の音高が指定されていないと判定された場合に共鳴音信号の生成を指示しないこととを含む、共鳴音信号発生方法。
【請求項8】
前記指示することは、いずれかの音高の指定の解除時に他の音高が指定されている場合に前記他の音高において発生する共鳴音信号の生成を継続するように指示することを含む、請求項7記載の共鳴音信号発生方法。
【請求項9】
前記指示することは、いずれかの音高の指定の解除時に他のいずれの音高も指定されていない場合に共鳴音信号の生成を停止するように指示することを含む、請求項7または8記載の共鳴音信号発生方法。
【請求項10】
ダンパ効果が割り当てられた複数の音高を含む第1の音高領域およびダンパ効果が割り当てられない1以上の音高を含む第2の音高領域における音高の指定を受け付けることと、
指定された音高に対応する音信号の発生を指示することと、
複数の音高に基づく共鳴音を示す共鳴音信号を生成することと、
一の音高の指定時に他の音高が指定されているか否かを判定することと、
前記一の音高の指定時に前記他の音高が指定されていると判定された場合に
前記一の音高に基づき、前記他の音高および前記第2の音高領域において発生する共鳴音信号、および、前記他の音高に基づき、前記一の音高および前記第2の音高領域において発生する共鳴音信号の生成を指示し、前記一の音高の指定時に前記他の音高が指定されていないと判定された場合に前記一の音高に基づき、前記第2の音高領域において発生する共鳴音信号の生成を指示することとを含む、共鳴音信号発生方法。
【請求項11】
前記指示することは、いずれかの音高の指定の解除時に他のいずれの音高も指定されていない場合に前記第2の音高領域において発生する共鳴音信号の生成を継続するように指示することを含む、請求項10記載の共鳴音信号発生方法。
【請求項12】
前記第1の音高領域における前記複数の音高に対するダンパ効果の作用および解除を受け付けることをさらに含み、
前記指示することは、前記ダンパ効果の作用の受付時に、指定されている音高および前記第2の音高領域において発生する共鳴音信号の生成を継続するように指示し、前記指定されている音高を除いて前記第1の音高領域において発生する共鳴音信号の生成を停止するように指示することを含む、請求項10または11に記載の共鳴音信号発生方法。
【請求項13】
音高の指定を受け付ける処理と、
指定された音高に対応する音信号の発生を指示する処理と、
複数の音高に基づく共鳴音を示す共鳴音信号を生成する処理と、
一の音高の指定時に他の音高が指定されているか否かを判定する処理と、
前記一の音高の指定時に前記他の音高が指定されていると判定された場合に
前記一の音高に基づいて前記他の音高において発生する共鳴音信号、および、前記他の音高に基づいて前記一の音高において発生する共鳴音信号の生成を指示し、前記一の音高の指定時に
前記他の音高が指定されていないと判定された場合に共鳴音信号の生成を指示しない処理とを、コンピュータに実行させる、共鳴音信号発生プログラム。
【請求項14】
音高をそれぞれ指定する複数の演奏操作子と、
請求項1~6のいずれか一項に記載の共鳴音信号発生装置と、
前記共鳴音信号発生装置により指示された音信号を発生する音源と、
前記音源により発生された音信号および前記共鳴音信号発生装置により生成された共鳴音信号に基づいて、指定された音高を有する音および指定された音高に関連する共鳴音を出力する出力部とを備えた、電子音楽装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共鳴音信号を発生させる共鳴音信号発生装置、共鳴音信号発生方法、共鳴音信号発生プログラムおよび共鳴音信号発生装置を備える電子音楽装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アコースティックピアノ等の自然鍵盤楽器において和音が演奏された場合、共鳴音が発生する。つまり、複数の音高の鍵が押された場合、押された複数の鍵に対応する弦同士が共鳴し、共鳴音が発生する。従来、アコースティックピアノで発生する共鳴音を再現することを試みた電子ピアノが知られている。例えば、下記特許文献1に記載された共鳴音生成装置は、アコースティックピアノの共鳴音を模擬して生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1に記載された共鳴音生成装置は、複数の音高が指定されたときに、共鳴音を発生させる。この共鳴音生成装置によれば、演奏者が和音を弾いたときに、アコースティックピアノを模擬した共鳴音が発生される。しかしながら、実際のアコースティックピアノで発生する共鳴音を再現するためには、さらなる改良が望まれる。
【0005】
本発明の目的は、自然鍵盤楽器で発生する共鳴音により近い共鳴音を発生可能な共鳴音信号発生装置、共鳴音信号発生方法、共鳴音信号発生プログラムおよび電子音楽装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面に従う共鳴音信号発生装置は、音高の指定を受け付ける指定受付部と、指定された音高に対応する音信号の発生を指示する音信号指示部と、複数の音高に基づく共鳴音を示す共鳴音信号を生成する生成部と、一の音高の指定時に他の音高が指定されているか否かを判定する判定部と、一の音高の指定時に他の音高が指定されていると判定された場合に生成部に一の音高および他の音高に基づいて一の音高および他の音高において発生する共鳴音信号の生成を指示し、一の音高の指定時に他の音高が指定されていないと判定された場合に生成部に共鳴音信号の生成を指示しない共鳴音指示部とを備える。
【0007】
共鳴音指示部は、いずれかの音高の指定の解除時に他の音高が指定されている場合に生成部に他の音高において発生する共鳴音信号の生成を継続するように指示してもよい。
【0008】
共鳴音指示部は、いずれかの音高の指定の解除時に他のいずれの音高も指定されていない場合に生成部に共鳴音信号の生成を停止するように指示してもよい。
【0009】
本発明の他の局面に従う共鳴音信号発生装置は、ダンパ効果が割り当てられた複数の音高を含む第1の音高領域およびダンパ効果が割り当てられない1以上の音高を含む第2の音高領域における音高の指定を受け付ける指定受付部と、指定された音高に対応する音信号の発生を指示する音信号指示部と、複数の音高に基づく共鳴音を示す共鳴音信号を生成する生成部と、一の音高の指定時に他の音高が指定されているか否かを判定する判定部と、一の音高の指定時に他の音高が指定されていると判定された場合に、生成部に一の音高および他の音高に基づき、一の音高、他の音高および第2の音高領域において発生する共鳴音信号の生成を指示し、一の音高の指定時に他の音高が指定されていないと判定された場合に、一の音高に基づき、第2の音高領域において発生する共鳴音信号の生成を指示する共鳴音指示部とを備える。
【0010】
共鳴音指示部は、いずれかの音高の指定の解除時に他のいずれの音高も指定されていない場合に、生成部に第2の音高領域において発生する共鳴音信号の生成を継続するように指示してもよい。
【0011】
第1の音高領域における複数の音高に対するダンパ効果の作用および解除を受け付ける複数ダンパ操作受付部をさらに備え、共鳴音指示部は、ダンパ効果の作用の受付時に、指定されている音高および第2の音高領域において発生する共鳴音信号の生成を継続するように生成部に指示し、指定されている音高を除いて第1の音高領域において発生する共鳴音信号の生成を停止するように生成部に指示してもよい。
【0012】
本発明のさらに他の局面に従う共鳴音信号発生方法は、音高の指定を受け付けることと、指定された音高に対応する音信号の発生を指示することと、複数の音高に基づく共鳴音を示す共鳴音信号を生成することと、一の音高の指定時に他の音高が指定されているか否かを判定することと、一の音高の指定時に他の音高が指定されていると判定された場合に一の音高および他の音高に基づいて一の音高および他の音高において発生する共鳴音信号の生成を指示し、一の音高の指定時に他の音高が指定されていないと判定された場合に共鳴音信号の生成を指示しない。
【0013】
指示することは、いずれかの音高の指定の解除時に他の音高が指定されている場合に他の音高において発生する共鳴音信号の生成を継続するように指示することを含んでもよい。
【0014】
指示することは、いずれかの音高の指定の解除時に他のいずれの音高も指定されていない場合に共鳴音信号の生成を停止するように指示することを含んでもよい。
【0015】
本発明のさらに他の局面に従う共鳴音信号発生方法は、ダンパ効果が割り当てられた複数の音高を含む第1の音高領域およびダンパ効果が割り当てられない1以上の音高を含む第2の音高領域における音高の指定を受け付けることと、指定された音高に対応する音信号の発生を指示することと、複数の音高に基づく共鳴音を示す共鳴音信号を生成することと、一の音高の指定時に他の音高が指定されているか否かを判定することと、一の音高の指定時に他の音高が指定されていると判定された場合に一の音高および他の音高に基づき、一の音高、他の音高および第2の音高領域において発生する共鳴音信号の生成を指示し、一の音高の指定時に他の音高が指定されていないと判定された場合に一の音高に基づき、第2の音高領域において発生する共鳴音信号の生成を指示することとを含む。
【0016】
指示することは、いずれかの音高の指定の解除時に他のいずれの音高も指定されていない場合に第2の音高領域において発生する共鳴音信号の生成を継続するように指示することを含んでもよい。
【0017】
第1の音高領域における複数の音高に対するダンパ効果の作用および解除を受け付けることをさらに含み、指示することは、ダンパ効果の作用の受付時に、指定されている音高および第2の音高領域において発生する共鳴音信号の生成を継続するように指示し、指定されている音高を除いて第1の音高領域において発生する共鳴音信号の生成を停止するように指示することを含んでもよい。
【0018】
本発明のさらに他の局面に従う共鳴音信号発生プログラムは、音高の指定を受け付ける処理と、指定された音高に対応する音信号の発生を指示する処理と、複数の音高に基づく共鳴音を示す共鳴音信号を生成する処理と、一の音高の指定時に他の音高が指定されているか否かを判定する処理と、一の音高の指定時に他の音高が指定されていると判定された場合に一の音高および他の音高に基づいて一の音高および他の音高において発生する共鳴音信号の生成を指示し、一の音高の指定時に他の音高が指定されていないと判定された場合に共鳴音信号の生成を指示しない処理とを、コンピュータに実行させる。
【0019】
本発明のさらに他の局面に従う電子音楽装置は、音高をそれぞれ指定する複数の演奏操作子と、上記のいずれかの共鳴音信号発生装置と、共鳴音信号発生装置により指示された音信号を発生する音源と、音源により発生された音信号および共鳴音信号発生装置により生成された共鳴音信号に基づいて、指定された音高を有する音および指定された音高に関連する共鳴音を出力する出力部とを備える。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、アコースティックピアノで発生する共鳴音により近い共鳴音を発生可能な共鳴音信号発生装置、共鳴音信号発生方法、共鳴音信号発生プログラムおよび電子音楽装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施の形態に係る共鳴音信号発生装置を含む電子音楽装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】第1の実施の形態に係る共鳴音信号発生装置およびその周辺装置の機能的な構成を示すブロック図である。
【
図3】第1の実施の形態に係る共鳴音信号発生装置における共鳴音信号発生方法を示すフローチャートである。
【
図4】第1の実施の形態に係る共鳴音信号発生装置における共鳴音信号発生方法を示すフローチャートである。
【
図5】第2の実施の形態に係る演奏操作子を示す図である。
【
図6】第2の実施の形態に係る共鳴音信号発生装置およびその周辺装置の機能的な構成を示すブロック図である。
【
図7】第2の実施の形態に係る共鳴音信号発生装置における共鳴音信号発生方法を示すフローチャートである。
【
図8】第2の実施の形態に係る共鳴音信号発生装置における共鳴音信号発生方法を示すフローチャートである。
【
図9】第2の実施の形態に係る共鳴音信号発生装置における共鳴音信号発生方法を示すフローチャートである。
【
図10】参考形態に係る演奏操作子を示す図である。
【
図11】参考形態に係る共鳴音信号発生装置およびその周辺装置の機能的な構成を示すブロック図である。
【
図12】参考形態に係る共鳴音信号発生装置における共鳴音信号発生方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[1]アコースティックピアノにおける共鳴音
本発明の実施の形態を説明する前に、アコースティックピアノにおいて共鳴音が発生する仕組みについて説明する。アコースティックピアノは、複数の鍵を備える。アコースティックピアノは、複数の鍵に対応して、各鍵の音高に応じた音を発生する複数の弦を備える。複数の弦には、それぞれダンパが接触している。鍵が押されないときには、ダンパが弦に接触しているために、弦は振動せず、音は発生しない。鍵が押されたときには、その鍵に対応した弦に接触していたダンパが、弦から離れる。これにより、押された鍵に対応する弦が振動し、押された鍵の音高に応じた音が発生する。
【0023】
演奏者は、和音を弾く場合には、複数の鍵を押す。複数の鍵を押すと、押された全ての鍵に対応したダンパがそれぞれの弦から離れ、押された鍵の全ての音高に対応する音が発生する。例えば、「C」の音と「E」の音に対応する鍵が押されたとき、「C」の音と「E」の音に対応する弦からダンパが離れる。これにより、「C」の音と「E」の音に対応する弦が振動し、「C」の音と「E」の音が発生する。さらに、「C」の音が発生することにより、「C」の音に基づいて「E」の音の弦が共鳴し、共鳴音が発生する。同様に、「E」の音が発生することにより、「E」の音に基づいて「C」の音の弦が共鳴し、共鳴音が発生する。一方、「C」の音と「E」の音以外の音高の鍵については、対応する弦にダンパが接触しているため、共鳴音は発生しない。
【0024】
アコースティックピアノにおいては、上記のとおり、第1の音高および第2の音高の鍵が押された場合、第1の音高の弦および第2の音高の弦が振動することで、第1の音高および第2の音高が発生する。同時に、第1の音高に基づいて第2の音高の弦が振動して、第2の音高の弦で共鳴音が発生する。第2の音高に基づいて第1の音高の弦が振動して、第1の音高の弦で共鳴音が発生する。
【0025】
このように、アコースティックピアノにおいては、複数の鍵が押されたときに、押された鍵について共鳴音が発生する。本実施の形態では、アコースティックピアノにおいて発生する共鳴音を電子的に再現する。そのため、電子音楽装置は、弦および弦に接触するダンパは有さない。したがって、第1の音高に基づいて第2の音高の弦が振動することにより、第2の音高の弦で発生する共鳴音を、「第1の音高に基づいて第2の音高で発生する共鳴音」と呼び、第2の音高に基づいて第1の音高の弦が振動することにより、第1の音高の弦で発生する共鳴音を、「第2の音高に基づいて第1の音高で発生する共鳴音」と呼ぶ。
【0026】
以下、本発明の実施の形態に係る共鳴音信号発生装置、共鳴音信号発生方法、共鳴音信号発生プログラムおよび電子音楽装置について図面を用いて詳細に説明する。
【0027】
[2]第1の実施の形態
(1)電子音楽装置の構成
図1は本発明の実施の形態に係る共鳴音信号発生装置100を含む電子音楽装置1の構成を示すブロック図である。本実施の形態の共鳴音信号発生装置100を含む電子音楽装置1は、電子的に音を発生させる装置であるため、機械的なダンパは存在しない。そこで、本実施の形態の共鳴音信号発生装置100を含む電子音楽装置1は、押された鍵について擬似的にダンパが離れたときと同様の効果が生じるように、共鳴音の制御を行う。
【0028】
図1の電子音楽装置1は、例えば電子鍵盤楽器である。電子音楽装置1は、演奏操作子2、設定操作部3および表示器4を備える。本実施の形態では、演奏操作子2は、複数の鍵の並びを有する鍵盤を含み、バス14に接続される。複数の鍵の並びには、左から右へ順に高くなる音高が対応付けられている。鍵盤は、例えば61個の鍵を備えている。ただし、鍵盤が備える鍵の数はこれに限定されない。なお、演奏操作子2の鍵盤は、後述するタッチパネルディスプレイの画面上に表示された鍵盤の画像であってもよい。第1の実施の形態における電子音楽装置1は、全ての鍵が、アコースティックピアノにおけるダンパを有する鍵と同様の機能を有している。つまり、演奏者によっていずれの鍵も押されていない状態においては、全ての鍵にダンパが作用している状態と同様の制御が行われる。
【0029】
設定操作部3は、オン/オフ操作される操作スイッチ、回転操作される操作スイッチ、またはスライド操作される操作スイッチ等を含み、バス14に接続される。この設定操作部3は、音量の調整、電源のオン/オフおよびモード設定を含む各種設定を行うために用いられる。表示器4は、例えば液晶ディスプレイを含み、バス14に接続される。表示器4には、楽曲名、楽譜、またはその他の各種情報が表示される。表示器4がタッチパネルディスプレイであってもよい。この場合、演奏操作子2または設定操作部3の一部または全てが表示器4に表示されてもよい。使用者は、表示器4を操作することにより各種操作を指示することができる。
【0030】
電子音楽装置1は、音源部5およびサウンドシステム6を備える。音源部5はバス14に接続され、演奏操作子2の操作により指定される音高に基づいてオーディオデータ(音響信号)を出力する。オーディオデータは、音の波形を示すサンプリングデータ(例えば、PCM(パルス符号変調)データ)である。以下、音源部5により出力されるオーディオデータを音信号と呼ぶ。音源部5は、予め全ての音高の音信号を記憶している。サウンドシステム6は、デジタルアナログ(D/A)変換回路、増幅器およびスピーカを含む。このサウンドシステム6は、音源部5から与えられる音信号をアナログ音信号に変換し、アナログ音信号に基づく音を発生する。サウンドシステム6は、本発明における出力部の例である。
【0031】
電子音楽装置1は、記憶装置7、CPU(中央演算処理装置)8、RAM(ランダムアクセスメモリ)10、ROM(リードオンリメモリ)11、および通信I/F(インタフェース)12をさらに備える。記憶装置7、CPU8、RAM10、ROM11および通信I/F12はバス14に接続される。外部記憶装置13等の外部機器が通信I/F12を介してバス14に接続されてもよい。
【0032】
記憶装置7は、ハードディスク、光学ディスク、磁気ディスクまたはメモリカード等の記憶媒体を含む。この記憶装置7には、共鳴音信号発生プログラムP1等のコンピュータプログラムが記憶される。
【0033】
RAM10は、例えば揮発性メモリからなり、CPU8の作業領域として用いられるとともに、各種データを一時的に記憶する。ROM11は、例えば不揮発性メモリからなり、制御プログラムを記憶する。ROM11が共鳴音信号発生プログラムP1等のコンピュータプログラムを記憶してもよい。CPU8は、記憶装置7またはROM11に記憶された共鳴音信号発生プログラムP1を実行することにより後述する共鳴音信号発生方法を行う。記憶装置7、CPU8、RAM10およびROM11が共鳴音信号発生装置100を構成する。
【0034】
共鳴音信号発生プログラムP1は、コンピュータが読み取り可能な記録媒体に格納された形態で提供され、記憶装置7またはROM11にインストールされてもよい。また、共鳴音信号発生プログラムP1が外部記憶装置13に記憶されてもよい。さらに、通信I/F12が通信網に接続されている場合、通信網に接続されたサーバから配信された共鳴音信号発生プログラムP1が記憶装置7またはROM11にインストールされてもよい。
【0035】
(2)共鳴音信号発生装置100の機能的な構成
図2は共鳴音信号発生装置100の機能的な構成およびその周辺装置を示すブロック図である。
図2に示すように、共鳴音信号発生装置100は、指定受付部101、音信号指示部102、判定部103、共鳴音指示部104および生成部105を含む。共鳴音信号発生装置100の各構成部分(101~105)の機能は、
図1のCPU8が、RAM10を作業領域として使用しつつ、記憶装置7またはROM11に記憶された共鳴音信号発生プログラムP1を実行することにより実現される。
【0036】
使用者が演奏操作子2の鍵を押すと、押された鍵に対応する音高を含むノートオンイベント(以下、ノートオンと略記する。)が発生する。ノートオンは鍵のオン状態に相当する。また、使用者が演奏操作子2の鍵を離すと、離された鍵に対応する音高を含むノートオフイベント(以下、ノートオフと略記する。)が発生する。ノートオフは鍵のオフ状態に相当する。
【0037】
指定受付部101は、演奏操作子2の操作によるノートオンまたはノートオフを示す指定情報を受け付ける。すなわち、指定受付部101は、指定情報を検出する。検出された指定情報は音信号指示部102および判定部103に与えられる。
【0038】
音信号指示部102は、指定情報に基づいて、音源部5に対して音信号の発生を指示する。指定情報においていずれかの音高のノートオンが示されている場合、音信号指示部102は、音源部5に対して、指定された音高の音信号の発生を指示する。指定情報においていずれかの音高のノートオフが示されている場合、音信号指示部102は、音源部5に対して、指定された音高の音信号の停止を指示する。
【0039】
判定部103は、指定情報に基づいて、音高の指定状態を判定する。具体的には、判定部103は、いずれかの音高についてノートオンの検出時に、他の音高が指定されているか否かを判定する。また、判定部103は、いずれかの音高についてノートオフの検出時に、他の音高が指定されているか否かを判定する。
【0040】
共鳴音指示部104は、判定部103の判定結果に基づいて、生成部105に対して共鳴音信号の生成または停止を指示する。
【0041】
生成部105は、共鳴音指示部104の指示に基づき、共鳴音信号の生成を行う。この場合、音信号指示部102の指示に基づいて音源部5から出力された音信号は、サウンドシステム6に与えられるとともに、生成部105に与えられる。音源部5から複数の音高の音信号が出力されている場合には、複数の音高の音信号が生成部105に与えられる。生成部105は、共鳴音指示部104から受け取った指示および音源部5から与えられる音信号に基づいて、共鳴音信号を生成する。
【0042】
(3)共鳴音信号発生方法の一例
図3および
図4は
図2の共鳴音信号発生装置100における共鳴音信号発生方法を示すフローチャートである。
図3および
図4の共鳴音信号発生方法は、
図1のCPU8が記憶装置7またはROM11に記憶された共鳴音信号発生プログラムP1を実行することにより行われる。
【0043】
図3を参照する。まず、指定受付部101は、ノートオンを示す指定情報を検出したか否かを判定する(ステップS11)。演奏者が演奏操作子2のいずれかの鍵を押すと、演奏操作子2は、押された鍵に対応する音高のノートオンを示す指定情報を指定受付部101に与える。
【0044】
ノートオンを示す指定情報を検出しない場合、指定受付部101は、ステップS21に進む。
【0045】
指定受付部101がノートオンを示す指定情報を検出した場合、音信号指示部102は、音源部5に対して指定情報で指定された音高に対応する音信号の発生指示を行う(ステップS12)。それにより、音源部5は、指定された音高に対応するオーディオデータをサウンドシステム6に出力する。サウンドシステム6は、オーディオデータをアナログ音信号に変換し、変換されたアナログ音信号に対応する音をスピーカから出力する。これにより、演奏者によって押された鍵に対応する音がサウンドシステム6より出力される。
【0046】
指定受付部101がノートオンを示す指定情報を検出した場合、判定部103は、指定情報を受けた時点で、既に他の音高が指定されているか否かを判定する(ステップS13)。
【0047】
判定部103は、指定受付部101から与えられるノートオンを示す指定情報を保存している。指定受付部101から与えられる指定情報は音高の情報を含んでいる。したがって、判定部103は、現在ノートオンとなっている音高を判定することができる。
【0048】
判定部103が他の音高が指定中であると判定すると、共鳴音指示部104は、生成部105に対して共鳴音信号の生成を指示する(ステップS15)。具体的には、共鳴音指示部104は、生成部105に対して、ノートオンで指定された音高および他の音高に基づいて、ノートオンで指定された音高および他の音高で発生する共鳴音信号の生成を指示する。
【0049】
生成部105は、共鳴音指示部104の指示に基づいて、共鳴音信号を生成する(ステップS16)。生成部105により生成された共鳴音信号はサウンドシステム6に与えられ、共鳴音として出力される。したがって、和音が弾かれた場合、共鳴音が発生する。
【0050】
ステップS13において、他の音高が指定中でない場合、共鳴音指示部104は、生成部105に対して共鳴音信号の生成を指示しない。そして、指定受付部101は、ステップS21(
図4)に進む。例えば、単音が弾かれた場合には、共鳴音は発生しない。ステップS11においてノートオンを示す指定情報を検出しない場合、指定受付部101はステップS21に進む。
【0051】
図4を参照する。次に、指定受付部101は、ノートオフを示す指定情報を検出したか否かを判定する(ステップS21)。演奏者が演奏操作子2のいずれかの鍵を離すと、演奏操作子2は、離された鍵に対応する音高のノートオフを示す指定情報を指定受付部101に与える。
【0052】
指定受付部101がノートオフを示す指定情報を検出した場合、音信号指示部102は、音源部5に対して指定情報で指定された音高に対応する音信号の停止指示を行う(ステップS22)。音源部5は、指定された音高に対応するオーディオデータの出力を停止する。これにより、演奏者によって離された鍵に対応する音がサウンドシステム6より出力されなくなる。
【0053】
判定部103は、指定受付部101がノートオフを示す指定情報を検出した時点で、他の音高が指定されているか否かを判定する(ステップS23)。上述したように、判定部103は、ノートオンを示す指定情報を保存している。そのため、判定部103は、指定情報を受けた時点で他の音高が指定されているか否かを判定することができる。
【0054】
他の音高が指定中でない場合、共鳴音指示部104は、生成部105に対して共鳴音信号の生成の停止指示を行う(ステップS24)。生成部105は、共鳴音指示部104の指示に基づいて、共鳴音信号の生成を停止する(ステップS25)。これにより、サウンドシステム6からの共鳴音の出力が停止される。例えば、全ての鍵が離された場合、共鳴音の発生が停止される。なお、ステップS24に処理が移行した時点で共鳴音が発生されていなかった場合には、共鳴音の停止指示は行われない。その後、指定受付部101はステップS11(
図3)に戻る。
【0055】
ステップS23において他の音高が指定中である場合、共鳴音指示部104は、生成部105に対して共鳴音信号の生成の継続を指示する(ステップS26)。具体的には、共鳴音指示部104は、生成部105に対して、ノートオフで指定された音高および他の音高に基づいて、他の音高で発生する共鳴音信号の生成の継続を指示するとともに、ノートオフで指定された音高で発生する共鳴音信号の生成を停止させる。
【0056】
生成部105は、共鳴音指示部104の指示に基づいて、共鳴音信号の生成を一定時間継続する(ステップS27)。例えば、和音が弾かれていた状態から、一部の鍵が離された場合、継続して押されている鍵については、共鳴音の発生が継続される。
【0057】
(4)第1の実施の形態の効果
本実施の形態によれば、一の音高が指定されたときに、他の音高が指定されている場合には、一の音高および他の音高が相互に共鳴することで発生する共鳴音信号が生成される。一方、一の音高が指定されたときに、他の音高が指定されていない場合には、共鳴音信号は生成されない。それにより、単音が指定されたときには、共鳴音信号が生成されないので、共鳴音信号発生装置100は、アコースティックピアノ等の自然鍵盤楽器において発生する共鳴音をより忠実に再現することができる。
【0058】
また、本実施の形態によれば、複数の音高が指定されている状態から一部の音高の指定が解除された場合にも、共鳴音信号の生成が継続される。そにより、アコースティックピアノ等の自然鍵盤楽器において発生する共鳴音をより忠実に再現することができる。
【0059】
また、本実施の形態によれば、全ての音高の指定が解除された場合には、共鳴音信号の生成が停止される。それにより、アコースティックピアノ等の自然鍵盤楽器において発生する共鳴音をより忠実に再現することができる。
【0060】
[3]第2の実施の形態
次に、本発明の第2の実施の形態に係る共鳴音信号発生装置、共鳴音信号発生方法、共鳴音信号発生プログラムおよび電子音楽装置について図面を用いて詳細に説明する。電子音楽装置1の全体構成は、
図1で示した第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。その他、第1の実施の形態と同様の機能、構成については、その説明を省略する。
【0061】
(1)演奏操作子2の鍵盤の配列
図5は
図1の演奏操作子2を示す模式図である。
図5に示すように、第2の実施の形態では、演奏操作子2は鍵盤20Aを含む。鍵盤20Aは複数の鍵KEの並びを有する。複数の鍵KEの並びには、左から右へ順に高くなる音高が対応付けられている。
【0062】
本実施の形態においては、鍵盤20Aは、88の鍵KEを備えている。ただし、鍵盤20Aが備える鍵の数はこれに限定されるものではない。第2の実施の形態における鍵盤20Aは、88の鍵KEが、
図5に示すように2つの音高領域に別れている。第1の音高領域S1は、アコースティックピアノのおけるダンパを有する鍵と同様の機能を有している。第2の音高領域S2は、アコースティックピアノにおけるダンパを有さない鍵と同様の機能を有している。つまり、演奏者によっていずれの鍵KEも押されていない状態においては、第1の音高領域S1の全ての鍵KEにダンパが作用している状態と同様の制御が行われる。演奏者によっていずれかの鍵KEが押された場合、第2の音高領域S2については鍵KEが押されているか否かに関わらず全ての鍵KEにおいて共鳴音が発生する。
【0063】
(2)共鳴音信号発生装置100の機能的な構成
図6は共鳴音信号発生装置100の機能的な構成およびその周辺装置を示すブロック図である。
図6に示すように、共鳴音信号発生装置100は、指定受付部101、音信号指示部102、判定部103、共鳴音指示部104、生成部105および複数ダンパ操作受付部106を含む。共鳴音信号発生装置100の各構成部分(101~106)の機能は、
図1のCPU8が、RAM10を作業領域として使用しつつ、記憶装置7またはROM11に記憶された共鳴音信号発生プログラムP1を実行することにより実現される。
【0064】
図6における指定受付部101、音信号指示部102および生成部105の機能は、第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0065】
演奏操作子2は、上述した鍵盤20AおよびダンパペダルDUを有する。上述したように、第1の音高領域S1の鍵KEは、アコースティックピアノのおけるダンパを有する鍵と同様の機能を有している。演奏者がダンパペダルDUを足で踏むと、第1の音高領域S1に対するダンパ効果が解除される。つまり、第1の音高領域S1における全ての鍵KEに対するダンパ効果が一斉に解除される。ダンパ効果が解除されるとは、アコースティックピアノにおいて各鍵に対応する弦からダンパが離れた場合と同様の効果を奏するように制御が行われることを意味する。演奏者がダンパペダルDUから足を離すと、第1の音高領域S1に対するダンパ効果が作用する。ダンパ効果が作用するとは、アコースティックピアノにおいて各鍵に対応する弦にダンパが接触した場合と同様の効果を奏するように、制御が行われることを意味する。なお、ダンパ効果の作用および解除の操作を受け付ける演奏操作子2はペダル以外のスイッチ、ボタン等であってもよい。
【0066】
ダンパペダルDUが、ダンパ効果の作用または解除の操作を受け付けると、ダンパペダルDUは、複数ダンパ操作受付部106に対して、ダンパ効果の作用または解除の状態を示すダンパ情報を与える。複数ダンパ操作受付部106は、ダンパ情報を共鳴音指示部104に与える。
【0067】
共鳴音指示部104は、複数ダンパ操作受付部106からダンパの作用を示すダンパ情報を受け取った場合、つまり、演奏者がダンパペダルDUから足を離す動作をしたことが検知された場合、生成部105に対して共鳴音信号の継続および停止を指示する。具体的には、共鳴音指示部104は、生成部105に対して、指定されている音高に基づいて、指定されている音高および第2の音高領域S2で発生している共鳴音信号の生成を指示する。また、共鳴音指示部104は、生成部105に対して、指定されている音高以外の第1の音高領域S1で発生している共鳴音信号の停止を指示する。
【0068】
共鳴音指示部104は、複数ダンパ操作受付部106からダンパの解除を示すダンパ情報を受け取った場合、つまり、演奏者がダンパペダルDUを足で踏む動作をしたことが検知された場合、生成部105に対して共鳴音信号の生成を指示する。具体的には、共鳴音指示部104は、生成部105に対して、指定されている音高に基づいて、第1の音高領域S1および第2の音高領域S2で発生する共鳴音信号の生成を指示する。つまり、88鍵に対応する全ての音高について共鳴音が発生する。
【0069】
(3)共鳴音信号発生方法の一例
図7~
図9は
図6の共鳴音信号発生装置100における共鳴音信号発生方法を示すフローチャートである。
図7~
図9の共鳴音信号発生方法は、
図1のCPU8が記憶装置7またはROM11に記憶された共鳴音信号発生プログラムP1を実行することにより行われる。
【0070】
図7を参照する。指定受付部101は、ノートオンを示す指定情報を検出したか否かを判定する(ステップS31)。演奏者が演奏操作子2のいずれかの鍵を押すと、演奏操作子2は、押された鍵に対応する音高のノートオンを示す指定情報を指定受付部101に与える。
【0071】
ノートオンを示す指定情報を検出しない場合、指定受付部101は、ステップS41(
図8)に進む。
【0072】
指定受付部101がノートオンを示す指定情報を検出した場合、音信号指示部102は、音源部5に対して指定情報で指定された音高に対応する音信号の発生指示を行う(ステップS32)。音源部5は、指定された音高に対応するオーディオデータをサウンドシステム6に出力する。サウンドシステム6は、オーディオデータをアナログ音信号に変換し、変換されたアナログ音信号に対応する音をスピーカから出力する。これにより、演奏者によって押された鍵に対応する音がサウンドシステム6より出力される。
【0073】
指定受付部101がノートオンを示す指定情報を検出した場合、判定部103は、指定情報を受けた時点で、既に他の音高が指定されているか否かを判定する(ステップS33)。上述したように、判定部103は、ノートオンを示す指定情報を保存している。判定部103は、指定情報を受けた時点で他の音高が指定されているか否かを判定することができる。
【0074】
判定部103が他の音高が指定中でないと判定すると、共鳴音指示部104は、生成部105に対して共鳴音信号の生成を指示する(ステップS34)。具体的には、共鳴音指示部104は、生成部105に対して、ノートオンで指定された音高に基づいて、第2の音高領域S2で発生する共鳴音信号の生成を指示する。なお、共鳴音指示部104は、生成部105に対して、ノートオンで指定された音高に基づいて、ノートオンで指定された音高および第2の音高領域S2で発生する共鳴音信号の生成を指示してもよい。
【0075】
生成部105は、共鳴音指示部104の指示に基づいて、共鳴音信号を生成する(ステップS35)。生成部105が生成した共鳴音信号はサウンドシステム6に与えられ、共鳴音として出力される。共鳴音信号が生成された後、指定受付部101は、ステップS41(
図8)に進む。
【0076】
判定部103が他の音高が指定中であると判定すると、共鳴音指示部104は、生成部105に対して共鳴音信号の生成を指示する(ステップS36)。具体的には、共鳴音指示部104は、生成部105に対して、ノートオンで指定された音高および他の音高に基づいて、ノートオンで指定された音高、他の音高および第2の音高領域S2で発生する共鳴音信号の生成を指示する。
【0077】
生成部105は、共鳴音指示部104の指示に基づいて、共鳴音信号を生成する(ステップS37)。生成部105が生成した共鳴音信号はサウンドシステム6に与えられ、共鳴音として出力される。次に、指定受付部101は、ステップS41(
図8)に進む。
【0078】
図8を参照する。続いて、指定受付部101は、ノートオフを示す指定情報を検出したか否かを判定する(ステップS41)。演奏者が演奏操作子2のいずれかの鍵KEを離すと、演奏操作子2は、離された鍵KEに対応する音高のノートオフを示す指定情報を指定受付部101に与える。
【0079】
指定受付部101がノートオフを示す指定情報を検出した場合、音信号指示部102は、音源部5に対して指定情報で指定された音高に対応する音信号の停止指示を行う(ステップS42)。音源部5は、指定された音高に対応するオーディオデータの出力を停止する。これにより、演奏者によって離された鍵KEに対応する音がサウンドシステム6より出力されなくなる。
【0080】
指定受付部101がノートオフを示す指定情報を検出した場合、判定部103は、他の音高が指定されているか否かを判定する(ステップS43)。上述したように、判定部103は、ノートオンを示す指定情報を保存している。判定部103は、指定情報を受けた時点で他の音高が指定されているか否かを判定することができる。
【0081】
判定部103が他の音高が指定中でないと判定すると、共鳴音指示部104は、生成部105に対して共鳴音信号の生成の継続を指示する(ステップS44)。具体的には、共鳴音指示部104は、生成部105に対して、ノートオフで指定された音高に基づいて、第2の音高領域S2で発生する共鳴音信号の生成継続を指示する。
【0082】
生成部105は、共鳴音指示部104の指示に基づいて、共鳴音信号の生成を継続する(ステップS45)。生成部105が生成した共鳴音信号はサウンドシステム6に与えられ、共鳴音として出力される。
【0083】
判定部103が他の音高が指定中であると判定すると、共鳴音指示部104は、生成部105に対して共鳴音信号の生成の継続を指示する(ステップS46)。具体的には、共鳴音指示部104は、生成部105に対して、ノートオフで指定された音高および他の音高に基づいて、他の音高および第2の音高領域S2で発生する共鳴音信号の生成の継続を指示する。具体的には、共鳴音指示部104は、ノートオフで指定された音高で発生する共鳴音信号の生成は停止させ、ノートオフで指定された音高および他の音高に基づいて他の音高および第2の音高領域S2で発生する共鳴音信号の生成の継続を指示する。
【0084】
生成部105は、共鳴音指示部104の指示に基づいて、共鳴音信号の生成を継続する(ステップS47)。生成部105が生成した共鳴音信号はサウンドシステム6に与えられ、共鳴音として出力される。
【0085】
ステップS41において、指定受付部101がノートオフを示す指定情報を検出しない場合、および、ステップS45またはステップS47で共鳴音の生成が継続された後、
図9で示すように、複数ダンパ操作受付部106が、ダンパペダルDUからダンパ効果の作用を示すダンパ情報を受け付けたか否かを判定する(ステップS51)。
【0086】
複数ダンパ操作受付部106が、ダンパ効果の作用を示すダンパ情報を受け付けていない場合には、ステップS31(
図7)に戻る。
【0087】
複数ダンパ操作受付部106が、ダンパ効果の作用を示すダンパ情報を受け付けた場合、共鳴音指示部104は、ダンパ情報に基づいて、生成部105に対して、共鳴音信号の継続および停止の指示を行う(ステップS52)。具体的には、共鳴音指示部104は、生成部105に対して、指定されている音高に基づいて、指定されている音高および第2の音高領域S2で発生する共鳴音信号の生成の継続を指示する。また、共鳴音指示部104は、生成部105に対して、指定されている音高以外の第1の音高領域S1で発生する共鳴音信号の停止を指示する。
【0088】
生成部105は、共鳴音指示部104の指示に基づいて、共鳴音信号の生成を継続する(ステップS53)。生成部105が生成した共鳴音信号はサウンドシステム6に与えられ、共鳴音として出力される。ステップS53で共鳴音が生成された後、指定受付部101によるステップS31の処理(
図7)に戻る。なお、
図9においては、ダンパ効果が解除された時の処理については、省略している。ダンパ効果が解除されたときには、上述したように、指定された音高に基づいて、第1の音高領域S1および第2の音高領域S2の全ての音高において共鳴音が発生する。
【0089】
(4)第2の実施の形態の効果
本実施の形態の共鳴音信号発生装置100によれば、一の音高が指定されたときに、他の音高が指定されている場合には、一の音高および他の音高が相互に共鳴することで発生する共鳴音信号が生成される。さらに、共鳴音信号発生装置は、一の音高および他の音高に基づいて、第2の音高領域において共鳴音を発生させる。一方、一の音高が指定されたときに、他の音高が指定されていない場合には、共鳴音信号発生装置は、第2の音高領域において共鳴音信号を発生させる。複数の音高が指定されたときには、複数の音高間で生じる共鳴音と、第2の音高領域の共鳴音が生成されるので、アコースティックピアノ等の自然鍵盤楽器において発生する共鳴音をより忠実に再現することができる。また、単音が指定されたときには、その音高に基づいて第2の音高領域の共鳴音が生成されるので、共鳴音信号発生装置100は、アコースティックピアノにおいて発生する共鳴音をより忠実に再現することができる。
【0090】
本実施の形態の共鳴音信号発生装置100によれば、全ての音高の指定が解除された場合には、第2の音高領域における共鳴音信号の生成が継続される。共鳴音信号発生装置100は、アコースティックピアノ等の自然鍵盤楽器において発生する共鳴音をより忠実に再現することができる。
【0091】
本実施の形態の共鳴音信号発生装置100によれば、ダンパ効果の作用を受け付けた場合、指定されている音高および第2の音高領域において発生する共鳴音信号の生成が継続される。また、ダンパ効果が作用する第1の音高領域においては共鳴音信号の生成が停止される。共鳴音信号発生装置100は、アコースティックピアノ等の自然鍵盤楽器において発生する共鳴音をより忠実に再現することができる。
【0092】
[4]参考形態
次に、参考形態に係る共鳴音信号発生装置、共鳴音信号発生方法、共鳴音信号発生プログラムおよび電子音楽装置について図面を用いて詳細に説明する。電子音楽装置1の全体構成は、
図1で示した第1および第2の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。その他、第1および第2の実施の形態と同様の構成、機能については、その説明を省略する。
【0093】
(1)演奏操作子2の鍵盤の配列
図10は
図1の演奏操作子2を示す模式図である。
図10に示すように、参考形態の演奏操作子2は鍵盤20Bを含む。鍵盤20Bは複数の鍵KEの並びを有する。複数の鍵KEの並びには、左から右へ順に高くなる音高が対応付けられている。
【0094】
参考形態において、鍵盤20Bは、88の鍵を備えている。ただし、鍵盤20Bが備える鍵の数はこれに限定されるものではない。参考形態における鍵盤20Bは、第2の実施の形態と同様、88の鍵が、
図10に示すように2つの音高領域に別れている。第1の音高領域S1は、アコースティックピアノのおけるダンパを有する鍵と同様の機能を有している。第2の音高領域S2は、アコースティックピアノにおけるダンパを有さない鍵と同様の機能を有している。さらに、鍵盤20Bには、仮想の音高領域である第3の音高領域S3が割り当てられている。第3の音高領域S3には、実際の鍵は備えられていない。第3の音高領域S3は、拡張モードが選択されたときに、共鳴音が生成される。
【0095】
(2)共鳴音信号発生装置100の機能的な構成
図11は共鳴音信号発生装置100の機能的な構成およびその周辺装置を示すブロック図である。
図11に示すように、共鳴音信号発生装置100は、指定受付部101、音信号指示部102、判定部103、共鳴音指示部104、生成部105、複数ダンパ操作受付部106および拡張モード受付部107を含む。共鳴音信号発生装置100の各構成部分(101~107)の機能は、
図1のCPU8が、RAM10を作業領域として使用しつつ、記憶装置7またはROM11に記憶された共鳴音信号発生プログラムP1を実行することにより実現される。
【0096】
図11における演奏操作子2、指定受付部101、音信号指示部102、生成部105および複数ダンパ操作受付部106の機能は、第1および第2の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0097】
設定操作部3は、拡張モード設定スイッチを含んでいる。上述したように、第3の音高領域S3は、実際の鍵が存在しない仮想的な音高領域である。演奏者が、拡張モード設定スイッチをオンにすると、第3の音高領域S3において共鳴音が発生するモードが有効となる。なお、拡張モードを設定する設定操作部3はスイッチ以外のペダル、ボタン等であってもよい。
【0098】
設定操作部3が、拡張モードの設定を受け付けると、設定操作部3は、拡張モード受付部107に対して、拡張モードのオン/オフ状態を示す拡張モード情報を与える。拡張モード受付部107は、複数ダンパ操作受付部106から、ダンパ効果の作用を示すダンパ情報を受け取ったとき、拡張モード情報を共鳴音指示部104に与える。
【0099】
共鳴音指示部104は、複数ダンパ操作受付部106がダンパ効果の作用を示すダンパ情報を受け付け、且つ、拡張モード受付部107から拡張モードオンを示す拡張モード情報を受け取った場合、つまり、演奏者が拡張モードスイッチをオンにした状態で、ダンパペダルDUを踏んだことが検知された場合、生成部105に対して第3の音高領域S3における共鳴音信号の発生を指示する。具体的には、共鳴音指示部104は、生成部105に対して、指定されている音高に基づいて、指定されている音高および第3の音高領域S3で発生する共鳴音信号の生成を指示する。
【0100】
共鳴音指示部104は、拡張モード受付部107から拡張モードオフを示す拡張モード情報を受け取った場合、生成部105に対して第3の音高領域S3における共鳴音信号の生成の停止を指示する。具体的には、共鳴音指示部104は、生成部105に対して、指定されている音高に基づいて、第3の音高領域S3で発生している共鳴音信号の生成の停止を指示する。なお、第3の音高領域S3以外の音高で共鳴音が生成されている場合には、その共鳴音の生成は継続される。
【0101】
(3)共鳴音信号発生方法の一例
図12は
図11の共鳴音信号発生装置100における共鳴音信号発生方法を示すフローチャートである。
図12の共鳴音信号発生方法は、
図1のCPU8が記憶装置7またはROM11に記憶された共鳴音信号発生プログラムP1を実行することにより行われる。
【0102】
まず、複数ダンパ操作受付部106が、ダンパペダルDUからダンパ効果の解除を示すダンパ情報を受け付けたか否かを判定する(ステップS61)。
【0103】
複数ダンパ操作受付部106がダンパペダルDUからダンパ効果の解除を示すダンパ情報を受け付けていない場合には、複数ダンパ操作受付部106は、ステップS61を繰り返す。
【0104】
複数ダンパ操作受付部106が、ダンパペダルDUからダンパ効果の解除を示すダンパ情報を受け付けた場合、拡張モード受付部107が、設定操作部3から拡張モードオンを示す拡張モード情報を受け付けているか否かを判定する(ステップS62)。拡張モード受付部107は、拡張モード情報を保存している。したがって、拡張モード受付部107は、拡張モードのオン/オフ状態を判定することができる。拡張モード受付部107が設定操作部3から拡張モードオンを示す拡張モード情報を受け付けていない場合には、複数ダンパ操作受付部106は、ステップS61に戻る。
【0105】
拡張モード受付部107が設定操作部3から拡張モードオンを示す拡張モード情報を受け付けている場合、共鳴音指示部104は、拡張モード情報に基づいて、生成部105に対して、第3の音高領域S3における共鳴音信号の生成を指示する(ステップS63)。具体的には、共鳴音指示部104は、生成部105に対して、指定されている音高に基づいて、指定されている音高および第3の音高領域S3で発生する共鳴音信号の生成を指示する。なお、共鳴音指示部104は、第1の音高領域S1および第2の音高領域S2において共鳴音が発生している場合には、生成部105に対して、第1の音高領域S1および第2の音高領域S2で発生している共鳴音信号の継続を指示する。
【0106】
生成部105は、共鳴音指示部104の指示に基づいて、共鳴音信号を生成する(ステップS64)。生成部105が生成した共鳴音信号はサウンドシステム6に与えられ、共鳴音として出力される。ステップS64の後、複数ダンパ操作受付部106は、ステップS61に戻る。
【0107】
以上説明したように、参考形態の共鳴音信号発生装置は、ダンパ効果が割り当てられた複数の音高を含む第1の音高領域における音高の指定を受け付ける指定受付部と、指定された音高に対応する音信号の発生を指示する音信号指示部と、複数の音高に基づく共鳴音を示す共鳴音信号を生成する生成部と、第1の音高領域の複数の音高に対するダンパ効果の作用および解除を受け付ける複数ダンパ操作受付部と、前記指定受付部による指定ができない第3の音高領域における共鳴音信号の発生を有効にする拡張モードを受け付ける拡張モード受付部を備え、共鳴音指示部は、ダンパ効果の解除の受付時に、拡張モードが有効となっている場合には、指定されている音高および第3の音高領域において発生する共鳴音信号の生成を生成部に指示する。
【0108】
参考形態の共鳴音信号発生装置100によれば、拡張モードオンの操作を受け付けた場合であって、ダンパ効果の解除を示すダンパ情報を受け付けた場合、指定されている音高および第3の音高領域S3において発生する共鳴音信号の生成が指示される。第3の音高領域S3は、実際には鍵が存在しない拡張された仮想的な音域である。鍵の存在しない拡張領域の共鳴音を発生させることで、演奏のバリエーションが増す。参考形態においては、第3の音高領域S3は、通常の88鍵の鍵盤より低音側に付加されている。参考形態によれば、鍵の存在しない低音域において共鳴音が発生されるので、演奏者は、通常の鍵盤では得られない、より低音の共鳴音を楽しむことができる。
【0109】
また、参考形態の共鳴音信号発生方法は、ダンパ効果が割り当てられた複数の音高を含む第1の音高領域における音高の指定を受け付けることと、指定された音高に対応する音信号の発生を指示することと、複数の音高に基づく共鳴音を示す共鳴音信号を生成することと、第1の音高領域の複数の音高に対するダンパ効果の作用および解除を受け付けることと、指定を受け付けることができない第3の音高領域における共鳴音信号の発生を有効にする拡張モードを受け付けることを含み、ダンパ効果の解除の受付時に、拡張モードが有効となっている場合には、指定されている音高および第3の音高領域において発生する共鳴音信号の生成を指示する。
【0110】
また、参考形態の共鳴音信号発生プログラムは、ダンパ効果が割り当てられた複数の音高を含む第1の音高領域における音高の指定を受け付ける処理と、指定された音高に対応する音信号の発生を指示する処理と、複数の音高に基づく共鳴音を示す共鳴音信号を生成する処理と、第1の音高領域の複数の音高に対するダンパ効果の作用および解除を受け付ける処理と、指定を受け付けることができない第3の音高領域における共鳴音信号の発生を有効にする拡張モードを受け付ける処理とをコンピュータに実行させ、共鳴音信号発生プログラムは、ダンパ効果の解除の受付時に、拡張モードが有効となっている場合には、指定されている音高および第3の音高領域において発生する共鳴音信号の生成を指示する。
【0111】
なお、本発明の具体的な構成は、前述の実施形態に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更および修正が可能である。請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する種々の要素を用いることもできる。
【0112】
[5]他の実施の形態
上記の実施の形態においては、指定受付部101、音信号指示部102、判定部103、共鳴音指示部104、生成部105、複数ダンパ操作受付部106および拡張モード受付部107が、共鳴音信号発生プログラムP1を実行することにより実現される場合を例に説明した。これは一例であり、指定受付部101、音信号指示部102、判定部103、共鳴音指示部104、生成部105、複数ダンパ操作受付部106および拡張モード受付部107の全部または一部がハードウェアにより構成されていてもよい。例えば、生成部105を専用のハードウェアであるDSP(デジタルシグナルプロセッサ)で構成することにより、共鳴音の生成処理を高速させることができる。
【0113】
上記の実施の形態においては、電子音楽装置1の例として、鍵盤を備える電子鍵盤楽器を例に説明した。他の例としては、電子音楽装置1は、鍵盤がタッチパネルディスプレイ上に表示され、演奏者がタッチパネルディスプレイに表示された鍵盤を触れることにより演奏が可能となる演奏ソフトウェアであってもよい。また、第2の実施の形態においては、電子音楽装置が88個の鍵を有している場合を例に説明したが、鍵の数は、61鍵など異なる数であってもよい。この場合であれば、61個の鍵が、第1の音高領域と第2の音高領域を備える。鍵の数を減らしながら、アコースティックピアノと同じような高音の共鳴音が発生する。また、第1の実施の形態においては、電子音楽装置が61個の鍵を有している場合を例に説明したが、鍵の数は、88鍵であってもよい。88鍵の音域を有しながら、第2の実施の形態と比較すると制御が複雑でないので、コスト面のメリットがある。
【0114】
上記の実施の形態においては、生成部105が、音源部5から出力された音信号および共鳴音指示部104からの指示に基づき、共鳴音信号を生成した。他の例としては、予め全てのパターンの共鳴音信号をサンプリングデータであるオーディオデータとしてROM11に格納しておき、必要な共鳴音信号を読み出すようにしてもよい。
【符号の説明】
【0115】
1…電子音楽装置、2…演奏操作子、3…設定操作部、4…表示器、5…音源部、6…サウンドシステム、7…記憶装置、8…CPU、10…RAM、11…ROM、20A,20B…鍵盤、101…指定受付部、102…音信号指示部、103…判定部、104…共鳴音指示部、105…生成部、106…複数ダンパ操作受付部、107…拡張モード受付部、DU…ダンパペダル