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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】減圧弁
(51)【国際特許分類】
   G05D 16/10 20060101AFI20230314BHJP
   F16K 17/30 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
G05D16/10 Z
F16K17/30 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019031540
(22)【出願日】2019-02-25
(65)【公開番号】P2020135715
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】沼崎 一志
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼林 和広
(72)【発明者】
【氏名】守田 泰山
【審査官】影山 直洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-227656(JP,A)
【文献】特開2006-235766(JP,A)
【文献】特開2012-087966(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 16/10
F16K 17/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ室内に往復動自在に配置されたピストンと、前記ピストンに連結されて弁座を開閉する弁体と、前記弁体を前記弁座から離間する方向へ付勢する弁バネと、を備え、前記弁体と前記弁座との間隙を介して一次圧室から前記シリンダ室の二次圧室へ流れる一次圧の流体を減圧して、二次圧の流体を得る減圧弁であって、
前記弁座が、前記一次圧室内で前記弁体の往復動する方向と同方向に往復動自在に配置され、
前記弁座を、反ピストン側方向に付勢する付勢部材を備え、
前記一次圧と前記二次圧の差圧が大きいほど、前記弁座が前記二次圧室側へ移動するようにし
前記弁体が、前記弁座よりも前記二次圧室側に配置された減圧弁。
【請求項2】
前記弁座を保持し、前記弁座とともに移動可能に構成された弁座保持体を備えた請求項1に記載の減圧弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減圧弁に関する。
【背景技術】
【0002】
減圧弁は、ハウジングにおける1次ポートと2次ポートとの間に弁機構が設けられている。弁機構を構成する弁体は、弁座に対して接離し、その開き量(開度)が変化することで、1次ポートから流入した一次圧のガスの圧力を減圧して二次圧とし、2次ポートから送出したガスが所定圧を超えないようにしている(特許文献1、特許文献2)。
【0003】
具体的には、前記減圧弁は、シリンダ室内に往復動自在に配置されたピストンと、ピストンに連結されて弁座を開閉する弁体と、弁体を弁座から離間する方向へ付勢する弁バネと、を備えている。そして、弁体と弁座との間隙を介して一次圧室からシリンダ室において、ピストンに区分された一方の室(二次圧室)へ流れる一次圧の流体を減圧して、二次圧の流体を得るようにしている。
【0004】
減圧弁は、ガスを充填する際、2次側にガスを流出させた後は、ピストンが弁バネに抗して作動することにより閉弁するが、このとき一次圧が上昇する変動がある。
従来の減圧弁は、この一次圧の変動に対する二次圧の安定性を高めるために、一次圧による二次圧変動に関して、一次圧と二次圧の差圧による力に対して、前記弁体と連結されたピストンの径や、前記弁バネによる力を極小にするため、弁孔の径/ピストン径の比率を小さく(ピストン径を大きく)することで、達成している。
【0005】
また、現在よりも二次圧が高圧となるように求められる技術分野、例えば、燃料電池車両では、ガスを貯留するタンク内の圧力(タンク圧)が高くなっている。このため、減圧比が大きい減圧弁が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-60376号公報
【文献】特開2018-18374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、減圧比を大きくした減圧弁であっても、二次圧は従来と同様に低く、かつ、二次圧の変動量を小さくする、すなわち、二次圧の安定性がある減圧弁が求められている。
本発明の目的は、ピストン径を大きくすることなく二次圧の安定性を得ることができる減圧弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するために、本発明は、シリンダ室内に往復動自在に配置されたピストンと、前記ピストンに連結されて弁座を開閉する弁体と、前記弁体を前記弁座から離間する方向へ付勢する弁バネと、を備え、前記弁体と前記弁座との間隙を介して一次圧室から前記シリンダ室の二次圧室へ流れる一次圧の流体を減圧して、二次圧の流体を得る減圧弁であって、前記弁座が、前記一次圧室内で前記弁体の往復動する方向と同方向に往復動自在に配置され、前記弁座を、反ピストン側方向に付勢する付勢部材を備え、前記一次圧と前記二次圧の差圧が大きいほど、前記弁座が前記二次圧室側へ移動するようにしたものである。
【0009】
上記構成によれば、一次圧と二次圧の差圧が大きいほど、弁座が二次圧室側へ移動する。その結果、弁バネの設定荷重が変わるため、ピストン径を大きくすることなく二次圧の安定性を得られる。
【0010】
また、前記弁体が、前記一次圧室に配置されていてもよい。
上記構成によれば、弁体が一次圧室に配置された減圧弁において、上記作用を実現することが可能となる。
【0011】
また、前記弁体が、前記弁座よりも前記二次圧室側に配置されていてもよい。
上記構成によれば、弁体が二次圧室側に配置された減圧弁において、上記作用を実現することが可能となる。
【0012】
また、前記弁座を保持し、前記弁座とともに移動可能に構成された弁座保持体を備えていてもよい。
上記構成によれば、弁座を保持する弁座保持体を備えた減圧弁において、上記作用を実現することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ピストン径を大きくすることなく二次圧の安定性を得ることができる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態の減圧弁の一次圧と二次圧の差圧が大きい場合に弁保持体がシリンダ室側へ移動されたときの閉弁状態の断面図。
図2】第1実施形態の減圧弁の一次圧と二次圧の差圧が大きい場合に弁保持体がシリンダ室側へ移動されたときの開弁状態の断面図。
図3】第1実施形態の減圧弁の一次圧と二次圧の差圧が小さい場合に弁保持体が反シリンダ室側へ移動されたときの閉弁状態の断面図。
図4】第1実施形態の減圧弁の一次圧と二次圧の差圧が小さい場合に弁保持体が反シリンダ室側へ移動されたときの開弁状態の断面図。
図5】第1実施形態の減圧弁と比較例の減圧弁における二次圧の変化を示すグラフ。
図6】第2実施形態の減圧弁の一次圧と二次圧の差圧が大きい場合に弁保持体がシリンダ室側へ移動されたときの閉弁状態の断面図。
図7】第2実施形態の減圧弁の一次圧と二次圧の差圧が大きい場合に弁保持体がシリンダ室側へ移動されたときの開弁状態の断面図。
図8】第2実施形態の減圧弁の一次圧と二次圧の差圧が小さい場合に弁保持体が反シリンダ室側へ移動されたときの閉弁状態の断面図。
図9】第2実施形態の減圧弁の一次圧と二次圧の差圧が小さい場合に弁保持体が反シリンダ室側へ移動されたときの開弁状態の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態を図1図5を参照して説明する。
図1に示す減圧弁(レギュレータ)1は、燃料電池自動車に搭載される水素タンクと燃料電池とをつなぐ流体回路の途中に設けられ、高圧(例えば最大87.5MPa程度)の水素ガスを減圧(例えば4MPa程度)して燃料電池側に送出する。
【0016】
減圧弁1は、一次ポート2及び二次ポート3が形成されたハウジング4と、ハウジング4内における一次ポート2と二次ポート3との間に設けられた弁機構5と、弁機構5の開き量(開度)を調整する押圧機構6とを備えている。
【0017】
ハウジング4には、一次ポート2及び二次ポート3に連通するとともに、外部に開口した丸穴状のシリンダ室11が形成されている。具体的には、一次ポート2から延びるガス流路を構成する供給流路12は、弁機構収納室7及びシリンダ室11の底壁11aの中央に形成された開口11bを介して、シリンダ室11と連通されている。弁機構収納室7は、開口11b及び供給流路12に対して同軸に配置されるとともに、両者よりも大径の内径を有するように断面円形に形成されている。
【0018】
また、シリンダ室11の底壁11aにおいて、中央(軸心)から偏心した位置には、送出流路13の開口が設けられている。送出流路13は、二次ポート3に連通されていてガス流路を構成する。送出流路13には、リリーフ弁や継手(ともに図示略)が設けられる。
【0019】
弁機構収納室7内には、弁機構5が設けられている。弁機構5は、供給流路12に収容される弁体(ポペット)21と、弁機構収納室7に収容される弁座22と、弁座22を保持する弁座保持体23とを備えている。
【0020】
図1に示すように、弁体21は、円柱状の本体部31と、本体部31から下流側(図1中、上側)に向かって外径が小さくなるテーパ状の頭部32と、頭部32の下流側端部から突出した円柱状の凸部33とを有している。本体部31、頭部32及び凸部33は、同軸上に一体形成されている。
【0021】
本体部31(弁体21)の外径は供給流路12の内径よりもやや小さく設定されており、弁体21は供給流路12内(弁座22の下流側)において軸線L1と同軸上で軸方向(軸線L1の延出方向)に移動可能に配置されている。本体部31において、頭部32とは反対の端部には、供給流路12の内面に一端が係止されたコイルバネ等のバネ34が当接されている。弁体21は、バネ34が供給流路12の内面と弁体21との間で圧縮されることにより弁座22方向に付勢されている。頭部32の外周面は、軸線L1に対して略一定の傾斜角を有するテーパ状に形成されている。凸部33は、その外周面が軸線L1に対して略平行な円筒状に形成されるとともに、後述する弁孔26の内径よりも小径となっていて、弁孔26に対して軸線L1が延びる方向に相対移動(すなわち、往復移動)可能に挿入されている。また、凸部33は、常時、弁孔26から下流側に突出して配置されている。
【0022】
弁座22は、弁機構収納室7内に軸線L1と同軸上に配置されるように弁座保持体23に対して圧入されている。弁座22は、例えばポリイミド樹脂等の弾性変形可能な硬質樹脂により、円環状に形成されており、断面円形をなす弁孔26を有している。
【0023】
弁機構5の閉弁時は、弁体21の頭部32が弁孔26の上流側開口の内周縁の全体に当接することにより、弁孔26が閉塞される。
図1に示すように、弁座保持体23は、円筒状に形成されており、弁機構収納室7の内周面に対して軸方向に往復移動自在に配置されている。弁座保持体23の外周面には、周溝が形成されていて、該周溝にOリング等のシール部材24が嵌合されている。シール部材24は、弁座保持体23が軸方向に往復移動する際に弁機構収納室7の内周面に対して摺接する。弁座保持体23と、シリンダ室11の底壁11a間には、コイルバネ等の復帰バネ25が配置されている。弁座保持体23は、復帰バネ25が底壁11aと弁座保持体23との間で圧縮されることによりシリンダ室11とは離間する方向に付勢されている。弁機構収納室7において、弁座保持体23と供給流路12側の空間は、一次圧室8としている。復帰バネ25は、付勢部材に相当する。
【0024】
押圧機構6は、シリンダ室11を塞ぐ蓋体41と、シリンダ室11内に摺動可能に収容されるピストン42と、蓋体41とピストン42との間に圧縮状態で配置される弁バネとしてのコイルバネ43とを備えている。蓋体41は、外周部分がシリンダ室11の内周に螺着されて、ハウジング4に固定されている。蓋体41の外周には、Oリング等のシール部材44が装着されていて、シリンダ室11と外部との間の気密を確保している。
【0025】
ピストン42は円板状に形成されるとともに、その外径はシリンダ室11の内径と略等しく設定されている。ピストン42は、シリンダ室11内に軸方向に摺動可能に収容され、シリンダ室11内を大気圧室45と二次圧室46とに区画している。大気圧室45は、常時大気圧となるようにされている。
【0026】
ピストン42の外周にはウェアリングやリップシール等のシール部材47が装着されており、大気圧室45と二次圧室46との間の気密を確保している。ピストン42の端面中央部から弁孔26に向かって突部48が一体形成されている。突部48は、その外径が弁体21における凸部33の外径と略等しく設定されていて、凸部33と互いに当接している。これにより、弁体21は、ピストン42の摺動に応じて一体で移動する。コイルバネ43は、蓋体41とピストン42との間で圧縮された状態で収容されている。そして、コイルバネ43により、弁体21が弁座22から離座する、すなわち弁機構5の開き量(開度)が大きくなるようにピストン42を付勢している。
【0027】
また、弁孔26の内径S1、ピストン42の外径S2、及び弁機構収納室7(一次圧室8)の内径S3の大小関係は、S2>S3>S1としている。そして、大気圧室45と二次圧室46の差圧、バネ34及びコイルバネ43の付勢力に応じてピストン42がシリンダ室11内を往復摺動するようにしている。
【0028】
また、弁座保持体23は、一次圧室8の一次圧と二次圧室46の二次圧との差圧が大きいほど、復帰バネ25の付勢力に抗して、シリンダ室11(二次圧室46)側へ移動するように、コイルバネ43、復帰バネ25の付勢力、及び、弁孔26の内径S1、ピストン42の外径S2、及び弁機構収納室7(一次圧室8)の内径S3が設定されている。
【0029】
また、一次圧室8の一次圧と二次圧室46の二次圧との差圧が小さくなり、復帰バネ25の付勢力が、一次圧室8の一次圧よりも大きくなると、弁座保持体23が反シリンダ室側へ移動するようになっている。
【0030】
また、ピストン42の軸方向位置に応じて弁機構5の開き量を調整することで、二次ポート3側の圧力(二次圧室46内の圧力)が所定圧を超えないようにしている。なお、弁機構5の開き量は、一次圧室8の一次圧、すなわち、一次ポート2側の圧力(水素タンクの圧力)が高いほど小さく、水素タンク内の水素ガスの充填量が減少して一次ポート2側の圧力が低下するにつれて大きくなる。
【0031】
(第1実施形態の作用)
上記のように構成された減圧弁1の作用を説明する。
なお、説明の便宜上、図1に示すように、弁体21が閉弁している状態で、一次圧室8内の一次圧が上昇しており、一次圧室8内の一次圧と二次圧室46の二次圧との差圧が大きく、弁座保持体23は復帰バネ25の付勢力に抗して二次圧室46側(ピストン42側)へ移動しているものとする。
【0032】
この閉弁状態において、二次ポート3側が開き、二次圧が小さくなると、大気圧室45と二次圧室46の差圧、バネ34及びコイルバネ43の付勢力の差に応じてピストン42がシリンダ室11内を摺動して、図2に示すように弁機構5が開弁してその開き量が調整される。
【0033】
このように弁座保持体23が復帰バネ25の付勢力に抗して二次圧室46側(ピストン42側)へ移動している場合、ピストン42は、コイルバネ43の圧縮を大きくする状態である。このため、この状態で、弁機構5の開き量が調整される場合、実質的に、コイルバネ43が伸張している場合に比べてコイルバネ43の設定荷重が変えられていることと同義である。
【0034】
一方、一次圧室8内の一次圧が下降して、一次圧室8内の一次圧と二次圧室46の二次圧との差圧が小さくなると、弁座保持体23は復帰バネ25の付勢力により反二次圧室46側(反ピストン42側)へ移動する(図3参照)。
【0035】
弁座保持体23が反二次圧室46側(反ピストン42側)へ移動した状態で、図3に示す閉弁状態において、二次ポート3側が開き、二次圧が小さくなると、大気圧室45と二次圧室46の差圧、バネ34及びコイルバネ43の付勢力の差に応じてピストン42がシリンダ室11内を摺動して、図4に示す弁機構5が開弁してその開き量が調整される。
【0036】
この状態で、大気圧室45と二次圧室46の差圧、バネ34及びコイルバネ43の付勢力に応じてピストン42がシリンダ室11内を摺動して、図4に示す弁機構5が開弁した状態と図3に示す閉弁した状態の間においてその開き量が調整される。
【0037】
このように弁座保持体23が復帰バネ25の付勢力により反二次圧室46側(反ピストン42側)へ移動している場合、ピストン42は、コイルバネ43の圧縮を小さくしている状態である。このため、この状態で、弁機構5の開き量が調整される場合、実質的に、コイルバネ43の設定荷重を変えて行っていることと同義である。
【0038】
<シミュレーションによる試験>
図5は、上記のように構成した減圧弁と、比較例の減圧弁とをシミュレーションで計算した試験結果を示す。
【0039】
比較例の減圧弁は、本実施形態の減圧弁の構成において、図3図4に示すように、反シリンダ室側に位置している状態と同じ位置で弁座が固定されている構成としている。
図5は、両減圧弁の開弁状態から閉弁状態に移行する場合、及び閉弁状態から開弁状態に移行する場合、並びに、それぞれの状態において、一次圧に対する二次圧の変化を試験したものである。
【0040】
図5において、実線(細線)Aは、本実施形態の減圧弁において、一次圧を高圧(87.5MPa)としたときの二次圧の変化を示している。この一次圧が高圧のときは、図1及び図2に示すように、弁座保持体23は、シリンダ室11(二次圧室46)側へ移動している状態である。
【0041】
図5において、点線(細線)Bは、本実施形態の減圧弁において、一次圧を低圧(4MPa)としたときの二次圧の変化を示している。この一次圧が低圧のときは、図3及び図4に示すように、弁座保持体23は、反シリンダ室11(反二次圧室46)側へ移動している状態である。
【0042】
図5において、実線(太線)aは、比較例の減圧弁において、一次圧を高圧(87.5MPa)としたときの二次圧の変化を示し、点線(太線)bは、比較例の減圧弁において、一次圧を低圧(4MPa)としたときの二次圧の変化を示している。
【0043】
図5に示すように、本実施形態と同様に構成された減圧弁の一次圧が低圧のときと高圧のときの変動量Hと、比較例の減圧弁における一次圧が低圧のときと高圧のときの変動量hでは、H<hとなり、本実施形態の減圧弁の二次圧の変動量が抑制されていることが確認できる。
【0044】
本実施形態では、下記の特徴を有する。
(1)本実施形態の減圧弁1は、シリンダ室内に往復動自在に配置されたピストン42と、ピストン42に連結されて弁座22を開閉する弁体21と、弁体21を弁座22から離間する方向へ付勢するコイルバネ43(弁バネ)と、を備えている。また、弁体21と弁座22との間隙を介して一次圧室8からシリンダ室11の二次圧室46へ流れる一次圧の流体を減圧して、二次圧の流体を得る。また、減圧弁1は、一次圧室8内で弁体21の往復動する方向と同方向に往復動自在に配置されて弁座22を保持する弁座保持体23と、弁座保持体23を、反ピストン側方向に付勢する復帰バネ25(付勢部材)とを備えている。そして、減圧弁1は一次圧と二次圧の差圧が大きいほど、弁座保持体23を介して弁座保持体23を二次圧室46側へ移動し、コイルバネ43(弁バネ)の設定荷重を可変する。
【0045】
この結果、本実施形態によれば、ピストン径を大きくすることなく二次圧の安定性を得ることができる。このことから、次のことも可能となる。すなわち、減圧弁のサイズを従来と同じサイズの場合には、前述したように一次圧が変わった場合にも、二次圧の変動量を抑制できるが、さらに、サイズを小型化すれば、二次圧の変動量もさらに小さくできる。さらに、従来は、ガスが減圧弁に突入して入ってくると、一次圧と二次圧のバランスを崩し、弁座への負荷が大きくなる。しかし、本実施形態によれば、一次圧と二次圧のバランスが崩れるのを緩和し、弁座に対する負荷を軽減できる効果がある。
【0046】
(2)本実施形態の減圧弁では、弁体21が、一次圧室8に配置されている。この結果、本実施形態では、弁体21が一次圧室8に配置された減圧弁において、上記(1)の作用効果を容易に実現できる。
【0047】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の減圧弁100を、図6図9を参照して説明する。
減圧弁100は、端部部材101と、弁座102を備える弁機構103と、ハウジング104と、ピストン105と、コイルバネ106、継手110等を有している。
【0048】
端部部材101は、例えばステンレス製であって、円筒状をなしていてハウジング104に対して一体に固定されている。端部部材101の反ハウジング側の端面には、軸方向(ハウジングの中心線である軸線L2の延出方向)に沿って段付き孔107が穿設されている。段付き孔107は、反ハウジング側に開口する大径部108と、ハウジング側に開口する小径部109とからなる。大径部108、小径部109は同軸に形成されている。
【0049】
大径部108には、継手110が螺合して一体に固定されている。継手110において、端部部材101と対向する端面には、ウェアリングやリップシール等のシール部材101aが装着され、該端面から継手110外部にガスが漏れないようにしている。
【0050】
継手110は、外端に形成された一次ポート111と、一次ポート111よりも大径の一次圧室112とを備えている。一次ポート111と一次圧室112は段付き孔107の小径部109と同軸に配置されて連通している。一次ポート111は、減圧弁100への水素ガスの流入口としている。
【0051】
一次圧室112において、底部側には、水素ガス中の異物を除去しながら水素ガスを通すことができるフィルタ113が配置されている。
弁機構103は、一次圧室112に位置された弁座保持体114と、一次圧室112に配置された付勢部材としての復帰バネ115とにより構成されている。
【0052】
弁座保持体114は、円筒状の筒部116と、筒部116の反ハウジング側の端部周面に張り出し形成されたフランジ117とにより構成されている。
筒部116において、ハウジング側の端部は、段付き孔107の小径部109に軸支方向に往復動自在に挿通されているとともに、該端部の端面に樹脂製の弁座102が嵌合されている。また、筒部116の外周面には、Oリング等のシール部材118が装着されている。筒部116には、一次圧室112と連通する連通孔116aが軸心に沿って形成されている。シール部材118は、弁座保持体114が軸方向に往復移動する際に小径部109の内周面に対して摺接する。
【0053】
復帰バネ115は、例えば皿バネ等からなり、端部部材101の端面と弁座保持体114のフランジ117間に配置されている。
弁座保持体114は、復帰バネ115が端部部材101の端面と弁座保持体114のフランジ117間で圧縮されることにより後述するシリンダ室121とは離間する方向に付勢されている。
【0054】
弁座102は、樹脂製であって、略円環状に形成され、軸方向に貫通する弁孔119を有している。弁孔119は、連通孔116aを介して一次圧室112に連通している。ハウジング104は、その内側に、ピストン105と蓋体120の一部を収容している。ハウジング104は、例えば、アルミニウム製である。蓋体120は、減圧弁100からの水素ガスの二次ポート(図示しない)に接続する流路128を備えている。流路128は、シリンダ室121の後述する二次圧室123と連通している。
【0055】
ハウジング104は、断面円形のシリンダ室121を有している。蓋体120は、外周部分がシリンダ室11の開口端内周に螺着されて、ハウジング104に固定されている。蓋体41の外周には、Oリング等のシール部材122が装着されていて、シリンダ室121と外部との間の気密を確保している。
【0056】
シリンダ室121内には、ピストン105が配置されている。ピストン105は、その外径はシリンダ室121の内径と略等しく設定されている。ピストン105は、シリンダ室121内に軸方向に摺動可能に収容され、シリンダ室121内を二次圧室123と大気圧室124に区画している。大気圧室124は、常時大気圧となるようにされている。ピストン105の外周にはウェアリングやリップシール等のシール部材125が装着されており、大気圧室124と二次圧室123との間の気密を確保している。ピストン105の端面中央部から弁孔119に向かって突部126が一体形成されている。
【0057】
突部126は、大気圧室124の底面に中央部に形成された断面円形の筒部131の内腔132に軸方向に往復摺動自在に挿入されている。内腔132は、弁孔119と連通している。突部126の外周は、ウェアリングやリップシール等のシール部材133が装着されていて、弁孔119側の内腔132のガスが大気圧室124に漏れないようにされている。
【0058】
ピストン105及び突部126内には軸方向に穿孔された流路129が設けられている。流路129の一端は、ピストン105の端面で開口されて、二次圧室123と連通している。流路129の他端は、軸線L2と直交して穿孔された流路130を介して弁孔119側の内腔132と連通している。
【0059】
突部126の先端には、弁体127が形成されている。弁体127は、弁孔119側の内腔132の内周面よりも小径とされた本体部134と、弁孔119と接離するシール部135とを有している。弁体127は、ピストン105の摺動に応じて一体で移動して、弁座102に対して接離する。コイルバネ106は、蓋体120とは反対側に位置する大気圧室124の底壁とピストン105との間で圧縮された状態で収容されている。
【0060】
そして、弁体127は、コイルバネ106により、シール部135が弁座保持体114から離座する、すなわち、弁機構103の開き量(開度)が大きくなるようにピストン105を付勢している。また、弁孔119の内径、ピストン105の外径、及び一次圧室112の内径の大小関係は、ピストンの外径>一次圧室112の内径>弁孔119の内径としている。
【0061】
そして、大気圧室124と二次圧室123の差圧、復帰バネ115及びコイルバネ106の付勢力に応じてピストン105がシリンダ室121内を往復摺動するようにしている。また、弁座保持体114は、一次圧室112の一次圧と二次圧室123の二次圧との差圧が大きいほど、復帰バネ115の付勢力に抗して、シリンダ室121(二次圧室123)側へ移動するように、コイルバネ106、復帰バネ115の付勢力、及び、弁孔119の内径、ピストン105の外径、及び一次圧室112の内径が設定されている。
【0062】
また、一次圧室112の一次圧と二次圧室123の二次圧との差圧が小さくなり、復帰バネ115の付勢力が、一次圧室112の一次圧よりも大きくなると、弁座保持体114が反シリンダ室側へ移動するようになっている。
【0063】
また、ピストン105の軸方向位置に応じて弁機構103の開き量を調整することで、二次ポート側の圧力(二次圧室123内の圧力)が所定圧を超えないようにしている。なお、弁機構103の開き量は、一次圧室112の一次圧、すなわち、一次ポート111側の圧力(水素タンクの圧力)が高いほど小さく、水素タンク内の水素ガスの充填量が減少して一次ポート111側の圧力が低下するにつれて大きくなる。
【0064】
(第2実施形態の作用)
上記のように構成された減圧弁100の作用を説明する。
なお、説明の便宜上、図6に示すように、弁体127が閉弁している状態で、一次圧室112内の一次圧が上昇しており、一次圧室112内の一次圧と二次圧室123の二次圧との差圧が大きく、弁座保持体114は復帰バネ115の付勢力に抗して二次圧室123側(ピストン105側)へ移動しているものとする。
【0065】
この閉弁状態において、二次ポート側が開き、二次圧が小さくなると、大気圧室124と二次圧室123の差圧、コイルバネ106の付勢力に応じてピストン105がシリンダ室121内を摺動して、図7に示すように弁機構103が開弁してその開き量が調整される。
【0066】
このように弁座保持体114が復帰バネ115の付勢力に抗して二次圧室123側(ピストン105側)へ移動している場合、ピストン105は、コイルバネ106の伸張を大きくする状態である。このため、この状態で、弁機構103の開き量が調整される場合、実質的に、コイルバネ43が短縮している場合に比べてコイルバネ106の設定荷重が変えられていることと同義である。
【0067】
一方、一次圧室112内の一次圧が下降して、一次圧室112の一次圧と二次圧室123の二次圧との差圧が小さくなると、弁座保持体114は復帰バネ115の付勢力により反二次圧室123側(反ピストン105側)へ移動する(図8参照)。
【0068】
弁座保持体114が反二次圧室123側(反ピストン105側)へ移動した状態で、図8に示す閉弁状態において、二次ポート側が開き、二次圧が小さくなると、大気圧室124と二次圧室123の差圧、コイルバネ106の付勢力に応じてピストン105がシリンダ室121内を摺動し、図9に示す弁機構103が開弁してその開き量が調整される。
【0069】
この状態で、大気圧室124と二次圧室123の差圧、コイルバネ106の付勢力に応じてピストン105がシリンダ室121内を摺動して、図9に示す弁機構103が開弁した状態と図8に示す閉弁した状態の間においてその開き量が調整される。
【0070】
このように弁座保持体114が復帰バネ115の付勢力により反二次圧室123側(反ピストン105側)へ移動している場合、ピストン105は、コイルバネの圧縮を大きくしている状態である。このため、この状態で、弁機構103の開き量が調整される場合、実質的に、コイルバネ106の設定荷重を変えて行っていることと同義である。
【0071】
本実施形態では、下記の特徴を有する。
(1)本実施形態の減圧弁では、弁体127が、一次圧室112に配置されている。この結果、本実施形態では、弁体127が一次圧室112に配置された減圧弁において、上記第1実施形態の(1)の作用効果を容易に実現できる。
【0072】
なお、本発明の実施形態は前記実施形態に限定されるものではなく、下記のように変更しても良い。
・第1実施形態において、一次圧室8の底部側には、復帰バネ25の付勢力により、弁座保持体23が移動した際に、弁座保持体23の移動を停止させるストッパが設けられていてもよい。
【0073】
・前記実施形態の減圧弁が減圧する流体は、気体、気体以外の流体、例えば、蒸気、或いは水、油等の液体としてもよい。
・前記実施形態において、弁座保持体23、114を省略し、付勢部材にて弁座を反ピストン側方向に直接付勢してもよい。
【符号の説明】
【0074】
1…減圧弁、2…一次ポート、3…二次ポート、4…ハウジング、5…弁機構、
6…押圧機構、7…弁機構収納室、8…一次圧室、9…ストッパ、
11…シリンダ室、11a…底壁、11b…開口、12…供給流路(ガス流路)、
13…送出流路(ガス流路)、21…弁体、22…弁座、23…弁座保持体、
24…シール部材、25…復帰バネ(付勢部材)、26…弁孔、31…本体部、
32…頭部、33…凸部、34…バネ、41…蓋体、42…ピストン、
43…コイルバネ、44…シール部材、45…大気圧室、46…二次圧室、
47…シール部材、48…突部、100…減圧弁、101…端部部材、
101a…シール部材、102…弁座、103…弁機構、104…ハウジング、
105…ピストン、106…コイルバネ、107…段付き孔、108…大径部、
109…小径部、110…継手、111…一次ポート、112…一次圧室、
113…フィルタ、114…弁座保持体、115…復帰バネ(付勢部材)、
116…筒部、116a…連通孔、117…フランジ、118…シール部材、
119…弁孔、120…蓋体、121…シリンダ室、122…シール部材、
123…二次圧室、124…大気圧室、125…シール部材、126…突部、
127…弁体、128…流路、129…流路、130…流路、131…筒部、
132…内腔、133…シール部材、134…本体部、135…シール部、
L1、l2…軸線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9