(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】医療用容器
(51)【国際特許分類】
A61J 1/10 20060101AFI20230314BHJP
【FI】
A61J1/10 335B
A61J1/10 333A
(21)【出願番号】P 2019044016
(22)【出願日】2019-03-11
【審査請求日】2022-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 満
(72)【発明者】
【氏名】佐野 浩章
【審査官】小野田 達志
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-070737(JP,U)
【文献】特表2006-519713(JP,A)
【文献】国際公開第2013/099946(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/069150(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤を収容するための収容空間を形成する収容部と、
前記収容部に設けられ、前記収容空間に連通するポートと、
前記収容部の周囲を取り囲むように設けられるカバー体とを備え、
前記カバー体には、前記ポートを保持するポート保持機構部が設けられ、
前記カバー体は、前記収容部から分離可能であり
、
前記カバー体は、前記収容部および前記ポートを収容する周囲空間を形成し、さらに、
破断部を介して前記ポートに接続される接続部を含み、前記破断部が破断され、前記ポートおよび前記接続部の接続が解除されることによって、前記カバー体とともに前記収容部から分離可能なポートキャップ部を備え、
前記ポートは、前記収容空間の内側に配置される第1表面と、前記収容空間の外側に配置され、前記接続部により前記周囲空間とは区画された空間に配置される第2表面とを有する第1弾性体を含み、
前記ポートキャップ部は、前記収容空間の外側において、前記第1弾性体の前記第2表面と対向して設けられる第2弾性体を含む、医療用容器。
【請求項2】
前記周囲空間は、前記カバー体により密閉状態とされる、請求項1に記載の医療用容器。
【請求項3】
前記カバー体は、透明部材からなる、請求項1または2に記載の医療用容器。
【請求項4】
前記カバー体は、前記収容部を挟んで互いに重ね合わされる第1シートおよび第2シートを有し、
前記第1シートおよび前記第2シートには、前記第1シートおよび前記第2シートをその周縁に沿って接合し、外力が加えられることによって前記第1シートおよび前記第2シートを剥離可能とする弱シール部が設けられる、請求項1から
3のいずれか1項に記載の医療用容器。
【請求項5】
前記第1シートおよび前記第2シートは、前記ポート保持機構部が設けられる第1端辺と、前記第1端辺と対向する第2端辺とを含み、
前記第1シートおよび前記第2シートには、前記第2端辺に設けられ、前記第1シートおよび前記第2シートが接合されていない非シール部がさらに設けられる、請求項
4に記載の医療用容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、医療用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、特開2017-145029号公報(特許文献1)には、可撓性シートからなり、医療品を収容する袋本体と、袋本体の周縁に設けられる流出ポートとを有するパウチ容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1に開示されるように、医療品を収容する袋本体を備えたパウチ容器が知られている。このようなパウチ容器においては、輸液等の治療に用いられる前の準備段階において、医療従事者が、溶解調製された薬剤を袋本体の内部に注入したり、体表面積換算などの理由から、袋本体内の薬剤を吸引採取したりする場合がある。このような作業は、一般的に、容器本体の周縁に設けられたポートのゴム栓等に注射針を穿刺することにより行なわれる。
【0005】
しかしながら、注射針をポートのゴム栓等から引き抜く際に、袋本体の内圧が高かったり、注射針が薬剤を外部に引き込んだりすると、薬剤が、液こぼれしたり、霧状になって外部に舞ったりする現象が起こり得る。これにより、薬剤が袋本体の外表面に付着すると、薬剤の曝露が問題となる。
【0006】
そこでこの発明の目的は、上記の課題を解決することであり、薬剤の曝露を防ぐことが可能な医療用容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の1つの局面に従った医療用容器は、薬剤を収容するための収容空間を形成する収容部と、収容部に設けられ、収容空間に連通するポートと、収容部の周囲を取り囲むように設けられるカバー体とを備える。カバー体には、ポートを保持するポート保持機構部が設けられる。カバー体は、収容部から分離可能である。カバー体は、収容部およびポートを収容する周囲空間を形成する。医療用容器は、破断部を介してポートに接続される接続部を含み、破断部が破断され、ポートおよび接続部の接続が解除されることによって、カバー体とともに収容部から分離可能なポートキャップ部をさらに備える。ポートは、収容空間の内側に配置される第1表面と、収容空間の外側に配置され、接続部により周囲空間とは区画された空間に配置される第2表面とを有する第1弾性体を含む。ポートキャップ部は、収容空間の外側において、第1弾性体の第2表面と対向して設けられる第2弾性体を含む。
この発明の別の局面に従った医療用容器は、薬剤を収容するための収容空間を形成する収容部と、収容部に設けられ、収容空間に連通するポートと、収容部の周囲を取り囲むように設けられるカバー体とを備える。カバー体には、ポートを保持するポート保持機構部が設けられる。カバー体は、収容部から分離可能である。
【0008】
このように構成された医療用容器によれば、収容部の周囲を取り囲むようにカバー体を設けることによって、薬剤の調製時に収容部の外表面に薬剤が付着することを防止できる。また、カバー体は、収容部から分離可能であるため、薬剤の調製後、薬剤が付着したカバー体を収容部から分離することができる。これにより、薬剤の曝露を防ぐことができる。
【0009】
また好ましくは、収容部の周囲は、カバー体により密閉状態とされる。
このように構成された医療用容器によれば、外部空間から収容部の周囲への薬剤の侵入がカバー体によって妨げられるため、薬剤の調製時に収容部の外表面に薬剤が付着することをより確実に防止できる。
【0010】
また好ましくは、カバー体は、透明部材からなる。
このように構成された医療用容器によれば、薬剤の調製時に、カバー体の内部を視認することができる。
【0011】
また好ましくは、ポートは、第1弾性体を有する。医療用容器は、収容空間の外側において、第1弾性体と対向して設けられる第2弾性体を有し、カバー体とともに収容部から分離可能なポートキャップ部を備える。
【0012】
このように構成された医療用容器によれば、第2弾性体および第1弾性体に注射針を穿刺することにより、第1容器に収容される薬剤の調製を行なうことができる。また、ポートキャップ部は、カバー体とともに収容部から分離可能であるため、薬剤の調製後、薬剤が付着したカバー体およびポートキャップ部を収容部から分離することができる。これにより、薬剤の曝露をより確実に防ぐことができる。
【0013】
また好ましくは、カバー体は、収容部を挟んで互いに重ね合わされる第1シートおよび第2シートを有する。第1シートおよび第2シートには、第1シートおよび第2シートをその周縁に沿って接合し、外力が加えられることによって第1シートおよび第2シートを剥離可能とする弱シール部が設けられる。
【0014】
このように構成された医療用容器によれば、弱シール部に外力を加えることによって、第1シートおよび第2シートを剥離することができる。これにより、カバー体を収容部から分離することができる。
【0015】
また好ましくは、第1シートおよび第2シートは、ポート保持機構部が設けられる第1端辺と、第1端辺と対向する第2端辺とを含む。第1シートおよび第2シートには、第2端辺に設けられ、第1シートおよび第2シートが接合されていない非シール部がさらに設けられる。
【0016】
このように構成された医療用容器によれば、非シール部における第1シートおよび第2シートを摘まみながら、弱シール部に外力を加えることによって、第1シートおよび第2シートを剥離させることができる。この際、非シール部は、ポートが設けられる第1端辺と対向する第2端辺に設けられるため、作業者が薬剤に触れることをより確実に防止できる。
【発明の効果】
【0017】
以上に説明したように、この発明に従えば、薬剤の曝露を防ぐことが可能な医療用容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】この発明の実施の形態1における医療用容器を示す斜視図である。
【
図2】
図1中の矢印IIに示す方向から見た医療用容器を示す側面図である。
【
図3】
図1中のIII-III線上の矢視方向に見た医療用容器を示す断面図である。
【
図4】
図3中の2点鎖線IVで囲まれた範囲のポートおよびポートキャップ部を示す断面図である。
【
図5】
図1中の医療用容器の使用方法のステップを示すフローチャートである。
【
図6】
図1中の医療用容器の使用方法のステップを示す図である。
【
図7】
図1中の医療用容器の使用方法のステップを示す図である。
【
図8】
図1中の医療用容器の使用方法のステップを示す図である。
【
図9】
図1中の医療用容器の使用方法のステップを示す図である。
【
図10】
図1中の医療用容器の使用方法のステップを示す図である。
【
図11】この発明の実施の形態2における医療用容器を示す斜視図である。
【
図12】この発明の実施の形態3における医療用容器を示す斜視図である。
【
図13】
図12中の矢印XIII-XIII線上の矢視方向に見た医療用容器を示す断面図である。
【
図14】この発明の実施の形態4における医療用容器(第1変形例)を模式的に示す平面図である。
【
図15】この発明の実施の形態4における医療用容器(第2変形例)を模式的に示す平面図である。
【
図16】この発明の実施の形態4における医療用容器(第3変形例)を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0020】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1における医療用容器を示す斜視図である。
図2は、
図1中の矢印IIに示す方向から見た医療用容器を示す側面図である。
図3は、
図1中のIII-III線上の矢視方向に見た医療用容器を示す断面図である。
【0021】
図1から
図3を参照して、本実施の形態における医療用容器10は、収容部21を有する。収容部21は、薬剤を収容するための収容空間51を形成している。薬剤は、たとえば、抗がん剤である。
【0022】
収容部21は、2枚のシート22,23を有する。シート22,23は、可撓性を有する。シート22,23の材質は、特に限定されないが、代表的な例として、樹脂製フィルムである。収容部21(シート22,23)は、透明部材からなる。
【0023】
シート22およびシート23は、同一の平面形状を有する。シート22およびシート23は、矩形の平面形状を有する。シート22およびシート23は、シートの厚み方向が互いに揃うように重ね合わされている。
【0024】
シート22およびシート23には、接合部26が設けられている。接合部26は、シート22およびシート23の周縁に沿って設けられている。接合部26は、シート22およびシート23が有する矩形の平面形状の4辺に沿って帯状に延びている。シート22およびシート23は、接合部26において互いに接合されている。シート22およびシート23は、接合部26において互いに熱溶着されている。薬剤を収容するための収容空間51は、接合部26により囲まれた位置に形成されている。
【0025】
収容部21は、コネクタ55をさらに有する。コネクタ55は、全体として、筒形状を有する。コネクタ55は、樹脂製である。
【0026】
コネクタ55は、シート22およびシート23の周縁に設けられている。コネクタ55は、シート22およびシート23により挟持されている。シート22およびシート23は、コネクタ55の外周面に接合されている。コネクタ55は、収容空間51と、収容空間51の外側の空間と間を連通させるように設けられている。
【0027】
図3を参照して、コネクタ55は、大径部56と、小径部57と、鍔部58と、突出部59とを有する。大径部56、小径部57、鍔部58および突出部59は、収容空間51の内側から外側に向けて、挙げた順に並んでいる。
【0028】
大径部56および小径部57は、中心軸101を中心とする円筒形状を有する。大径部56は、小径部57よりも大きい直径を有する。シート22およびシート23は、大径部56の外周面に接合されている。
【0029】
鍔部58は、中心軸101の軸方向における小径部57の端部に設けられている。鍔部58は、小径部57の外周面から中心軸101の半径方向外側に向けて鍔状に広がっている。突出部59は、中心軸101を中心とする円筒形状を有する。突出部59は、鍔部58から、中心軸101の軸方向において大径部56および小径部57より遠ざかる方向に突出している。
【0030】
図4は、
図3中の2点鎖線IVで囲まれた範囲のポートおよびポートキャップ部を示す断面図である。
【0031】
図3および
図4を参照して、医療用容器10は、ポート60をさらに有する。ポート60は、収容部21に設けられている。ポート60は、コネクタ55に接続されている。ポート60は、収容空間51に連通するように設けられている。ポート60は、収容空間51の内外の間における薬剤の通り道となる。
【0032】
ポート60は、第1弾性体66と、弾性体保持部61とを有する。第1弾性体66は、弾性材料から構成されている。第1弾性体66は、たとえば、ゴム部材または熱可塑性エラストマー樹脂から構成されている。弾性体保持部61は、第1弾性体66の周りに設けられている。弾性体保持部61は、第1弾性体66を保持している。弾性体保持部61は、樹脂から構成されている。
【0033】
第1弾性体66は、全体として、中心軸101を中心とする円盤形状を有する。第1弾性体66は、第1表面66aと、第2表面66bとを有する。第1表面66aおよび第2表面66bは、中心軸101の軸方向における両端に位置する第1弾性体66の端面である。第1表面66aは、収容空間51の内側を向いている。第2表面66bは、収容空間51の外側を向いている。
【0034】
第1弾性体66には、溝部68および溝部67が設けられている。溝部68は、第1表面66aの側に設けられている。溝部68は、中心軸101の軸方向において、第2表面66bの側に向けて凹む溝形状を有する。溝部68は、中心軸101の周方向に延びる環状溝である。溝部68には、コネクタ55の突出部59が嵌合されている(
図3を参照のこと)。溝部67は、第2表面66bの側に設けられている。溝部67は、中心軸101の軸方向において、第1表面66aの側に向けて凹む溝形状を有する。溝部67は、中心軸101の周方向に延びる環状溝である。
【0035】
弾性体保持部61は、円筒部63と、鍔部62と、折り返し部64と、突出部65とを有する。
【0036】
円筒部63は、中心軸101を中心とする円筒形状を有する。円筒部63の内側には、第1弾性体66が挿入されている。鍔部62は、円筒部63の一方の端部から、中心軸101の半径方向外側に向けて鍔状に広がっている。鍔部62は、中心軸101の軸方向において、コネクタ55の鍔部58と当接している(
図3を参照のこと)。鍔部62は、たとえば熱溶着によって、鍔部58と接合されている。
【0037】
折り返し部64は、円筒部63の他方の端部から、中心軸101の半径方向内側に向けて90°折り返されることによって構成されている。折り返し部64は、第1弾性体66の第2表面66bの周縁部を覆うように設けられている。
【0038】
突出部65は、中心軸101の半径方向内側における折り返し部64の端部から、中心軸101の軸方向においてコネクタ55に近づく方向に突出している。突出部65は、中心軸101を中心とする円筒形状を有する。突出部65は、第1弾性体66の溝部67に嵌合されている。第1弾性体66の第2表面66bの中央部は、折り返し部64および突出部65の内側において、弾性体保持部61から露出している。
【0039】
このような構成により、薬剤を収容するための収容空間51は、ポート60において封止されている。
【0040】
図1から
図3を参照して、医療用容器10は、カバー体31をさらに有する。カバー体31は、収容部21の周囲を取り囲むように設けられている。
【0041】
カバー体31は、周囲空間52を形成している。周囲空間52には、収容部21(シート22,23およびコネクタ55)と、ポート60とが収容されている。周囲空間52には、後述するポートキャップ部70の一部がさらに収容されている。
【0042】
周囲空間52は、カバー体31により密閉状態とされている。周囲空間52は、空気が存在する状態とされている。周囲空間52は、カバー体31によって、空気が存在しない真空状態とされてもよい。この場合、医療用容器10をコンパクトに構成することができる。
【0043】
カバー体31は、第1シート32および第2シート33を有する。第1シート32および第2シート33の材質は、特に限定されないが、代表的な例として、樹脂製フィルムである。カバー体31(第1シート32,第2シート33)は、透明部材からなる。これにより、医療用容器10に収容する薬剤の調製時、カバー体31の内部を視認することができる。
【0044】
第1シート32および第2シート33は、同一の平面形状を有する。第1シート32および第2シート33は、矩形の平面形状を有する。第1シート32および第2シート33は、シートの厚み方向が互いに揃うように重ね合わされている。
【0045】
第1シート32および第2シート33は、収容部21を構成するシート22およびシート23を挟んで、互いに重ね合わされている。第1シート32は、シート22と向かい合っている。第2シート33は、シート23と向かい合っている。第1シート32および第2シート33の各面積は、シート22およびシート23の各面積よりも大きい。
【0046】
第1シート32および第2シート33は、第1端辺34と、第2端辺35とを有する。第2端辺35は、第1端辺34と対向している。第1端辺34および第2端辺35は、周囲空間52を挟んで互いに対向している。
【0047】
第1端辺34および第2端辺35は、互いに平行に延びている。第1端辺34および第2端辺35は、第1シート32および第2シート33が有する矩形の平面形状の4つの辺のうちの互いに対向する2つの辺である。第1端辺34および第2端辺35は、矩形の平面形状の短辺である。第1端辺34および第2端辺35は、矩形の平面形状の長辺であってもよい。
【0048】
なお、第1シート32および第2シート33が有する平面形状は、特に限定されるものではない。
【0049】
第1シート32および第2シート33には、弱シール部36が設けられている。弱シール部36は、第1シート32および第2シート33の周縁に沿って設けられている。弱シール部36は、第1シート32および第2シート33が有する矩形の平面形状の4辺(第1端辺34および第2端辺35を含む)に沿って帯状に延びている。第1シート32および第2シート33は、弱シール部36において互いに接合されている。
【0050】
弱シール部36は、弱粘着性を有する。弱シール部36は、外力が加えられることによって、第1シート32および第2シート33を剥離可能とするように構成されている。
【0051】
第1シート32および第2シート33は、非シール部37をさらに有する。非シール部37は、第2端辺35に設けられている。非シール部37は、第2端辺35の端部に設けられている。非シール部37は、第1シート32および第2シート33が有する矩形の平面形状の角部に設けられている。第1シート32および第2シート33は、非シール部37において互いに接合されていない。
【0052】
図1から
図4を参照して、医療用容器10は、ポートキャップ部70をさらに有する。ポートキャップ部70は、中心軸101の軸方向において、ポート60と並んで設けられている。ポートキャップ部70は、ポート60に接続されている。
【0053】
ポートキャップ部70は、第2弾性体76と、下段側弾性体保持部71と、上段側弾性体保持部81とを有する。
【0054】
第2弾性体76は、収容空間51の外側に露出して設けられている。第2弾性体76は、中心軸101の軸方向において、第1弾性体66と対向している。第2弾性体76は、弾性材料から構成されている。第2弾性体76は、たとえば、ゴム部材または熱可塑性エラストマー樹脂から構成されている。
【0055】
下段側弾性体保持部71および上段側弾性体保持部81は、第2弾性体76の周りに設けられている。下段側弾性体保持部71および上段側弾性体保持部81は、第2弾性体76を保持している。下段側弾性体保持部71および上段側弾性体保持部81は、樹脂から構成されている。
【0056】
第2弾性体76は、全体として、中心軸101を中心とする円盤形状を有する。第2弾性体76は、第3表面76aと、第4表面76bとを有する。第3表面76aおよび第4表面76bは、中心軸101の軸方向における両端に位置する第2弾性体76の端面である。第3表面76aは、収容空間51の内側を向いている。第3表面76aは、中心軸101の軸方向において、第1弾性体66の第2表面66bと対面している。第4表面76bは、収容空間51の外側を向いている。
【0057】
下段側弾性体保持部71は、中心軸101の軸方向において、ポート60および第2弾性体76の間に設けられている。下段側弾性体保持部71は、接続部72と、鍔部73と、薄肉部74とを有する。接続部72は、中心軸101を中心とする円筒形状を有する。鍔部73は、中心軸101の軸方向における接続部72の端部に設けられている。鍔部73は、接続部72の外周面から中心軸101の半径方向外側に向けて鍔状に広がっている。
【0058】
薄肉部74は、鍔部73の内側の中空部を塞ぐように設けられている。薄肉部74は、中心軸101の軸方向において小さい厚みを有する薄肉形状を有する。鍔部73および薄肉部74は、中心軸101の軸方向において、第2弾性体76(第3表面76a)と当接している。
【0059】
上段側弾性体保持部81は、本体部84と、突出部82とを有する。本体部84は、第2弾性体76の外周面を覆うように設けられている。本体部84は、中心軸101の軸方向において、下段側弾性体保持部71(鍔部73)と当接している。本体部84は、下段側弾性体保持部71(鍔部73)に接合されている。本体部84は、下段側弾性体保持部71の鍔部73および薄肉部74とともに第2弾性体76を保持している。第2弾性体76の第4表面76bは、本体部84の内側において、上段側弾性体保持部81から露出している。
【0060】
突出部82は、本体部84から、中心軸101の軸方向において下段側弾性体保持部71より遠ざかる方向に突出している。突出部82は、中心軸101を中心とする円筒形状を有する。第2弾性体76の第4表面76bは、突出部82の内側の空間において露出している。主に上段側弾性体保持部81における突出部82の外周面が、後出のポートキャップ部70の外周面70cに対応している。
【0061】
ポートキャップ部70は、破断部69を介してポート60に接続されている。より具体的には、接続部72は、破断部69を介して、弾性体保持部61に接続されている。破断部69は、中心軸101を中心に環状に設けられている。破断部69は、接続部72の外周縁と、弾性体保持部61における折り返し部64および突出部65の角部とを接続している。
【0062】
破断部69は、外力が加えられることによって破断可能なように構成されている。破断部69は、外力が加えられた場合に破断可能な薄肉形状を有する。
【0063】
カバー体31には、ポート60を保持するポート保持機構部41が設けられている。ポート保持機構部41は、ポートキャップ部70を介してポート60を保持している。ポート保持機構部41は、周囲空間52においてポート60を保持している。
【0064】
より具体的には、ポートキャップ部70は、第1シート32および第2シート33の周縁に設けられている。ポートキャップ部70は、第1シート32および第2シート33により挟持されている。第1シート32および第2シート33は、ポートキャップ部70に接合されている。第1シート32および第2シート33は、ポートキャップ部70の外周面70cに接合されている。
【0065】
ポートキャップ部70は、ポート60に接続されている。このため、第1シート32および第2シート33がポートキャップ部70の外周面70cに接合されることによって、ポート60が、カバー体31に対して保持されている。すなわち、第1シート32および第2シート33がポートキャップ部70の外周面70cに接合される構成が、ポート60を保持するポート保持機構部41に対応している。ポート保持機構部41は、第1シート32および第2シート33の第1端辺34に設けられている。
【0066】
カバー体31は、収容部21から分離可能である。ポートキャップ部70は、カバー体31とともに収容部21から分離可能である。
【0067】
より具体的には、カバー体31の第1シート32および第2シート33には、弱シール部36が設けられている。このような構成において、弱シール部36に外力を加えることによって、第1シート32および第2シート33を剥離させ、カバー体31を収容部21の周囲から取り除くことが可能である。
【0068】
さらに、ポートキャップ部70(接続部72)は、破断部69を介して、ポート60(弾性体保持部61)に接続されている。このような構成において、破断部69に外力を加えることによって、破断部69を破断させ、ポート60を収容部21に残し、ポートキャップ部70と、カバー体31(剥離された第1シート32および第2シート33)とを収容部21から分離することが可能である。
【0069】
続いて、
図1中の医療用容器10の使用方法の一例について説明する。
図5は、
図1中の医療用容器の使用方法のステップを示すフローチャートである。
図6から
図10は、
図1中の医療用容器の使用方法のステップを示す図である。
【0070】
図5を参照して、まず、収容部21に収容するための薬剤の溶解調製を行なう(S101)。具体的には、粉末状の薬剤が入ったバイアルに溶解液を注入して、薬剤を溶解する。溶解調製された薬剤をシリンジ(注射器)に抜き取る。この薬剤の溶解調製は、一般的に、安全キャビネット内で行なわれる。
【0071】
図5および
図6を参照して、次に、前の工程で溶解調製された薬剤を、医療用容器10に注入する(S102)。
【0072】
具体的には、薬剤が入ったシリンジ110の注射針111を、医療用容器10における第2弾性体76および第1弾性体66に穿刺する。注射針111は、まず、ポートキャップ部70における第2弾性体76および薄肉部74を貫き、次に、ポート60における第1弾性体66を貫いて、収容空間51の内部に進入する(
図3および
図4を参照のこと)。シリンジ110のプランジャーを押すことにより、薬剤を収容空間51に注入する。
【0073】
薬剤の注入後、シリンジ110の注射針111を第2弾性体76および第1弾性体66から引き抜く。この際、収容空間51の内圧が高いと、注射針111を引き抜いてから穿刺孔が閉じるまでのタイムラグによって、薬剤が、液こぼれしたり、霧状になって外部空間に舞ったりする現象(スピル現象、スプラッシュ現象)が起こり得る。また、注射針111が薬剤を収容空間51から外部空間に引き込むことによっても、同様の現象が起こり得る。
【0074】
これに対して、本実施の形態における医療用容器10では、収容部21の周囲を取り囲むようにカバー体31が設けられている。また、医療用容器10には、ポートキャップ部70がさらに設けられており、ポートキャップ部70は、収容空間51の外側において第1弾性体66と対向して設けられる第2弾性体76を有している。このような構成により、仮に上記のスピル現象および/またはスプラッシュ現象が起こった場合であっても、薬剤を、収容部21およびポート60に付着させることなく、カバー体31およびポートキャップ部70に付着させることができる。
【0075】
また、本実施の形態では、周囲空間52がカバー体31により密閉状態とされている。これにより、外部空間から周囲空間52への薬剤の侵入がカバー体31によって妨げられるため、収容部21およびポート60に薬剤が付着することをより確実に防止できる。
【0076】
図5および
図7から
図9を参照して、次に、カバー体31およびポートキャップ部70を収容部21から分離する(S103)。
【0077】
具体的には、
図7に示されるように、第1シート32および第2シート33が非接合とされている非シール部37において、第1シート32および第2シート33を両手の指で摘まむ。
【0078】
図8に示されるように、第1シート32および第2シート33を指で摘まみながら、第1シート32および第2シート33を互いに離間させつつ、上方にめくり上げる。これにより、弱シール部36に外力が加えられ、第1シート32および第2シート33が、第2端辺35の側から第1端辺34の側に向けて順に剥離する。
【0079】
上記のスピル現象および/またはスプラッシュ現象が起こった場合に、薬剤は、ポート60を保持するポート保持機構部41が設けられた第1端辺34の付近に付着する可能性が高い。本実施の形態では、第1シート32および第2シート33を指で摘まむ非シール部37が、第1端辺34と対向する第2端辺35に設けられるため、作業者が、薬剤に触れることをより確実に防ぐことができる。
【0080】
図9に示されるように、めくり上げた第1シート32および第2シート33によりポートキャップ部70を包む。この際、作業者が薬剤に触れることを防ぐため、第1シート32および第2シート33の裏面(周囲空間52に面する側の表面)が表を向くようにして、第1シート32および第2シート33によりポートキャップ部70を包むことが好ましい。
【0081】
一方の手で第1シート32および第2シート33越しにポートキャップ部70を把持し、他方の手でポート60および/またはコネクタ55を把持する。ポートキャップ部70と、ポート60および/またはコネクタ55とを把持しながら、両者を互いに離間させる。破断部69に外力が加えられることによって、カバー体31およびポートキャップ部70を収容部21から分離させることができる。
【0082】
図5を参照して、次に、収容部21から分離されたカバー体31およびポートキャップ部70を廃棄する(S104)。
【0083】
図5および
図10を参照して、収容部21を用いて輸液を行なう(S104)。具体的には、輸液セットのスパイク針をポート60における第1弾性体66に穿刺して、輸液を行なう。本実施の形態では、薬剤が付着した可能性があるカバー体31およびポートキャップ部70が収容部21から分離されているため、本ステップにおける薬剤の曝露を防ぐことができる。
【0084】
なお、本実施の形態では、溶解調製された薬剤を医療用容器10に移す使用方法を説明したが、これに限られず、たとえば、予め粉末状の薬剤が収容空間51に収容されており、この収容空間51に溶解液を注入する使用方法であってもよい。また、収容空間51には、溶解調製された薬剤が収容されており、体表面積換算などの理由から、収容空間51の薬剤を吸引採取する使用方法であってもよい。
【0085】
以上に説明した、この発明の実施の形態1における医療用容器10の構造をまとめると、本実施の形態における医療用容器10は、薬剤を収容するための収容空間51を形成する収容部21と、収容部21に設けられ、収容空間51に連通するポート60と、収容部21の周囲を取り囲むように設けられるカバー体31とを備える。カバー体31には、ポート60を保持するポート保持機構部41が設けられる。カバー体31は、収容部21から分離可能である。
【0086】
このように構成された、この発明の実施の形態1における医療用容器10によれば、収容部21の周囲を取り囲むようにカバー体31を設けることによって、薬剤の調製時に収容部21の外表面に薬剤が付着することを防止できる。また、カバー体31は、収容部21から分離可能であるため、薬剤の調製後、薬剤が付着したカバー体31を収容部21から分離することができる。これにより、薬剤の曝露を防ぐことができる。
【0087】
(実施の形態2)
図11は、この発明の実施の形態2における医療用容器を示す斜視図である。本実施の形態における医療用容器は、実施の形態1における医療用容器10と比較して、基本的には同様の構造を備える。以下、重複する構造については、その説明を繰り返さない。
【0088】
図11を参照して、本実施の形態における医療用容器210は、実施の形態1における収容部21に替わって、収容部121を有する。収容部21が、樹脂製フィルム等からなり、互いに重ね合わされた2枚のシート22,23から構成されるのに対して、収容部121は、一体型のボトルからなる。収容部21には、コネクタ55が接続される開口部が設けられている。収容部121は、樹脂製であり、たとえば、射出成形によって製造される。
【0089】
このように構成された、この発明の実施の形態2における医療用容器210によれば、実施の形態1に記載の効果を同様に奏することができる。
【0090】
(実施の形態3)
図12は、この発明の実施の形態3における医療用容器を示す斜視図である。
図13は、
図12中の矢印XIII-XIII線上の矢視方向に見た医療用容器を示す断面図である。本実施の形態における医療用容器は、実施の形態1における医療用容器10と比較して、基本的には同様の構造を備える。以下、重複する構造については、その説明を繰り返さない。
【0091】
図12および
図13を参照して、本実施の形態における医療用容器220は、実施の形態1におけるポートキャップ部70に替えて、キャップ体90を有する。
【0092】
ポート60は、カバー体31の第1シート32および第2シート33の周縁に設けられている。ポート60は、第1シート32および第2シート33により挟持されている。第1シート32および第2シート33は、ポート60に接合されている。第1シート32および第2シート33は、ポート60の外周面60cに接合されている。弾性体保持部61における円筒部63の外周面が、ポート60の外周面60cに対応している(
図4を参照のこと)。
【0093】
第1シート32および第2シート33がポート60の外周面60cに接合されることによって、ポート60が、カバー体31に対して保持されている。すなわち、第1シート32および第2シート33がポート60の外周面60cに接合される構成が、ポート60を保持するポート保持機構部41に対応している。ポート保持機構部41は、第1シート32および第2シート33の第1端辺34に設けられている。
【0094】
キャップ体90は、収容空間51の外側の空間に設けられている。キャップ体90は、第1弾性体66を覆うように設けられている。キャップ体90は、破断部91を介してポート60に接続されている。破断部91は、外力が加えられることによって破断可能なように構成されている。破断部91は、外力が加えられた場合に破断可能な薄肉形状を有する。
【0095】
本実施の形態では、
図5に示されるS102のステップの前に、キャップ体90をポート60から分離する。より具体的には、破断部91に外力を加えることによって、破断部91を破断させ、キャップ体90をポート60から分離する。
図5に示されるS103のステップにおいて、第1シート32および第2シート33を互いに離間させつつ、上方にめくり上げることによって、第1シート32および第2シート33を剥離させ、さらに、第1シート32および第2シート33をポート60の外周面60cから剥離させる。これにより、カバー体31(第1シート32,第2シート33)を収容部21から分離させることができる。
【0096】
このように構成された、この発明の実施の形態3における医療用容器220によれば、実施の形態1に記載の効果を同様に奏することができる。
【0097】
(実施の形態4)
図14から
図16は、この発明の実施の形態4における医療用容器を模式的に示す平面図である。本実施の形態では、実施の形態1において説明した医療用容器10の各種変形例について説明する。
【0098】
図14を参照して、第1変形例における医療用容器は、薬剤の調製時に用いられるポート60に加えて、輸液時に用いられるポート120を有する。ポート120は、カバー体31の内部に収容されている。ポート120は、ポート60が設けられた収容部21の端辺とは別の端辺に設けられている。
【0099】
図15および
図16を参照して、第2変形例および第3変形例における医療用容器は、ダブルパックタイプであり、2つの収容空間151,152を備える。
【0100】
収容空間151および収容空間152は、隔壁部156によって互いに隔てられている。一例として、収容空間151には、生理食塩水が収容されており、収容空間152には、薬剤(たとえば、白血球減少症に対する液状の抗生剤)が収容されている。なお、収容空間152に収容される薬剤は、粉末状の薬剤であってもよいし、液体状の薬剤であってもよい。
【0101】
図15に示される第2変形例の収容部21には、薬剤の調製用のポート60が収容空間151に連通するように設けられ、
図16に示される第3変形例の収容部21には、薬剤の調製用のポート60と、輸液用のポート120とが、収容空間151に連通するように設けられている。
【0102】
第2変形例および第3変形例における医療用容器の使用方法の一例として、溶解調製された抗がん剤を、ポート60を通じて収容空間151に注入する。薬剤の注入後、カバー体31およびポートキャップ部70を収容部21から分離する。次に、収容空間151または収容空間152から隔壁部156に圧力が加えられることによって、隔壁部156による収容空間151および収容空間152間の区画が解除される。これにより、収容空間151に収容された薬剤と、収容空間152に収容された薬剤とが、混合される。次に、
図15に示される第2変形例においては、ポート60を用いて輸液を行ない、
図16に示される第3変形例においては、ポート120を用いて輸液を行なう。
【0103】
このように構成された、この発明の実施の形態4における医療用容器によれば、実施の形態1に記載の効果を同様に奏することができる。
【0104】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0105】
この発明は、主に、薬剤を収容するための医療用容器に適用される。
【符号の説明】
【0106】
10,210,220 医療用容器、21,121 収容部、22,23 シート、26 接合部、31 カバー体、32 第1シート、33 第2シート、34 第1端辺、35 第2端辺、36 弱シール部、37 非シール部、41 ポート保持機構部、60,120 ポート、51,151,152 収容空間、52 周囲空間、55 コネクタ、56 大径部、57 小径部、58,62,73 鍔部、59,65,82 突出部、60c,70c 外周面、61 弾性体保持部、63 円筒部、64 折り返し部、66 第1弾性体、66a 第1表面、66b 第2表面、67,68 溝部、69,91 破断部、70 ポートキャップ部、71 下段側弾性体保持部、72 接続部、74 薄肉部、76 第2弾性体、76a 第3表面、76b 第4表面、81 上段側弾性体保持部、84 本体部、90 キャップ体、101 中心軸、110 シリンジ、111 注射針、156 隔壁部。