IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社富士通ゼネラルの特許一覧

<>
  • 特許-空気調和装置 図1
  • 特許-空気調和装置 図2
  • 特許-空気調和装置 図3
  • 特許-空気調和装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】空気調和装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20230314BHJP
   F24F 11/30 20180101ALI20230314BHJP
   F24F 11/84 20180101ALI20230314BHJP
   F24F 11/61 20180101ALI20230314BHJP
   F24F 110/10 20180101ALN20230314BHJP
   F24F 140/20 20180101ALN20230314BHJP
【FI】
F25B1/00 387D
F25B1/00 304T
F24F11/30
F24F11/84
F24F11/61
F24F110:10
F24F140:20
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019044348
(22)【出願日】2019-03-12
(65)【公開番号】P2020148361
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(72)【発明者】
【氏名】木嶋 幹夫
【審査官】森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第03/078903(WO,A1)
【文献】特開2012-122638(JP,A)
【文献】特開2001-208457(JP,A)
【文献】特開2012-122679(JP,A)
【文献】特開2007-285559(JP,A)
【文献】特開2017-015294(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0123635(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
F24F 11/30
F24F 11/84
F24F 11/61
F24F 110:10
F24F 140:20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室外機と、複数台の室内機と、前記室外機と複数台の前記室内機が複数台の前記室内機と同数のガス管及び液管で接続されて形成される冷媒回路と、前記各液管に組み込まれ前記室内機の台数と同じ数だけ設けられる膨張弁と、制御手段とを有する空気調和装置であって、
前記室外機は、圧縮機と、四方弁と、室外熱交換器とを有し、複数台の前記室内機は、室内熱交換器と、室内温度を検出する室内温度検出手段と、室内熱交換器の温度を検出する室内熱交換器温度検出手段とを有し、
前記制御手段は、冷房運転を行っているとき、
各前記室内機における前記室内温度検出手段で検出した室内温度と前記室内熱交換器温度検出手段で検出した室内熱交換器温度とを取り込み、室内温度と室内熱交換器温度との温度差が予め定められた所定温度差より小さい状態が所定時間継続している油滞留室内機が存在するときに、少なくとも前記油滞留室内機に対応する前記膨張弁の開度を全開として前記圧縮機に前記ガス管に滞留する冷凍機油を戻す油回収運転を行う、
ことを特徴とする空気調和装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記油滞留室内機が前記所定時間内でサーモオフとなっている場合は、前記油滞留室内機がサーモオフとなっている時間の合計値であるサーモオフ積算時間を算出し、
前記油滞留室内機のサーモオフ積算時間が、予め定められた時間より短い場合は、前記油回収運転を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の空気調和装置。
【請求項3】
前記制御手段は、
前記油回収運転として、第1油回収運転と第2油回収運転を実行し、
前記第1油回収運転は、前記油滞留室内機に対応する前記膨張弁を全開にし、
前記第2油回収運転は、全ての前記膨張弁を全開にし、
前記油滞留室内機の台数に応じて、前記第1油回収運転、または、前記第2油回収運転のいずれかを選択して実行する
ことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の空気調和装置。
【請求項4】
前記制御手段は、
前記油滞留室内機の台数が予め定められた境界台数より少ない場合は、前記第1油回収運転を実行し、
前記油滞留室内機の台数が前記境界台数より多い場合は、前記第2油回収運転を実行する、
ことを特徴とする請求項3に記載の空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室外機に複数台の室内機が冷媒配管で接続された空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気調和装置としては、1台の室外機に複数台の室内機が液管およびガス管で接続され、複数台の室内機で同時に冷房運転あるいは暖房運転を行うことが可能であるものが知られている。このような空気調和装置の室外機には、室内機の台数と同数の膨張弁が設けられているものがあり、各室内機に対応する膨張弁の開度を調整することによって、各室内機における冷媒流量を調整できるようになっている。
【0003】
上記のような空気調和装置で冷房運転を行っているとき、室外機で凝縮・減圧された低圧の冷媒が液管を流れて室内機に流入し、蒸発器として機能する室内熱交換器で蒸発してガス状態、あるいは、気液二相状態の低圧の冷媒がガス管を流れる。つまり、冷房運転時のガス管には、低圧であることに起因して密度・温度ともに低い状態の冷媒が流れている。
【0004】
空調運転時に圧縮機が駆動すれば、圧縮機内部に滞留している冷凍機油が冷媒とともに圧縮機から冷媒回路へと吐出される。冷媒回路に吐出された冷凍機油は冷媒とともに冷媒回路を循環するが、上述した冷房運転時のガス管では、冷媒の温度が低くなっていることによって冷凍機油の温度も低下して冷凍機油の粘度が大きくなる。また、冷房運転時のガス管には、密度の低い冷媒が流れている。これら冷凍機油の粘度が大きくなることと密度の低い冷媒 が流れていることにより、ガス管内では、冷媒とともに冷凍機油が流れにくくなるので冷房運転時のガス管には冷凍機油が滞留しやすい。
【0005】
上述した冷房運転時のガス管での冷凍機油の滞留量は、冷房運転時の圧縮機の運転時間が長くなるほど多くなる。そして、ガス管での冷凍機油の滞留量が多くなれば、圧縮機で冷凍機油が不足して潤滑不良を起こす恐れがある。そこで、圧縮機の運転時間が所定時間(例えば、3時間)となったとき、圧縮機の回転数(例えば、70rps)を所定の回転数で駆動するとともに、各室内機に対応する膨張弁の開度をそれぞれ所定開度(例えば、全開)として、ガス管を流れる冷媒の密度を高くするとともに、ガス管を流れる冷媒量を増加させることで、ガス管に滞留する冷凍機油を圧縮機に戻す油回収運転を行う空気調和装置が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-96019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
冷房運転時のガス管での冷凍機油の滞留量は、上述した圧縮機の運転時間以外の要因でも変化する。例えば、運転時間が所定時間となるまでの間、膨張弁の開度が他の室内機と比べて小さくされている時間が長い室内機では、上記他の室内機と比べてガス管を流れる冷媒の密度が低くなるため、及び、ガス管を流れる冷媒量が減少するため、ガス管に滞留する冷凍機油量が多くなる。このような、膨張弁開度が小さいことによるガス管での冷凍機油の滞留量の増加は、室内温度が設定温度に近い温度となり、わずかな冷房能力しか必要としないために冷媒の流量が少ない状態で運転が継続する場合に発生する。
【0008】
一方、運転時間が所定時間となるまでの間、膨張弁の開度が他の室内機と比べて大きくされている時間が長い室内機では膨張弁で冷媒がさほど減圧されないので、上記他の室内機と比べてガス管を流れる冷媒の密度が高くなるため、及び、ガス管を流れる冷媒量が増加するため、ガス管に滞留する冷凍機油量が少なくなる。なお、このような膨張弁開度が大きいことによるガス管での冷凍機油の滞留量の減少は、室内温度と設定温度との温度差が大きくなり、大きな冷房能力が必要となって冷媒の流量が増加した 場合に発生する。
【0009】
つまり、冷房運転中にガス管に滞留する冷凍機油量は、圧縮機の運転時間が所定時間となるまでの間の、膨張弁の開度によって変化するガス管を流れる冷媒の密度及び流量によって変化し、同じ所定時間であってもガス管に滞留する冷凍機油量が多い場合や少ない場合がある。特許文献1に記載の空気調和装置では、単純に圧縮機の運転時間が所定時間となれば油回収運転を行っているため、ガス管に滞留する冷凍機油量が多く、運転時間が所定時間となる前に圧縮機で冷凍機油が不足する事態が起こったとしても対処できない。また、ガス管に滞留する冷凍機油量が少なく、運転時間が所定時間となっても圧縮機に十分な量の冷凍機油があるにも関わらず油回収運転が行われてしまう場合がある。
【0010】
本発明は、以上に説明した問題点を解決するものであり、適切なタイミングで油回収運転を実行できる空気調和装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
室外機と、複数台の室内機と、前記室外機と複数台の前記室内機が複数台の前記室内機と同数のガス管及び液管で接続されて形成される冷媒回路と、前記各液管に組み込まれ前記室内機の台数と同じ数だけ設けられる膨張弁 と、制御手段とを有する空気調和装置であって、前記室外機は、圧縮機と、四方弁と、室外熱交換器とを有し、複数台の前記室内機は、前記室内熱交換器と、室内温度を検出する室内温度検出手段と、室内熱交換器の温度を検出する室内熱交換器温度検出手段とを有し、前記制御手段は、冷房運転を行っているとき、各前記室内機における前記室内温度検出手段で検出した室内温度と前記室内熱交換器温度検出手段で検出した室内熱交換器温度とを取り込み、室内温度と室内熱交換器温度との温度差が予め定められた所定温度差より小さい状態が所定時間継続している油滞留室内機が存在するときに、少なくとも前記油滞留室内機に対応する前記膨張弁 の開度を全開として前記圧縮機に前記ガス管 に滞留する冷凍機油を戻す油回収運転を行う。
【発明の効果】
【0012】
上記のように構成した本発明の空気調和装置は、適切なタイミングで油回収運転を実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態である空気調和装置の説明図であり、(A)が冷媒回路図、(B)が室外機制御手段のブロック図である。
図2】本発明の実施例1における、室外機制御手段での処理を説明するフローチャートである。
図3】本発明の実施例2における、室外機制御手段での処理を説明するフローチャートである。
図4】本発明の実施例3における、室外機制御手段での処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に基づいて詳細に説明する。実施形態としては、1台の室外機に10台の室内機が冷媒配管で並列に接続され、全ての室内機で同時に冷房運転が行える空気調和装置を例に挙げて説明する。尚、本発明は以下の実施形態に限定されることはなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
【実施例1】
【0015】
図1(A)に示すように、本実施形態における空気調和装置1は、1台の室外機2に10台の室内機5が、室内機5の台数と同じ10本の液管8および10本のガス管9で並列に接続されている。具体的には、室外機2に設けられる10個の液側閉鎖弁27と10台の室内機5の液管接続部53がそれぞれ10本の液管8で接続されている。また、室外機2に設けられる10個のガス側閉鎖弁28と10台の室内機5のガス管接続部54がそれぞれ10本のガス管9で接続されている。このように、室外機2と10台の室内機5が10本の液管8および10本のガス管9で接続されて、空気調和装置1の冷媒回路10を形成している。尚、図1(A)では、10台の室内機5のうちの3台のみ、10本の液管8および10本のガス管9のうちのそれぞれを3本のみ、10個の液側閉鎖弁27をおよび10個のガス側閉鎖弁28を3個について、それぞれ描画している。
【0016】
<室外機の構成>
まずは、室外機2について説明する。室外機2は、圧縮機21と、四方弁22と、室外熱交換器23と、10個の膨張弁24と、アキュムレータ25と、室外ファン26と、上述した10個の液側閉鎖弁27および10個のガス側閉鎖弁28と、室外機制御手段200を備えている。そして、室外ファン26および室外機制御手段200を除くこれら各装置が、以下で詳述する各冷媒配管で相互に接続されて、冷媒回路10の一部をなす室外機冷媒回路20を形成している。尚、図1(A)では、10個の膨張弁24のうち3個のみを描画している。
【0017】
圧縮機21は、インバータにより回転数が制御される図示しないモータによって駆動されることで運転容量を可変できる能力可変型圧縮機である。圧縮機21の冷媒吐出口と四方弁22のポートaが吐出管41で接続されており、また、圧縮機21の冷媒吸入側とアキュムレータ25の冷媒流出側が吸入管42で接続されている。
【0018】
四方弁22は、冷媒の流れる方向を切り換えるための弁であり、a、b、c、dの4つのポートを備えている。上述したように、ポートaと圧縮機21の冷媒吐出口が吐出管41で接続されている。ポートbと室外熱交換器23の一方の冷媒出入口が冷媒配管43で接続されている。ポートcとアキュムレータ25の冷媒流入側が冷媒配管46で接続されている。そして、ポートdには室外機ガス管45の一端が接続されている。室外機ガス管45の他端には、10本の室外機ガス分管45a(図1(A)では、これらのうち3本を描画)の各々の一端が接続されており、10本の室外機ガス分管45aの各々の他端は、10個のガス側閉鎖弁28に接続されている。
【0019】
室外熱交換器23は、室外ファン26の回転により図示しない吸込口から室外機2の内部に取り込まれた外気と冷媒を熱交換させる。上述したように、室外熱交換器23の一方の冷媒出入口と四方弁22のポートbが冷媒配管43で接続されている。また、室外熱交換器23の他方の冷媒出入口には室外機液管44の一端が接続されている。室外熱交換器23は、冷媒回路10が冷房サイクルとなる場合は凝縮器として機能し、冷媒回路10が暖房サイクルとなる場合は蒸発器として機能する。
【0020】
室外機液管44の他端には、10本の室外機液分管44a(図1(A)では、これらのうち3本を描画)の各々の一端が接続され、10本の室外機液分管44aの各々の他端は、10個の液側閉鎖弁27に接続されている。そして、各室外機液分管44aには、それぞれに膨張弁24が組み込まれている。つまり、各膨張弁24は、室外熱交換器23と、各室内熱交換器51の間に配置される。これら10個の膨張弁24は、全て室外機制御手段200によりその開度が調整される。各膨張弁24の開度を調整することによって、各膨張弁24に接続される10台の室内機5に流れる冷媒量が調整される。10個の膨張弁24は、図示しないパルスモータにより駆動される電子膨張弁であり、パルスモータに与えられるパルス数によって開度が調整される。
【0021】
アキュムレータ25は、上述したように、冷媒流入側と四方弁22のポートcが冷媒配管46で接続され、冷媒流出側と圧縮機21の冷媒吸入口が吸入管42で接続されている。アキュムレータ25は、流入した冷媒をガス冷媒と液冷媒とに分離し、ガス冷媒のみを吸入管42を介して圧縮機21に吸入させる。
【0022】
室外ファン26は、樹脂材で形成されたプロペラファンであり、室外熱交換器23の近傍に配置されている。室外ファン26は、図示しないファンモータによって回転することで、室外機2に設けられた図示しない吸込口から室外機2の内部に外気を取り込み、室外熱交換器23を流れる冷媒と熱交換した外気を室外機2に設けられた図示しない吹出口から室外機2の外部へ放出する。
【0023】
以上説明した装置や部材、及び、各冷媒配管の他に、室外機2には各種のセンサが設けられている。図1(A)に示すように、吐出管41には、圧縮機21から吐出される冷媒の圧力を検出する高圧センサ31と、圧縮機21から吐出される冷媒の温度を検出する吐出温度センサ33が設けられている。冷媒配管46におけるアキュムレータ25の冷媒流入側近傍には、圧縮機21に吸入される冷媒の圧力を検出する低圧センサ32と、圧縮機21に吸入される冷媒の温度を検出する吸入温度センサ34が設けられている。
【0024】
室外熱交換器23の図示しない伝熱管の中間部には、室外熱交換器23の温度を検出する室外熱交換器温度センサ35が設けられている。また、室外機2の図示しない吸込口付近には、室外機2の内部に流入する外気の温度、すなわち外気温度を検出する外気温度センサ36が備えられている。
【0025】
各室外機液分管44aにおける膨張弁24と液側閉鎖弁27の間には、各室外機液分管44aを流れる冷媒の温度を検出する液側温度センサ37がそれぞれ設けられている。
【0026】
また、室外機2には、室外機制御手段200が備えられている。室外機制御手段200は、室外機2の図示しない電装品箱に格納された制御基板に搭載されており、図1(B)に示すように、CPU210と、記憶部220と、通信部230と、センサ入力部240とを備えている。
【0027】
記憶部220は、例えばフラッシュメモリであり、室外機2の制御プログラムや各種センサからの検出信号に対応した検出値、圧縮機21や室外ファン26の駆動状態、10台の室内機5の各々から送信される運転情報(運転/停止情報や設定温度情報等を含む)等を記憶する。通信部230は、10台の室内機5の各々との通信を行うインターフェイスである。センサ入力部240は、室外機2の各種センサでの検出結果を取り込んでCPU210に出力する。CPU210は、センサ入力部240を介して各種センサでの検出値を定期的(例えば、1分毎)に取り込むとともに、10台の室内機5の各々から送信される運転情報を含んだ信号が通信部230を介して入力される。CPU210は、これら入力された各種情報に基づいて、膨張弁24の開度調整、圧縮機21や室外ファン26の駆動制御を行う。また、図示は省略するが、CPU210は、タイマー計測機能を有している。
【0028】
<各室内機の構成>
次に、室内機5について説明する。10台の室内機5はそれぞれ、室内熱交換器51と、液管接続部53と、ガス管接続部54と、室内ファン55を備えている。そして、室内ファン55を除くこれら各装置が以下で詳述する各冷媒配管で相互に接続されて、冷媒回路10の一部をなす室内機冷媒回路50を形成している。
【0029】
室内熱交換器51は、冷媒と、室内ファン55の回転により室内機5に備えられた図示しない吸込口から室内機5の内部に取り込まれた室内空気を熱交換させるものである。室内熱交換器51の一方の冷媒出入口と液管接続部53が室内機液管71で接続されている。室内熱交換器51の他方の冷媒出入口とガス管接続部54が室内機ガス管72で接続されている。尚、液管接続部53やガス管接続部54には、各冷媒配管が溶接やフレアナット等によって接続されている。
室内熱交換器51は、室内機5が冷房運転を行う場合は蒸発器として機能し、室内機5が暖房運転を行う場合は凝縮器として機能する。
【0030】
室内ファン55は、樹脂材で形成されたクロスフローファンであり、室内熱交換器51の近傍に配置されている。室内ファン55は、図示しないファンモータによって回転することで、図示しない吸込口から室内機5の内部に室内空気を取り込み、室内熱交換器51において冷媒と熱交換した室内空気を室内機5に備えられた図示しない吹出口から室内へ供給する。
【0031】
以上説明した装置や部材、及び、各冷媒配管の他に、室内機5には各種のセンサが設けられている。室内熱交換器51の図示しない伝熱管の中間部には、室内熱交換器51の温度(以降、室内熱交温度と記載する場合がある)を検出する室内熱交換器温度検出手段である室内熱交換器温度センサ61が設けられている。また、室内機5の図示しない吸込口付近には、室内機5の内部に流入する室内空気の温度、すなわち室内温度を検出する室内温度検出手段である室内温度センサ62が備えられている。なお、以上説明した室外機液管44、各室外機液分管44a、3本の液管8、及び、室内機液管71が、本発明の「液管」に相当する。また、以上説明した室外機ガス管45、各室外機ガス分管45a、3本のガス管9、及び、室内機ガス管72が、本発明の「ガス管」に相当する。
【0032】
<冷媒回路の動作>
次に、本実施形態の空気調和装置1が冷房運転を行うときの冷媒回路10における冷媒の流れや各部の動作を、図1(A)を用いて説明する。以下の説明では、10台の室内機5が全て冷房運転を行っている場合について説明する。図1(A)において、矢印は、冷媒回路10における冷房運転時の冷媒の流れを示しており、また、四方弁22については、冷房運転時の各ポート間の連通状態を実線で示している。
【0033】
尚、空気調和装置1が暖房運転を行うときの冷媒回路10における冷媒の流れや各部の動作については詳細な説明を省略するが、暖房運転時は四方弁22の各ポート間の連通状態は、図1(A)に破線で示す状態となり、室外熱交換器23が蒸発器として機能し、各室内熱交換器51が凝縮器として機能する。
【0034】
室内機5が冷房運転を行う場合は、四方弁22が図1(A)に実線で示す状態、すなわち、四方弁22のポートaとポートbが連通するように、また、ポートcとポートdが連通するように切り換えられる。これにより、冷媒回路10が図1(A)に矢印で示す方向に冷媒が流れる状態となり、室外熱交換器23が凝縮器として機能するとともに、各室内熱交換器51が蒸発器として機能する。
【0035】
上記のような冷媒回路10の状態で圧縮機21が駆動している とき、圧縮機21から吐出された高温・高圧の冷媒は吐出管41から四方弁22に流入し、四方弁22から冷媒配管43を流れて室外熱交換器23に流入する。室外熱交換器23に流入した冷媒は、室外ファン26の回転によって室外機2の内部に取り込まれた外気と熱交換を行って凝縮し、室外熱交換器23から室外機液管44に流出する。室外機液管44に流入した冷媒は、各室外機液分管44aに分流し全開とされている各膨張弁24を通過して、各液側閉鎖弁27を介して各液管8に流入する。
【0036】
各液管8から各液管接続部53を介して各室内機5に流入した冷媒は、各室内機液管71を流れて各室内熱交換器51に流入し、各室内ファン55の回転によって室内機2の内部に取り込まれた室内空気と熱交換を行って蒸発する。各室内熱交換器51から各室内機ガス管72に流出した冷媒は、各ガス管接続部54を介して各ガス管9に流入し、各ガス管9を流れて各ガス側閉鎖弁28を介して室外機2に流入する。室外機2に流入した冷媒は、各室外機ガス分管45aから室外機ガス管45、四方弁22、冷媒配管46へと流れてアキュムレータ25に流入し、アキュムレータ25でガス冷媒と液冷媒とに分離される。アキュムレータ25から吸入管42へと流出したガス冷媒は、吸入管42を流れて圧縮機21に吸入され、再び圧縮される。
【0037】
<油回収運転について>
次に、油回収運転について説明する。圧縮機21から吐出された冷凍機油は冷媒とともに冷媒回路10を循環する。冷房運転時のガス管9には、温度が低い冷媒が流れているため、冷媒とともにガス管9を流れる冷凍機油の温度も低下して冷凍機油の粘度が大きくなる。また、冷房運転時のガス管9には、密度が低い冷媒が流れているため、ガス管9を密度が高い冷媒が流れる場合と比べて、冷凍機油が冷媒とともに流れにくい。 以上の理由により、冷房運転時のガス管9には冷凍機油が滞留しやすい。そして、冷房運転時のガス管9での冷凍機油の滞留量は、冷房運転時の圧縮機21の運転時間が長くなるほど多くなる。
【0038】
また、冷房運転時のガス管9での冷凍機油の滞留量は、圧縮機21の運転時間以外の要因でも変化する。例えば、運転時間が所定時間となるまでの間、膨張弁24の開度が他の室内機5と比べて小さくされている時間が長い室内機5では、上記他の室内機5と比べてガス管9を流れる冷媒の密度が低くなるため、及び、ガス管9を流れる冷媒量が減少するため、ガス管9に滞留する冷凍機油量が多くなる。このような、膨張弁24の開度が小さいことによるガス管9での冷凍機油の滞留量の増加は、室内温度が設定温度に近い温度となり、わずかな冷房能力しか必要としないため、冷媒の流量が少ない状態で運転が継続する場合、例えば、所定時間中に室内機5がサーモオフ/サーモオンを繰り返しているとき、つまり、室内温度が設定温度に近い温度となっており、サーモオンとなってもわずかな冷房能力しか必要としない場合に発生する。 ここで、サーモオフとは冷房運転時に室内機5で検出する室内温度が、この室内温度の目標値となる設定温度より所定温度だけ下回った場合、室内機5に搭載される室内ファン55を停止させるとともに、室内機5に対応する膨張弁24の開度を全閉とする状態である。また、サーモオンとはサーモオフ時に室内温度が設定温度より上昇した場合 、室内機5に搭載される室内ファン55を再起動させるとともに、室内機5に対応する膨張弁24の開度を、圧縮機21の吐出温度に応じた開度とする状態である。
【0039】
一方、運転時間が所定時間となるまでの間、膨張弁24の開度が他の室内機5と比べて大きくされている時間が長い室内機5では膨張弁24で冷媒がさほど減圧されないので、上記他の室内機5と比べてガス管9を流れる冷媒の密度が高くなるため、及び、ガス管9を流れる冷媒量が増加するため、ガス管9に滞留する冷凍機油量が少なくなる。なお、このような膨張弁24の開度が大きいことによるガス管9での冷凍機油の滞留量の減少は、室内温度と設定温度との温度差が大きくなり、大きな冷房能力が必要となって、冷媒の流量が増加する場合、例えば、空気調和装置の使用者が冷房運転中に設定温度を変更して現在より大きい冷房能力が要求されることが頻繁に発生する場合や、室内機5が設置された部屋の空調負荷が大きくてサーモオン時に大きな冷房能力が必要とされる場合に発生する 。
【0040】
つまり、冷房運転中にガス管9に滞留する冷凍機油量は、圧縮機21の運転時間が所定時間となるまでの間の、膨張弁24の開度によって変化するガス管9を流れる冷媒の状態によって変化し、同じ所定時間であってもガス管9に滞留する冷凍機油量が多い場合や少ない場合がある。このような、所定時間中の膨張弁24の開度による冷凍機油の滞留量の違いを考慮せず、単純に圧縮機21の運転時間が所定時間となれば油回収運転を行っていると、ガス管9に滞留する冷凍機油量が多く、運転時間が所定時間となる前に圧縮機21で冷凍機油が不足する事態が起こったとしても対処できない。また、ガス管9に滞留する冷凍機油量が少なく、運転時間が所定時間となっても圧縮機21に十分な量の冷凍機油があるにも関わらず油回収運転が行われてしまう場合がある。
【0041】
そこで、本実施形態の空気調和装置1では、冷房運転時に各室内機5において検出した室内温度と室内熱交温度との温度差を用いて 、油回収運転の要否を判断する。具体的には、室内温度の方が室内熱交温度よりも高い温度であり、かつ、その温度差が所定温度差(例えば、8℃)より小さい状態が、連続して所定時間(例えば、2時間)継続した室内機5(以降、油滞留室内機と記載する場合がある)が1台でも存在する場合は、油回収運転を実行する。
【0042】
次に、油回収運転における、冷房運転中にガス管9に滞留する冷凍機油量の判断について以下に詳述する。前述した、室内機5がサーモオフ/サーモオンを繰り返しているときのような、室内温度が設定温度に近い温度となってわずかな冷房能力しか必要としない場合 は、この室内機5に対応する膨張弁24の開度は小さくされている。膨張弁24の開度が小さくされていると、室内熱交換器51に流入する冷媒量も少なくなり、流入する冷媒量が多い場合と比べて当該室内熱交換器51の室内熱交温度が高くなって、室内温度から室内熱交温度を減じて求めた温度差は小さくなる。
【0043】
一方で、冷房運転中に設定温度を変更して現在より大きい冷房能力が要求されることが頻繁に発生する場合や、設置された部屋の空調負荷が大きくてサーモオン時に大きな冷房能力が必要とされる場合のような、室内温度と設定温度との温度差が大きくなって大きな冷房能力が必要となることで、冷媒の流量を増加させる室内機5 では、この室内機5に対応する膨張弁24の開度は大きくされている。膨張弁24の開度が大きくされていると、室内熱交換器51に流入する冷媒量も多くなり、流入する冷媒量が少ない場合と比べて当該室内熱交換器51の室内熱交温度が低くなって、室内温度から室内熱交温度を減じて求めた温度差は大きくなる。
【0044】
つまり、室内温度から室内熱交温度を減じて求めた温度差を見ることで、各室内機5に接続されるガス管9における冷凍機油の滞留のしやすさを推定することができ、同じ時間内であれば温度差が大きいほどガス管9を流れる冷媒の密度が高く、かつ、流量が多いことによりガス管9に冷凍機油が滞留しにくく、温度差が小さいほどガス管9を流れる冷媒の密度が低く、かつ、流量が少ないことによりガス管9に冷凍機油が滞留しやすいと推定できる。そして、このような温度差が所定時間継続しているか否かを見ることで、ガス管9に滞留する冷凍機油量が、圧縮機21の潤滑に支障をきたす量であるか否かを推定できる。
【0045】
ここで、上述した所定温度差の値および所定時間は、予め試験などを行って求められて室外機制御手段200の記憶部220に記憶されている値である。空気調和装置1では、発揮できる空調能力に基づいて圧縮機21の能力が定められ、この圧縮機21には必要となる固有の量の冷凍機油が封入されている。上記所定温度差の値および所定時間は、室外機2に搭載される圧縮機21に封入されている冷凍機油量やガス管9の内容積などに応じた値であり、圧縮機21が潤滑不良となる前に圧縮機21に十分な量の冷凍機油が戻せるように定められる。
【0046】
そして、本実施形態の空気調和装置1は、室内温度から室内熱交温度を減じて求めた温度差が所定温度差より小さくなっている状態が所定時間継続する室内機5が現れた場合に、圧縮機21の回転数を所定の回転数(例えば、70rps)で駆動するとともに、冷媒回路10に滞留する冷凍機油を圧縮機21に戻す油回収運転を実行する。油回収運転では、全ての膨張弁24の開度を全開とする。これにより、ガス管9に流れる冷媒量を増加させるとともに各室内機5の室内熱交換器51で冷媒が蒸発しきらずにガス管9を液冷媒の混ざった気液二相冷媒、つまり、密度の高い冷媒を流して、ガス管9に滞留する冷凍機油を圧縮機21に戻す。ここで、上記所定の回転数は、予め試験などを行って定められたものであり、油回収運転時に、この回転数で圧縮機21を駆動すれば、ガス管9に滞留する冷凍機油を圧縮機21に戻せることが判明している値である。
【0047】
<油回収運転に関わる制御の流れ>
以下、図2に示すフローチャートを用いて、本発明の空気調和装置1で冷房運転中に油回収運転を行うときに、CPU210が実行する処理について説明する。図2に示すフローチャートでは、STは処理のステップを表し、これに続く数字はステップ番号を表している。尚、図2では、本発明に関わる処理を中心に説明しており、これ以外の処理、例えば、空調運転時に使用者が指示した設定温度や風量等の運転条件に応じた制御といった、空気調和装置1に関わる一般的な処理については説明を省略する。
【0048】
使用者が各室内機5の図示しないリモコン等を操作して冷房運転開始を指示すると、室外機2の室外機制御手段200であるCPU210は、タイマー計測を開始する(ST1)。ここで、ST1のタイマー計測開始時点は、少なくとも1台の室内機5が冷房運転を開始した時点とする。次に、CPU210は、ST1で冷房運転を開始した全ての室内機5の室内温度センサ62で検出した室内温度と、ST1で冷房運転を開始した全ての室内機の室内熱交換器温度センサ61で検出した室内熱交温度を室外機制御手段200である通信部230を介してそれぞれ取り込む(ST2)。次に、CPU210は、ST2でそれぞれ取り込んだ室内温度と室内熱交温度との温度差を算出する(ST3)。具体的には、室内温度から室内熱交温度を減じて温度差を算出する。
【0049】
次に、CPU210は、ST3で算出した各温度差のうち所定温度差(例えば、8℃)以下となっている室内機5が存在するか否かを判断する(ST4)。温度差が所定温度差以下となっている室内機5が存在しなければ(ST4-No)、CPU210はST8に処理を進める。温度差が所定温度差以下となっている室内機5が少なくとも1台存在すれば(ST4-Yes)、CPU210はST5に処理を進める。
【0050】
ST5において、CPU210は、ST1でタイマー計測を開始してから、所定時間(例えば、1時間)が経過したか否かを判断する。所定時間が経過していなければ(ST5-No)、CPU210は、ST2に処理を戻す。所定時間が経過していれば(ST5-Yes)、CPU210は、ST6に処理を進める。
【0051】
ST6において、CPU210は、全ての油滞留室内機の膨張弁24を全開にして、油回収運転を開始する。次に、油回収運転を実行しているとき、CPU210は、油回収運転の終了条件が成立しているか否かを判断する(ST7)。ここで油回収運転の終了条件とは、膨張弁24を全開にしてから油回収時間(例えば、10分間)が経過しているか否かであり、具体的には、CPU210は、膨張弁24を全開とした時点から時間の計測を開始して、油回収時間が経過しているか否かを判断する。ここで、油回収時間は、実験等を行って予め定められた時間であり、ガス管9に滞留した冷凍機油が少なくとも圧縮機21の潤滑不良を起こさない程度に圧縮機21に戻るとみなされる時間である。
【0052】
ST7において、油回収運転の終了条件が成立していなければ(ST7-No)、CPU210は、ST6に処理を戻し、油回収運転を継続する。油回収運転の終了条件が成立していれば(ST7-Yes)、CPU210は、油回収運転を終了してタイマーをリセットして(ST8)、ST1に処理を戻す。
【0053】
以上説明したように、本実施形態の空気調和装置1は、冷房運転を行っているときに、室内温度と室内熱交温度との温度差が所定温度差より小さい状態が所定時間継続している室内機5、つまり、油滞留室内機が発生した場合に、油回収運転を行う。これにより、圧縮機21の潤滑に支障をきたすほどの量の冷凍機油が冷媒回路10に滞留してしまう前に油回収運転を行えるので、圧縮機21の信頼性が向上する。また、圧縮機21の潤滑に支障をきたすほどではない少量の冷凍機油が冷媒回路10に滞留している場合は油回収運転を行わないため、不要に膨張弁24の開度が全開とされることで、各室内機5で発揮される冷房能力が変動することを防止でき、使用者の快適性も損なわれない。
【実施例2】
【0054】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。第1の実施形態では、冷房運転を行っているときに、各室内機5の室内温度と室内熱交温度との温度差が所定温度差より小さくなっている状態が所定時間継続しているか否かで、油滞留室内機があるか否かを判断した。本実施形態では、これら第1実施形態の条件に加えて、所定時間内に室内機5がサーモオフとなっている時間の合計値であるサーモオフ積算時間を用いて、油滞留室内機があるか否かを判断する。
【0055】
冷房運転時にサーモオフとなる室内機5では、対応する膨張弁24の開度が全閉とされる。これにより、サーモオフとなる室内機5には、サーモオフ中は冷媒および冷凍機油が流入しない。従って、サーモオフ中は当該室内機5に接続されるガス管9の内部に滞留する冷凍機油が増加することはなく、また、室内温度と室内熱交温度との温度差も室内熱交温度が上昇することによって小さくなる。
【0056】
従って、第1の実施形態で説明した、室内温度と室内熱交温度との温度差が所定温度差より小さくなっている状態が所定時間継続している室内機5であっても、所定時間内でサーモオフ積算時間が長い場合は、サーモオフ積算時間が短い場合と比べてガス管9に滞留する冷凍機油量が少なくなる。本実施形態では、このようなサーモオフ積算時間とガス管9に滞留する冷凍機油量との関係を用いて、より正確に油滞留室内機の発生を推定する。
【0057】
そして、本実施形態では、一例として、サーモオフ積算時間が所定時間の1/4の時間(以降、閾時間と記載する場合がある)より長い場合は、第1の実施形態で説明した条件が成立しても、つまり、室内温度と室内熱交温度との温度差が所定温度差より小さくなっている状態が所定時間継続しても、油回収運転は行わず、サーモオフ積算時間が閾時間より短い場合は、油回収運転を行う。ここで、閾時間は、予め試験などを行って求められて室外機制御手段200の記憶部220に記憶されている値である。空気調和装置1では、必要とされる空調能力に基づいて圧縮機21の能力が定められ、この圧縮機21に必要となる固有の冷凍機油量が定められる。閾時間は、室外機2に搭載される圧縮機21に封入されている冷凍機油量やガス管9の内容積などに応じた値となる。
【0058】
以下、図3に示すフローチャートを用いて、本発明の空気調和装置1が油回収運転を行うときに、CPU210が実行する処理について説明する。ST21~ST25までは、第1の実施形態のST1~ST5と同じ処理のため、説明を省略する。
【0059】
ST25において、室外機2の室外機制御手段200であるCPU210は、ST21でタイマー計測を開始してから、所定時間(例えば、1時間)が経過していれば(ST25-Yes)、サーモオフ積算時間が閾時間以下となっている室内機5が存在するか否かを判断する(ST26)。サーモオフ積算時間が閾時間(例えば、15分)以下となっている室内機5が少なくとも1台以上存在すれば(ST26-Yes)、CPU210は、油滞留室内機の膨張弁24を全開にして、油回収運転を開始する(ST27)。サーモオフ積算時間が閾時間以下となっている室内機5が存在しなければ(ST26-No)、CPU210は、ST29に処理を進める。ここでサーモオフ積算時間とは、室内機5がサーモオフとなっている時間の合計値であり、具体的には、CPU210は、サーモオフ積算時間 を算出して閾時間以下であるか否かを判断する。
【0060】
ST27において、油回収運転を実行しているとき、CPU210は、油回収運転の終了条件が成立しているか否かを判断する(ST28)。油回収運転の終了条件が成立していなければ(ST28-No)、CPU210は、ST27に処理を戻し、油回収運転を継続する。油回収運転の終了条件が成立していれば(ST28-Yes)、CPU210は、油回収運転を終了してタイマーをリセットして(ST29)、ST21に処理を戻す。
【0061】
以上説明したように、本実施形態の空気調和装置1は、冷房運転を行っているときに、室内温度と室内熱交温度との温度差が所定温度差より小さい状態が所定時間継続している室内機5が存在し、かつ、当該室内機におけるサーモオフ積算時間が閾時間(本実施形態では、所定時間の1/4の時間)に満たない場合に、油回収運転を行う。これにより、第1の実施形態と比べてより正確に油滞留運転の有無を判断でき、より適切に油回収運転の要否を判断できる。
【実施例3】
【0062】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。第1の実施形態や第2の実施形態では、冷房運転を行っているときに、各室内機5の室内温度と室内熱交温度との温度差が所定温度差より小さくなっている状態が所定時間継続しているか否か、かつ、これらにサーモオフ積算時間が閾時間より長いか否かという判断を加えて、油滞留室内機があるか否かを判断した。本実施形態では、第1の実施形態や第2の実施形態で説明した方法によって判定した油滞留室内機の台数が全ての室内機5の台数に対して所定台数(以降、境界台数と記載する場合がある)存在するか否かに応じて、油滞留室内機に対応する膨張弁24の開度のみを全開とする第1油回収運転と、全ての膨張弁24の開度を全開とする第2油回収運転を選択して行う。
【0063】
ここで、境界台数は、予め試験などを行って求められており、室外機制御手段200の記憶部220に記憶されている値である。空気調和装置1では、必要とされ空調能力に基づいて圧縮機21の能力が定められ、圧縮機21には必要となる固有の量の冷凍機油が封入されている。ここで上記境界台数は、室外機2に搭載される圧縮機21に封入されている冷凍機油量やガス管9の内容積などに応じた値となる。
【0064】
より具体的には、境界台数は、冷房運転中に発生する油滞留室内機がこの境界台数(例えば、3台)より少ない場合は、当該油滞留室内機に対応する膨張弁24のみ、その開度を全開として当該油滞留室内機に接続されるガス管9に滞留する冷凍機油のみを圧縮機21に戻せば、圧縮機21の潤滑には支障がないことが判明している値である。言い換えれば、冷房運転中に発生する油滞留室内機がこの境界台数より多い場合は、全ての室内機5に対応する膨張弁24の開度を全開として全てのガス管9に滞留する冷凍機油を圧縮機21に戻す必要がある。
【0065】
以下、図4に示すフローチャートを用いて、本発明の空気調和装置1が油回収運転を行うときに、CPU210が実行する処理について説明する。ST41~ST45までは、第1の実施形態のST1~ST5と同じ処理のため、説明を省略する。
【0066】
ST45において、CPU210は、ST41でタイマー計測を開始してから、所定時間(例えば、1時間)が経過していれば(ST45-Yes)、第1の実施形態や第2の実施形態で説明した方法によって判定した油滞留室内機が境界台数以下か否かを判断する(ST46)。油滞留室内機が境界台数以下であれば(ST46-Yes)、CPU210は、油滞留室内機に対応する膨張弁24を全開にして、第1油回収運転を開始する(ST47)。油滞留室内機が境界台数より多ければ(ST46-No)、CPU210は、全ての膨張弁24を全開として、第2油回収運転を開始する(ST50)。
【0067】
CPU210は、第1油回収運転を実行しているとき、第1油回収運転の終了条件が成立しているか否かを判断する(ST48)。ここで第1油回収運転の終了条件とは、膨張弁24を全開にしてから第1油回収時間(例えば、10分間)が経過しているか否かである。ここで、第1油回収時間は、実験等を行って予め定められた時間であり、ガス管9に滞留した冷凍機油が少なくとも圧縮機21の潤滑不良を起こさない程度に圧縮機21に戻るとみなされる時間である。
【0068】
ST48において、第1油回収運転の終了条件が成立していなければ(ST48-No)、CPU210は、ST47に処理を戻し、第1油回収運転を継続する。第1油回収運転の終了条件が成立していれば(ST48-Yes)、CPU210は、第1油回収運転を終了してタイマーをリセットして(ST49)、ST41に処理を戻す。
【0069】
一方、ST50において、CPU210は、第2油回収運転を実行しているとき、第2油回収運転の終了条件が成立しているか否かを判断する(ST51)。ここで第2油回収運転の終了条件とは、膨張弁24を全開にしてから第2油回収時間(例えば、10分間)が経過しているか否かである。ここで、第2油回収時間は、実験等を行って予め定められた時間であり、ガス管9に滞留した冷凍機油が少なくとも圧縮機21の潤滑不良を起こさない程度に圧縮機21に戻るとみなされる時間である。
【0070】
ST51において、第2油回収運転の終了条件が成立していなければ(ST51-No)、CPU210は、ST50に処理を戻し、第2油回収運転を継続する。第2油回収運転の終了条件が成立していれば(ST51-Yes)、CPU210は、第2油回収運転を終了してタイマーをリセットして(ST49)、ST41に処理を戻す。
【0071】
以上説明したように、本実施形態の空気調和装置1は、冷房運転を行っているときに、油滞留室内機が発生した場合に、油滞留室内機の台数に応じて行う油回収運転を異ならせる。第1油回収運転を行うことで、冷凍機油が滞留しているガス管9に対応する室内機5の膨張弁24の開度が全開とされるので、他の室内機5の冷房運転への影響はなく、かつ、圧縮機21が少なくとも圧縮機21の潤滑不良を起こさない程度に油滞留室内機から冷凍機油を戻すことができる。また、第2油回収運転を行うことで、全ての室内機5に接続されているガス管9の各々から圧縮機21に冷凍機油が回収でき、圧縮機21が潤滑不良となることを防止できる。
【符号の説明】
【0072】
1 空気調和装置
2 室外機
5 室内機
10 冷媒回路
21 圧縮機
22 四方弁
23 室外熱交換器
24 膨張弁
51 室内熱交換器
61 室内熱交換器温度センサ
62 室内温度センサ
200 室外機制御部
210 CPU
220 記憶部
230 通信部
240 センサ入力部
図1
図2
図3
図4