(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理システム、及び情報処理装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
B64C 39/02 20060101AFI20230314BHJP
B64C 13/18 20060101ALI20230314BHJP
B64D 47/08 20060101ALI20230314BHJP
G05D 1/10 20060101ALI20230314BHJP
B64U 10/13 20230101ALI20230314BHJP
B64U 101/26 20230101ALN20230314BHJP
B64U 101/31 20230101ALN20230314BHJP
【FI】
B64C39/02
B64C13/18 Z
B64D47/08
G05D1/10
B64U10/13
B64U101:26
B64U101:31
(21)【出願番号】P 2019045703
(22)【出願日】2019-03-13
【審査請求日】2022-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085660
【氏名又は名称】鈴木 均
(74)【代理人】
【識別番号】100149892
【氏名又は名称】小川 弥生
(72)【発明者】
【氏名】駒井 浩介
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-143036(JP,A)
【文献】国際公開第2018/098775(WO,A1)
【文献】特開2003-127994(JP,A)
【文献】特表2018-511136(JP,A)
【文献】特開2005-274284(JP,A)
【文献】特開2008-247293(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 39/02
B64C 13/18
B64D 47/08
G05D 1/00- 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巡視対象を含む複数種類の回避対象を無人航空機に回避させつつ、前記無人航空機に設けられた撮影装置に前記巡視対象を撮影させるため情報を生成する情報処理装置であって、
巡視領域における前記回避対象の位置および形状を特定可能な空間情報を取得する空間情報取得手段と、
前記空間情報を用いて、前記回避対象
の表面までの距離が特定値以下
の規制領域
を前記回避対象毎に決定可能な規制領域決定手
段と、
前記巡視対象の前記規制領域の外側
の領域のうち当該巡視対象を撮影可能な推奨領域を、前記無人航空機に飛行させるための
推奨領域情報を生成する情報生成手段とを具備し、
前記回避対象は、電磁界を発生させる回避対象と、電磁界を発生させない回避対象とを含み、
前記特定値は前記回避対象の種類に応じて可変であ
り、
前記規制領域決定手段は、前記回避対象が電磁界を発生させる場合、当該電磁界の強さが大きいほど前記特定値が大きくなる様に、当該回避対象の前記規制領域を決定可能であることを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
発生させる電磁界の強さが相違する複数種類の前記回避対象に対応する複数種類の前記特定値を予め記憶する特定値記憶手段を具備し、
一の前記回避対象に対応する前記特定値は、正常に動作可能な電磁界の強さが相違する前記無人航空機の種類毎に記憶され、
前記規制領域決定手段は、前記特定値記憶手段が記憶する前記特定値から
、前記無人航空機の種類と前記回避対象
の種類との組合せに応じた前記特定値を決定し、当該回避対象の前記規制領域を当該特定値に基づいて決定する
請求項
1の情報処理装置。
【請求項3】
前記回避対象は、架線を含み、
前記推奨領域には、前記架線から見て下側の領域が含まれる
請求項
1または2の情報処理装置。
【請求項4】
前記回避対象は、併架された複数の架線を含み、
前記推奨領域には、併架された複数の前記架線で挟まれた領域が含まれる
請求項1から3の何れかの情報処理装置。
【請求項5】
請求項1から4の何れかの情報処理装置と、
前記無人航空機が前記規制領域へ進入する場合、予め定められた警告を実行する警告手段と
を具備する情報処理システム。
【請求項6】
前記推奨領域は、前記規制領域の外側の領域のうち当該規制領域の外縁から予め定められた距離以下の領域であり、
前記警告手段は、前記推奨領域から前記規制領域側へ前記無人航空機が出た場合と、前記推奨領域から前記規制領域とは逆側へ出た場合とで、相違する態様で警告を実行可能である
請求項5の情報処理システム。
【請求項7】
巡視対象を含む複数種類の回避対象を無人航空機に回避させつつ、前記無人航空機に設けられた撮影装置により前記巡視対象を撮影させるための情報を生成する情報処理装置の制御方法であって、
巡視領域における前記回避対象の位置および形状を特定可能な空間情報を取得するステップと、
前記空間情報を用いて、前記回避対象
の表面までの距離が特定値以下
の規制領域
を前記回避対象毎に決定可能なステップと、
前記巡視対象の前記規制領域
の外側の領域のうち当該巡視対象を撮影可能な推奨領域を
、前記無人航空機に飛行させるための
推奨領域情報を生成するステップとを具備し、
前記回避対象は、電磁界を発生させる回避対象と、電磁界を発生させない回避対象とを含み、
前記特定値は前記回避対象の種類に応じて可変であ
り、
前記回避対象が電磁界を発生させる場合、当該電磁界の強さが大きいほど前記特定値が大きくなる様に、当該回避対象の前記規制領域を決定可能であることを特徴とする情報処理装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力設備を巡視するために用いる情報を生成する情報処理装置、情報処理システム、及び情報処理装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電力設備(鉄塔など)の巡視にドローン(無人航空機)が採用されている(例えば特許文献1)。具体的には、ドローンに搭載した撮影装置により電力設備を撮影し、撮影装置により撮影した画像(静止画像、動画像)を表示装置に表示する。以上の表示装置の画像により、電力設備における不具合(例えば鉄塔の発錆状況)を確認できる。
【0003】
以上の従来技術では、ドローンに回避対象(電力施設など)との衝突を避けるためのセンサを設ける構成が採用される場合がある。例えば、回避対象までの距離を特定するセンサをドローンに設ける構成が採用される場合がある。以上の構成によれば、回避対象との間に一定の距離を確保しつつ、ドローンを飛行させることが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
回避対象とドローンとの間に確保すべき距離は、当該回避対象の種類に応じて相違するという事情がある。したがって、仮に、ドローンから回避対象までの距離が当該回避対象の種類によらず一律の構成では、回避対象によっては、当該回避対象とドローンとの間に本来確保すべき距離が確保されない不都合が生じ得る。以上の事情を考慮して、本発明は、上述の不都合を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するために、請求項1記載の発明に係る情報処理装置は、巡視対象を含む複数種類の回避対象を無人航空機に回避させつつ、無人航空機に設けられた撮影装置に巡視対象を撮影させるため情報を生成する情報処理装置であって、回避対象までの距離が特定値以下の領域を規制領域として決定可能な規制領域決定手と、規制領域決定手段が決定した規制領域外の外側を、無人航空機に飛行させるための情報を生成する情報生成手段とを具備し、特定値は回避対象の種類に応じて可変であることを特徴とする。以上の構成では、回避対象から無人航空機までの距離(特定値)を、当該回避対象の種類に応じて可変にできるため、例えば、回避対象の種類によらず無人航空機までの距離が一律となる構成と比較して、上述の不都合が抑制される。なお、無人航空機が具備する撮影装置による撮影に加え、当該無人航空機が具備する各種のセンサにより、巡視対象における放電ノイズおよび発熱等をセンシング(検知、計測、測定)する技術は、本発明に包含され得る。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、無人航空機から回避対象までの間に適切な距離が確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る巡視方法を説明するための図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る情報処理システムのハードウェア構成を説明するための図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る情報処理システムの機能ブロック図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る規制領域を説明するための図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る推奨領域を説明するための図である。
【
図6】本発明の実施形態に情報処理システムのシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を図面に示した実施形態により詳細に説明する。
【0010】
図1は、本実施形態に係る巡視対象(電力設備)の巡視方法を説明するための図である。
図1の具体例には、巡視対象として、鉄塔Tおよび当該鉄塔Tにより併架される複数の電力線Eが示される。ただし、鉄塔Tおよび電力線E以外が巡視対象に含まれる構成としてもよい。
【0011】
本実施形態では、巡視対象の巡視にドローンDが用いられる。以上のドローンDには、カメラ(撮影装置)が搭載される。ドローンDの操縦者(
図1のH)は、コントローラCを適宜に操作することで、上述のカメラに巡視対象を撮影させる。また、操縦者Hは、コントローラCを適宜に操作することで、回避対象に衝突しない経路をドローンDに飛行させる。
【0012】
以上の回避対象としては、例えば、
図1に示す立木Oが想定される。また、回避対象には巡視対象(鉄塔T、電力線E)自体が含まれる。ドローンDのカメラが撮影した巡視対象の画像を示す画像データは、ドローンDに記憶され、巡視対象の不具合を発見するために用いられる。
【0013】
なお、
図1の具体例では、ドローンDより下側の領域を撮影可能なカメラが例示されるが、例えば、ドローンDより上側の領域を撮影可能なカメラを用いてもよい。また、ドローンDより下側を撮影可能なカメラおよび上側を撮影可能なカメラをそれぞれ具備してもよいし、全方向を撮影可能なカメラを採用してもよい。さらに、ドローンDに赤外線カメラを具備してもよい。
【0014】
コントローラCには、ディスプレイ(表示装置)が設けられる。以上のディスプレイには、ドローンDが録画している画像がリアルタイムで表示される。以上の構成によれば、コントローラCのディスプレイの画像を確認することで、巡視対象が適切に撮影されているか否かが把握できる。
【0015】
ところで、鉄塔Tが設置されている場所によっては、当該鉄塔Tの近傍へ操縦者Hが近づけない場合がある。また、操縦者HとドローンDとの位置関係によっては、ドローンDが遮蔽物(例えば、立木F)で隠れて見えない場合がある。以上の場合、ドローンDから鉄塔Tまでの距離を肉眼では把握し難い。したがって、操縦者Hは、コントローラCのディスプレイに表示される画像により、ドローンDから鉄塔Tまでの距離を把握(予測)する。
【0016】
しかし、ドローンDのカメラの視野によっては、ドローンDに接近している回避対象がコントローラCのディスプレイに表示されない。したがって、操縦者Hは、コントローラCのディスプレイに表示されない回避対象を予想しながらドローンDを操縦する必要がある。ただし、コントローラCのディスプレイに表示されない回避対象を予想しながらドローンDを操縦することは、経験が浅い操縦者には困難であるという事情がある。
【0017】
以上の事情を考慮して、本実施形態では、回避対象を回避しつつ、巡視対象を撮影可能な領域(以下「推奨領域Rs」)を特定可能な推奨領域情報を生成可能な構成を採用した。詳細には後述するが、以上の推奨領域情報はドローンDに記憶される(後述の
図3参照)。また、ドローンDは、推奨領域情報で特定される推奨領域Rsを逸脱する場合、自動で進行を停止する(その場でホバリングする)。以上の構成では、経験が浅い操縦者であっても、ドローンDを推奨領域Rs内で移動させることが容易になる。
【0018】
図2は、本実施形態に係る情報処理システムのハードウェア構成を説明するための図である。
図2に示す通り、情報処理システムは、推奨領域生成装置1、地図サーバ装置2、画像解析装置3、上述のドローンDおよびコントローラCを含んで構成される。以上の各構成は、ネットワークNを介して相互に通信可能である。
【0019】
情報処理システムの構成の各々は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)およびI/F(インターフェース)を含む。各構成の各CPUがROMに記憶されたプログラムを実行することで、後述の各機能(推奨領域決定部106等)を実現する。なお、CPUに替えてMPU(Micro Processing Unit)をプロセッサとして採用してもよい。
【0020】
地図サーバ装置2は、空間情報を記憶する。空間情報は、予め定められた領域(以下「巡視領域」という)における回避対象(巡視対象を含む)の座標を特定可能な情報である。以上の空間情報としては、例えば、点群データが好適に採用される。
【0021】
点群データは、例えばモービルマッピングシステムを利用して生成される。具体的には、レーザスキャナを設けた測定車両Mに巡視領域を走行させる。レーザスキャナは、巡視領域に設けられた物体(回避対象)にレーザを発射し、その反射光を受光する。また、レーザスキャナは、レーザを発射した時刻、反射光を受光した時刻、照射角度、受光角度および現在地を記憶する。なお、レーザスキャナの現在地は、例えば、測定車両Mに設けられたGPS(Global Positioning System)およびIMU(Inertial Measurement Unit)により特定される。
【0022】
以上の点群データには、測定車両Mがレーザスキャナにより照射したレーザ光が反射したと推定される位置に点状にモデル化した物体が存在したと仮定した場合における、当該点の座標情報(X、Y、Z)が含まれる。以上の点群データでは、一の回避対象を複数個の点の集合(点群)としてディスプレイに表示可能である。後述の情報処理装置100(対象特定部102)では、回避対象毎に、当該回避対象を構成する点群が特定される。
【0023】
なお、モービルマッピングシステムにおいて、測定車両Mにレーザスキャナを搭載したが、ドローン(無人航空機)にレーザスキャナを搭載してもよい。また、点群データと同時に画像データを取得してもよい。以上の点群データおよび画像データから巡視領域の3次元画像が生成可能である。点群データおよび画像データから3次元画像を生成する技術としては、例えば、特開2016-142662号公報に記載の技術が好適に採用され得る。
【0024】
推奨領域生成装置1は、上述の推奨領域情報を生成する。具体的には、推奨領域生成装置1は、地図サーバ装置2から空間情報を取得し、当該空間情報から巡視領域における回避対象(巡視対象を含む)の座標を特定する。本実施形態では、空間情報から特定された回避対象の座標(設置位置、形状)を用いて推奨領域Rsが決定され、当該推奨領域Rsが特定される推奨領域情報が生成される。
【0025】
ドローンDは、推奨領域生成装置1から推奨領域情報を無線通信により受信して記憶する。なお、ドローンDを推奨領域生成装置1に有線接続し、推奨領域情報がドローンDに入力される構成としてもよい。ドローンDは、上述した通り、推奨領域情報で特定される推奨領域Rsから逸脱する場合、移動を自動で停止する。また、ドローンDは、推奨領域Rsから逸脱する場合、コントローラCのディスプレイにその旨を警告するメッセージを表示させる信号を出力する。
【0026】
画像解析装置3は、ドローンDが録画した画像を解析するために設けられる。すなわち、画像解析装置3は、ドローンDによる巡視結果を確認するために設けられる。具体的には、巡視が終了した後に、ドローンDが録画した画像を示す画像データが画像解析装置3に入力される。
【0027】
ドローンDは、動画像および静止画像の双方を撮影する。以上の各画像は、画像解析装置3のディスプレイに表示される。確認者は、表示された画像から、各巡視対象における不具合の有無を確認する。例えば、鉄塔Tの画像から当該鉄塔Tの発錆状況が確認される。また、電力線Eのアーク痕および素線切れの有無、および、碍子の破損の有無が確認される。
【0028】
画像解析装置3には、各巡視対象における不具合を確認した日時、および、当該巡視対象における不具合の有無が記憶される。以上の情報を参照して、各巡視対象がメンテナンスされる。なお、ドローンDが撮影した画像が鮮明であるほど、以上の解析作業において不具合が高精度に発見できる。本実施形態では、推奨領域Rsから逸脱しそうな場合(例えば、回避対象に衝突しそうな場合)、ドローンDの進行が停止するため、巡視対象にドローンDを近づけ易い。したがって、巡視対象を比較的近い距離で撮影し易いため、鮮明な画像が撮影され易く、解析作業において不具合が高精度に発見し易くなるという利点がある。
【0029】
図3は、本実施形態の情報処理システムに係る機能ブロック図を説明するための図である。
図3に示す通り、情報処理システムは、情報処理装置100(推奨領域生成装置1)、地図サーバ装置200(2)、無人航空機300(ドローンD)および地上制御装置400(コントローラC)として機能する。
【0030】
無人航空機300は、記憶部301、信号送受信部302、センサ部303および撮影制御部304を含んで構成される。無人航空機300は、図示しない複数個のプロペラが設けられ、各プロペラを適宜に制御することで、鉛直方向への上昇および下降、平行方向への進行および後退、斜め上下方向への移動、および、ホバリングによる空中停止が可能である。
【0031】
無人航空機300のセンサ部303は、無人航空機300の現在地(座標)および進行方向を特定するためのGPS、高度計(気圧計など)および加速度センサを少なくとも含む。また、記憶部301は推奨領域情報を記憶する。無人航空機300は、当該推奨領域情報で特定される推奨領域Rsを逸脱するか否かをリアルタイムで監視する。なお、空間情報(点群データ)における所定地点の座標は、当該所定地点に位置する場合にドローンDが特定する現在地の座標と一致するものとする。
【0032】
具体的には、無人航空機300は、現時点での座標、移動方向および移動速度を参照し、推奨領域Rsを逸脱しそうか否かを判断する。例えば、無人航空機300は、現時点での移動速度および加速度で時間X秒(Xは正の整数)だけ現在地から移動した場合、推奨領域Rsを逸脱するか否かを判断(予測)する。ただし、無人航空機300は、上述の方法以外で、推奨領域Rsを逸脱するか否かを判断してもよい。
【0033】
無人航空機300の信号送受信部302は、各種の信号を地上制御装置400の信号送受信部402と送受信する。例えば、信号送受信部302は、無人航空機300が撮影した画像の画像データを地上制御装置400へリアルタイムで送信する。以上の画像データは、地上制御装置400の信号送受信部402で受信され、当該画像データが示す画像が表示装置401に表示される。
【0034】
無人航空機300の信号送受信部302は、地上制御装置400の信号送受信部402から送信されたコントロール信号を受信する。以上のコントロール信号に応じて無人航空機300の移動等が制御される。ただし、無人航空機300は、推奨領域Rsを逸脱しそうな場合、地上制御装置400からのコントロール信号に応じた移動を中止し、ホバリングにより空中で停止する。すなわち、地上制御装置400による無人航空機300を移動させる操縦が禁止される(無効となる)。
【0035】
なお、無人航空機300を移動させる操作が禁止された後に、予め定められた契機が成立した場合、無人航空機300を移動させる操作が許可される。例えば、移動が禁止されてから予め定められた時間長(例えば約10秒)が経過した場合、無人航空機300の移動が許可される(操縦が可能になる)構成が考えられる。また、地上制御装置400に対して、予め定められた解除操作がされた場合、無人航空機の移動が許可される構成としてもよい。
【0036】
また、無人航空機300の信号送受信部302は、無人航空機300が推奨領域Rsを逸脱しそうな場合、警告表示信号を地上制御装置400へ送信する。以上の警告表示信号が地上制御装置400の信号送受信部402で受信された場合、予め定められた警告が表示装置401に表示される。
【0037】
図3に示す通り、地図サーバ装置200は、記憶部201を含んで構成される。記憶部201は、上述の空間情報(点群データ)を記憶する。具体的には、地図サーバ装置200は、空間情報を巡視領域(住所)毎に記憶する。なお、地図サーバ装置200において、空間情報が作成された日時を含む各種の情報を、当該空間情報に対応させて記憶してもよい。
【0038】
図3に示す通り、情報処理装置100は、巡視領域取得部101、対象特定部102、第1領域決定部103、第2領域決定部104、規制領域決定部105および推奨領域決定部106を含んで構成される。巡視領域取得部101は、今回巡視する施設が設置される巡視領域の空間情報を地図サーバ装置200から取得する。
【0039】
対象特定部102は、巡視領域における回避対象を特定し、対象情報(後述の
図4(a)参照)を生成する。具体的には、巡視領域取得部101により取得された空間情報は上述した通り点群データである。対象特定部102は、巡視領域における回避対象を当該点群データから特定し、同一の回避対象を構成する点群に同一のグループIDを付与する。すなわち、同一の回避対象を構成する各点は、同一のグループに分類される。
【0040】
なお、点群データから回避対象を特定する方法としては、例えば、点群データをディスプレイに表示し、作業者が手動で回避対象を特定(各点をグループ分け)する方法が採用され得る。また、画像マッチングの技術により自動で回避対象が特定可能な構成を採用してもよい。
【0041】
図4(a)を用いて、上述の対象情報について説明する。
図4(a)は、対象情報の概念図である。
図4(a)に示す通り、対象情報は、グループID、当該グループIDが付与された回避対象の種類、当該グループIDが付与された回避対象を構成する各点の座標情報を含んで構成される。また、対象情報は、各回避対象が撮影の対象であるか否か(すなわち、巡視対象であるか否か)を特定可能な情報を含む。
【0042】
図3に説明を戻す。情報処理装置100の第1領域決定部103および第2領域決定部104は、無人航空機300(ドローンD)の進入が規制される規制領域Rk(後述の
図4(b-1)および
図5参照)を決定するために設けられる。以上の第1領域決定部103および第2領域決定部104により、本発明の規制領域決定手段が実現される。本実施形態の規制領域Rkは、回避対象までの距離が離間距離L(特定値)以下の領域である。
【0043】
図4(b-1)は、本実施形態の規制領域Rkを説明するための図である。
図4(b-1)には、点群データにおける1個の点Pが示される。当該点Pは回避対象の一部である。
図4(b-1)に示す通り、点Pから離間距離L以下の領域(略球状の領域)が規制領域Rkに決定される。
【0044】
図4(b-2)は、規制領域Rkの具体例を説明するための図である。
図4(b-2)の具体例では、電力線Eにより設けられる規制領域Rkが示される。なお、
図4(b-2)の具体例では、電力線Eは略直線であると仮定する。以上の場合、点群データのうち電力線Eを構成する各点Pは略直線に配置される。
図4(b-2)に示す通り、略直線に配置された点群によっては、略筒状の規制領域Rkが規定される。
【0045】
なお、本実施形態では、点群データから規制領域Rkを決定したが、他の方法で規制領域Rkが決定される構成としてもよい。例えば、点群データから3次元画像を生成し、当該3次元画像から規制領域Rkを決定してもよい。以上の構成では、3次元画像における回避対象のオブジェクトの表面から離間距離L以下の領域が規制領域Rkとして決定される。
【0046】
本実施形態の規制領域Rkは、無人航空機300が飛行した場合、回避対象と衝突する可能性が高い領域である。また、本実施形態では、回避対象が電磁界を発生させる場合、当該電磁界の悪影響が無人航空機300に及ぶ領域を規制領域Rkとして決定する。
【0047】
具体的には、第1領域決定部103は、回避対象が電磁界を発生させない場合、当該回避対象までの距離が離間距離L以下の領域を規制領域Rkとして特定する。第1領域決定部103が規制領域Rkを特定する場合、第1距離テーブル(後述の
図4(c)参照)を用いて離間距離Lが決定される。
【0048】
一方、第2領域決定部104は、回避対象が電磁界を発生させる場合に規制期間Rkを特定する。第2領域決定部104が規制領域Rkを特定する場合、第2距離テーブル(後述の
図4(d)参照)を用いて離間距離Lが決定される。以上の第1距離テーブルおよび第2距離テーブルは、例えば、情報処理装置100(推奨領域生成装置1)のフラッシュメモリ等に予め記憶される。
【0049】
以下、説明のため、第1領域決定部103により特定された規制領域Rkを「第1領域Rka」と記載する場合がある(後述の
図5(b-1)参照)。また、第2領域決定部104により特定された規制領域Rkを「第2領域Rkb」と記載する場合がある(後述の
図5(b-2)参照)。本実施形態の情報処理装置100は、回避対象の種類に応じて、離間距離Lを可変に決定可能である。
【0050】
図4(c)は、第1距離テーブルの概念図である。第1距離テーブルは、回避対象の種類と離間距離Lとを対応させる。上述した通り、回避対象が電磁界を発生させない場合、第1距離テーブルが参照される。例えば、回避対象が鉄塔Tの場合に離間距離Lnが決定される。以上の場合、鉄塔Tから離間距離Ln以下の領域が第1領域Rka(規制領域Rkの一部分)として決定される。また、回避対象が立木Fの場合に離間距離Lnが決定され、回避対象が地表の場合に離間距離Lnが決定される。すなわち、回避対象が鉄塔、立木および地表の何れの場合であっても、離間距離Lnが決定される。
【0051】
なお、電磁界を発生させない全ての回避対象について、共通の離間距離Lが決定される構成としてもよい。また、電磁界を発生させない回避対象について、相違する離間距離Lが決定され得る構成としてもよい。例えば、鉄塔Tの頂上付近は、地表付近と比較して、強風が吹き易いという事情がある。すなわち、無人航空機300が鉄塔Tの頂上付近を飛行している場合、地表付近を飛行している場合と比較して、風により流される距離が長くなり易い。以上の事情を考慮して、回避対象が鉄塔Tの場合、回避対象が地表の場合と比較して、長い離間距離Lが決定される構成としてもよい。
【0052】
図4(d)は、第2距離テーブルの概念図である。第2距離テーブルは、上述の第1距離テーブルと同様に、回避対象の種類と離間距離Lとを対応させる。上述した通り、回避対象が電磁界を発生させる場合、第2距離テーブルが参照される。
図4(d)の具体例では、電力線EA、電力線EBおよび電力線ECが回避対象として例示される。各電力線Eは供給される電力が相違する。すなわち、各電力線Eは、発生させる電磁界の強さが相違する。
【0053】
例えば、回避対象が電力線EAの場合に離間距離Laが決定される。以上の場合、電力線EAから離間距離La以下の領域が第2領域Rkb(規制領域Rkの一部分)として決定される。また、回避対象が電力線EBの場合に離間距離Lbが決定され、電力線EBら離間距離Lb以下の領域が第2領域Rkbとして決定される。同様に、回避対象が電力線ECの場合に離間距離Lcが決定され、電力線ECら離間距離Lc以下の領域が第2領域Rkbとして決定される。以上の通り、電力線Eが発生させる電磁界の強さに応じて、離間距離Lが可変に決定される。
【0054】
電力線EAの離間距離Laは、電力線EAが発生させる電磁界による悪影響が無人航空機300に及ばない長さに設定される。具体的には、上述した通り、無人航空機300はセンサ部303を具備する。以上のセンサ部303は、強い電磁界が生じている領域では、正確な数値が検知されない不都合が生じ得る。また、無人航空機300の信号送受信部302は、強い電磁界が生じている領域では、正常に動作しない不都合が生じ得る。電力線Eからの距離が長い位置ほど、当該電力線Eによる電磁界の強さは弱くなる。離間距離Laは、電力線EAが発生させる電磁界により上述の不都合が生じ難い(実質的に生じない場合を含む)長さに設定される。
【0055】
同様に、電力線EBの離間距離Lbは、電力線EBが発生させる電磁界による悪影響が無人航空機300に及ばない長さに設定され、電力線ECの離間距離Lcは、電力線ECが発生させる電磁界による悪影響が無人航空機300に及ばない長さに設定される。
【0056】
ところで、電力線EA、電力線EB、電力線ECの順に発生させる電磁界が強い構成を想定する。以上の構成では、離間距離Laおよび離間距離Lbより離間距離Lcが長くなる。以上の構成において、仮に、回避対象が電力線EA、電力線EBおよび電力線ECの何れの場合であっても、離間距離Lcが一律に決定される構成(以下「対比例」という)を想定する。以上の対比例であっても、電力線EA、電力線EBおよび電力線ECが発生させる電磁界の悪影響が無人航空機300に及ぶという不都合は抑制される。
【0057】
ただし、無人航空機300と電力線Eとの離間距離Lが長くなる程、無人航空機300により撮影される電力線Eの画像が不鮮明になるという不都合が顕在化し易くなる。以上の事情を考慮して、本実施形態では、電力線Eが発生させる電磁界の悪影響を受けない最小の離間距離Lが当該電力線Eの種類に応じて可変に決定される構成とした。以上の構成によれば、上述の不都合が抑制される。
【0058】
なお、正常に動作可能な電磁界の強さは、無人航空機の種類に応じて変化する。したがって、無人航空機の種類に応じて電力線の離間距離Lが可変に設定される構成が好適である。例えば、第2距離テーブルを無人航空機の種類毎に設け、無人航空機の種類に応じて参照する第2距離テーブルを変更する構成が考えられる。また、回避対象との衝突を回避するために確保すべき離間距離Lは、例えば、無人航空機の大きさ等によって変化し得る。以上の事情を考慮して、回避対象が電磁界を発生させない場合に参照される第1距離テーブルを、無人航空機毎に複数種類設けてもよい。
【0059】
また、電力線Eの電磁界の強さが比較的弱い場合、当該電磁界の悪影響が及ばない離間距離Lより、当該電力線Eとの衝突を避けるために要する離間距離Lが長くなる場合がある。以上の電力線Eについては、当該電力線Eとの衝突を避けるために要する離間距離Lから規制領域Rkが決定される構成が好適である。
【0060】
図3に説明を戻す。情報処理装置100の規制領域決定部105は、上述の第1領域決定部103が決定した第1領域Rkaおよび第2領域決定部104が決定した第2領域Rkbに応じて、規制領域Rkを決定する。具体的には、規制領域決定部105は、第1領域Rkaおよび第2領域Rkbの何れか一方に含まれる領域、および、第1領域Rkaおよび第2領域Rkbの双方に含まれる領域を規制領域Rkに決定する(後述の
図5(c)参照)。
【0061】
推奨領域決定部106(本発明の「情報生成手段」の一例)は、規制領域決定部105が決定した規制領域Rkに応じて、推奨領域Rsを決定する。具体的には、無人航空機300に設けられた撮影装置(カメラ)により巡視対象を撮影可能な領域のうち規制領域Rk外の領域を推奨領域Rsとして決定する。本実施形態では、規制領域Rkの外側の領域のうち当該規制領域Rkの外縁から予め定められた距離Ls以下の領域が推奨領域Rsに決定される(後述の
図5(c)参照)。
【0062】
推奨領域決定部106により決定された推奨領域Rsを特定可能な推奨領域情報が生成され、当該推奨領域情報が無人航空機300に記憶される。なお、推奨領域情報が地上制御装置400に記憶される構成としてもよい。以上の構成では、無人航空機300は、現時点での座標、移動方向および加速度をリアルタイムで地上制御装置400へ送信する。地上制御装置400は、無人航空機300からの情報に基づいて、無人航空機300が推奨領域Rsを逸脱するか否かを判定する。無人航空機300が推奨領域Rsを逸脱する場合、地上制御装置400は、無人航空機300の移動を停止するコントロール信号を送信すると共に、表示装置401に警告を表示する。
【0063】
以下において、
図5(a-1)、
図5(a-2)、
図5(b-1)、
図5(b-2)および
図5(c)を用いて、規制領域Rkおよび推奨領域Rsの具体例を説明する。
【0064】
図5(a-1)は、鉄塔Tおよび電力線E(ジャンパー)の一部分を示す図である。
図5(a-1)の具体例は、電力線Eの延線方向と垂直であり、且つ、水平方向と平行な方向(以下「Y軸方向」という)から見た場合を想定する。また、
図5(a-2)は、
図5(a-1)に示す鉄塔Tおよび電力線Eを鉛直方向下向き(以下「Z軸方向」という)に見た場合を想定する。以下において、Z軸方向およびY軸方向の双方と垂直な方向をX軸方向という。
【0065】
図5(b-1)は、上述の
図5(a-1)および
図5(a-2)に示す具体例における、第1領域Rka(規制領域Rkの一部分)を説明するための図である。
図5(b-1)は、上述の
図5(a-2)と同様に、鉄塔Tおよび電力線EをZ軸方向へ見た図である。上述した通り、第1領域Rkaは、回避対象(
図5(b-1)の例では鉄塔T)から離間距離Ln以下の領域である。
図5(b-1)では、第1領域Rkaを網掛けで示し、第1領域Rkaの外縁を破線で示す。
【0066】
図5(b-2)は、上述の
図5(b-1)に示す具体例における、第2領域Rkb(規制領域Rkの他の一部分)を説明するための図である。
図5(b-2)は、上述の
図5(a-2)および
図5(b-1)と同様に、鉄塔Tおよび電力線EをZ軸方向へ見た図である。上述した通り、第2領域Rkbは、回避対象(
図5(b-2)の例では電力線E)から離間距離L(a、b、c)以下の領域である。
【0067】
図5(b-2)では、第2領域Rkbを網掛けで示し、第2領域Rkbの外縁を破線で示す。上述した通り、電力線Eの離間領域Lは、電力線Eの種類(a、b、c)(電力線Eに供給される電力)に応じて可変に決定される。以上の構成は、電力線Eの種類に応じて第2領域Rkbの広さが変化するとも換言される。
【0068】
図5(c)は、上述の
図5(a-1)および
図5(a-2)に示す具体例における、規制領域Rk(Rka+Rkb)および推奨領域Rsを説明するための図である。
図5(c)は、上述の
図5(a-2)、
図5(b-1)および
図5(b-2)と同様に、鉄塔Tおよび電力線EをZ軸方向へ見た図である。
図5(c)では、規制領域Rkを薄い網掛けで示し、推奨領域Rsを濃い網掛けで示す。
【0069】
上述した通り、規制領域Rkは、第1領域Rkaおよび第2領域Rkbの何れか一方に含まれる領域、および、第1領域Rkaおよび第2領域Rkbの双方に含まれる領域である。また、制領域Rkの外側の領域のうち当該規制領域Rkの外縁から予め定められた距離Ls以下の領域が推奨領域Rsに決定される。
【0070】
例えば、
図5(c)の具体例において、位置P1を飛行する無人航空機300を位置P0(観測点)の操縦者が操縦する場合を想定する。以上の場合、電力線Eおよび鉄塔Tにより、無人航空機300が遮蔽され、無人航空機300と電力線Eとの距離が把握し難くなる。したがって、仮に規制領域Rkが設けられない構成(以下「対比例」という)では、操縦者によっては、
図5(c)の数字「1」を付した矢印の方向へ無人航空機300を移動させて、無人航空機300を電力線Eに衝突させる不都合が生じ得る。
【0071】
本実施形態によれば、推奨領域Rsから逸脱して規制領域Rkへ無人航空機300が進入する場合、無人航空機300の移動が停止される(その場でホバリングする)。したがって、上述の対比例と比較して、無人航空機300と電力線Eとが衝突する不都合が抑制される。また、規制領域Rkへ無人航空機300が進入する場合、地上制御装置400に警告が表示されるため、上述の不都合が抑制されるという効果は格別に顕著である。
【0072】
また、上述の対比例では、操縦者によっては、
図5(c)の数字「2」を付した矢印の方向へ無人航空機300を移動させて、無人航空機300と電力線Eとの衝突を回避する場合がある。以上の場合、電力線Eと無人航空機300との距離が過剰に長くなり、無人航空機300のカメラで電力線Eが鮮明に撮影できない不都合が生じ得る。
【0073】
本実施形態によれば、推奨領域Rsから逸脱する場合、規制領域Rkへ無人航空機300が進入しない場合であっても、無人航空機300の移動が停止される。以上の場合、電力線Eとの距離が過剰に長くなる前に、無人航空機300の移動が停止する。したがって、上述の対比例と比較して、回避対象が鮮明に撮影できないという不都合が抑制される。また、以上の場合、地上制御装置400に警告が表示されるため、上述の不都合が抑制されるという効果は格別に顕著である。
【0074】
なお、推奨領域Rsから逸脱する場合であって、無人航空機300が規制領域Rkへ進入する場合(数字「1」の矢印の方向へ移動する場合)と規制領域Rkへ進入しない場合(数字「2」の矢印の方向へ移動する場合)とで、無人航空機300の動作を相違させてもよい。例えば、推奨領域Rsから逸脱するが規制領域Rkへ進入しない場合、無人航空機300をホバリングさせて停止し、規制領域Rkへ進入する場合、無人航空機300を規制領域Rkとは逆側(推奨領域Rsの中心側)へ移動(後退)させてもよい。また、無人航空機300が規制領域Rkへ進入する場合と規制領域Rkへ進入しない場合とで、地上制御装置400に表示される警告の内容を相違させてもよい。
【0075】
図5(c)の具体例に示す通り、電力線E間の距離が比較的広い場合、または、電力線Eが発生する電磁界が比較的弱い場合(離間距離Lが比較的短い場合)、一方の電力線Eと他方の電力線との間(
図5(c)の位置P2が含まれる領域)に推奨領域Rsが設けられる。
図5(c)の位置P2からは、
図5(c)の数字「3」が付された矢印の方向から鉄塔Tが撮影可能である。以上の方向から鉄塔Tを撮影することは、例えば、上述の位置P1からは困難である。また、位置P2からは、
図5(c)の数字「4」が付された矢印の方向から電力線Eが撮影可能である。
【0076】
仮に、規制領域Rk(推奨領域Rs)が設けられない構成では、各電力線Eの間の領域(上述の位置P2)を、双方の電力線Eを回避させながら無人航空機300に飛行させるのは、高度な操縦技術を要する。本実施形態では、規制領域Rkが設けられるため、比較的経験が浅い操縦者であっても、各電力線Eの間の領域を、双方の電力線を回避させながら無人航空機300に飛行させることが出来るという利点がある。
【0077】
また、例えば
図5(c)の具体例に示す通り、比較的大きな鉄塔T(鉄柱間の間隔が広い鉄塔)では、鉄塔Tの内部(
図5(c)の位置P3を含む領域)に推奨領域Rsが設けられる。位置P3からは、
図5(c)の数字「5」が付された矢印の方向から鉄塔Tが撮影可能である。以上の方向から鉄塔Tを撮影することは、例えば、上述の位置P1からは困難である。
【0078】
仮に、規制領域Rk(推奨領域Rs)が設けられない構成では、鉄塔Tの内部(上述の位置P2)を無人航空機300に飛行させるのは、高度な操縦技術を要する。本実施形態では、規制領域Rkが設けられるため、比較的経験が浅い操縦者であっても、鉄塔Tの内部を無人航空機300に飛行させることが出来るという利点がある。
【0079】
なお、本実施形態の推奨領域情報で特定される推奨領域Rsを表示装置に表示可能な構成としてもよい。例えば、空間情報から得られた巡視領域の3次元画像において、推奨領域Rsに対応する領域を他の領域と区別可能な色彩で表示する構成が考えられる。また、推奨領域Rsに加え規制領域Rkが表示装置に表示可能な構成としてもよい。
【0080】
推奨領域Rsを表示する構成において、推奨領域Rsを表示する表示装置は適宜に変更できる。例えば、地上制御装置400に設けられたディスプレイに表示する構成としてもよい。以上の構成では、推奨領域Rsに加え、無人航空機300の現在地が3次元画像に表示される構成が好適である。無人航空機300の操縦者は、ディスプレイに表示された推奨領域Rsと無人航空機300との位置を確認しながら、無人航空機300を操縦することが出来る。
【0081】
図6は、本実施形態のシステムシーケンス図である。
図6に示す通り、情報処理装置100(巡視領域取得部101)は、巡視領域取得処理(S1)を実行する。巡視領域取得処理では、推奨領域情報を生成する対象となる巡視領域を特定可能な信号が情報処理装置100から地図サーバ装置200へ出力される。地図サーバ装置200は、以上の信号が入力されると、当該信号から特定される巡視領域の空間情報を情報処理装置100へ出力する(S2)。
【0082】
情報処理装置100(対象特定部102)は、地図サーバ装置200から空間情報が入力されると、対象情報生成処理(S3)を実行する。対象情報生成処理では、
図4(a)で示した対象情報が生成される。
【0083】
具体的には、対象情報生成処理が開始されると、地図サーバ装置200から取得した空間情報が所定の表示装置に表示される。以上の場合、巡視対象(鉄塔T等)を含む各種の回避対象の画像(点群)が表示される。操作者は、例えば、操作部(マウス等のポインティングデバイス)を操作して、表示装置に表示された点群を回避対象毎に選択する。以上の操作により、一の回避対象を構成する点群に同一のグループIDが付与される。また、操作者は、回避対象の各々について、当該回避対象の種類および撮影の要否を入力する操作をする。以上の各操作により、地図サーバ装置200から取得した空間情報の対象情報が生成される。
【0084】
対象情報生成処理を実行した後に、情報処理装置100(第1領域決定部103)は、第1領域決定処理(S4)を実行する。第1領域決定処理では、電磁界を発生させない回避対象(鉄塔T等)について、離間距離Lを決定する。具体的には、上述の第1距離テーブル(
図4(c)参照)を用いて、各回避対象の離隔距離Lを決定する。また、第1領域決定処理では、回避対象から離隔距離Lまでの領域を第1領域Rkaとして決定する。具体的には、回避対象から離隔距離Lまでの領域の座標が第1領域Rkaの座標として記憶される。
【0085】
第1領域決定処理を実行した後に、情報処理装置100(第2領域決定部104)は、第2領域決定処理(S5)を実行する。第2領域決定処理では、電磁界を発生させる回避対象(電力線E等)について、離間距離Lを決定する。具体的には、上述の第2距離テーブル(
図4(d)参照)を用いて、各回避対象の離隔距離Lを決定する。また、第2領域決定処理では、回避対象から離隔距離Lまでの領域を第2領域Rkbとして決定する。具体的には、回避対象から離隔距離Lまでの領域の座標が第2領域Rkbの座標として記憶される。
【0086】
第2領域決定処理を実行した後に、情報処理装置100(規制領域決定部105)は、規制領域決定処理(S6)を実行する。規制領域決定処理では、上述の第1領域決定処理で決定した第1領域Rkaおよび第2領域決定処理で決定した第2領域Rkbから規制領域Rkを決定する。具体的には、巡視領域(空間情報)の座標のうち、第1領域Rkaの座標および第2領域Rkbの座標の双方を規制領域Rkの座標として記憶する。
【0087】
規制領域決定処理を実行した後に、情報処理装置100(推奨領域決定部106)は、推奨領域決定処理(S7)を実行する。推奨領域決定処理では、上述の規制領域決定処理で決定した規制領域Rkから推奨領域を決定する。具体的には、規制領域Rkの外縁から当該規制領域Rkの外側方向へ離間距離Ls以下の領域を推奨領域として決定する。また、情報処理装置100は、推奨領域の座標を特定可能な推奨領域情報を生成する。
【0088】
情報処理装置100により生成された推奨領域情報は、無人航空機300に入力される(S8)。無人航空機300は、記憶処理(S9)を実行し、推奨領域情報を記憶する。なお、推奨領域情報に加え、規制領域Rkの座標を特定可能な情報が無人航空機300に記憶される構成としてもよい。
【0089】
無人航空機300は、巡視対象を巡視する期間(飛行期間)において、逸脱監視処理(S10)を実行する。逸脱監視処理では、現時点での無人航空機300の座標、進行方向および加速度から、推奨領域Rsを逸脱するか否かが判断される。
【0090】
なお、推奨領域Rsを逸脱するか否かを、現時点での無人航空機300の座標のみから判断する構成としてもよい。例えば、現時点での無人航空機300の座標が、推奨領域Rsの外縁付近の座標に達した場合、推奨領域Rsを逸脱すると判断される構成としてもよい。
【0091】
推奨領域Rsを逸脱すると判断した場合、無人航空機300は、緊急動作処理(S11)を実行する。緊急動作処理では、無人航空機300の移動が停止される。なお、緊急動作処理が実行された場合、予め定められた契機が成立するまで、無人航空機300を移動が禁止される。
【0092】
緊急動作処理を実行した後に、情報処理装置100は、警告表示信号を地上制御装置400へ送信する。地上制御装置400は、警告表示信号を受信した場合、警告表示処理(S14)を実行する。警告表示処理では、地上制御装置400の表示装置401に警告が表示される。なお、無人航空機300が推奨領域を逸脱した旨を報知する構成は、上述の例に限定されない。例えば、地上制御装置400にスピーカーを設け、無人航空機300が推奨領域を逸脱した場合、当該スピーカーから警告音が出力される構成としてもよい。
【0093】
<本実施形態の態様例の作用、効果のまとめ>
<第1態様>
本態様に係る情報処理装置は、巡視対象(鉄塔T等)を含む複数種類の回避対象を無人航空機(300)に回避させつつ、無人航空機に設けられた撮影装置に巡視対象を撮影させるため情報を生成する情報処理装置(100)であって、回避対象までの距離が特定値(離間距離L)以下の領域を規制領域(Rk)として決定可能な規制領域決定手(規制領域決定部105)と、規制領域決定手段が決定した規制領域の外側を、無人航空機に飛行させるための情報(推奨領域情報)を生成する情報生成手段(推奨領域決定部106)とを具備し、特定値は回避対象の種類に応じて可変であることを特徴とする。以上の本態様によれば、回避対象の種類に応じて特定値が可変にできるため、例えば、回避対象の種類によらず特定値が一定の構成と比較して、回避対象からドローンまでの距離を適当に設定し易くなる。
【0094】
<第2態様>
本態様に係る情報処理装置は、規制領域決定手段は、回避対象(電力線EA、電力線EB、電力線EC)が電磁界を発生させる場合、当該電磁界の強さが大きいほど特定値が大きくなる様に、規制領域を決定可能である。以上の本態様によれば、回避対象からドローンまでの距離を適当に設定し易くなるという効果は格別に顕著である。
【0095】
<第3態様>
本態様に係る情報処理装置は、規制領域決定手段は、回避対象(鉄塔、立木)が電磁界を発生させない場合、回避対象までの距離が予め定められた値以下の領域を規制領域として決定可能である。以上の本態様によれば、回避対象からドローンまでの距離を適当に設定し易くなるという効果は格別に顕著である。
【0096】
<第4態様>
本態様に係る情報処理装置は、回避対象に対応する複数種類の特定値を予め記憶する特定値記憶手段を具備し、規制領域決定手段は、特定値記憶手段が記憶する特定値から回避対象に対応する特定値を決定し、当該回避対象の規制領域を当該特定値に基づいて決定する。以上の本態様によれば、例えば、回避対象の電磁力から計算処理により特定値が算出される構成と比較して、情報処理装置の処理負担が軽減されるとうい効果が奏せられる。
【0097】
<第5態様>
本態様に係る情報処理システムは、上述の第1態様から第4態様の何れかの情報処理装置と、無人航空機が規制領域へ進入する場合、予め定められた警告を実行する警告手段(地上制御装置400のディスプレイ)とを具備する。以上の本態様によれば、無人航空機が進入することが報知される。
【0098】
<第6態様>
本態様に係る情報処理システムは、本態様に係る情報処理装置は、上述の第1態様から第4態様の何れかの情報処理装置と、無人航空機が規制領域へ進入する場合、無人航空機の規制領域側への移動を停止する移動停止手段(無人航空機のCPU等)とを具備する。以上の本態様によれば、無人航空機が回避対象に衝突する不都合を防止し易くなる。
【0099】
<第7態様>
本態様に係る情報処理装置の制御方法は、巡視対象を含む複数種類の回避対象を無人航空機に回避させつつ、無人航空機に設けられた撮影装置により巡視対象を撮影させるための情報を生成する情報処理装置の制御方法であって、回避対象までの距離が特定値以下の領域を、無人航空機の進入が制限される規制領域として決定可能なステップと、規制領域決定手段が決定した規制領域外の領域を無人航空機に飛行させるための情報を生成するステップとを具備し、特定値は回避対象の種類に応じて可変であることを特徴とする。以上の本態様によれば、上述の第1態様と同様な効果が奏せられる。
【符号の説明】
【0100】
100…情報処理装置、101…巡視領域取得部、102…対象特定部、103…第1領域決定部、104…第2領域決定部、105…規制領域決定部、106…推奨領域決定部、200…地図サーバ装置、201…記憶部、300…無人航空機、301…記憶部、302…信号送受信部、303…センサ部、304…撮影制御部、400…地上制御装置、401…表示装置、402…信号送受信部。