(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】不整地走行用のタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/03 20060101AFI20230314BHJP
B60C 11/13 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
B60C11/03 300B
B60C11/03 Z
B60C11/03 D
B60C11/13 B
B60C11/13 C
(21)【出願番号】P 2019046228
(22)【出願日】2019-03-13
【審査請求日】2022-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】前田 敬之
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】特公昭50-019801(JP,B1)
【文献】特開昭57-138403(JP,A)
【文献】特開昭54-038005(JP,A)
【文献】特開平06-344727(JP,A)
【文献】特開平01-317809(JP,A)
【文献】特開平01-022601(JP,A)
【文献】特開2015-030413(JP,A)
【文献】特開2018-127199(JP,A)
【文献】特開2012-011981(JP,A)
【文献】特開2013-063701(JP,A)
【文献】特公昭47-025646(JP,B1)
【文献】特開2015-089796(JP,A)
【文献】特開2016-011027(JP,A)
【文献】特開2017-128231(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部を有する不整地走行用のタイヤであって、
前記トレッド部には、
タイヤ軸方向の全振幅を有してタイヤ周方向にジグザグ状に連続して延びる少なくとも3本の主溝と、前記主溝で区分された少なくとも2つの陸部とを含み、
前記主溝は、互いに、ジグザグ位相を揃えて配置されており、
前記陸部は、前記主溝の一つを介して隣接する第1陸部と第2陸部とを含み、
前記第1陸部は、タイヤ軸方向に対して第1方向に傾斜した複数の第1傾斜溝により、複数の第1ブロックに区分されており、
前記第2陸部は、タイヤ軸方向に対して前記第1方向とは反対側の方向である第2方向に傾斜した複数の第2傾斜溝により、複数の第2ブロックに区分されており、
前記第1ブロックのそれぞれは、前記第2ブロックのそれぞれと、タイヤ周方向に重なるように配置され
、
前記主溝のそれぞれは、前記第1方向に傾斜する第1傾斜要素と、前記第2方向に傾斜する第2傾斜要素と、第1ピークと、第2ピークとを含み、
前記第1ピークから前記第2ピークまでのタイヤ軸方向の距離が前記全振幅であり、
前記複数の第1傾斜溝は、前記主溝の前記第1ピーク及び前記第2ピークを含まないように、タイヤ軸方向に隣接する前記主溝の前記第2傾斜要素を互いに連通する、
不整地走行用のタイヤ。
【請求項2】
前記複数の第2傾斜溝は、タイヤ軸方向に隣接する前記主溝の前記第1傾斜要素を互いに連通する、請求項1記載の不整地走行用のタイヤ。
【請求項3】
前記第1傾斜溝は、前記第1傾斜要素と平行に延びている、請求項2に記載の不整地走行用のタイヤ。
【請求項4】
前記第2傾斜溝は、前記第2傾斜要素と平行に延びている、請求項2又は3に記載の不整地走行用のタイヤ。
【請求項5】
前記第1傾斜溝は、タイヤ軸方向に対して30~60度の角度で傾斜している、請求項2ないし4のいずれかに記載の不整地走行用のタイヤ。
【請求項6】
前記第2傾斜溝は、タイヤ軸方向に対して30~60度の角度で傾斜している、請求項2ないし5のいずれかに記載の不整地走行用のタイヤ。
【請求項7】
前記第1傾斜溝のタイヤ軸方向に対する角度は、前記第2傾斜溝のタイヤ軸方向に対する角度と等しい、請求項1ないし6のいずれかに記載の不整地走行用のタイヤ。
【請求項8】
前記第1陸部には、前記第1陸部を完全に横切る溝として、前記第1傾斜溝のみが設けられている、請求項1ないし7のいずれかに記載の不整地走行用のタイヤ。
【請求項9】
前記第2陸部には、前記第2陸部を完全に横切る溝として、前記第2傾斜溝のみが設けられている、請求項1ないし8のいずれかに記載の不整地走行用のタイヤ。
【請求項10】
前記第1ブロックの踏面の面積は、前記第2ブロックの踏面の面積の95~105%である、請求項1ないし9のいずれかに記載の不整地走行用のタイヤ。
【請求項11】
前記第1ブロックの踏面の輪郭形状は、タイヤ周方向線に対して、前記第2ブロックの踏面の輪郭形状と線対称である、請求項1ないし10のいずれかに記載の不整地走行用のタイヤ。
【請求項12】
前記第1ブロックは、タイヤ軸方向に対して前記第1方向に傾斜する本体と、タイヤ軸方向に対して前記第2方向に傾斜する一対の端部分とを含む、請求項1ないし11のいずれかに記載の不整地走行用のタイヤ。
【請求項13】
前記第2ブロックは、タイヤ軸方向に対して前記第2方向に傾斜する本体と、タイヤ軸方向に対して前記第1方向に傾斜する一対の端部分とを含む、請求項1ないし12のいずれかに記載の不整地走行用のタイヤ。
【請求項14】
前記主溝のそれぞれは、前記第1傾斜要素と前記第2傾斜要素との間に配置されてタイヤ周方向に沿って延びる周方向部を含む、請求項2ないし6のいずれかに記載の不整地走行用のタイヤ。
【請求項15】
前記周方向部は、前記主溝のジグザグの1周期の20%以下のタイヤ周方向の長さを有する、請求項14に記載の不整地走行用のタイヤ。
【請求項16】
前記周方向部の溝幅は、前記第1傾斜要素の溝幅及び前記第2傾斜要素の溝幅よりも大きい、請求項14又は15に記載の不整地走行用のタイヤ。
【請求項17】
前記主溝の溝幅が4.5~8.5mmである、請求項1ないし16のいずれかに記載の不整地走行用のタイヤ。
【請求項18】
前記第1傾斜溝及び前記第2傾斜溝の溝幅が4.5~8.5mmである、請求項1ないし17のいずれかに記載の不整地走行用のタイヤ。
【請求項19】
前記トレッド部には、前記主溝が5本以上設けられており、かつ、前記第1陸部と前記第2陸部とがタイヤ軸方向に交互に並んで4列以上形成されている、請求項1ないし18のいずれかに記載の不整地走行用のタイヤ。
【請求項20】
ランド比が60~75%である、請求項1ないし19のいずれかに記載の不整地走行用のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダートトライアル等に好適に使用される不整地走行用のタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、不整地走行用の空気入りタイヤが記載されている。この空気入りタイヤのトレッド部には、タイヤ軸方向に対して一方側に傾斜する複数本の傾斜溝と、タイヤ周方向に隣り合う前記傾斜溝間を継ぎかつタイヤ軸方向に並ぶ複数本の継ぎ溝とが設けられている。これにより、前記空気入りタイヤの前記傾斜溝の間には、前記傾斜溝に沿って複数個のブロックが配列されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の空気入りタイヤは、ダートトライアル等の不整地路面(以下、「ダート路」ということがある。)において、十分なトラクション及び横グリップを発揮することができる。一方で、上記空気入りタイヤは、走行中のトラクションや横グリップの変化が比較的大きく、車両のコントロール性については改善の余地があった。
【0005】
特に、上述のトラクションや横グリップの変化は、ダートトライアルの競技の進行に伴って路面上の砂利が除去された硬質のダート路で顕著に現れ、車両のコントロールを困難にするという傾向があった。
【0006】
本発明は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、硬質のダート路において、十分なトラクション及び横グリップを発揮しつつ、コントロール性にも優れた不整地走行用のタイヤを提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、トレッド部を有する不整地走行用のタイヤであって、前記トレッド部には、タイヤ周方向にジグザグ状に連続して延びる少なくとも3本の主溝と、前記主溝で区分された少なくとも2つの陸部とを含み、前記主溝は、互いに、ジグザグ位相を揃えて配置されており、前記陸部は、前記主溝の一つを介して隣接する第1陸部と第2陸部とを含み、前記第1陸部は、タイヤ軸方向に対して第1方向に傾斜した複数の第1傾斜溝により、複数の第1ブロックに区分されており、前記第2陸部は、タイヤ軸方向に対して前記第1方向とは反対側の方向である第2方向に傾斜した複数の第2傾斜溝により、複数の第2ブロックに区分されており、前記第1ブロックのそれぞれは、前記第2ブロックのそれぞれと、タイヤ周方向に重なるように配置されている、不整地走行用のタイヤである。
【0008】
本発明の他の態様では、前記主溝のそれぞれは、前記第1方向に傾斜する第1傾斜要素と、前記第2方向に傾斜する第2傾斜要素とを含み、前記複数の第1傾斜溝は、タイヤ軸方向に隣接する前記主溝の前記第2傾斜要素を互いに連通し、前記複数の第2傾斜溝は、タイヤ軸方向に隣接する前記主溝の前記第1傾斜要素を互いに連通することができる。
【0009】
本発明の他の態様では、前記第1傾斜溝は、前記第1傾斜要素と平行に延びても良い。
【0010】
本発明の他の態様では、前記第2傾斜溝は、前記第2傾斜要素と平行に延びても良い。
【0011】
本発明の他の態様では、前記第1傾斜溝は、タイヤ軸方向に対して30~60度の角度で傾斜しても良い。
【0012】
本発明の他の態様では、前記第2傾斜溝は、タイヤ軸方向に対して30~60度の角度で傾斜しても良い。
【0013】
本発明の他の態様では、前記第1傾斜溝のタイヤ軸方向に対する角度は、前記第2傾斜溝のタイヤ軸方向に対する角度と等しくされても良い。
【0014】
本発明の他の態様では、前記第1陸部には、前記第1陸部を完全に横切る溝として、前記第1傾斜溝のみが設けられても良い。
【0015】
本発明の他の態様では、前記第2陸部には、前記第2陸部を完全に横切る溝として、前記第2傾斜溝のみが設けられても良い。
【0016】
本発明の他の態様では、前記第1ブロックの踏面の面積は、前記第2ブロックの踏面の面積の95~105%とされても良い。
【0017】
本発明の他の態様では、前記第1ブロックの踏面の輪郭形状は、タイヤ周方向線に対して、前記第2ブロックの踏面の輪郭形状と線対称とされても良い。
【0018】
本発明の他の態様では、前記第1ブロックは、タイヤ軸方向に対して前記第1方向に傾斜する本体と、タイヤ軸方向に対して前記第2方向に傾斜する一対の端部分とを含むように構成されても良い。
【0019】
本発明の他の態様では、前記第2ブロックは、タイヤ軸方向に対して前記第2方向に傾斜する本体と、タイヤ軸方向に対して前記第1方向に傾斜する一対の端部分とを含むように構成されても良い。
【0020】
本発明の他の態様では、前記主溝のそれぞれは、前記第1傾斜要素と前記第2傾斜要素との間に配置されてタイヤ周方向に沿って延びる周方向部を含むように構成されても良い。
【0021】
本発明の他の態様では、前記周方向部は、前記主溝のジグザグの1周期の20%以下のタイヤ周方向の長さを有しても良い。
【0022】
本発明の他の態様では、前記周方向部の溝幅は、前記第1傾斜要素の溝幅及び前記第2傾斜要素の溝幅よりも大きくされても良い。
【0023】
本発明の他の態様では、前記主溝の溝幅が4.5~8.5mmとされても良い。
【0024】
本発明の他の態様では、前記第1傾斜溝及び前記第2傾斜溝の溝幅が4.5~8.5mmとされても良い。
【0025】
本発明の他の態様では、前記トレッド部には、前記主溝が5本以上設けられており、かつ、前記第1陸部と前記第2陸部とがタイヤ軸方向に交互に並んで4列以上形成されても良い。
【0026】
本発明の他の態様では、ランド比が60~75%とされても良い。
【発明の効果】
【0027】
本発明の不整地走行用のタイヤでは、トレッド部に、タイヤ周方向にジグザグ状に連続して延びる少なくとも3本の主溝が設けられる。前記主溝は、互いに、ジグザグ位相を揃えて配置されている。ジグザグ位相が揃えられた3本以上の主溝は、硬質のダート路において、タイヤ周方向及びタイヤ軸方向に摩擦力をバランス良く発生させ、ひいては、優れたトラクション及び横グリップを発揮する。
【0028】
前記トレッド部において、第1陸部は、タイヤ軸方向に対して第1方向に傾斜した複数の第1傾斜溝により、複数の第1ブロックに区分され、第2陸部は、タイヤ軸方向に対して前記第1方向とは反対側の方向である第2方向に傾斜した複数の第2傾斜溝により、複数の第2ブロックに区分されている。したがって、第1陸部及び第2陸部は、様々な方向にエッジ成分を提供し、トラクションのみならず横グリップをも向上させる。
【0029】
さらに、前記第1傾斜溝及び前記第2傾斜溝は互いに逆向きに傾斜し、かつ、前記第1ブロックのそれぞれは、前記第2ブロックのそれぞれと、タイヤ周方向に重なるように配置される。これにより、前記第1傾斜溝及び前記第2傾斜溝が、前記主溝を介して一直線状に連続するような局部的な低剛性箇所の形成が抑制され、ひいては、走行中のトラクション及び横グリップ力の大きな変化が抑えられる。
【0030】
したがって、本発明の不整地走行用のタイヤは、硬質のダート路において、十分なトラクション及び横グリップを発揮しつつ、走行中のそれらの変化を小さく抑え、コントロール性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の一実施形態を示すトレッド部の展開図である。
【
図3】
図2の第1ブロック及び第2ブロックの拡大図である。
【
図4】本発明の他の実施形態を示すトレッド部の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。図面は、本発明を例示及び説明する目的で使用されるものであり、本発明は、図面に表された具体的な形態等に限定して解釈されるものではない。
【0033】
図1には、本実施形態の不整地走行用のタイヤ1のトレッド部2の展開図が示されている。本実施形態のタイヤ1は、ダートトライアルやラリー等のように、不整地を高速走行するために用いられる。
図1には、タイヤ1の内部構造等は示されていないが、本実施形態のタイヤ1は、例えば、トレッド剛性の高いラジアル構造が採用されても良い。
【0034】
図1に示されるように、トレッド部2には、タイヤ周方向にジグザグ状に連続して延びる少なくとも3本の主溝3と、これらの主溝3で区分された少なくとも2つの陸部とを含む。
図1では、理解を助けるために、代表的な3本の主溝3が薄く着色されている。
【0035】
図2には、
図1の要部拡大図が示される。
図2に示されるように、各主溝3は、第1方向に傾斜する第1傾斜要素3Aと、第2方向に傾斜する第2傾斜要素3Bとを含む。
図1及び2において、第1方向は右下がりとされ、第2方向は右上がりとされた態様が示されている。
【0036】
また、各主溝3は、タイヤ軸方向に全振幅Aを有し、かつ、タイヤ周方向に周期Lを有するジグザグ形状を有する。全振幅Aは、主溝3の第1ピークP1から第2ピークP2までのタイヤ軸方向の距離である。本実施形態では、各主溝3のジグザグ波形は、いずれも同一とされている。
【0037】
主溝3は、互いに、ジグザグ位相を揃えて配置されている。すなわち、各主溝3の第1ピークP1及び第2ピークP2は、いずれもタイヤ周方向で、同じ位置に現れる。ジグザグ位相が揃えられた3本以上の主溝3は、硬質のダート路において、タイヤ周方向及びタイヤ軸方向に摩擦力をバランス良く発生させ、ひいては、優れたトラクション及び横グリップを発揮することができる。
【0038】
上述の作用をより高めるために、第1傾斜要素3A及び第2傾斜要素3Bは、例えば、タイヤ軸方向に対して30~60度、好ましくは、35~55度、より好ましくは40~50度の角度θ1で傾斜するのが望ましい。また、主溝3の溝幅W1は、例えば、4.5~8.5mmの範囲であるのが望ましい。なお、溝幅は、測定部分の長手方向と直交する方向に測定される。
【0039】
陸部は、主溝3の一つを介して隣接する第1陸部11と第2陸部12とを含む。
【0040】
第1陸部11は、タイヤ軸方向に対して第1方向に傾斜した複数の第1傾斜溝21により、複数の第1ブロック31に区分されている。第2陸部12は、タイヤ軸方向に対して第1方向とは反対側の方向である第2方向に傾斜した複数の第2傾斜溝22により、複数の第2ブロック32に区分されている。このような第1陸部11及び第2陸部12は、様々な方向にエッジ成分を提供し、トラクションのみならず横グリップをも向上させることができる。
【0041】
好ましい態様では、第1傾斜溝21及び第2傾斜溝22の溝幅W2は、4.5~8.5mmの範囲が望ましい。
【0042】
第1ブロック31のそれぞれは、第2ブロック32のそれぞれと、タイヤ周方向に重なるように配置されている。すなわち、
図3に示されるように、第1ブロック31のそれぞれは、第2ブロック32のそれぞれと、タイヤ周方向の重なり長さDを有する。
【0043】
種々の実験の結果、硬質のダート路において、走行時のグリップ等の変化を極力小さくするためには、トレッド部2に、局部的に剛性が低い部分(例えば、横溝等)をタイヤ軸方向に長く連続させないことが重要であることが判明した。本実施形態では、第1傾斜溝21及び第2傾斜溝22の傾斜に向きに加え、第1ブロック31のそれぞれが、第2ブロック32のそれぞれと、タイヤ周方向に重なるように配置される。これにより、
図2から明らかなように、第1傾斜溝21及び第2傾斜溝22が、主溝3を介して一直線状に連続するような局部的な低剛性箇所が形成されず、ひいては、走行中のトラクション及び横グリップ力の大きな変化を抑える。
【0044】
好ましい態様では、
図2に示されるように、第1傾斜溝21は、タイヤ軸方向に隣接する主溝3、3の第2傾斜要素3B同士を互いに連通しても良い。これにより、第1陸部11に、向きが異なるエッジをバランスよく提供することができる。本実施形態では、各第1傾斜溝21は、主溝3の第1ピークP1及び第2ピークP2を含まないように(すなわち、第1傾斜溝21の一部が、第1ピークP1及び第2ピークP2と直接連通しないように)、第2傾斜要素3Bに連通している態様が示される。
【0045】
好ましい態様では、第1傾斜溝21は、タイヤ軸方向に対して30~60度、好ましくは、35~55度、より好ましくは40~50度の角度θ2で傾斜しても良い。特に好ましくは、第1傾斜溝21は、主溝3の第1傾斜要素3Aと平行に延びても良い。これらの態様では、第1陸部11に、向きが異なるエッジを、さらにバランスよく提供することができ、硬質のダート路において、優れたトラクション及び横グリップを発揮することができる。
【0046】
好ましい態様では、第2傾斜溝22は、タイヤ軸方向に隣接する主溝3、3の第1傾斜要素3A同士を互いに連通しても良い。これにより、第2陸部12に、向きが異なるエッジをバランスよく提供することができる。本実施形態では、各第2傾斜溝22は、主溝3の第1ピークP1及び第2ピークP2を含まないように(すなわち、第2傾斜溝22の一部が、第1ピークP1及び第2ピークP2と直接連通しないように)、第1傾斜要素3Aに連通している態様が示される。
【0047】
好ましい態様では、第2傾斜溝22は、タイヤ軸方向に対して30~60度、好ましくは、35~55度、より好ましくは40~50度の角度θ3で傾斜しても良い。特に好ましくは、第2傾斜溝22は、主溝3の第2傾斜要素3Bと平行に延びても良い。これらの態様では、第2陸部12に、向きが異なるエッジをさらにバランスよく提供することができ、硬質のダート路において、優れたトラクション及び横グリップを発揮することができる。
【0048】
好ましい態様では、第1傾斜溝21のタイヤ軸方向に対する角度θ2は、(向きは逆であるが)第2傾斜溝22のタイヤ軸方向に対する角度θ3と等しくされても良い。これらの態様では、第1陸部11及び第2陸部12に、向きが異なるエッジをさらにバランスよく提供することができ、硬質のダート路において、さらに優れたトラクション及び横グリップを発揮することができる。
【0049】
好ましい態様として、第1陸部11には、第1陸部11を完全に横切る溝として、第1傾斜溝21のみが設けられている。これにより、各第1ブロック31は、タイヤ周方向に隣接する第1傾斜溝21、21間を連続して延びるジグザグブロックとして形成される。
【0050】
図3に示されるように、各第1ブロック31は、具体的には、タイヤ軸方向に対して第1方向(右下がり)に傾斜する本体40と、本体40の両端に連なり、かつ、タイヤ軸方向に対して第2方向に傾斜する一対の端部分41、41とを含んで構成されている。本体40は、端部分41に比して長く構成されており、十分に大きなタイヤ周方向剛性を備える。これは、高いトラクションを発揮するのに役立つ。また、各第1ブロック31は、本体40の両側に、端部分41が連続することで、高いねじり剛性を有する。これは、旋回時のブロック変形を抑制し、優れたコーナリング性能を提供する他、ブロック両端に生じがちな偏摩耗を効果的に抑制することができる。
【0051】
図2に示されるように、好ましい態様として、第2陸部12には、第2陸部12を完全に横切る溝として、第2傾斜溝22のみが設けられている。これにより、各第2ブロック32は、タイヤ周方向に隣接する第2傾斜溝22、22間を連続して延びるジグザグブロックとして形成される。
【0052】
図3に示されるように、各第2ブロック32の輪郭形状は、具体的には、各第1ブロック31の輪郭形状をタイヤ周方向線に対して反転させた線対称形状を有する。すなわち、各第2ブロック32は、タイヤ軸方向に対して第2方向(右上がり)に傾斜する本体50と、本体50の両端に連なり、かつ、タイヤ軸方向に対して第1方向に傾斜する一対の端部分51、51とを含んで構成されている。したがって、この態様の第2ブロック32も、第1ブロック31と同様、高いトラクション、優れたコーナリング性能及び優れた耐偏摩耗性能を発揮することができる。
【0053】
好ましい態様では、第1ブロック31は、踏面の面積重心Gを中心として180度回転させると、元の形状に重なるように構成される(二回対称)。これにより、タイヤ1の回転方向に関わらず、上記作用が発揮される。
【0054】
好ましい態様では、第1ブロック31の踏面の面積は、第2ブロック32の踏面の面積の95~105%(すなわち、実質的に同一)とされる。これにより、第1陸部11及び第2陸部12において、トレッド部2のブロック剛性が均一化し、ひいては、走行中のトラクションや横グリップの変化を小さく抑えることができる。
【0055】
図2に示されるように、好ましい態様では、第1傾斜溝21及び第2傾斜溝22の溝幅W2は、主溝3の溝幅W1と同一とされても良い。これにより、第1陸部11及び第2陸部12において、トレッド部2のブロック剛性が均一化し、ひいては、走行中のトラクションや横グリップの変化を小さく抑えることができる。
【0056】
好ましい態様では、主溝3のそれぞれは、第1傾斜要素3Aと第2傾斜要素3Bとの間に、タイヤ周方向に沿って延びる周方向部3Cを含んでも良い。このような周方向部3Cは、特に、硬質のダート路において、横グリップを高めるのに役立つ。一方、周方向部3Cの長さが大きくなると、特に直進走行時のトラクションが相対的に低下するおそれがある。したがって、タイヤ1のトラクションと横グリップとをバランスよく維持するために、周方向部3Cのタイヤ周方向の長さB(これは、溝のエッジで測定される最大長さである。)は、主溝3のジグザグの1周期Lの20%以下、より好ましくは18%以下とされる。
【0057】
好ましい態様では、周方向部3Cの溝幅W3は、第1傾斜要素3A及び第2傾斜要素3Bの溝幅よりも大きく形成されるのが望ましい。主溝3の第1ピークP1及び第2ピークP2には、各第1傾斜要素3A及び第2傾斜要素3B内の砂利等が寄せ集められる傾向があるが、周方向部3Cが相対的に大きい溝幅で構成されると、ダート路での土砂等の排出性が向上する。このような観点より、周方向部3Cの溝幅W3は、第1傾斜要素3Aの溝幅(これは、第2傾斜要素の溝幅と同様である。)の1.3倍以上、より好ましくは1.5倍以上とされる。
【0058】
図1に示されるように、好ましい態様では、トレッド部2には、主溝3が5本以上設けられ、かつ、第1陸部11と第2陸部12とがタイヤ軸方向に交互に並んで4列以上形成される。
図1の態様では、トレッド部2には、主溝3が7本設けられており、かつ、第1陸部11と第2陸部12とがタイヤ軸方向に交互に並んで6列形成されている。そして、トレッド部2の接地端E、E間は、本質的に、第1陸部11及び第2陸部12で形成されている。このような態様では、直進走行時、大きなトラクションを発揮するとともに、その変化をより小さく抑えることができる。
【0059】
好ましい態様では、ランド比が60~75%で構成されても良い。これにより、硬質のダート路において、より優れたトラクション及び横グリップを発揮することができる。本明細書において、ランド比は、トレッド接地端E、E間において、全ての溝を埋めた状態(すなわち、スリック状態)で計算される踏面の合計面積に対する実際の踏面の合計面積の割合として定義される。
【0060】
本明細書において、トレッド接地端Eは、正規荷重負荷状態でのトレッド接地面の最もタイヤ軸方向外側の位置として定められる。
【0061】
本明細書において、「正規荷重負荷状態」とは、タイヤ1が正規内圧で正規リムにリム組みされ、かつ、正規荷重を負荷して、キャンバー角0度で平面に接地させた状態をいう。
【0062】
本明細書において、「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば"Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。
【0063】
本明細書において、「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表"TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0064】
本明細書において、「正規荷重」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表"TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。
【0065】
図4には、本発明の他の実施形態が示されている。
図4のタイヤ100において、主溝3は、第1傾斜要素3Aと第2傾斜要素3Bとからなり、
図1に表されている周方向部3Cを有しないていない。この実施形態のタイヤ100は、
図1の実施形態に比べると、タイヤ周方向に沿ったエッジが少なくなるため、横グリップは相対的に低下するが、トラクションを高めることができる。
【0066】
以上、本発明の一実施形態が説明されたが、本発明は、種々の改造及び変形形態が可能であり、上述の例示の実施形態は、例示として示されているに過ぎない。したがって、本発明は、本明細書において開示された特定の実施形態に限定されるわけではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の思想に含まれる全ての改造例、均等例及び変形例を含むことが注意される。
【実施例】
【0067】
図1の基本パターンを有するサイズ205/65R15のタイヤ(実施例品)と、上記特許文献1のパターンを有する同サイズのタイヤ(
図5のパターン:比較例)について、トラクション性能、車両のコントロール性、横グリップ及びトラクションが評価された。なお、
図5の符号Cは、タイヤ赤道を意味している。また、ダート路において、タイムアタックを行い、ベストタイムが比較された。両タイヤの内部構造、ゴム配合及びランド比はいずれも68%に調整されており、パターンのみの違いを調べた。テスト方法は、次の通りである。
【0068】
車両のコントロール性能、横グリップ及びトラクション性能については、各テストタイヤを装着した四輪駆動車を硬質のダート路で走行させ、テストドライバーの官能により評価された。結果は、5が最高点、1が最低点の5段階評価で示されている。
テストの結果が表1に示される。
【0069】
【0070】
テストの結果、実施例のタイヤは、比較例に比べて、有意に各性能が向上しいることが確認できた。
【符号の説明】
【0071】
1、100 タイヤ
2 トレッド部
3 主溝
3A 第1傾斜要素
3B 第2傾斜要素
3C 周方向部
11 第1陸部
12 第2陸部
21 第1傾斜溝
22 第2傾斜溝
31 第1ブロック
32 第2ブロック
40、50 本体
41、51 端部分