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特許7243386冷暖房設備を有する室及び冷暖房設備の運転方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】冷暖房設備を有する室及び冷暖房設備の運転方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/76 20060101AFI20230314BHJP
   F24D 3/00 20220101ALI20230314BHJP
   E04F 15/18 20060101ALI20230314BHJP
   F24F 11/80 20180101ALN20230314BHJP
【FI】
E04B1/76 200Z
F24D3/00 E
F24D3/00 S
E04F15/18 Y
E04F15/18 Z
F24F11/80
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019066247
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020165176
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】513026399
【氏名又は名称】三菱ケミカルインフラテック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000167794
【氏名又は名称】広島ガス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】横山 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】横山 康晴
(72)【発明者】
【氏名】水馬 義輝
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 英男
【審査官】齋藤 卓司
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-059653(JP,A)
【文献】特開2016-205672(JP,A)
【文献】登録実用新案第3172272(JP,U)
【文献】木全貴大,パラフィンエマルション潜熱蓄熱材の蓄放熱特性に関する実験的研究,平成29年度修士論文,日本,三重大学大学院 工学研究科,2018年03月31日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/76
F24D 3/00
E04F 15/18
F24F 11/00
F24F 11/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調設備及び床暖房装置よりなる冷暖房設備を備えた室の該冷暖房設備を運転する方法であって、
該室の床を構成するフローリングの下面側かつ該床暖房装置の上面側に潜熱蓄熱材が設けられており、該潜熱蓄熱材は、高温相から低温相に相変態するときのピーク温度が20~40℃であり、
前記空調設備を設定温度22~28℃で冷房運転し、
前記フローリングの表面温度が該設定温度よりも1.0~4.0℃高い温度となるように、かつ日本建材試験センター規格DIN52614によって測定される模擬足熱流が-27.2~-6.4℃/m となるように前記床暖房装置を運転する
冷暖房設備の運転方法。
【請求項2】
前記潜熱蓄熱材は、パラフィン化合物を含む請求項1の冷暖房設備の運転方法
【請求項3】
前記潜熱蓄熱材は、さらに熱可塑性エラストマーを含む請求項2の冷暖房設備の運転方法
【請求項4】
前記潜熱蓄熱材は、ポリオール(a)、イソシアネート基を有する化合物(b)および脂肪酸エステル(c)を含む硬化性蓄熱組成物を含む請求項1の冷暖房設備の運転方法
【請求項5】
前記潜熱蓄熱材は、平面視において、室に敷設された床暖房装置の面積の40~100%の範囲に設けられていることを特徴とする請求項1~4のいずれかの冷暖房設備の運転方法
【請求項6】
前記床暖房装置は、温水が通水される温水パイプを有した床暖房パネルである請求項1~5のいずれかの冷暖房設備の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調設備(エアコン)と床暖房装置とからなる冷暖房設備を有する室に係り、詳しくは、床暖房装置を有する床のフローリングの下面側と床暖房装置との間に潜熱蓄熱材が配置されている室に関する。また、本発明はこの冷暖房設備の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空調設備(エアコン)を備えた室において、夏場に冷房運転すると、足元が冷えて冷感が感取されることがある。特許文献1には、床暖房を夏の冷房時にも作動させて足元を温めることが記載されている。
【0003】
特許文献2には、床暖房装置を有する床のフローリングの下面側と床暖房装置との間に潜熱蓄熱材を設けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平4-161729号公報
【文献】特開2018-59653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常の床暖房装置は、床を十分に昇温させるよう構成されているため、夏場に床暖房装置を作動させると、床温度が高くなりすぎ、冷え症でない人等には不快感が感取されると共に、空調設備の消費電力も徒に増加する。
【0006】
本発明は、夏場に空調設備を冷房運転したときに、大多数の人にとって足元が快適になり、しかも空調設備の消費電力増加も抑制される冷暖房設備を備えた室と、冷暖房設備の運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の要旨は、次の通りである。
[1] 空調設備及び床暖房装置よりなる冷暖房設備を備えた室であって、該室の床を構成するフローリングの下面側かつ該床暖房装置の上面側に潜熱蓄熱材が設けられている室において、該潜熱蓄熱材は、高温相から低温相に相変態するときのピーク温度が20~40℃であることを特徴とする冷暖房設備を備えた室。
【0008】
[2] 前記潜熱蓄熱材は、パラフィン化合物を含む[1]の冷暖房設備を備えた室。
[3] 前記潜熱蓄熱材は、さらに熱可塑性エラストマーを含む[2]の冷暖房設備を備えた室。
【0009】
[4] 前記潜熱蓄熱材は、ポリオール(a)、イソシアネート基を有する化合物(b)および脂肪酸エステル(c)を含む硬化性蓄熱組成物を含む[1]の冷暖房設備を備えた室。
【0010】
[5] 前記潜熱蓄熱材は、平面視において、室に敷設された床暖房装置の面積の40~100%の範囲に設けられていることを特徴とする[1]~[4]のいずれかの冷暖房設備を備えた室。
【0011】
[6] [1]~[5]のいずれかの冷暖房設備を備えた室の該冷暖房設備を運転する方法であって、前記空調設備を設定温度22~28℃で冷房運転し、前記フローリングの表面温度が該設定温度よりも0.5~5.0℃高い温度となるように前記床暖房装置を運転する
冷暖房設備の運転方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、空調設備を冷房運転した際に、フローリング表面温度が室内温度よりもごく僅かに高い温度となる。これにより、足元の冷えが防止される。
【0013】
床暖房により室内に供給される熱エネルギーは少量であり、空調設備の消費電力の増加は極めて少ない。
【0014】
本発明では、フローリングの下側に潜熱蓄熱材を配置しているので、フローリング表面温度を安定して適温に維持することができ、足元の暖まりの過不足がない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施の形態に係る室の模式的な立面図である。
図2】実施の形態に係る室の床の分解構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1,2を参照して実施の形態について説明する。
【0017】
図1の通り、室1の壁2の上部(又は天井)に空調設備としてのエアコン3が設置され、冷房及び暖房等が行われる。室1の床4は、床暖房パネル10とフローリング20と、フローリング20の裏面(下面)の凹部21に嵌合配置された潜熱蓄熱材30とで構成されている。
【0018】
床暖房パネル10は、発泡樹脂成形体よりなるパネル本体11と、該パネル本体11の上面に設けられた溝12と、該溝12内に配置された温水パイプ13と、温水パイプ13の熱をパネル本体11の上面側に伝達するための略逆Ω字形状の伝熱部材14と、パネル本体11の上面を覆うように設けられる均熱シート15等を備えている。温水パイプ13に給湯器40からの温水が循環往管41と循環戻管42とを介して循環通水されることにより、床暖房が行われる。
【0019】
なお、床暖房パネル10は、温水パイプ方式に限られるものではなく、電気ヒータ方式のものであってもよい。
【0020】
フローリング20は、室1の床の略全面に設けられている。凹部21は、フローリング20の裏面の面積の約20~100%を占める大きさとなっている。前記潜熱蓄熱材30はこの凹部21内に配置されている。室1に敷設された床暖房装置の面積の約40~100%の範囲にわたって潜熱蓄熱材30が設けられている。
【0021】
潜熱蓄熱材30は、潜熱蓄熱材組成物31を合成樹脂製のフィルム又はシート32で被包したものである。潜熱蓄熱材組成物31は、相変態温度(融点)を有している。相変態温度よりも低温では固体状となり、相変態温度よりも高温では粘稠流体となる。
【0022】
潜熱蓄熱材組成物31を相変態温度よりも高い温度から相変態温度よりも低い温度に降温速度3~10℃/min程度で降温させると、相変態温度付近で明瞭な発熱ピークが現れる。本発明では、示差走査熱量計を用いて-23℃から47℃に昇温速度10℃/minで昇温した後、降温速度10℃/minで-23℃まで降温させたときのピーク温度が20℃以上、特に25℃以上で、40℃以下、特に35℃以下の潜熱蓄熱材組成物を用いる。
【0023】
前記エアコン3には、床4の全体にわたってフローリング20の表面温度を測定するための赤外線輻射式温度センサ3aが設けられている。エアコン3に設けられたエアコン制御装置(図示略)のROMには、この温度センサ3aで検出されるフローリング表面温度が所定範囲となるように、給湯器40を制御するためのプログラムが記憶されている。
【0024】
給湯器40は、第1所定時間、30~70℃、特に40~60℃の温水を床暖房パネル10に供給し、第2所定時間、温水供給を停止するON-OFF運転とすることが、制御が簡易で好適である。第1所定時間の間に、温水パイプ13からの熱により潜熱蓄熱材30が加温され、融解する。第2所定時間の間は、フローリング20は潜熱蓄熱材30からの放熱によって加温される。第2所定時間の間、潜熱蓄熱材30は徐々に高温相→低温相に相変態(凝固)する。潜熱蓄熱材30の温度は、第1所定時間~第2所定時間の全期間を通じて、ほぼ前記ピーク温度となり、フローリング20の表面温度が25~30℃程度に保たれる。
【0025】
エアコン3の設定温度を22~28℃、好ましくは24~28℃、特に好ましくは24~27℃の間から選択された温度として、冷房運転した場合、フローリング20の表面温度はこのエアコン3の設定温度よりもごく僅かに高い温度に保たれるので、冷え症の人でも足元に冷感を感取することが殆どないようになる。また、床暖房のための温水通水に要する熱エネルギーは少量であり、エアコン3の冷房消費電力の増大もきわめて少ない。このとき、フローリング20の表面温度はこのエアコン3の設定温度よりも0.5~5.0℃高いことが好ましく、1.0~4.0℃高いことがより好ましい。
【0026】
この潜熱蓄熱材組成物は、(i)パラフィン化合物、又は後述の(ii)硬化性蓄熱組成物を含むもの等が好ましい。
【0027】
(i)の組成物のパラフィン化合物としては、融点が上記範囲となるものが用いられ、具体的には、主鎖の炭素数が17~20個の飽和炭化水素を用いることで、相転移温度を実用温度域において任意に選択でき、幅広い用途で好適に使用できる。直鎖状飽和炭化水素の具体例(炭素数/融点)としては、ヘプタデカン(17個/21℃)、オクタデカン(18個/28℃)、ノナデカン(19個/32℃)、イコサン(20個/37℃)などが用いられる。また、直鎖状飽和炭化水素の代わりに、分岐鎖を有する分岐状飽和炭化水素を用いてもよい。
【0028】
パラフィン化合物は、さらに熱可塑性エラストマーを含むことが好ましく、そのなかでも、スチレン系エラストマーを含むことがより好ましい。スチレン系エラストマーとしては、ポリスチレンからなるハードセグメントと、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、またはこれらの水素添加物、および/またはそれらの共重合体からなるソフトセグメントとから構成されるエラストマーが好ましい。
【0029】
スチレン系エラストマーの具体例としては、スチレン-ブタジエン共重合体(SB)、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン共重合体(SI)、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体(SIS)、スチレン-イソブチレン共重合体(SIB)、スチレン-イソブチレン-スチレン共重合体(SIBS)、スチレン-ブタジエン-ブチレン-スチレン共重合体(SBBS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン共重合体(SEPS)、スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレン(SEEPS)共重合体が挙げられる。これらは、一種類を単独で用いてもよいし、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらの共重合体であってもよい。この中でも、形状保持性の観点から、SBS、SBBS、SIS、SEBS、SEPS、SEEPS、SIBSといったトリブロック共重合体を用いることが特に好ましい。
【0030】
(ii)の潜熱蓄熱材は、ポリオール(a)、イソシアネート基を有する化合物(b)および蓄熱材(c)を含む硬化性蓄熱組成物を含むものであってもよい。以下、この硬化性蓄熱組成物について説明する。
【0031】
<ポリオール(a)>
(a)成分のポリオールは、後述する(b)成分と反応して、蓄熱材(c)を担持するための3次元架橋構造を形成する成分であり、緻密な架橋構造を形成することができる。
【0032】
ポリオール(a)としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、アクリルポリオール、エポキシポリオール、アルキドポリオール、フッ素含有ポリオール、ケイ素含有系ポリオール、セルロース及び/またはその誘導体、アミロース等の多糖類等が挙げられる。(a)成分としては、これらの1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0033】
<イソシアネート基を有する化合物(b)>
(b)成分は、ポリオール(a)の水酸基と反応して3次元架橋構造を形成するものであり、(b)成分中のイソシアネート基は、水酸基との反応性に優れ、反応が迅速に進行し、かつ緻密な架橋構造を形成することができる。
【0034】
イソシアネート基を有する化合物(b)としては、特に脂肪族ジイソシアネートを用いることが好ましく、特にHMDIおよびその誘導体化したもの等が好ましい。
【0035】
<ポリオール(a)とイソシアネート基を有する化合物(b)の含有割合>
本発明の硬化性蓄熱組成物に含まれる(a)成分と(b)成分の含有割合は、NCO/OH比率(当量比率)で好ましくは0.5~2.0、さらに好ましくは0.8~1.5となる範囲内で設定すればよい。
【0036】
<蓄熱材(c)>
蓄熱材(c)としては、無機潜熱蓄熱材、有機潜熱蓄熱材等が挙げられる。
【0037】
無機潜熱蓄熱材としては、例えば、硫酸ナトリウム10水和物、炭酸ナトリウム10水和物、リン酸水素ナトリウム12水和物、チオ硫酸ナトリウム5水和物、塩化カルシウム6水和物等の水和塩等が挙げられる。
【0038】
有機潜熱蓄熱材としては、例えば、脂肪族炭化水素、長鎖アルコール、長鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸エステル、ポリエーテル化合物、脂肪酸トリグリセリド等が挙げられる。
【0039】
蓄熱材(c)はこれらの蓄熱材のうち1種または2種以上を用いることができる。
【0040】
有機潜熱蓄熱材のうち、融点が前記範囲に入る脂肪族炭化水素としては、例えば、ヘプタデカン(融点22℃)、オクタデカン(融点28℃)、ノナデカン(融点32℃)、イコサン(融点36℃)、パラフィンワックス等が挙げられる。
【0041】
長鎖アルコールとしては、例えば、ラウリルアルコール(融点24℃)、ミリスチルアルコール(融点38℃)等が挙げられる。
【0042】
長鎖脂肪酸としては、例えば、デカン酸(融点32℃)等が挙げられる。
【0043】
長鎖脂肪酸エステルとしては、例えば、ステアリン酸メチル(融点38℃)、ステアリン酸ブチル(融点25℃)等が挙げられる。
【0044】
ポリエーテル化合物としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールジアクリレート、エチルエチレングリコール等が挙げられる。
【0045】
脂肪酸トリグリセリドとしては、例えば、ヤシ油、パーム核油等の植物油や、その精製加工品である中鎖脂肪酸トリグリセリド、長鎖脂肪酸トリグリセリド等が挙げられる。
【0046】
本発明の硬化性蓄熱組成物中の蓄熱材(c)の含有量には特に制限はないが、好ましくは40~50重量%、より好ましくは50~85重量%、さらに好ましくは60~80重量%である。
【0047】
<その他の成分>
硬化性蓄熱組成物には、上述の成分以外に、各種添加剤を配合することも可能である。このような添加剤としては、例えば、可塑剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、消泡剤、レベリング剤、顔料分散剤、沈降防止剤、たれ防止剤、硬化促進剤、脱水剤、艶消し剤、難燃剤、紫外線吸収剤、光安定剤等が挙げられる。
【実施例
【0048】
以下、実験例No.1~7について説明する。
【0049】
[No.1~6]
12畳の部屋(窓なし。壁及び天井は断熱材製)の床を下記構造とした。
【0050】
温水パネル:三菱ケミカルインフラテック株式会社製「エクセルソーレ55」(温水パイプ直径7.2mm)
広さ12畳の部屋の躯体床面の上に、上記温水パネル(長さ1773mm×幅3333mmを2枚、長さ864mm×幅3333mmを1枚の計3枚)を長さ方向に並列に敷設した。
【0051】
フローリング:永大産業株式会社製「エコ熱プラス」
(1818mm×303mm×12mm。裏面に潜熱蓄熱材を配置するための262×112×5mmの凹部を有する。)
【0052】
潜熱蓄熱材:(ピーク温度26℃のパラフィン化合物とスチレン系エラストマーとを質量比90:10で含有し、厚さ50μmのポリアミドフィルムで被包したもの。固形状体時の寸法235×85×4.5mm。)
【0053】
エアコン及び給湯器としては、次のものを設置した。
エアコン:ダイキン製「AN40UR-W」、2017年製 100V 冷房能力4.0kW、簡易体感試験より「風量1、風向左右ワイド、風向上下1」に設定
給湯器:松井製作所 MCL-88-J 能力8kW
【0054】
外気温が30℃のときに、エアコンの設定温度を24℃とし、温水温度(給湯器からの出湯時温度)を表1の通りとした。温水をON/OFF通水するものとし、そのときの前記第1所定時間(ON時間)及び第2所定時間(OFF時間)をそれぞれ表1の通りとした(表1にON/OFF時間と表記)。ON時間(第1所定時間)における給湯器からの温水の出湯流量を2.5L/minとした。
【0055】
フローリングの表面温度を表面温度計で測定し、潜熱蓄熱材の下面側の温度を温度センサで測定した。
【0056】
室内の気温を、室内の144箇所に配置(上下、前後、左右に均等に配置)した温度センサで測定し、平均した。
【0057】
模擬足熱流を日本建材試験センター規格DIN52614によって測定した。結果を表1に示す。
【0058】
[No.7]
温水を通水せず、エアコンの冷房運転のみを行い、No.1~6と同様の測定を行った。結果を表1に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
表1の通り、No.1~6はフローリングの表面温度が室内の気温よりも1.3~2.7℃高い範囲にあり、模擬足熱流の値(模擬足から奪われる熱量をマイナスで表記している)がNo.7と比較して小さくなっていることから、足元の冷えを改善することができる。No.6は、室内温度の実測値(25.6℃)が、エアコンの設定温度(24℃)よりも1℃以上上昇しているため、逆に不快に感じる(暑いと感じる)人の割合が多くなる可能性がある。No.7では足元が冷えると感じる人が多い。
【符号の説明】
【0061】
1 室
2 壁
3 エアコン
4 床
10 床暖房パネル
20 フローリング
30 潜熱蓄熱材
図1
図2