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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】焼結鉱冷却装置
(51)【国際特許分類】
   F27B 21/00 20060101AFI20230314BHJP
   C22B 1/26 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
F27B21/00 B
C22B1/26
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019068020
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020165609
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】牧 睦夫
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 一臣
(72)【発明者】
【氏名】古賀 昭信
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 貴志
(72)【発明者】
【氏名】大家 聖那斗
【審査官】岡田 眞理
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-232519(JP,A)
【文献】特開2016-094630(JP,A)
【文献】特開昭49-029203(JP,A)
【文献】特開2016-031224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 21/00-21/14
C22B 1/00-61/00
F27D 7/00-15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼結鉱を冷却するための焼結鉱冷却装置であって、
焼結機からの焼結鉱が上部から供給されて堆積し、冷却気体が下部から供給されて前記堆積した焼結鉱の間を通過して上部へ向かうように設けられ、前記冷却気体により冷却された焼結鉱を下部の排出口から排出する環状の堆積槽と、
前記堆積槽の内部に周方向に延びるように配置され、前記冷却気体を前記堆積槽の内部に導入する気体導入部材と、
を備え、
前記気体導入部材は、中空であり、下方に開口している、
結鉱冷却装置。
【請求項2】
前記気体導入部材の側面は、鉛直方向に沿うか、または、上方に面するように鉛直方向に対して傾いて設けられている、請求項1に記載の焼結鉱冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼結鉱を冷却するための焼結鉱冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、焼結機から供給される高温の焼結鉱を冷却するための焼結鉱冷却装置が知られている。例えば特許文献1には、焼結機からの焼結鉱が上方から堆積されると共に下方の外周部から排出される環状の堆積槽と、堆積槽の下部の内側と外側の間を横断するように配置された複数の通風ダクトと、隣り合う通風ダクト同士を接続して環状に配置された複数の中央ルーバ部とを備える焼結鉱冷却装置が開示されている。この焼結鉱冷却装置は、通風ダクトから外部の空気を取り込み、取り込んだ空気を中央ルーバ部のルーバ間から堆積槽の下部中央へ供給し、堆積槽に堆積された焼結鉱の下方から上方へ上記空気を通過させて、該焼結鉱全体を冷却するように設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-232519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、以下のような課題を新たに見出した。すなわち、堆積槽の内部で中央ルーバ部に沿って流下する焼結鉱のうち、一部の焼結鉱が中央ルーバ部のルーバ間に進入する。ルーバ間の間隙に焼結鉱が詰まると、この間隙を介した空気の供給が妨げられ、中央ルーバ部による堆積槽の内部への通風量が減少し、冷却性能が低下するおそれがある。なお、堆積槽を構成する外周壁または内周壁に設けられるルーバ間の間隙にも焼結鉱は進入しうるが、進入した焼結鉱は堆積槽の外部へ排出されるため、焼結鉱が上記ルーバ間の間隙に詰まる問題は生じない。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、冷却性能の低下を抑制することが可能な、新規かつ改良された焼結鉱冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、焼結鉱を冷却するための焼結鉱冷却装置であって、焼結機からの焼結鉱が上部から供給されて堆積し、冷却気体が下部から供給されて堆積した焼結鉱の間を通過して上部へ向かうように設けられ、冷却気体により冷却された焼結鉱を下部の排出口から排出する環状の堆積槽と、堆積槽の内部に周方向に延びるように配置され、冷却気体を堆積槽の内部に導入する気体導入部材と、を備え、堆積槽の内部において上部から排出口へ向けて流動する焼結鉱の流れの中で、気体導入部材の直下に、冷却気体が流通する空洞が形成されるように設けられた、焼結鉱冷却装置が提供される。
【0007】
気体導入部材は、中空であり、下方に開口していてもよい。
【0008】
気体導入部材の側面は、鉛直方向に沿うか、または、上方に面するように鉛直方向に対して傾いて設けられてもよい。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように本発明に係る焼結鉱冷却装置によれば、冷却性能の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る焼結鉱冷却装置の軸方向断面図である。
図2】同実施形態に係る焼結鉱冷却装置の上面図である。
図3】同実施形態に係る堆積槽の下部を上方から見た模式図である(図5のIII-III視)。
図4】同実施形態に係る堆積槽に設置された複数の径方向ダクトおよび周方向ダクトを水平方向から見た模式図である(図3のIV-IV視)。
図5】同実施形態に係る堆積槽の軸方向断面図である(図3のV-V視)。
図6】同実施形態に係る焼結鉱冷却装置の動作の説明図である。
図7】比較例に係る焼結鉱冷却装置の動作の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0012】
まず、図1~5を参照して、実施形態に係る焼結鉱冷却装置の概略構成について説明する。図1および図2は、本実施形態に係る焼結鉱冷却装置1の概略構成を示す模式図である。図1は、堆積槽2の軸200を通る平面で焼結鉱冷却装置1を切った断面を示す。図2は、焼結鉱冷却装置1の一部を上方から見た上面図である。
【0013】
焼結鉱冷却装置1は、焼結鉱11を冷却するためのクーラであり、本体部、掻き出し部、駆動部、吸引部および焼結鉱供給部を備える。本体部は、堆積槽2、気体導入部材3および架橋5を備える。説明の便宜上、図1において、気体導入部材3の図示を省略している。掻き出し部はスクレーパ6を有する。駆動部は、複数の支持ローラ70、および駆動モータ71を有する。吸引部は、フード80、排気ダクト81、吸引ファン82およびボイラ83を有する。焼結鉱供給部は供給シュート9を有する。
【0014】
図3は、堆積槽2の内部の一部を上方から見た模式図である。図4は、堆積槽2の内部に設置された気体導入部材3の一部を水平方向から見た模式図である。図5は、軸200を通る平面で堆積槽2を切った断面を模式的に示す。図3図5のIII-III視に、図4図3のIV-IV視に、図5図3のV-V視に、それぞれ相当する。
【0015】
図1図5に示すように、堆積槽2は、テーブル20、内周壁21および外周壁22を有する。テーブル20は、軸200の周りに延びる円環状の底板であり、水平方向に広がる。以下、軸200の周り方向を周方向という。軸200を中心とする半径方向、言い換えると軸200を通り水平に延びる直線方向を、径方向という。テーブル20の下面側には、周方向に延びる円環状のレール23が2列設けられている。
【0016】
堆積槽2は、周方向に延びる環状である。軸200を通る平面で切った堆積槽2の断面は、テーブル20、内周壁21および外周壁22に囲まれた逆台形状である。内周壁21は、内側の周壁であり、下端がテーブル20の内周縁に接続し、上方へ向かうにつれて径方向内側(すなわち軸200の側)へ向かうように鉛直方向に対し傾いている。外周壁22は、外側の周壁であり、下端がテーブル20の上面に対向し、上方へ向かうにつれて径方向外側へ向かうように鉛直方向に対し傾いている。焼結鉱11の排出口24は、堆積槽2の下部に設けられている。排出口24は、内周壁21に設けられておらず、外周壁22の側に設けられている。排出口24は、外周壁22の下端とテーブル20の上面との間の隙間であり、堆積槽2の全周にわたって設けられている。
【0017】
図3図5に示すように、内周壁21の下部には、複数の開口部210と複数のルーバ部211が設けられている。開口部210とルーバ部211は、内周壁21の周方向で交互に隣接して、内周壁21の全周にわたって設けられている。図5に示すように、各ルーバ部211において、周方向に延びる複数のルーバ(すなわち羽板)212が上下方向に並んで配置されている。各ルーバ212は、堆積槽2の径方向における内側から外側へ向かうにつれて下方へ傾斜するように配置されている。言い換えると、上下で隣接するルーバ212の間の間隙が、堆積槽2の内部へ向かうにつれて下方へ向かうように、水平方向に対して傾いている。
【0018】
図3図5に示すように、外周壁22の下部には、排出口24の上側に、複数の開口部220と複数のルーバ部221が設けられている。開口部220とルーバ部221は、外周壁22の周方向で交互に隣接して、外周壁22の全周にわたって設けられている。開口部220は、内周壁21の開口部210に対し径方向で対向する位置にある。図5に示すように、各ルーバ部221において、周方向に延びる複数のルーバ222が上下方向に並んで配置されている。各ルーバ222は、堆積槽2の径方向における外側から内側へ向かうにつれて下方へ傾斜するように配置されている。言い換えると、上下で隣接するルーバ222の間の間隙が、堆積槽2の内部へ向かうにつれて下方へ向かうように、水平方向に対して傾いている。
【0019】
気体導入部材3は、堆積槽2の内部に設置される。気体導入部材3は、径方向ダクト31および周方向ダクト32を有する。
【0020】
図3~5に示すように、径方向ダクト31は、筒状の箱型部材であって、両端に吸気口310が設けられている。径方向ダクト31の幅広の両側面は逆台形状であり、上面と下面は長方形である。径方向ダクト31の下面は閉じられている。径方向ダクト31の中央部には、上面および幅広の両側面に跨って、接続開口部311が設けられている。接続開口部311は、幅広の両側面を矩形状に切り欠くように設けられている。
【0021】
図3~5に示すように、周方向ダクト32は、半筒状の部材であって、下方が開口している。周方向ダクト32は、例えば板状部材を折り曲げ加工することで形成される。周方向ダクト32の外面は、側面321,322と上面323を有する。両側面321,322は、鉛直方向に沿うように配置される。上面323は、一方の側面321から他方の側面322に向かうにつれて下方へ傾斜するように、水平方向に対して傾いている。すなわち、周方向ダクト32の頂部は、不等辺山形である。周方向ダクト32の両端部には接続開口部320が設けられている。接続開口部320は、各側面321,322の両端部を矩形状に切り欠くように設けられ、周方向ダクト32の下端に開口する。
【0022】
径方向ダクト31は、堆積槽2の内部に径方向に延びるように配置され、内周壁21と外周壁22に接続する。複数の径方向ダクト31は、堆積槽2の周方向に並んで配置される。具体的には、吸気口310を有する径方向ダクト31の一端は、内周壁21の下部の開口部210に嵌まる。吸気口310を有する径方向ダクト31の他端は、外周壁22の下部の開口部220に嵌まる。
【0023】
周方向ダクト32は、径方向ダクト31に接続する。周方向ダクト32は、堆積槽2の周方向で隣り合う径方向ダクト31同士を接続するように配置される。複数の周方向ダクト32は、全体として、堆積槽2の全周にわたって周方向に延びる環状に配置される。具体的には、接続開口部320を有する周方向ダクト32の端部は、径方向ダクト31の接続開口部311に嵌まる。接続開口部311を構成する径方向ダクト31の縁と、接続開口部320を構成する周方向ダクト32の縁は、互いに溶接等により結合されている。また、径方向ダクト31の接続開口部311の上方で互いに対向する周方向ダクト32の端部同士は、互いに溶接等により結合されている。径方向ダクト31の内部と周方向ダクト32の内部は、接続開口部311,320を介して、互いに連通する。
【0024】
図1に示すように、架橋5は、堆積槽2の内周側に設けられ、堆積槽2を支持する。架橋5は、基礎50の上に設置された軸受51を介して、基礎50に対して回転自在に設けられている。架橋5の回転中心すなわち軸受51は軸200と重なる。
【0025】
スクレーパ6は、棒状の部材であり、排出口24から堆積槽2の内部に挿入されている。スクレーパ6は、気体導入部材3よりも下方に、水平方向に延びるように配置される。
【0026】
複数の支持ローラ70は、周方向に延びる円環状に2列、基礎50の上に配置されており、テーブル20のレール23に接している。駆動モータ71は、複数の支持ローラ70のうちいくつかに接続され、これらの支持ローラ70を回転させる力を発生する。回転駆動される支持ローラ70とレール23との摩擦力により、テーブル20が回転駆動され、堆積槽2が軸200の周りに回転する。
【0027】
図2に示すように、フード80は、円環状であり、堆積槽2の上部の開口を覆うように配置される。基礎50に対して位置が固定されたフード80に対して、堆積槽2が回転する。排気ダクト81の一端は、フード80に接続され、フード80の内部と連通する。図1に示すように、排気ダクト81の他端の先には、吸引ファン82が接続されている。吸引ファン82は、排気ダクト81を介してフード80の内部の空気10を吸引する。吸引ファン82の手前に、ボイラ83が接続されている。ボイラ83は、熱交換を行うことで、フード80からの高温の空気10から熱エネルギを回収する。なお、ボイラ83とフード80との間に、除塵機84が接続されてもよい。また、フード80と堆積槽2の上端との間の隙間からの空気10のリークを防止するためのシール構造が設けられている。
【0028】
供給シュート9は、フード80を貫通するように配置されている。供給シュート9には、焼結機から、冷却前の高温の焼結鉱11が供給される。供給シュート9に供給された焼結鉱11は、供給シュート9を通過して堆積槽2の上部から堆積槽2の内部に供給され、堆積する。なお、供給シュート9の内部に常時所定量の焼結鉱11が充填されているように設けられてよい。この場合、堆積槽2の回転に応じて焼結鉱11が供給シュート9から堆積槽2へ連続的に供給されるため、堆積槽2に堆積する焼結鉱11の高さの変動を抑制できる。
【0029】
次に、図1図6を参照して、焼結鉱冷却装置1の動作を説明する。図6は、図5と同様の断面の模式図であり、焼結鉱11の流れを実線の矢印で示す。空気10の流れを一点鎖線の矢印で示す。
【0030】
堆積槽2の周方向における堆積槽2とスクレーパ6との相対移動により、堆積槽2の下部の焼結鉱11が、スクレーパ6により押され、排出口24から堆積槽2の外部へ排出される。堆積槽2の周方向において、堆積槽2に対してスクレーパ6が進行する方向を前方とし、スクレーパ6に対して堆積槽2が進行する方向を後方とする。図2において、スクレーパ6に対する堆積槽2の進行方向(すなわち後方)を、矢印201で示す。堆積槽2が回転することで、スクレーパ6の前方にある焼結鉱11が押されるとともに、スクレーパ6の後方に空洞が発生する。この空洞に焼結鉱11が上方から入り込むことで、堆積槽2の内部において、上方から下方へ向かう焼結鉱11の流れ(いわば荷下がり)が発生する。上方から下方へ流動する焼結鉱11の一部は、周方向ダクト32の下方の空間に流入する。この空間に焼結鉱11が所定の安息角で進入するため、焼結鉱11の流下に伴い、周方向ダクト32の直下に、焼結鉱11が存在しない空洞33が形成される。空洞33は、周方向ダクト32の内部に連通しており、周方向ダクト32に沿って周方向に延びるように形成される。
【0031】
一方、吸引ファン82によりフード80の内部の空気10が吸引されることにより、外部の空気10が堆積槽2の内部に取り込まれる。図6に示すように、空気10は、堆積槽2の内周壁21のルーバ部211では、ルーバ212同士の間の隙間から堆積槽2の内部へ直接取り込まれる。外周壁22のルーバ部221でも同様である。一方、空気10は、両周壁21,22に接続された径方向ダクト31の吸気口310からも、堆積槽2の内部へ取り込まれる。吸気口310から径方向ダクト31の内部に取り込まれた空気10は、径方向ダクト31に接続された周方向ダクト32に導入され、周方向ダクト32の内部の空間34および空洞33を介して堆積槽2の内部に供給される。周方向ダクト32は、堆積槽2の内部に空気10を導入する気体導入部材として機能する。
【0032】
堆積槽2の内部に取り込まれた外部の空気10は、堆積した焼結鉱11の間を通過して堆積槽2の下部から上部へ移動する。この間、空気10が焼結鉱11の熱を吸収することにより、焼結鉱11が冷却される。空気10は、堆積槽2の内部の焼結鉱11を冷却するための気体(以下、冷却気体ともいう。)として機能する。堆積槽2は冷却槽として機能する。フード80の内部へ移動した高温の空気10は、排気ダクト81から排気される。冷却された焼結鉱11は、堆積槽2の下部において、排出口24から、堆積槽2の回転に伴い連続的に排出される。すなわち、焼結鉱11は、堆積槽2の上部から連続的に供給されるとともに、外部から吸引された空気10と熱交換して冷却され、順次堆積槽2の内部を降下し、最後にスクレーパ6により掻き出されることになる。この際、堆積槽2の内部の焼結鉱11は、徐々に下方へ移動することになり、下方へ徐々に移動する間に、吸引されて上方へ向かう空気10により冷却されるため、焼結鉱11の全体が効率的に冷却される。このように、焼結鉱冷却装置1は、空気等の冷却気体を下から上に流す対向流式の熱交換を可能にしたものである。
【0033】
次に、図6図7を参照して、本実施形態の焼結鉱冷却装置1の利点を説明する。図7は、気体導入部材3として、周方向ダクト32の代わりにルーバユニット35を用いた比較例の動作を示す。図7は、図6と同様の断面図において、ルーバユニット35の一部を拡大して示したものである。ルーバユニット35は、仕切板350および複数のルーバ351を有する。仕切板350は、堆積槽2の周方向に沿って、鉛直方向に広がるように配置される。複数のルーバ351は、仕切板350に固定され、上下方向に並んで配置される。ルーバ351は、仕切板350から離れるにつれて下方へ傾斜するように配置されている。言い換えると、上下で隣接するルーバ351の間の間隙352が、仕切板350から離れるにつれて下方へ向かうように、水平方向に対して傾いている。ルーバユニット35は、径方向ダクト31に接続する。ルーバ351の間の間隙352は、仕切板350の両端で、径方向ダクト31の接続開口部311に連通する。径方向ダクト31の内部に取り込まれた空気10は、ルーバユニット35の間隙352に導入され、間隙352を介して堆積槽2の内部に供給される。
【0034】
このような比較例においては、ルーバ351の間の間隙352が開口するルーバユニット35の側面に沿って流下する焼結鉱11のうち、一部の焼結鉱11が、間隙352の内部へ向けて次々と押し出され、間隙352の内部に進入する。間隙352ないしルーバユニット35の内部に焼結鉱11が詰まると、間隙352を介した空気10の供給が妨げられ、気体導入部材3による堆積槽2の内部への通風量が減少し、冷却性能が低下するおそれがある。
【0035】
これに対し、本実施形態の焼結鉱冷却装置1では、図6に示すように、気体導入部材としての周方向ダクト32は、堆積槽2の内部に周方向に延びるように配置されている。堆積槽2の内部において上部から排出口24へ向けて流動する焼結鉱11の流れの中で、周方向ダクト32の直下に、空洞33が形成される。空洞33には、冷却気体としての空気10が流通しうる。よって、堆積槽2の内部に空気10を導入するための通路として空洞33を利用することができる。さらに、周方向ダクト32は、中空であり、下方に開口している。このように周方向ダクト32が中空であれば、周方向ダクト32の内部の空間34を、冷却気体としての空気10が流通する通路として利用できる。そして、周方向ダクト32が下方に開口していれば、周方向ダクト32の内部の空間34と周方向ダクト32の直下の空洞33とが連続する。
【0036】
このように空気10を導入するための通路として空洞33を利用することにより、周方向ダクト32の側面321,322にルーバを設けることが不要となる。したがって、気体導入部材3の構造を簡素化して設備費を低減できるとともに、ルーバ間に焼結鉱11が詰まることがないため、堆積槽2の内部への空気10の供給量を安定して確保できる。例えば、ルーバ間に焼結鉱が詰まっていない状態から詰まった状態へ移行することによる空気10の供給量の変動をなくして、冷却性能の低下を抑制し、長期的に安定した冷却性能を実現することができる。また、詰まった焼結鉱の除去作業が不要となるため、焼結鉱冷却装置1の維持管理費も低減できる。なお、冷却用の気体(冷却気体)は、空気10に限らない。
【0037】
図4に示すように、周方向ダクト32の側面322の下端に、切り欠き324が設けられてもよい。この切り欠き324が設けられた部位において、堆積槽2の内部への空気10の供給量を増やすことができる。切り欠きという簡単な構造により、周方向ダクト32のうち空気10の供給量を増大させる部位を容易に調節できる。周方向ダクト32の側面321についても同様である。
【0038】
周方向ダクト32の側面321は、鉛直方向に沿うように設けられてよい。この場合、側面321が下方に面するように鉛直方向に対して傾いている場合に比べ、側面321に沿って流下する焼結鉱11が、周方向ダクト32の直下に向かいづらい。このため、周方向ダクト32の直下に空洞33が形成されやすく、より大きな空洞33を、冷却気体としての空気10が流通する通路として利用可能となる。さらに、側面321は、上方に面するように鉛直方向に対して傾いて設けられてもよい。この場合、側面321に沿って流下する焼結鉱11が、周方向ダクト32の直下に、より向かいづらくなるため、空洞33がより形成されやすくなる。周方向ダクト32の側面322についても同様である。
【0039】
なお、周方向ダクト32の形状は、直下に空洞33が形成される形状であれば任意である。例えば、図5に示される周方向ダクト32の断面の形状が、矩形状であってもよいし、三角形状であってもよい。周壁21,22に対向する周方向ダクト32の面が、鉛直方向に沿う面を有さず、鉛直方向に対して傾いた面のみを有してもよい。
【0040】
堆積槽2の内部に周方向に延びるように設けられた部材であり、直下に空洞33が形成される形状を有していれば、この部材の直下に形成される空洞33を、冷却気体が流通する通路として利用可能である。このため、中空であって下方に開口する周方向ダクト32の代わりに、中実であって下方に開口していない部材を、気体導入部材として用いてもよい。この場合、径方向ダクト31の接続開口部311は、上記部材の直下に形成される空洞33に相当する箇所に設けられればよく、この接続開口部311を介して径方向ダクト31から上記空洞へ冷却気体を供給できる。
【0041】
焼結鉱冷却装置1は径方向ダクト31を備える。例えば、径方向ダクト31は、堆積槽2の内部に配置され、内周壁21および外周壁22に接続するとともに、周方向ダクト32に接続する。これにより、径方向ダクト31は、周方向ダクト32を支持する梁状部材として機能する。また、径方向ダクト31には、堆積槽2の外部から冷却気体としての空気10が供給され、周方向ダクト32は、径方向ダクト31から供給される空気10を焼結鉱11へ向けて供給する。このように、周方向ダクト32へ空気10を供給するために径方向ダクト31を用いることで、外部の空気10を周方向ダクト32から焼結鉱11へ供給する構成を容易に得ることができる。なお、径方向ダクト31は、内周壁21または外周壁22のいずれか一方のみに接続していてもよい。径方向ダクト31は、周方向ダクト32への空気供給通路としての機能だけでなく、それ自体が開口部を有して堆積槽2の内部に空気10を供給する機能を有してもよい。
【0042】
また、内周壁21に排出口24が設けられ、外周壁22に排出口24が設けられていなくてもよい。すなわち、外周壁22が上記第1周壁であり、内周壁21が上記第2周壁であってもよい。また、堆積槽2の断面形状は任意であり、逆台形状に限らず、矩形状または台形状等であってもよい。言い換えると、堆積槽2の周壁21,22の鉛直方向に対する傾きは任意に設定可能である。
【0043】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0044】
1 焼結鉱冷却装置
10 空気(冷却気体)
11 焼結鉱
2 堆積槽
21 内周壁(第1周壁)
22 外周壁(第2周壁)
24 排出口
31 径方向ダクト
32 周方向ダクト(気体導入部材)
321 側面
322 側面
323 上面
33 空洞
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7