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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】車両用障害物検知装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/0134 20060101AFI20230314BHJP
   B60R 19/48 20060101ALI20230314BHJP
   G01S 7/40 20060101ALI20230314BHJP
   G01S 13/931 20200101ALI20230314BHJP
【FI】
B60R21/0134 313
B60R19/48 B
G01S7/40 126
G01S13/931
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019071456
(22)【出願日】2019-04-03
(65)【公開番号】P2020168948
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2021-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼須賀 直一
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 一正
(72)【発明者】
【氏名】井口 勇希
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-240453(JP,A)
【文献】特開2008-096108(JP,A)
【文献】特開2004-025981(JP,A)
【文献】特開2015-105918(JP,A)
【文献】特開2019-001347(JP,A)
【文献】特開平05-223711(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/0134
B60R 19/48
G01S 7/40
G01S 13/931
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(1)の前端部に配置され、かつ、所定の向きを障害物検知軸として、前記車両の周辺の障害物を検知するレーダ動作を行う障害物検知部(10)と、
前記障害物検知部の検知結果に基づいて、前記障害物を検知するレーダ動作を行いつつ、前記車両への衝突を検知する衝突検知センサ(30)の検知結果を取得し、前記衝突検知センサにて前記車両への衝突が有ったことが検知されると、前記レーダ動作を停止する制御部(20、40)と、を有し
前記制御部は、前記衝突検知センサの検知結果に基づいて、前記車両におけるフロントバンパーを構成するバンパー部材の変形情報として該バンパー部材の変形量を算出すると共に、前記フロントバンパーのバンパーカバーから前記障害物検知部の搭載位置までの距離よりも前記変形量が大きいか否かを判定し、大きいと判定すると前記レーダ動作を停止する車両用障害物検知装置。
【請求項2】
車両(1)の前端部に配置され、かつ、所定の向きを障害物検知軸として、前記車両の周辺の障害物を検知するレーダ動作を行う障害物検知部(10)と、
前記障害物検知部の検知結果に基づいて、前記障害物を検知するレーダ動作を行いつつ、前記車両への衝突を検知する衝突検知センサ(30)の検知結果を取得し、前記衝突検知センサにて前記車両への衝突が有ったことが検知されると、前記レーダ動作を停止する制御部(20、40)と、を有し
前記制御部は、前記衝突検知センサの検知結果に基づいて、前記車両におけるフロントバンパーを構成するバンパー部材の変形情報として該バンパー部材を変形させる応力である変形力を算出すると共に、前記フロントバンパーのバンパーカバーを含めたバンパー部材の降伏応力よりも前記変形力が大きいか否かを判定し、大きいと判定すると前記レーダ動作を停止する車両用障害物検知装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記衝突検知センサの検知結果に基づいて、前記車両におけるフロントバンパーを構成するバンパー部材の変形情報として該バンパー部材を変形させる応力である変形力を算出すると共に、前記フロントバンパーのバンパーカバーを含めたバンパー部材の降伏応力よりも前記変形力が大きいか否かを判定し、大きいと判定すると前記レーダ動作を停止する請求項1に記載の車両用障害物検知装置。
【請求項4】
前記衝突検知センサにて前記車両への衝突が有ったことが検知されると、前記障害物検知部における前記障害物検知軸の軸ずれが生じている可能性が有ることを示すダイアグ信号を出力する、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両用障害物検知装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記衝突検知センサの検知結果に基づいて、前記車両への衝突位置を取得し、該衝突位置でのバンパー剛性に基づいて、前記変形情報を算出する請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用障害物検知装置。
【請求項6】
前記衝突検知センサは複数個が異なる場所に配置されており、
前記制御部は、複数個の前記衝突検知センサのうち最も前記障害物検知部に近いものの検知結果を用いる、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の車両用障害物検知装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記衝突検知センサの検知結果に基づいて、前記障害物が前記車両に近づいていることを検知した場合にのみ、前記レーダ動作の停止を行う、請求項1ないし6のいずれか1つに記載の車両用障害物検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両と障害物との距離などを検知する車両用障害物検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1において、車両用障害物検知装置に使用されるレーダユニットの障害物検知軸の向きが所定の向きからずれた可能性があることを知ることができるようにする技術が開示されている。具体的には、衝撃検知センサによりミリ波レーダへの衝撃が検知されたときに、その旨の警告を行うことにより、障害物検知軸の向きのずれ(以下、軸ずれという)をドライバに知らせている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-125928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両用の障害物検知を行うレーダの性能劣化の要因としては、(1)車両が障害物等と衝突したことによる軸ずれと、(2)レーダの測定範囲内におけるバンパー部品の変形が考えられる。しかしながら、上記した特許文献1の方法では、(1)について検出してドライバに知らせることができるものの、(2)については検出することができない。このため、レーダの測定範囲内においてバンパー部品の変形が生じているにもかかわらず、障害物検知を継続することになるため、低い検知精度での障害物検知が行われるという状況を発生させてしまう。このため、ドライバが障害物までの距離を見誤るという懸念がある。
【0005】
本発明は上記点に鑑みて、ドライバが障害物までの距離を見誤ることを抑制できる車両用障害物検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1または2に記載の発明では、車両(1)の前端部に配置され、かつ、所定の向きを障害物検知軸として、車両の周辺の障害物を検知するレーダ動作を行う障害物検知部(10)と、障害物検知部の検知結果に基づいて、障害物を検知するレーダ動作を行いつつ、車両への衝突を検知する衝突検知センサ(30)の検知結果を取得し、衝突検知センサにて車両への衝突が有ったことが検知されると、レーダ動作を停止する制御部(20、40)と、を有している。
具体的には、請求項1に記載の発明では、制御部は、衝突検知センサの検知結果に基づいて、車両におけるフロントバンパーを構成するバンパー部材の変形情報として該バンパー部材の変形量を算出すると共に、フロントバンパーのバンパーカバーから障害物検知部の搭載位置までの距離よりも変形量が大きいか否かを判定し、大きいと判定するとレーダ動作を停止する。また、請求項2に記載の発明では、制御部は、衝突検知センサの検知結果に基づいて、車両におけるフロントバンパーを構成するバンパー部材の変形情報として該バンパー部材を変形させる応力である変形力を算出すると共に、フロントバンパーのバンパーカバーを含めたバンパー部材の降伏応力よりも変形力が大きいか否かを判定し、大きいと判定するとレーダ動作を停止する。
【0007】
このように、衝突検知センサにて車両への衝突が有ったことが検知されると、レーダ動作が停止されるようにしている。このようにすれば、障害物検知部の軸ずれが発生した可能性が有る場合にレーダ動作を停止でき、ドライバが障害物までの距離を見誤ることを抑制できる。
【0008】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態にかかる車両用障害物検知装置の車両への搭載状態を示す図である。
図2】車両用障害物検知装置が実行する軸ずれ検知処理の詳細を示したフローチャートである。
図3】歪みεと応力σの関係を示した図である。
図4A】レーダユニットの搭載状態の一例を示した断面図である。
図4B】レーダユニットの搭載状態の一例を示した断面図である。
図5】第1実施形態において変型例として説明した車両用障害物検知装置の車両への搭載状態を示す図である。
図6】第2実施形態で説明する軸ずれ検知処理の詳細を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0011】
(第1実施形態)
第1実施形態にかかる車両用障害物検知装置について説明する。本実施形態にかかる車両用障害物検知装置は、障害物検知を行いつつ、衝突検知装置を用いて軸ずれ検出を行うものである。
【0012】
図1に示すように、車両用障害物検知装置は、車両1に搭載され、レーダユニット10と障害物検知用の電子制御装置(以下、障害物検知ECUという)20とを有した構成とされている。
【0013】
レーダユニット10は、障害物検知部に相当し、所定の向きを障害物検知軸として車両1の周辺の障害物を検知し、その検知結果を障害物検知ECU20に伝えるものである。レーダユニット10は、LiDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)などのレーザレーダやミリ波レーダ、超音波ソナーなどで構成され、所定の向きを障害物検知軸として車両1の周辺の障害物を検知する。レーダユニット10については、従来と構造的な相違はないため、ここでは説明を省略する。
【0014】
障害物検知ECU20は、レーダユニット10の外部もしくは内部に備えられており、レーダユニット10を用いて車両1から離れた障害物を検知して障害物に関する情報を取得する。例えば、障害物検知ECU20は、レーダユニット10から例えば所定周波数のミリ波等の測距用のスキャン波を出力させると共にその反射波を受信させることで、車両1から離れた障害物の有無、障害物までの距離や相対速度、角度を算出する。このとき、例えば車両1の前方における所定の向きを障害物検知軸としてミリ波が出力されるようになっており、軸ずれが生じると、障害物までの距離や相対速度、角度を精度良く算出できなくなる可能性がある。
【0015】
また、障害物検知ECU20は、衝突検知装置による衝突情報に基づいて、レーダ性能劣化の可能性があることを示すダイアグ信号の出力を行ったり、レーダ動作の停止を行ったりしている。ここでいう衝突情報とは、衝突検知装置から送られてくる衝突に関する各種情報のことである。具体的な情報の内容については後述する。
【0016】
一方、車両用障害物検知装置が軸ずれ検出に用いている衝突検知装置は、車両1に搭載され、衝突検知センサ30および衝突検知用の電子制御装置(以下、衝突検知ECUという)40を備えている。
【0017】
衝突検知センサ30は、例えば車両1の前端部に備えられ、車両1が障害物などに衝突したことの検知などに用いる検出信号を出力するものである。衝突検知センサ30としては、例えば、車両1の前方、前側方などに備えられるチューブ式圧力センサ、車両1の左右フロント部に備えられる加速度センサ、フロントバンパーのバンパーカバーに備えられるフィルム式センサなどが挙げられる。
【0018】
チューブ式センサは、チューブとその両端に接続された圧力センサによって構成され、圧力センサによってチューブ内圧力を検出し、その圧力に応じた検出信号を出力する。加速度センサは、車両1に発生する加速度に応じた検出信号を出力する。フィルム式センサは、例えば歪みゲージなどで構成される圧電式フィルムによって構成され、歪み量等の変化による圧力変化を電気信号に変換する圧電変換に基づいて衝突時に発生する圧力に応じた検出信号を発生させる。
【0019】
衝突検知ECU40は、衝突検知センサ30の検出信号に基づいて車両1が障害物などと衝突したか否かの判定を行う。また衝突検知ECU40は、衝突による車両1、より詳しくはフロントバンパーを構成するバンパー部材の変形量や、それを変形させる応力である変形力という変形情報を算出する。衝突検知ECU40は、バンパーカバーからレーダユニット10の搭載位置までの距離に関する情報や、バンパーカバーを含めたバンパー部品の降伏応力に関する情報をメモリなどの非遷移有形記録媒体に記憶している。この記憶している情報に基づいて、衝突検知ECU40は、衝突による車両1の変形量やその変形力がレーダユニット10における軸ずれを発生させ得るか否かの判定も行えるようになっている。そして、衝突検知ECU40は、衝突情報として、車両1の衝突が検知された際に、車両1の変形量やその変形力が軸ずれを発生させ得るか否かの判定結果を示す情報を障害物検知ECU20に伝えるようになっている。
【0020】
例えば、チューブ式センサの場合、衝突検知ECU40は、圧力センサから伝えられるチューブ内圧力に応じた検出信号に基づいて、圧力変化量が所定の圧力閾値を超えていることを検知すると、車両1が衝突したと判定するようになっている。また、衝突検知ECU40は、チューブ内圧力の変化量に基づいて、衝突による車両1の変形量やその変形力を算出すると共に、その算出結果をメモリに記憶している情報と比較し、軸ずれを発生させ得るか否かの判定を行う。チューブ式圧力センサで検出される圧力変化はチューブ式圧力センサの配置場所での衝撃の大きさを示しており、その圧力変化より変形量やその変形力を推定できる。具体的には、予め実験やシミュレーションなどによって、圧力変化と車両1の変形量やその変形力との関係を関数式もしくはマップなどで求めておき、その関数式もしくはマップを用いて車両1の変形量やその変形力について算出する。
【0021】
また、加速度センサの場合、衝突検知ECU40は、車両1に発生する加速度の変化、特に衝突箇所近傍において急激な加速度変化が生じることに基づき、加速度変化量が所定の閾値を超えると車両1が障害物に衝突したと判定する。また、衝突検知ECU40は、加速度変化量に基づいて、衝突による車両1の変形量やその変形力を算出すると共に、その算出結果をメモリに記憶している情報と比較し、軸ずれを発生させ得るか否かの判定を行う。加速度センサの検出信号には車両1の加速度に加えて衝突による車両1の変形の加速度成分も含まれるため、その検出信号が示す加速度変化より変形量やその変形力を推定できる。具体的には、予め実験やシミュレーションなどによって、加速度変化と車両1の変形量やその変形力との関係を関数式もしくはマップなどで求めておき、その関数式もしくはマップを用いて車両1の変形量やその変形力について算出する。
【0022】
また、フィルム式センサの場合、歪みゲージ等で構成される圧電式フィルムが発生させる検知信号が示す圧力変化が歪み量の変化を示している。これに基づき、衝突検知ECU40は、圧力変化量が所定の閾値を超えると車両1が障害物に衝突したと判定するようになっている。また、衝突検知ECU40は、圧力変化量に基づいて、衝突による車両1の変形量やその変形力を算出すると共に、その算出結果をメモリに記憶している情報と比較し、軸ずれを発生させ得るか否かの判定を行う。フィルム式センサで検出される歪み量等の変化による圧力変化はフィルム式センサの配置場所での衝撃の大きさや歪み量を示しており、その圧力変化より変形量やその変形力を推定できる。車両1の変形量やその変形力については、予め実験やシミュレーションなどによって、圧力変化と車両1の変形量やその変形力との関係を関数式もしくはマップなどで求めておき、その関数式もしくはマップを用いて算出できるようにしている。
【0023】
このようにして、車両用障害物検知装置および衝突検知装置が構成されている。なお、レーダユニット10と障害物検知ECU20、衝突検知センサ30と衝突検知ECU40、および、障害物検知ECU20と衝突検知ECU40それぞれの間は、直接もしくは車内LAN(Local Area Networkの略)などを通じて通信可能となっている。このため、障害物検知ECU20にて、レーダユニット10が駆動され、レーダユニット10での測定結果に関する情報に基づいて障害物までの距離などが算出される。また、衝突検知ECU40にて、衝突検知センサ30の検出信号に基づいて車両1が衝突したか否かの判定などが行われる。さらに、衝突検知ECU40から衝突に関する情報が障害物検知ECU20に伝えられる。
【0024】
続いて、車両用障害物検知装置および衝突検知装置の作動について説明する。ただし、車両用障害物検知装置による車両1と障害物との距離や相対速度、角度の算出については周知となっているものであるため、ここでは車両用障害物検知装置および衝突検知装置の作動として軸ずれの有無の判定やそれに伴うレーダ動作について説明する。
【0025】
車両用障害物検知装置および衝突検知装置では、障害物検知ECU20および衝突検知ECU40が協働して、図2に示すフローチャートに従った軸ずれ検知処理を実行する。なお、本図に示す各種処理は、例えば図示しない車両1におけるイグニッションスイッチなどの動作スイッチがオンされているときに所定の制御周期毎に実効される。
【0026】
まず、ステップS110~S140の処理を衝突検知ECU40で実行する。ステップS110では、車両1が衝突したか否かを判定する。この判定は、衝突検知ECU40にて、衝突検知センサ30の検出信号に基づいて上記した例のようにして行われる。そして、ステップS110で肯定判定された場合には、ステップS120に進み、否定判定された場合にはステップS110の判定を繰り返す。
【0027】
ステップS120では、衝突による車両1の変形量やその変形力を算出する。この車両1の変形量やその変形力についても、上記した例のようにして行われる。
【0028】
その後、ステップS130において、ステップS120で算出した車両1の変形量がバンパーカバーからレーダユニット10の搭載位置までの距離よりも大きいか否かを判定する。また、ステップS140において、ステップS120で算出した変形力がバンパーカバーを含むバンパー部品の降伏応力よりも大きいか否かを判定する。なお、ステップS130で否定判定された場合にステップS140の処理が実行されるようにしているが、少なくとも一方が実行されれば良い。また、ステップS120の処理後にステップS140の処理が実行されるようにし、ステップS140で否定判定されたときにステップS130の処理が実行されるようにしても良い。
【0029】
車両1の変形量がバンパーカバーからレーダユニット10の搭載位置までの距離よりも大きいと、バンパー部品の変形によってレーダユニット10の搭載位置がずれ、軸ずれが生じている可能性がある。また、変形力がバンパー部品の降伏応力よりも大きい場合には、レーダユニット10の搭載位置自体はずれていなかったとしても、バンパー部品の変形により、ミリ波等の出力方向が本来出力したい方向から変位してしまう可能性がある。すなわち、ミリ波などの測距用のスキャン波は、バンパー部品を透過もしくは通過することを前提として障害物検知軸が設定されており、レーダユニット10の搭載位置自体がずれていなくてもバンパー部品の変形で軸ずれが発生し得る。したがって、バンパー部品が元の形状に戻る弾性変形領域ではなく、変形したままとなる塑性変形領域となる変形力が発生していた場合には、軸ずれの可能性があるとしている。
【0030】
例えば、歪みεと応力σとは、図3に示すような関係を有しており、弾性変形領域を超えると、塑性変形領域となる。このため、歪み量が弾性変形領域を超えていると、バンパー部品の変形が生じていると判断できる。したがって、例えば、算出した変形力が図3中に示した引張降伏応力の降伏点となるときの応力である降伏応力を超えたときに、バンパー部品が塑性変形したと判定されるようにしている。
【0031】
なお、変形量や変形力については、実際の衝突位置での値を算出するのが好ましい。このため、衝突検知センサ30が衝突位置の検出まで行えるようなもので有る場合には、障害物検知ECU20は、その検知結果に基づいて衝突位置を取得し、その位置での変形量や変形力を算出するようにすると良い。このようにすれば、衝突位置に応じてバンパー剛性を可変として変形量や変形力を算出できる。
【0032】
ステップS130またはステップS140で肯定判定されるとステップS150に進み、車両1の変形量やその変形力が軸ずれを発生させ得ること、つまり軸ずれによりレーダ性能劣化の可能性が生じたことを示す情報が障害物検知ECU20に伝えられる。これにより、障害物検知ECU20は、例えば図示しない警告ランプや表示装置などを通じて軸ずれが発生したことを示すダイアグ信号を出力する。
【0033】
そして、ステップS160に進み、障害物検知ECU20は、レーダ動作の停止を指示する制御信号を出力し、レーダユニット10の動作を停止させる。
【0034】
このように、本実施形態の車両用障害物検知装置では、衝突検知装置で車両1の衝突を検知した際に、バンパー部材の変形量がバンパーカバーからレーダユニット10の搭載位置までの距離より大きければ、レーダユニット10の動作を停止する。このように、軸ずれが発生した可能性があるときにレーダユニット10によるレーダ動作を停止することで、低い検知精度で障害物検知が行われるという状況を回避できる。したがって、ドライバが障害物までの距離を見誤ることを抑制することが可能となる。
【0035】
さらに、衝突により生じる変形力がバンパー部品の降伏応力よりも大きい場合にも、軸ずれが発生した可能性があるとして、レーダユニット10の動作を停止するようにしている。このため、バンパー部材の変形量がバンパーカバーからレーダユニット10の搭載位置までの距離より小さかったとしても、レーダユニット10の動作を停止することで、低い検知精度で障害物検知が行われるという状況を回避する。これにより、よりドライバが障害物までの距離を見誤ることを抑制することが可能となる。
【0036】
なお、レーダユニット10の搭載位置や搭載の仕方については任意であるが、図4Aに示すように、バンパー部材50に対して接着剤51を介して接着したり、図4Bに示すように、バンパー部材50に対してステー52を介して接続すると好ましい。ステー52については、バンパー部材50と一体的に備えられたものであっても、別部品とされたものであっても良い。このようにすれば、よりバンパー部材50に対してレーダユニット10を至近に設置することができることから、バンパー部材50の変形量やその変形力と軸ずれとの相関を高めることが可能となる。
【0037】
また、図5に示すように、バンパー部材50の広範囲にわたって異なる場所に複数個の衝突検知センサ30が分割して配置されているような形態とされる場合がある。例えば、フィルム式センサのフィルム貼り付け位置を複数に分けて行う場合などが挙げられる。その場合、バンパー部材50の変形量やその変形力を算出する際には、複数個の衝突検知センサ30のうち最もレーダユニット10の搭載位置に近いものの検出信号に基づいて算出するようにすると好ましい。このようにしても、バンパー部材50の変形量やその変形力と軸ずれとの相関を高めることが可能となる。
【0038】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対してレーダユニット10の情報に基づいて冗長性を確保するものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0039】
第1実施形態で説明した図1の構成においては、レーダユニット10を備えていることから、レーダユニット10によって衝突対象物となる障害物などが車両1に接近してくることを確認することができる。したがって、車両1に障害物が接近してくることを確認した場合にのみ、車両1がレーダ動作の停止が行われるようにする。
【0040】
具体的には、車両用障害物検知装置および衝突検知装置では、障害物検知ECU20および衝突検知ECU40が協働して、図6に示すフローチャートに従った各種処理を実行する。すなわち、図2に示すフローチャートに対して、ステップS100の処理として、車両1からレーダの物標位置、つまり障害物までの距離が所定距離以下であり、十分に近い距離であるか否かを判定する処理を行う。そして、ここで肯定判定された場合にのみ、ステップS110以降の処理が実行されるようにしている。
【0041】
このように、車両1からレーダの物標位置まで十分に近い距離であり、衝突の可能性がある場合にのみ、レーダ動作の停止に関わる各種処理が実行されるようにしている。これにより、よりレーダ動作を停止する際の冗長性を確保することが可能となる。
【0042】
(他の実施形態)
本開示は、上記した実施形態に準拠して記述されたが、当該実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0043】
例えば、上記各実施形態では、車両1への衝突が有った場合に、車両1の変形量や変形力を算出し、これらに基づいて軸ずれの影響の可能性がある場合に、ダイアグ信号を出力したりレーダ動作を停止するようにしたが、これらに限るものではない。例えば、車両1への衝突があった場合に、車両1の変形量やその変形力が小さかったとしても、衝突による衝撃によってレーダユニット10の搭載位置がずれてしまう可能性もある。そのような場合を考慮して、車両1への衝突を検知した場合に、レーダ動作を停止するようにしても良い。このようにすれば、レーダユニット10の軸ずれが発生した可能性が有る場合にレーダ動作を停止でき、ドライバが障害物までの距離を見誤ることを抑制できる。勿論、車両1への衝突を検知した場合に加えて、上記したステップS130、S140の場合を付加条件として追加することで、軸ずれが発生した可能性が少ない場合にまでレーダ動作が停止されることを抑制できる。
【0044】
レーダユニット10の搭載位置や衝突検知センサ30の搭載位置などは一例を示したに過ぎず、上記各実施形態で示した例に限るものではない。また、上記実施形態では、制御部に相当する障害物検知ECU20と衝突検知ECU40とを別々の構成とする場合について説明したが、これに限るものではない。
【0045】
すなわち、本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 :車両
10 :レーダユニット
20 :障害物検知ECU
30 :衝突検知センサ
40 :衝突検知ECU
50 :バンパー部材
51 :接着剤
52 :ステー
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6