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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】乗用車両
(51)【国際特許分類】
   B62K 5/01 20130101AFI20230314BHJP
   B62J 1/08 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
B62K5/01
B62J1/08 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019083019
(22)【出願日】2019-04-24
(65)【公開番号】P2020179742
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2022-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】石田 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】谷口 芳光
(72)【発明者】
【氏名】梅原 英之
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-193740(JP,A)
【文献】特開2017-165171(JP,A)
【文献】特開平10-230879(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0192908(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 1/00- 11/14
B62B 1/00- 5/08
B62J 1/08
B62J 1/00
B62J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行方向に間隔をあけてステアリングステイ及びシートステイが立設され、車輪を支持する本体部と、
前記ステアリングステイに設けられたハンドルと、
前記シートステイの上端に固着された台座部と、
前記台座部に回動自在に連結され、乗車走行に適した配置になるよう前記台座部を上方から覆うように起立させた乗車状態と、前記台座部に荷物を載せた運搬移動に適した配置になるよう前記台座部の上方を開放するように前記ステアリングステイから離れる走行方向に傾動させた台車状態との間で切り替わるシートと、
前記台座部及び前記シートの間に介設され、乗車状態及び台車状態の各々で前記シートを規制するストッパとを備えた、乗用車両。
【請求項2】
請求項1に記載の乗用車両において、
前記ストッパが前記乗車状態で前記シートを規制する方向に力のモーメントを発生させるよう、前記乗車状態における前記シートに対する乗員の着座荷重の方向設定された、乗用車両。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の乗用車両において、
前記台座部は、前記シートステイの上端に固着された底壁部及び該底壁部の車幅方向両端から上向きに突設された一対の第1側方保持部を有し、
前記シートは、
天板部及び該天板部の車幅方向両端から下向きに突設され前記両第1側方保持部の車幅方向両外側で該第1側方保持部に回動自在に連結された一対の第2側方保持部を有するシートフレームと、
前記天板部に載置された着座部とを備え、
前記台車状態において、前記底壁部に載せた荷物の車幅方向の移動を前記両第1側方保持部及び前記両第2側方保持部の協働で規制するように構成された、乗用車両。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の乗用車両において、
前記シートステイに近付く走行方向に前記ステアリングステイに突設され、前記台車状態において前記台座部に一方の端部を載せた荷物の他方の端部を保持する保持突部を備えた、乗用車両。
【請求項5】
請求項4に記載の乗用車両において、
前記保持突部は、前記ステアリングステイに回動自在に連結され、該ステアリングステイに沿って起立させた格納状態と、荷物の他方の端部が載るように前記シートステイに近付く走行方向に突出させた展開状態との間で切り替わるように構成された、乗用車両。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の乗用車両において、
前記保持突部は、複数設けられた、乗用車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、乗用車両としては、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。この乗用車両は、ステアリングステイが立設され車輪を支持する本体部と、ステアリングステイに設けられたハンドルと、本体部に回動自在に連結されたシートステイと、該シートステイの上端に設けられたシートと、シートステイに設けられた荷台とを備える。そして、本体部に対するシートステイの回動に伴い、例えばシートが乗車走行に適した配置になるようにシートステイを起立させた乗車状態と、荷台が荷物を載せた運搬移動に適した配置になるようにシートステイを傾動させて折り畳んだ台車状態との間で切り替えられるように構成されている。
【0003】
なお、乗車状態及び台車状態の各々でシートステイを規制するストッパが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-193740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1では、本体部に対してシートステイが片持ち支持された構造である。このため、例えば台車状態における荷物の質量モーメントがシートステイの回動軸部に集中することになって、台車状態を規制するストッパの強度を十分に確保する必要がある。
【0006】
本発明の目的は、台車状態を規制するストッパに要求される強度をより低減できる乗用車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する乗用車両は、走行方向に間隔をあけてステアリングステイ及びシートステイが立設され、車輪を支持する本体部と、前記ステアリングステイに設けられたハンドルと、前記シートステイの上端に固着された台座部と、前記台座部に回動自在に連結され、乗車走行に適した配置になるよう前記台座部を上方から覆うように起立させた乗車状態と、前記台座部に荷物を載せた運搬移動に適した配置になるよう前記台座部の上方を開放するように前記ステアリングステイから離れる走行方向に傾動させた台車状態との間で切り替わるシートと、前記台座部及び前記シートの間に介設され、乗車状態及び台車状態の各々で前記シートを規制するストッパとを備える。
【0008】
この構成によれば、例えば前記台車状態において前記台座部に載せた荷物の重量は、前記本体部に立設された前記シートステイが直上から支えることになる。一方、前記シートを前記台車状態で規制する前記ストッパは、前記台座部に載せた荷物の重量によって力のモーメントが掛かる構造ではなく、前記台車状態にある前記シートが前記ステアリングステイから離れる走行方向への荷物の移動を規制できればよい。このため、前記台車状態を規制する前記ストッパに要求される強度をより低減できる。
【0009】
上記乗用車両について、前記ストッパが前記乗車状態で前記シートを規制する方向に力のモーメントを発生させるよう、前記乗車状態における前記シートに対する乗員の着座荷重の方向設定されることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、前記シートに乗員が着座する状態では、前記ストッパが前記乗車状態で前記シートを規制するように力のモーメントが作用する。このため、前記シートに乗員が着座する状態で、前記台車状態に向かって前記シートが不用意に回動することを抑制できる。
【0011】
上記乗用車両について、前記台座部は、前記シートステイの上端に固着された底壁部及び該底壁部の車幅方向両端から上向きに突設された一対の第1側方保持部を有し、前記シートは、天板部及び該天板部の車幅方向両端から下向きに突設され前記両第1側方保持部の車幅方向両外側で該第1側方保持部に回動自在に連結された一対の第2側方保持部を有するシートフレームと、前記天板部に載置された着座部とを備え、前記台車状態において、前記底壁部に載せた荷物の車幅方向の移動を前記両第1側方保持部及び前記両第2側方保持部の協働で規制するように構成されることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、前記台車状態において、前記底壁部に載せた荷物の車幅方向の移動を前記両第1側方保持部及び前記両第2側方保持部の協働で規制することで、当該荷物の運搬移動をより安定して行うことができる。
【0013】
上記乗用車両について、前記シートステイに近付く走行方向に前記ステアリングステイに突設され、前記台車状態において前記台座部に一方の端部を載せた荷物の他方の端部を保持する保持突部を備えることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、荷物の重量を、前記台座部及び前記保持突部で、即ち前記シートステイ及び前記ステアリングステイで走行方向に分散して支えることができる。
上記乗用車両について、前記保持突部は、前記ステアリングステイに回動自在に連結され、該ステアリングステイに沿って起立させた格納状態と、荷物の他方の端部が載るように前記シートステイに近付く走行方向に突出させた展開状態との間で切り替わるように構成されることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、前記乗車状態において、前記保持突部を前記格納状態に切り替えておくことで、乗車走行時に乗員が前記保持突部に煩わされることを抑制できる。
上記乗用車両について、前記保持突部は、複数設けられることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、他方の端部における荷物の重量を、前記複数の保持突部で更に分散して支えることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、台車状態を規制するストッパに要求される強度をより低減できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】乗用車両の一実施形態についてその構造を示す側面図。
図2】同実施形態の乗用車両についてその構造を示す斜視図。
図3】(a)、(b)は、同実施形態の乗用車両についてそのシートの構造を示す乗車状態及び台車状態での斜視図。
図4】(a)、(b)は、同実施形態の乗用車両についてその保持突部の構造を示す格納状態及び展開状態での斜視図。
図5】同実施形態の乗用車両についてその保持突部の構造及び作用を模式的に示す側面図。
図6】同実施形態の乗用車両についてシートに対する乗員の着座荷重の方向と支持ピンとの関係を説明する側面図。
図7】同実施形態の乗用車両についてその荷物の保持状態を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、乗用車両の一実施形態について説明する。
図1及び図2に示すように、乗用車両としての電動車10は、走行方向に間隔をあけて配置された車輪としての駆動輪11及び従動輪12を備える。駆動輪11及び従動輪12は、共に車幅方向に間隔をあけて一対で設けられている。両従動輪12は、車幅方向に互いに近接して配置されており、実質的に一つの車輪として機能する。
【0020】
また、電動車10は、両駆動輪11及び両従動輪12を支持する本体部15を備える。この本体部15には、走行方向に間隔をあけてステアリングステイ16及びシートステイ17が立設されている。
【0021】
ここで、両駆動輪11は、図示しない一対の電動モータによって個別に回転駆動されるように構成されている。従って、電動車10は、両電動モータが両駆動輪11と共に互いに同一の回転速度で回転駆動されることで走行方向に沿って直進可能である。例えば電動車10は、両電動モータが互いに同一の回転速度で正転することで、駆動輪11が従動輪12に対して先行する走行方向(以下、「順走行方向D1」ともいう)に直進する。反対に、電動車10は、両電動モータが互いに同一の回転速度で逆転することで、駆動輪11が従動輪12に対して追従する走行方向(以下、「逆走行方向D2」ともいう)に直進する。また、電動車10は、両電動モータが両駆動輪11と共に互いに異なる回転速度で回転駆動されることで走行方向に対し旋回可能である。
【0022】
なお、以下では、便宜的に順走行方向D1及び逆走行方向D2をそれぞれ「前方」及び「後方」と定義して説明する。
ステアリングステイ16は、走行方向における両駆動輪11の位置で上向きに起立しており、その上端には上方及び車幅方向両側に広がるループ状のハンドル20が設けられている。
【0023】
シートステイ17は、例えば金属板からなり、走行方向における両従動輪12の位置よりも僅かにステアリングステイ16に近付く方向、即ち順走行方向D1にずれた位置で車幅方向に並設された一対の略アーム状の縦壁部17a及びそれら両縦壁部17aの上端同士を車幅方向に接続する接続壁部17bを有して略U字状に成形されている。
【0024】
シートステイ17の上端、即ち接続壁部17bの上面には、例えば金属板からなる台座部18が固着されている。図3(a)、(b)に示すように、この台座部18は、接続壁部17bに沿って車幅方向に延伸して該接続壁部17bに固着された略弓型の底壁部18aを有する。この底壁部18aには、車幅方向に間隔をあけて一対の支持突部18dが上向きに突設されている。
【0025】
また、台座部18は、底壁部18aの車幅方向両端に接続されて互いに対向する車幅方向に突出する一対の段差18b及びそれら両段差18bの先端から上向きに突設された一対の略アーム状の第1側方保持部18cを有する。つまり、車幅方向において、両第1側方保持部18cの間の離間距離は、底壁部18aの両端の間の離間距離よりも両段差18bの分だけ縮小されている。なお、各第1側方保持部18cは、ステアリングステイ16から離れる走行方向、即ち逆走行方向D2斜め上方に段差18bから延びている。
【0026】
台座部18には、シート30が回動自在に連結されている。すなわち、シート30は、例えば金属板からなるシートフレーム31を備える。このシートフレーム31は、車幅方向に延伸する天板部31a及び該天板部31aの車幅方向両端から下向きに突設された一対の第2側方保持部31bを有して略U字状に成形されている。
【0027】
なお、天板部31aの車幅方向両端部の各々には、上下一対の質量軽減穴31dが形成されている。これら質量軽減穴31dは、電動車10の重量を軽減するためのものである。また、天板部31aの車幅方向中央部には、略円形のねじ穴31eが形成されている。
【0028】
両第2側方保持部31bは、両第1側方保持部18cの車幅方向両外側で該第1側方保持部18cに重ねられている。そして、シートフレーム31は、各隣り合う第1側方保持部18c及び第2側方保持部31bのそれらの先端部を車幅方向に貫通する支持ピン40により、当該車幅方向に延びる軸線周りに台座部18に回動自在に連結されている。
【0029】
ここで、シートフレーム31は、両支持ピン40の周りに図示反時計回りに回動すると、各第1側方保持部18cの上面(以下、「乗車状態用ストッパ部18e」という)に天板部31aの対向面(以下、「ストッパ部31c」という)が当接することで回り止めされる。このとき、天板部31aは、略水平に広がっているとともに、各第2側方保持部31bは、車幅方向における段差18bの範囲内に収まることで底壁部18aの側部に略面一に繋がっている。このようなシート30の状態を「乗車状態」という。乗車状態にあるシート30は、乗車走行に適した配置になるよう台座部18を上方から覆うように起立する。
【0030】
一方、シートフレーム31は、両支持ピン40の周りに図示時計回りに回動すると、各第1側方保持部18cの後端面(以下、「台車状態用ストッパ部18f」という)に天板部31aのストッパ部31cが当接することで回り止めされる。このとき、天板部31aは、略垂直に広がっているとともに、各第2側方保持部31bは、第1側方保持部18cの上方に配置されている。このようなシート30の状態を「台車状態」という。台車状態にあるシート30は、台座部18に荷物を載せた運搬移動に適した配置になるよう台座部18の上方を開放するように後方に傾動する。この台車状態において、例えば両支持突部18dに当接するように台座部18に載せられた適宜の荷物は、両第1側方保持部18c及び両第2側方保持部31bの協働により車幅方向の移動が規制されるとともに、天板部31aにより後方の移動が規制される。
【0031】
乗車状態用ストッパ部18e、台車状態用ストッパ部18f及びストッパ部31cは、ストッパSTを構成する。
また、シート30は、天板部31aに載置された着座部32を備える。この着座部32は、天板部31a上を車幅方向に延びており、ねじ穴31eに入れたねじによって天板部31aに締結されている。着座部32は、クッション(弾性変形する素材)であることが好ましい。ただし、着座部32は、樹脂や金属などの剛体であってもよい。
【0032】
図4(a)、(b)に示すように、ステアリングステイ16の上端部には、車幅方向に並設された一対の略アーム状の保持突部41が回動自在に連結されている。両保持突部41は、ステアリングステイ16に沿って上方に起立する回動位置(以下、「格納状態」ともいう)からステアリングステイ16に直交する互いに相反する車幅方向斜め後方に突出する回動位置(以下、「展開状態」ともいう)までの範囲で回動が許容されている。
【0033】
すなわち、図5に示すように、ステアリングステイ16には、例えば金属製のブラケット46が固着されている。このブラケット46は、ステアリングステイ16に固定されるベース部46aと、該ベース部46aの下端から車幅方向斜め後方に突出する規制片46bと、該規制片46bの上方でベース部46aから規制片46bと略平行に突出する略円盤状の支持部46cとを一体的に有する。そして、保持突部41は、その下端部を支持部46cと共に軸47が貫通することで、ブラケット46を介してステアリングステイ16に回動自在に連結されている。
【0034】
ステアリングステイ16に沿って起立する保持突部41は、ステアリングステイ16に内蔵された図示しない磁石に吸着されることで格納状態を保持する。一方、軸47の周りに図示反時計回りに回動した保持突部41は、規制片46bとの当接により回動規制されることで展開状態を保持する。
【0035】
ここで、図1及び図2に示すように、シート30の乗車状態では、乗員は、順走行方向D1に向いてシート30に着座しハンドル20を握るとともに、両足の足裏を本体部15においた姿勢を取る。これにより、乗員は、電動車10に座り乗りする状態で電動での移動が可能となる。電動車10の走行方向が基本的に順走行方向D1、即ち前方になることはいうまでもない。
【0036】
図6は乗車状態にあるシート30の側面図である。図6に示すように、シート30の乗車状態では、乗員は、支持ピン40の前方斜め上方に位置する着座部32の前上端に着座することになる。そして、シート30に対する乗員の着座荷重の方向F1は、支持ピン40の前方で後方斜め下方に延びている。つまり、ストッパSTが乗車状態でシート30を規制する方向に力のモーメント(即ち反力)を発生させるよう、着座荷重の方向F1設定されている。
【0037】
また、乗車状態において、シート30は、両第2側方保持部31bが前方に張り出していることで、その重心点Gが支持ピン40よりも前方に位置する。従って、シート30の乗車状態では、ストッパSTが乗車状態でシート30を規制する方向に力のモーメント(即ち反力)を発生させるよう、シート30単体での荷重の方向も設定されている
【0038】
図7に示すように、シート30が台車状態にあり、且つ、両保持突部41が展開状態にあるとき、例えば収納物を含むカゴ等の荷物Bの前端部及び後端部がそれぞれ両保持突部41及び台座部18(両支持突部18d)に載る。このとき、荷物Bは、下端部が両第1側方保持部18cにより車幅方向に挟まれるとともに、両第1側方保持部18cの上方で両第2側方保持部31bにより車幅方向に挟まれることで、当該車幅方向への移動が規制されている。特に、両第2側方保持部31bは、両第1側方保持部18cの車幅方向外側に配置されていることで、上方に向かって拡開されるカゴの形状に合わせてその車幅方向への移動を好適に規制する。
【0039】
また、荷物Bは、前方にステアリングステイ16が近接するとともに、後方にシートフレーム31の天板部31a(図3参照)が近接することで、前後方向の移動が規制されている。
【0040】
そして、電動車10がこのような状態にあるとき、乗員などの利用者は、電動車10よりも順走行方向D1側の位置で逆走行方向D2に向いて立ってハンドル20を握る姿勢を取る。これにより、利用者は、荷物Bを載せた状態で人力又は電動での移動が可能となる。電動車10の走行方向が基本的に逆走行方向D2、即ち後方になることはいうまでもない。
【0041】
本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)本実施形態では、例えば台車状態において台座部18に載せた荷物Bの重量は、本体部15に立設されたシートステイ17が直上から支えることになる。このため、荷重による強度分散と支持構造への負担を減少できる。一方、シート30を台車状態で規制するストッパSTは、荷物Bの重量を支える必要性はなく、従って台座部18に載せた荷物Bの重量によって力のモーメントが掛かる構造ではなく、台車状態にあるシート30が荷物Bの後方移動を規制できればよい。このため、台車状態を規制するストッパSTに要求される強度をより低減できる。そして、ひいてはストッパSTの製品コストや製造コストをより削減できる。
【0042】
(2)本実施形態では、ストッパSTが乗車状態でシート30を規制する方向に力のモーメント(即ち反力)を発生させるよう、例えば乗員がシート30に着座したり寄り掛かったりした際の荷重方向、即ち乗車状態におけるシート30に対する乗員の着座荷重の方向F1設定されている。つまり、乗員の着座荷重の方向F1は、シート30を跳ね上げる支持ピン40周りの回動方向に作用しないように設定されている。従って、シート30に乗員が着座する状態では、ストッパSTからシート30に乗車状態でシート30を規制するように力のモーメントが作用する。このため、シート30に乗員が着座する状態で、台車状態に向かってシート30が不用意に回動することを抑制できる。
【0043】
また、乗車状態において、シート30は、両第2側方保持部31bが前方に張り出していることで、その重心点Gが回動中心よりも前方に位置する。つまり、ストッパSTが乗車状態でシート30を規制する方向に力のモーメント(即ち反力)を発生させるよう、乗車状態におけるシート30単体での荷重の方向が設定されている。このため、シート30単体の状態であっても、台車状態に向かってシート30が不用意に回動することを抑制できる。換言すれば、荷物Bの車幅方向の保持に係る両第2側方保持部31bを、前述のシート30単体での不用意な回動を抑制するための重心点Gの調整に利用している。
【0044】
(3)本実施形態では、台座部18は、シートステイ17の上端に固着された底壁部18a及び該底壁部18aの車幅方向両端から上向きに突設された一対の第1側方保持部18cを有する。シート30は、天板部31a及び該天板部31aの車幅方向両端から下向きに突設され両第1側方保持部18cの車幅方向両外側で該第1側方保持部18cに回動自在に連結された一対の第2側方保持部31bを有するシートフレーム31と、天板部31aに載置された着座部32とを備える。そして、台車状態において、底壁部18aに載せた荷物Bの車幅方向の振れなどに起因する移動を両第1側方保持部18c及び両第2側方保持部31bの協働で規制することで、当該荷物Bの運搬移動をより安定して行うことができる。
【0045】
(4)本実施形態では、ステアリングステイ16に、台車状態において台座部18に一方の端部を載せた荷物Bの他方の端部を保持する保持突部41が突設されている。従って、荷物Bの重量を、台座部18及び保持突部41で、即ちステアリングステイ16及びシートステイ17で前後方向に分散して支えることができる。
【0046】
(5)本実施形態では、保持突部41は、ステアリングステイ16に回動自在に連結され、該ステアリングステイ16に沿って起立させた格納状態と、荷物Bの他方の端部が載るように後方に突出させた展開状態との間で切り替わるように構成されている。
【0047】
従って、乗車状態において、保持突部41を格納状態に切り替えておくことで、乗車走行時に乗員が保持突部41に煩わされることを抑制できる。また、荷物Bの運搬等をしない状態では、保持突部41を格納状態に切り替えておくことで、電動車10全体としての意匠性を高めることができる。
【0048】
(6)本実施形態では、保持突部41は、複数設けられている。従って、他方の端部における荷物Bの重量を、複数の保持突部41で更に分散して支えることができる。そして、一つの保持突部41に要求される強度を低減できる分、その構造をより簡素化できる。
【0049】
(7)本実施形態では、荷物Bを電動車10に一体固定された二つの構造体に跨らせてその重量を分散させたことで、個々の構造をより簡略化できる。また、両構造体の片側は上側から圧縮方向の荷重を掛けて無理のない荷物Bの荷重分担を行う支持構造を採用し、もう片側は展開状態に切り替えた二つの保持突部41で分散させた荷重を掛ける支持構造を採用した。このように、全体で荷物Bの重量を分散できる構造にすることで、シンプル且つ低コストで荷物Bを運搬できる。
【0050】
(8)本実施形態では、金属板からなる台座部18の乗車状態用ストッパ部18e及び台車状態用ストッパ部18fと、同じく金属板からなるシートフレーム31のストッパ部31cとからなる極めて簡易な構造でストッパSTを構成できる。そして、乗車状態用ストッパ部18e及び台車状態用ストッパ部18fにストッパ部31cをそれぞれ当接させるだけでシート30を乗車状態及び台車状態にそれぞれ規制できる。
【0051】
特に、乗車状態におけるシート30に対する乗員の着座荷重の方向F1と支持・回動軸、即ち支持ピン40の位置関係を適正にすることで、乗車状態での位置を自然的に保持でき、台車状態に切り替えたいときにはシート30を簡易に回動させればよい。
【0052】
以上により、乗車状態及び台車状態のいずれか一方からいずれか他方に切り替える際、例えば規制解除のための操作をしたり、切り替え後の規制状態の機能確認をしたりといった煩わしさを解消できる。
【0053】
(9)本実施形態では、荷物Bの前端部を保持する保持突部41は、ステアリングステイ16に一体固定されたブラケット46に回動自在に連結されている。従って、保持突部41を格納状態及び展開状態の間で簡易な操作で切り替えることができる。
【0054】
(10)本実施形態では、両保持突部41は、展開状態において互いに相反する車幅方向斜め後方に突出することで、荷物Bの前端部を保持する実質的な車幅方向の範囲を増加できる。そして、各保持突部41の寸法を徒に大きくしなくても、荷物Bの前端部をより安定した状態で保持できる。
【0055】
(11)本実施形態では、例えばシート30を乗車状態又は台車状態に規制するための複雑な構造のストッパが不要であることで、製品コストや製造工数を削減できる。
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0056】
・前記実施形態において、シート30の乗車状態で、保持突部41を展開状態に切り替えてもよい。この場合、乗員が電動車10に座り乗りする状態で移動する際、いわゆるレジ袋などの買物袋を引っ掛けるフックとして保持突部41を利用できる。
【0057】
・前記実施形態において、保持突部41は、一つであってもよいし、3つ以上であってもよい。また、展開状態における保持突部41は、車幅方向に傾斜することなく後方に向かって真っ直ぐに突出していてもよい。
【0058】
・前記実施形態において、保持突部41は、後方に常時突出する状態でステアリングステイ16に固定されていてもよい。この場合、保持突部41の突出長を抑制して該保持突部41に荷物B(カゴ)の開口に形成されたフランジを引っ掛けるようにしてもよい。このようにして荷物Bを保持すれば、保持突部41が相対的に小さくなったとしても安定した運搬を実現できる。
【0059】
・前記実施形態において、保持突部41を省略してもよい。つまり、運搬移動に係る荷物は、台座部18に載せるだけのものであってもよい。
・前記実施形態において、台座部18の両段差18bを省略してもよい。つまり、両第1側方保持部18cは、底壁部18aの車幅方向両端に直結されていてもよい。また、台座部18の両段差18b及び両第1側方保持部18cを共に省略してもよい。つまり、底壁部18aに載せた荷物の車幅方向の移動を両第1側方保持部18cで規制しなくてもよい。この場合、台座部18は、例えば底壁部18aの後端でシートフレーム31に回動自在に連結すればよい。
【0060】
・前記実施形態において、シートフレーム31の両第2側方保持部31bは、両第1側方保持部18cの車幅方向両内側で該第1側方保持部18cに回動自在に連結されてもよい。また、シートフレーム31の両第2側方保持部31bを省略してもよい。つまり、底壁部18aに載せた荷物の車幅方向の移動を両第2側方保持部31bで規制しなくてもよい。この場合、シートフレーム31は、例えば天板部31aの後端で台座部18に回動自在に連結すればよい。
【0061】
・前記実施形態において、ストッパSTが乗車状態でシート30を規制する方向に力のモーメント(即ち反力)を発生させるよう、乗車状態におけるシート30に対する乗員の着座荷重の方向設定されていなくてもよい。
【0062】
・前記実施形態において、電動車10に座り乗りする状態であっても、人力での移動が可能となるよう、足などの操作力を駆動輪11に伝達する適宜の駆動装置を設置してもよい。
【符号の説明】
【0063】
B…荷物、ST…ストッパ、10…電動車(乗用車両)、11…駆動輪(車輪)、12…従動輪(車輪)、15…本体部、16…ステアリングステイ、17…シートステイ、18…台座部、18a…底壁部、18c…第1側方保持部、20…ハンドル、30…シート、31…シートフレーム、31a…天板部、31b…第2側方保持部、32…着座部、41…保持突部、46…ブラケット。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7