(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】配管システム
(51)【国際特許分類】
E03B 7/07 20060101AFI20230314BHJP
F16L 57/00 20060101ALI20230314BHJP
E03B 7/09 20060101ALN20230314BHJP
F16L 41/16 20060101ALN20230314BHJP
F16L 37/20 20060101ALN20230314BHJP
F16L 3/00 20060101ALN20230314BHJP
【FI】
E03B7/07 Z
F16L57/00 C
E03B7/09
F16L41/16
F16L37/20
F16L3/00 H
(21)【出願番号】P 2019090880
(22)【出願日】2019-05-13
【審査請求日】2022-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】中村 寛
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 護
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-314156(JP,A)
【文献】特開2002-212936(JP,A)
【文献】特開平10-132181(JP,A)
【文献】特開2003-278985(JP,A)
【文献】特開2009-056407(JP,A)
【文献】特開2013-072525(JP,A)
【文献】登録実用新案第3082693(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03B 7/07
F16L 57/00
E03B 7/09
F16L 41/16
F16L 37/20
F16L 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3つの開口を備えた三方分岐配管継手と、
一端が前記三方分岐配管継手における第1の開口に接続され、他端が有孔管に接続された第1の管状部材と、
一端が前記三方分岐配管継手における第2の開口に接続され、他端が導水先に引き回された第2の管状部材と、
前記三方分岐配管継手における第3の開口を開放可能に閉塞する開閉弁と、
前記三方分岐配管継手における第3の開口に設けられて、カムアームを備えたカムロックカプラーが取り外し可能に接続されるカムロックアダプターと、
前記第3の開口を鉛直方向上側に向けた状態で前記三方分岐配管継手を固定する固定部材と、
を備えたことを特徴とする配管システム。
【請求項2】
前記固定部材は、前記第3の開口を前記三方分岐配管継手の設置対象とする水路における水面よりも鉛直方向上側に位置づけた状態で前記三方分岐配管継手を固定することを特徴とする請求項1に記載の配管システム。
【請求項3】
前記三方分岐配管継手に取り外し可能に取り付けられ、前記第3の開口を開放可能に閉塞するキャップを備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の配管システム。
【請求項4】
前記三方分岐配管継手は、亜鉛メッキが施された鋳鉄によって形成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の配管システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、用水の取水に用いる配管システムに関する。
【背景技術】
【0002】
水力発電所においては、発電施設に導水する水路から取水した水を、ダム管理所における雑用水として使用している。水路から取水した水は、ダム管理所に設けられた貯水槽と水路とを接続する導水路を構成する配管を介して、ダム管理所に設けられた貯水槽に導水している。貯水槽に導水した水は、ポンプを用いてダム管理所の各設備に給水している。
【0003】
導水路を構成する配管のうち水路側の配管の端部には、円筒形状をなし、外周壁を貫通する複数の孔を備えた有孔管が設けられている。有孔管を設けることにより、水路における落葉などの異物を有孔管の外壁によって堰き止め、複数の孔を通過した水のみを配管内に流入させることができ、引水への異物の混入を防止することができる。
【0004】
配管内への流入が遮られた落葉などの異物は、配管内に流入する水の流れによって、有孔管の外壁に押し付けられた状態になる。このため、有孔管の外壁には、水路を流れる水に混入している落葉などの異物が、経時にともなって徐々に付着する。有孔管の外表面に付着した異物が孔を塞ぐと、貯水槽への給水が停止し、貯水槽内の貯水量が減ってポンプが空運転することになってしまう。ポンプの空運転はモーターなどの焼損の原因となるため、定期的に有孔管に付着した異物を取り除く作業をおこなう。
【0005】
有孔管に付着した異物を取り除く作業などに起因して配管内にエアが混入すると、貯水槽までの導水がうまくいかなくなるため、当該作業に際しては、あわせて、配管内のエアを強制的に除去するエア抜き作業をおこなう。具体的に、エア抜き作業に際しては、導水路を構成する配管の途中に設けられた三方弁が備える3つの開口のうちの1つにエア抜き用のポンプに接続されるサクションホースを接続することによって、配管の途中からポンプにより強制的に水を送り込み有孔管および配管終端からエアを強制的に除去する。
【0006】
従来、エア抜き用のポンプに接続されるサクションホースを接続する開口(サクションホース接続口)は、外周面に設けられた雄ネジに、当該サクションホースの端部に設けられたジョイントにおける雌ネジを螺合させることによって、当該ホースと接続されるねじ込み式であった。
【0007】
関連する技術として、具体的には、従来、たとえば、先端部に吸込ノズルを設けた可撓性の吸込管を、配水管に立設した分岐部に垂下して、配水管の流水中に含まれる懸濁物質を吸込ノズルから抜き出す管内濁質排出装置において、吸込管に上端部を止着した位置決めガイドを吸込管の所定位置まで垂下させ、吸込ノズルの吸込口を上流側の管頂方向に向かって上端縁から下端縁に傾斜拡開させるとともに、L字状のガイドフレームの基端部を吸込口の上端縁と下端縁に連結した管内濁質排出装置に関する技術があった(たとえば、下記特許文献1を参照。)。
【0008】
また、関連する技術として、具体的には、従来、たとえば、配水管の流水を吸込側の循環配管に抜き出して、流水中に含まれる懸濁物質を濁質除去ユニットで分離した後、分離水を配水管に返送させる濁質回収装置において、配水管の分岐部にノズル収納ケースを着脱自在に立設し、ノズル収納ケースに垂下した吸込管の下端部に可撓性の吸込ノズルを連結すると共に、吸込ノズルを配水管の上流側の管底に摺接させて先端部の先端ノズルを管頂方向に拡開し、吸込ノズルの曲折部に中間ノズルを配設した管内濁質除去装置に関する技術があった(たとえば、下記特許文献2を参照。)。
【0009】
また、関連する技術として、具体的には、従来、たとえば、配水管の流水を循環配管に抜き出して、流水中に含まれる濁質を濁質除去ユニットで分離した後、分離水を配水管に返送する濁質回収装置において、配水管に設置した分岐部に配管ユニットを着脱自在に配設し、先端部に吸込ノズルを有する吸込管を分岐部に垂下して、後端部を配管ユニットに開口した吸込口に係止し、吸込ノズルの先端部を管底上流側に向かって開口すると共に、吸込管の接続口と配管ユニットの吐出口に循環配管を連結した管内濁質除去装置に関する技術があった(たとえば、下記特許文献3を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2009-30257号公報
【文献】特開2008-38396号公報
【文献】特開2007-138561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述した従来の技術は、サクションホース接続口がねじ込み式であったため、エア抜き作業に際して、エア抜き用のポンプに接続されるサクションホースをサクションホース接続口に接続する作業に手間と時間がかかるという問題があった。
【0012】
また、上述した従来の技術は、導水路を構成する配管が常時水中に位置づけられているため、サクションホース接続口に設けられた雄ネジが経時にともなって劣化し、ネジ山があいまいになって、エア抜き作業に際して、エア抜き用のポンプに接続されるサクションホースをサクションホース接続口に接続する作業に一層の手間と時間がかかるという問題があった。
【0013】
また、上述した従来の技術は、サクションホース接続口におけるネジ山が劣化している状態では、水密性が甘くなり、エア抜き作業における作業効率が低下するおそれがあるという問題があった。また、サクションホース接続口におけるネジ山が劣化している状態は、サクションホースの接続が困難な状態であるため、水密性を確保した接続を確立するまでに手間がかかり、エア抜き作業における作業効率が低下するという問題があった。
【0014】
また、上述した特許文献1~3に記載された従来の技術は、いずれも、配水管に導入された水が配水管から分岐する分岐部を介して流出したり、あるいは、分岐部を介して配水管へ異物が侵入しないように、分岐部に開閉弁を設けるとともに、分岐部に接続する中間ノズルにも開閉弁を設けており、構造が複雑であり、かつ、分岐のための操作が煩雑であるという問題があった。
【0015】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、用水配管のエア抜き作業にかかる作業者の負担軽減および作業効率の向上を図ることができる配管システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明にかかる配管システムは、3つの開口を備えた三方分岐配管継手と、一端が前記三方分岐配管継手における第1の開口に接続され、他端が有孔管に接続された第1の管状部材と、一端が前記三方分岐配管継手における第2の開口に接続され、他端が導水先に引き回された第2の管状部材と、前記三方分岐配管継手における第3の開口を開放可能に閉塞する開閉弁と、前記三方分岐配管継手における第3の開口に設けられて、カムアームを備えたカムロックカプラーが取り外し可能に接続されるカムロックアダプターと、前記第3の開口を鉛直方向上側に向けた状態で前記三方分岐配管継手を固定する固定部材と、を備えたことを特徴とする。
【0017】
また、この発明にかかる配管システムは、上記の発明において、前記固定部材が、前記第3の開口を前記三方分岐配管継手の設置対象とする水路における水面よりも鉛直方向上側に位置づけた状態で前記三方分岐配管継手を固定することを特徴とする。
【0018】
また、この発明にかかる配管システムは、上記の発明において、前記三方分岐配管継手に取り外し可能に取り付けられ、前記第3の開口を開放可能に閉塞するキャップを備えたことを特徴とする。
【0019】
また、この発明にかかる配管システムは、上記の発明において、前記三方分岐配管継手が、亜鉛メッキが施された鋳鉄によって形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
この発明にかかる配管システムによれば、用水配管のエア抜き作業にかかる作業者の負担軽減および作業効率の向上を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】この発明にかかる実施の形態の配管システムの構成を示す説明図である。
【
図3】カムロックカプラーの取り付け手順を示す説明図(その1)である。
【
図4】カムロックカプラーの取り付け手順を示す説明図(その2)である。
【
図5】カムロックカプラーの取り付け手順を示す説明図(その3)である。
【
図6】配管システムにポンプを接続した状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる配管システムの好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0023】
(配管システムの構成)
まず、この発明にかかる実施の形態の配管システムの構成について説明する。
図1は、この発明にかかる実施の形態の配管システムの構成を示す説明図である。
【0024】
図1において、この発明にかかる実施の形態の配管システム100は、三方分岐配管継手110と、第1の管状部材120と、第2の管状部材130と、開閉弁(図示を省略する)と、カムロックアダプター140と、固定部材150と、を備えている。
【0025】
三方分岐配管継手110は、管状部材どうしを接続する管状の構造体であり、たとえば、ステンレス鋼やアルミ合金などの耐食性に優れた材料を用いて形成されている。三方分岐配管継手110は、亜鉛メッキが施された鋳鉄によって形成されていることが好ましい。
【0026】
配管システム100において、三方分岐配管継手110は、たとえば、ダム管理所の近くなど、作業者によるアクセスが良好な場所に設けられていることが好ましい。三方分岐配管継手110は、たとえば、鋼製であってもよく、塩化ビニルなど発錆による腐食がない材質によって形成されていてもよい。
【0027】
三方分岐配管継手110は、3つの開口を備えている。3つの開口のうちの2つの開口である第1の開口111および第2の開口112は、それぞれ、直線管形状をなす胴部の軸心方向における両端に設けられている。2つの開口111、112には、それぞれ、管状部材(第1の管状部材120および第2の管状部材130)の一端が接続されている。
【0028】
管状部材は、たとえば、ブレードホースなどと称される、複数の層を重ね合わせたホースによって実現することができる。管状部材は、たとえば、重ね合わされる複数の層のうちの少なくとも1層が、メッシュ状の補強糸によって被覆されたメッシュホースであることが好ましい。メッシュホースによって管状部材を実現することにより、管状部材の強度や耐久性を確保することができる。
【0029】
また、管状部材は、重ね合わされる複数の層のうちの少なくとも1層が、黒色などに着色されて外光を遮断する防藻層とされた防藻構造をなすことが好ましい。防藻構造をなす管状部材を用いることにより、管状部材の内側における水藻の増殖を防止し、水藻による管状部材の詰まりを防止することができる。
【0030】
2つの開口111、112にそれぞれ接続された管状部材のうち、一方の開口である第1の開口111に一端が接続された第1の管状部材120の他端には、有孔管121が接続されている。有孔管121は、円筒形状をなし、外周壁を貫通する複数の孔122を備えている。有孔管121は、軸心方向における一端が閉塞されており、開放された他端を介して、第1の開口111に一端が接続された第1の管状部材120の他端に接続されている。有孔管121は、たとえば、発電施設に導水する水路に設置されている。
【0031】
2つの開口111、112にそれぞれ接続された管状部材のうち、他方の開口である第2の開口112に一端が接続された第2の管状部材130の他端は、ダム管理所などに設けられた貯水槽(
図7を参照)に引き回されている。貯水槽には、図示を省略するポンプが設けられている。貯水槽に設けられたポンプを駆動することにより、発電施設に導水する水路の水を有孔管121を介して第1の管状部材120内に吸い込み、吸い込んだ水を三方分岐配管継手110および第2の管状部材130を介して貯水槽に取水することができる。貯水槽に溜めた水は、ダム管理所の各設備に給水される。
【0032】
第1の管状部材120および第2の管状部材130は、それぞれ、1本のホースによって実現してもよく、継手を介して複数連結して構成されるものであってもよい。三方分岐配管継手110と、第1の管状部材120および第2の管状部材130と、によって、発電施設に導水する水路から貯水槽まで至る導水路が形成される。
【0033】
3つの開口のうちの残余の1つの開口である第3の開口113は、直線状の胴部の軸心方向における途中部分から分岐した、管状の分岐部114の先端に設けられている。開閉弁は、分岐部114の軸心方向における途中位置に設けられている。開閉弁は、たとえば、ボールバルブによって実現することができる。
【0034】
ボールバルブは、貫通孔が設けられたボールをステムを介して弁体内において回転可能に連結することによって構成され、弁体内でステムを軸心としてボールを回転させることによって流体の流れを制御する。ステムは、一端が弁体内においてボールに連結され、他端が弁体を貫通してハンドルレバー115に連結されている。
【0035】
これにより、ステムを軸心としてハンドルレバー115を揺動させ、弁体内においてボールを回転させることができる。開閉弁としてボールバルブを用いることにより、取付スペースや全開時における圧力損失を小さく抑え、ステムを90度回転させることによって全開/全閉の操作をおこなうことができるため高い操作性を確保することができる。
【0036】
分岐部114において、第3の開口113側の端部には、カムロックアダプター140が設けられている。カムロックアダプター140は、カムロックカプラー141とともに、配管継手のうちの一つであるカムロック(レバーロック、レバーカップリング)機構142を構成する。
【0037】
固定部材150は、第3の開口113を鉛直方向上側に向けた状態で、三方分岐配管継手110を支持する。これにより、第3の開口113は、鉛直方向上側に向けて開口する。固定部材150は、たとえば、T足金具および立配管金具によって実現することができる。固定部材150は、たとえば、ステンレス鋼やアルミ合金など、耐食性が高い材料を用いて形成することができる。
【0038】
固定部材150は、T足金具における足部分をネジなどによって水路の壁面などに固定し、T足金具における腕部分に連結された立配管金具によって三方分岐配管継手110の分岐部114を固定することによって、三方分岐配管継手110を支持する。T足金具および立配管金具によって固定部材150を実現することにより、簡易な構成によって確実に三方分岐配管継手110を支持することができる。
【0039】
三方分岐配管継手110の分岐部114には、針金や鎖、結束バンドなどの連結部材116を介してキャップ117が連結されている。キャップ117は、カムロックアダプター140の外径寸法と同等の内径寸法の円筒形状をなし、軸心方向における一端が閉塞されている。キャップ117は、カムロックアダプター140にカムロックカプラー141を取り付けていない状態において分岐部114に被せられ、第3の開口113を閉塞する。針金や鎖、結束バンドなどを介して分岐部114にキャップ117を連結することにより、キャップ117の紛失を防止するとともに、必要時に容易にキャップ117を分岐部114に被せることができる。
【0040】
(カムロック機構142の構成)
つぎに、カムロック機構142の構成について説明する。
図2は、カムロック機構142の構成を示す説明図である。
図2において、カムロックアダプター140は、分岐部114の軸心方向において、外周寸法が周囲よりも小さく凹んだアダプター溝201を備えた円筒形状をなす。アダプター溝201は、カムロックアダプター140の軸心周りに環形状をなす。
【0041】
カムロックアダプター140は、軸心方向における一端側の内周面に形成された雌ネジ202を備えている。カムロックアダプター140は、分岐部114の先端側(分岐部114における第3の開口113近傍)の外周面に設けられた雄ネジに、雌ネジ202を螺合させることによって、分岐部114に取り付けられている。
【0042】
カムロックアダプター140は、カムロックカプラー141が連結されることによってカムロック機構142を構成する。カムロックカプラー141は、カムロックアダプター140の外径寸法と同等の内径寸法の円筒形状をなす連結管203を備えている。連結管203には、軸心方向における一端側にサクションホース204が連結されている。サクションホース204は、流体を搬送する配管であって、公知の各種のものを用いることができる。具体的に、サクションホース204は、軽量化されたタイプ、耐圧仕様タイプ、透明あるいは不透明などの透明性の仕様などにおいて多様な種類があり、用途に適したサクションホース204を用いることができる。
【0043】
連結管203には、外周壁を貫通する一対の貫通孔205が設けられている。一対の貫通孔205は、連結管203の軸心を間にして対向する位置に設けられている。連結管203の外周側には、カムレバー206aを備えたカム206が連結されている。カム206は、連結管203の軸心を間にして対向する位置に設けられている。カム206は、それぞれ、板カム、より具体的には円板カムによって実現される。カム206は、それぞれ、カム軸207を介して、カム軸207を中心として回動可能に連結管203に連結されている。
【0044】
カム軸207は、貫通孔205ごとに設けられたリブ対208の間に設けられ、両端がリブ対208によって支持されることによりリブ対208の間に架け渡されている。リブ対208は、それぞれ、連結管203の軸心を中心とする円周方向に沿って対向するように、貫通孔205の周縁近傍であって連結管203の外周面から外周方向に突出している。
【0045】
カム206は、カム軸207周りに形成される外周縁の位置に応じて、カム軸207から外周縁までの距離が異なっている。カム206は、それぞれ、カムロックアダプター140にカムロックカプラー141を嵌合させた状態において、カム206の外周縁のうち連結管203の内周側に位置する外周縁の一部が、アダプター溝201と対向する位置に設けられている。
【0046】
カム軸207から外周縁までの距離は、外周縁の位置に応じて異なる。具体的に、カム軸207から外周縁までの距離は、もっとも短い位置において、カムロックアダプター140にカムロックカプラー141を嵌合させた状態のカム軸207から、カムロックアダプター140におけるアダプター溝201の内壁面までの距離よりも短い。このため、カムロックアダプター140にカムロックカプラー141を嵌合させ、カム206の外周縁のうちカム軸207から外周縁までの距離がもっとも短い位置を、カムロックアダプター140(カムロックカプラー141)の半径方向に沿ってアダプター溝201に対向させた状態においては、カム206の外周縁がカムロックアダプター140の外周面から離間する。
【0047】
また、具体的に、カム軸207から外周縁までの距離は、もっとも長い位置において、カムロックアダプター140にカムロックカプラー141を嵌合させた状態のカム軸207から、カムロックアダプター140におけるアダプター溝201の内壁面までの距離と同等程度に設定されている。より具体的に、カム軸207から外周縁までの距離は、もっとも長い位置において、カムロックアダプター140にカムロックカプラー141を嵌合させた状態のカム軸207から、カムロックアダプター140におけるアダプター溝201の内壁面までの距離よりも若干大きくなるように設定されている。
【0048】
このため、カムロックアダプター140にカムロックカプラー141を嵌合させ、カム206の外周縁のうちカム軸207から外周縁までの距離がもっとも長い位置を、カムロックアダプター140(カムロックカプラー141の連結管203)の半径方向に沿ってアダプター溝201に対向させた状態においては、カム206の外周縁がカムロックアダプター140の外周面(アダプター溝201の内壁面)に当接する。
【0049】
この実施の形態においては、カムロックアダプター140にカムロックカプラー141を嵌合させた場合に、カム206の外周縁のうちカム軸207から外周縁までの距離がもっとも短い位置が、カムロックアダプター140(カムロックカプラー141の連結管203)の半径方向に沿ってアダプター溝201に対向する状態におけるカム206の位置を「開放位置」として説明する。
【0050】
また、この実施の形態においては、カムロックアダプター140にカムロックカプラー141を嵌合させた場合に、カム206の外周縁のうちカム軸207から外周縁までの距離がもっとも長い位置が、カムロックアダプター140(カムロックカプラー141)の半径方向に沿ってアダプター溝201に対向する状態におけるカム206の位置を「ロック位置」として説明する。
【0051】
カム206の外周縁の一部であって、カムロックアダプター140にカムロックカプラー141を嵌合させた状態で、カム206が開放位置とロック位置との間において回動する間に、アダプター溝201に対向する位置は、カム軸207から外周縁までの距離が、もっとも短い距離よりも長く、かつ、もっとも長い位置における距離よりも短くなるように設定されている。カム軸207から外周縁までの距離が、もっとも長い位置における距離よりも短く、かつ、もっとも短い距離よりも長くなるように設定された位置におけるカム軸207から外周縁までの距離は、カムロックアダプター140にカムロックカプラー141を嵌合させた状態のカム軸207から、カムロックアダプター140におけるアダプター溝201の内壁面までの距離と同等程度に設定されている。
【0052】
このため、カム206を開放位置からロック位置まで回動させる場合、カム206の外周縁は、カム206がロック位置まで回動する前に、カムロックアダプター140の外周面に当接する。この実施の形態においては、カムロックアダプター140にカムロックカプラー141を嵌合させた状態で、カム206が開放位置からロック位置まで回動する前に、カム206の外周縁がアダプター溝201の内壁面に当接する位置を「仮ロック位置」として説明する。
【0053】
カム206の外周縁のうち、開放位置とロック位置との間であって、かつ、仮ロック位置とロック位置との間におけるカム軸207から外周縁までの距離は、すべて、カムロックアダプター140にカムロックカプラー141を嵌合させた状態のカム軸207から、カムロックアダプター140におけるアダプター溝201の内壁面までの距離と同等程度に設定されている。これにより、カム206が仮ロック位置からロック位置に回動する間、カムロックカプラー141はカムロックアダプター140に連結された状態を維持する。
【0054】
カムレバー206aは、カム206と一体に形成されている。カムレバー206aは、カム206の外周縁の一部から、カム軸207から離反する方向に突出している。カムレバー206aは、カム軸207周りにおけるカム206の回動にともなって、ロック位置と開放位置との間において揺動する。具体的に、カムレバー206aは、カム206がロック位置に位置づけられている状態においてロック位置に位置づけられ、カムレバー206aの先端(カム軸207とは反対側の端部)が連結管203の外周面にもっとも近接する。また、カムレバー206aは、カム206が開放位置に位置づけられている状態において開放位置に位置づけられ、先端がカム軸207よりもカムロックアダプター140から離間する位置に位置づけられる。
【0055】
このように、カムロックカプラー141においては、カムレバー206aの位置によって、カム206がロック位置に位置づけられているか開放位置に位置づけられているかを容易かつ確実に把握させることができる。また、カムレバー206aの先端は、てこの原理における力点として作用し、カム軸207から外周縁までの距離がもっとも長い位置は、カムロック機構142をロックする際の作用点として作用する。
【0056】
(エア抜き作業の作業手順)
つぎに、この発明における実施の形態の配管システム100における、エア抜き作業の作業手順について説明する。エア抜き作業に際しては、まず、有孔管121に付着した異物を取り除く。つぎに、三方分岐配管継手110からキャップ117を取り外し、カムロックアダプター140にカムロックカプラー141を取り付ける。
【0057】
図3~
図5は、カムロックカプラー141の取り付け手順を示す説明図である。カムロックカプラー141の取り付けに際しては、作業者は、まず、
図3に示すように、カムロックカプラー141が備えるカムレバー206aを開放位置に位置づける。つぎに、作業者は、カムレバー206aを開放位置に位置づけた状態で、カムロックカプラー141をカムロックアダプター140に嵌め込む。そして、作業者は、一対のカムレバー206aを両手で持ち、カムレバー206aをロック位置に位置づける。カムレバー206aは、両方を同時に操作する。
【0058】
これにより、カム206がカム軸207周りに回動し、
図4に示す仮ロック位置を経由して、
図5に示すロック位置に位置づけられ、連結管203の軸心方向における、カムロックアダプター140に対するカムロックカプラー141の位置が固定される。カム206がロック位置に位置づけられた状態においては、カムロックアダプター140が一対のカム206によって狭持された状態となるため、作業者は、カムロックアダプター140の脱落を気にすることなく以降の作業をおこなうことができる。
【0059】
つぎに、
図6に示すように、カムロックカプラー141に連結されたサクションホース204に接続されているポンプ601を動作させる。
図6は、配管システム100にポンプ601を接続した状態を示している。ポンプ601は水流を発生させる。これにより、水路内の水を配管システム100内に送り込み、配管システム100内に滞留しているエアを有孔管121および配管終端(第2の管状部材130の他端)から追い出すことができる。
【0060】
配管システム100においては、第3の開口113が鉛直方向上向きに開口するように、固定部材150によって三方分岐配管継手110が固定されているため、配管システム100内のエアが分岐部114に溜まりやすくなっている。これにより、配管システム100内に滞留しているエアを有孔管121および配管終端(第2の管状部材130の他端)から追い出すことができる。
【0061】
また、カムロック機構142によってエア抜き用のポンプ601を接続することにより、カムロックアダプター140に対するカムロックカプラー141のロックが不十分である場合は、カムレバー206aが仮ロック位置に位置づけられていたり、一方のカムレバー206aのみがロック位置に位置づけられていたりすることによる気密低下を、目視により容易かつ迅速に判断することができる。これにより、カムロックカプラー141の取り付けをやり直すなどの対応を迅速にとることができる。
【0062】
配管システム100内のエアを除去すると、エアを除去する前と比較して、三方分岐配管継手110における水位が上昇し、貯水槽への給水量が増加する。第3の開口113が鉛直方向上向きに開口しているため、作業者は、貯水槽における給水量の変動を確認することなく、三方分岐配管継手110における水位を目視することによって、エアが充分に抜けたかどうかを容易かつ確実に判断することができる。
【0063】
作業者は、エアが充分に抜けたことを確認した後に、カムロックアダプター140からカムロックカプラー141を取り外す。カムロックカプラー141の取り外しに際しては、作業者は、ロック位置に位置づけられているカムレバー206aを両手で把持して、開放位置に位置づける。このとき、固定部材150によって三方分岐配管継手110の位置が固定されているため、作業者は、両手を使用する場合にも、1人で安定した作業をおこなうことができる。
【0064】
そして、カムレバー206aを開放位置に位置づけた後、カムロックカプラー141をカムロックアダプター140から引き抜く。これにより、カムロックアダプター140からカムロックカプラー141を容易かつ迅速に取り外すことができる。その後、キャップ117を分岐部114に被せて、エア抜き作業を終了する。
【0065】
図7は、配管システム100の設置例を示す説明図である。水力発電の設備は、一般的に、動力源となる水流の近傍に設置される。また、一般的に、水力発電の設備のうちの水路は、第三者が頻繁に立ち入ることのない場所に設置される。このため、有孔管121も、第三者が頻繁に立ち入ることのない場所に設置される傾向にあり、作業者による有孔管121へのアクセスが必ずしも良好であるとは限らない。
【0066】
一方で、作業者の利便性などを考慮すると、ダム管理所は水路から離れた場所に設置されることがあり、このような状況においては、
図7に示すように、有孔管121の設置場所とダム管理所701とが離れている。
図7に示す例においては、有孔管121の設置場所と貯水槽702との間の距離Aは、たとえば、300メートル程度ある。
【0067】
貯水槽702への給水は、有孔管121に異物が付着することによってのみ停止するものではないため、貯水槽702への給水が停止する都度、有孔管121の設置場所まで赴いて、異物の付着状況を確認する作業は、有孔管121の設置場所との往復時間などを含め、確認に要する時間が長くなるなど、作業者にかかる負担が大きい。
【0068】
これに対し、配管システム100によれば、このような状況において、一旦、有孔管121に付着した異物を除去して、三方分岐配管継手110の設置位置においてエア抜き作業をおこなった以降しばらくの間、具体的には、貯水槽702への給水が停止するほどまでに有孔管121に異物が付着するまでに要すると推定される時間が経過するまでの間に貯水槽702への給水が停止した場合は、まず、ダム管理所701に近い設備の点検をおこなうなどの対応をとることができる。
【0069】
また、上述したように、三方分岐配管継手110はダム管理所701の近くなどに設けられている。
図7に示す例においては、エア抜き作業をおこなう三方分岐配管継手110の設置場所と貯水槽702との距離Bは、たとえば、50メートル程度とされる。このように、ダム管理所701から三方分岐配管継手110の設置場所までのアクセスが良好であれば、エア抜き作業をおこなって、三方分岐配管継手110における水位を目視するなどの対応をとることが容易にできる。これにより、一旦、有孔管121に付着した異物を除去した後の所定期間内に貯水槽702への給水が停止した場合の初期対応を迅速にとることができる。
【0070】
以上説明したように、この発明にかかる実施の形態の配管システム100は、3つの開口を備えた三方分岐配管継手110と、一端が三方分岐配管継手110における第1の開口111に接続され、他端が有孔管121に接続された第1の管状部材120と、一端が三方分岐配管継手110における第2の開口112に接続され、他端が導水先に引き回された第2の管状部材130と、三方分岐配管継手110における第3の開口113を開放可能に閉塞する開閉弁と、三方分岐配管継手110における第3の開口113に設けられて、カムレバー206aを備えたカムロックカプラー141が取り外し可能に接続されるカムロックアダプター140と、第3の開口113を鉛直方向上側に向けた状態で三方分岐配管継手110を固定する固定部材150と、を備えたことを特徴としている。
【0071】
この発明にかかる実施の形態の配管システム100によれば、三方分岐配管継手110における第3の開口113に、ポンプ601に接続されたサクションホース204の先端に設けられたカムロックカプラー141が取り外し可能に接続されるカムロックアダプター140を設けることにより、カムレバー206aの操作のみで、ポンプ601に接続されたサクションホース204を三方分岐配管継手110に接続することができる。これにより、エア抜き用のサクションホース204の接続や取り外し作業を容易かつ迅速におこなうことができるので、用水配管のエア抜き作業にかかる作業者の負担軽減および作業効率の向上を図ることができる。
【0072】
また、この発明にかかる実施の形態の配管システム100によれば、ポンプ601に接続されたサクションホース204が接続される第3の開口113を、鉛直方向上側に向けた状態で固定することによって、均等に操作する必要がある一対のカムレバー206aを両手で操作することができる。これにより、エア抜き用のサクションホース204の接続や取り外し作業を、やり直しをともなうことなく確実におこなうことができるので、用水配管のエア抜き作業にかかる作業者の負担軽減および作業効率の向上を図ることができる。
【0073】
また、この発明にかかる実施の形態の配管システム100によれば、ポンプ601に接続されたサクションホース204が接続される第3の開口113を、鉛直方向上側に向けた状態で固定することによって、格別な操作をおこなうことなく、配管中を導かれる用水よりも比重の軽い空気を第3の開口113に導くことができる。これにより、配管内に混入したエアを容易かつ確実に取り除くことができるので、用水配管のエア抜き作業にかかる作業者の負担軽減および作業効率の向上を図ることができる。
【0074】
このように、この発明にかかる実施の形態の配管システム100によれば、用水配管のエア抜き作業にかかる作業者の負担軽減および作業効率の向上を図ることができる。
【0075】
また、この発明にかかる実施の形態の配管システム100は、固定部材150が、第3の開口113を当該三方分岐配管継手110の設置対象とする水路における水面よりも鉛直方向上側に位置づけた状態で三方分岐配管継手110を固定することを特徴としている。
【0076】
この発明にかかる実施の形態の配管システム100によれば、第3の開口113を水路における水面よりも鉛直方向上側に位置づけた状態で固定することにより、エア抜き用のサクションホース204の接続や取り外しに際して、開放された第3の開口113から水路中の落葉や枝木などの異物が配管内に入り込ませることなく、エア抜き用のサクションホース204の接続や取り外し作業をおこなうことができる。これにより、用水配管のエア抜き作業にかかる作業者の負担軽減および作業効率の向上を図ることができる。
【0077】
また、この発明にかかる実施の形態の配管システム100は、三方分岐配管継手110に取り外し可能に取り付けられ、第3の開口113を開放可能に閉塞するキャップ117を備えたことを特徴としている。
【0078】
この発明にかかる実施の形態の配管システム100によれば、第3の開口113の周辺が風雨によって腐食したり、閉じた状態の開閉弁から第3の開口113までの間に落葉や枝木などの異物が溜まったりすることをして、三方分岐配管継手110における第3の開口113周辺の劣化を長期にわたって抑制することができる。これにより、エア抜き用のサクションホース204の接続や取り外し作業を、長期にわたって確実におこなうことができ、用水配管のエア抜き作業にかかる作業者の負担軽減および作業効率の向上を図ることができる。
【0079】
また、この発明にかかる実施の形態の配管システム100は、三方分岐配管継手110が、亜鉛メッキが施された鋳鉄によって形成されていることを特徴としている。
【0080】
この発明にかかる実施の形態の配管システム100によれば、亜鉛メッキが施された鋳鉄によって形成された三方分岐配管継手110を用いることにより、三方分岐配管継手110の耐候性を確保し、三方分岐配管継手110における第3の開口113周辺の劣化を長期にわたって抑制することができる。これにより、エア抜き用のサクションホース204の接続や取り外し作業を、長期にわたって確実におこなうことができ、用水配管のエア抜き作業にかかる作業者の負担軽減および作業効率の向上を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
以上のように、この発明にかかる配管システムは、用水の取水に用いる配管システムに有用であり、特に、配管内のエア抜きに際して開閉操作される開閉弁を有する三方分岐配管継手を備えた配管システムに適している。
【符号の説明】
【0082】
100 配管システム
110 三方分岐配管継手
111 第1の開口
112 第2の開口
113 第3の開口
117 キャップ
120 第1の管状部材
130 第2の管状部材
140 カムロックアダプター
150 固定部材
201 アダプター溝
204 サクションホース
601 ポンプ
701 ダム管理所
702 貯水槽