IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友電気工業株式会社の特許一覧

特許7243433ケーブル接続構造、ケーブル接続構造用部材およびケーブル接続構造の製造方法
<>
  • 特許-ケーブル接続構造、ケーブル接続構造用部材およびケーブル接続構造の製造方法 図1
  • 特許-ケーブル接続構造、ケーブル接続構造用部材およびケーブル接続構造の製造方法 図2A
  • 特許-ケーブル接続構造、ケーブル接続構造用部材およびケーブル接続構造の製造方法 図2B
  • 特許-ケーブル接続構造、ケーブル接続構造用部材およびケーブル接続構造の製造方法 図3
  • 特許-ケーブル接続構造、ケーブル接続構造用部材およびケーブル接続構造の製造方法 図4
  • 特許-ケーブル接続構造、ケーブル接続構造用部材およびケーブル接続構造の製造方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】ケーブル接続構造、ケーブル接続構造用部材およびケーブル接続構造の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02G 15/10 20060101AFI20230314BHJP
   H02G 1/14 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
H02G15/10
H02G1/14
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019094565
(22)【出願日】2019-05-20
(65)【公開番号】P2020191706
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2021-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100187643
【弁理士】
【氏名又は名称】白鳥 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】眞尾 晶二
(72)【発明者】
【氏名】兼田 大樹
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-71738(JP,A)
【文献】特開2018-190675(JP,A)
【文献】特開2015-139241(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105304181(CN,A)
【文献】米国特許第6018459(US,A)
【文献】米国特許第6105247(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/097444(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 15/10
H02G 1/14
H01B 13/00
H01B 7/18
H01B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに接続される一対の電力ケーブルを含む3相の電力ケーブル対と、
前記3相の電力ケーブル対のそれぞれの接続箇所を覆うように設けられ、絶縁性のゴムを含む3つのゴム接続筒と、
前記3相の電力ケーブル対のそれぞれの一部と前記3つのゴム接続筒とを収容する鋼管と、
前記3つのゴム接続筒のそれぞれと前記鋼管との間に設けられ、前記3つのゴム接続筒のそれぞれと前記鋼管とに接触し、前記鋼管の融点よりも低い融点を有する放熱性の金属を含む放熱材と、
を有する
ケーブル接続構造。
【請求項2】
前記放熱材は、多孔質の金属を含む
請求項1に記載のケーブル接続構造。
【請求項3】
前記放熱材の空隙率は、50%以上98%以下である
請求項2に記載のケーブル接続構造。
【請求項4】
前記放熱材の前記鋼管側の空隙率は、前記放熱材の前記ゴム接続筒側の空隙率よりも低い
請求項2に記載のケーブル接続構造。
【請求項5】
前記放熱材の前記鋼管側の少なくとも一部は、充実金属を含む
請求項4に記載のケーブル接続構造。
【請求項6】
前記放熱材の厚さ方向の平均の空隙率は、50%以上98%以下である
請求項4又は請求項5に記載のケーブル接続構造。
【請求項7】
前記放熱材に含まれる金属の比透磁率は、1以上1000以下である
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のケーブル接続構造。
【請求項8】
温度20℃のときの前記放熱材の体積抵抗率は、1.68×10 -8 Ω・m以上1×10-7Ω・m以下である
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のケーブル接続構造。
【請求項9】
前記放熱材の前記鋼管側の抵抗は、前記放熱材の前記ゴム接続筒側の抵抗よりも低い
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のケーブル接続構造。
【請求項10】
前記一対の電力ケーブルのそれぞれは、中心から外側に向けて、導体と、絶縁層と、遮蔽層と、を有し、
前記3相の電力ケーブル対の前記遮蔽層は、一括して前記鋼管とともに接地されている
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のケーブル接続構造。
【請求項11】
前記放熱材の少なくとも一部は、シート状に構成されている
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のケーブル接続構造。
【請求項12】
前記放熱材の少なくとも一部は、前記3つのゴム接続筒のそれぞれに巻き付けられる
請求項11に記載のケーブル接続構造。
【請求項13】
前記鋼管内の前記3つのゴム接続筒の位置を調整するスペーサを有する
請求項1から請求項12のいずれか1項に記載のケーブル接続構造。
【請求項14】
互いに接続される一対の電力ケーブルを含む3相の電力ケーブル対のそれぞれの接続箇所を覆うように設けられ、絶縁性のゴムを含む3つのゴム接続筒と、
前記3相の電力ケーブル対のそれぞれの一部と前記3つのゴム接続筒とを収容する鋼管と、
前記3つのゴム接続筒のそれぞれと前記鋼管との間に設けられ、前記3つのゴム接続筒のそれぞれと前記鋼管とに接触し、前記鋼管の融点よりも低い融点を有する放熱性の金属を含む放熱材と、
を有する
ケーブル接続構造用部材。
【請求項15】
互いに接続される一対の電力ケーブルを含む3相の電力ケーブル対を形成する工程と、
絶縁性のゴムを含む3つのゴム接続筒により、前記3相の電力ケーブル対のそれぞれの接続箇所を覆う工程と、
前記3相の電力ケーブル対のそれぞれの一部と前記3つのゴム接続筒とを鋼管内に収容しつつ、前記3つのゴム接続筒のそれぞれと前記鋼管との間に、前記鋼管の融点よりも低い融点を有する放熱性の金属を含む放熱材を配置し、前記3つのゴム接続筒のそれぞれと前記鋼管とに前記放熱材を接触させる工程と、
を有する
ケーブル接続構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル接続構造、ケーブル接続構造用部材およびケーブル接続構造の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力ケーブルが接続されるケーブル接続構造には、電力ケーブルが地絡したときのため、様々な防災対策が施される(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-231148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、常時運転時のケーブル接続構造の放熱性を向上させるとともに、電力ケーブルが地絡したときの被害拡大を安定的に抑制することができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、
互いに接続される一対の電力ケーブルを含む3相の電力ケーブル対と、
前記3相の電力ケーブル対のそれぞれの接続箇所を覆うように設けられ、絶縁性のゴムを含む3つのゴム接続筒と、
前記3相の電力ケーブル対のそれぞれの一部と前記3つのゴム接続筒とを収容する鋼管と、
前記3つのゴム接続筒のそれぞれと前記鋼管との間に設けられ、前記3つのゴム接続筒のそれぞれと前記鋼管とに接触し、前記鋼管の融点よりも低い融点を有する放熱性の金属を含む放熱材と、
を有する
ケーブル接続構造が提供される。
【0006】
本発明の他の態様によれば、
互いに接続される一対の電力ケーブルを含む3相の電力ケーブル対のそれぞれの接続箇所を覆うように設けられ、絶縁性のゴムを含む3つのゴム接続筒と、
前記3相の電力ケーブル対のそれぞれの一部と前記3つのゴム接続筒とを収容する鋼管と、
前記3つのゴム接続筒のそれぞれと前記鋼管との間に設けられ、前記3つのゴム接続筒のそれぞれと前記鋼管とに接触し、前記鋼管の融点よりも低い融点を有する放熱性の金属を含む放熱材と、
を有する
ケーブル接続構造用部材が提供される。
【0007】
本発明の更に他の態様によれば、
互いに接続される一対の電力ケーブルを含む3相の電力ケーブル対を形成する工程と、
絶縁性のゴムを含む3つのゴム接続筒により、前記3相の電力ケーブル対のそれぞれの接続箇所を覆う工程と、
前記3相の電力ケーブル対のそれぞれの一部と前記3つのゴム接続筒とを鋼管内に収容しつつ、前記3つのゴム接続筒のそれぞれと前記鋼管との間に、前記鋼管の融点よりも低い融点を有する放熱性の金属を含む放熱材を配置し、前記3つのゴム接続筒のそれぞれと前記鋼管とに前記放熱材を接触させる工程と、
を有する
ケーブル接続構造の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、常時運転時のケーブル接続構造の放熱性を向上させるとともに、電力ケーブルが地絡したときの被害拡大を安定的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る電力ケーブルの軸方向に直交する断面図である。
図2A】本発明の一実施形態に係るケーブル接続構造を示す斜視図である。
図2B】本発明の一実施形態に係るケーブル接続構造を示す断面図である。
図3】放熱材を拡大した概略断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る送電システムを示す概略構成図である。
図5】本発明の一実施形態に係るケーブル接続構造の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
<発明者等の得た知見>
まず、発明者等の得た知見について説明する。
【0011】
(単心ケーブルの場合)
これまで、単心の油浸絶縁ケーブル(以下、OFケーブル:Oil Filled Cable)、または単心の固体絶縁ケーブル(架橋ポリエチレンケーブル(CVケーブル、XLPEケーブル)ともいう)である電力ケーブルを3相布設する場合には、各相の電力ケーブルを別々に接続していた。それぞれのケーブル接続構造では、金属管内に電力ケーブルの接続箇所を収容することで、遮水および接地を行っていた。このとき、銅などの非磁性の金属管を用いることで、電力ケーブルの通電時における渦電流損に起因した金属管の発熱を抑制していた。また、金属管内に絶縁油またはコンパウンドを充填することで、放熱性および遮水性を向上させていた。
【0012】
しかしながら、金属管内で電力ケーブルの接続箇所が地絡すると、地絡による発熱によって金属管内の絶縁油またはコンパウンドが気化する可能性があった。絶縁油またはコンパウンドが気化すると、金属管内の圧力が急激に上昇してしまうおそれがあった。
【0013】
そこで、従来では、特許文献1のように、電力ケーブルの外周および金属管の外周をアラミド繊維シートで覆う場合があった。これにより、地絡時の被害拡大を抑制していた。
【0014】
しかしながら、充分な防災効果を得るためには、ケーブル接続構造では、3相別々に、空気中に暴露された布設範囲全体に亘って、接続される電力ケーブルの外周および接続用の金属管の外周をアラミド繊維シート等によって完全に覆う必要があった。その結果、アラミド繊維シート等の被覆作業が困難となり、部材コストおよび作業コストが増大していた。
【0015】
(パイプタイプケーブルの場合)
パイプタイプOFケーブル(Pipe type Oil Filled Cable、またはHPFFケーブル:High Pressure Fluid Filled Pipe Type Cable、以下、POFケーブルともいう)では、鋼からなるケーブル用鋼管内に3相のOFケーブルを一括して布設していた。POFケーブルの接続構造では、鋼からなる鋼管内に3相のOFケーブルの接続箇所を一括して収容していた。また、ケーブル接続構造での鋼管とケーブル用鋼管とにおいて絶縁油を連通させていた。
【0016】
POFケーブルでは、ケーブル接続構造での鋼管とケーブル用鋼管とを充分な断面積で連結することで、ケーブル接続構造での鋼管内でOFケーブルが地絡したとしても、絶縁油の圧力上昇が抑制されていた。また、OFケーブルの通電時には、これらの鋼管内に絶縁油が自然対流または強制循環されるため、ホットスポットの形成が抑制されていた。
【0017】
しかしながら、POFケーブルでは、ケーブル用鋼管内の絶縁油に高い圧力が印加されるため、ケーブル用鋼管の腐食部分などから絶縁油が漏洩するおそれがあった。絶縁油が漏洩すると、周囲の環境に悪影響が及ぶおそれがあった。
【0018】
そこで、近年では、POFケーブルにおけるOFケーブルを、固体絶縁ケーブル(CVケーブル:Cross-linked polyethylene insulated polyvinylchloride sheathed Cable、またはXLPEケーブル)に置き換えることが進められている。
【0019】
しかしながら、パイプタイプ固体絶縁ケーブルでは、上述の環境への配慮から、鋼管内に絶縁油が充填されない。このため、常時運転時には、ケーブル接続構造での鋼管内が充実されていないためにエアポケットとなる。その結果、常時運転時に、局所的に温度が上昇するおそれがあった。
【0020】
一方で、上述の鋼管内の局所的な温度上昇を抑制するために、ケーブル接続構造での鋼管内にコンパウンドを充填することが考えられる。しかしながら、この場合でも、上述の単心の電力ケーブルの場合と同様に、地絡時にコンパウンドが気化し、鋼管内の圧力が急激に上昇してしまうおそれがあった。
【0021】
以上の単心の電力ケーブルの場合やパイプタイプケーブルの場合で述べたように、常時運転時のケーブル接続構造の放熱性を向上させるとともに、電力ケーブルが地絡したときの被害拡大を安定的に抑制することができる技術が望まれていた。
【0022】
本発明は、本発明者等が見出した上記知見に基づくものである。
【0023】
<本開示の実施態様>
次に、本開示の実施態様を列記して説明する。
【0024】
[1]本開示の一態様に係るケーブル接続構造は、
互いに接続される一対の電力ケーブルを含む3相の電力ケーブル対と、
前記3相の電力ケーブル対のそれぞれの接続箇所を覆うように設けられ、絶縁性のゴムを含む3つのゴム接続筒と、
前記3相の電力ケーブル対のそれぞれの一部と前記3つのゴム接続筒とを収容する鋼管と、
前記3つのゴム接続筒のそれぞれと前記鋼管との間に設けられ、前記3つのゴム接続筒のそれぞれと前記鋼管とに接触し、前記鋼管の融点よりも低い融点を有する放熱性の金属を含む放熱材と、
を有する。
この構成によれば、常時運転時のケーブル接続構造の放熱性を向上させるとともに、電力ケーブルが地絡したときの被害拡大を安定的に抑制することができる。
【0025】
[2]上記[1]に記載のケーブル接続構造において、
前記放熱材は、多孔質の金属を含む。
この構成によれば、鋼管内で地絡が生じたときに、溶融した放熱材を直ちに気化させることができる。放熱材を直ちに気化させることで、安定的な放電回路をすぐに形成し、アーク電流を継続させることができる。その結果、地絡エネルギーを安定的に低減させることができる。また、常時運転時の渦電流損に起因した放熱材の発熱を抑制することができる。
【0026】
[3]上記[2]に記載のケーブル接続構造において、
前記放熱材の空隙率は、50%以上である。
この構成によれば、地絡時の地絡エネルギーを安定的に低減させることができる。また、常時運転時の渦電流損に起因した放熱材の発熱を安定的に抑制することができる。
【0027】
[4]上記[2]に記載のケーブル接続構造において、
前記放熱材の前記鋼管側の空隙率は、前記放熱材の前記ゴム接続筒側の空隙率よりも低い。
この構成によれば、ケーブル接続構造における放熱性を向上させつつ、渦電流損に起因した放熱材のゴム接続筒側の発熱を抑制することができる。
【0028】
[5]上記[4]に記載のケーブル接続構造において、
前記放熱材の前記鋼管側の少なくとも一部は、充実金属を含む。
この構成によれば、低空隙率を有する多孔質の金属を製造することが困難な場合であっても、放熱材の厚さ方向における空隙率の差を容易に形成することができる。
【0029】
[6]上記[4]又は[5]に記載のケーブル接続構造において、
前記放熱材の厚さ方向の平均の空隙率は、50%以上である。
この構成によれば、鋼管内で地絡が生じたときに、溶融した放熱材を直ちに気化させる効果を充分に得ることができる。また、鋼管内で地絡が生じたときに、空隙を利用した鋼管内の圧力上昇抑制効果を充分に得ることができる。
【0030】
[7]上記[1]から[6]のいずれか1つに記載のケーブル接続構造において、
前記放熱材に含まれる金属の比透磁率は、1000以下である。
この構成によれば、放熱材に生じる渦電流に起因した発熱を抑制することができる。
【0031】
[8]上記[1]から[7]のいずれか1つに記載のケーブル接続構造において、
温度20℃のときの前記放熱材の体積抵抗率は、1×10-7Ω・m以下である。
この構成によれば、温度20℃のときの放熱材の体積抵抗率を1×10-7Ω・m以下とすることで、地絡エネルギーを低くすることができる。
【0032】
[9]上記[1]から[8]のいずれか1つに記載のケーブル接続構造において、
前記放熱材の前記鋼管側の抵抗は、前記放熱材の前記ゴム接続筒側の抵抗よりも低い。
この構成によれば、ケーブル接続構造における熱伝達性を向上させつつ、渦電流損に起因した放熱材のゴム接続筒側の発熱を抑制することができる。
【0033】
[10]上記[1]から[9]のいずれか1つに記載のケーブル接続構造において、
前記一対の電力ケーブルのそれぞれは、中心から外側に向けて、導体と、絶縁層と、遮蔽層と、を有し、
前記3相の電力ケーブル対の前記遮蔽層は、一括して前記鋼管とともに接地されている。
この構成によれば、現場での作業を容易に行うことができる。
【0034】
[11]上記[1]から[10]のいずれか1つに記載のケーブル接続構造において、
前記放熱材の少なくとも一部は、シート状に構成されている。
この構成によれば、ケーブル接続構造を容易に製造することができる。
【0035】
[12]上記[11]に記載のケーブル接続構造において、
前記放熱材の少なくとも一部は、前記3つのゴム接続筒のそれぞれに巻き付けられる。
この構成によれば、ケーブル接続構造を容易に製造することができる。
【0036】
[13]上記[1]から[12]のいずれか1つに記載のケーブル接続構造において、
前記鋼管内の前記3つのゴム接続筒の位置を調整するスペーサを有する。
この構成によれば、鋼管内における熱伝達性(放熱性)を均等にすることができる。
【0037】
[14]本開示の他の態様に係るケーブル接続構造用部材は、
互いに接続される一対の電力ケーブルを含む3相の電力ケーブル対のそれぞれの接続箇所を覆うように設けられ、絶縁性のゴムを含む3つのゴム接続筒と、
前記3相の電力ケーブル対のそれぞれの一部と前記3つのゴム接続筒とを収容する鋼管と、
前記3つのゴム接続筒のそれぞれと前記鋼管との間に設けられ、前記3つのゴム接続筒のそれぞれと前記鋼管とに接触し、前記鋼管の融点よりも低い融点を有する放熱性の金属を含む放熱材と、
を有する。
この構成によれば、常時運転時のケーブル接続構造の放熱性を向上させるとともに、電力ケーブルが地絡したときの被害拡大を安定的に抑制することができる。
【0038】
[15]本開示の更に他の態様に係るケーブル接続構造の製造方法は、
互いに接続される一対の電力ケーブルを含む3相の電力ケーブル対を形成する工程と、
絶縁性のゴムを含む3つのゴム接続筒により、前記3相の電力ケーブル対のそれぞれの接続箇所を覆う工程と、
前記3相の電力ケーブル対のそれぞれの一部と前記3つのゴム接続筒とを鋼管内に収容しつつ、前記3つのゴム接続筒のそれぞれと前記鋼管との間に、前記鋼管の融点よりも低い融点を有する放熱性の金属を含む放熱材を配置し、前記3つのゴム接続筒のそれぞれと前記鋼管とに前記放熱材を接触させる工程と、
を有する。
この構成によれば、常時運転時のケーブル接続構造の放熱性を向上させるとともに、電力ケーブルが地絡したときの被害拡大を安定的に抑制することができる。
【0039】
[本開示の実施形態の詳細]
次に、本開示の一実施形態を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0040】
<本発明の一実施形態>
(1)電力ケーブル
まず、本発明の一実施形態に係る接続対象の電力ケーブルについて説明する。図1は、本実施形態に係る電力ケーブルの軸方向に直交する断面図である。
【0041】
なお、以下において、電力ケーブル100等の「軸方向」とは、電力ケーブル100等の中心軸の方向のことをいい、電力ケーブル100等の長手方向と言い換えることができる。また、電力ケーブル100等の「径方向」とは、電力ケーブル100等の軸方向に垂直な方向のことをいい、場合によっては電力ケーブル100等の短手方向と言い換えることができる。
【0042】
図1に示すように、本実施形態の接続対象は、例えば、パイプタイプ固体絶縁ケーブル20として構成されている。具体的には、パイプタイプ固体絶縁ケーブル20は、例えば、3相の電力ケーブル100(100a~100c)と、帰線ケーブル190と、ケーブル用鋼管800と、を有している。
【0043】
電力ケーブル100は、例えば、固体絶縁ケーブルとして構成され、中心側から外側に向けて、導体110と、導体スクリーン(内部半導電層)120と、絶縁層130と、絶縁スクリーン(外部半導電層)140と、ベッディング(座床層)(不図示)と、遮蔽層(金属シース)150と、ジャケット(防食層)160と、を有している。
【0044】
導体110は、例えば、複数の銅線を撚り合わせることにより構成されている。導体スクリーン120は、例えば、耐熱性を有する半導電性テープまたはカーボン粉末を含有する樹脂層により構成されている。半導電性テープとしては、例えば、ナイロンやポリエステルが用いられる。カーボン粉末を含有する樹脂層としては、例えば、EEA(Ethylene-Ethylacrylate Copolymer)やポリエチレンが用いられる。絶縁層130は、例えば、架橋ポリエチレンを含んでいる。絶縁スクリーン140は、例えば、カーボン粉末を含有する樹脂層により構成されている。カーボン粉末を含有する樹脂層としては、例えば、EEAやポリエチレンが用いられる。ベッディングは、いわゆるベッディングテープとして構成されている。遮蔽層150は、導体110の静電遮蔽および電磁誘導遮蔽を行うとともに、事故電流の経路となるよう構成されている。具体的には、遮蔽層150は、例えば、銅ラミネートである。ジャケット160は、例えば、架橋ポリエチレン、高密度ポリエチレンまたはPVC(Polyvinylchloride)を含んでいる。
【0045】
ケーブル用鋼管800内には、3相の電力ケーブル100が挿通されている。3相の電力ケーブル100は、例えば、軸方向に沿って、螺旋状に撚り合わせられている。
【0046】
本実施形態では、3相の電力ケーブル100のそれぞれは、例えば、いわゆるシールドワイヤを有していない。その代わりに、ケーブル用鋼管800内には、例えば、帰線ケーブル190が3相の電力ケーブル100とともに布設されている。
【0047】
帰線ケーブル190は、例えば、ケーブル用鋼管800内に3相の電力ケーブル100に隣接して設けられている。本実施形態では、帰線ケーブル190は、例えば、3相の電力ケーブル100の中心に配置されている。
【0048】
帰線ケーブル190は、例えば、導体192と、ジャケット194と、を有している。導体192は、例えば、複数の銅線を撚り合わせることにより構成されている。ジャケット194は、例えば、架橋ポリエチレン、高密度ポリエチレンまたはPVCを含んでいる。
【0049】
帰線ケーブル190は、例えば、接地される。これにより、電力ケーブル100に地絡が生じたときに、帰線ケーブル190を事故電流の経路にすることができる。
【0050】
また、帰線ケーブル190が3相の電力ケーブル100に隣接して設けられていることで、電力ケーブル100の遮蔽層150および帰線ケーブル190などを両端接地することができる。この点については、詳細を後述する。
【0051】
ケーブル用鋼管800は、例えば、3相の電力ケーブル100と、帰線ケーブル190と、を収容している。ケーブル用鋼管800は、例えば、鋼を含んでいる。また、ケーブル用鋼管800は、例えば、接地されている。これにより、電力ケーブル100に地絡が生じたときに、ケーブル用鋼管800を事故電流の経路にすることができる。
【0052】
本実施形態では、ケーブル用鋼管800は、例えば、POFケーブルのケーブル用鋼管を再利用したものである。すなわち、本実施形態のパイプタイプ固体絶縁ケーブル20では、例えば、POFケーブルのOFケーブルが固体絶縁ケーブルとしての電力ケーブル100に置き換えられている。なお、ケーブル用鋼管800は新設されたものであってもよい。
【0053】
(2)ケーブル接続構造
次に、本発明の一実施形態に係るケーブル接続構造について、図2Aおよび図2Bを用いて説明する。図2Aは、本実施形態に係るケーブル接続構造を示す斜視図である。図2Aにおいて、鋼管400内の構造が見えるように、鋼管400の一部および鋼管400内の構成の一部を省略している。図2Bは、本実施形態に係るケーブル接続構造を示す断面図である。図2Bは、図2Aにおける断面CSで切った断面図である。図2Bにおいて、一部のハッチングを省略している。また、図2Bにおいて、電力ケーブル100の層構造およびゴム接続筒300の構造を省略している。
【0054】
図2Aおよび図2Bに示すように、本実施形態のケーブル接続構造10は、例えば、3相の電力ケーブル対200(200a~200c)と、3つのゴム接続筒(ゴムユニット、主絶縁)300(300a~300b)と、鋼管(保護管、金属管)400と、放熱材500と、スペーサ600と、バインダ680と、を有している。
【0055】
(電力ケーブル対)
電力ケーブル対200は、例えば、互いに接続された一対の電力ケーブル100を含んでいる。具体的には、一対の電力ケーブル100のそれぞれは、例えば、軸方向に沿って段階的に剥がされている。すなわち、導体110、絶縁層130、絶縁スクリーン140、および遮蔽層150は、電力ケーブル100の一端側からこの順で露出している。一対の電力ケーブル100のそれぞれの導体(不図示)は、互いの中心軸を一致させて突き合わされ、導体接続管(不図示)により圧縮接続されている。
【0056】
本実施形態では、例えば、3相の電力ケーブル100にそれぞれ対応して、3相の電力ケーブル対200が設けられている。
【0057】
(ゴム接続筒)
ゴム接続筒300は、例えば、軸方向に貫通する中空部を有する絶縁性の筒状部材として構成され、電力ケーブル対200の接続箇所を覆うように設けられている。具体的には、ゴム接続筒300は、例えば、導体接続管と、一対の電力ケーブル100のそれぞれの一部とに外嵌されている。
【0058】
ゴム接続筒300は、いわゆる常温収縮型として構成されている。すなわち、ゴム接続筒300は、例えば、拡径しない状態で電力ケーブル100の外径よりも小さい内径を有している。これにより、ゴム接続筒300は、常温で弾性的に収縮して電力ケーブル対200の接続箇所に密着するようになっている。
【0059】
また、ゴム接続筒300は、電力ケーブル対200の接続箇所の周囲の絶縁性を保ちつつ、当該接続箇所の周囲の電界を緩和するよう構成されている。具体的には、ゴム接続筒300は、例えば、ゴムユニット内部半導電層(不図示)と、ゴムユニット絶縁層(不図示)と、ストレスコーン部(不図示)と、ゴムユニット外部半導電層(不図示)と、を有している。ゴムユニット内部半導電層は、例えば、半導電性を有し、導体接続管の外周を覆うように筒状に構成されている。ゴムユニット絶縁層は、例えば、絶縁性を有し、ゴムユニット内部半導電層の外周を覆うように設けられている。ストレスコーン部は、半導電性を有し、ゴム接続筒300の両端のそれぞれから軸方向の中央に向かう方向にゴム接続筒300の内周面から徐々に離れて拡径するように設けられている。ストレスコーン部は、段剥ぎされた電力ケーブル100の絶縁スクリーン140に接している。ゴムユニット外部半導電層は、例えば、半導電性を有し、ゴムユニット絶縁層の外周を覆うように設けられている。
【0060】
なお、ゴム接続筒300の外周を覆うように、金属製のメッシュテープが巻回されていてもよい。
【0061】
本実施形態では、例えば、3相の電力ケーブル対200のそれぞれの接続箇所を覆うように、3つのゴム接続筒300が設けられている。
【0062】
(鋼管)
鋼管400は、例えば、3相の電力ケーブル対200のそれぞれの一部と3つのゴム接続筒300とを収容している。鋼管400により、3相の電力ケーブル対200のそれぞれの一部と3つのゴム接続筒300とを保護している。
【0063】
鋼管400は、電力ケーブル100の終端に設けられる変電所において、または送電ルートの途中の複数点において、接地されている。これにより、電力ケーブル100に地絡が生じたときに、鋼管400を事故電流の経路にすることができる。
【0064】
上述の3相の電力ケーブル100の遮蔽層150は、例えば、一括して鋼管400とともに接地されている。具体的には、鋼管400は、例えば、フランジ部(三又分岐板)480を有している。フランジ部480は、例えば、鋼管400の両端のそれぞれに設けられ、該両端のそれぞれを塞いでいる。フランジ部480には、3相の電力ケーブル100が挿通されている。また、フランジ部480は、3相の電力ケーブル100のそれぞれの遮蔽層150と接続されている。このようにして、3相の電力ケーブル100の遮蔽層150は、鋼管400に対して機械的および電気的に接続され、一括して鋼管400とともに接地されている。
【0065】
なお、上述の帰線ケーブル190は、例えば、フランジ部480に接続され、3相の電力ケーブル対200の遮蔽層150および鋼管400とともに接地されている。帰線ケーブル190は、鋼管400内に連通されていなくてもよい。
【0066】
鋼管400は、例えば、フランジ部480を介して、パイプタイプ固体絶縁ケーブル20のケーブル用鋼管800に接続されている。
【0067】
本実施形態では、例えば、鋼管400内には、絶縁油またはコンパウンドが充填されていない。なお、鋼管400内の一部に絶縁油またはコンパウンドが存在していてもよい。しかしながら、地絡時の絶縁油またはコンパウンドの気化を抑制する観点では、鋼管400内の絶縁油またはコンパウンドは少ないことが好ましい。
【0068】
(放熱材)
放熱材500は、例えば、放熱性の金属を含んでいる。ここでいう「放熱性」とは、例えば、絶縁油またはコンパウンドなどの絶縁体よりも、熱伝導率が高く、熱を放散させる性質のことを意味する。
【0069】
また、放熱材500は、例えば、鋼管400の融点よりも低い融点を有している。これにより、鋼管400内で地絡が生じたときに、鋼管400よりも先に放熱材500を溶融または気化させることができる。
【0070】
また、放熱材500は、例えば、3つのゴム接続筒300のそれぞれと鋼管400との間に設けられ、3つのゴム接続筒300のそれぞれと鋼管400とに接触している。これにより、ケーブル接続構造10における放熱性を向上させることができる。
【0071】
ここで、図3を用い、本実施形態の放熱材500について説明する。図3は、放熱材を拡大した概略断面図である。図3における四角形の外枠は、所定の観察視野を示している。
【0072】
図3に示すように、本実施形態の放熱材500は、例えば、多孔質の金属を含んでいる。ここでいう「多孔質」とは、空隙AGを有していることを意味する。
【0073】
本実施形態の放熱材500は、例えば、所定の金属の細線が3次元に網目状に分布した網目部502を有している。例えば、網目部502の間に、空隙(空孔)AGが形成されている。空隙AGは、例えば、3次元にランダムに分布し、放熱材500全体に亘って連通している。
【0074】
このように、放熱材500が多孔質の金属を含むことで、放熱材500と空気との接触面積を広くすることができる。これにより、鋼管400内で地絡が生じたときに、溶融した放熱材500を直ちに気化させることができる。放熱材500を直ちに気化させることで、安定的な放電回路をすぐに形成し、地絡エネルギーを安定的に低減させることができる。
【0075】
また、放熱材500が空隙AGを有することで、鋼管400内で地絡が生じたときに、鋼管400内で放熱材500などの金属が気化したり、鋼管400内で地絡に起因した空気の膨張が生じたりしたとしても、空隙AGを利用して、鋼管400内の圧力上昇を抑制することができる。
【0076】
また、放熱材500が空隙AGを有することで、電力ケーブル100の通電時に、渦電流の循環回路を空隙AGによって分断させることができる。これにより、常時運転時の渦電流損に起因した放熱材500の発熱を抑制することができる。
【0077】
本実施形態では、放熱材500の空隙率(気孔率)は、例えば、50%以上、好ましくは80%以上である。ここでいう「空隙率」は、放熱材500の体積に対する空隙AGの体積の比率を意味する。「空隙率」は、例えば、放熱材500を構成する材料の空隙が無いバルク状態の理論密度をρとし、本実施形態の放熱材500の密度をρとしたときに、(1-ρ/ρ)×100で求められる。
【0078】
放熱材500の空隙率が50%未満であると、鋼管400内で地絡が生じたときに、溶融した放熱材500を直ちに気化させる効果を充分に得ることができない可能性がある。また、放熱材500の空隙率が50%未満であると、鋼管400内で地絡が生じたときに、空隙AGを利用した鋼管400内の圧力上昇抑制効果を充分に得ることができない可能性がある。また、放熱材500の空隙率が50%未満であると、放熱材500において渦電流の循環回路を空隙AGにより分断させる効果を充分に得ることができない可能性がある。このため、常時運転時の渦電流損に起因した放熱材500の発熱を安定的に抑制することができない可能性がある。
【0079】
これに対し、本実施形態では、放熱材500の空隙率を50%以上とすることで、放熱材500と空気との接触面積を充分に広くすることができる。これにより、鋼管400内で地絡が生じたときに、溶融した放熱材500を直ちに気化させる効果を充分に得ることができる。また、放熱材500の空隙率を50%以上とすることで、鋼管400内で地絡が生じたときに、空隙AGを利用した鋼管400内の圧力上昇抑制効果を充分に得ることができる。また、放熱材500の空隙率を50%以上とすることで、放熱材500において渦電流の循環回路を空隙AGにより充分に分断させることができる。これにより、常時運転時の渦電流損に起因した放熱材500の発熱を安定的に抑制することができる。さらに放熱材500の空隙率を80%以上とすることで、地絡時に溶融した放熱材500を直ちに気化させる効果を安定的に得ることができる。また、空隙AGを利用した鋼管400内の圧力上昇抑制効果を安定的に得ることができる。また、常時運転時の渦電流損に起因した放熱材500の発熱をより安定的に抑制することができる。
【0080】
なお、放熱材500の空隙率の上限値は、特に限定されない。しかしながら、放熱材500の所定の剛性を得たり、安定的に放熱材500を製造したりする観点では、放熱材500の空隙率は、例えば、98%以下であることが好ましい。
【0081】
また、本実施形態では、放熱材500に含まれる金属の比透磁率は、鉄の比透磁率よりも低く、例えば、1000以下、好ましくは100以下、より好ましくは10以下である。つまり、放熱材500に含まれる金属は、強磁性よりは非磁性であることが好ましい。
【0082】
放熱材500に含まれる金属の比透磁率が1000超であると、常時運転時に放熱材500に生じる渦電流に起因した発熱が生じやすくなる可能性がある。これに対し、本実施形態では、放熱材500に含まれる金属の比透磁率を1000以下とすることで、常時運転時に放熱材500に生じる渦電流に起因した発熱を抑制することができる。さらに、比透磁率を好ましくは100以下、より好ましくは10以下とすることで、常時運転時に放熱材500に生じる渦電流に起因した発熱を安定的に抑制することができる。
【0083】
なお、放熱材500に含まれる金属の比透磁率の下限値は、1に近いことが好ましい。
【0084】
また、本実施形態では、温度20℃のときの放熱材500の体積抵抗率(体積固有抵抗)は、例えば、1×10-7Ω・m以下である。なお、放熱材500が後述の合金である場合における放熱材500の体積抵抗率は、所定厚さの放熱材500の体積抵抗率を測定し平均した値である。
【0085】
温度20℃のときの放熱材500の体積抵抗率が1×10-7Ω・m超であると、鋼管400内で3相の電力ケーブル対200の少なくともいずれかが地絡したときに、地絡した電力ケーブル対200(事故点)と鋼管400との間におけるアーク抵抗が高くなる可能性がある。
【0086】
これに対し、本実施形態では、温度20℃のときの放熱材500の体積抵抗率を1×10-7Ω・m以下とすることで、導電度を向上させ、充分な熱伝達性を得ることができる。また、温度20℃のときの放熱材500の体積抵抗率を1×10-7Ω・m以下とすることで、地絡した電力ケーブル対200と鋼管400との間におけるアーク抵抗を低くすることができる。これにより、以下の式(1)により求められる地絡エネルギーを低くすることができる。
(地絡エネルギー)=(地絡電流)×(アーク抵抗)×(持続時間) ・・・(1)
【0087】
なお、温度20℃のときの放熱材500の体積抵抗率の下限値については、限定されるものではない。しかしながら、放熱材500のコストを低減する観点からは、温度20℃のときの放熱材500の体積抵抗率が1.68×10-8Ω・m以上であることが好ましい。
【0088】
上述の条件を満たす放熱材500の金属としては、例えば、銅、アルミニウム、亜鉛、コバルト、ニッケル、スズおよびこれらの合金のうち少なくともいずれかが挙げられる。
【0089】
本実施形態では、放熱材500の少なくとも一部は、例えば、シート状(薄板状)に構成されている。ここでは、複数のシート状の放熱材500を積層することにより鋼管400内に設けられている。これにより、3つのゴム接続筒300のそれぞれと鋼管400との間に放熱材500を容易に介在させることができる。
【0090】
本実施形態では、放熱材500は、例えば、少なくとも3つのゴム接続筒300のそれぞれと鋼管400との最短経路と重なるように設けられている。言い換えれば、放熱材500は、例えば、少なくとも鋼管400の径方向に3つのゴム接続筒300のそれぞれと鋼管400との間に設けられている。これにより、電力ケーブル対200で生じた事故電流を最短で鋼管400側に流すことができる。
【0091】
具体的には、放熱材500は、例えば、第1放熱材520と、第2放熱材540と、を有している。なお、第1放熱材520および第2放熱材540は、それぞれ、上述のようにシート状に構成されている。
【0092】
第1放熱材520は、例えば、3つのゴム接続筒300のそれぞれに巻き付けられている。これにより、3つのゴム接続筒300のそれぞれと鋼管400との間に放熱材500を容易に介在させることができる。また、第1放熱材520をゴム接続筒300の外周に巻き付けることで、ゴム接続筒300からの放熱性を向上させることができる。
【0093】
第1放熱材520は、例えば、ゴム接続筒300に対して複数回巻き付けられている。これにより、ゴム接続筒300の外周からの第1放熱材520の所定の厚さを確保することができる。
【0094】
第1放熱材520の(1層の)厚さは、例えば、後述の第2放熱材540の最大厚さよりも薄い。具体的には、第1放熱材520の厚さは、例えば、1mm以上4mm以下である。これにより、第1放熱材520を容易にゴム接続筒300に巻き付けることができる。
【0095】
第2放熱材540は、例えば、3つのゴム接続筒300のそれぞれに巻き付けられた第1放熱材520と、鋼管400との間の間隙内に、設けられている。シート状かつ短冊状の第2放熱材540は、例えば、鋼管400の内周面に倣って屈曲された状態で、上記間隙内に挿入されている。これにより、第1放熱材520と鋼管400とを、第2放熱材540を介して繋ぐことができる。
【0096】
第2放熱材540は、例えば、第1放熱材520と鋼管400との間に複数層設けられている。これにより、第1放熱材520と鋼管400との間の間隙を容易に充填することができる。
【0097】
第2放熱材540は、例えば、内側放熱材542と、外側放熱材544と、を有している。内側放熱材542は、例えば、第1放熱材520に接している。外側放熱材544は、例えば、内側放熱材542と鋼管400との間に設けられている。内側放熱材542の厚さは、例えば、外側放熱材544の厚さよりも厚い。具体的には、例えば、内側放熱材542の厚さは4mm超10mm以下であり、外側放熱材544の厚さは1mm以上4mm以下である。これにより、内側放熱材542により第2放熱材540の所定の厚さを容易に確保しつつ、外側放熱材544により内側放熱材542と鋼管400との間の間隙を密に充填することができる。
【0098】
本実施形態では、例えば、第1放熱材520と第2放熱材540とは、同じ金属を含んでいる。また、例えば、第1放熱材520の空隙率と第2放熱材540の空隙率とは等しい。これにより、放熱材500において、放熱性の偏りやアーク抵抗の偏りを抑制することができる。
【0099】
(バインダおよびスペーサ)
バインダ680は、例えば、3相の電力ケーブル対200を結束している。具体的には、バインダ680は、例えば、3つのゴム接続筒300を結束している。なお、バインダ680は、例えば、ゴム接続筒300の外側の部分で、3相の電力ケーブル100を結束していてもよい。これにより、3相の電力ケーブル対200のうち少なくともいずれかが地絡し、これらを互いに離間するような応力が働いたときに、3相の電力ケーブル対200同士の離間を抑制し、3相の電力ケーブル対200が散らばることを抑制することができる。
【0100】
バインダ680は、例えば、金属からなっている。バインダ680を構成する金属としては、例えば、ステンレス、鋼、アルミニウム、銅などが挙げられる。これにより、3相の電力ケーブル対200を強固に結束することができる。
【0101】
スペーサ600は、例えば、鋼管400内の3つのゴム接続筒300の位置を調整するよう構成されている。例えば、3つのゴム接続筒300のそれぞれから鋼管400までの距離を容易に均等にすることができる。
【0102】
本実施形態では、スペーサ600は、例えば、芯部620と、支持部640と、を有している。
【0103】
芯部620は、例えば、3つのゴム接続筒300の間に挿入されている。芯部620は、例えば、3つの凹の円弧面(符号不図示)を有し、3つの円弧面にはそれぞれ3つのゴム接続筒300が当接している。これにより、芯部620は、鋼管400の中心軸側への3相の電力ケーブル対200のそれぞれの移動を規制している。
【0104】
支持部640は、例えば、鋼管400の内周部に当接しつつ、鋼管400内の芯部620の位置を調整可能に、芯部620を支持している。具体的には、支持部640は、例えば、3つの止めねじ(頭部なしねじ)(符号不図示)と、3つのナット(符号不図示)と、を有している。3つの止めねじのそれぞれは、芯部620のうち、3つのゴム接続筒300の間に配置されている。止めねじの一端は芯部620の一部に螺合し、止めねじの他端は鋼管400の内周部における所定の台座部(符号不図示)に当接している。ナットは、止めねじに螺合し、芯部620の一部に当接している。
【0105】
支持部640の止めねじにおけるナットの位置を調整することで、芯部620からの止めねじの突き出し長を調整することができ、鋼管400内の芯部620の位置を調整することができる。その結果、3相の電力ケーブル対200同士の間隔を一定に保ちつつ、鋼管400内の3相の電力ケーブル対200の位置を調整することができる。
【0106】
なお、鋼管400内には、3つのゴム接続筒300を載置する受け台690が設けられていてもよい。これにより、スペーサ600による位置調整の際などに、3つのゴム接続筒300を受け台690上に載置することができる。また、ゴム接続筒300のうちのスペーサ600が設けられていない部分の垂れ下がりを受け台690により抑制することができる。
【0107】
(その他)
本実施形態では、鋼管400内には、放熱材500が設けられていない部分に、空間が設けられている。これにより、鋼管400内で地絡に起因した空気の膨張が生じたときに、鋼管400の空間内で空気を対流させ、鋼管400内の急激な圧力上昇を抑制することができる。
【0108】
(具体的寸法等)
本実施形態のケーブル接続構造10が適用される電力ケーブル100の公称電圧は、例えば、66kV以上345kV以下である。電力ケーブル100の外径は、例えば、30mm以上130mm以下である。
【0109】
ゴム接続筒300の軸方向の長さは、例えば、500mm以上800mm以下であり、ゴム接続筒300の最大外径は、例えば、90mm以上230mm以下である。
【0110】
鋼管400の軸方向の長さは、例えば、2000mm以上5000mm以下であり、鋼管400の外径は、例えば、300mm(12インチ)以上710mm(28インチ)以下である。鋼管400の厚さは、例えば、5mm以上15mm以下である。
【0111】
なお、これらの寸法等は、一例であって、本開示を限定するものではない。
【0112】
(3)送電システム
次に、図4を用い、本実施形態に係る送電システム1について説明する。図4は、本実施形態に係る送電システムを示す概略構成図である。なお、図4において、1相の電力ケーブル100のみを記載し、他の2相の電力ケーブル100を省略している。
【0113】
なお、以下において、「直接接地」とは、抵抗素子などを介さずにアースに直接接続されることをいう。
【0114】
図4に示すように、本実施形態の送電システム1は、例えば、電源としての変電所90と、3相の電力ケーブル100と、複数のケーブル接続構造10と、を有している。
【0115】
本実施形態の送電システム1は、例えば、両端接地系統として構成されている。具体的には、所定距離離れて隣り合う一対のケーブル接続構造10のそれぞれでは、帰線ケーブル190は、例えば、3相の電力ケーブル対200の遮蔽層150と鋼管400とともに直接接地されている。
【0116】
本実施形態では、上述のように、一対のケーブル接続構造10の帰線ケーブル190が両端接地されているため、帰線ケーブル190とアースとの間で閉回路が形成されている。このような閉回路が形成されている場合では、3相の電力ケーブル100のそれぞれの導体110に通常時の電流(NC)が流れるときに、電力ケーブル100の外周に発生する磁界を打ち消すように、導体110に流れる電流の方向と反対の方向に、帰線ケーブル190に誘導電流が生じうる。
【0117】
しかしながら、本実施形態では、帰線ケーブル190は、3相の電力ケーブル100に隣接して(例えばこれらの中心に)設けられている。これにより、各相の電力ケーブル100の外周における磁界からの電磁誘導によって帰線ケーブル190に生じる誘導電流は、各相の位相のずれによって、一対のケーブル接続構造10の間で相殺される。その結果、本実施形態では、一対のケーブル接続構造10の間が両端接地されていても、誘導電流としての循環電流が流れないか、或いは流れ難い。
【0118】
また、本実施形態では、送電システム1を両端接地系統とすることで、電力ケーブル100に地絡が生じたときに、常に変電所90側のアースに事故電流を流すことができる。これにより、事故電流の発散を抑制することができる。
【0119】
(4)ケーブル接続構造の製造方法(ケーブル接続方法)
次に、図2A図2Bおよび図5を用い、本実施形態に係るケーブル接続構造の製造方法について説明する。図5は、本実施形態に係るケーブル接続構造の製造方法を示すフローチャートである。なお、ステップを「S」と略している。
【0120】
図5に示すように、本実施形態のケーブル接続構造の製造方法は、例えば、準備工程S120と、電力ケーブル対接続工程S140と、ゴム接続筒外嵌工程S160と、鋼管収容工程S200と、を有している。本実施形態の鋼管収容工程S200は、例えば、第1放熱材巻付工程S220と、位置決め工程S240と、第2放熱材挿入工程S260と、鋼管密閉工程S280と、を有している。
【0121】
(S120:準備工程)
まず、ケーブル接続構造10を構成する3相の電力ケーブル100、導体接続管、ゴム接続筒300、鋼管400、放熱材500、スペーサ600およびバインダ680を準備する。
【0122】
このとき、所定の拡径部材によって、ゴム接続筒300を拡径しておく。拡径部材としては、例えば、インナーコアリボン(不図示)を螺旋状に巻回したインナーコアや、拡径パイプなどが挙げられる。
【0123】
また、このとき、各電力ケーブル100を一端から軸方向に段階的に剥がす。これにより、導体110、絶縁層130、絶縁スクリーン140、および遮蔽層150を、電力ケーブル100の一端側からこの順で露出させる。
【0124】
ケーブル接続構造10を構成する各部材を準備したら、ゴム接続筒300および鋼管400のそれぞれに3相の電力ケーブル100を挿通させ、ゴム接続筒300および鋼管400のそれぞれを電力ケーブル100の所定位置に逃がしておく。なお、このとき、鋼管400を、フランジ部480を介して、パイプタイプ固体絶縁ケーブル20のケーブル用鋼管800に接続しておく。
【0125】
(S140:電力ケーブル対接続工程)
ゴム接続筒300および鋼管400のそれぞれに3相の電力ケーブル100を挿通させたら、一対の電力ケーブル100を、導体接続管内で互いの導体110の軸を一致させて突き合わせる。一対の電力ケーブル100を突き合わせたら、一対の電力ケーブル100の導体110同士を導体接続管により圧縮接続する。これにより、3相の電力ケーブル対200を形成する。
【0126】
(S160:ゴム接続筒外嵌工程)
電力ケーブル対接続工程S140が完了したら、3つのゴム接続筒300により、3相の電力ケーブル対200のそれぞれの接続箇所を覆う。具体的には、拡径済みのゴム接続筒300を、電力ケーブル100に逃がした位置から導体接続管と重なる位置に移動させる。ゴム接続筒300を所定位置に配置したら、ゴム接続筒300の軸方向の一端側から拡径部材を取り除き、ゴム接続筒300を縮径させる。これにより、電力ケーブル対200の接続箇所に対してゴム接続筒300を密着するように外嵌させることができる。
【0127】
(S200:鋼管収容工程)
ゴム接続筒外嵌工程S160が完了したら、3相の電力ケーブル対200のそれぞれの一部と3つのゴム接続筒300とを鋼管400内に収容する。このとき、3つのゴム接続筒300のそれぞれと鋼管400との間に放熱材500を配置し、3つのゴム接続筒300のそれぞれと鋼管400とに放熱材500を接触させる。
【0128】
具体的には、例えば、以下の手順で鋼管収容工程S200を行う。
【0129】
(S220:第1放熱材巻付工程)
ゴム接続筒外嵌工程S160が完了し、ゴム接続筒300が縮径した状態で、第1放熱材520を3つのゴム接続筒300のそれぞれに巻き付ける。
【0130】
(S240:位置決め工程)
第1放熱材巻付工程S220が完了したら、鋼管400の約半分を、3相の電力ケーブル対200のそれぞれの一部と3つのゴム接続筒300とを覆うように配置し、溶接で固定する。鋼管400の半分を配置したら、スペーサ600により、鋼管400内の3つのゴム接続筒300の位置を調整する。例えば、3つのゴム接続筒300のそれぞれから鋼管400までの距離を均等にする。
【0131】
(S260:第2放熱材挿入工程)
位置決め工程S240が完了したら、3つのゴム接続筒300のそれぞれに巻き付けられた第1放熱材520と、鋼管400との間の間隙内に、第2放熱材540の長手方向の約半分を挿入する。
【0132】
(S280:鋼管密閉工程)
第2放熱材挿入工程S260が完了したら、鋼管400の残りの半分を3相の電力ケーブル対200のそれぞれの一部と3つのゴム接続筒300とを覆うように配置し、鋼管400の残りの半分内に、第2放熱材540の長手方向の約半分を挿入する。その後、鋼管400の接合部を溶接する。これにより、鋼管400を密閉する。
【0133】
以上により、本実施形態のケーブル接続構造10が製造される。
【0134】
(5)本実施形態に係る効果
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
【0135】
(a)本実施形態では、放熱材500が、3つのゴム接続筒300のそれぞれと鋼管400との間に設けられ、3つのゴム接続筒300のそれぞれと鋼管400とに接触している。これにより、鋼管400内に絶縁油またはコンパウンドを充填せずとも、放熱材500により常時運転時のケーブル接続構造10における放熱性を向上させることができる。
【0136】
(b)鋼管400内に絶縁油またはコンパウンドを充填しないことで、鋼管400内で地絡が生じたとしても、絶縁油またはコンパウンドの気化に起因した鋼管400内の圧力上昇を抑制することができる。これにより、地絡に起因した爆発を抑制することができる。
【0137】
(c)3つのゴム接続筒300のそれぞれと鋼管400との間に、金属を含む放熱材500を介在させることで、鋼管400内で地絡が生じたときに、鋼管400よりも先に放熱材500を溶融または気化させることができる。放熱材500を溶融または気化させることで、地絡部から鋼管400への安定的な放電回路(導電パス)を形成することができる。これにより、ゴム接続筒300と鋼管400との間におけるアーク抵抗を低減することができる。その結果、地絡エネルギーを低下させることができる。
【0138】
(b)および(c)により、本実施形態では、電力ケーブル100が地絡したときの被害拡大を安定的に抑制することができる。
【0139】
(d)本実施形態では、鋼管400内に金属を含む放熱材500を介在させるだけで、地絡時の被害拡大を安定的に抑制することができる。つまり、鋼管400の外周をアラミド繊維シートで覆う場合と比較して、地絡時の被害拡大を容易に抑制することができる。これにより、現場でのケーブル接続構造10の製造作業を容易とし、部材コストおよび作業コストの増大を抑制することができる。
【0140】
(e)放熱材500が多孔質の金属を含むことで、放熱材500と空気との接触面積を広くすることができる。これにより、鋼管400内で地絡が生じたときに、溶融した放熱材500を直ちに気化させることができる。放熱材500を直ちに気化させることで、安定的な放電回路をすぐに形成し、アーク電流を継続させることができる。その結果、地絡エネルギーを安定的に低減させることができる。
【0141】
(f)放熱材500が空隙AGを有することで、鋼管400内の空気の体積を大きくすることができる。これにより、鋼管400内で地絡が生じたときに、鋼管400内で放熱材500などの金属が気化したり、鋼管400内で地絡に起因した空気の膨張が生じたりしたとしても、空隙AGを利用して、鋼管400内の圧力上昇を抑制することができる。
【0142】
(g)放熱材500が空隙AGを有することで、常時運転時の電力ケーブル100の通電によって電力ケーブル100の外周に磁界が生じたときに、電力ケーブル100の外周の磁界からの電磁誘導に起因した渦電流の循環回路を空隙AGにより分断させることができる。これにより、放熱材500における渦電流損を低減させることができる。その結果、常時運転時の渦電流損に起因した放熱材500の発熱を抑制することができる。
【0143】
(h)放熱材500が空隙AGを有することで、放熱材500の屈曲性および加工性を向上させることができる。これにより、鋼管400内の形状に合わせて放熱材500を容易に変形させることができる。例えば、ゴム接続筒300の外周に放熱材500を巻き付けたり、ゴム接続筒300と鋼管400との間に当該間隙の形状に合わせて放熱材500を挿入したりすることができる。その結果、放熱材500を有するケーブル接続構造10を容易に製造することができる。
【0144】
(i)放熱材500が空隙AGを有することで、鋼管400内で地絡が生じたときに、ゴム接続筒300の膨張を放熱材500に吸収させることができる。これにより、放熱材500がゴム接続筒300と鋼管400とに密着していたとしても、地絡時に鋼管400に対して過剰な応力が加わることを抑制することができる。
【0145】
(j)放熱材500の空隙率を50%以上とすることで、放熱材500と空気との接触面積を充分に広くすることができる。これにより、鋼管400内で地絡が生じたときに、溶融した放熱材500を直ちに気化させる効果を充分に得ることができる。また、放熱材500の空隙率を50%以上とすることで、鋼管400内で地絡が生じたときに、空隙AGを利用した鋼管400内の圧力上昇抑制効果を充分に得ることができる。また、放熱材500の空隙率を50%以上とすることで、放熱材500において渦電流の循環回路を空隙により充分に分断させることができる。これにより、常時運転時の渦電流損に起因した放熱材500の発熱を安定的に抑制することができる。
【0146】
(k)放熱材500に含まれる金属の比透磁率を1000以下とすることで、常時運転時に放熱材500に生じる渦電流に起因した発熱を抑制することができる。
【0147】
(l)放熱材500の体積抵抗率を1×10-7Ω・m以下とすることで、地絡した電力ケーブル対200と鋼管400との間におけるアーク抵抗を低くすることができる。これにより、地絡エネルギーを低くすることができる。
【0148】
(m)3相の電力ケーブル対200の遮蔽層150は、一括して鋼管400とともに接地されている。これにより、クロスボンド接地と比較して、現場での作業を容易に行うことができる。
【0149】
(n)放熱材500の少なくとも一部をシート状に構成することで、3つのゴム接続筒300のそれぞれと鋼管400との間に放熱材500を容易に介在させることができる。例えば、3つのゴム接続筒300のそれぞれに放熱材500の少なくとも一部を巻き付けることができる。その結果、ケーブル接続構造10を容易に製造することができる。
【0150】
(o)スペーサ600は、鋼管400内の3つのゴム接続筒300の位置を調整するよう構成されている。例えば、3つのゴム接続筒300のそれぞれから鋼管400までの距離を容易に均等にすることができる。これにより、鋼管400内における(放熱材500の)熱伝達性(放熱性)を均等にすることができる。
【0151】
(6)一実施形態の変形例
上述の実施形態は、必要に応じて、以下に示す変形例のように変更することができる。以下、上述の実施形態と異なる要素についてのみ説明し、上述の実施形態で説明した要素と実質的に同一の要素には、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0152】
(6-1)一実施形態の変形例1
本実施形態の変形例1のケーブル接続構造10では、放熱材500の構成が、上述の実施形態と異なっている。
【0153】
本変形例では、例えば、放熱材500の鋼管400側の抵抗(体積抵抗率)が、放熱材500のゴム接続筒300側の抵抗(体積抵抗率)よりも低くなっている。具体的には、例えば、鋼管400側の第2放熱材540が銅を含み、ゴム接続筒300側の第1放熱材520がニッケルを含んでいる。
【0154】
さらに、本変形例では、例えば、放熱材500の抵抗が、ゴム接続筒300側から鋼管400側に向けて段階的に低くなっていてもよい。この場合、例えば、鋼管400側の第2放熱材540うち、外側放熱材544が銅を含み、内側放熱材542がアルミニウムを含み、ゴム接続筒300側の第1放熱材520がニッケルを含んでいる。これにより、抵抗の段階的分布を実現することができる。
【0155】
本変形例によれば、以下の効果を得ることができる。
【0156】
ここで、放熱材500の鋼管400側では、電力ケーブル対200から離れているため、渦電流は相対的に生じにくい。一方で、放熱材500の鋼管400側は、鋼管400に直接接するため、鋼管400への熱伝達性が求められる。
【0157】
これに対し、放熱材500のゴム接続筒300側は、鋼管400から離れているため、鋼管400への熱伝達性の必要性が相対的に低い。一方で、放熱材500のゴム接続筒300側では、電力ケーブル対200に近いため、渦電流が生じやすい。このため、放熱材500のゴム接続筒300側では、渦電流の抑制が求められる。
【0158】
そこで、本変形例では、放熱材500の鋼管400側の抵抗を、放熱材500のゴム接続筒300側の抵抗よりも低くすることで、放熱材500の鋼管400側の熱伝導率を、放熱材500のゴム接続筒300側の熱伝導率よりも高くすることができる。これにより、常時運転時の発熱を、熱伝導率の高い鋼管400側の放熱材500を介して鋼管400に効率よく伝達させることができる。その結果、ケーブル接続構造10における放熱性を向上させることができる。
【0159】
また、本変形例によれば、渦電流が生じやすい放熱材500のゴム接続筒300側の抵抗を、放熱材500の鋼管400側の抵抗よりも高くすることで、放熱材500のゴム接続筒300側の渦電流損の増加を抑制することができる。その結果、常時運転時の渦電流損に起因した放熱材500のゴム接続筒300側の発熱を抑制することができる。
【0160】
このように、本変形例では、鋼管400内の位置に応じて、放熱材500の機能を最適化させることができる。
【0161】
(6-2)一実施形態の変形例2
本実施形態の変形例2のケーブル接続構造10では、放熱材500の空隙率が、上述の実施形態と異なっている。
【0162】
本変形例では、例えば、放熱材500の鋼管400側の空隙率が、放熱材500のゴム接続筒300側の空隙率よりも低くなっている。具体的には、例えば、鋼管400側の第2放熱材540の空隙率が80%未満であり、ゴム接続筒300側の第1放熱材520の空隙率が80%以上である。なお、本変形例では、第2放熱材540と第1放熱材520とは同じ金属を含んでいる。
【0163】
また、本変形例では、例えば、放熱材500の空隙率が、ゴム接続筒300から鋼管400側に向けて徐々に低くなっていてもよい。この場合、例えば、鋼管400側の第2放熱材540うち、外側放熱材544の空隙率が50%以下であり、内側放熱材542の空隙率が50%超80%未満であり、ゴム接続筒300側の第1放熱材520の空隙率が80%以上である。これにより、空隙率の段階的分布を実現することができる。
【0164】
また、本変形例では、例えば、放熱材500の鋼管400側の少なくとも一部は、充実金属(すなわち非多孔質金属、空隙率0%)を含んでいてもよい。例えば、鋼管400側の第2放熱材540うち、外側放熱材544を、充実金属としてもよい。これにより、低空隙率を有する多孔質の金属を製造することが困難な場合であっても、放熱材500の厚さ方向における空隙率の差を容易に形成することができる。
【0165】
なお、放熱材500の位置が電力ケーブル対200の外側に行くほど、通電電流が流れる導体110から離れる。このため、放熱材500の鋼管400側の少なくとも一部が充実金属であっても、当該部分に生じる渦電流が小さくなる。その結果、常時運転時の渦電流損に起因した放熱材500の鋼管400側の発熱を抑制することができる。
【0166】
また、本変形例では、放熱材500の厚さ方向の平均の空隙率は、例えば、50%以上であることが好ましい。これにより、鋼管400内で地絡が生じたときに、溶融した放熱材500を直ちに気化させる効果を充分に得ることができる。また、鋼管400内で地絡が生じたときに、空隙AGを利用した鋼管400内の圧力上昇抑制効果を充分に得ることができる。
【0167】
本変形例によれば、放熱材500の鋼管400側の空隙率を、放熱材500のゴム接続筒300側の空隙率よりも低くすることで、放熱材500の鋼管400側の熱伝導率を、放熱材500のゴム接続筒300側の熱伝導率よりも高くすることができる。これにより、ケーブル接続構造10における熱伝達性(放熱性)を向上させることができる。
【0168】
また、本変形例によれば、渦電流が生じやすい放熱材500のゴム接続筒300側の空隙率を、放熱材500の鋼管400側の空隙率よりも高くすることで、放熱材500のゴム接続筒300側における渦電流の循環回路を空隙AGにより容易に分断させることができる。これにより、渦電流損に起因した放熱材500のゴム接続筒300側の発熱を抑制することができる。
【0169】
また、本変形例によれば、放熱材500のゴム接続筒300側の空隙率を、放熱材500の鋼管400側の空隙率よりも高くすることで、放熱材500のゴム接続筒300側の屈曲性を向上させることができる。これにより、鋼管400の内径よりも曲率半径が小さいゴム接続筒300に対して放熱材500を容易に巻き付けることができる。
【0170】
<本発明の他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0171】
上述の実施形態では、ケーブル接続構造10における接続対象がパイプタイプ固体絶縁ケーブル20である場合について説明したが、接続対象は、ケーブル用鋼管を有しない3相の単心の電力ケーブル(固体絶縁ケーブル)であってもよい。
【0172】
上述の実施形態では、3相の電力ケーブル100とともに帰線ケーブル190が布設されている場合について説明したが、帰線ケーブル190は布設されていなくてもよい。ただし、上述のように帰線ケーブル190が布設されていたほうが、一対のケーブル接続構造10の間を両端接地することができるため、好ましい。
【0173】
上述の実施形態では、鋼管400内には、放熱材500が設けられていない部分に、空間が設けられている場合について説明したが、鋼管400内に全体に亘って放熱材500が充填されていてもよい。
【0174】
上述の実施形態では、鋼管400を溶接する場合について説明したが、鋼管400をねじ締結してもよい。
【0175】
<本発明の好ましい態様>
以下、本発明の好ましい態様を付記する。
【0176】
(付記1)
互いに接続される一対の電力ケーブルを含む3相の電力ケーブル対と、
前記3相の電力ケーブル対のそれぞれの接続箇所を覆うように設けられ、絶縁性のゴムを含む3つのゴム接続筒と、
前記3相の電力ケーブル対のそれぞれの一部と前記3つのゴム接続筒とを収容する鋼管と、
前記3つのゴム接続筒のそれぞれと前記鋼管との間に設けられ、前記3つのゴム接続筒のそれぞれと前記鋼管とに接触し、前記鋼管の融点よりも低い融点を有する放熱性の金属を含む放熱材と、
を有する
ケーブル接続構造。
【0177】
(付記2)
前記放熱材は、多孔質の金属を含む
付記1に記載のケーブル接続構造。
【0178】
(付記3)
前記放熱材の空隙率は、50%以上である
付記2に記載のケーブル接続構造。
【0179】
(付記4)
前記放熱材の前記鋼管側の空隙率は、前記放熱材の前記ゴム接続筒側の空隙率よりも低い
付記2に記載のケーブル接続構造。
【0180】
(付記5)
前記放熱材の前記鋼管側の少なくとも一部は、充実金属を含む
付記4に記載のケーブル接続構造。
【0181】
(付記6)
前記放熱材の厚さ方向の平均の空隙率は、50%以上である
付記4又は付記5に記載のケーブル接続構造。
【0182】
(付記7)
前記放熱材の空隙率は、前記ゴム接続筒側から前記鋼管側に向けて徐々に低くなっている
付記4から付記6のいずれか1つに記載のケーブル接続構造。
【0183】
(付記8)
前記放熱材に含まれる金属の比透磁率は、1000以下である
付記1から付記7のいずれか1つに記載のケーブル接続構造。
【0184】
(付記9)
温度20℃のときの前記放熱材の体積抵抗率は、1×10-7Ω・m以下である
付記1から付記8のいずれか1つに記載のケーブル接続構造。
【0185】
(付記10)
前記放熱材の前記鋼管側の抵抗は、前記放熱材の前記ゴム接続筒側の抵抗よりも低い
付記1から付記9のいずれか1つに記載のケーブル接続構造。
【0186】
(付記11)
前記放熱材の抵抗は、前記ゴム接続側から前記鋼管側に向けて段階的に低くなっている
付記10に記載のケーブル接続構造。
【0187】
(付記12)
前記一対の電力ケーブルのそれぞれは、中心から外側に向けて、導体と、絶縁層と、遮蔽層と、を有し、
前記3相の電力ケーブル対の前記遮蔽層は、一括して前記鋼管とともに接地されている
付記1から付記11のいずれか1つに記載のケーブル接続構造。
【0188】
(付記13)
前記3相の電力ケーブル対とともに布設され、前記3相の電力ケーブル対の前記遮蔽層および前記鋼管とともに接地される帰線ケーブルを有する
付記12に記載のケーブル接続構造。
【0189】
(付記14)
前記放熱材の少なくとも一部は、シート状に構成されている
付記1から付記13のいずれか1つに記載のケーブル接続構造。
【0190】
(付記15)
前記放熱材の少なくとも一部は、前記3つのゴム接続筒のそれぞれに巻き付けられる
付記14に記載のケーブル接続構造。
【0191】
(付記16)
前記鋼管内の前記3つのゴム接続筒の位置を調整するスペーサを有する
付記1から付記15のいずれか1つに記載のケーブル接続構造。
【0192】
(付記17)
前記スペーサは、
前記3つのゴム接続筒の間に挿入され、前記鋼管の中心軸側への前記3相の電力ケーブル対のそれぞれの移動を規制する芯部と、
前記鋼管の内周部に当接しつつ、前記鋼管内の前記芯部の位置を調整可能に、前記芯部を支持する支持部と、
を有する
付記16に記載のケーブル接続構造。
【0193】
(付記18)
前記3相の電力ケーブル対を結束するバインダを有する
付記1から付記17のいずれか1つに記載のケーブル接続構造。
【0194】
(付記19)
互いに接続される一対の電力ケーブルを含む電力ケーブル対と、
前記電力ケーブル対の接続箇所を覆うように設けられ、絶縁性のゴムを含むゴム接続筒と、
前記電力ケーブル対の一部と前記ゴム接続筒とを収容する鋼管と、
前記ゴム接続筒と前記鋼管との間に設けられ、前記ゴム接続筒と前記鋼管とに接触し、前記鋼管の融点よりも低い融点を有する放熱性の金属を含む放熱材と、
を有する
ケーブル接続構造。
【0195】
(付記20)
互いに接続される一対の電力ケーブルを含む3相の電力ケーブル対のそれぞれの接続箇所を覆うように設けられ、絶縁性のゴムを含む3つのゴム接続筒と、
前記3相の電力ケーブル対のそれぞれの一部と前記3つのゴム接続筒とを収容する鋼管と、
前記3つのゴム接続筒のそれぞれと前記鋼管との間に設けられ、前記3つのゴム接続筒のそれぞれと前記鋼管とに接触し、前記鋼管の融点よりも低い融点を有する放熱性の金属を含む放熱材と、
を有する
ケーブル接続構造用部材。
【0196】
(付記21)
3相の電力ケーブルと、
前記3相の電力ケーブルのそれぞれを接続するケーブル接続構造と、
を有し、
前記ケーブル接続構造は、
互いに接続される一対の電力ケーブルを含む3相の電力ケーブル対と、
前記3相の電力ケーブル対のそれぞれの接続箇所を覆うように設けられ、絶縁性のゴムを含む3つのゴム接続筒と、
前記3相の電力ケーブル対のそれぞれの一部と前記3つのゴム接続筒とを収容する鋼管と、
前記3つのゴム接続筒のそれぞれと前記鋼管との間に設けられ、前記3つのゴム接続筒のそれぞれと前記鋼管とに接触し、前記鋼管の融点よりも低い融点を有する放熱性の金属を含む放熱材と、
を有する
送電システム。
【0197】
(付記22)
互いに接続される一対の電力ケーブルを含む3相の電力ケーブル対を形成する工程と、
絶縁性のゴムを含む3つのゴム接続筒により、前記3相の電力ケーブル対のそれぞれの接続箇所を覆う工程と、
前記3相の電力ケーブル対のそれぞれの一部と前記3つのゴム接続筒とを鋼管内に収容しつつ、前記3つのゴム接続筒のそれぞれと前記鋼管との間に、前記鋼管の融点よりも低い融点を有する放熱性の金属を含む放熱材を配置し、前記3つのゴム接続筒のそれぞれと前記鋼管とに前記放熱材を接触させる工程と、
を有する
ケーブル接続構造の製造方法。
【符号の説明】
【0198】
1 送電システム
10 ケーブル接続構造
20 パイプタイプ固体絶縁ケーブル
90 変電所
100 電力ケーブル
110 導体
120 導体スクリーン
130 絶縁層
140 絶縁スクリーン
150 遮蔽層
160 ジャケット
190 帰線ケーブル
192 導体
194 ジャケット
200 電力ケーブル対
300 ゴム接続筒
400 鋼管
480 フランジ部
500 放熱材
502 網目部
520 第1放熱材
540 第2放熱材
542 内側放熱材
544 外側放熱材
600 スペーサ
620 芯部
640 支持部
680 バインダ
690 受け台
800 ケーブル用鋼管
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5