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特許7243460蓄電モジュールの製造方法、及び、蓄電モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】蓄電モジュールの製造方法、及び、蓄電モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20230314BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20230314BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20230314BHJP
   H01G 11/80 20130101ALI20230314BHJP
   H01G 11/84 20130101ALI20230314BHJP
   H01M 50/121 20210101ALI20230314BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
B29C45/14
B29C45/26
H01G11/80
H01G11/84
H01M50/121
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019102954
(22)【出願日】2019-05-31
(65)【公開番号】P2020198190
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2021-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】真里谷 毅
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 貴文
(72)【発明者】
【氏名】小竹 広和
【審査官】川村 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-012653(JP,A)
【文献】特開2018-106962(JP,A)
【文献】特開2005-259379(JP,A)
【文献】国際公開第2019/073791(WO,A1)
【文献】特許第6860091(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/00-10/39
H01M 6/00- 6/48
H01G 11/00-11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に沿って積層された複数のバイポーラ電極を含む電極積層体と、前記電極積層体を封止するための第1樹脂部を備える蓄電モジュールの製造方法であって、
第1金型を用いた樹脂の射出成形によって、前記電極積層体の外周部に前記第1樹脂部を形成する第1工程を備え、
前記電極積層体は、
前記第1方向において前記電極積層体の一端に位置する第1表面と、前記第1方向において前記電極積層体の他端に位置する第2表面と、前記第1方向に沿って延びて前記第1表面と前記第2表面とを接続する外側面と、を含み、
前記第1樹脂部は、前記電極積層体の前記外側面を覆う第1本体部と、前記第1本体部から前記電極積層体の前記第1表面の面内方向に沿って延在する第1オーバーハング部と、を含み、
前記第1金型は、内部に前記電極積層体が配置されたときに、前記電極積層体の前記外側面に臨むと共に前記第1方向に沿って延びる第1キャビティと、前記第1キャビティとつながり前記電極積層体の前記第1表面の外縁部から前記第1表面の面内方向に沿って延びる第2キャビティと、が前記電極積層体との間に形成されるように構成され、
前記第1工程は、
前記電極積層体の前記外側面が前記第1キャビティに臨むように、且つ、前記電極積層体の前記第1表面が前記第2キャビティに臨むように前記電極積層体を前記第1金型内に配置する第1配置工程と、
前記第1配置工程の後に、共通ゲートから前記第1金型内に樹脂を導入することにより、前記第1キャビティに充填された樹脂により前記第1本体部を形成すると共に、前記第1キャビティよりも鉛直上方に位置する前記第2キャビティに充填された樹脂により前記第1オーバーハング部を形成する第1形成工程と、
を含み、
前記第1形成工程は、
前記第1キャビティへの樹脂の充填を行う第1充填工程と、
前記第2キャビティへの樹脂の充填を行う第2充填工程と、
を含み、
前記第1形成工程においては、前記第2充填工程が完了した後に前記第1充填工程を完了させる、
蓄電モジュールの製造方法。
【請求項2】
前記第1配置工程においては、前記第1方向に直交する第2方向に沿った前記第1キャビティの厚さが、前記第1方向に沿った前記第2キャビティの厚さ以下となるように、前記電極積層体を前記第1金型内に配置する、
請求項1に記載の蓄電モジュールの製造方法。
【請求項3】
前記電極積層体と、前記第1工程において形成された前記第1樹脂部と、を含む電池構造体の外周部に、第2金型を用いた樹脂の射出成形によって第2樹脂部を形成する第2工程をさらに備え、
前記第2樹脂部は、前記第1本体部を覆う第2本体部と、前記第2本体部から前記電極積層体の前記第2表面の面内方向に沿って延在する第2オーバーハング部と、を含み、
前記第2金型は、内部に前記電池構造体が配置されたときに、前記第1本体部に臨むと共に前記第1方向に沿って延びる第3キャビティと、前記第3キャビティとつながり前記電極積層体の前記第2表面の外縁部から前記第2表面の面内方向に沿って延びる第4キャビティと、が前記電池構造体との間に形成されるように構成されており、
前記第2工程は、
前記第1本体部が前記第3キャビティに臨むように、且つ、前記電極積層体の前記第2表面が前記第4キャビティに臨むように前記電池構造体を前記第2金型内に配置する第2配置工程と、
前記第2配置工程の後に、前記第2金型内に樹脂を導入することにより、前記第3キャビティに充填された樹脂により前記第2本体部を形成すると共に、前記第4キャビティに充填された樹脂により前記第2オーバーハング部を形成する第2形成工程と、
を含み、
前記第2配置工程においては、前記第2方向に沿った前記第3キャビティの厚さが、前記第1方向に沿った前記第4キャビティの厚さよりも厚くなるように、前記電池構造体を前記第2金型内に配置する、
請求項2に記載の蓄電モジュールの製造方法。
【請求項4】
前記第1配置工程においては、前記第1キャビティの前記第1方向に直交する断面における断面積が、前記第2キャビティの前記第1方向に沿った断面における断面積よりも小さくなるように、前記電極積層体を前記第1金型内に配置する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄電モジュールの製造方法。
【請求項5】
前記第1配置工程においては、前記第1キャビティの容積が前記第2キャビティの容積よりも大きくなるように、前記電極積層体を前記第1金型内に配置する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の蓄電モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電モジュールの製造方法、及び、蓄電モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の蓄電モジュールとして、電極板の一方面に正極が形成され、他方面に負極が形成されたバイポーラ電極を備えるバイポーラ電池が知られている(特許文献1参照)。バイポーラ電池は、セパレータを介して複数のバイポーラ電極を積層してなる積層体を備えている。積層体の側面には、積層方向に隣り合うバイポーラ電極間を封止する封止体が設けられており、バイポーラ電極間に形成された内部空間に電解液が収容されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-204386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
積層体に封止体を設ける方法としては、例えば射出成形が考えられる。この場合、積層体の側面を露出するように金型内に積層体を配置し、金型内に樹脂を導入する。これにより、積層体の側面を被覆するように封止体が設けられる。ところで、内部空間の気密性を向上させるために、封止体に対して、積層体の側面から表面及び裏面上に延びるオーバーハング部を設けることが考えられる。
【0005】
すなわち、内部空間の気密性を向上させるためには、積層体の側面を覆う本体部と、本体部から積層体の表面及び裏面にわたって延在するオーバーハング部と、を含む封止体を構成することが一案である。これに対して、本体部及びオーバーハング部を含む封止体を射出成形により形成しようとすると、積層体を構成するバイポーラ電極間に樹脂が入り込み、バイポーラ電極がまくれるように変形する場合がある。
【0006】
そこで、本発明は、電極の変形を抑制可能な蓄電モジュールの製造方法、及び、蓄電モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を進めることにより、次のような知見を得た。すなわち、封止体を射出成形により形成する際に電極間に樹脂が入り込んで電極が変形するのは、金型内に導入した樹脂が、積層体の表面(又は裏面)側のキャビティ(オーバーハング部のためのキャビティ)よりも、積層体の外側面側のキャビティ(本体部のためのキャビティ)を先に充填する結果、積層体の表面(又は裏面)側のキャビティが充填されていない状態で、積層体の外側面側から表面(又は裏面)側に向かう樹脂流が生じるためである。本発明者は、以上の知見に基づいて本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明に係る蓄電モジュールの製造方法は、第1方向に沿って積層された複数の電極を含む電極積層体と、電極積層体を封止するための第1樹脂部を備える蓄電モジュールの製造方法であって、第1金型を用いた樹脂の射出成形によって、電極積層体の外周部に第1樹脂部を形成する第1工程を備え、電極積層体は、第1方向において電極積層体の一端に位置する第1表面と、第1方向において電極積層体の他端に位置する第2表面と、第1方向に沿って延びて第1表面と第2表面とを接続する外側面と、を含み、第1樹脂部は、電極積層体の外側面を覆う第1本体部と、第1本体部から電極積層体の第1表面の面内方向に沿って延在する第1オーバーハング部と、を含み、第1金型は、内部に電極積層体が配置されたときに、電極積層体の外側面に臨むと共に第1方向に沿って延びる第1キャビティと、第1キャビティとつながり電極積層体の第1表面の外縁部から第1表面の面内方向に沿って延びる第2キャビティと、が電極積層体との間に形成されるように構成され、第1工程は、電極積層体の外側面が第1キャビティに臨むように、且つ、電極積層体の第1表面が第2キャビティに臨むように電極積層体を第1金型内に配置する第1配置工程と、第1配置工程の後に、共通ゲートから第1金型内に樹脂を導入することにより、第1キャビティに充填された樹脂により第1本体部を形成すると共に、第2キャビティに充填された樹脂により第1オーバーハング部を形成する第1形成工程と、を含み、第1形成工程は、第1キャビティへの樹脂の充填を行う第1充填工程と、第2キャビティへの樹脂の充填を行う第2充填工程と、を含み、第1形成工程においては、第2充填工程が完了した後に第1充填工程を完了させる。
【0009】
この製造方法においては、電極積層体の外側面を覆う第1本体部と、第1本体部から電極積層体の第1表面上にわたって延在する第1オーバーハング部と、を含む第1樹脂部を射出成形にて形成する。より具体的には、まず、電極積層体の外側面が金型の第1キャビティに臨むように、且つ、電極積層体の第1表面が金型の第2キャビティに臨むように、電極積層体を第1金型内に配置する。そして、共通ゲートから金型内に樹脂を導入することにより、第1キャビティに充填された樹脂により第1本体部を形成すると共に、第2キャビティに充填された樹脂により第1オーバーハング部を形成する。これにより、第1樹脂部が形成される。特に、この製造方法においては、電極積層体の第1表面側の第2キャビティの樹脂の充填を行う第2充填工程が完了した後に、電極積層体の外側面側の第1キャビティへの樹脂の充填を行う第1充填工程を完了させる。このため、第2キャビティが充填されていない状態で、外側面側から第1表面側に向かう樹脂流が生じにくい。よって、電極間に樹脂が入り込んで電極が変形することが抑制される。
【0010】
ここで、本発明者は、上記知見に基づいてさらなる検討を進めた結果、次のような知見を得るに至った。すなわち、第1本体部のための第1キャビティの厚さ(第1方向に交差する第2方向についての寸法)が、第1オーバーハング部のための第2キャビティの厚さ(第1方向についての寸法)よりも厚いと、樹脂が優先的に第1キャビティに流入する結果、第1キャビティが先に充填されやすい。そして、第1キャビティの厚さを第2キャビティの厚さ同等以下とすることにより、第1キャビティに優先的に樹脂が流入することが避けられ、第2キャビティを先に充填させやすくなる。
【0011】
そこで、本発明に係る蓄電モジュールの製造方法においては、第1配置工程において、第1方向に直交する第2方向に沿った第1キャビティの厚さが、第1方向に沿った第2キャビティの厚さ以下となるように、電極積層体を第1金型内に配置してもよい。このように、キャビティの厚さをコントロールすることにより、確実に、第2キャビティへの樹脂の充填を完了させた後に第1キャビティへの樹脂の充填を完了させ、電極の変形を抑制できる。
【0012】
ところで、上記のようにキャビティ間の相対的な厚さをコントロールすると、第1樹脂部における第1本体部の厚さが、第1オーバーハング部の厚さ以下に制限されることとなる。
【0013】
そこで、本発明に係る蓄電モジュールの製造方法は、電極積層体と、第1工程において形成された第1樹脂部と、を含む電池構造体の外周部に、第2金型を用いた樹脂の射出成形によって第2樹脂部を形成する第2工程をさらに備え、第2樹脂部は、第1本体部を覆う第2本体部と、第2本体部から電極積層体の第2表面の面内方向に沿って延在する第2オーバーハング部と、を含み、第2金型は、内部に電池構造体が配置されたときに、第1本体部に臨むと共に第1方向に沿って延びる第3キャビティと、第3キャビティとつながり電極積層体の第2表面の外縁部から第2表面の面内方向に沿って延びる第4キャビティと、が電池構造体との間に形成されるように構成されており、第2工程は、第1本体部が第3キャビティに臨むように、且つ、電極積層体の第2表面が第4キャビティに臨むように電池構造体を第2金型内に配置する第2配置工程と、第2配置工程の後に、第2金型に樹脂を導入することにより、第3キャビティに充填された樹脂により第2本体部を形成すると共に、第4キャビティに充填された樹脂により第2オーバーハング部を形成する第2形成工程と、を含み、第2配置工程においては、第2方向に沿った第3キャビティの厚さが、第1方向に沿った第4キャビティの厚さよりも厚くなるように、電池構造体を第2金型内に配置してもよい。これによれば、相対的に薄くなりやすい第1本体部を覆うように、相対的に厚く形成可能な第2本体部が設けられることになり、気密性を向上可能である。
【0014】
なお、本発明に係る蓄電モジュールの製造方法においては、第1配置工程において、第1キャビティの第1方向に直交する断面における断面積が、第2キャビティの第1方向に沿った断面における断面積よりも小さくなるように、電極積層体を第1金型内に配置してもよい。或いは、第1配置工程においては、第1キャビティの容積が第2キャビティの容積よりも大きくなるように、電極積層体を第1金型内に配置してもよい。このように、第2キャビティへの樹脂の充填を完了させた後に第1キャビティへの樹脂の充填を完了させて電極の変形を抑制するに際して、キャビティの厚さ、断面積、容積の少なくとも1つをコントロールすることができる。
【0015】
本発明に係る蓄電モジュールは、第1方向に沿って積層された複数の電極を含む電極積層体と、電極積層体を封止するための第1樹脂部及び第2樹脂部と、を備え、電極積層体は、第1方向において電極積層体の一端に位置する第1表面と、第1方向において電極積層体の他端に位置する第2表面と、第1方向に沿って延びて第1表面と第2表面とを接続する外側面と、を含み、第1樹脂部は、電極積層体の外側面を覆う第1本体部と、第1本体部から電極積層体の第1表面の面内方向に沿って延在する第1オーバーハング部と、を含み、第2樹脂部は、第1本体部を覆う第2本体部と、第2本体部から電極積層体の第2表面の面内方向に沿って延在する第2オーバーハング部と、を含み、第1方向に直交する第2方向に沿った前記第1本体部の厚さは、前記第1方向に沿った前記第1オーバーハング部の厚さ以下であり、第2方向に沿った第2本体部の厚さは、第1方向に沿った第2オーバーハング部の厚さよりも厚い。
【0016】
この蓄電モジュールは、例えば次のように作製できる。すなわち、まず、電極積層体の外側面を覆う第1本体部と、第1本体部から電極積層体の第1表面上にわたって延在する第1オーバーハング部と、を含む第1樹脂部を射出成形にて形成する。より具体的には、まず、電極積層体の外側面が金型の第1キャビティに臨むように、且つ、電極積層体の第1表面が金型の第2キャビティに臨むように、電極積層体を第1金型内に配置する。そして、共通ゲートから金型に樹脂を導入することにより、第1キャビティに充填された樹脂により第1本体部を形成すると共に、第2キャビティに充填された樹脂により第1オーバーハング部を形成する。これにより、第1樹脂部が形成さする。特に、第1樹脂部の形成に際して、電極積層体の第1表面側の第2キャビティへの樹脂の充填を完了させた後に、電極積層体の外側面側の第1キャビティへの樹脂の充填を完了させる。これにより、第2キャビティが充填されていない状態で、外側面側から第1表面側に向かう樹脂流が生じにくい。よって、電極間に樹脂が入り込んで電極が変形することが抑制される。さらに、この蓄電モジュールによれば、第1オーバーハングと同等以下の厚さの第1本体部を覆うように、第2オーバーハングよりも厚い第2本体部を設けることにより、気密性が向上される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電極の変形を抑制可能な蓄電モジュールの製造方法、及び、蓄電モジュールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係る蓄電モジュールを備える蓄電装置を示す概略断面図である。
図2図1に示された蓄電モジュールの内部構成を示す概略断面図である。
図3図2に示された蓄電モジュールの模試的な断面図であって、2次樹脂シールの詳細を説明するための図である。
図4図2,3に示された蓄電モジュールの製造方法の主要な工程を示すフローチャートである。
図5図4に示された製造方法を説明するための断面図である。
図6図4に示された製造方法を説明するための断面図である。
図7図4に示された製造方法を説明するための断面図である。
図8】第1のシミュレーション例を示す図である。
図9】第1のシミュレーション例を示す図である。
図10】第2のシミュレーショ例を示す図である。
図11】第2のシミュレーショ例を示す図である。
図12】第3のシミュレーション例を示す図である。
図13】第3のシミュレーション例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
引き続いて、図面を参照しつつ、本実施形態に係る蓄電モジュール、及び、蓄電モジュールの製造方法について説明する。なお、各図の説明においては、同一又は相当する要素同士には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、以下の図には、X軸、Y軸、及びZ軸によって規定される直交座標系を示す場合がある。
【0020】
図1は、実施形態に係る蓄電モジュールを備える蓄電装置を示す概略断面図である。図1に示される蓄電装置1は、例えばフォークリフト、ハイブリッド自動車または電気自動車等の車両のバッテリとして使用され得る。蓄電装置1は、複数(ここでは3つ)の蓄電モジュール2を備えている。蓄電モジュール2は、例えばニッケル水素二次電池、リチウムイオン二次電池等の二次電池、又は電気二重層キャパシタである。以下の説明では、ニッケル水素二次電池を例示する。
【0021】
複数の蓄電モジュール2は、金属製の導電板3を介して積層されている。蓄電モジュール2及び導電板3の積層体の積層方向(例えばZ軸方向)の最外層(スタック最外層)は、一例として蓄電モジュール2である。蓄電モジュール2及び導電板3は、例えば積層方向から見て矩形状(平面視矩形状)を有している。導電板3は、隣り合う蓄電モジュール2と電気的に接続されている。これにより、複数の蓄電モジュール2が積層方向に直列接続されている。蓄電モジュール2については、後に詳述する。
【0022】
積層方向の一端(ここでは下端)に位置する蓄電モジュール2には、正極端子4が接続されている。積層方向の他端(ここでは上端)に位置する蓄電モジュール2には、負極端子5が接続されている。正極端子4及び負極端子5は、積層方向に交差(直交)する方向(例えばX軸方向)に延在している。このような正極端子4及び負極端子5を設けることにより、蓄電装置1の充放電を実施することができる。なお、蓄電装置1においては、スタック最外層が導電板3であってもよい。この場合、スタック最外層の導電板3に対して、正極端子4及び負極端子5を設けることができる。
【0023】
導電板3は、蓄電モジュール2において発生した熱を放出するための放熱板としても機能し得る。導電板3には、蓄電モジュール2の積層方向と正極端子4及び負極端子5の延在方向とに交差(直交)する方向(例えばY軸方向)に延在した複数の空隙3aが設けられている。これらの空隙3aを空気等の冷媒が通過することにより、蓄電モジュール2からの熱を効率的に外部に放出することができる。
【0024】
また、蓄電装置1は、蓄電モジュール2及び導電板3を積層方向に拘束する拘束ユニット6を備えている。拘束ユニット6は、蓄電モジュール2及び導電板3を積層方向に挟む1対の拘束プレート7と、これらの拘束プレート7同士を締結する複数組のボルト8及びナット9とを有している。
【0025】
拘束プレート7は、鉄等の金属で形成されている。各拘束プレート7と蓄電モジュール2との間には、樹脂フィルム等の絶縁フィルム10がそれぞれ配置されている。拘束プレート7及び絶縁フィルム10は、例えば平面視矩形状を有している。ボルト8の軸部8aが各拘束プレート7に設けられた挿通孔7aを挿通した状態で、軸部8aの先端部にナット9が螺合することで、蓄電モジュール2、導電板3及び絶縁フィルム10に積層方向の拘束荷重が付与される。なお、スタック最外層が導電板3である場合には、各拘束プレート7と導電板3との間に絶縁フィルム10が介在されることとなる。
【0026】
次に、蓄電モジュール2の構成について詳細に説明する。図2は、図1に示された蓄電モジュールの内部構成を示す概略断面図である。図2に示されるように、蓄電モジュール2は、電極積層体13と、電極積層体13を封止するための樹脂製の封止体14と、を備えている。電極積層体13は、セパレータ12を介して、積層方向(第1方向、ここではZ軸方向)に沿って積層された複数の電極(複数のバイポーラ電極11、単一の負極終端電極19、及び、単一の正極終端電極18)を含む。
【0027】
バイポーラ電極11は、電極板15、電極板15の第1面15aに設けられた正極16、及び、電極板15の第1面15aの反対の第2面15bに設けられた負極17を含む。正極16は、正極活物質が電極板15に塗工されることにより形成される正極活物質層である。負極17は、負極活物質が電極板15に塗工されることにより形成される負極活物質層である。電極積層体13において、一のバイポーラ電極11の正極16は、セパレータ12を挟んで積層方向に隣り合う別の電極(バイポーラ電極11又は負極終端電極19)の負極17と対向している。電極積層体13において、一のバイポーラ電極11の負極17は、セパレータ12を挟んで積層方向に隣り合うさらに別の電極(バイポーラ電極11又は正極終端電極18)の正極16と対向している。
【0028】
負極終端電極19は、電極板15、及び電極板15の第2面15bに設けられた負極17を含む。負極終端電極19は、第2面15bが電極積層体13の内側(積層方向についての中心側)に向くように、積層方向の一端に配置されている。負極終端電極19の負極17は、セパレータ12を介して、積層方向の一端のバイポーラ電極11の正極16と対向している。正極終端電極18は、電極板15、及び電極板15の第1面15aに設けられた正極16を含む。正極終端電極18は、第1面15aが電極積層体13の内側に向くように、積層方向の他端に配置されている。正極終端電極18の正極16は、セパレータ12を介して、積層方向の他端のバイポーラ電極11の負極17と対向している。
【0029】
スタック最外層を除く蓄電モジュール2においては、負極終端電極19の電極板15の第1面15aには、導電板3が接触している。また、スタック最外層を除く蓄電モジュール2においては、正極終端電極18の電極板15の第2面15bには、別の導電板3が接触している。この場合、拘束荷重は、導電板3を介して負極終端電極19及び正極終端電極18から電極積層体13に付加される。すなわち、導電板3は、積層方向に沿って電極積層体13に拘束荷重を付加する拘束部材でもある。
【0030】
電極板15は、例えば、ニッケル又はニッケルメッキ鋼板といった金属からなる。一例として、電極板15は、ニッケルからなる矩形の金属箔である。電極板15の周縁部(バイポーラ電極11、負極終端電極19、及び、正極終端電極18の縁部)は、矩形枠状をなし、正極活物質及び負極活物質が塗工されない未塗工領域となっている。正極16を構成する正極活物質としては、例えば水酸化ニッケルが挙げられる。負極17を構成する負極活物質としては、例えば水素吸蔵合金が挙げられる。本実施形態では、電極板15の第2面15bにおける負極17の形成領域は、電極板15の第1面15aにおける正極16の形成領域よりも大きくなっている。
【0031】
セパレータ12は、例えばシート状に形成されている。セパレータ12としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、ポリプロピレン、メチルセルロース等からなる織布又は不織布等が例示される。セパレータ12は、フッ化ビニリデン樹脂化合物で補強されたものであってもよい。
【0032】
封止体14は、電極積層体13を取り囲むように配置され、電極(バイポーラ電極11、負極終端電極19、及び、正極終端電極18)の電極板15の周縁部15cをそれぞれ保持する複数の1次樹脂シール20と、これらの1次樹脂シール20を取り囲むように配置された2次樹脂シール21と、を有している。1次樹脂シール20は、積層方向に沿って電極板15毎に配置されている。1次樹脂シール20は、枠状を有している。1次樹脂シール20は、電極板15の周縁部15cに接合(例えば溶着)されている。1次樹脂シール20及び2次樹脂シール21は、例えば、絶縁性の樹脂であって、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、又は変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)等から構成され得る。
【0033】
積層方向に隣り合う電極板15間には、電極板15及び1次樹脂シール20によって画成された内部空間Vが設けられている。内部空間Vには、アルカリ性の電解液が注入されている。アルカリ性の電解液としては、例えば水酸化カリウム水溶液等を含むアルカリ溶液が用いられている。1次樹脂シール20は、内部空間Vを封止するためのものである。蓄電モジュール2における1つのセルは、2つの電極板15、正極16、負極17、セパレータ12及び1次樹脂シール20により構成され、内部空間Vを有している。
【0034】
すなわち、ここでは、電極積層体13及び1次樹脂シール20は、さらに電極積層体24を構成している。電極積層体24は、バイポーラ電極11の周縁部に1次樹脂シール20を接合(例えば溶着)して構成される電極ユニット25、正極終端電極18の周縁部に1次樹脂シール20を接合(例えば溶着)して構成される電極ユニット26、及び、負極終端電極19に1次樹脂シール20を接合(例えば溶着)して構成される電極ユニット27を、セパレータ12を介して積層することによって構成されている。
【0035】
この電極積層体24は、積層方向(第1方向)に交差(直交)する第1表面24bと、積層方向に交差(直交)すると共に第1表面24bの反対側の第2表面24cと、積層方向(第1方向)に沿って延在して第1表面24bと第2表面24cとを接続する外側面24aと、を含む。第1表面24bは、積層方向において電極積層体24の一端に位置する。第2表面24cは、積層方向において電極積層体24の他端に位置する。第1表面24bは、負極終端電極19の電極板15の第1面15aと、該第1面15aに接合された1次樹脂シール20の積層方向の外側に臨む面と、を含む。第2表面24cは、正極終端電極18の電極板15の第2面15bと、該第2面15bに接合された1次樹脂シール20の積層方向の外側に臨む面と、を含む。外側面24aは、1次樹脂シール20の積層方向に沿った外側面の集合を含む。第1表面24b及び第2表面24cの周縁部と外側面24aとによって、電極積層体24の外周部が構成されている。2次樹脂シール21は、この電極積層体24の外周部に対して設けられる。
【0036】
2次樹脂シール21は、角筒状の本体部22と、積層方向においてこの本体部22の両端部(一端及び他端)から1次樹脂シール20の内側に張り出した上下1対の矩形環状のオーバーハング部23と、を有している。オーバーハング部23は、本体部22から電極積層体24(1次樹脂シール20)に重なるように延在している。オーバーハング部23は、複数の1次樹脂シール20を積層方向に挟んでいる。2次樹脂シール21にオーバーハング部23を設けることにより、蓄電モジュール2の充放電の繰り返しによる蓄電モジュール2の膨れ上がりを抑えることができる。2次樹脂シール21は、射出成形(後述)により形成されている。2次樹脂シール21は、1次樹脂シール20に接合されている。2次樹脂シール21は、1次樹脂シール20と共に内部空間Vを封止するためのものである。
【0037】
図3は、図2に示された蓄電モジュールの模試的な断面図であって、2次樹脂シールの詳細を説明するための図である。図3に示されるように、2次樹脂シール21は、第1樹脂部21Aと、第2樹脂部21Bと、を有している。後述するように、第1樹脂部21A及び第2樹脂部21Bは、それぞれ射出成形により形成される。第1樹脂部21Aは電極積層体24の外周部に形成されている。第2樹脂部21Bは、第1樹脂部21Aの外側に形成されている。第1樹脂部21A及び第2樹脂部21Bは、それぞれ枠状に形成されており、積層方向に交差(直交)する方向(Y軸方向及びZ軸方向)に電極積層体24の外側に向けて順に配置されている。第1樹脂部21Aと第2樹脂部21Bとは、互に接合されている。
【0038】
第1樹脂部21Aは、電極積層体24の外側面24aを覆う第1本体部22Aと、第1本体部22Aから電極積層体24の第1表面24b上にわたって延在する第1オーバーハング部23Aと、を含む。第1オーバーハング部23Aは、第1表面24bの面内方向に沿って延在している。第1本体部22Aは、2次樹脂シール21の本体部22の内側部分を構成する。第1オーバーハング部23Aは、2次樹脂シール21の一対のオーバーハング部23のうちの一方である。第1樹脂部21Aは、第1本体部22Aと第1オーバーハング部23Aとによって、断面L字状に形成されている。
【0039】
第2樹脂部21Bは、第1本体部22Aを覆う第2本体部22Bと、第2本体部22Bから電極積層体24の第2表面24c上にわたって延在する第2オーバーハング部23Bと、を含む。第2オーバーハング部23Bは、第2表面24cの面内方向に沿って延在している。第2本体部22Bは、2次樹脂シール21の本体部22の外側部分を構成する。第2オーバーハング部23Bは、2次樹脂シール21の一対のオーバーハング部23のうちの他方である。第2樹脂部21Bは、第2本体部22Bと第2オーバーハング部23Bとによって、第1樹脂部21Aと逆向きの断面L字状に形成されている。
【0040】
積層方向に交差(直交)する方向(ここではY軸方向又はX軸方向であり、以下「第2方向という」)に沿った第1本体部22Aの厚さT22Aは、積層方向(ここではZ軸方向であり、以下「第1方向」という)に沿った第1オーバーハング部23Aの厚さT23A以下である。厚さT22Aは、厚さT23Aと同一であってもよいし、厚さT23Aよりも薄くてもよい。一例として、第1本体部22Aの第1方向に交差(直交)する断面における断面積は、第1オーバーハング部23Aの第1方向に沿った(第2方向に交差(直交)する)断面における断面積以下である。例えば、第1本体部22Aの第1方向に交差(直交)する断面における断面積は、第1オーバーハング部23Aの第1方向に沿った(第2方向に交差(直交)する)断面における断面積よりも小さい。
【0041】
第1方向に沿った第1本体部22Aの長さL22Aは、第2方向に沿った第1オーバーハング部23Aの長さL23Aよりも長い。ここでは、第1本体部22Aの体積が、第1オーバーハング部23Aの体積よりも大きくされている。なお、長さL23Aは、第1樹脂部21Aにおける第1方向からみて電極積層体24に重なる部分の長さである。また、長さL22Aは、第2方向からみて、第1樹脂部21Aの電極積層体24に重なる部分、及び、第1樹脂部21Aの第1表面24bから突出した部分の長さの合計である。
【0042】
第2方向に沿った第2本体部22Bの厚さT22Bは、第1方向に沿った第2オーバーハング部23Bの厚さT23Bよりも厚い。第1オーバーハング部23Aの厚さT23Aと、第2オーバーハング部23Bの厚さT23Bとは、例えば同一である。この場合、第2本体部22Bの厚さT22Bは、第1本体部22Aの厚さT22Aよりも厚くなる。第1本体部22Aの厚さT22Aと、第2本体部22Bの厚さT22Bとは、相補的に設定され得る。すなわち、厚さT22Aと厚さT22Bとは、それらの合計が、本体部22として要求される厚さとなるように設定され得る。この場合、第1本体部22Aが薄くされる分だけ、第2本体部22Bが厚くされる。
【0043】
引き続いて、蓄電モジュール2の製造方法について説明する。図4は、図2,3に示された蓄電モジュールの製造方法の主要な工程を示すフローチャートである。この製造方法においては、まず、複数のバイポーラ電極11を作製する(工程S101)。なお、工程S101では、バイポーラ電極11の他に、正極終端電極18及び負極終端電極19も作製される。一方で、1次樹脂シール20のための複数の樹脂部材を作製する(工程S102)。これらの工程の順序は問われない。
【0044】
そして、バイポーラ電極11の電極板15の周縁部に1次樹脂シール20を溶着することにより、複数の電極ユニット25を作製する(工程S103)。より具体的には、この工程S103においては、工程S102で作製された複数(例えば4つ)の樹脂部材を、枠状となるようにバイポーラ電極11の周縁部に配置すると共に溶着する。これにより、樹脂部材同士、及び樹脂部材とバイポーラ電極11とが溶着され、バイポーラ電極11の周縁部に設けられた1次樹脂シール20が作製されると共に、1次樹脂シール20を含む電極ユニット25が作製される。
【0045】
このように、ここでは、1次樹脂シール20を被溶着部材に溶着するとは、1次樹脂シール20の元となる部材の溶着によって、結果的に被溶着部材に溶着された1次樹脂シール20が形成される場合を含む。ただし、1次樹脂シール20を被溶着部材に溶着するとは、枠状の1次樹脂シール20を予め形成しておき、それを被溶着部材に直接的に溶着する場合もある。
【0046】
なお、工程S103では、電極ユニット25の他に、電極ユニット26,27も作製される。次いで、複数の電極ユニット25及び電極ユニット26,27をセパレータ12を介して積層することにより、電極積層体24を作製する(工程S104)。工程S101~S104は、電極積層体13及び複数の1次樹脂シール20を有する電極積層体24を作製する工程である。
【0047】
続く工程においては、金型を用いた樹脂の射出成形によって、2次樹脂シールを作製する(工程S105:第1工程、第2工程)。この工程S105について、より詳細に説明する。図5の(a)は、金型(第1金型)28の内部に電極積層体24を配置した状態を示す部分的な断面図である。図5の(b)は、図5の(a)の一部拡大図である。図5に示されるように、金型28は、下金型30と上金型31とを有している。下金型30には、電極積層体24が収容される収容用凹部32が設けられている。収容用凹部32は、金型28の上下方向Hに垂直に切った断面で矩形状を有している。電極積層体24が収容用凹部32に収容された状態において、電極積層体24の外周部の周囲には、収容用凹部32の内面32a,31aとの間に樹脂が充填されるキャビティ33が形成されている。
【0048】
より具体的には、金型28は、内部(収容用凹部32)に電極積層体24が配置されたときに、電極積層体24の外側面24aに臨むと共に第1方向に沿って延びる第1キャビティ35と、電極積層体24の第1表面24bの外縁部に臨むと共に第2方向に沿って延びる第2キャビティ36と、が電極積層体24との間に形成されるように構成されている。第2キャビティ36は、第1キャビティ35につながり、電極積層体24の第1表面24bの外縁部に沿って延びている(外縁部から第1表面24bの面内方向に沿って延びている)。また、金型28には、キャビティ33に樹脂を導入するための樹脂導入部(ゲート)P1が設けられている。樹脂導入部P1は、一例として、上金型31に設けられている。樹脂導入部P1は、第1方向からみて第1キャビティ35における第2キャビティ36との接続部分に重なる位置に設けられている。樹脂導入部P1から導出された樹脂は、第1キャビティ35及び第2キャビティ36の両方に同時に導入される。すなわち、樹脂導入部P1は、第1キャビティ35及び第2キャビティ36への樹脂の導入に共通して用いられる共通ゲートである。
【0049】
第1キャビティ35は、第1樹脂部21Aの第1本体部22Aを形成するためのものである。第2キャビティ36は、第1樹脂部21Aの第1オーバーハング部23Aを形成するためのものである。したがって、第1キャビティ35及び第2キャビティ36の形状・寸法は、第1本体部22A及び第1オーバーハング部23Aの形状・寸法に対応している。
【0050】
すなわち、第2方向に沿った第1キャビティ35の厚さT35は、第1方向に沿った第2キャビティ36の厚さT36以下である。厚さT35は、厚さT36と同一であってもよいし、厚さT36よりも薄くてもよい。厚さT35は、例えば厚さT36の150%程度である。一例として、第1キャビティ35の第1方向に交差(直交)する断面における断面積は、第2キャビティ36の第1方向に沿った(第2方向に交差(直交)する)断面における断面積以下である。例えば、第1キャビティ35の第1方向に交差(直交)する断面における断面積は、第2キャビティ36の第1方向に沿った(第2方向に交差(直交)する)断面における断面積よりも小さい。第1方向に沿った第1キャビティ35の長さL35は、第2方向に沿った第2キャビティ36の長さL36よりも長い。ここでは、第1キャビティ35の容積が、第2キャビティ36の容積よりも大きくされている。なお、長さL36は、第1方向からみて、キャビティ33の電極積層体24に重なる部分の長さである。また、長さL35は、第2方向からみて、キャビティ33の電極積層体24に重なる部分、及び、キャビティ33の第1表面24bから突出する部分の長さ(すなわち、第2キャビティ36の厚さT36)の合計である。
【0051】
工程S105においては、まず、以上のような金型28を用いた樹脂の射出成形によって、電極積層体24の外周部に第1樹脂部21Aを形成する(第1工程)。すなわち、ここでは、まず、電極積層体24の外側面24aが第1キャビティ35に臨むように、且つ、電極積層体24の第1表面24bが第2キャビティ36に臨むように、電極積層体24を金型28内に配置する(第1配置工程)。その後、図6に示されるように、共通ゲートである樹脂導入部P1から金型28内に(すなわち、第1キャビティ35及び第2キャビティ36に同時に)樹脂を導入することにより、第1キャビティ35に充填された樹脂により第1本体部22Aを形成すると共に、第2キャビティ36に充填された樹脂により第1オーバーハング部23Aを形成する(第1形成工程)。
【0052】
特に、ここでは、第1キャビティ35への樹脂の充填よりも第2キャビティ36への樹脂の充填を先に完了させる。すなわち、第1形成工程は、第1キャビティ35への樹脂の充填を行う第1充填工程と、第2キャビティ36への樹脂の充填を行う第2充填工程と、を含み、第2充填工程が完了した後に、第1充填工程を完了させる。これは、第1キャビティ35及び第2キャビティ36の寸法の関係によって実現される。すなわち、一例としては、第1形成工程においては、第1キャビティ35の厚さT35が第2キャビティ36の厚さT36以下とされた状態において、金型28内に樹脂を導入することにより、第2充填工程が完了した後に第1充填工程を完了させる。換言すれば、第1配置工程においては、第1方向に直交する第2方向に沿った第1キャビティ35の厚さT35が、第1方向に沿った第2キャビティ36の厚さT36以下となるように、電極積層体24を金型28内に配置する。
【0053】
また、このようなキャビティの厚さ以外にも(或いは厚さに加えて)、キャビティの断面積、体積、長さ等の他のパラメータのコントロールによって、第1キャビティ35への樹脂の充填よりも第2キャビティ36への樹脂の充填が先に完了するようにしてもよい。すなわち、第1形成工程においては、第1キャビティ35の第1方向に交差(直交)する断面における断面積が、第2キャビティ36の第1方向に沿った断面における断面積よりも小さくされた状態において、金型28内に樹脂を導入することにより、第2充填工程が完了した後に第1充填工程を完了させてもよい。換言すれば、第1配置工程においては、第1キャビティ35の第1方向に交差(直交)する断面における断面積が、第2キャビティ36の第1方向に沿った断面における断面積よりも小さくなるように、電極積層体24を金型28内に配置してもよい。さらには、第1形成工程においては、第1キャビティ35の容積が第2キャビティ36の容積よりも大きくされた状態において、金型28内に樹脂を導入することにより、第2充填工程が完了した後に第1充填工程を完了させてもよい。換言すれば、第1配置工程においては、第1キャビティ35の容積が第2キャビティ36の容積よりも大きくなるように、電極積層体24を金型28内に配置してもよい。これらのように、ここでは、第2充填工程が完了した後に第1充填工程が完了するように、厚さ、断面積、容積の少なくとも1つ(それらの任意の組み合わせ)をコントロールすることができる。以上により、第1樹脂部21Aが作製されると共に、電極積層体24と第1樹脂部21Aとを含む電池構造体37が作製される。
【0054】
工程S105においては、続いて、図7に示されるように、電池構造体37の外周部に、金型(第2金型)29を用いた樹脂の射出成形によって第2樹脂部21Bを形成する(第2工程)。図7に示されるように、金型29は、上金型38と下金型39とを有している。電池構造体37が金型29に収容された状態において、電池構造体37の外周部の周囲には、金型29(下金型39)の内面39aとの間に樹脂が充填されるキャビティ40が形成されている。より具体的には、金型29は、内部に電池構造体37が配置されたときに、第1方向に沿って延びる第1本体部22Aの外側面である電池構造体37の外側面37aに臨むと共に、第1方向に沿って延びる第3キャビティ41と、電池構造体37(電極積層体24)の第2表面24cに臨むと共に、第3キャビティ41から第2方向に沿って延びる第4キャビティ42と、が電池構造体37との間に形成されるように構成されている。第4キャビティ42は、第3キャビティ41につながり、電極積層体24の第2表面24cの外縁部に沿って延びる(外縁部から第2表面24cの面内方向に沿って延びている)。
【0055】
第3キャビティ41は、第2樹脂部21Bの第2本体部22Bを形成するためのものである。第4キャビティ42は、第2樹脂部21Bの第2オーバーハング部23Bを形成するためのものである。したがって、第3キャビティ41及び第4キャビティ42の形状・寸法は、第2本体部22B及び第2オーバーハング部23Bの形状・寸法に対応している。すなわち、第2方向に沿った第3キャビティ41の厚さT41は、第1方向に沿った第4キャビティの厚さT42よりも厚い。
【0056】
ここでは、以上のような金型29に電池構造体37を配置する。すなわち、第1本体部22Aが第3キャビティ41に臨むように、且つ、第2表面24cが第4キャビティ42に臨むように、電池構造体37を金型29内に配置する(第2配置工程)。その後、金型29内に樹脂導入部P2を介して樹脂を導入することにより、第3キャビティ41に充填された樹脂により第2本体部22Bを形成すると共に、第4キャビティ42に充填された樹脂により第2オーバーハング部23Bを形成する(第2形成工程)。特に、上記のとおり、ここでは、第2方向に沿った第3キャビティ41の厚さT41が、第1方向に沿った第4キャビティ42の厚さT42よりも厚くされた状態において、第3キャビティ41及び第4キャビティ42(すなわち金型29)に樹脂を導入する。換言すれば、第2配置工程においては、第2方向に沿った第3キャビティ41の厚さT41が、第1方向に沿った第4キャビティ42の厚さT42よりも厚くなるように、電池構造体37を金型29内に配置する。これにより、第2樹脂部21Bが作製される。
【0057】
その後、注液口を介して電極積層体24(電極積層体13)の内部空間Vに電解液を注入したり、その後に注液口を封止したりする工程等を経て、蓄電モジュール2が製造される。
【0058】
以上説明したように、本実施形態に係る製造方法においては、電極積層体24の外側面24aを覆う第1本体部22Aと、第1本体部22Aから電極積層体24の第1表面24b上にわたって延在する第1オーバーハング部23Aと、を含む第1樹脂部21Aを射出成形にて形成する。より具体的には、まず、電極積層体24の外側面24aが金型28の第1キャビティ35に臨むように、且つ、電極積層体24の第1表面24bが金型28の第2キャビティ36に臨むように、電極積層体24を金型28内に配置する。そして、共通ゲートから金型28内に樹脂を導入することにより、第1キャビティ35に充填された樹脂により第1本体部22Aを形成すると共に、第2キャビティ36に充填された樹脂により第1オーバーハング部23Aを形成する。これにより、第1樹脂部21Aが形成される。
【0059】
特に、本実施形態に係る製造方法においては、電極積層体24の第1表面24b側の第2キャビティ36への樹脂の充填を行う第2充填工程が完了した後に、電極積層体24の外側面24a側の第1キャビティ35への樹脂の充填を行う第1充填工程を完了させる。このため、第2キャビティ36が充填されていない状態で、外側面24a側から第1表面24b側に向かう樹脂流が生じにくい。よって、電極間に樹脂が入り込んで電極が変形することが抑制される。
【0060】
また、本実施形態に係る製造方法においては、第1配置工程において、第1方向に交差(直交)する第2方向に沿った第1キャビティ35の厚さが、第1方向に沿った第2キャビティ36の厚さ以下となるように、電極積層体24を金型28内に配置する。これにより、第2充填工程が完了した後に第1充填工程を完了させる。このように、キャビティの厚さをコントロールすることにより、確実に、第2充填工程が完了した後に第1充填工程を完了させ、電極の変形を抑制できる。
【0061】
また、本実施形態に係る製造方法は、電極積層体24と第1樹脂部21Aとを含む電池構造体37の外周部に、金型29を用いた樹脂の射出成形によって第2樹脂部21Bを形成する第2工程をさらに備える。第2樹脂部21Bは、第1本体部22Aを覆う第2本体部22Bと、第2本体部22Bから第2表面24c上にわたって延在する第2オーバーハング部23Bと、を含む。金型29は、内部に電池構造体37が配置されたときに、第1方向に沿って延びる第3キャビティ41と、第3キャビティ41につながり第2表面24cの外縁部に沿って延びる第4キャビティ42と、が電池構造体37との間に形成されるように構成されている。
【0062】
第2工程は、第1本体部22Aが第3キャビティ41に臨むように、且つ、第2表面24cが第4キャビティ42に臨むように電池構造体37を金型29内に配置する第2配置工程と、第2配置工程の後に、金型29内に樹脂を導入することにより、第3キャビティ41に充填された樹脂により第2本体部22Bを形成すると共に、第4キャビティ42に充填された樹脂により第2オーバーハング部23Bを形成する第2形成工程と、を含む。第2配置工程においては、第2方向に沿った第3キャビティ41の厚さT41が、第1方向に沿った第4キャビティ42の厚さT42よりも厚くなるように、電池構造体37を金型29内に配置する。このため、相対的に薄くなりやすい第1本体部22Aを覆うように、相対的に厚く形成可能な第2本体部22Bが設けられることになり、気密性が向上され得る。
【0063】
なお、本実施形態に係る製造方法においては、第1配置工程において、第1キャビティ35の第1方向に交差(直交)する断面における断面積が、第2キャビティ36の第1方向に沿った断面における断面積よりも小さくなるように、電極積層体24を金型28内に配置することにより、第2充填工程が完了した後に第1充填工程を完了させてもよい。或いは、第1配置工程においては、第1キャビティ35の容積が第2キャビティ36の容積よりも大きくなるように、電極積層体24を金型28内に配置することにより、第2充填工程が完了した後に第1充填工程を完了させてもよい。このように、第2キャビティ36への樹脂の充填を完了させた後に第1キャビティ35への樹脂の充填を完了させ、電極の変形を抑制するに際して、キャビティの厚さ、断面積、容積の少なくとも1つをコントロールすることができる。
【0064】
引き続いて、シミュレーション結果に基づいて、作用・効果についての説明を行う。図8及び図9は、第1のシミュレーション例を示す図である。図8の(a)に示されるように、この例では、第2方向に沿った第1キャビティ35の厚さT35と、第1方向に沿った第2キャビティ36の厚さT36とを、同一とした。その状態において、図9に示されるように、互に離間した一対の樹脂導入部P1から、第1キャビティ35及び第2キャビティ36に同時に樹脂を導入した(共通ゲートから金型28内に樹脂を導入した)。樹脂の粘度は、例えば10Pa・sec~1000Pa・sec程度とした。
【0065】
図9によれば、第1キャビティ35よりも第2キャビティ36に優先的に樹脂Mが進行していることが理解される。すなわち、この第1のシミュレーショ例によれば、第1キャビティ35への樹脂Mの充填よりも第2キャビティ36への樹脂Mの充填を先に完了させ得る(第2充填工程が完了した後に第1充填工程を完了させ得る)。この結果、図8の(b)に示されるように、一方の樹脂導入部P1から導入された樹脂Mと、他方の樹脂導入部P1から導入された樹脂Mとの合流地点(ウェルドライン)においても、第1キャビティ35から第2キャビティ36側に向かう樹脂流(すなわち、外側面24a側から第1表面24b側に向かう樹脂流)の発生が抑制された。
【0066】
図10及び図11は、第2のシミュレーショ例を示す図である。図10の(a)に示されるように、この例では、第2方向に沿った第1キャビティ35の厚さT35を、第1方向に沿った第2キャビティ36の厚さT36よりも薄くした。その状態において、図11に示されるように、一対の樹脂導入部P1から、第1キャビティ35及び第2キャビティ36に同時に樹脂を導入した(共通ゲートから金型28内に樹脂を導入した)。
【0067】
図11によれば、第1のシミュレーショ例と比較しても、第1キャビティ35よりも第2キャビティ36にさらに優先的に樹脂Mが進行していることが理解される。すなわち、この第2のシミュレーショ例によれば、第1キャビティ35への樹脂Mの充填よりも第2キャビティ36への樹脂Mの充填をより確実に先に完了させ得る(より確実に第2充填工程が完了した後に第1充填工程を完了させ得る)。この結果、図10の(b)に示されるように、一方の樹脂導入部P1から導入された樹脂Mと、他方の樹脂導入部P1から導入された樹脂Mとの合流地点(ウェルドライン)においても、第1キャビティ35から第2キャビティ36側に向かう樹脂流(すなわち、外側面24a側から第1表面24b側に向かう樹脂流)の発生が抑制された。
【0068】
図12及び図13は、第3のシミュレーション例を示す図である。図12の(a)に示されるように、この例では、第2方向に沿った第1キャビティ35の厚さT35を、第1方向に沿った第2キャビティ36の厚さT36よりも厚くした。その状態において、図13に示されるように、一対の樹脂導入部P1から、第1キャビティ35及び第2キャビティ36に同時に樹脂を導入した(共通ゲートから金型28内に樹脂を導入した)。
【0069】
図13によれば、第2キャビティ36よりも第1キャビティ35に優先的に樹脂Mが進行していることがわかる。すなわち、この第3のシミュレーショ例によれば、第1キャビティ35への樹脂Mの充填よりも第2キャビティ36への樹脂Mの充填を先に完了させることが困難となる。この結果、図12の(b)に示されるように、少なくとも、一方の樹脂導入部P1から導入された樹脂Mと、他方の樹脂導入部P1から導入された樹脂Mとの合流地点(ウェルドライン)において、第1キャビティ35から第2キャビティ36側に向かう樹脂流(すなわち、外側面24a側から第1表面24b側に向かう樹脂流)が発生した。
【0070】
以上のシミュレーション結果から、少なくとも、第1キャビティ35の厚さT35を第2キャビティ36の厚さT36以下となるようにコントロールすることにより、確実に、第1キャビティ35への樹脂の充填よりも第2キャビティ36への樹脂の充填を先に完了させることが可能であり、結果的に電極の変形を抑制できることが確認された。
【0071】
以上の実施形態は、本発明の一実施形態を説明したものである。したがって、本発明は、上述した蓄電モジュール2の製造方法、及び、蓄電モジュール2に限定されない。本発明は、各請求項の要旨変更しない範囲において、上述した蓄電モジュール2の製造方法、及び、蓄電モジュール2を任意に変形したものとされ得る。
【符号の説明】
【0072】
2…蓄電モジュール、21A…第1樹脂部、21B…第2樹脂部、22A…第1本体部、22B…第2本体部、23A…第1オーバーハング部、23B…第2オーバーハング部、24…電極積層体、24a…外側面、24b…第1表面、24c…第2表面、28…金型(第1金型)、29…金型(第2金型)、35…第1キャビティ、36…第2キャビティ、41…第3キャビティ、42…第4キャビティ、T22A,T22B,T23A,T23B…厚さ。
図1
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