(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】表示装置の製造方法、チップ部品の移設方法、および感放射線性組成物
(51)【国際特許分類】
H01L 33/00 20100101AFI20230314BHJP
G09F 9/33 20060101ALI20230314BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20230314BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20230314BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20230314BHJP
C08F 20/10 20060101ALI20230314BHJP
C08F 20/38 20060101ALI20230314BHJP
C09J 7/30 20180101ALI20230314BHJP
C09J 4/02 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
H01L33/00 H
G09F9/33
G09F9/30 360
G09F9/00 338
H01L21/60 311S
C08F20/10
C08F20/38
C09J7/30
C09J4/02
H01L33/00 L
(21)【出願番号】P 2019223222
(22)【出願日】2019-12-10
【審査請求日】2022-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(72)【発明者】
【氏名】杉田 光
(72)【発明者】
【氏名】一戸 大吾
(72)【発明者】
【氏名】栗田 慎也
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 陽一
(72)【発明者】
【氏名】畑瀬 一輝
(72)【発明者】
【氏名】松本 仁成,
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 圭亮
(72)【発明者】
【氏名】和田 夏子
【審査官】村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-032809(JP,A)
【文献】国際公開第2018/216621(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/073364(WO,A1)
【文献】特開2014-105216(JP,A)
【文献】国際公開第2019/128118(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0354249(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
G09F 9/33
G09F 9/30
G09F 9/00
H01L 21/60
C08F 20/10
C08F 20/38
C09J 7/30
C09J 4/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画素を構成するチップ部品が配置された第1基板と、重合性基を有する化合物とラジカル重合開始剤を含む感放射線性組成物により形成された有機層を有する第2基板を備え、
前記第1基板上のチップ部品と、前記第2基板上の有機層とを接触させ、露光により接着する工程と
前記チップ部品を前記第1基板から離間させて前記第2基板へ移す工程と、
1つ以上の電極が設置され、前記電極を覆うように導電層が形成された第3基板を備え、
前記第2基板上のチップ部品と、前記第3基板の導電層とを接触させ、加熱する工程と、
前記第2基板と前記第3基板とを離間させて、前記チップ部品を第3基板へ移設する工程と、
を備える表示装置の製造方法。
【請求項2】
前記重合性基を有する化合物が下記式(1)で示される構造部位を有する化合物である 請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【化1】
(式(1)中、R
aは水素原子またはメチル基を示す。R
bからR
eは,それぞれ独立に、水素原子、炭素数1から12の炭化水素基、炭素数1から12アルコキシル基、炭素数1から12のハロゲン化アルキルを示す。nは1から12の整数である。*は結合位を示す。)
【請求項3】
前記感放射線性組成物に含まれる有機溶剤の含有量が、3質量%以下である請求項1または請求項2に記載の表示装置の製造方法。
【請求項4】
前記チップ部品は、マイクロLEDチップである、 請求項1から請求項3記載の表示装置の製造方法。
【請求項5】
前記導電層が、異方導電性フィルムで形成される層である請求項1から請求項4に記載の表示装置の製造方法。
【請求項6】
画素を構成するチップ部品が配置された第1基板と、重合性基を有する化合物とラジカル重合開始剤を含む感放射線性組成物により形成された有機層を有する第2基板を備え、
前記第1基板上のチップ部品と、前記第2基板上の有機層とを接触させ、露光により接着する工程と
前記チップ部品を前記第1基板から離間させて前記第2基板へ移す工程と、
1つ以上の電極が設置され、前記電極を覆うように導電層が形成された第3基板を備え、
前記第2基板上のチップ部品と、前記第3基板の導電層とを接触させ、加熱する工程と、
前記第2基板と前記第3基板とを離間させて、前記チップ部品を第3基板へ移設する工程と、
を備えるチップ部品の移設方法。
【請求項7】
前記感放射線性組成物により形成される有機層は、露光により前記チップ部品と接着し、前記有機層は加熱により熱分解する請求項6に記載のチップ部品の移設方法。
【請求項8】
下記式(1)で示される重合性基を有する化合物、ラジカル重合開始剤、熱酸発生剤を含む感放射線性組成物。
【化2】
(式(1)中、R
aは水素原子またはメチル基を示す。R
bからR
eは,それぞれ独立に、水素原子、炭素数1から12の炭化水素基、炭素数1から12アルコキシル基、炭素数1から12のハロゲン化アルキルを示す。nは1から12の整数である。*は結合位を示す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置の製造方法、チップ部品の移設方法、および感放射線性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
次世代の表示装置として、マイクロLEDディスプレイが注目されている。マイクロLEDディスプレイとは、個々の画素が、微細な発光ダイオード(以下、LEDという)チップであり、このLEDチップがディスプレイ基板の表面に高密度に敷き詰められた表示装置である。このようなマイクロLEDディスプレイの製造においては、ディスプレイ基板の表面に対して、LEDチップを精度よく確実に配列させることが重要である。
【0003】
チップ部品を搬送して基板表面上へ配置させる移設技術としては、例えば、特許文献1に開示された移設ツールを用いる技術が知られている。この移設ツールは、チップ部品を捕捉する静電移設ヘッドアレイを備えている。実際のマイクロLEDディスプレイの製造においては、電子部品であるLEDチップに対して、静電破壊などの影響の少ない移設方法が要望されている。
【0004】
このようなLEDチップの移設方法としては、以下の(1)~(4)の工程を備える方法が提案されている。
(1)先ず、仮基板(トレー)の表面に設けられた仮基板側接着剤層上に、多数のLEDチップを配置させる。
(2)次に、移設用プレートの表面に設けられた移設用接着剤層にLEDチップを貼り付けた後に、移設用プレートを持ち上げる。これによって、LEDチップが仮基板の仮基板側接着剤層から剥離される。すなわち、LEDチップが仮基板側から移設用プレート側へ移る(移設される)。
(3)次に、TFT(Thin Film Transistor)基板を用意する。このTFT基板のLEDチップを搭載させる表面には、異方性導電フィルムを配置しておく。上記の移設用プレートをTFT基板と対向するように配置させた後、移設用プレートとTFT基板とを近接させてLEDチップを異方性導電フィルムに当接させる。
(4)その後、移設用プレートとTFT基板を挟んで熱圧着を行い、LEDチップをTFT基板側の駆動回路に導通させた後、移設用プレートの移設用接着剤層を、LEDチップから剥離させる。この工程では、LEDチップが移設用基板から駆動回路基板へ移設される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のLEDチップの移設方法では、移設用接着剤層とLEDチップの接着力が弱いと、LEDチップが移設の途中で落下してしまい歩留まりが上がらず、LEDチップの接着力が強すぎると駆動回路基板への移設に時間を要するという課題がある。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、チップ部品を確実に駆動回路基板の所望の位置に移設でき、しかも歩留まりの高い表示装置の製造方法を提供することを目的とする。本発明は、チップ部品を駆動回路基板の所望の位置に確実に移設できる移設方法を提供することを目的とする。また、本発明は、チップ部品の移設を確実に行える感放射線性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の第1の態様は、
画素を構成するチップ部品が配置された第1基板と、重合性基を有する化合物とラジカル重合開始剤を含む感放射線性組成物により形成された有機層を有する第2基板を備え、前記第1基板上のチップ部品と、前記第2基板上の有機層とを接触させ、露光により接着する工程と前記チップ部品を前記第1基板から離間させて前記第2基板へ移す工程と、1つ以上の電極が設置され、前記電極を覆うように導電層が形成された第3基板を備え、前記第2基板上のチップ部品と、前記第3基板の導電層とを接触させ、加熱する工程と、前記第2基板と前記第3基板とを離間させて、前記チップ部品を第3基板へ移設する工程と、を備える表示装置の製造方法である。
【0009】
第1の態様においては、上記重合性基を有する化合物が下記式(1)で示される構造部位を有する化合物であることが好ましい。
【化1】
(式(1)中、R
aは水素原子またはメチル基を示す。R
bからR
dは,それぞれ独立に、水素原子、炭素数1から12の炭化水素基、炭素数1から12アルコキシル基、炭素数1から12のハロゲン化アルキルを示す。nは1から12の整数である。*は結合位を示す。)
【0010】
第1の態様においては、感放射線性組成物に含まれる有機溶剤の含有量が、3質量%以下であることが好ましい。
【0011】
第1の態様においては、上記チップ部品が、マイクロLEDチップであることが好ましい。
【0012】
本発明の第2の態様は、チップの移設方法であって、画素を構成するチップ部品が配置された第1基板と、重合性基を有する化合物とラジカル重合開始剤を含む感放射線性組成物により形成された有機層を有する第2基板を備え、前記第1基板上のチップ部品と、前記第2基板上の有機層とを接触させ、露光により接着する工程と 前記チップ部品を前記第1基板から離間させて前記第2基板へ移す工程と、1つ以上の電極が設置され、前記電極を覆うように導電層が形成された第3基板を備え、前記第2基板上のチップ部品と、前記第3基板の導電層とを接触させ、加熱する工程と、前記第2基板と前記第3基板とを離間させて、前記チップ部品を第3基板へ移設する工程と、を備えるチップ部品の移設方法である。
【0013】
第2の態様においては、上記前記感放射線性組成物により形成される移設部材層は、露光により前記チップ部品と接着し、加熱により前記チップ部品と脱着することが好ましい。
【0014】
本発明の第3の態様は、下記式(1)で示される重合性基を有する化合物、ラジカル重合開始剤、熱酸発生剤を含む感放射線性組成物である。
【化2】
(式(1)中、R
aは水素原子またはメチル基を示す。R
bからR
eは,それぞれ独立に、水素原子、炭素数1から12の炭化水素基、炭素数1から12アルコキシル基、炭素数1から12のハロゲン化アルキルを示す。nは1から12の整数である。*は結合位を示す。)
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る表示装置の製造方法によれば、チップ部品を加熱処理によって、簡便に駆動回路基板の所望の位置に移設して、しかも製造歩留まりの高い表示装置の製造方法を実現できる。本発明に係るチップ部品の移設方法によれば、チップ部品を確実に駆動回路基板の所望の位置に加熱処理によって簡便に移設できる移設方法を実現できる。本発明に係る感放射線組成物材よれば、チップ部品の接着を露光によって行うことができ、さらに移設を加熱処理によって簡便に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係る表示装置の製造方法において、第1基板である仮基板と第2基板である移設用基板とを対向させた状態を示す工程断面説明図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施の形態に係る表示装置の製造方法において、第2基板である移設用基板の有機層を第1基板である仮基板側のチップ部品の上面に接着させた状態を示す工程断面説明図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施の形態に係る表示装置の製造方法において、第2基板である移設用基板の有機層を第1基板である仮基板側のチップ部品の上面に接着させた後、第2基板と第1基板とを離間させてチップ部品を移設用基板側へ移設した状態を示す工程断面説明図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施の形態に係る表示装置の製造方法において、チップ部品が移設された移設用基板と、第3基板である駆動回路基板とを対向させた状態を示す工程断面説明図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施の形態に係る表示装置の製造方法において、移設用基板に移設されたチップ部品と、第3基板である駆動回路基板とを対向させた状態を示す工程断面説明図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施の形態に係る表示装置の製造方法において、第2基板上のチップ部品と第3基板上の導電層とを接触させ、加熱しながら接着させている状態を示す工程断面説明図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施の形態に係る表示装置の製造方法において、移設用基板と駆動回路基板とを重ねて加熱しながら接着した後に、移設用基板上の有機層が熱分解して接着力が低下し、チップ部品を有機層から離間して、チップ部品を駆動回路基板側へ移設した状態を示す工程断面説明図である。
【
図8】
図8は、光硬化後と加熱処理後の試験片の接着性を比較した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施の形態に係る表示装置の製造方法、チップ部品の移設方法、および有機層を形成する感放射線性組成物の詳細を説明する。但し、図面は模式的なものであり、各部材の寸法や寸法の比率や形状などは現実のものと異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率や形状が異なる部分が含まれている。
【0018】
以下、
図1~
図9を用いて、本実施の形態に係る表示装置の製造方法を説明する。なお、本実施の形態は、本発明に係るチップ部品の移設方法および有機層を適用した表示装置の製造方法である。本実施の形態では、表示装置としては、マイクロLEDディスプレイを適用する。
【0019】
先ず、
図1に示すように、第1基板(以下、仮基板1ともいう)を用意する。仮基板1は、一方の基板表面に、接着力の小さい接着剤層が設けられている。この仮基板1には、多数のチップ部品2を、所定の配置間隔で配列するように配置する。なお、本実施の形態で用いるチップ部品2は、表示装置の画素を構成するマイクロLEDチップである。仮基板1は、その表面に多数のチップ部品2を配置する配置領域が、マイクロLEDディスプレイの表示領域と同等の縦横寸法に設定されている。
【0020】
本実施の形態では、
図1に示すように、チップ部品は、仮基板1の接着力の小さい接着剤で接着されている。
【0021】
次に、
図1に示すように、第2基板(以下、移設用基板4ともいう)を用意する。移設用基板4は、一方の基板表面に沿って有機層3が設けられている。有機層3は、重合性基を有する化合物とラジカル重合開始剤を含む感放射線性組成物により形成されている。この有機層3を365nmの波長を含む紫外光で露光することにより有機層3は接着性を示すようになる。
感放射線性組成物に含まれるラジカル重合開始剤がラジカルを発生し、重合性基を有する化合物のラジカル重合反応を進行させることで、接着性が発現する。なお、この有機層3の接着力は、仮基板1側に設けた接着層よりも十分に接着力が大きくなっている。
【0022】
ここで、感放射線組成物について説明する。本発明の感放射線組成物は、重合性基を有する化合物とラジカル重合開始剤を含む感放射線性組成物である。
重合性基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、エポキシ基等が挙げられる、本発明では、後に説明する加熱による脱着性も機能付与するために、下記式(1)に示す、アセタール結合部位を有する構造部位を有する基であることが好ましい。
を有する化合物であることが好ましい。
【化3】
(式(1)中、R
aは水素原子またはメチル基を示す。R
bからR
dは,それぞれ独立に、水素原子、炭素数1から12の炭化水素基、炭素数1から12アルコキシル基、炭素数1から12のハロゲン化アルキルを示す。nは1から12の整数である。*は結合位を示す。)
【0023】
上記式(1)で示される化合物を、さらに具体的に説明すると下記式(2)で表される化合物となる。
【化4】
式(2)中、R
1及びR
3は、それぞれ独立して、炭素数1~8の1級あるいは2級アルキル基であり、置換基として炭化水素基、フッ素化アルキル基あるいはケイ素化アルキル基を有していても良い。R
2及びR
4は、それぞれ独立して、炭素数1~8のアルキル基、またはアリール基であり、R
2及びR
4がアルキル基の場合には、置換基として炭化水素基、フッ素化アルキル基あるいはケイ素化アルキル基を有していても良い。Xは炭素数1から12の2価の炭化水素基を表す。R
5は、重合性基を含む有機基を示す。Zはm価の有機基を表し、mは1から10の整数を示す。
【0024】
R1及びR3が同時にアルキル基となることが好ましく、さらに好ましくは同時にメチル基である。R7およびR8は同時に水素原子であることが好ましい。Xは炭素数1~3か好ましい。Zとしては2~5価の有機基であることが好ましい。
【0025】
本発明の化合物が感放射線硬化接着を可能とする理由は、上記構造部位R5を有することにある。組成物中にラジカル重合開始剤を加えることにより、化合物間で架橋反応が進み、有機層全体の硬化収縮が進行することで基板間を接着することができる。
【0026】
また、本発明の化合物が加熱により接着性が低下させることができるのは、上記構造部位R1及びR2及びR3及びR4を有することにある。組成物中に熱酸発生剤を加えることにより、加熱後に発生した酸が、上記化学式(2)中のエステルの分解反応を触媒して、カルボン酸と不飽和炭化水素に分解させることができる。これにより分子構造の一部が加熱により分解することで、有機層全体の接着性が著しく低下する。
【0027】
また本発明の化合物が無溶剤の接着剤としての利用を可能とする理由は、線状ポリマーに比較して低分子量で液体性状であり、低分子量にも関わらずその構造中に多数の架橋性構造部位R5を有するため、硬化時の架橋密度を極めて高くすることができることにある。
【0028】
本発明の重合性基を有する化合物は、チオール・エン反応により合成することができる。複数のチオール基を有する硫黄化合物とチオール・エン反応する官能基を有する化合物との反応により得ることができる。
【0029】
以下に、複数のチオール基を有する硫黄化合物の例を示す。
複数のチオール基を有する硫黄化合物としては、複数のチオール基を有していて、アルカリ水溶液によって分解する基を有していなければ特に限定はないが、2~5個のチオール基を有している化合物であることが好ましく、分子量は90以上1000以下であることが分解の容易さから好ましい。
【0030】
硫黄化合物としては、脂肪族も、芳香族チオール化合物も使用可能であり、特に限定されない。このような前記多官能性チオール化合物の具体的な例としては、グリコールジメルカプトアセテート、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、アリルメルカプタン、エチレングリコールジメルカプトプロピオネート、トリチオシアヌル酸(1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオール)、3-ジチオールフェニルエーテル、1,3-ジメチルチオメチルベンゼン、ペンタエリスリトールテトラキスメルカプトプロピオネート、1,4-ブタンジチオール、1,5-ペンタンジチオール、1,6-ペンタンジチオール、テトラメチレングリコール-ビス-メルカプトプロピオネート、1,6-ヘキシルジオール-ビス-メルカプトプロピオネート、ペンタエリスリトールビスメルカプトプロピオネート、ペンタエリスリトールトリスメルカプトプロピオネート、トリメチロールプロパンビスメルカプトプロピオネート、トリメチロールプロパントリスメルカプトプロピオネート、ジペンタエリスリトールトリスメルカプトプロピオネート、ソルビトールトリスメルカプトプロピオネート、ソルビトールテトラキスメルカプトプロピオネート、ソルビトールヘキサキスメルカプトプロピオネート、ジチオエチルテレフタレート、1,6-ヘキサンジオールジチオエチルエーテル、1,5-ペンタンジオールジチオエチルエーテル、およびペンタエリスリトール-テトラ-(β-チオエチルエーテル)、9,9-ビス(4-メルカプトフェニル)フルオレンからなる群より選択される1種以上が挙げられる。
【0031】
本発明の、チオール・エン反応する官能基としては、(メタ)アクリロイル基、末端アルケン(ビニル基、アリル基、ビニルオキシ基、アリルオキシ基等)、末端アルキンが挙げられる。官能基の数は2以上であることが好ましい。
【0032】
以上、より本発明に持ちられる重合物としては、以下に示す化合物が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0033】
【化5】
ただし、上記式中のXは下記式(4)で示される構造である。
【0034】
【0035】
【化7】
上記式(5)から(8)のXは、上記式(4)で示される構造である。
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
本発明で好ましく使用されるラジカル重合開始剤としては、例えば、365nm付近で最もラジカルを発生するラジカル重合開始剤を使用し、365nm付近とは重ならない250~300nm付近で最も酸を発生する酸発生剤を使用するという組み合わせで使用することができる。このような組み合わせ使用することで365nm付近の露光波長の露光でラジカル架橋を発生させることができ、その後得られた硬化膜を250-300nm付近で露光することで、発生する酸により分解反応を促進することが可能となる。
【0040】
ラジカル重合開始剤は、可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線等の放射線の露光により、重合性基を有する化合物の架橋反応を開始することができる。
例えばO-アシルオキシム化合物、α-アミノケトン化合物、α-ヒドロキシケトン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物等が挙げられる。
【0041】
O-アシルオキシム化合物としては、例えば1-〔9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル〕-エタン-1-オンオキシム-O-アセタート、1-[9-エチル-6-ベンゾイル-9.H.-カルバゾール-3-イル]-オクタン-1-オンオキシム-O-アセテート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル]-エタン-1-オンオキシム-O-ベンゾエート、1-[9-n-ブチル-6-(2-エチルベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル]-エタン-1-オンオキシム-O-ベンゾエート、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチル-4-テトラヒドロフラニルベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチル-4-テトラヒドロピラニルベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチル-5-テトラヒドロフラニルベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)、エタノン,1-[9-エチル-6-{2-メチル-4-(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラニル)メトキシベンゾイル}-9.H.-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチル-4-テトラヒドロフラニルメトキシベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]等が挙げられる。
【0042】
α-アミノケトン化合物としては、例えば2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルホリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)-2-ベンジル-1-ブタノン、1-[4-(2-ヒドロキシエチルスルファニル)フェニル]-2-メチル-2-(4-モルフォリノ)プロパン-1-オン等が挙げられる。
【0043】
メチルプロパン-1-オン、1-(4-i-プロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられる。
【0044】
アシルホスフィンオキサイド化合物としては、例えば2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0045】
(B)感放射線性ラジカル重合開始剤としては、放射線による硬化反応をより促進させる観点から、O-アシルオキシム化合物、α-アミノケトン化合物及びアシルホスフィンオキサイド化合物が好ましく、O-アシルオキシム化合物及びα-アミノケトン化合物がより好ましく、O-アシルオキシム化合物がさらに好ましい。
【0046】
このようなラジカル重合開始剤としては、例えばO-アシルオキシム化合物、アセトフェノン化合物、アシルフォスフィンオキサイド化合物、ビイミダゾール化合物が挙げられる。
本発明のラジカル重合開始剤の含有量は、重合性基を有する化合物100質量部に対して0.1~10質量部であり、この好ましくは1~5質量部である。この範囲で使用することで、すぐれた接着性を示すことが可能となる。
【0047】
≪熱酸発生剤≫
本発明の酸発生剤は、120℃から250℃の範囲で加熱することで、酸を発生する物質をいい酸解離性基を有する化合物をいう。この発生した酸により酸解離性部位が解離することができる。酸解離性部位としては、アセタール結合部位、エステル結合部位、ウレタン結合部位等をあげることができる。
本発明の構造部位(1)は、アセタール結合部位を有し、熱酸発生剤から発生した酸により解重合が進行し、構造を分解する。このような分解反応が有機層で進行することで有機層の接着力が低下する。熱酸発生剤として機能する物質は、光酸発生剤として機能する場合もあり、上述したラジカル重合開始剤と異なる波長を利用することで、光酸発生剤としても利用数rことができる。このような酸発生剤を2類以上含有することもできる。酸発生剤は、低分子でも高分子であってもよい。
【0048】
熱酸発生剤としては、公知の化合物を使用することができ、例えばオニウム塩化合物、N-スルホニルオキシイミド化合物、スルホンイミド化合物、ハロゲン含有化合物、ジアゾケトン化合物等が挙げられる。これらは、
【0049】
オニウム塩化合物としては、例えばスルホニウム塩、テトラヒドロチオフェニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ピリジニウム塩等が挙げられる。
酸発生剤の具体例としては、例えば特開2009-134088号公報の段落[0080]~[0113]、特開2017-67966号公報段落[0086]~[0140]〕に記載されている化合物等が挙げられる。
【0050】
熱酸発生剤から発生する酸としては、例えばスルホン酸、イミド酸、アミド酸、メチド酸、ホスフィン酸、カルボン酸等が挙げられる。これらの中で、スルホン酸、イミド酸、アミド酸及びメチド酸が好ましい。
【0051】
熱酸発生剤の使用量は、重合性基を有する化合物100質量部に対して100質量部に対して、1質量部が好ましく、5質量部がより好ましく、10質量部がさらに好ましい。
熱酸発生剤の含有量を上記範囲とすることで接着力の低下を発現することがきる。
【0052】
≪密着助剤≫
本発明の密着助剤は、基板等の膜形成対象物と硬化膜との接着性を向上させる成分である。密着助剤は、特に無機物の基板と硬化膜との接着性を向上させるために有用である。無機物としては、例えば、シリコン、酸化シリコン、窒化シリコン等のシリコン化合物、金、銅、アルミニウム等の金属などが挙げられ、官能性シランカップリング剤が好ましい。このような密着助剤の市販品としては、KAYAMER PM-21(日本化薬(株)製、2-メタクリロイロキシエチルカプロエートアシッドホスフェート)が挙げられる。
密着助剤の含有量としては、感放射線性組成物中の重合性基を有する化合物お100質量部に対して、通常30質量部以下であり、0.5~20質量部が好ましく、1~10質量部がより好ましい。
【0053】
≪界面活性剤≫
本発明の界面活性剤としては、例えばフッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等が挙げられる。これらの界面活性剤は、単独で使用しても2種以上を併用してもよい。界面活性剤としては、特開2011-18024号報に記載の界面活性剤を用いることができる。
界面活性剤の含有量としては、感放射線性組成物中のS化合物およびE化合物の合計100質量部に対して、通常3質量部以下であり、0.01~2質量部が好ましく、0.05~1質量部がより好ましい。
【0054】
本発明の感放射線性組成物は、無溶媒である。ただし、感放射線性組成物中の3質量%以下で溶媒しよすうることができる。溶媒は、酸発生体、酸拡散制御剤を溶解するものが好ましい。 具体的な溶媒としては、例えばアルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、エステル系溶媒、炭化水素系溶媒等が挙げられる。
【0055】
チップ部品の移設方法について、
上述した移設用基板4を用いて、仮基板1上のチップ部品2の移設を行う。
図2に示すように、移設用基板4と仮基板1とを近接させることで、移設用基板4の有機層3を仮基板1上のチップ部品2の上面に接着させる。
その後、
図3に示すように、移設用基板4と仮基板1とを離間させることにより、チップ部品2を仮基板側から剥離させる。ここで、有機層3の接着力は、仮基板側接着剤の接着力に比べて大幅に強いため、チップ部品2は仮基板側から容易に剥離される。
このようにして、チップ部品2が仮基板1側から移設用基板4側へ移設される。なお、移設用基板4と仮基板1との近接および離間は、移設用基板4に対して仮基板1を移動させるか、仮基板1に対して移設用基板4を移動させる形態のいずれかでもよい。
【0056】
次に、
図4に示すように、第3基板(駆動回路基板もしくはTFT基板5ともいう。)としてのTFT(Thin Film Transistor)基板5を用意する。TFT基板5には、図示しない駆動回路が形成されている。TFT基板5は、電極6が設けられている。
チップ部品2は、TFT基板5上の電極6を覆うように形成されている導電層と接触する。この導電層には異方導電性フィルムを使用することができる。
【0057】
次に、
図5に示すように、移設用基板5とTFT基板6とを近接させて、チップ部品2を、導電層3に接着させる。そして、移設用基板5とTFT基板6に対して、適宜の圧力条件および温度条件にてチップ部品2を接着することができる。
【0058】
異方性導電フィルムを使用した場合、異方導電性フィルム中の導電性粒子が押圧されて結合して導電領域を形成する。したがって、駆動回路側とチップ部品2が導通することができる。
この接着は、加熱しながら圧着することができる。加熱温度は、100℃から250℃の範囲であることが好ましい。この範囲で加熱することで、有機層3に含まれる熱酸発生剤から酸が解離し、酸解離性部位を解重合することで、有機層3を形成する化合物の熱分解が進行し、有機層3の接着性が低下する。
この有機層3の接着性の低下によって、チップ部品2とTFT基板6を容易に離間することが可能となり、移設用基板4かたTFT基板6へチップ部品2を移設することがきる。
【0059】
本実施の形態に係る表示装置の製造方法によれば、チップ部品2を確実にTFT基板6の所望の位置に移設してマイクロLEDディスプレイの画素配置の精度を高めることができる。また、本実施の形態に係る表示装置の製造方法よれば、チップ部品2を首尾よく移設できるため、製造歩留まりを高くすることができる。
【0060】
以上、本実施の形態に係る表示装置の製造方法に、本発明に係るチップ部品の移設方法を適用して説明した。本実施の形態に係るチップ部品の移設方法は、以下の通りである。
【0061】
(チップ部品の移設方法)
本実施の形態に係るチップ部品の移設方法は、画素を構成するチップ部品が配置された第1基板と、重合性基を有する化合物とラジカル重合開始剤を含む感放射線性組成物により形成された有機層を有する第2基板を備え、
前記第1基板上のチップ部品と、前記第2基板上の有機層とを接触させ、露光により接着する工程と 前記チップ部品を前記第1基板から離間させて前記第2基板へ移す工程と、
1つ以上の電極が設置され、前記電極を覆うように導電層が形成された第3基板を備え、
前記第2基板上のチップ部品と、前記第3基板の導電層とを接触させ、加熱する工程と、
前記第2基板と前記第3基板とを離間させて、前記チップ部品を第3基板へ移設する工程と、 を備えるチップ部品の移設方法である。
【0062】
本実施の形態にチップ部品の移設方法では、チップ部品として、表示装置の画素を構成する発光素子に限定されるものではなく、各種の半導体チップの基板実装にも適用可能である。
【0063】
[その他の実施の形態]
以上、実施の形態について説明したが、これらの実施の形態の開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0064】
例えば、上述の実施の形態に係る表示装置の製造方法では、仮基板1におけるチップ部品2の配置領域が、マイクロLEDディスプレイの表示領域と同等の縦横寸法に設定した。このため、全画素を構成する多数のチップ部品2を一括して移設できる。しかし、本発明に係る表示装置の製造方法では、TFT基板6の表示領域に対して、複数の移設用基板5でチップ部品3の移設を行う構成としてもよい。すなわち、複数の移設用基板5を用いて、TFT基板6の表示領域をチップ部品3で網羅できれば、1つの移設用基板5でなくてもよい。
【0065】
上記の実施の形態に係る表示装置の製造方法においては、TFT基板6に異方性導電フィルムを設けることができるが、異方性導電フィルムの上にパッシベーション機能を有する保護樹脂層を積層してもよい。保護樹脂層を積層した場合、第2基板の移設用基板と第3基板のTFT基板とを重ねて熱圧着したときに、チップ部品の下面を保護樹脂層が覆うためチップ部品の配線部分やチップ部品の配線部分の劣化を抑制する効果がある。
【0066】
感放射線性組成物は、重合性基を有する化合物を有する。以下に化合物の合成例を示す。
【実施例】
【0067】
<重合性基を有する化合物の合成>
冷却管および撹拌機を備えたフラスコに、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジイル ジアクリレート(大阪有機(株)製)41.08質量部、ジイソプロピルアミン11.18質量部、およびテトラヒドロフラン150質量部を仕込んだ。この溶液中に、1,3,4,6-テトラキス(2-メルカプトエチル)テトラヒドロイミダゾ[4,5-d]イミダゾール-2,5(1H,3H)-ジオン(四国化成(株) TS-G)7.74質量部をテトラヒドロフラン90質量部に溶解させた溶液を室温で滴下し、滴下終了後、30度に加温し、この温度を7時間保持して撹拌した。
【0068】
反応溶液を減圧濃縮して溶剤を留去して得られた粘調液体をシリカゲル上に載せたのち、大量のヘキサン/酢酸エチル=3質量部/1質量部を流して未反応の2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジイル ジアクリレートを取り出した。その後、酢酸エチルをシリカゲル上に流し、溶出してきた酢酸エチル溶液を取り出した。酢酸エチルを減圧濃縮して留去し、減圧乾燥させることにより、下記式(9)で示される目的化合物を36質量部得た。
2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジイル ジアクリレート
【0069】
【化11】
ただし、上記式(9)中のRは、下記式(10)で示される構造である。
【0070】
【0071】
<感放射線性組成物の調製例>
上記式で示される目的化合物を100質量部、酸発生剤として、N-トリフルオロメチルー1,8-ナフタルイミド(ADEKA社製)を10質量部、光開始剤としてBASF社、IrgOXE-03)を2質量部、KAYAMER PM-21(日本化薬(株)製、2-メタクリロイロキシエチルカプロエートアシッドホスフェート)を3質量部加えて加熱することにより、感放射線性組成物を調製した。
【0072】
<感放射線性接着剤の光硬化接着性評価>
長さ76ミリメートル、幅26ミリメートル、厚さ1.0ミリメートルのスライドガラス(Muto Pure Chemicals社)をアルカリ洗剤、水、2-プロパノールの順に洗浄し、乾燥させた。洗浄した基板を、使用直前にUV/オゾン表面処理装置(Sen Engineering社製)で処理した。接着剤組成物(1)を挟んだ積層ガラス板に4.9ニュートンの荷重を15分間加えることにより、十字型の試験片を作成した。この試験片を、メタルハライドランプを備えたUVコンベアー(Eye Graphics社製)に通して光照射した。島津社製万能試験機EZ-LXを用いて、光照射し硬化した後の試験片の接着強度を測定した。
【0073】
<光硬化後と加熱処理後の試験片の接着性を比較>
上記の光硬化接着性評価と同じ方法で試験片を作製した。
作成した基板について、光硬化後の試験片と、光硬化後さらに120℃のホットプレート上で3分間加熱処理した試験片の接着強度を測定した。結果を
図8に示す。
光硬化後の試験片の接着強度に対して、光硬化後さらに120℃のホットプレート上で3分間加熱処理した試験片の接着強度は、40%以上低下した。加熱処理により有機層を形成する重合体の一部が熱酸発生剤から発生する酸によって、分解し、架橋構造が大きく変化したために、接着性が大きく低下したと考えられる。
【0074】
光硬化後さらに120℃のホットプレート上で3分間加熱処理した試験片を濃度2.38%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(以下、TMAH水溶液ともいう。)中に浸漬したのち、超純水で洗浄、乾燥ののち、紫外分光光度計を用いて試験片の透過率を測定した。
波長400ナノメールの未使用試験片の透過率90.0%に対して、TMAH水溶液処理後の試験片の透過率は89.3%であった。有機層の分解後の化合物は、TMAH水溶液処理を行うことで、簡単に除去できることが分かった。
【0075】
以上により、本発明に係る表示装置の製造方法によれば、チップ部品等の微小な部品を簡単な露光により接着でき、加熱処理によって簡便に脱着することが可能となることが分かった。
【符号の説明】
【0076】
1 第1基板(仮基板)
2 チップ部品
3 有機層
4 第2基板(移設用基板)
5 第3基板(駆動回路基板)
6 電極
7 導電層
8 接着力が低下した有機層