(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】プリプレグの製造方法および製造装置
(51)【国際特許分類】
B29B 15/12 20060101AFI20230314BHJP
B29B 11/16 20060101ALI20230314BHJP
B05C 3/12 20060101ALI20230314BHJP
B05D 1/26 20060101ALI20230314BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20230314BHJP
B29K 101/10 20060101ALN20230314BHJP
【FI】
B29B15/12
B29B11/16
B05C3/12
B05D1/26 Z
B05D7/00 B
B29K101:10
(21)【出願番号】P 2019546261
(86)(22)【出願日】2019-08-20
(86)【国際出願番号】 JP2019032495
(87)【国際公開番号】W WO2020040153
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2022-07-04
(31)【優先権主張番号】P 2018155068
(32)【優先日】2018-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018155076
(32)【優先日】2018-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西野 聡
(72)【発明者】
【氏名】河野 祥和
(72)【発明者】
【氏名】越智 隆志
(72)【発明者】
【氏名】青木 惇一
(72)【発明者】
【氏名】北村 義之
(72)【発明者】
【氏名】箕浦 潔
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-178412(JP,A)
【文献】特開平01-178411(JP,A)
【文献】特表2018-507801(JP,A)
【文献】特開昭49-030453(JP,A)
【文献】国際公開第2013/038521(WO,A1)
【文献】特開2000-000896(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101913253(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 11/16;15/08-15/14
C08J 5/04-5/10;5/24
B29C 70/00-70/88
B32B 1/00-43/00
B05D 1/00- 7/26
B05C 1/00- 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化繊維シートに塗液を付与するプリプレグの製造装置であって、塗液が貯留され、かつ鉛直方向下向きに断面積が連続的に減少する部分を有する液溜り部と、前記液溜り部の下端に連通するスリット状出口を有する狭窄部と、を備える塗布部と、強化繊維シートを鉛直方向下向きに走行させ、塗布部に投入する走行機構と、前記強化繊維シートを塗布部から下向きに引き取る引き取り機構
と、前記塗布部の下流側でプリプレグの厚みまたは質量を測定する測定装置とを有し、前記狭窄部は強化繊維シートの厚み方向に対向した壁面部材によって構成されると共に、該壁面部材には
、前記測定装置からの厚みまたは質量の測定値に基づいて、前記強化繊維シートの厚み方向に向かって外力を付与する外力付与機構を更に有するプリプレグの製造装置。
【請求項2】
強化繊維シートに塗液を付与するプリプレグの製造装置であって、塗液が貯留され、かつ鉛直方向下向きに断面積が連続的に減少する部分を有する液溜り部と、前記液溜り部の下端に連通するスリット状出口を有する狭窄部と、を備える塗布部と、強化繊維シートを鉛直方向下向きに走行させ、塗布部に投入する走行機構と、前記強化繊維シートを塗布部から下向きに引き取る引き取り機構を有し、前記狭窄部は強化繊維シートの厚み方向に対向した壁面部材によって構成されると共に、該壁面部材には、壁面部材の変形量を測定する測定装置および該測定装置からの壁面部材の変形量の測定値に基づいて、前記強化繊維シートの厚み方向に向かって外力を付与する外力付与機構を更に有するプリプレグの製造装置。
【請求項3】
前記外力付与機構が、熱作動機構(thermal actuator)である請求項1
または2に記載のプリプレグの製造装置。
【請求項4】
強化繊維を配列し強化繊維シートを形成する機構と、強化繊維シートを加熱する機構と、請求項1
から3のいずれかに記載の強化繊維シートに塗液を付与する装置と、離型シートの供給装置と、ニップロールおよびS字ロールの何れか若しくは両方と、ワインダーとを備えたシート状一体物の製造装置。
【請求項5】
塗液が貯留され、かつ鉛直方向下向きに断面積が連続的に減少する部分を有する液溜り部と、前記液溜り部の下端に連通するスリット状出口を有する狭窄部と、を備える塗布部に、強化繊維シートを鉛直方向下向きに通過させて塗液を付与するプリプレグの製造方法であって、塗液の付与が、前記塗布部よりも下流側におけるプリプレグの質量または厚みに基づき、前記強化繊維シートの厚み方向に対向して狭窄部を形成する壁面部材に対する前記強化繊維シートの厚み方向に付与する外力の大きさを制御して行われる、プリプレグの製造方法。
【請求項6】
塗液が貯留され、かつ鉛直方向下向きに断面積が連続的に減少する部分を有する液溜り部と、前記液溜り部の下端に連通するスリット状出口を有する狭窄部と、を備える塗布部に、強化繊維シートを鉛直方向下向きに通過させて塗液を付与するプリプレグの製造方法であって、前記壁面部材の変形量に基づいて、前記強化繊維シートの厚み方向に対向して狭窄部を形成する壁面部材に対して、前記強化繊維シートの厚み方向に付与する外力の大きさを制御する、プリプレグの製造方法。
【請求項7】
前記壁面部材に対する強化繊維シートの厚み方向に対応する方向に付与する外力を熱作動機構(thermal actuator)によって制御する、請求項
5または6に記載のプリプレグの製造方法。
【請求項8】
前記壁面部材に対する外力の付与が、強化繊維シートの幅方向に対応する方向でみたとき、複数の位置で行われている、請求項
5から7のいずれかに記載のプリプレグの製造方法。
【請求項9】
前記の複数の位置において、隣接する位置間の間隔が150mm以下である、請求項
8に記載のプリプレグの製造方法。
【請求項10】
前記壁面部材に対する外力の付与が、対向する壁面部材のそれぞれで行われる、請求項
5から9のいずれかに記載のプリプレグの製造方法。
【請求項11】
前記壁面部材に対する外力の大きさを、外力を付与する位置ごとに独立して制御する、請求項
8から10のいずれかに記載のプリプレグの製造方法。
【請求項12】
塗液が熱硬化性樹脂を含む請求項
5から11のいずれかに記載のプリプレグの製造方法。
【請求項13】
塗液がポリマー粒子を含み、かつ、塗布部内における該塗液の温度を、前記ポリマー粒子を構成する樹脂のガラス転移温度(Tg)または融点(Tm)よりも20℃以上低い状態として塗液を強化繊維シートに付与する請求項
5から12のいずれかに記載のプリプレグの製造方法。
【請求項14】
強化繊維シートを加熱した後、液溜り部に導く請求項
5から13のいずれかに記載のプリプレグの製造方法。
【請求項15】
強化繊維シートを平滑化処理した後、液溜り部に導く請求項
5から14のいずれかに記載のプリプレグの製造方法。
【請求項16】
強化繊維シートを拡幅処理した後、液溜り部に導く請求項
5から15のいずれかに記載のプリプレグの製造方法。
【請求項17】
請求項
5から16のいずれかに記載のプリプレグの製造方法により得られたプリプレグの少なくとも片面に離型シートを付与してシート状一体物とした後、シート状一体物を引き取るシート状一体物の製造方法。
【請求項18】
シート状一体物を形成した後に追含浸を行う請求項
17に記載のシート状一体物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリプレグの製造方法および製造装置に関し、特に、強化繊維シートに塗液を均一に付与、含浸する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を含むマトリックス樹脂を強化繊維で補強した強化繊維複合材料(FRP)は、航空・宇宙用材料、自動車材料、産業用材料、圧力容器、建築材料、筐体、医療用途、スポーツ用途など様々な分野で用いられている。特に高い力学特性と軽量性が必要な場合には、炭素繊維強化複合材料(CFRP)が幅広く好適に用いられている。一方、力学特性や軽量性よりもコストが優先される場合にはガラス繊維強化複合材料(GFRP)が用いられる場合がある。FRPは強化繊維束にマトリックス樹脂を含浸し中間基材を得、これを積層、成形し、さらに熱硬化樹脂を用いた場合には熱硬化させて、FRPからなる部材を製造している。前記用途では平面状物やそれを折り曲げた形態のものが多く、FRPの中間基材としても1次元のストランドやロービング状物よりも、2次元のシート状物の方が部材を作製する際の積層効率や成形性の観点から幅広く使用されている。
【0003】
また、最近、FRPからなる部材の生産効率を向上させるため、シート状中間基材の積層の機械化・自動化が推進されており、ここでは細幅テープ状中間基材が好適に使用されている。細幅テープ状中間基材は広幅シート状中間基材を所望の幅でスライスしたり、細幅の強化繊維シートに直接マトリックス樹脂を含浸させて得ることができる。
【0004】
2次元のシート状中間基材としては、強化繊維シートにマトリックス樹脂を含浸させたプリプレグが幅広く使用されている。プリプレグに用いる強化繊維シートとしては、複数本の強化繊維を一方向に面上で配列させた一方向材(UD基材)や、強化繊維を多軸で配列させる、またはランダム配置してシート化した強化繊維ファブリックが挙げられる。特に力学特性が優先される場合には前記の一方向材(UD基材)が使用される場合が多い。
【0005】
プリプレグの製造方法の一つであるホットメルト法は、マトリックス樹脂を溶融した後、離型紙上にコーティングし、これを強化繊維シートの上面、下面でサンドイッチした積層構造を作製後、熱と圧力でマトリックス樹脂を強化繊維シート内部に含浸するものである。本方法は工程数が多く、また生産速度も上げられず、高コストとなる問題があった。
【0006】
含浸の効率化としては、例えば特許文献1のような提案があった。これはガラス繊維を溶融紡糸し、それを集束してストランドやロービング状としたものを熱可塑性樹脂を満たした円錐状の流路を有する液溜り部に通過させる方法であった。
【0007】
熱可塑性樹脂を用いた帯状プリプレグの製造方法として、帯状強化繊維束を水平方向(横方向)に搬送し、ダイに通過させ、帯状強化繊維束に熱可塑性樹脂を付与・含浸する横型引き抜き方式(特許文献2、特許文献3など)が知られている。特許文献2には、テープ状強化繊維をクロスヘッド(特許文献2の
図2)に通し、クロスヘッド内の直線状のダイ部直前で樹脂がテープ状強化繊維束に付与される。特許文献3には、複数の帯状強化繊維束を別々に溶融熱可塑樹脂が満たされたダイ内へ導入し、固定ガイド(例えばスクイーズバー)により、開繊、含浸、積層し、最終的に1枚のシート状プリプレグとしてダイから引き抜くことが記載されている。
【0008】
特許文献4には、マニホールドに熱可塑性樹脂を満たし、強化繊維束を縦に引き抜くプルトルージョン方法において出口に超音波振動を与える装置が記載されている。また特許文献4の第2図にはダイリップを調整ボルトにより可動とすることで、出口(ダイスリット)の幅を調整することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開WO2001/028951パンフレット
【文献】特開平6-31821号公報
【文献】国際公開WO2012/002417パンフレット
【文献】特開平1-178412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1の方法ではストランドやロービング状物しか製造できず、本発明の対象とするシート状プリプレグの製造には適用できない。また、特許文献1では含浸効率を向上させるため、ストランドやロービング状強化繊維束側面に熱可塑性樹脂の流体を当て円錐状流路内で乱流を積極的に発生させている。これは強化繊維束の配列を一部乱してマトリックス樹脂を流入させることを意図していると考えられるが、この思想を強化繊維シートに適用すると、強化繊維束の配列が乱れ、プリプレグの品位が低下するばかりか、FRPの力学特性が低下してしまうと考えられる。
【0011】
特許文献2の技術では、クロスヘッド内のダイ部の前部は樹脂が無い状態でテープ状強化繊維がスリット状のガイダーチップを通過するため、毛羽が詰まり易く、また毛羽を除去する機能も無いため、長時間連続走行させることは困難と考えられる。特に毛羽が発生し易い炭素繊維ではこの傾向が顕著になると考えられる。
【0012】
また、特許文献3の方法では連続生産時に液溜り部に毛羽が滞留し易く、引き抜き部で毛羽が詰まり易い。特に、帯状強化繊維束を高速で連続走行させると、毛羽が詰まる頻度が非常に高まるため、非常に遅い速度でしか生産ができず、生産性が上がらない問題点があった。また、横型引き抜き方式の場合、ダイ部は液漏れ防止のため密閉する必要があり、連続生産中に毛羽を回収することも十分ではない。さらに、横型引き抜き方式においては、強化繊維シートの内部に塗液が含浸する際、帯状強化繊維束の内部に残留していた気泡は、浮力により強化繊維束の配向方向と直交する方向(帯状強化繊維束の厚み方向)に排出されるため、含浸してくる塗液を押しのけるようにして気泡の排出が進む。そのため、気泡の移動が液によって阻害される上に、塗液の含浸も気泡によって阻害されるため、含浸効率が悪いという問題点があった。なお、特許文献3では気泡をベントから排気することも提案されているが、ダイ出口付近のみであり、その効果は限定的と考えられる。
【0013】
また、特許文献4記載の方法では、マニホールド上部に樹脂で満たされていないノズル部が設けられており、ノズルはストランドやロービング状物で最適化することができるが、強化繊維シートのような平面形状には対応が難しく、強化繊維シートがここを通過する際、毛羽が発生し、それがマニホールドに持ち込まれるとダイで詰まり易いと考えられる。
【0014】
また、ダイによってシート状基材に塗布する特許文献2~4のいずれにおいても、ダイ先端部で塗液が押し出される時の液圧によって、ダイが変形し、塗布ムラが発生することに対して考慮されていない。
【0015】
このように、強化繊維シートへの効率的な塗液付与方法、特に塗液が内部まで均一に含浸したシート状プリプレグの効率的な製造方法は未だ確立されていなかった。
【0016】
本発明の課題は、プリプレグの製造方法に関して、毛羽発生を抑制し、かつ毛羽が詰まることなく連続生産が可能であり、さらに強化繊維シートに塗液を均一に付与かつ効率よく含浸させ、生産速度の高速化が可能な、プリプレグの製造方法および製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記の課題を解決する本発明のプリプレグの製造装置は、強化繊維シートに塗液を付与するプリプレグの製造装置であって、塗液が貯留され、かつ鉛直方向下向きに断面積が連続的に減少する部分を有する液溜り部と、前記液溜り部の下端に連通するスリット状出口を有する狭窄部と、を備える塗布部と、強化繊維シートを鉛直方向下向きに走行させ、塗布部に投入する走行機構と、前記強化繊維シートを塗布部から下向きに引き取る引き取り機構と、前記塗布部の下流側でプリプレグの厚みまたは質量を測定する測定装置とを有し、前記狭窄部は強化繊維シートの厚み方向に対向した壁面部材によって構成されると共に、該壁面部材には、前記測定装置からの厚みまたは質量の測定値に基づいて、前記強化繊維シートの厚み方向に向かって外力を付与する外力付与機構を更に有することを特徴とし、また、強化繊維シートに塗液を付与するプリプレグの製造装置であって、塗液が貯留され、かつ鉛直方向下向きに断面積が連続的に減少する部分を有する液溜り部と、前記液溜り部の下端に連通するスリット状出口を有する狭窄部と、を備える塗布部と、強化繊維シートを鉛直方向下向きに走行させ、塗布部に投入する走行機構と、前記強化繊維シートを塗布部から下向きに引き取る引き取り機構を有し、前記狭窄部は強化繊維シートの厚み方向に対向した壁面部材によって構成されると共に、該壁面部材には、壁面部材の変形量を測定する測定装置および該測定装置からの壁面部材の変形量の測定値に基づいて、前記強化繊維シートの厚み方向に向かって外力を付与する外力付与機構を更に有することを特徴とする。
【0018】
また本発明のプリプレグの製造方法は、強化繊維シートに塗液を付与するプリプレグの製造方法であって、塗液が貯留され、かつ鉛直方向下向きに断面積が連続的に減少する部分を有する液溜り部と、前記液溜り部の下端に連通するスリット状出口を有する狭窄部と、を備える塗布部に、強化繊維シートを鉛直方向下向きに通過させて塗液を付与するプリプレグの製造方法であって、前記塗布部よりも下流側におけるプリプレグの質量または厚みに基づいて、前記強化繊維シートの厚み方向に対向して狭窄部を形成する壁面部材に対して、前記強化繊維シートの厚み方向に付与する外力の大きさを制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明のプリプレグの製造方法および製造装置によれば、毛羽による詰まりを大幅に抑制、防止できる。さらに、強化繊維シートを連続かつ高速で走行させることが可能となり、塗液を付与した強化繊維シートの生産性が向上する。さらに、強化繊維シートの幅方向および走行方向に塗液を均一に付与し、かつ内部にまで均一に塗液が含浸した強化繊維シートを得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係るプリプレグの製造方法および製造装置の概略図である。
【
図2】
図1とは別の本発明の実施形態のプリプレグの製造方法に係る概略図である。
【
図3】
図1における塗布部20の部分を拡大した詳細横断面図である。
【
図4】
図1における塗布部20を、
図3のAの方向から見た下面図である。
【
図5】
図1における塗布部20を、
図3のBの方向から見た場合の塗布部内部の構造を説明する断面図である。
【
図6】
図5における隙間26でのマトリックス樹脂4の流れを説明するために模式的に表した断面図である。
【
図7】幅規制機構が用いられた塗布部の例(塗布部20a)を示す図である。
【
図8】
図3とは別の本発明の実施形態の塗布部20bの詳細横断面図である。
【
図9】
図8とは別の本発明の実施形態の塗布部20cの詳細横断面図である。
【
図10】
図8とは別の本発明の実施形態の塗布部20dの詳細横断面図である。
【
図11】
図8とは別の本発明の実施形態の塗布部20eの詳細横断面図である。
【
図12】本発明とは異なる実施形態の塗布部30の詳細横断面図である。
【
図13】本発明とは異なる外力付与機構が適用されていない塗布部の下面図である。
【
図14】本発明の実施形態一例である外力付与機構が適用された塗布部20aの下面図である。
【
図15】
図14とは別の外力付与機構が適用された本発明の実施形態の塗布部の横断面図である。
【
図16】
図15とは別の外力付与機構が適用された本発明の実施形態の塗布部の横断面図である。
【
図17】
図14とは別の外力付与機構が適用された本発明の実施形態の塗布部の下面図である。
【
図18】本発明に係る実施例1で用いた外力付与機構が適用された塗布部の下面図である。
【
図19】調整ボルト方式の外力付与機構の詳細横断面図である。
【
図20】ヒートボルト方式の外力付与機構50’の詳細横断面図である。
【
図21】
図1とは別の実施形態のプリプレグの製造方法に係る概略図である。
【
図22】
図1とは別の実施形態のプリプレグの製造方法に係る概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の望ましい実施形態について、以下で説明する。なお、以下の説明は発明の実施形態を例示するものであり、本発明はこれに限定して解釈されるものではなく、本発明の目的・効果を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0022】
図1に本発明の一実施形態に係るプリプレグの製造方法および製造装置の概略図を示す。
図1では強化繊維シートを複数本の強化繊維を一方向に面上で配列させた一方向材(UD基材)とした場合を示してある。クリール11から巻き出された複数本の強化繊維1を、配列装置12によって一方向(紙面奥行き方向)に配列して強化繊維シート2を得た後、搬送ロール13を介して強化繊維シート2を塗布部20に実質的に鉛直方向下向きZに通過させる。塗布部20内には塗液(塗液にはマトリックス樹脂4が含まれている)が貯留されており、ここを通過することで、強化繊維シート2の両面にマトリックス樹脂4が塗布され、プリプレグ3を得ることができる。得られたプリプレグ3は引き取りロール15および巻き取り装置17でロール状に巻き上げる。
【0023】
このとき、離型シート供給装置16aから離型シート5aを巻き出し、プリプレグ3の片面に離型シート5aを積層し、引き取りロール15を介し、巻取り装置17でロール状に巻き上げてもよい。特に、プリプレグ3に付与されたマトリックス樹脂4が引き取りロール15に至っても、マトリックス樹脂4の一部または全部がプリプレグ3表面に存在し、かつ流動性や粘着性が高い場合には、離型シート5aにより、プリプレグ3表面のマトリックス樹脂4の一部が引き取りロール15に転写されるのを防ぐことができる。さらに、プリプレグ3同士の接着も防ぐことができ、後工程での取り扱いが容易になる。また離型シートは必要に応じてプリプレグ3の両面に積層してもよい。離型シートとしては、前記効果を奏するものであれば特に制限は無いが、例えば、離型紙の他、有機ポリマーフィルム表面に離型剤を塗布したもの等を挙げることができる。
【0024】
ここで、強化繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、金属繊維、金属酸化物繊維、金属窒化物繊維、有機繊維(アラミド繊維、ポリベンゾオキサゾール繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエチレン繊維など)などを例示することができるが、炭素繊維を用いることが、FRPの力学特性、軽量性の観点から好ましい。
【0025】
また、強化繊維シートとしては、複数本の強化繊維を一方向に面上で配列させた一方向材(UD基材)や、強化繊維を多軸で配列させる、またはランダム配置してシート化した強化繊維ファブリックが挙げられる。具体的には、織物や編物などの他、強化繊維を2次元で多軸配置したものや、不織布やマット、紙など強化繊維をランダム配向させたものを挙げることができる。この場合、強化繊維はバインダー付与、交絡、溶着、融着などの方法を利用してシート化することもできる。織物としては、平織、ツイル、サテンの基本織組織の他、ノンクリンプ織物やバイアス構造、絡み織、多軸織物、多重織物などを用いることができる。バイアス構造とUD構造を組み合わせた織物は、UD構造、すなわち強化繊維が一方向に面上で配列した構造、により塗布・含浸工程での引っ張りでの織物の変形を抑制するだけでなく、バイアス構造による擬似等方性も併せ持っており、好ましい形態である。また、多重織物では織物上面/下面、また織物内部の構造・特性をそれぞれ設計できる利点がある。編物では塗布・含浸工程での形状安定性を考慮すると経編が好ましいが、筒状編み物であるブレードを用いることもできる。
【0026】
これらの中で、FRPの力学特性を優先させる場合には、UD基材を用いることが好ましく、UD基材は、強化繊維を一方向にシート状に配列させる既知の方法により作製することができる。
【0027】
なお、強化繊維シートを強化繊維ファブリックとした場合も
図1で強化繊維シート2を形成した後は同じプロセスを採用することができる。強化繊維ファブリックを用いる場合は、クリール部分を強化繊維ファブリック巻き出し装置とすればよい。
【0028】
本発明のプリプレグに用いるマトリックス樹脂としては、用途に応じ適宜選択可能であるが、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を含有することが一般的である。また、マトリックス樹脂は、加熱し溶融させた溶融樹脂でも室温で液状のものでも良い。また、溶媒を用いて溶液やワニス化したものでも良い。
【0029】
マトリックス樹脂としては、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂などFRPに一般的に使用されるものを用いることができる。また、これらは室温で液体であればそのまま用いても良いし、室温で固体や粘稠液体であれば、加温して低粘度化する、あるいは溶融し融液として用いても良いし、溶媒に溶解し溶液やワニス化して用いても良い。
【0030】
熱可塑性樹脂としては、主鎖に、炭素・炭素結合、アミド結合、イミド結合、エステル結合、エーテル結合、カーボネート結合、ウレタン結合、尿素結合、チオエーテル結合、スルホン結合、イミダゾール結合、カルボニル結合から選ばれる結合を有するポリマーを用いることができる。具体的には、ポリアクリレート、ポリオレフィン、ポリアミド(PA)、アラミド、ポリエステル、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリアミドイミド(PAI)などを例示できる。航空機用途などの耐熱性が要求される分野では、PPS、PES、PI、PEI、PSU、PEEK、PEKK、PEAKなどが好適である。一方、産業用途や自動車用途などでは、成形効率を上げるため、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィンやPA、ポリエステル、PPSなどが好適である。これらはポリマーでも良いし、低粘度、低温塗布のため、オリゴマーやモノマーを用いても良い。もちろん、これらは目的に応じ、共重合されていても良いし、各種を混合しポリマーブレンド・アロイとして用いることもできる。
【0031】
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、ポリイミド樹脂、アセチレン末端を有する樹脂、ビニル末端を有する樹脂、アリル末端を有する樹脂、ナジック酸末端を有する樹脂、シアン酸エステル末端を有する樹脂があげられる。これらは、一般に硬化剤や硬化触媒と組合せて用いることができる。また、適宜、これらの熱硬化性樹脂を混合して用いることも可能である。
【0032】
本発明に適した熱硬化性樹脂として、耐熱性、耐薬品性、力学特性に優れていることからエポキシ樹脂が好適に用いられる。特に、アミン類、フェノール類、炭素・炭素二重結合を有する化合物を前駆体とするエポキシ樹脂が好ましい。具体的には、アミン類を前駆体とするエポキシ樹脂として、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジル-p-アミノフェノール、トリグリシジル-m-アミノフェノール、トリグリシジルアミノクレゾールの各種異性体、フェノール類を前駆体とするエポキシ樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、炭素・炭素二重結合を有する化合物を前駆体とするエポキシ樹脂としては脂環式エポキシ樹脂等があげられるが、これに限定されない。またこれらのエポキシ樹脂をブロモ化したブロモ化エポキシ樹脂も用いられる。テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンに代表される芳香族アミンを前駆体とするエポキシ樹脂は耐熱性が良好で強化繊維との接着性が良好なため本発明に最も適している。
【0033】
熱硬化性樹脂は硬化剤と組合せて、好ましく用いられる。例えばエポキシ樹脂の場合には、硬化剤はエポキシ基と反応しうる活性基を有する化合物であればこれを用いることができる。好ましくは、アミノ基、酸無水物基、アジド基を有する化合物が適している。具体的には、ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルスルホンの各種異性体、アミノ安息香酸エステル類が適している。具体的に説明すると、ジシアンジアミドはプリプレグの保存性に優れるため好んで用いられる。またジアミノジフェニルスルホンの各種異性体は、耐熱性の良好な硬化物を与えるため本発明には最も適している。アミノ安息香酸エステル類としては、トリメチレングリコールジ-p-アミノベンゾエートやネオペンチルグリコールジ-p-アミノベンゾエートが好んで用いられ、ジアミノジフェニルスルホンに比較して、耐熱性に劣るものの、引張強度に優れるため、用途に応じて選択して用いられる。また、もちろん必要に応じ硬化触媒を用いることも可能である。また、塗液のポットライフを向上させる意味から、硬化剤や硬化触媒と錯体形成可能な錯化剤を併用することも可能である。
【0034】
また本発明では、熱硬化性樹脂に熱可塑性樹脂を混合して用いることも好適である。熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の混合物は、熱硬化性樹脂を単独で用いた場合より良好な結果を与える。これは、熱硬化性樹脂が、一般に脆い欠点を有しながらオートクレーブによる低圧成型が可能であるのに対して、熱可塑性樹脂が、一般に強靭である利点を有しながらオートクレーブによる低圧成型が困難であるという二律背反した特性を示すため、これらを混合して用いることで物性と成形性のバランスをとることができるためである。混合して用いる場合は、プリプレグを硬化させてなるFRPの力学特性の観点から熱硬化性樹脂を50質量%より多く含むことが好ましい。
【0035】
また、本発明のプリプレグには前記した層間強化粒子などのポリマー粒子を含有させることができるが、ポリマー粒子はマトリックス樹脂に含有させることが一般的である。この時、ポリマー粒子のガラス転移温度(Tg)または融点(Tm)は塗液温度よりも20℃以上高くすると、マトリックス樹脂中でポリマー粒子の形態を保持し易く、好ましい。ポリマー粒子のTgは温度変調DSCを用い、以下の条件で測定することができる。温度変調DSC装置としては、TA Instrments社製 Q1000などが好適であり、窒素雰囲気下、高純度インジウムで校正して用いることができる。測定条件は、昇温速度は2℃/分、温度変調条件は周期60秒、振幅1℃とすることができる。これで得られた全熱流から可逆成分を分離し、階段状シグナルの中点の温度をTgとすることができる。
【0036】
また、Tmは通常のDSCで昇温速度10℃/分で測定し、融解に相当するピーク状シグナルのピークトップ温度をTmとすることができる。
【0037】
また、ポリマー粒子としては、マトリックス樹脂に溶けないことが好ましく、このようなポリマー粒子としては、例えば、WO2009/142231パンフレット記載などを参照し、適切なものを用いることができる。より、具体的には、ポリアミドやポリイミドを好ましく用いることができ、優れた靭性のため耐衝撃性を大きく向上できる、ポリアミドは最も好ましい。ポリアミドとしてはポリアミド12、ポリアミド11、ポリアミド6、ポリアミド66やポリアミド6/12共重合体、特開平01-104624号公報の実施例1記載のエポキシ化合物にてセミIPN(高分子相互侵入網目構造)化されたポリアミド(セミIPNポリアミド)などを好適に用いることができる。この熱可塑性樹脂粒子の形状としては、球状粒子でも非球状粒子でも、また多孔質粒子でもよいが、球状の方が樹脂の流動特性を低下させないため、本発明の製造法では特に好ましい。また、球状であれば応力集中の起点がなく、高い耐衝撃性を与えるという点でも好ましい態様である。
【0038】
ポリアミド粒子の市販品としては、SP-500、SP-10、TR-1、TR-2、842P-48、842P-80(以上、東レ(株)製)、“オルガソール(登録商標)”1002D、2001UD、2001EXD、2002D、3202D、3501D,3502D、(以上、アルケマ(株)製)、“グリルアミド(登録商標)”TR90(エムザベルケ(株)社製)、“TROGAMID(登録商標)”CX7323、CX9701、CX9704、(デグサ(株)社製)等を使用することができる。これらのポリアミド粒子は、単独で使用しても複数を併用してもよい。
【0039】
また、CFRPの層間樹脂層を高靭性化するためには、ポリマー粒子を層間樹脂層に留めておくことが好ましい。そのため、ポリマー粒子の数平均粒径は5~50μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは7~40μmの範囲、さらに好ましくは10~30μmの範囲である。数平均粒径を5μm以上とすることで、粒子が強化繊維の束の中に侵入せず、得られる繊維強化複合材料の層間樹脂層に留まることができる。数平均粒径を50μm以下とすることで、プリプレグ表面のマトリックス樹脂層の厚みを適正化し、ひいては得られるCFRPにおいて、繊維質量含有率を適正化することができる。
【0040】
本発明のプリプレグの幅には、特に制限は無く、幅が数十cm~2m程度の広幅でも良いし、幅数mm~数十mmのテープ状でも良く、用途に応じ幅を選択することができる。近年では、プリプレグの積層工程を効率化するため、細幅プリプレグやプリプレグテープを自動積層していくATL(Automated Tape Laying)やAFP(Automated Fiber Placement)と呼ばれる装置が広く用いられるようになってきており、これに適合した幅とすることも好ましい。ATLでは幅が約7.5cm、約15cm、約30cm程度の細幅プリプレグが用いられることが多く、AFPでは約3mm~約25mm程度のプリプレグテープが用いられることが多い。
【0041】
また、
図2に本製造方法の別の好ましい様態について示す。クリール411に掛けられた強化繊維ボビン412より強化繊維414を引き出し、方向転換ガイド413を経由し強化繊維配列装置415で強化繊維シート416を形成させる。
図2では強化繊維ボビンを3個記載しているが、実際には目的に応じた必要個数を掛けることになる。強化繊維シート416は方向転換ロール419を経由して上方に導かれ、その後、方向転換ロール419を経由し鉛直下向きに搬送され、予熱装置420で塗布部内のマトリックス樹脂温度以上まで予熱される。その後、塗布部430内でマトリックス樹脂が塗布、含浸されプリプレグ471を形成することができる。プリプレグ471は方向転換ロール441上で、離型シート(上)供給装置442から巻き出された離型シート446と積層され、高張力引き取り装置である高張力引取りS字ロール449により引き取られる。同時に、離型シート(下)供給装置443から巻き出された離型シートと高張力引取りS字ロール449上で積層され、プリプレグの上下両面に離型シートを配置する。そして、これが追含新装置450に供給され、熱版451で予熱された後、加熱ニップロール452を用いて含浸が進められる。その後、冷却装置461で冷却された後、引き取り装置462を経て、上側の離型シートが剥がされ、ワインダー464にてプリプレグ/離型シートがロール形状に巻き上げられる。上側の離型シートは離型シート(上)巻取装置463に巻き取られる。
【0042】
以下、本製造法の詳細な好ましい様態について、更に記載する。
【0043】
<UD基材の形成>
強化繊維シートとしてUD基材を用いる場合には、これの形成する方法は公知の方法を用いることができ、特に制限は無いが、単繊維をあらかじめ配列させた強化繊維束を形成し、この強化繊維束を更に配列させてUD基材を形成させることが、工程効率化、配列均一化の観点から好ましい。例えば炭素繊維では、テープ状の強化繊維束である「トウ」がボビンに巻かれているが、ここから引き出されたテープ状の強化繊維束を配列させて強化繊維シートを得ることができる。また、クリールにかけられたボビンから引き出された強化繊維束を整然と並べ、強化繊維シート中で強化繊維束の望ましくない重なりや折りたたみ、強化繊維束間の隙間を無くするための強化繊維配列機構を有することが好ましい。強化繊維配列機構としては公知のローラーやくし型配列装置などを用いることができる。また、予め配列した強化繊維シートを複数枚重ねることも強化繊維間の隙間を減じる観点から有用である。なお、クリールには強化繊維を引き出す際に張力制御機構が付与されていることが好ましい。張力制御機構としては、公知のものを使用可能であるが、ブレーキ機構などが挙げられる。また、糸道ガイドの調整などによっても張力を制御することができる。
【0044】
<強化繊維シートの平滑化>
前記製造方法においては、強化繊維シートの表面平滑性を高くすることで、マトリックス樹脂の塗布部での塗布量の均一性を向上させることができる。このため、強化繊維シートを平滑化処理した後、塗布部に導くことが好ましい。平滑化処理法は特に制限は無いが、対向ロールなどで物理的に押しつける方法や空気流を用いて強化繊維を動かす方法などを例示できる。物理的に押しつける方法は簡便かつ、強化繊維の配列を乱しにくいため好ましい。より具体的にはカレンダー加工などを用いることができる。空気流を用いる方法は擦過が起こりにくいだけでなく、強化繊維シートを拡幅する効果もあり好ましい。平滑化装置は、例えば
図2の強化繊維配列装置415から予熱装置420の間に設置することができる。
【0045】
<強化繊維シートの拡幅化>
また、前記製造方法において、強化繊維シートを拡幅処理した後、液溜り部に導くことも、薄層プリプレグを効率的に製造できる観点から好ましい。また、薄層プリプレグを多層化することで、プリプレグの層厚みを薄くし、FRPの靭性や耐衝撃性を向上させることができる。拡幅処理方法は特に制限は無いが、機械的に振動を付与する方法、空気流により強化繊維束を拡げる方法などを例示できる。機械的に振動を付与する方法としては、例えば特開2015-22799号公報記載のように、振動するロールに強化繊維シートを接触させる方法がある。振動方向としては、強化繊維シートの進行方向をX軸とすると、Y軸方向(水平方向)、Z軸方向(垂直方向)の振動を与えることが好ましく、水平方向振動ロールと垂直方向振動ロールを組み合わせて用いることも好ましい。また振動ロール表面は複数の突起を設けておくと、ロールでの強化繊維の擦過を抑制でき、好ましい。空気流を用いる方法としては、例えば、SEN-I GAKKAISHI,vol.64,P-262-267(2008).記載の方法を用いることができる。拡幅化装置は、例えば
図2の強化繊維配列装置415から予熱装置420の間に設置することができる。
【0046】
<強化繊維シートの予熱>
また、本発明において、強化繊維シートを加熱した後、液溜り部に導くと、マトリックス樹脂の温度低下を抑制し、塗液の粘度均一性を向上させられるため好ましい。強化繊維シートは液溜まり部でのマトリックス樹脂温度近傍まで加熱されることが好ましいが、このための加熱手段としては、空気加熱、赤外線加熱、遠赤外線加熱、レーザー加熱、接触加熱、熱媒加熱(スチームなど)など多様な手段を用いることができる。中でも赤外線加熱は装置が簡便であり、また強化繊維シートシートを直接加熱できるため、走行速度が速くても所望の温度まで効率よく加熱が可能であり、好ましい。
【0047】
<マトリックス樹脂粘度>
本発明で用いるマトリックス樹脂としては、工程通過性・安定性の観点から最適な粘度を選択することが好ましい。具体的には、粘度を1~60Pa・sの範囲とすると、狭窄部出口での液垂れを抑制するとともに強化繊維シートの高速走行性、安定走行性を向上させることができ、好ましい。ここで、粘度は歪み速度3.14s-1で液溜り部での塗液温度で測定した値を指す。
【0048】
<塗布工程>
次に
図3~6により、強化繊維シートへのマトリックス樹脂の付与工程について詳述する。なお、ここでは、強化繊維シート2としてUD基材を例として図示しており、強化繊維は紙面の奥行き方向に配列されている。
図3は、
図1における塗布部20を拡大した詳細横断面図である。塗布部20は、所定の隙間Dを開けて対向する壁面部材21a、21bを備え、壁面部材21a、21bの間には、鉛直方向下向きZに断面積が連続的に減少する液溜り部22と、液溜り部22の下方(強化繊維シート2の搬出側)に位置し、液溜り部22の上面(強化繊維シート2の導入側)の断面積よりも小さい断面積を有するスリット状の狭窄部23が形成されている。さらに壁面部材21a、21bの外側には外力付与機構50a、50bを備えている。
【0049】
塗布部20において、液溜り部22に導入された強化繊維シート2は、その周囲のマトリックス樹脂4を随伴しながら、下向きに走行する。その際、液溜り部22の断面積は鉛直方向下向きZに向かって減少するため、随伴するマトリックス樹脂4は徐々に圧縮され、液溜り部22の下部に向かうにつれてマトリックス樹脂4の圧力が増大する。液溜り部22の下部の圧力が高くなると、前記随伴液流がそれ以上は下部に流動し難くなり、強化繊維シート2と壁面部材21a、21bに挟まれた領域では、マトリックス樹脂4は壁面部材21a、21b方向に流れ、その後、壁面部材21a、21bに阻まれ、上方へ流れるようになる。結果、液溜り部22内では強化繊維シート2の外側平面と、壁面部材21a、21b壁面に沿った循環流Tを形成する。これにより、仮に強化繊維シート2が毛羽を液溜り部22に持ち込んだとしても毛羽は循環流Tに沿って運動し、液圧の大きな液溜り部22下部や狭窄部23に近づくことができない。さらに下で述べるとおり、気泡が毛羽に付着することにより毛羽が循環流から上方に移動し、液溜り部22の上部液面付近を通過する。そのため、毛羽が液溜り部22の下部および狭窄部23に詰まることが防止されるだけでなく、滞留する毛羽は液溜り部22の上部液面から容易に回収することも可能となる。さらに、強化繊維シート2を高速で走行させた場合、前記の液圧はさらに増大するため、毛羽の排除効果がより高くなる。その結果強化繊維シート2により高速でマトリックス樹脂4を付与することが可能となり、生産性が大きく向上する。
【0050】
また、前記の増大した液圧により、マトリックス樹脂4が強化繊維シート2の内部に含浸しやすくなる効果がある。これは、強化繊維束のような多孔質体に塗液が含浸される際、その含浸度が塗液の圧力で増大する性質(ダルシーの法則)に基づく。これについても、強化繊維シート2をより高速で走行させた場合、液圧がより増大することから、含浸効果をより高めることができる。なお、マトリックス樹脂4は強化繊維シート2の内部に残留する気泡と気/液置換で含浸されるが、気泡は前記の液圧と浮力により強化繊維シート2の内部の隙間を通って、繊維の配向方向(鉛直方向上向き)に排出される。このとき、気泡は含浸してくるマトリックス樹脂4を押しのけずに排出されるため、含浸を阻害しない効果もある。また、気泡の一部は強化繊維シート2の表面から液中に排出されるが、この気泡も前記の液圧と浮力により速やかに鉛直方向上向きに排除されるため、含浸効果の高い液溜り部22の下部に留まらず、効率よく気泡の排出が進む効果もある。これらの効果により、強化繊維シート2にマトリックス樹脂4を効率よく含浸させることが可能となる。
【0051】
さらに、前記の増大した液圧により、強化繊維シート2および/またはプリプレグ3が隙間Dの中央に自動的に調心され、強化繊維シート2および/またはプリプレグ3が液溜り部22や狭窄部23の壁面に直接擦過せず、ここでの毛羽発生を抑制する効果もある。これは、外乱などにより強化繊維シート2および/またはプリプレグ3が隙間Dのどちらかに接近した場合、接近した側ではより狭い隙間にマトリックス樹脂4が押し込まれて圧縮されるため、接近した側で液圧がより増大し、強化繊維シート2および/またはプリプレグ3を隙間Dの中央に押し戻すためである。
【0052】
狭窄部23は、液溜り部22の上面よりも断面積が小さく設計される。
図3から理解されるとおり専ら強化繊維シート2による疑似平面の垂線方向の長さが小さい、すなわち部材間の間隔が狭い、ことで断面積は小さくなる。これは、前記のように狭窄部で液圧を高くすることで、含浸や自動調心効果を得るためである。また、狭窄部23の最上部の面の断面形状は、液溜り部22の最下部の面の断面形状と一致させることが、強化繊維シート2の走行性やマトリックス樹脂4の流れ制御の観点から好ましいが、必要に応じ狭窄部23の方を若干大きくしてもよい。
【0053】
また、強化繊維シート2に付与されるマトリックス樹脂4の総量は、狭窄部23の隙間Dで制御可能である。より具体的には、強化繊維シート2に付与されるマトリックス樹脂4の総量は、狭窄部23の隙間Dの大きさに概ね比例する。例えば、強化繊維シート2に付与するマトリックス樹脂4の総量を多くしたい(目付けを大きくしたい)場合は、隙間Dが広くなるよう、壁面部材21a、21bを設置すればよい。隙間Dの決定方法は特に限定されるものではないが、例えば壁面部材21aと21bの間の強化繊維シート2が通過しない部分に板状のシムを挟み込んで決定しても良いし、壁面部材21a、21bを
図3の水平方向に移動可能な精密ステージに乗せ、精密ステージの位置を制御して決定しても良い。
【0054】
図4は、塗布部20を、
図3のAの方向から見た下面図である。塗布部20には、強化繊維シート2の強化繊維配列方向両端からマトリックス樹脂4が漏れるのを防ぐための側壁部材24a、24bが設けられており、壁面部材21a、21bと側壁部材24a、24bに囲われた空間に狭窄部23の出口25が形成されている。ここで、出口25はスリット状をしており、断面アスペクト比(
図4のY/D)はマトリックス樹脂4を付与したい強化繊維シート2および/またはプリプレグ3の形状に合わせて設定すればよい。なお、通常、Yの大きさはL(幅規制機構が無い場合)またはL2(幅規制機構がある場合)の大きさに等しい。
【0055】
図5は塗布部20を、Bの方向から見た場合の塗布部内部の構造を説明する断面図である。なお、図を見やすくするため壁面部材21bは省略してあるほか、強化繊維シート2は強化繊維を、隙間を開けて配列しているように描画しているが、実際には強化繊維を隙間無く配列することが、プリプレグ3の品位、FRPの力学特性の観点から好ましい。
【0056】
図6は隙間26でのマトリックス樹脂4の流れを示している。隙間26が大きいとマトリックス樹脂4には、Rの向きに渦流れが発生する。この渦流れRは、液溜り部22の下部では外側に向かう流れ(Ra)となるため、強化繊維シート2を引き裂いてしまう(強化繊維シート2がUD基材の場合、強化繊維束の割れが発生する)場合や強化繊維間の間隔を拡げてしまい、そのためにプリプレグ3としたときに強化繊維の配列ムラを発生する可能性がある。一方、液溜り部22の上部では、内側に向かう流れ(Rb)となるため、強化繊維シート2が幅方向に圧縮され、その端部が折れてしまう場合がある。
【0057】
そこで、本発明においては、隙間26を小さくする幅規制を行い、端部での渦流れの発生を抑制することが好ましい。具体的には、液溜り部22の幅L、すなわち、側板部材24aと24bの間隔Lは、狭窄部23の直下で測定した強化繊維シートの幅Wと以下の関係を満たすよう構成することが好ましい。
L≦W+10(mm)。
【0058】
これにより、端部での渦流れ発生が抑制され、強化繊維シート2の割れや端部折れを抑制でき、プリプレグ3の全幅(W)にわたって均一に強化繊維が配列された、高品位で安定性の高いプリプレグ3を得ることができる。これにより、プリプレグの品位、品質を向上させるのみならず、これを用いて得られるFRPの力学特性や品質を向上させることができる。LとWの関係はより好ましくは、L≦W+2(mm)とすると、さら強化繊維シート2の割れや端部折れを抑制することができる。
【0059】
また、Lの下限は、W-5(mm)以上となるよう調整することが、プリプレグ3の幅方向寸法の均一性を向上させる観点から好ましい。
【0060】
なお、この幅規制は、液溜り部22下部の高い液圧による渦流れR発生を抑制する観点から、少なくとも液溜り部22の下部(
図5のGの位置)で行うことが好ましい。さらに、この幅規制はより好ましくは、液溜り部22の全域で行うと、渦流れRの発生をほぼ完全に抑制することができ、その結果、強化繊維シートの割れや端部折れをほぼ完全に抑制することが可能となる。
【0061】
また、前記幅規制は、前記隙間26の渦流れ抑制の観点からは、液溜り部22だけでもよいが、狭窄部23も同様に行うとプリプレグ3の側面に過剰なマトリックス樹脂4が付与されることを抑制する観点から好ましい。
【0062】
<幅規制機構>
前記では幅規制を側壁部材24a、24bが担う場合を示したが、
図7に示すように、側壁部材24a、24b間に幅規制機構27a、27bを設け、かかる機構で強化繊維シート2の幅規制を行うこともできる。これにより、幅規制機構によって規制される幅を自在に変更可能とすることで一つの塗布部により、種々の幅のプリプレグを製造できる観点から好ましい。ここで、
図7(b)における狭窄部の直下における強化繊維シートの幅(W)と該幅規制機構下端において幅規制機構により規制される幅(L2)との関係はL2≦W+10(mm)とすることが好ましく、より好ましくは、L2≦W+2(mm)である。また、L2の下限は、W-5(mm)以上となるよう調整することが、プリプレグ3の幅方向寸法の均一性を向上させる観点から好ましい。幅規制機構の形状および材質に特に制限は無いが、板形状のブッシュであると簡便であり、好ましい。一方、幅規制機構の中間部から下部にかけては塗布部の内部形状に沿った形状とすることが液溜り部での塗液の滞留を抑制でき、塗液の劣化を抑制できることから好ましい。この意味から、幅規制機構は
図7(b)に示す通り、狭窄部23まで挿入されることが好ましい。
【0063】
また
図7では、幅規制機構として板形状ブッシュの例を示しているが、
図7(d)におけるブッシュの位置Jより下部が液溜り部22のテーパー形状に沿い、狭窄部23まで挿入される例を示している。
図7(b)にはL2が液面から出口まで一定の例を示しているが、幅規制機構の目的を達成する範囲で部位によって規制する幅を変更してもよい。幅規制機構は任意の方法で塗布部20に固定することができるが、板形状ブッシュの場合には、上下方向で複数の部位で固定することで、高液圧による板形状ブッシュの変形による規制幅の変動を抑制することができる。例えば、上部はステーを用い、下部は塗布部に差し込むようにすると、幅規制機構による幅の規制が容易であり、好ましい。
【0064】
さらに狭窄部23において、幅規制機構27a、27bの外側を塞ぐようにシム28を配置すると、強化繊維シート2の通過しない部分からマトリックス樹脂4が漏れるのを防ぐことができるほか、シム28により隙間Dの大きさを正確に決定することができ、好ましい。
【0065】
<液溜り部の形状>
前記で詳述したように、本製造方法においては、液溜り部22でZ方向に断面積が連続的に減少することで、強化繊維シート2の走行方向に液圧を増大させることが重要であるが、ここで強化繊維シートの走行方向に断面積が連続的に減少するとは、走行方向に連続的に液圧を増大可能であれば、その形状には特に制限は無い。液溜り部の横断面図において、テーパー状(直線状)であったり、ラッパ状などのように曲線的な形態を示してもよい。また、断面積減少部は液溜り部全長にわたって連続してもよいし、本発明の目的、効果が得られる範囲であれば、一部に断面積が減少しない部分や逆に拡大する部分を含むことは許容されうる。これらについて、以下に
図8~11で例を挙げて詳述する。
【0066】
図8は、
図3とは別の実施形態の塗布部20bの詳細横断面図である。なお、外力付与機構は描画していない(
図9~
図12について同じ)。液溜り部22を構成する壁面部材21c、21dの形状が異なる以外は、
図3の塗布部20と同じである。
図8の塗布部20bのように、液溜り部22が、鉛直方向下向きZに断面積が連続的に減少する領域22aと、断面積が減少しない領域22bに分かれていてもよい。このとき、断面積が連続的に減少する鉛直方向高さHは10mm以上であることが好ましい。さらに好ましい断面積が連続的に減少する鉛直方向高さHは50mm以上である。これにより、強化繊維シートによって随伴されたマトリックス樹脂が、液溜まり部22の断面積が連続的に減少する領域22aで圧縮される距離が確保され、液溜り部22の下部で発生する液圧を十分に増大させることができる。その結果、液圧により毛羽が狭窄部23に詰まるのを防止し、また液圧によりマトリックス樹脂が強化繊維シートに含浸する効果を得ることができる。
【0067】
ここで、
図3の塗布部20や
図8の塗布部20bのように、液溜り部22の断面積が連続的に減少する領域22aをテーパー状とする場合、テーパーの開き角度θは小さい方が好ましく、具体的には鋭角(90°以下)にすることが好ましい。これにより、液溜り部22の断面積が連続的に減少する領域22a(テーパー部)でマトリックス樹脂の圧縮効果を高め、高い液圧を得やすくすることができる。
【0068】
図9は、
図8とは別の実施形態の塗布部20cの詳細横断面図である。液溜り部22を構成する壁面部材21e、21fの形状が2段テーパー状となっている以外は、
図8の塗布部20bと同じである。このように、液溜り部22の断面積が連続的に減少する領域22aを2段以上の多段テーパー部で構成してもよい。このとき、狭窄部23に最も近いテーパー部の開き角度θを鋭角にするのが、前記の圧縮効果を高める観点から好ましい。またこの場合も、液溜り部22の断面積が連続的に減少する領域22aの高さHを10mm以上にすることが好ましい。さらに好ましい断面積が連続的に減少する鉛直方向高さHは50mm以上である。
図9のように液溜り部22の断面積が連続的に減少する領域22aを多段のテーパー部にすることで、液溜り部22に貯留できるマトリックス樹脂4の体積を維持しつつ、狭窄部23に最も近いテーパー部の角度θをより小さくすることができる。これにより液溜り部22の下部で発生する液圧がより高くなり、毛羽の排除効果やマトリックス樹脂4の含浸効果をさらに高めることが可能となる。
【0069】
図10は、
図8とは別の実施形態の塗布部20dの詳細横断面図である。液溜り部22を構成する壁面部材21g、21hの形状が階段状となっている以外は、
図8の塗布部20bと同じである。このように、液溜り部22の最下部に断面積が連続的に減少する領域22aがあれば、本発明の目的である液圧の増大効果は得られるため、液溜り部22の他の部分に断面積が不連続で急激に減少する領域22cを含んでいてもよい。液溜り部22を
図10のような形状にすることで、断面積が連続的に減少する領域22aの形状を維持しつつ、液溜り部22の奥行きBを拡大して貯留できるマトリックス樹脂4の体積を大きくすることができる。その結果、塗布部20dにマトリックス樹脂4を連続して供給できない場合でも、長時間強化繊維シートにマトリックス樹脂を付与し続けることが可能となり、プリプレグの生産性がより向上する。
【0070】
図11は、
図8とは別の実施形態の塗布部20eの詳細横断面図である。液溜り部22を構成する壁面部材21i、21jの形状がラッパ状(曲線状)となっている以外は、
図8の塗布部20bと同じである。
図8の塗布部20bでは、液溜り部22の断面積が連続的に減少する領域22aはテーパー状(直線状)だが、これに限定されず、例えば
図11のようにラッパ状(曲線状)でもよい。ただし、液溜り部22の下部と、狭窄部23の上部は滑らかに接続することが好ましい。これは、液溜り部22の下部と、狭窄部23の上部の境界に段差があると、強化繊維シートが段差に引っ掛かり、この部分で毛羽が発生する懸念があるためである。また、このように液溜り部22の断面積が連続的に減少する領域をラッパ状とする場合は、液溜り部22の断面積が連続的に減少する領域22aの最下部における仮想接線の開き角度θを鋭角にするのが好ましい。
【0071】
なお、上記は滑らかに断面積が減少する例をあげて説明したが、本発明の目的を損なわない限り、本発明において液溜まり部の断面積は必ずしも滑らかに減少しなくともよい。
【0072】
図12は別の実施形態の塗布部30の詳細横断面図である。
図8~11とは異なり、
図12の液溜り部32は鉛直方向下向きZに断面積が連続的に減少する領域を含まず、狭窄部23との境界33で断面積が不連続で急激に減少する構成である。このため、強化繊維シート、プリプレグが詰まり易いため、避けることが好ましい。
【0073】
<マトリックス樹脂の付与量の均一化>
前記で詳述したように、強化繊維シート2へのマトリックス樹脂4の付与量は狭窄部23の隙間Dで決まることから、強化繊維シート2の幅方向について隙間Dの大きさを均一にすることが、均一な品質のプリプレグ3を得る観点から、好ましい。また、強化繊維シート2の走行中に隙間Dの大きさを経時的に均一に維持することが、均一な品質のプリプレグ3を連続生産する観点から、好ましい。ここで、狭窄部23の隙間Dにムラが生じる原因について、詳述する。
【0074】
図13は本発明とは異なる別の実施形態、すなわち外力付与機構が存在しない実施形態、の塗布部を、
図3のAと同じ方向から見た場合の下面図である。
図13に示すように塗布部は
図7(c)と同様、幅規制部材27a、27bとシム28を備えており、壁面部材21aと21bはシム28の部分で、シム28を挟み込むようにボルト(不図示)で締結されている。ここで
図13に示す塗布部は外力付与機構を備えていない。前記で詳述したように、本製造方法においては強化繊維シート2の走行によって液溜り部22および狭窄部23には高い液圧が発生する。このとき、狭窄部23を形成する壁面部材21aおよび21bには、前記液圧により狭窄部23の隙間Dを広げる方向の力Fが作用する。力Fは強化繊維シート2が通過する部分にのみ作用するため、
図13の壁面部材21aおよび21bはボルトの締結部分(シム28の部分)を支点として、強化繊維シート2の幅方向中央で隙間Dが開く方向に変形し、狭窄部23の隙間Dには幅方向にムラが生じる。前記で詳述したように、強化繊維シート2へのマトリックス樹脂4の付与量は隙間Dの大きさで決まるため、隙間Dに幅方向のムラがあると、強化繊維シート2へのマトリックス樹脂4の付与量にも幅方向のムラが生じ、プリプレグ3の品質が低下してしまう。この液圧による壁面部材21a、21bの変形量は、付与するマトリックス樹脂4の粘度が高いほど、また強化繊維シート2の走行速度が速いほど、大きくなる。さらに強化繊維シート2の走行中にマトリックス樹脂4の粘度が経時的に変化すると、前記の液圧の大きさも経時的に変化するため、前記の隙間Dのムラの大きさも経時的に変化してしまい、強化繊維シート2へのマトリックス樹脂4の付与量が強化繊維シート2の長手方向で変化することとなり、その結果、プリプレグ3の品質が低下してしまう。
【0075】
さらに、マトリックス樹脂4を加熱溶融して用いる場合には、壁面部材21a、21bの温度とマトリックス樹脂4の温度の差によって、壁面部材21a、21bの内部に温度差が生じ、壁面部材21a、21bが熱変形して隙間Dに幅方向のムラが生じることがある。またマトリックス樹脂4の温度が経時的に変化すると、前記の熱変形の大きさも経時的に変化するため、狭窄部23の隙間Dも経時的に変化してしまう。このときも同様に強化繊維シート2へのマトリックス樹脂4の付与量に幅方向および経時的なムラが生じ、プリプレグ3の品質が低下してしまう。
【0076】
これらの変形量は、壁面部材21a、21bの幅が広いほど、すなわち強化繊維シート2の幅が広いほど大きくなってしまうため、強化繊維シート2の幅が広いほど、狭窄部23の隙間Dを均一にすることが難しい。
【0077】
次に本発明における外力付与機構の作用について、詳述する。
【0078】
図14は本発明の実施形態の塗布部を
図3のAの方向から見た下面図である。
図14の塗布部には、壁面部材21a、21bの幅方向中央部に外力付与機構50a、50bを備えている。外力付与機構50a、50bは、壁面部材21a、21bに強化繊維シート2の厚み方向(下面図である
図14においては繊維強化シートに向かう方向で描画されている)の外力を付与するものである。外力付与機構50として、例えばエアシリンダーやサーボモーター、ステッピングモーター、調整ボルト(押しねじ)、差動ねじ、ヒートボルトなどを挙げることができるが、壁面部材21に外力を付与できるものであれば、特に限定されない。
図19は調整ボルト方式の外力付与機構50の例の詳細横断面図である。
図19の外力付与機構50は、壁面部材21とは独立した固定台座53にねじ穴を設け、そこに通した調整ボルト54を回転させることにより、調整ボルト54の軸力が壁面部材21に外力として付与される仕組みである。
図20は熱作動機構(thermal actuator)の一種であるヒートボルト方式の外力付与機構50’の例を示す詳細横断面図である。
図20の外力付与機構50’は温度変化を発生させる機構である発熱体56と、変化する温度に応じて目的とする方向の長さが変化する部材であるロッド55から形成されており、図では発熱体56は図中の破線に示される通り、ロッド内部にも構成されている。ロッド55と壁面部材21は
図20の55A、55Bの位置で結合している。
図20の外力付与機構50’では、発熱体56でロッド55を加熱し、ロッド55を熱膨張させることで、壁面部材21に外力を付与する仕組みである。このとき、壁面部材21とロッド55が結合する点55Aでは、壁面部材21の点55Aで結合しているカ所を左側に向かって押すこととなるので、対向する壁面部材との隙間Dを小さくすることができる。反対に対抗する壁面部材との隙間Dを大きくしたいときは、発熱体56の出力を下げてロッド55を冷却するか、発熱体56の代わりに冷却体を用いればよい。ロッド55の材質は特に制限されないが、例えばSUS430などを用いることができる。また発熱体56の種類も特に制限されないが、例えばカートリッジヒーター、シースヒーター、セラミックヒーターなどを用いることができる。また、ロッド55の温度変化により壁面部材21の温度変化が懸念される場合には、必要に応じて壁面部材21とロッド55との間に空洞57を形成してもよいし、断熱材58を設置してもよい。このように
図20の外力付与機構50’では、ロッド55の温度を変化させたときの熱膨張または熱収縮を利用して、外力の大きさを制御することができる。
【0079】
ここで外力付与機構は、その方式によらず、
図19のように壁面部材21の外部に設置してもよいし、
図20のように壁面部材21の内部に設置しても良い。
【0080】
図14の塗布部20aによれば、強化繊維シート2の走行によって液溜り部22および狭窄部23には高い液圧が発生し、壁面部材21aおよび21bに狭窄部23の隙間Dを広げる方向の力Fが作用しても、外力付与機構50a、50bによって力Fと対向する方向の外力F’を作用させ、壁面部材21a、21bの変形を制御して狭窄部23の隙間Dを均一に保つことができる。同様に、壁面部材21a、21bの温度とマトリックス樹脂4の温度差によって、壁面部材21a、21bの内部に温度差が生じても、外力付与機構50a、50bによって温度差に起因する熱変形を抑制する方向に外力を付与し、壁面部材21a、21bの変形を制御して狭窄部23の隙間Dを均一に保つことができる。その結果、狭窄部23の隙間Dは幅方向に均一になり、強化繊維シート2へのマトリックス樹脂4の付与量も幅方向に均一になるため、幅方向に均一な品質のプリプレグ3を得ることができる。
【0081】
図15は
図14とは別の実施形態の外力付与機構が適用された塗布部の断面図である。
図15の塗布部は、塗布部の下流側でプリプレグ3の厚みまたは質量を測定する測定装置51a、51bを備えている。このように塗布後のプリプレグ3の厚みまたは質量を測定し、その測定値を用いて外力付与機構50a、50bで付与する外力の大きさや方向を制御すると、マトリックス樹脂4が均一に付与されたプリプレグ3を得ることができ、好ましい。より具体的には、例えば外力付与機構50をプリプレグ3の幅方向(
図15の紙面の奥行き方向)に複数設置し、さらに測定装置51をプリプレグ3の幅方向に往復させながらプリプレグ3の厚みまたは質量を全幅で測定し、プリプレグ3の厚みまたは質量が規定値よりも大きい位置では、外力付与機構50により隙間Dを小さくなるよう、壁面部材21a、21bに対して付与する外力の大きさや方向を制御すると良い。これにより壁面部材21が変形して該位置では隙間Dが小さくなり、マトリックス樹脂4の付与量が小さくなってプリプレグ3の厚みまたは質量を規定値内にすることができる。反対に、プリプレグ3の厚みまたは質量が規定値よりも小さい位置では、外力付与機構50により隙間Dを大きくなるよう、壁面部材21a、21bに対して付与する外力の大きさや方向を制御すると良い。これらの外力の大きさの制御により、狭窄部23の隙間Dが均一化され、強化繊維シート2へのマトリックス樹脂4の付与量が均一になることで、均一な品質のプリプレグ3を得ることが可能となる。
【0082】
ここで
図15に示す塗布部では、測定装置51a、51bをプリプレグ3の幅方向に往復させながらプリプレグ3の厚みまたは質量を全幅で測定する例を示したが、これに限定されず、例えば複数の測定装置51をプリプレグ3の幅方向に設置し、プリプレグ3の厚みまたは質量をプリプレグ3の幅方向の複数の位置で測定しても良い。
【0083】
また、外力付与機構50によって壁面部材21に付与される外力の制御方法も特に限定されず、例えば測定装置51によってプリプレグ3の厚みまたは質量を定期的に測定し、その測定値が規格の範囲を外れた場合のみ外力を付与するように制御信号を出しても良いし、測定装置51によってプリプレグ3の厚みまたは質量を常に測定し、その測定値が常に規格値に近づくよう外力の大きさをフィードバック制御しても良い。
【0084】
プリプレグの厚みまたは質量を測定する測定装置51a、51bとしては、例えばベータ線計やX線計などを挙げることができるが、プリプレグ3の厚みまたは質量を測定できるものであれば、特に限定されない。
【0085】
図16は
図15とは別の実施形態の外力付与機構が適用された塗布部の横断面図である。
図16の塗布部は、外力付与機構50a、50bとは別に、壁面部材21a、21bの変形量を測定する測定装置52a、51bを備えている。このように壁面部材21a、21bの変形量を測定し、その測定値を用いて外力付与機構50a~50fで付与する外力の大きさを制御することによっても、狭窄部23の隙間Dを均一にすることができ、好ましい。より具体的には、例えばそれぞれの外力付与機構50a、50bの近傍に測定装置52a、52bを設置し、強化繊維シート2の走行前に予め隙間Dの大きさを測定して幅方向に均一にしておき、その際の壁面部材21a、21bの位置を基準として、強化繊維シート2の走行中もそれぞれの測定装置52a、52bの位置で壁面部材21a、21bの変形量がゼロになるよう、それぞれの外力付与機構50a、50bで付与する外力の大きさを制御すると良い。例えば、測定装置52aによって、壁面部材21aが強化繊維シート2から離れる方向の変形が測定された場合は、壁面部材21aを強化繊維シート2に近づける方向に、外力付与機構50aで付与する外力の大きさを制御すると良い。ここで
図16の塗布部では説明のため外力付与機構50a、50bが狭窄部23よりも鉛直方向の高い位置に描かれているが、測定装置52a、52bは狭窄部23と鉛直方向の同じ高さに備えることが、狭窄部23の隙間Dの大きさを精密に制御する観点から、好ましい。また測定装置52a、52bを外力付与機構50a、50bのなるべく近傍に備えることが、外力付与機構50a、50bで付与する外力の大きさを精密に制御する観点から、好ましい。
【0086】
測定装置52としては、例えば接触式の変位計や、非接触のレーザー変位計などを挙げることができるが、壁面部材21の変形量を測定できるものであれば、特に限定されない。
【0087】
図17は
図14とは別の実施形態の外力付与機構が適用された塗布部の下面図である。このように、外力付与機構を強化繊維シート2の幅方向に対して複数の位置に備えると、隙間Dを強化繊維シート2の幅方向により細かく制御することが可能となり、好ましい。特に隣り合う外力付与機構間の間隔(La)が150mm以下になるようにすると、より均一なプリプレグの厚み制御が可能となるので好ましい。このとき、壁面部材21a、21bの変形を制御して狭窄部23の隙間Dを均一化するのに必要な外力の大きさは、それぞれの外力付与機構50a~50fの位置ごとに異なる場合があるため、それぞれの外力付与機構50a~50fで付与する外力の大きさを独立に制御すると、より好ましい。
【0088】
また外力付与機構50は対向する壁面部材21a、21bのそれぞれに備え、外力の付与を壁面部材21a、21bのそれぞれで行うことが、壁面部材21a、21bのそれぞれの変形を制御して狭窄部23の隙間Dを均一化する観点から、好ましい。このときも、壁面部材の変形を制御して狭窄部23の隙間Dを均一化するのに必要な外力の大きさが、壁面部材21a、21bで異なる場合があるため、それぞれの外力付与機構50で付与する外力の大きさを独立に制御すると、より好ましい。
【0089】
以上のように、狭窄部23の隙間Dが強化繊維シート2の幅方向および経時的に均一になるよう、外力の大きさを制御して壁面部材21の変形を制御することで、強化繊維シート2へのマトリックス樹脂4の付与量が強化繊維シート2の幅方向および走行方向に均一になり、幅方向および走行方向に均一な品質のプリプレグ3を得ることが可能となる。
【0090】
<走行機構>
強化繊維シートや本発明のプリプレグを搬送するための走行機構としては、公知のローラー等を好適に用いることができる。本発明では強化繊維シートが実質的に鉛直下向きに搬送されるため、塗布部を挟んで上下にローラーを配置することが好ましい。
【0091】
また、本発明では、強化繊維の配列乱れや毛羽立ちを抑制するため、強化繊維シートの走行経路はなるべく直線状であることが好ましい。また、プリプレグと離型シートの積層体であるシート状一体物の搬送工程において、屈曲部を有すると、内層と外層の周長差による皺が発生する場合が有るため、シート状一体物の走行経路もなるべく直線状であることが好ましい。この観点からは、シート状一体物の走行経路中では、ニップロールを用いる方が好ましい。
【0092】
S字ロールとニップロールのどちらを用いるかは、製造条件や製造物の特性に応じ、適宜選択することが可能である。
【0093】
<高張力引き取り装置>
本発明では、塗布部からプリプレグを引き出すための高張力引き取り装置を塗布部より工程下流に配置することが好ましい。これは、塗布部で、強化繊維シートとマトリックス樹脂の間で高い摩擦力、せん断応力が発生するため、それに打ち勝ってプリプレグを引き出すためには、工程下流で高い引き取り張力を発生させることが好ましいためである。高張力引き取り装置としては、ニップロールやS字ロールなどを用いることができるが、いずれもロールとプリプレグの間の摩擦力を高めることで、スリップを防止し、安定した走行を可能とすることができる。このためには、摩擦係数の高い材料をロール表面に配置したり、ニップ圧力やS字ロールへのプリプレグの押し付け圧を高くすることが好ましい。スリップを防止する観点からは、S字ロールの方がロール径や接触長などで容易に摩擦力を制御でき、好ましい。
【0094】
<離型シート供給装置、ワインダー>
本製造方法によるプリプレグやFRPの製造においては適宜離型シート供給装置やワインダーを用いることができ、そのようなものとしては公知のものを使用することができるが、いずれも巻き出し、あるいは巻き取り張力を巻き出しあるいは巻き取り速度にフィードバックできる機構を備えていることがシートの安定走行の観点から好ましい。
【0095】
<追含浸>
所望の含浸度に調整するために、マトリックス樹脂塗布後に、含浸装置を用いて更に含浸度を高める手段を組み合わせることも可能である。ここでは、塗布部での含浸と区別するために、塗布後に追加で含浸することを追含浸、そのための装置を追含浸装置と称することとする。追含浸装置として用いられる装置には特に制限は無く、目的に応じて公知のものから適宜選択することができる。例えば、特開2011-132389号公報やWO2015/060299パンフレットに記載されるように、強化繊維シートと樹脂の積層体を、熱板で予熱しシート状炭素繊維束上の樹脂を十分軟化させた後、やはり加熱されたニップロールで加圧する装置を用いることで含浸を進めることができる。予熱のための熱板温度やニップロール表面温度、ニップロールの線圧、ニップロールの直径・数は所望の含浸度になるように適宜選択することができる。また、WO2010/150022パンフレットに記載されるようなプリプレグシートがS字型に走行する“S-ラップロール”を用いることも可能である。本明細書では“S-ラップロール”を単に“S字ロール”と称することとする。WO2010/150022パンフレットの
図2ではプリプレグシートがS字型に走行する例が記載されているが、含浸が可能であれば、U字型や、V型またはΛ型のようにシートとロールの接触長を調整してもよい。また、含浸圧を高め含浸度を上げる場合には、対向するコンタクトロールを付加することも可能である。さらにWO2015/076981パンフレットの
図4に記載のように、“S-ラップロール”に対向してコンベヤーベルトを配することで含浸効率を向上させ、プリプレグの製造速度の高速化をはかることも可能である。また、WO2017/068159パンフレットや特開2016-203397号公報などに記載のように、含浸前にプリプレグに超音波を付与し、プリプレグを急速昇温することで、含浸効率を向上させることも可能である。また、特開2017-154330号公報記載のように、超音波発生装置で複数の“しごき刃”振動させる含浸装置を用いることも可能である。また、特開2013-22868号公報記載のようにプリプレグを折り畳んで含浸することも可能である。
【0096】
<簡易追含浸>
上記では、従来の追含浸装置を適用する例を示したが、塗布部直下では未だプリプレグの温度が高い場合があり、そのような場合には塗布部を出て後、あまり時間が経っていない段階で追含浸操作を加えると、プリプレグを再昇温するための熱板などの加熱装置を省略あるいは簡略化し、含浸装置を大幅に簡略化・小型化することも可能である。このように塗布部直下に位置させる含浸装置を簡易追含浸装置と称することとする。簡易追含浸装置としては加熱ニップロールや加熱S字ロールを用いることができるが、通常の含浸装置に比較し、ロール径や設定圧力、プリプレグとロールの接触長を減じることができ、装置を小型化できるだけでなく消費電力なども減じることができ、好ましい。
【0097】
また、プリプレグが簡易追含浸装置に入る前に、プリプレグに離形シートを付与すると、プリプレグの走行性が向上し好ましい。
【0098】
<プリプレグの幅>
また、所望の幅のプリプレグを得る方法には特に制限は無く、幅1m~2m程度の広幅プリプレグを細幅にスリットする方法を用いることができる。また、スリット工程を簡略化あるいは省略するため、最初から所望の幅となるよう本発明で用いる塗布部の幅を調整することもできる。例えば、ATL用に30cm幅の細幅プリプレグを製造する場合には、塗布部出口の幅をそれに応じて調整すればよい。また、これを効率的に製造するためには、製品幅を30cmとして製造することが好ましく、係る製造装置を複数個並列させると、同一の走行装置・搬送装置、各種ロール、ワインダーを用いて複数ラインのプリプレグを製造することができる。
【0099】
また、プリプレグテープの場合には、テープ状の強化繊維束が1糸条~3糸状程度で強化繊維シートを形成させ、これを所望のテープ幅が得られるように幅を調整した塗布部に通すことで得ることもできる。プリプレグテープの場合はテープ同士の横方向の重なりを制御する観点から、特にテープ幅の精度が求められる場合が多い。このため、塗布部出口幅をより厳密に管理することが好ましく、この場合には、前記のL、L2およびWが、L≦W+1mmおよび/またはL2≦W+1mm、の関係を満たすようすることが好ましい。
【0100】
本発明において塗液の含浸度は10%以上であることが望ましい。塗液の含浸度は、採取したプリプレグを裂き、内部を目視することで含浸の有無を確認することができ、より定量的には例えば剥離法で評価することが可能である。剥離法による塗液の含浸度は以下のようにして測定することができる。すなわち、採取したプリプレグを粘着テープで挟み、これを剥離し、塗液が付着した強化繊維と塗液が付着していない強化繊維を分離する。そして、投入した強化繊維シート全体の質量に対する塗液が付着した強化繊維の質量の比率を剥離法による塗液の含浸度とすることができる。
【0101】
<スリット>
プリプレグのスリット方法にも特に制限は無く、公知のスリット装置を用いることができる。プリプレグを一旦巻き取った後、改めてスリット装置に設置し、スリットを行っても良いし、効率化のため、プリプレグ一旦巻き取ることなくプリプレグ作製工程から連続してスリット工程を配置しても良い。また、スリット工程は1m以上の広幅プリプレグを直接、所望の幅にスリットしても良いし、一旦、30cm程度の細幅プリプレグにカット・小分けした後、これを改めて所望の幅にスリットしても良い。
【0102】
なお、上記の細幅プリプレグ、プリプレグテープを複数の塗布部を並列させた場合には、それぞれ独立に離型シートを供給しても良いし、1枚の広幅離型シートを供給し、これに複数枚のプリプレグを積層させても良い。このようにして得られるプリプレグの幅方向の端部を切り落とし、ATLやAFPの装置に供給することができる。この場合には切り落とす端部の大部分が離型シートとなるため、スリットカッター刃に付着する塗液成分(CFRPの場合には樹脂成分)を減じることができ、スリットカッター刃の清掃周期を延長できるというメリットもある。
【0103】
<マトリックス樹脂供給機構>
本製造方法において塗布部内にマトリックス樹脂は貯留されているが、塗工が進行するのでマトリックス樹脂を適宜補給することが好ましい。マトリックス樹脂を塗布部に供給する機構には特に制限は無く、公知の装置を使用することができる。マトリックス樹脂は連続的に塗布部に供給することが、塗布部の上部液面を乱さず、強化繊維シートの走行を安定化でき、好ましい。例えば、塗液を貯留する槽から自重を駆動力として供給したり、ポンプなどを用いて連続的に供給することができる。ポンプとしては、ギヤポンプやチューブポンプ、圧力ポンプなど塗液の性質に応じ適宜使用することができる。また、マトリックス樹脂が室温で固体の場合には、貯留層上部にメルターを備えておくことが好ましい。また、連続押し出し機などを用いることもできる。また、塗液供給量は塗液の塗布部上部の液面がなるべく一定となるよう、塗布量に応じ連続供給できる機構を備えることが好ましい。このためには、例えば液面高さや塗布部重量などをモニタリングし、それを供給装置にフィードバックするような機構が考えられる。
【0104】
<オンラインモニタリング>
また、塗布量のモニタリングのために、塗布量をオンラインモニタリングできる機構を備えることが好ましい。オンラインモニタリング方法についても特に制限は無く、公知のものを使用可能である。例えば、厚みを計測する装置として、例えばベータ線計などを用いることができる。この場合は、強化繊維シート厚みとプリプレグの厚みを計測し、その差分を解析することで塗布量を見積もることが可能である。オンラインモニタリングされた塗布量は、直ぐに塗布部にフィードバックされ、塗布部の温度や狭窄部23の隙間D(
図3参照)の調整に利用することができる。塗布量モニタリングは、もちろん欠点モニタリングとしても使用可能である。厚み計測位置としては、例えば
図2で言えば、方向転換ロール419近傍で強化繊維シート416の厚みを計測し、塗布部430から方向転換ロール441の間でプリプレグ471の厚みを計測することができる。また、赤外線、近赤外線、カメラ(画像解析)などを用いたオンライン欠点モニタリングを行うことも好ましい。
【実施例】
【0105】
続いて、本発明の具体的な実施態様の例について、実施例を示しつつ説明する。しかし、本発明は以下に示す実施例に限定して解釈されるものではない。
【0106】
表1は、強化繊維シート2にマトリックス樹脂4として溶融樹脂を付与し、CFRP用プリプレグ3の作製を行った実験結果をまとめた表である。
【0107】
最初に共通的な実験条件について詳述する。
【0108】
(1)プリプレグ製造装置
いずれの実施例および比較例も
図2のプリプレグ製造装置(なお、樹脂供給部は記載を省略している)を用い、塗布部の壁面部材には
図9の形状の壁面部材21e、21fを用いた。壁面部材にはステンレス製のブロックを用い、また側板部材にはステンレス製のプレートを用いた。またさらに、塗布部には
図7に示すような幅規制機構27a、27bおよびシム28を適用し、幅規制機構27a、27bの間隔L2は300mm、シム28の厚みは0.2mmとした。すなわち、狭窄部23の出口は幅300mm、隙間0.2mmのスリット状であり、アスペクト比は1500となる。シム28は壁面部材21で挟み込むように、シム28の部分でボルト(不図示)で締結した。また、狭窄部出口から塗液が漏れないように、狭窄部出口下面においてブッシュより外側は塞いで使用した。液溜り部は
図9に示すとおり2段テーパー状であるが、上部テーパーは開き角度17°、下部テーパーは開き角度7°、テーパー高さの合計(すなわちH)は100mmであった。また壁面部材21e、21fの下端(出口側)における厚みMは75mmとした。さらにマトリックス樹脂を加温するため、壁面部材21e、21fおよび側板部材24a、24bの外周にプレートヒーターを貼り付け(なお、プレートヒーターは図示されていない)、熱電対で温度計測を行いながら、塗液(マトリックス樹脂)の温度を90℃に維持した。
【0109】
(2)強化繊維シート
強化繊維シートとしては、炭素繊維(東レ製、“トレカ(登録商標)”T800S(24K))を58ボビン分配列させてUD基材を形成し、マトリックス樹脂として後記する熱硬化性エポキシ樹脂組成物を用い、前記装置によりCFRP用のプリプレグを作製した。
【0110】
(3)マトリックス樹脂
エポキシ樹脂(芳香族アミン型エポキシ樹脂+ビスフェノール型エポキシ樹脂の混合物)、硬化剤(ジアミノジフェニルスルホン)、ポリエーテルスルホンの混合物であり、ポリマー粒子は含有していない。この熱硬化性エポキシ樹脂1の粘度をTA Instruments社製ARES-G2を用いて、測定周波数0.5Hz、昇温速度1.5℃/分で測定したところ、90℃で15Pa・sであった。
【0111】
(4)プリプレグ作製方法
クリールに掛けられた複数の強化繊維ボビンから強化繊維を引き出し、強化繊維配列装置で強化繊維シートを形成させ、方向転換ロール419で一旦上方に導いた。その後、方向転換ロールを経由し鉛直下向きに搬送され、予熱装置で塗布部内のマトリックス樹脂温度以上まで予熱された。そして、強化繊維シートを塗布部に導き、その後、塗布部内でマトリックス樹脂が塗布、含浸されプリプレグを形成させた。塗布部を通過する強化繊維シートの走行速度は20m/分とした。プリプレグは方向転換ロール上で、離型シート(上)供給装置から巻き出された離型シートと積層され、高張力引取りS字ロールにより引き取られた。同時に、離型シート(下)供給装置から巻き出された離型シートと高張力引取りS字ロール上で積層され、プリプレグの上下両面に離型シートを配置した。そして、これが追含浸装置に供給され、熱板で予熱された後、加熱ニップロールを用いて追含浸を行った。その後、冷却装置で冷却された後、引き取り装置を経て、上側の離型シートが剥がされ、ワインダーにてプリプレグ/離型シートがロール形状に巻き上げた。
【0112】
次に、実施例および比較例において用いた評価方法について説明する。
【0113】
評価は、それぞれ下記のとおり行った。いずれにおいても「A」「B」「C」を合格、「D」を不合格とした。なお、「A」が最も優れており、「B」は「A」に次いで優れており、「C」は「B」に次いで優れている。
【0114】
[走行安定性]
強化繊維シートの塗液付与部での走行安定性(連続生産性)を評価するため、60分間連続走行させ、毛羽詰まり・糸切れが全く無いものを「A」、60分間連続走行させ、毛羽詰まり・糸切れは無かったが塗布部を分解して壁面部材の接液面を目視で観察したとき、塗液の中に毛羽が目視で確認できたものを「B」、毛羽が詰まり糸切れしたものを「D」とした。
【0115】
[繊維束の折れ]
強化繊維シートに端部の折れ・変形が全くみられないものを「A」、問題となるほどではないが時折端部の折れ・変形が若干みられたものを「B」、60分連続走行において問題となる端部の折れ・変形がみられたが、その時間が30分以下であったものを「C」、60分連続走行において問題となる端部の折れ・変形がみられ、その時間が30分以上であったものを「D」とした。
【0116】
[幅方向の目付]
プリプレグを幅方向(シート走行方向と垂直方向)に向かって、幅25mm×長さ200mmの短冊状に切断した。このとき、長さの方向をシート走行方向に一致させる。得られた短冊状シートに含まれている付与された塗液の質量、すなわち強化繊維シート以外の成分の質量、を電子天秤によって小数点第三位まで計測し、樹脂組成物の質量を得る。この質量を短冊の面積(0.005m2)で割り返すことにより、1m2あたりの付与された塗液の目付を得る。プリプレグの一方の端部から他方の端部までこの操作を行い、両端部を除いて、得られた樹脂組成物目付の平均値、最大値、最小値を求め、「(最大値-最小値)÷平均値」を計算し、目付のばらつきを求めた。長手方向に1mおきにこの操作を合計3回行い、それぞれの操作で求めた目付のばらつきの平均値をそのプリプレグの幅方向の目付のばらつきとした。例えば350mm巾のプリプレグであれば、14枚の短冊状試料が得られ、そのうち両端部にあたる2枚を除いた12枚を用いての各値を求めることになる。20%よりも大きい場合は「D」、10%より大きく20%以下は「B」、10%以下は「A」とした。
【0117】
[実施例1]
図18に示すように本実施例では壁面部材21e、21fの幅方向に3か所ずつ、合計6台の外力付与機構50a~50fを用い、プリプレグを作製した。このうち外力付与機構50c、50dをそれぞれの壁面部材21e、21fの幅方向中央部、狭窄部の幅方向中央部とも一致する、に設置し、隣り合う外力付与機構間の間隔(La)を100mmとした。また本実施例では外力付与機構50a~50fとして、
図19に示す調整ボルト方式の外力付与機構50を用いた。さらにそれぞれの外力付与機構50a~50fの近傍には壁面部材21eまたは21fの変形量を測定する測定装置52a~52fとして接触式の変位計(ミツトヨ製ダイヤルゲージ)を設置した。本実施例では強化繊維シート2の走行前の壁面部材21e、21fの位置を変位計のゼロ点として、強化繊維シート2の走行中も変位計の値がゼロになるように、外力付与機構50a~50fで付与する外力の大きさを制御した。次に作製したプリプレグ3を走行方向に100mm分切り出し、さらに幅方向に3等分して100mm×100mmのプリプレグシートを3枚作製した。次にそれぞれのプリプレグシートの質量を測定し、質量の幅方向ばらつきを算出した。質量の幅方向ばらつきは、3枚のプリプレグシートの質量の最大値から最小値を引いた差を、3枚のプリプレグシートの質量の平均値で割った値(%)とした。
【0118】
本実施例で作製したプリプレグ3の質量の幅方向ばらつきを評価したところ、幅方向中央部の質量が幅方向端部の質量よりもわずかに大きく、前記3枚のプリプレグシートの質量の幅方向ばらつきは1.0%であった。
【0119】
[比較例1]
外力付与機構が適用されていない以外は実施例1と同様にしてプリプレグ3を作製した(
図13を参照)。作製したプリプレグ3の質量の幅方向ばらつきを、実施例1に記載の方法と同様の方法で評価したところ、幅方向中央部の質量が幅方向端部の質量よりもかなり大きく、前記3枚のプリプレグシートの幅方向ばらつきは6.2%であった。
【0120】
【0121】
実施例2~14および比較例2は
図20に示すヒートボルト方式の外力付与機構50’を用い、比較例3は外力付与機構を用いないで、強化繊維シート2に塗液(マトリックス樹脂)を付与し、CFRP用プリプレグ3の作製を行った例である。結果を表2~5にまとめた。
【0122】
[実施例2]
塗布部は
図9に示されるタイプの塗布部20cを用い、プリプレグ製造装置として
図2に示す装置構成にさらに厚み計を具備した装置(
図21を参照。実施例3から13および比較例2,3について同じ)を用いた。液溜り部22はテーパー状(上部テーパーは開き角度17°、下部テーパーは開き角度7°)のものを用いた。但し、狭窄部出口の幅は306mmとした。なお、狭窄部23の隙間Dは0.2mmなので、出口スリットのアスペクト比は1530となる。また、
図20に示す構造を持ったヒートボルト方式の外力付与機構を狭窄部を挟むように15本ずつ、20mmの間隔において設置した(
図18を参照)。外力付与機構のロッド55には外形がΦ10mmの円柱形であるSUS430(熱伝導率が15W/m・℃)、発熱体56にはカートリッジヒーターを用いた。
【0123】
プリプレグの作製において、引き出される強化繊維の糸束数は56とした以外は上記(4)項に記載の方法でプリプレグを作製した。
【0124】
なお、厚み計433aおよび433bにはベータ線厚さ計を用い、またプリプレグの作製に並行して厚み計433bと433aにより、塗布前後の厚みを測定し、厚みの差分から塗布された塗液の目付を求め、目標目付からの差異に応じて外力付与機構の発熱体の発熱量(あるいは冷却量)を調整しロッドを膨張あるいは伸縮せしめて、隙間Dを調整した。この時の各種安定走行評価項目を表2に示す。
【0125】
【0126】
[実施例3~9]
外力付与機構の本数とその間隔を表2の通りに変更した以外は実施例2と同様にプリプレグを作製し、評価を実施した。いずれの水準においても使用可能以上の評価のものを採取可能であった。結果を表2に示す。
【0127】
[比較例2]
図12に示す構成の塗布部30を用いた以外は、実施例2と同様にしてプリプレグを作製し、評価を実施した。走行開始直後に強化繊維シート2が塗布部30の内部で切断し、走行不可能となった。その後、塗布部30を分解して内部を確認したところ、液溜り部32と狭窄部23の境界33に大量の毛羽が詰まっていることを確認した。結果を表3に示す。この比較例の液溜り部32は鉛直方向下向きZに断面積が連続的に減少する領域を含まず、狭窄部23との境界33で断面積が断続的に急激に減少する構成であるため、毛羽がつまり、強化繊維シートが破断したと考えられる。
【0128】
[比較例3]
外力付与機構を用いなかった以外は実施例2と同様にしてプリプレグを作製し、評価を実施した。走行安定性に問題は無かったものの、プリプレグの幅方向の目付に大きな差異を生じた。結果を表3に示す。
【0129】
【0130】
[実施例10~13]
狭窄部出口の幅を表4の通りに変更した以外は実施例2と同様にしてプリプレグを作製し、評価を実施した。いずれの水準においても使用可能以上の評価のものを採取可能であった。結果を表4に示す。
【0131】
【0132】
[実施例14]
プリプレグ製造装置として
図2に示す装置構成にさらに厚み計を具備し、また、強化繊維シートとして強化繊維ファブリックが巻き出せるようにした装置(
図22を参照)の装置を用い、強化繊維ファブリックとして下記の炭素繊維織物を300mm幅にカットした炭素繊維織物を用い、塗布部の狭窄部23の隙間Dを0.3mmとした以外は実施例2と同様にしてプリプレグを作製し、評価を実施した。なお、この場合、出口スリットのアスペクト比は1020となる。結果を表5に示す。使用可能以上の評価のものを採取可能であった。
【0133】
<強化繊維ファブリック>
炭素繊維織物(東レ製“トレカ(登録商標)”クロス C6343B)
炭素繊維:トレカT300B(3K))
織組織:平織
経密度:12.5本/25mm、緯密度:12.5本/25mm
目付け:198g/m2、厚み:0.23mm
【0134】
【0135】
[実施例15、16]
実施例2および実施例3で得られた300mm幅プリプレグ/離型シートからなるシート状一体物をスリットし、幅7mmのプリプレグテープを得た(実施例2のプリプレグから得られた例を実施例15,実施例3のプリプレグから得られた例を実施例16とする)。これらのプリプレグテープは含浸が十分進んでいるため、スリッターのカッター刃への樹脂の付着は少ないものであった。
【0136】
[実施例17~20、参考例1]
実施例2~5で得られたプリプレグを6層積層し、オートクレーブを用いて180℃、6kgf/cm2(0.588MPa)で2時間硬化させ、CFRPを得た(実施例2のプリプレグから得られた例を実施例17,実施例3のプリプレグから得られた例を実施例18、実施例4のプリプレグから得られた例を実施例19,実施例5のプリプレグから得られた例を実施例20とする)。得られたCFRPは何れも引っ張り強度が2.8GPa~3.3GPaの範囲にあり、航空・宇宙用の構造材料として好適な機械特性を有していた。
【0137】
また、実施例2で用いた炭素繊維および塗液(マトリックス樹脂)を用い、従来のホットメルト法でプリプレグを作製した。作製したプリプレグをオートクレーブを用いて180℃、6kgf/cm2(0.588MPa)で2時間硬化させ、CFRPを得た。得られたCFRPの引っ張り強度2.93GPaであった(参考例1)。
【0138】
なお、CFRPの引っ張り強度は、国際公開WO2011/118106パンフレットに記載された方法と同様の方法で測定を行い、プリプレグ中の強化繊維の体積%を56.5%に規格化した値とした。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明の製造方法で得られるプリプレグは、CFRPに代表されるFRPとして、航空・宇宙用途や自動車・列車・船舶などの構造材や内装材、圧力容器、産業資材用途、スポーツ材料用途、医療機器用途、筐体用途、土木・建築用途など広く適用することができる。
【符号の説明】
【0140】
1 強化繊維
2 強化繊維シート
3 プリプレグ
4 マトリックス樹脂
5a、5b 離型シート
11 クリール
12 配列装置
13 搬送ロール
15 引き取りロール
16a,16b 離型シート供給装置
17 巻取り装置
20 塗布部
20a 別の実施形態の塗布部
20b 別の実施形態の塗布部
20c 別の実施形態の塗布部
20d 別の実施形態の塗布部
20e 別の実施形態の塗布部
21、21a、21b 壁面部材
21c、21d 別の形状の壁面部材
21e、21f 別の形状の壁面部材
21g、21h 別の形状の壁面部材
21i、21j 別の形状の壁面部材
22 液溜り部
22a 液溜り部のうち断面積が連続的に減少する領域
22b 液溜り部のうち断面積が減少しない領域
22c 液溜り部のうち断面積が不連続で急激に減少する領域
23 狭窄部
24a、24b 側板部材
25 出口
26 隙間
27、27a、27b 幅規制機構
28 シム
30 本発明とは異なる実施形態の塗布部
31a、31b 塗布部30の壁面部材
32 塗布部30の液溜り部
33 塗布部30の液溜り部のうち断面積が不連続で急激に減少する領域
50 調整ボルト方式の外力付与機構
50’ ヒートボルト方式の外力付与機構
50a~50f 外力付与機構
51a、51b 測定装置
52a~52f 測定装置
53 固定台座
54 調整ボルト
55 ロッド
56 発熱体
57 空洞部分
58 断熱材
B 液溜り部22の正面から奥に向かう方向
D 狭窄部の隙間
F 隙間Dを広げる方向の力
F’ 外力
G 幅規制を行う位置
H 液溜り部22の断面積が連続的に減少する鉛直方向高さ
L 液溜り部22の幅
L2 幅規制機構下端において幅規制機構により規制される幅
La 隣り合う外力付与機構間の間隔
M 壁面部材の下端(出口側)における厚み
R、Ra、Rb 渦流れ
T 循環流
W 狭窄部23の直下で測定したプリプレグ3の幅
Y 狭窄部23の幅
Z 強化繊維シート2の走行方向(鉛直方向下向き)
θ テーパー部の開き角度
411 架台・クリール
412 強化繊維ボビン
412’ 強化繊維ファブリックロール
413 方向転換ガイド
414 強化繊維
415 強化繊維配列装置
416 強化繊維シート
419 方向転換ロール
420 予熱装置
430 塗布部
433a、433b 厚さ計
441 方向転換ロール
442 離型シート(上)供給装置
443 離型シート(下)供給装置
446 離型シート
449 高張力引取りS字ロール
450 追含浸装置
451 熱板
452 加熱ニップロール
461 冷却装置
462 引き取り装置
463 離型シート(上)巻取装置
464 ワインダー
471 プリプレグ
472 プリプレグ/離型シートからなるシート状一体物