(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】医療材料用表面処理剤及び医療材料
(51)【国際特許分類】
A61L 27/34 20060101AFI20230314BHJP
G02C 7/04 20060101ALN20230314BHJP
【FI】
A61L27/34
G02C7/04
(21)【出願番号】P 2019550318
(86)(22)【出願日】2018-10-26
(86)【国際出願番号】 JP2018039871
(87)【国際公開番号】W WO2019083011
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2021-05-11
(31)【優先権主張番号】P 2017207914
(32)【優先日】2017-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【氏名又は名称】大杉 卓也
(72)【発明者】
【氏名】島村 佳久
(72)【発明者】
【氏名】坂元 伸行
【審査官】柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/119256(WO,A1)
【文献】特開平02-228309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 27/00-27/60
A61L 29/00-29/18
A61L 31/00-31/18
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(1)で表される、(メタ)アクリルアミド基を末端に有するポリオキシエチレン化合物を含有する
、医療材料のパーオキサイド基が形成された基材の表面に接触させて使用するための医療材料用表面処理剤であって、
該式(1)で表されるポリオキシエチレン化合物の濃度は0.01mol/L~1.0mol/Lである、処理剤。
【化1】
(aは0または1であり、nは9~1150であり、R
1は水素原子またはメチル基を示す。)
【請求項2】
下記の式(1')で表される構成単位を表面に有する医療材料
であって、
【化2】
(aは0または1であり、nは9~1150であり、R
1は水素原子またはメチル基を示す。)
ここで、該式(1')は、下記の式(1)で表される、(メタ)アクリルアミド基を末端に有するポリオキシエチレン化合物を0.01mol/L~1.0mol/Lの濃度で含有する医療材料用表面処理剤を、医療材料のパーオキサイド基が形成された基材の表面に接触させて表面処理することにより得られたものである、
【化3】
(aは0または1であり、nは9~1150であり、R
1
は水素原子またはメチル基を示す。)
医療材料。
【請求項3】
前記aは1である、請求項1に記載の医療材料用表面処理剤。
【請求項4】
前記nは9~225であり、かつ前記R
1はメチル基である、請求項1又は3に記載の医療材料用表面処理剤。
【請求項5】
前記aは1であり、前記nは9~225であり、かつ前記R
1はメチル基である、請求項1に記載の医療材料用表面処理剤。
【請求項6】
前記aは1である、請求項2に記載の医療材料。
【請求項7】
前記nは9~225であり、かつ前記R
1はメチル基である、請求項2又は6に記載の医療材料。
【請求項8】
前記aは1であり、前記nは9~225であり、かつ前記R
1はメチル基である、請求項2に記載の医療材料。
【請求項9】
前記表面にパーオキサイド基が形成されている、請求項2、6~8のいずれか1に記載の医療材料。
【請求項10】
前記構成単位を含むグラフト高分子鎖を前記表面に有する、請求項2、6~9のいずれか1に記載の医療材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療材料用表面処理剤及び医療材料に関する。
本出願は、参照によりここに援用されるところの日本出願特願2017-207914号優先権を請求する。
【背景技術】
【0002】
人工臓器、カテーテル、眼用レンズ等の医療機器に使われる素材には、ポリエチレン、ポリウレタン、アクリル樹脂等の樹脂製のものが広く利用されている。しかし、これらの素材からなる医療機器を生体内に接触させる場合、炎症や血栓形成などの異常反応が生じることがあった。また、眼用レンズ、特にコンタクトレンズの使用には、装用時に眼の乾燥感や異物感等の不快な症状を伴うことがあった。この不快感の原因は、レンズ表面の疎水性により、レンズ表面の涙液が破綻し、眼の乾燥や角膜、眼瞼との摩擦が生じるためである。さらには、涙液破綻やそれに伴う眼球組織との摩擦による角膜障害が生じる問題が知られていた。これらの問題を解決する技術として、医療材料の表面を化学的に改質して異常反応を抑制する技術が発展してきた。
【0003】
医療材料表面の改質方法として、グラフト重合を用いる方法はこの技術分野では周知である。
特許文献1では、シリコーンやラテックスの素材にアクリルアミドやポリオキシエチレンアクリレートをグラフト重合させて表面処理をすることで、表面を親水性に改質する方法が示されている。
【0004】
特許文献2では、ポリシロキサン等の基材表面にメタクリル酸、メタクリル酸ナトリウム、ビニルスルホン酸ナトリウム、スチレンスルホン酸ナトリウムをグラフト重合し、基材表面の親水性を改善する方法が示されている。
【0005】
特許文献3では、特殊な双性イオン性基含有モノマーをシリコーンハイドロゲル基材にグラフト重合させることで、基材表面の親水性および潤滑性を向上させる方法が示されている。
【0006】
特許文献4では、フリーラジカル重合性基を有する重量平均分子量が約300から500のポリオキシエチレンメタクリレートを重合して得られる水溶性ポリマーをハイドロゲルレンズのパッケージ保存液へあらかじめ混合し、オートクレーブ処理することでレンズ表面に付着させる方法や、この水溶性ポリマーをあらかじめモノマー混合物中へ溶解させておき、モノマー混合物を重合してレンズを得ることで、表面を親水性に改質させる方法が示されている。
【0007】
特許文献5では、ポリシロキサンコンタクトレンズ表面にN,N-ジメチルアクリルアミドをグラフト重合し、酸素透過性を維持したままコンタクトレンズ表面の親水性を向上させる方法が示されている。
【0008】
しかしながら、(メタ)アクリルアミド基を末端に有するポリオキシエチレン化合物を用いて医療材料表面の潤滑性及び親水性を高める方法は未だ知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特表2003-510378号公報
【文献】特表平9-506665号公報
【文献】特開2011-81394号公報
【文献】特表2008-520668号公報
【文献】特開平2-228309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、医療材料表面の潤滑性及び親水性を高める医療材料用表面処理剤、並びに、優れた表面親水性及び表面潤滑性を有する医療材料、特にコンタクトレンズ、更にはシリコーンコンタクトレンズを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、下記式(1)で表される、(メタ)アクリルアミド基を末端に有するポリオキシエチレン化合物(以後、「本発明の化合物」と称する場合がある)を含有する医療材料用表面処理剤を使用した本発明の化合物に基づく構成単位を表面に有する医療材料は、表面親水性及び表面潤滑性を有することを確認して、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記の通りである。
【0012】
1.下記の式(1)で表される、(メタ)アクリルアミド基を末端に有するポリオキシエチレン化合物を含有する医療材料用表面処理剤。
【化1】
(aは0または1であり、nは9~1150であり、R
1は水素原子またはメチル基を示す。)
2.下記の式(1’)で表される構成単位を表面に有する医療材料。
【化2】
(aは0または1であり、nは9~1150であり、R
1は水素原子またはメチル基を示す。)
3.前記構成単位は共有結合を介して表面に有する、前項2に記載の医療材料。
4.前記構成単位を含むグラフト高分子鎖を表面に有する、前項2又は3に記載の医療材料。
5.下記の式(1’)で表される構成単位を含むグラフト高分子鎖を表面に有するシリコーンコンタクトレンズの製造方法。
【化3】
(aは0または1であり、nは9~1150であり、R
1は水素原子またはメチル基を示す。)
6.下記の式(1’)で表される構成単位を含むグラフト高分子鎖を表面に有する医療材料の製造方法。
【化4】
(aは0または1であり、nは9~1150であり、R
1は水素原子またはメチル基を示す。)
7.下記の式(1)で表される、(メタ)アクリルアミド基を末端に有するポリオキシエチレン化合物を使用する医療材料の表面処理方法。
【化5】
(aは0または1であり、nは9~1150であり、R
1は水素原子またはメチル基を示す。)
8.下記の式(1)で表される、(メタ)アクリルアミド基を末端に有するポリオキシエチレン化合物を医療材料用表面処理剤の製造としての使用。
【化6】
(aは0または1であり、nは9~1150であり、R
1は水素原子またはメチル基を示す。)
9.下記の式(1)で表される、(メタ)アクリルアミド基を末端に有するポリオキシエチレン化合物を医療材料用表面処理剤としての使用。
【化7】
(aは0または1であり、nは9~1150であり、R
1は水素原子またはメチル基を示す。)
10.医療材料の表面処理用である下記の式(1)で表される(メタ)アクリルアミド基を末端に有するポリオキシエチレン化合物。
【化8】
(aは0または1であり、nは9~1150であり、R
1は水素原子またはメチル基を示す。)
【発明の効果】
【0013】
本発明の医療材料用表面処理剤で表面処理された医療材料は、表面親水性及び表面潤滑性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
[本発明の化合物]
本発明の医療材料用表面処理剤は、下記式(1)で表される、(メタ)アクリルアミド基を末端に有するポリオキシエチレン化合物を含む。単独又は2種以上の式(1)で表される、(メタ)アクリルアミド基を末端に有するポリオキシエチレン化合物は、該医療材料用表面処理剤に含まれている。
【0015】
【0016】
式(1)中、aは0または1であり、nは9~1150であり、R1は水素原子またはメチル基を示す。aが2以上であると、高分子の疎水性が高くなり十分な親水性および潤滑性を付与できなくなる。また、重合度nが8以下であると、コンタクトレンズ表面に十分な親水性および潤滑性を付与できず、nが1151以上であると、粘度が高くなりコンタクトレンズ表面に均一に表面処理することが難しくなり、コンタクトレンズの機能を阻害してしまう。nは、9~1150の範囲内であれば特に限定されず、例えば9~1000、9~800、9~600、9~400、9~225、9~21、9~46、21~46、46~225、46~112又は112~225であってもよく、好ましくは17~500であり、より好ましくは21~230であり、最も好ましくは21~120である。
本発明の化合物の重量平均分子量は、重合度nが上記の範囲内であれば特に限定されないが、好ましくは500~10,000、1,000~5,000又は1,000~2,500である。
【0017】
本発明の医療材料用表面処理剤とは、医療材料並びに医療材料を材質(又は表面材質)とする医療機器等に適用可能な表面処理剤である。
なお、本発明の医療材料用表面処理剤は、樹脂、金属など適用可能な医療材料に制限が無く、それゆえ人工臓器やカテーテルなど様々な医療機器等に適用可能である。
より詳しくは、本発明に用いられる医療材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリメチルペンテン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、ナイロン、シリコーン、セルロース、酢酸セルロース、ポリスルホン、フッ素樹脂などの各種プラスチック素材がよい。
プラスチック素材の他には、医療材料としては、SUS304、SUS316、SUS316L、SUS420J2、SUS630などの各種ステンレス、金、白金、銀、銅、ニッケル、コバルト、チタン、綴、アルミニウム、スズ、あるいはニッケル-チタン合金、ニッケル-コバルト合金、コバルト-クロム合金、亜鉛-タングステン合金等の各種合金などを含む金属材料が挙げられる。
本発明で例示される医療機器としては、特に限定されないが、体液や血液が接触する医療機器が含まれ、例えば、コンタクトレンズ、人工心臓、人工肺、人工血管、眼内レンズ、ガイドワイヤー、カテーテル等が挙げられる。
一例としてコンタクトレンズ、特にシリコーンコンタクトレンズに関して以下に詳細を記す。
【0018】
[本発明の医療材料用表面処理剤に用いる本発明の化合物の合成方法]
本発明の医療材料用表面処理剤に用いる本発明の化合物の合成方法は、特に限定されないが、以下の方法を例示することができる。
ポリエチレングリコールモノメチルエーテル{参照:下記式(2)}の水酸基を公知の方法により(メタ)アクリルアミド化することにより式(1)で表される本発明の化合物を得ることができる。
【0019】
【0020】
具体的には、式(2)で表されるポリエチレングリコールモノメチルエーテルに含まれる水分を、例えばトルエン等の有機溶媒との共沸により除去し、フタルイミド、例えばアゾジカルボン酸ジイソプロピル等のアゾ系化合物を加え、適切な温度条件下反応が完了するまで撹拌する。その後、適宜精製により式(3)で表されるポリオキシエチレン中間体Aを得る。
【0021】
【0022】
次に、式(3)で表されるポリオキシエチレン中間体Aを、例えばメタノール等のプロトン性溶媒に溶解後、例えばエチレンジアミン等のジアミド系化合物を加え、適切な温度条件下で反応が完了するまで撹拌する。その後、適宜精製により式(4)で表されるポリオキシエチレン中間体Bを得る。
【0023】
【0024】
次に、式(4)で表されるポリオキシエチレン中間体Bに含まれる水分を、例えばトルエン等の有機溶媒との共沸により除去し、例えばアクリル酸クロライド等の(メタ)アクリル酸系化合物、例えばトリエチルアミン等のアミン系化合物を加え、適切な温度条件下で反応が完了するまで撹拌する。その後、適宜精製により式(5)で表される本発明の化合物を得ることができる。
【0025】
【化13】
(nは9~1150であり、R
1は水素原子またはメチル基を示す。)
【0026】
また、他の合成方法としては、式(2)で表されるポリエチレングリコールモノメチルエーテルを、水に溶解後、例えば水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物及びアクリロニトリルを加え、0℃から室温の間の温度条件下で反応が完了するまで撹拌する。その後、溶液のpHを4~9に調整し、例えば酢酸エチル等の有機溶媒を加え、未反応のアクリロニトリル及び反応副生成物を抽出除去し、例えばクロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶媒を加え、抽出とそれに続く濃縮操作により式(6)で表されるポリオキシエチレン中間体Cを得る。
【0027】
【0028】
次に、式(6)で表されるポリオキシエチレン中間体Cを、例えばトルエン等の芳香族炭化水素系溶媒に溶解後、ラネーニッケル等の当業者により一般的に知られている水素還元用触媒を加え、アンモニア及び水素雰囲気下、適切な圧力及び温度条件下で反応が完了するまで撹拌する。その後、溶媒を除去して式(7)で表されるポリオキシエチレン中間体Dを得る。
【0029】
【0030】
その後、式(4)で表される化合物から式(5)で表される化合物を得る方法と同様の方法により脱水及び合成し、適宜精製することにより式(8)で表される本発明の化合物を得ることができる。
【0031】
【化16】
(nは9~1150であり、R
1は水素原子またはメチル基を示す。)
【0032】
[本発明の化合物に基づく構成単位を表面に有するシリコーンコンタクトレンズ]
シリコーンコンタクトレンズとは、その構成要素にシロキサン結合を有しているレンズであり、シリコーンハイドロゲルレンズとシリコーンゴムレンズに大別される。本発明の化合物に基づく(本発明の化合物から誘導される)構成単位を表面に有するシリコーンコンタクトレンズは、下記の式(1’)で表される構成単位を含むグラフト高分子鎖を表面に有する。より詳しくは、本発明の化合物に基づく構成単位を表面に有するシリコーンコンタクトレンズは、下記の式(1’)で表される構成単位を含むグラフト高分子鎖が表面に化学修飾されている。下記(1’)で表される構成単位は、単独又は2種以上であってもよい。
【0033】
【0034】
式(1’)中、aは0または1であり、nは9~1150であり、R1は水素原子またはメチル基を示す。aが2以上であると、高分子の疎水性が高くなり十分な親水性および潤滑性を付与できなくなる。aは、0または1であれば特に限定されない。また、nが8以下であると、コンタクトレンズ表面に十分な親水性および潤滑性を付与できず、nが1151以上であると、粘度が高くなりコンタクトレンズ表面に均一に表面処理することが難しくなり、コンタクトレンズの機能を阻害してしまう。nは、9~1150の範囲内であれば特に限定されず、例えば9~1000、9~800、9~600、9~400、9~225、9~21、9~46、21~46、46~225、46~112又は112~225であってもよく、好ましくは17~500であり、より好ましくは21~230であり、最も好ましくは21~120である。
【0035】
○表面処理対象がシリコーンハイドロゲルの場合
本発明の化合物に基づく構成単位を含むグラフト高分子を表面に有するシリコーンハイドロゲルのコンタクトレンズ基材に用いるシリコーン単量体は、特に限定されないが、以下を例示することができ、好ましくは、メタクリロイルオキシエチルコハク酸3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピル(参照:WO2010/082659号)である。
ポリジメチルシロキサン骨格を有する(メタ)アクリレート類としては、α‐メチル‐ω‐メタクリロイルオキシプロピルポリジメチルシロキサン(重量平均分子量1,000)、α,ω‐ジメタクリロイルオキシプロピルポリジメチルシロキサン(重量平均分子量1,000)等が挙げられ、例えば、JNC Corporationから販売されているFM‐0711やFM‐7711等を用いることができる。
トリメチルシロキシ基を有する(メタ)アクリレート類としては、3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピル(メタ)アクリレート、3-[ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル]プロピル(メタ)アクリレート、3-[(トリメチルシロキシ)ジメチルシリル]プロピル(メタ)アクリレート、[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]メチル(メタ)アクリレート、[ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル]メチル(メタ)アクリレート、[(トリメチルシロキシ)ジメチルシリル]メチル(メタ)アクリレート、メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセロール(メタ)アクリレート、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセロール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
トリメチルシロキシ基を有する(メタ)アクリルアミド類としては、3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピル(メタ)アクリルアミド、3-[ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル]プロピル(メタ)アクリルアミド、3-[(トリメチルシロキシ)ジメチルシリル]プロピル(メタ)アクリルアミド、[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]メチル(メタ)アクリルアミド、[ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル]メチル(メタ)アクリルアミド、[(トリメチルシロキシ)ジメチルシリル]メチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
トリメチルシロキシ基を有するスチレン類としては、[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]スチレン、[ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル]スチレン、[(トリメチルシロキシ)ジメチルシリル]スチレン等が挙げられる。
トリメチルシロキシ基を有するカルバミン酸ビニル類としては、N-[3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピル]カルバミン酸ビニル、N-[3-[ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル]プロピル]カルバミン酸ビニル、N-[3-[(トリメチルシロキシ)ジメチルシリル]プロピル]カルバミン酸ビニル等が挙げられる。
メタクリロイルオキシエチルコハク酸3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルを用いる場合、重合成分は、シリコーン単量体のみでも良いが、通常、シリコーン単量体と重合可能なその他の単量体を含む。この場合、シリコーン単量体の使用量は、シリコーンコンタクトレンズ基材の単量体組成物100質量部に対して、通常10~80質量部、好ましくは40~80質量部である。
【0036】
さらに、シリコーンハイドロゲルのコンタクトレンズに用いる単量体として一般に用いられるその他の単量体を適宜選択して用いることが出来る。
シリコーンハイドロゲルのコンタクトレンズ基材に用いるその他の単量体は、コンタクトレンズの含水率を増強させることを目的として、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸、ビニル安息香酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-メチル-N-ビニルアセトアミド、N-ビニル-2-ピロリドン、2-((メタ)アクリロイルアミノ)エチル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウム-α-N-メチルカルボキシベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウム-α-N-エチルカルボキシベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウム-α-N-プロピルスルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウム-α-N-ブチルスルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルアミノプロピル-N,N-ジメチルアンモニウム-α-N-ブチルスルホベタイン等の水溶性単量体が好ましく挙げられる。中でも、コンタクトレンズの含水率の増強性の観点から、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートおよびN-ビニル-2-ピロリドンがより好ましい。これらの単量体を用いる場合の使用量は、シリコーンハイドロゲルのコンタクトレンズ基材の単量体組成物100質量部に対して通常10~50質量部、好ましくは20~40質量部である。
【0037】
シリコーンハイドロゲルのコンタクトレンズ基材に用いるその他の単量体は、コンタクトレンズの柔軟性をコントロールすることを目的として、例えば、ポリアルキレングリコールビス(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリス(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラキス(メタ)アクリレート、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ-n-プロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ-n-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-(メタ)アクリロイルピペリジン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルオキサゾリドン、1-ビニルイミダゾール、N-ビニルカルバゾール、ビニルピリジン、ビニルピラジンが挙げられる。これらの単量体を用いる場合の使用量は、シリコーンハイドロゲルのコンタクトレンズ基材の単量体組成物100質量部に対して通常10~50質量部、好ましくは20~40質量部である。
【0038】
シリコーンハイドロゲルのコンタクトレンズ基材に用いるその他の単量体は、コンタクトレンズの形状維持性を高めることを目的として、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;両末端に炭素-炭素不飽和結合を有するシロキサンマクロモノマーやエチレングリコールジメタクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類;トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート等のハロゲン化アルキル(メタ)アクリレート類;スチレン、α-メチルスチレン、ビニルピリジン等の芳香族ビニルモノマー類;酢酸ビニル等のビニルエステル類が挙げられる。これらの単量体を用いる場合の使用量は、シリコーンハイドロゲルのコンタクトレンズ基材の単量体組成物100質量部に対して通常0.01~30質量部、好ましくは0.1~15質量部である。
【0039】
シリコーンハイドロゲルのコンタクトレンズ基材は、各単量体を混合し、過酸化物、アゾ化合物に代表される熱重合開始剤や、光重合開始剤を適宜添加して作製することができる。熱重合を行う際は、所望の反応温度に対して最適な分解特性を有するものを選択して使用することが出来る。例えば、10時間半減期温度が40~120℃の過酸化物やアゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物を用いることが出来る。光重合開始剤としては、例えば、カルボニル化合物、硫黄化合物、ハロゲン化合物もしくは金属塩を挙げることが出来る。これらの重合開始剤は、単独で用いても2種類以上を混合して用いても良い。好ましくは重合成分100質量部に対して0.05~2質量部の割合で使用することが好ましい。
【0040】
○表面処理対象がシリコーンゴムの場合
本発明の化合物に基づく構成単位を含むグラフト高分子を表面に有するシリコーンゴムのコンタクトレンズ基材に用いるシリコーン単量体は、コンタクトレンズの酸素透過性を高めることを目的として、ポリオルガノシロキサンが挙げられる。例えば、重量平均分子量が330の両末端シラノール変性ポリジメチルシロキサン(信越化学工業株式会社製)が好ましい。このシリコーン単量体の使用量は、シリコーンゴムのコンタクトレンズ基材の単量体組成物100質量部に対して通常60~100質量部、好ましくは75~95質量部であり、モル比率では75~95%が好ましい。
【0041】
シリコーンゴムのコンタクトレンズ基材は、各構成単位を混合し、金属アルコキシドに代表される硬化性触媒を適宜添加して作製することができる。金属アルコキシドとしては、例えば、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムエトキシドを挙げることが出来る。硬化性触媒は、単独で用いても2種類以上を混合して用いても良い。硬化性触媒はシリコーンゴムのコンタクトレンズ基材の単量体組成物に対してモル比率では通常20%未満、好ましくは10%未満の割合で使用することが好ましい。
【0042】
シリコーンゴムのコンタクトレンズ基材の製造は、溶媒の存在下で行うことができる。溶媒としては、室温で容易に揮発しないものが好ましく、例えば、トルエンが挙げられる。
【0043】
<本発明の化合物に基づく構成単位を含むグラフト高分子を表面に有するシリコーンコンタクトレンズの製造方法>
本発明の化合物に基づく構成単位を含むグラフト高分子を表面に有するシリコーンコンタクトレンズの製造方法は、式(1’)で表される構成単位をコンタクトレンズ基材の表面に有すれば、特に限定されないが、以下の工程を含む製造方法を例示することができる。
【0044】
○コンタクトレンズ基材の表面処理工程
本発明のシリコーンコンタクトレンズの製造方法では、式(1’)で表される構成単位をコンタクトレンズ基材の表面に化学修飾(例えば、共有結合)を介して形成(被膜)させるために、該基材の表面に過酸化物(パーオキサイド基)を形成させる。
【0045】
工程1:コンタクトレンズ基材(好ましくは、含水フィルム形状のコンタクトレンズ基材)の表面にラジカルを形成させる。ラジカル形成方法は、例えば、自体公知のプラズマ放電処理、エキシマ光照射処理等で行うことができる。
一例としてのプラズマ放電処理では、減圧下又は常圧下(1.3Pa~0.1MPa)、酸素ガス雰囲気下、不活性ガス雰囲気下又は空気雰囲気下にて高周波出力10W~500Wの範囲で30秒~30分間行う。
エキシマ光照射処理では、172nmの真空紫外光照射を30秒~60分間行う。
工程2:ラジカルを表面に形成したコンタクトレンズ基材を酸素ガス雰囲気下又は空気雰囲気下に1分~2時間置き、該表面に過酸化物(パーオキサイド基)を形成させる。
【0046】
○パーオキサイド基が表面に形成されたコンタクトレンズ基材と式(1)で表される、(メタ)アクリルアミド基を末端に有するポリオキシエチレン化合物を含む溶液(混合溶液も含む)の接触工程
パーオキサイド基が表面形成されたコンタクトレンズ基材と式(1)で表される、(メタ)アクリルアミド基を末端に有するポリオキシエチレン化合物を含む混合溶液(以後、「本発明の医療材料用表面処理剤」と称する場合がある)を接触させる。本発明の医療材料用表面処理剤は、少なくとも式(1)で表される本発明の化合物を含む。
接触方法は、特に限定されないが、本発明の医療材料用表面処理剤がコンタクトレンズ基材の表面全体に十分に接触できるようにするために、該基材を該処理剤に浸漬させることが好ましい。
【0047】
【化18】
(aは0または1であり、nは9~1150であり、R
1は水素原子またはメチル基を示す。)
【0048】
本発明の医療材料用表面処理剤において、本発明の化合物の濃度は、好ましくは、0.01mol/L~1.0mol/Lであり、例えば0.01mol/L~0.7mol/L、0.01mol/L~0.3mol/L、0.01mol/L~0.1mol/L、0.01mol/L~0.05mol/Lであってもよい。
さらに、本発明の医療材料用表面処理剤において、本発明の化合物を含む全単量体の濃度は、好ましくは、0.01mol/L~3.0mol/Lである。
【0049】
本発明の医療材料用表面処理剤では、本発明の化合物以外には、重合増感剤、並びに、希釈溶媒として水及び/又は有機溶媒を含有しても良い。さらに必要に応じて親水性単量体(特に、親水性のエチレン性不飽和単量体)、架橋性単量体及び/又は連鎖移動剤を含有することができる。
【0050】
親水性単量体としては、以下を例示することができるが特に限定されず、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
(メタ)アクリル酸、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシへキシル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン等の各種(メタ)アクリレート。
2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、2-(メタ)アクリロイルアミノエチルホスホリルコリン、N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウム-α-N-メチルカルボキシベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウム-α-N-エチルカルボキシベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウム-α-N-プロピルスルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウム-α-N-ブチルスルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルアミノプロピル-N,N-ジメチルアンモニウム-α-N-ブチルスルホベタイン等の各種両性イオン型(メタ)アクリレート。
ポリオキシエチレンモノ(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレンモノ(メタ)アクリレート等の各種ポリオキシアルキレンモノ(メタ)アクリレート。
N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-アクリロイルモルホリン、N-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニルピペリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルカプリロラクタム、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ピロリドン等の各種の重合性アミド。
好ましい、親水性単量体としては、ポリオキシエチレンモノメタクリレート、ポリオキシエチレンモノアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリルアミド、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、N-ビニル-2-ピロリドン、メタクリル酸、N,N-ジメチルアクリルアミドを例示することができる。
【0051】
本発明の医療材料用表面処理剤において、親水性単量体の濃度は0mol/L~3.0mol/L、好ましくは0mol/L~2.99mol/Lであり、0mol/L~3.0mol/Lの範囲では(メタ)アクリルアミド基を末端に有するポリオキシエチレン化合物の配合効果を得ることができる。
【0052】
架橋性単量体としては、以下を例示することができるが特に限定されず、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ビス((メタ)アクリロイルオキシ)ブタン、1,6-ビス((メタ)アクリロイルオキシ)ヘキサン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート、ジビニルベンゼン。
【0053】
有機溶媒としては、以下を例示することができるが特に限定されず、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
メタノール、エタノール等の各種のアルコール、アセトン、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、塩化メチレン、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、tert-アミルアルコール、3,7-ジメチル-3-オクタノール、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、フタル酸ジオクチル、二酢酸エチレングリコール、ジエチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、トリエチレングリコールジアルキルエーテル、テトラエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールブロック共重合体、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールランダム共重合体。
【0054】
連鎖移動剤としては、以下を例示することができるが特に限定されず、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
α-メチルスチレンダイマー、n-ブチルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、n-ラウリルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン等の各種のメルカプタン類。
四塩化炭素、四臭化炭素等のハロゲン化炭化水素類。
その他として、ベンジルジチオベンゾエート、1-フェニルエチルジチオベンゾエート、2-フェニル-2-プロピニルジチオベンゾエート、1-アセトキシエチルジチオベンゾエート、ベンジルジチオアセテート、t-ブチルジチオベンゾエート、2-シアノ-2-プロピニルジチオベンゾエート。
連鎖移動剤が本発明の医療材料用表面処理剤に含まれる場合には、グラフト重合後において、グラフト重合鎖長末端の連鎖移動剤由来の残基が生じる場合がある。この場合には、硫黄含有化合物やアルキルアルコールと反応させ、除去又は変換することが好ましい。
【0055】
重合増感剤としては、例えば、9,10-ビス(n-オクタノイルオキシ)アントラセン等のアントラセン骨格を有する化合物を例示することができるが特に限定されず、単独又は2種以上を混合して用いることができる。本発明の医療材料用表面処理剤において、重合増感剤は、好ましくは混合溶液成分100質量部に対して0.01~2質量部の割合で使用することが好ましい。
【0056】
○式(1)で表される、(メタ)アクリルアミド基を末端に有するポリオキシエチレン化合物をコンタクトレンズ基材の表面にグラフト重合させる工程
本発明のシリコーンコンタクトレンズの製造方法では、特に限定されないが、以下の工程を含むことを例示することができる。
【0057】
パーオキサイド基が表面に形成されたコンタクトレンズ基材と本発明の医療材料用表面処理剤を接触させた状態において、該表面に紫外線(200nm~450nm)を照度0.5mW/cm2~100mW/cm2で、1分~1時間照射して、紫外線照射中の医療材料用表面処理剤の温度を15℃~90℃でグラフト重合を行う。
【0058】
上記グラフト重合後において、必要に応じて、未反応成分の除去を行う。除去方法は、自体公知のソックスレー抽出法等を使用する。
以上により、本発明の化合物に基づく構成単位を含むグラフト高分子を表面に有するシリコーンコンタクトレンズを製造することができる。
【0059】
本発明は、下記の式(1’)で表される構成単位を含むグラフト高分子鎖を表面に有するシリコーンコンタクトレンズの製造方法も対象とする。
該製造方法は、以下の工程を含む。
(I)コンタクトレンズ基材の表面処理工程、
(II)(I)で得たコンタクトレンズ基材と、下記の式(1)で表される、(メタ)アクリルアミド基を末端に有するポリオキシエチレン化合物を含む混合溶液との接触工程、及び
(III)下記の式(1)で表される、(メタ)アクリルアミド基を末端に有するポリオキシエチレン化合物を前記コンタクトレンズ基材の表面にグラフト重合する工程。
該製造方法は、さらに以下の工程を含んでもよい。
(IV)未反応成分の除去工程。
【0060】
【化19】
(aは0または1であり、nは9~1150であり、R
1は水素原子またはメチル基を示す。)
【0061】
【化20】
(aは0または1であり、nは9~1150であり、R
1は水素原子またはメチル基を示す。)
【0062】
本発明は、下記の式(1’)で表される構成単位を含むグラフト高分子鎖を表面に有する医療材料の製造方法も対象とする。
該製造方法は、以下の工程を含む。
(I)医療材料の表面処理工程、
(II)(I)で得た医療材料と、下記の式(1)で表される、(メタ)アクリルアミド基を末端に有するポリオキシエチレン化合物を含む混合溶液との接触工程、及び
(III)下記の式(1)で表される、(メタ)アクリルアミド基を末端に有するポリオキシエチレン化合物を前記医療材料の表面にグラフト重合する工程。
該製造方法は、さらに以下の工程を含んでもよい。
(IV)未反応成分の除去工程。
【0063】
当該医療材料の製造方法の各工程の詳細は、上述の<本発明の化合物に基づく構成単位を含むグラフト高分子を表面に有するシリコーンコンタクトレンズの製造方法>と同様である。
【0064】
【化21】
(aは0または1であり、nは9~1150であり、R
1は水素原子またはメチル基を示す。)
【0065】
【化22】
(aは0または1であり、nは9~1150であり、R
1は水素原子またはメチル基を示す。)
【0066】
本発明は、下記の式(1)で表される、(メタ)アクリルアミド基を末端に有するポリオキシエチレン化合物を使用する医療材料の表面処理方法も対象とする。
【0067】
【化23】
(aは0または1であり、nは9~1150であり、R
1は水素原子またはメチル基を示す。)
【0068】
本発明は、下記の式(1)で表される、(メタ)アクリルアミド基を末端に有するポリオキシエチレン化合物を医療材料用表面処理剤の製造としての使用も対象とする。
【0069】
【化24】
(aは0または1であり、nは9~1150であり、R
1は水素原子またはメチル基を示す。)
【0070】
本発明は、下記の式(1)で表される、(メタ)アクリルアミド基を末端に有するポリオキシエチレン化合物を医療材料用表面処理剤としての使用も対象とする。
【0071】
【化25】
(aは0または1であり、nは9~1150であり、R
1は水素原子またはメチル基を示す。)
【0072】
本発明は、医療材料の表面処理用である下記の式(1)で表される、(メタ)アクリルアミド基を末端に有するポリオキシエチレン化合物も対象とする。
【0073】
【化26】
(aは0または1であり、nは9~1150であり、R
1は水素原子またはメチル基を示す。)
【0074】
本発明の式(1)で表される、(メタ)アクリルアミド基を末端に有するポリオキシエチレン化合物の好ましい例示は以下の通りであるが、特に限定されない。
(1)R1:水素原子、a:0、n:約45
(2)R1:水素原子、a:1、n:約46
(3)R1:水素原子、a:0、n:約21
(4)R1:水素原子、a:1、n:約22
(5)R1:メチル基、a:0、n:約21
(6)R1:水素原子、a:0、n:約9
(7)R1:水素原子、a:0、n:約112
(8)R1:水素原子、a:0、n:約225
(9)R1:メチル基、a:1、n:約22
また、本発明の式(1)で表される、(メタ)アクリルアミド基を末端に有するポリオキシエチレン化合物は、2種類以上を組み合わせてもよく、組み合わせは特に限定されないが、例えば、上記(1)~(9)から選択した2以上の本発明の化合物の組み合わせでもよく、上記(3)及び(7)の組み合わせ、上記(3)及び(8)の組み合わせでもよい。
【実施例】
【0075】
本発明の医療材料用表面処理剤で表面処理された医療材料を実施例に基づいてさらに詳細に説明する。
【0076】
[実施例1-1]
(ポリオキシエチレン中間体1の合成)
温度計、窒素吹き込み管、撹拌機、Dean-Stark管及び冷却管を付した1L四つ口フラスコに、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(重量平均分子量約2,000, n=約45)を200g(100mmol)、トルエン600gを加え、撹拌、窒素吹込みをしながら40℃に加温して溶解した。110℃に昇温し、トルエンと共沸させながら約300gの留分を抜き取り、脱水を行った。40℃まで冷却し、クロロホルム1.0kgを加え、フタルイミド44g(300mmol)、トリフェニルホスフィン79g(300mmol)、アゾジカルボン酸ジイソプロピル61g(300mmol)を加え、室温で2時間反応させた。その後、酢酸エチル2.0kgに40℃で溶解し、室温に冷却後n‐ヘキサン1.0kgを加えて結晶化し、濾取した結晶をn‐ヘキサン1.0kgで洗浄した後、結晶を濾取して真空下で乾燥した。
これにメタノール700g、エチレンジアミン78g(1.0mol)を加え、60℃で4時間反応させた。これにトルエン2.0kg、吸着剤(キョーワード700、協和化学工業(株)製、商品名)50gを加え、40℃で30分間撹拌し、吸着処理を行い、その後濾過した。40℃、微減圧下で約2.0kgの留分を抜き取り、その後室温まで冷却し、これにn‐ヘキサン1.0kgを加えて結晶化した。結晶を濾取した後、酢酸エチル2.0kgに40℃で溶解し、室温に冷却後n‐ヘキサン1.0kgを加えて結晶化し、濾取した結晶をn‐ヘキサン1.0kgで洗浄した。結晶を濾取して真空下で乾燥して、重量平均分子量約2,000の式(9)で表されるポリオキシエチレン中間体1を171g得た。合成した式(9)で表されるポリオキシエチレン中間体1の重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)で決定した。詳細には、検出器には示唆屈折計を用い、GPCカラムとしてはSHODEX KF801L、KF803L及びKF804L(各カラムサイズはφ8mm×300mm)を3本直列に繋ぎ、カラムオーブンの温度を40℃とし、溶離液としてはテトラヒドロフランを用い、流速は1分当たり1mLとし、試料の濃度は0.1質量%とし、抽入容量は0.1mLとして測定を行った。また、得られた化合物の分子構造を
1H-NMRで確認した。以下に
1H-NMRの分析結果を示す。なお、重合度nは、GPCから決定した重量平均分子量をエチレンオキシドの式量で除することで算出した。
核磁気共鳴スペクトル(NMR)の測定には、JMN-ECS-400(FT-NMR,株式会社JEOL RESONANCE製)を用いて測定した。溶媒は特記しない限り重クロロホルムを用い、化学シフトはテトラメチルシラン(TMS)を内部標準として用いた。以下の実施例1-2~1-5についても同様である。
1H-NMR(CDCl
3)δ(ppm):3.08(2H,t,-C
H
2NH
2)、3.38(3H,s,-OC
H
3)、3.54-3.86(215H,m,-O(C
H
2C
H
2O)
n-C
H
2CH
2NH
2)。
【化27】
【0077】
[実施例1-2]
(ポリオキシエチレン化合物1の合成)
温度計、窒素吹き込み管、撹拌機、Dean-Stark管及び冷却管を付した1L四つ口フラスコに、式(9)で表されるポリオキシエチレン中間体1(重量平均分子量約2,000, n=約45)を200g(100mmol)、トルエン800gを加え、撹拌、窒素吹込みをしながら40℃に加温して溶解した。110℃に昇温し、トルエンと共沸させながら約200gの留分を抜き取り、脱水を行った。30℃まで冷却し、トリエチルアミン30g(300mmol)、アクリル酸クロライド18g(200mmol)を加え、40℃で6時間反応した。
【0078】
上記反応後、溶媒中のトリエチルアミン塩酸塩を濾別し、その後室温まで冷却した。濾液に酢酸エチル600g、n-ヘキサン600gを加えて結晶化させた。結晶を濾取した後、酢酸エチル1.6kgに35℃で溶解し、室温に冷却後n-ヘキサン400gを加えて結晶化させた。結晶を濾取し、n-ヘキサン1.2kgで洗浄した。結晶を濾取して真空下で乾燥させて式(10)で示されるポリオキシエチレン化合物1(重量平均分子量約2,000, n=約45)を194g得た。合成した式(10)で示されるポリオキシエチレン化合物1の重量平均分子量は、GPCを用いポリオキシエチレン中間体1と同様の方法により決定した。また、分子構造は1H-NMRより決定した。以下に、1H-NMRの分析結果を示す。
1H-NMR(CDCl3)δ(ppm):3.38(3H,s,-OCH
3)、3.47-3.90(216H,m,-O(CH
2CH
2O)n-CH
2CH-NH-)、5.60-5.63(1H,m,-CH=CH
2)、6.12-6.22(1H,m,-CH=CH
2)、6.27-6.33(1H,m,-CH=CH2)。
【0079】
【0080】
[実施例1-3]
(ポリオキシエチレン中間体2の合成)
温度計、窒素吹き込み管、撹拌機、滴下ロートを付した1L四つ口フラスコに、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(重量平均分子量約2,000,n=約45)を200g(100mmol)とイオン交換水200gを加え、40℃に加温して溶解した。溶解後、10℃以下に冷却し、50%水酸化カリウム水溶液12.5gを加えた。続いて、5~10℃を保ちながらアクリロニトリル106g(1mol)を2時間かけて滴下した。滴下後、更に2時間反応させ、塩酸11gを滴下し中和した。続いて、反応液にイオン交換水400gを加えて分液漏斗に移し変え、酢酸エチルを120g加えて撹拌後、静置し、上層の酢酸エチル層を廃棄した。この酢酸エチル抽出は、6回繰り返した。抽出終了後、水層に食塩50gを溶解し、クロロホルム200gを用いて抽出した。得られたクロロホルム層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過後、濃縮した。濃縮液に酢酸エチル1.6kgを加えて溶解し、ヘキサンを結晶が析出するまで加えた。結晶を濾取し、再度酢酸エチル1.6kgに加温溶解し、室温に冷却後、結晶が析出するまでヘキサンを加えた。その後、結晶を濾取、乾燥し、式(11)で示されるポリオキシエチレン中間体2を得た。合成したポリオキシエチレン中間体2の重量平均分子量は、GPCを用いポリオキシエチレン中間体1と同様の方法により決定した。また、分子構造は1H-NMRより決定した。以下に、1H-NMRの分析結果を示す。
【0081】
1H-NMR(CDCl3)δ(ppm):2.63(2H,t,-CH
2CN)、3.38(3H,s,-OCH
3)、3.17-3.74(215H,m,-O(CH
2CH
2O)n-CH
2CH2CN)。
【0082】
【0083】
[実施例1-4]
(ポリオキシエチレン中間体3の合成)
次に、1Lオートクレーブにポリオキシエチレン中間体2を200g、トルエン2kg、ラネーニッケル18gを加え、60℃まで昇温した。アンモニアで内圧0.7MPaになるまで加圧し、その後、水素を内圧4.5MPaとなるまで加圧し、130℃で3時間反応させた。反応後、反応液を70℃に冷却し、アンモニア臭が消えるまで窒素パージを繰り返した。反応液を全量抜き取り、濾過し、濾液を室温まで冷却後、ヘキサンを結晶が析出するまで加えた。結晶を濾取、乾燥し、式(12)で示されるポリオキシエチレン中間体3を得た。合成したポリオキシエチレン中間体3の重量平均分子量は、GPCを用いポリオキシエチレン中間体1と同様の方法により決定した。また、分子構造は1H-NMRより決定した。以下に、1H-NMRの分析結果を示す。
【0084】
1H-NMR(CDCl3)δ(ppm):1.82(2H,m,-CH2CH
2CH2NH2)、3.08(2H,t,-CH2CH2CH
2NH2)、3.38(3H,s,-OCH
3)、3.40-4.00(215H,m,-O(CH
2CH
2O)n-CH
2CH2CH2NH2)。
【0085】
【0086】
[実施例1-5]
(ポリオキシエチレン化合物2の合成)
温度計、窒素吹き込み管、撹拌機、Dean-Stark管及び冷却管を付した1L四つ口フラスコに、式(12)で表されるポリオキシエチレン中間体3(重量平均分子量約2,000, n=約46)を200g(100mmol)、トルエン800gを加え、撹拌、窒素吹込みをしながら40℃に加温して溶解した。110℃に昇温し、トルエンと共沸させながら約200gの留分を抜き取り、脱水を行った。30℃まで冷却し、トリエチルアミン30g(300mmol)、アクリル酸クロライド18g(200mmol)を加え、40℃で6時間反応した。
【0087】
上記反応後、溶媒中のトリエチルアミン塩酸塩を濾別し、その後室温まで冷却した。濾液に酢酸エチル600g、n-ヘキサン600gを加えて結晶化させた。結晶を濾取した後、酢酸エチル1.6kgに35℃で溶解し、室温に冷却後n-ヘキサン400gを加えて結晶化させた。結晶を濾取し、n-ヘキサン1.2kgで洗浄した。結晶を濾取して真空下で乾燥させて式(13)で示されるポリオキシエチレン化合物2(重量平均分子量約2,050, n=約46)を194g得た。合成した式(13)で示されるポリオキシエチレン化合物2の重量平均分子量は、GPCを用いポリオキシエチレン中間体1と同様の方法により決定した。また、分子構造は1H-NMRより決定した。以下に、1H-NMRの分析結果を示す。
1H-NMR(CDCl3)δ(ppm):1.82(2H,m,-CH2CH
2CH2NH2)、3.38(3H,s,-OCH
3)、3.40-4.00(215H,m,-O(CH
2CH
2O)n-CH
2CH2CH
2NH-)、5.57-5.60(1H,m,-CH=CH
2)、6.07-6.14(1H,m,-CH=CH
2)、6.23-6.29(1H,m,-CH=CH2)。
【0088】
【0089】
<表面親水性評価方法>
表面親水性を以下の手順で評価した。後述の通りに表面処理した式(1’)で表される構成単位を含むグラフト高分子鎖を表面に有するポリウレタン製フィルム、式(1’)で表される構成単位を含むグラフト高分子鎖を表面に有するポリエチレン製フィルム、式(1’)で表される構成単位を含むグラフト高分子鎖を表面に有する含水フィルムを200mLの生理食塩液中で3回洗浄した。3回目の洗浄後、無風の室内にて、含水フィルムをこの生理食塩液から取り出して照明にかざした。水膜が破綻し、含水フィルム表面が露出するのに要する時間(WBUT)を目視により記録した。このWBUTが5秒未満の場合は「0」、5秒以上15秒未満の場合は「1」、15秒以上の場合は「2」のスコアを与えた。
【0090】
<表面潤滑性評価方法>
表面潤滑性を以下の手順で評価した。後述の通りに表面処理した式(1’)で表される構成単位を含むグラフト高分子鎖を表面に有する含水フィルムを生理食塩液10mLに浸漬し、終夜振盪した。このように調製した含水フィルムについて、親指と人差し指でさする時の潤滑性の程度を10名の被験者に評価してもらい、スコアの平均値を算出した。なお、潤滑性評価は、ブリスターパックから取り出したばかりのシード 1dayFine((株)シード製)の評価点数を2点とし、プロクリア(登録商標) ワンデー(クーパービジョン・ジャパン(株)製)の評価点数を8点として、1~10点の範囲内でスコア化した。
【0091】
(含水フィルムの作製方法)
式(14)で表されるメタクリロイルオキシエチルコハク酸3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピル(WO2010/082659号公報参照)60質量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート39質量部、エチレングリコールジメタクリレート0.5質量部、アゾビスイソブチロニトリル0.5質量部を混合溶解した。この溶液を、厚さ0.1mmのポリエチレンテレフタレートシートをスペーサーとしてガラス板とポリプロピレン板の間に挟みこんだセル内に流し込みオーブン内の窒素置換を行った後、100℃で2時間加熱することにより重合し、フィルム状に成型した。本発明の評価項目は、親水性と潤滑性であるため、実験を簡便に行うためにレンズ形状ではなく、フィルム状に成型した。重合後、硬化フィルムをセルから取り出し、エタノールとイオン交換水を体積比3対1に混合した溶液に12時間浸漬し、さらにイオン交換水に12時間浸漬して含水フィルムを作製した。作製した含水フィルムを放電装置内に設置し、チャンバー内を約2.66Paまで減圧した後、約13.3Paの酸素ガス雰囲気下にて10分間プラズマ放電処理を行った(周波数:13.56MHz、高周波出力:50W)。その後、含水フィルムを酸素ガス雰囲気下に10分間以上保存し、含水フィルム表面に過酸化物(パーオキサイド基)を生成させた。
【0092】
【0093】
[実施例2-1]
(ポリオキシエチレン化合物1での表面処理)
ポリオキシエチレン化合物1を3w/w%(0.0134mol/L)、9,10-ビス(n-オクタノイルオキシ)アントラセン0.05w/w%及びトルエン96.95w/w%の組成物中に上記で作製した含水フィルムを浸漬させ、窒素置換した。その後、紫外線(波長:395 nm)を照度50 mW/cm2で室温下にて2分間照射し含水フィルム表面に親水性グラフト重合物の被膜を形成させた。反応終了後、含水フィルムを前記組成物から取り出し、蒸留水にて洗浄し、更に蒸留水を用いてソックスレー抽出器にて16時間抽出を行い、含水フィルムから未反応残留物を除去し、式(1’)で表される構成単位を含むグラフト高分子鎖を表面に有する含水フィルムを作製した。前記の通りに表面処理した含水フィルムで表面親水性、表面潤滑性を評価した。表1に結果を示す。
【0094】
[実施例2-2~実施例2-12]
表1に示す種類及び量の成分を使用した以外は、実施例2-1と同様の手順に従って、式(1’)で表される構成単位を含むグラフト高分子鎖を表面に有する含水フィルムを作製した。各実施例の表面親水性及び表面潤滑性を表1に示す。
なお、ポリオキシエチレン化合物3~8は、実施例1-1~1-5と同様の方法で合成できる。ポリオキシエチレン化合物3は、R1が水素原子、aが0、nが21、重量平均分子量1,000の式(1)で表される化合物を意味する。ポリオキシエチレン化合物4は、R1が水素原子、aが1、nが22、重量平均分子量1,050の式(1)で表される化合物を意味する。ポリオキシエチレン化合物5は、R1がメチル基、aが0、nが21、重量平均分子量1,000の式(1)で表される化合物を意味する。ポリオキシエチレン化合物6は、R1が水素原子、aが0、nが9、重量平均分子量500の式(1)で表される化合物を意味する。ポリオキシエチレン化合物7は、R1が水素原子、aが0、nが112、重量平均分子量5,000の式(1)で表される化合物を意味する。ポリオキシエチレン化合物8は、R1が水素原子、aが0、nが225、重量平均分子量10,000の式(1)で表される化合物を意味する。
【0095】
表1に示された結果から、実施例2-1、2-4、2-6、2-8~2-12(本発明の化合物のみから誘導されたグラフト高分子鎖を表面に有するコンタクトレンズ)及び実施例2-2、2-3、2-5、2-7(本発明の化合物及び親水性単量体から誘導されたグラフト高分子鎖を表面に有するコンタクトレンズ)では、式(1’)で表される構成単位を含むグラフト高分子鎖を表面に有する含水フィルムが優れた表面親水性、表面潤滑性を示した。
【0096】
[比較例1-1]
表2に示す種類及び量の成分を使用した以外は、実施例2-1と同様の手順に従って表面処理した含水フィルムを作製した。より詳しくは、含水フィルムを、2-ヒドロキシエチルメタクリレート10w/w%、9,10-ビス(n-オクタノイルオキシ)アントラセン0.05w/w%及びトルエン89.95w/w%の組成物中に浸漬させ、窒素置換した。その後、紫外線(波長:395 nm)を照度50 mW/cm2で室温下にて2分間照射し含水フィルム表面に親水性グラフト重合物の被膜を形成させた。反応終了後、含水フィルムを前記組成物から取り出し、蒸留水にて洗浄し、更に蒸留水を用いてソックスレー抽出器にて16時間抽出を行い、含水フィルムから未反応残留物を除去した。前記の通りに表面処理した含水フィルムで表面親水性、表面潤滑性を評価した。表2に結果を示す。
【0097】
[比較例1-2~比較例1-3]
表2に示す種類及び量の成分を使用した以外は、比較例1-1と同様の手順に従って、各種組成物で表面処理した含水フィルムを作製した。各比較例の表面親水性及び表面潤滑性を表2に示す。
【0098】
表2に示された結果から、比較例1-1~比較例1-3では、式(1’)で表される構成単位を含むグラフト高分子鎖を表面に有さないため、実施例2-1~実施例2-12よりも含水フィルムの表面親水性と表面潤滑性は低かった。
【0099】
以上の結果より、本発明の式(1’)で表される構成単位を含むグラフト高分子鎖を表面に有するコンタクトレンズは、優れた表面親水性及び表面潤滑性を有することを確認した。
【0100】
【0101】
【0102】
[実施例3-1]
(ポリウレタン製フィルムへの表面処理)
ポリウレタン製フィルムを、ポリオキシエチレン化合物1を10w/w%(0.0482mol/L)、9,10-ビス(n-オクタノイルオキシ)アントラセン0.05w/w%及びトルエン89.95w/w%の組成物中に浸漬させ、窒素置換した。その後、紫外線(波長:395 nm)を照度50 mW/cm2で室温下にて2分間照射しポリウレタン製フィルム表面に親水性グラフト重合物の被膜を形成させた。反応終了後、ポリウレタン製フィルムを前記組成物から取り出し、蒸留水にて洗浄し、更に蒸留水を用いてソックスレー抽出器にて16時間抽出を行い、ポリウレタン製フィルムから未反応残留物を除去し、式(1’)で表される構成単位を含むグラフト高分子鎖を表面に有するポリウレタン製フィルムを作製した。前記の通りに作製したポリウレタン製フィルムで表面親水性を評価した。表3に結果を示す。
【0103】
[実施例3-2~実施例3-8]
表3に示す種類及び量の成分を使用した以外は、実施例3-1と同様の手順に従って、式(1’)で表される構成単位を含むグラフト高分子鎖を表面に有するポリウレタン製フィルムを作製した。各実施例の表面親水性を表3に示す。
【0104】
【0105】
表3に示された結果から、実施例3-1~実施例3-8では、式(1’)で表される構成単位を含むグラフト高分子鎖を表面に有するポリウレタン製フィルムが優れた表面親水性を示した。
【0106】
[比較例2-1~比較例2-3]
表4に示す種類及び量の成分を使用した以外は、実施例3-1と同様の手順に従って表面処理したポリウレタン製フィルムを作製した。各比較例の表面親水性を表4に示す。
【0107】
【0108】
表4に示された結果から、比較例2-1~比較例2-3では、式(1’)で表される構成単位を含むグラフト高分子鎖を表面に有さないため、実施例3-1~実施例3-8よりもポリウレタン製フィルムの表面親水性は低かった。
【0109】
以上の結果より、本発明の式(1’)で表される構成単位を含むグラフト高分子鎖を表面に有するポリウレタン製フィルムは、優れた表面親水性を有することを確認した。
【0110】
[実施例4-1]
(ポリエチレン製フィルムへの表面処理)
ポリオキシエチレン化合物1を10w/w%(0.0482mol/L)、9,10-ビス(n-オクタノイルオキシ)アントラセン0.05w/w%及びトルエン89.95w/w%の組成物中にポリエチレン製フィルムを浸漬させ、窒素置換した。その後、紫外線(波長:395 nm)を照度50 mW/cm2で室温下にて2分間照射しポリエチレン製フィルム表面に親水性グラフト重合物の被膜を形成させた。反応終了後、ポリエチレン製フィルムを前記組成物から取り出し、蒸留水にて洗浄し、更に蒸留水を用いてソックスレー抽出器にて16時間抽出を行い、ポリエチレン製フィルムから未反応残留物を除去し、式(1’)で表される構成単位を含むグラフト高分子鎖を表面に有するポリエチレン製フィルムを作製した。前記の通りに作製したポリエチレン製フィルムで表面親水性を評価した。表5に結果を示す。
【0111】
[実施例4-2~実施例4-8]
表5に示す種類及び量の成分を使用した以外は、実施例4-1と同様の手順に従って、式(1’)で表される構成単位を含むグラフト高分子鎖を表面に有するポリエチレン製フィルムを作製した。各実施例の表面親水性を表5に示す。
【0112】
【0113】
表5に示された結果から、実施例4-1~実施例4-8では、式(1’)で表される構成単位を含むグラフト高分子鎖を表面に有するポリエチレン製フィルムが優れた表面親水性を示した。
【0114】
[比較例3-1~比較例3-3]
表6に示す種類及び量の成分を使用した以外は、実施例4-1と同様の手順に従って表面処理したポリエチレン製フィルムを作製した。各比較例の表面親水性を表6に示す。
【0115】
【0116】
表6に示された結果から、比較例3-1~比較例3-3では、式(1’)で表される構成単位を含むグラフト高分子鎖を表面に有さないため、実施例4-1~実施例4-8よりもポリエチレン製フィルムの表面親水性は低かった。
【0117】
以上の結果より、本発明の式(1’)で表される構成単位を含むグラフト高分子鎖を表面に有するポリエチレン製フィルムは、優れた表面親水性を有することを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0118】
医療材料表面の潤滑性及び親水性を高める医療材料用表面処理剤、並びに、優れた表面親水性及び表面潤滑性を有する医療材料を提供する。