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  • 特許-電力変換装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20230314BHJP
【FI】
H02M3/155 H
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020007512
(22)【出願日】2020-01-21
(65)【公開番号】P2021114872
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】平井 和斗
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 定典
(72)【発明者】
【氏名】山本 裕介
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 健一
【審査官】東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-528187(JP,A)
【文献】国際公開第2018/204134(WO,A1)
【文献】特開2015-176665(JP,A)
【文献】特開2012-19683(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00-3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列接続された2つのスイッチング素子と、前記2つのスイッチング素子を繋ぐ接続線に接続されたインダクタと、出力コンデンサと、前記インダクタに流れる電流を検出する電流検出部と、を有する電力変換装置であって、
前記電流検出部により検出される電流が上限電流閾値に達したタイミング及び前記電流検出部により検出される電流が下限電流閾値に達したタイミングで前記スイッチング素子のスイッチング状態を変えるヒステリシス制御部と、
前記上限電流閾値及び前記下限電流閾値を設定するものであって、前記上限電流閾値及び前記下限電流閾値のいずれか一方を一定値とし、他方を変動させた結果、前記上限電流閾値と前記下限電流閾値との差が予め定められた値以下となったと判断すると、前記上限電流閾値又は前記下限電流閾値のうち、前記一定値としている方の値を前記上限電流閾値と前記下限電流閾値との差が大きくなるように変更する電流閾値設定部と、
を備えることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記電流閾値設定部は、前記下限電流閾値を前記一定値とすることを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記電流閾値設定部は、前記上限電流閾値を正の値に設定し、前記下限電流閾値を負の値に設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記電流閾値設定部は、前記上限電流閾値及び前記下限電流閾値を正の値に設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置において、ヒステリシス制御が行われている(例えば特許文献1)。具体的には、電流モード制御にヒステリシス制御を適用した場合には、インダクタに流れる電流が上限電流閾値又は下限電流閾値に達した時にスイッチング素子のスイッチング状態を変える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-289535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、直列接続された2つのスイッチング素子と、2つのスイッチング素子を繋ぐ接続線に接続されたインダクタと、出力コンデンサとを有する電力変換装置において、インダクタに流れる電流が上限電流閾値に達したタイミング及びインダクタに流れる電流が下限電流閾値に達したタイミングでスイッチング素子のスイッチング状態を変える。このとき、上限電流閾値及び下限電流閾値のいずれか一方を一定値として他方を当該一定値に近づけるように変動させることで出力電圧を目標出力電圧にしようとすると、目標出力電圧を出力できなくなる場合がある。
【0005】
本発明の目的は、ヒステリシス制御部を備える電力変換装置において、上限電流閾値及び下限電流閾値のいずれか一方を一定値として他方を当該一定値に近づけるように変動させる場合であっても目標出力電圧を出力することができる電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための電力変換装置は、直列接続された2つのスイッチング素子と、前記2つのスイッチング素子を繋ぐ接続線に接続されたインダクタと、出力コンデンサと、前記インダクタに流れる電流を検出する電流検出部と、を有する電力変換装置であって、前記電流検出部により検出される電流が上限電流閾値に達したタイミング及び前記電流検出部により検出される電流が下限電流閾値に達したタイミングで前記スイッチング素子のスイッチング状態を変えるヒステリシス制御部と、前記上限電流閾値及び前記下限電流閾値を設定するものであって、前記上限電流閾値及び前記下限電流閾値のいずれか一方を一定値とし、他方を変動させた結果、前記上限電流閾値と前記下限電流閾値との差が予め定められた値以下となったと判断すると、前記上限電流閾値又は前記下限電流閾値のうち、前記一定値としている方の値を前記上限電流閾値と前記下限電流閾値との差が大きくなるように変更する電流閾値設定部と、を備えることを要旨とする。
【0007】
これによれば、ヒステリシス制御部により、電流検出部により検出される電流が上限電流閾値に達したタイミング及び電流検出部により検出される電流が下限電流閾値に達したタイミングでスイッチング素子のスイッチング状態が変えられる。電流閾値設定部により、上限電流閾値及び下限電流閾値のいずれか一方を一定値とし、他方を変動させた結果、上限電流閾値と下限電流閾値との差が予め定められた値以下となったと判断すると、上限電流閾値又は下限電流閾値のうち、一定値としている方の値が上限電流閾値と下限電流閾値との差が大きくなるように変更される。よって、ヒステリシス制御部を備える電力変換装置において、上限電流閾値及び下限電流閾値のいずれか一方を一定値として他方を当該一定値に近づけるように変動させる場合であっても目標出力電圧を出力することができる。
【0008】
また、電力変換装置において、前記電流閾値設定部は、前記下限電流閾値を前記一定値とするとよい。
また、電力変換装置において、前記電流閾値設定部は、前記上限電流閾値を正の値に設定し、前記下限電流閾値を負の値に設定するとよい。
【0009】
また、電力変換装置において、前記電流閾値設定部は、前記上限電流閾値及び前記下限電流閾値を正の値に設定するとよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ヒステリシス制御部を備える電力変換装置において、上限電流閾値及び下限電流閾値のいずれか一方を一定値として他方を当該一定値に近づけるように変動させる場合であっても目標出力電圧を出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態におけるDC/DCコンバータの回路図。
図2】(a),(b),(c)は作用を説明するための比較用のタイムチャート。
図3】(a),(b),(c)は実施形態の作用を説明するためのタイムチャート。
図4】目標出力電圧と出力電圧の波形図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、電力変換装置としてのDC/DCコンバータ10は、DC入力端子11,12及びDC出力端子13,14を有する。DC入力端子11,12には直流電源100が接続される。DC出力端子13,14には負荷110が接続される。DC/DCコンバータ10は、DC入力端子11,12から直流電圧を入力し、降圧してDC出力端子13,14から出力することができるようになっている。
【0013】
DC/DCコンバータ10は、パワー回路部20と制御部30を有する。パワー回路部20は、上アーム用スイッチング素子Q1と、下アーム用スイッチング素子Q2と、インダクタ21と、出力コンデンサ22と、ドライバ23,24と、電流センサ25と、を有する。上アーム用スイッチング素子Q1及び下アーム用スイッチング素子Q2は、それぞれ、nチャネルタイプのMOSFETであり、還流ダイオードとしてのボディダイオード(寄生ダイオード)D1,D2を有する。
【0014】
上アーム用スイッチング素子Q1と下アーム用スイッチング素子Q2とが直列接続され、2つのスイッチング素子Q1,Q2による直列回路の一端に入力端子11を介して直流電源100の正極が接続されるとともに他端に入力端子12を介して直流電源100の負極が接続されている。
【0015】
上アーム用スイッチング素子Q1と下アーム用スイッチング素子Q2とを繋ぐ接続線15には接続線16を介してインダクタ21の一端が接続されている。インダクタ21の他端には出力端子13が接続されるとともに出力コンデンサ22の一端が接続されている。出力コンデンサ22の他端が入力端子12を介して直流電源100の負極に接続されているとともに出力端子14と接続されている。
【0016】
出力コンデンサ22に対し並列に負荷110が接続されている。
接続線15とインダクタ21とを繋ぐ接続線16には電流センサ25が設けられている。電流検出部としての電流センサ25によりインダクタ21に流れる電流(以降、インダクタ電流として説明する)が検出される。
【0017】
出力端子13,14間には電圧センサ26が設けられている。電圧センサ26により出力電圧が検出される。
制御部30は、図示しないCPUと、図示しないメモリと、駆動信号発生部31と、上限電流閾値生成部32と、下限電流閾値生成部33と、一定閾値変更部36と、コンパレータ34,35を有する。本実施形態では、上限電流閾値生成部32と、下限電流閾値生成部33と、一定閾値変更部36とによって電流閾値設定部37を構成する。
【0018】
なお、電流閾値設定部37は、上限電流閾値及び下限電流閾値を設定するものである。
CPUは、制御部30の制御を行う中央処理装置である。メモリには、CPUによって実行されるプログラムや各種のデータが格納される。制御部30が実行する処理は、メモリに記憶された処理をCPUが実行することにより行われてもよいし、図示しない専用の電子回路によるハードウェア処理によって行われてもよい。
【0019】
駆動信号発生部31は、ドライバ23を介して上アーム用スイッチング素子Q1のゲート端子と接続されている。駆動信号発生部31は、ドライバ24を介して下アーム用スイッチング素子Q2のゲート端子と接続されている。駆動信号発生部31は、ドライバ23を介して上アーム用スイッチング素子Q1のゲート端子に第1ゲート信号G1を出力して上アーム用スイッチング素子Q1をオン/オフする。駆動信号発生部31は、ドライバ24を介して下アーム用スイッチング素子Q2のゲート端子に第2ゲート信号G2を出力して下アーム用スイッチング素子Q2をオン/オフする。上アーム用スイッチング素子Q1と下アーム用スイッチング素子Q2とは、一方がオンのとき他方がオフされる(図2(b),(c)参照)
上限電流閾値生成部32は電圧センサ26からの出力電圧と目標出力電圧Vrefを入力する。上限電流閾値生成部32は、出力電圧と目標出力電圧Vrefから上限電流閾値Itopを生成して出力する。すなわち、本実施形態の上限電流閾値Itopは、検出した出力電圧と目標出力電圧Vrefに基づいて決められる値である。上限電流閾値Itopは、正の値に設定される。上限電流閾値Itopは、コンパレータ34及び一定閾値変更部36に送られる。
【0020】
下限電流閾値生成部33は、下限電流閾値Ibtmを生成して出力する。本実施形態では、後述するソフトスイッチングをするために、下限電流閾値Ibtmは、図2(a)に示すように、0Aより低い一定の値、即ち、負の値に設定されている。下限電流閾値Ibtmは、一定閾値変更部36に送られる。
【0021】
一定閾値変更部36は、上限電流閾値生成部32から送られた上限電流閾値Itopと、下限電流閾値生成部33から送られた下限電流閾値Ibtmとを比較し、上限電流閾値Itopと下限電流閾値Ibtmとの差が予め定められた値以下か否か判定する。
【0022】
一定閾値変更部36は、上限電流閾値Itopと下限電流閾値Ibtmとの差が予め定められた値より大きいと判定すると、下限電流閾値生成部33から送られた下限電流閾値Ibtmをそのままの値でコンパレータ35に出力し、上限電流閾値Itopと下限電流閾値Ibtmとの差が予め定められた値以下と判定すると、下限電流閾値生成部33から送られた下限電流閾値Ibtmを、上限電流閾値生成部32から送られた上限電流閾値Itopとの差が予め定められた値より大きくなるように変更した後、変更した下限電流閾値Ibtmをコンパレータ35に出力する。
【0023】
コンパレータ34は、電流センサ25により検出されたインダクタ電流と上限電流閾値Itopとを比較して比較結果をHigh/Low信号として駆動信号発生部31に出力する。コンパレータ35は、電流センサ25により検出されたインダクタ電流と下限電流閾値Ibtmとを比較して比較結果をHigh/Low信号として駆動信号発生部31に出力する。
【0024】
なお、コンパレータ34は、インダクタ電流が上限電流閾値Itopに達した場合にHigh信号を出力し、コンパレータ35は、インダクタ電流が下限電流閾値Ibtmに達した場合にHigh信号を出力するものとする。
【0025】
駆動信号発生部31は、コンパレータ34又はコンパレータ35からHigh信号が出力されると、スイッチング素子Q1,Q2のスイッチング状態を変えるべく、ドライバ23に第1ゲート信号G1を出力し、ドライバ24に第2ゲート信号G2を出力する。すなわち、電流センサ25により検出されたインダクタ電流が上限電流閾値Itopに達するタイミング(図2(a)のt2,t4,t6,・・・参照)と、電流センサ25により検出されたインダクタ電流が下限電流閾値Ibtmに達するタイミング(図2(a)のt1,t3,t5,・・・参照)とでスイッチング素子Q1,Q2のスイッチング状態を変える。
【0026】
すなわち、本実施形態における駆動信号発生部31は、ヒステリシス制御部として機能する。
なお、駆動信号発生部31は、スイッチング素子Q1,Q2が同時にオンとならないように、同時にオフとなるデッドタイム期間が設けられるように第1ゲート信号G1及び第2ゲート信号G2を出力する。
【0027】
また、本実施形態の制御部30は、スイッチング素子Q1,Q2をソフトスイッチングさせる。上アーム用スイッチング素子Q1をオンすると、図1において電流経路Ru1で示すように、直流電源100から上アーム用スイッチング素子Q1及びインダクタ21を通して出力コンデンサ22の充電側である正の方向に電流が流れ、インダクタ電流が上昇する。その後、インダクタ電流が上限電流閾値Itopに達すると、上アーム用スイッチング素子Q1がオフされる。つまり、制御部30は、インダクタ電流が上限電流閾値Itopに達したタイミングで上アーム用スイッチング素子Q1のスイッチング状態を変える。この時、スイッチング素子Q1,Q2のどちらもオフとなるデッドタイム期間が設けられているため、図1において電流経路Ru2で示すように、インダクタ21から出力コンデンサ22を介して下アーム用スイッチング素子Q2のボディダイオードD2に電流が流れ、インダクタ21に蓄えられたエネルギーが減少していく。その後、下アーム用スイッチング素子Q2のオンに伴い図1において電流経路Ru3で示すように、インダクタ21から出力コンデンサ22を介して下アーム用スイッチング素子Q2に電流が流れ、インダクタ21に蓄えられたエネルギーが0となると、図1において電流経路Ru4に示すように、出力コンデンサ22からインダクタ21を介して下アーム用スイッチング素子Q2に電流が流れる。つまり、インダクタ電流は、負の方向(逆向き)に流れ、出力コンデンサ22に蓄積された電荷が放電される。その後、インダクタ電流が下限電流閾値Ibtmに達すると、下アーム用スイッチング素子Q2がオフされる。つまり、制御部30は、インダクタ電流が下限電流閾値Ibtmに達したタイミングで下アーム用スイッチング素子Q2のスイッチング状態を変える。この時、スイッチング素子Q1,Q2のどちらもオフとなるデッドタイム期間が設けられているため、図1において電流経路Ru5で示すように、インダクタ21及び出力コンデンサ22から上アーム用スイッチング素子Q1のボディダイオードD1に電流が流れる。その後、スイッチング素子Q1がオンされる。
【0028】
こうすることによりスイッチングロスを軽減しつつターンオンさせることができる。
次に、作用について説明する。
図2(a)において縦軸に電流をとり、横軸に時間をとり、上限電流閾値Itop、下限電流閾値Ibtm、電流センサ25により検出されたインダクタ電流Imeasを示す。図2(b)には、上アーム用スイッチング素子Q1のオン/オフ状態の推移を示す。図2(c)には、下アーム用スイッチング素子Q2のオン/オフ状態の推移を示す。
【0029】
図2(a)、図2(b)、図2(c)に示すように、インダクタ電流Imeasが上限電流閾値Itop又は下限電流閾値Ibtmに達した時(t1,t2,t3・・・)にスイッチング素子Q1,Q2のスイッチング状態を切り替える、いわゆる、ヒステリシス制御を行う。詳しくは、図2(a)に示すように、検出した出力電圧と目標出力電圧Vrefに基づいて決められる上限電流閾値Itopと、一定値である下限電流閾値Ibtmとの間において、電流センサ25により検出されたインダクタ電流Imeasが上限電流閾値Itop又は下限電流閾値Ibtmに達すると、図2(b)、図2(c)に示すように、スイッチング素子Q1,Q2のオン・オフ状態が切り替えられる。
【0030】
例えば、図4に示すように、出力電圧を0に向けて下げていく場合、上限電流閾値Itopを小さくしていくが、上限電流閾値Itopと下限電流閾値Ibtmとの差が小さくなると、出力端子に付いている出力コンデンサ22の電荷が抜ける前に上アーム用スイッチング素子Q1がオンとなってしまうため、目標出力電圧と出力電圧との間が乖離していく。
【0031】
これに対し、本実施形態では、以下のようになる。
一定閾値変更部36は、図3(a),(b),(c)に示すように、上限電流閾値Itopと下限電流閾値Ibtmとの差が予め定められた値以下となったと判断すると下限電流閾値Ibtmを強制的に所定値ΔIだけ下げる。
【0032】
上記実施形態では、上限電流閾値Itopと下限電流閾値Ibtmとを比較することで、上限電流閾値Itopと下限電流閾値Ibtmとの差が予め定められた値以下となったか判断しているが、変動させる電流閾値(本実施形態では、上限電流閾値Itop)は、検出した出力電圧に基づいて決定されるものであるため、検出した出力電圧と予め定めた値(目標出力電圧Vrefを含む)を比較することで判断してもよい。また、変動させる電流閾値(上限電流閾値Itop又は下限電流閾値Ibtm)と予め定めた値とを比較することで判断してもよい。
【0033】
なお、比較対象である予め定めた値とは、設計者や使用者がDC/DCコンバータ10を使用する上で許容する動作周波数や出力電圧と目標出力電圧との差に応じて決められる値である。
【0034】
また、下限電流閾値Ibtmが一定であったものを下げる際に、1段階で小さくしてもよいし、多段階で小さくしていくようにしてもよい。
このように、本実施形態では、上限電流閾値Itopを低下させ予め定めた状態になった場合に、それまで一定であった下限電流閾値Ibtmを1段階あるいは多段階で小さくしていく。
【0035】
その後、インダクタ電流Imeasが上限電流閾値Itop又は1段階小さくした下限電流閾値Ibtmに達する(t19,t20,t21,t22)ことによりスイッチング素子Q1,Q2のオン・オフ状態を切り替える。そして、一定閾値変更部36は、再度、上限電流閾値Itopと下限電流閾値Ibtmとの差が予め定めた値以下となったと判断(t31)すると、下限電流閾値Ibtmを更にΔI小さくする。その後、インダクタ電流Imeasが上限電流閾値Itop又は2段階小さくした下限電流閾値Ibtmに達する(t23,t24)ことによりスイッチング素子Q1,Q2のオン・オフ状態を切り替える。
【0036】
これにより、目標出力電圧と出力電圧の差である乖離を小さくすることができる。
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
一定閾値変更部36は、上限電流閾値Itopと下限電流閾値Ibtmとの差が予め定められた値以下となったと判断すると、下限電流閾値Ibtmを上限電流閾値Itopと下限電流閾値Ibtmとの差が大きくなるように変更する。
【0037】
よって、ヒステリシス制御部を備える電力変換装置において、上限電流閾値Itop及び下限電流閾値Ibtmのいずれか一方を一定値として他方を当該一定値に近づけるように変動させる場合であっても目標出力電圧を出力することができる。
【0038】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○ 下限電流閾値Ibtmを一定値として上限電流閾値Itopを変動させるのではなく、上限電流閾値Itopを一定値として下限電流閾値Ibtmを変動させてもよく、電流閾値設定部37は、上限電流閾値Itopを一定値とし、下限電流閾値Ibtmを変動させるとともに、上限電流閾値Itopと下限電流閾値Ibtmとの差が予め定められた値以下となったと判断すると、上限電流閾値Itopを上限電流閾値Itopと下限電流閾値Ibtmとの差が大きくなるように変更してもよい。
【0039】
〇 上限電流閾値Itop及び下限電流閾値Ibtmは、正の値に設定されていてもよい。この場合、上限電流閾値と下限電流閾値の差が狭くなると動作周波数が高くなるため、動作周波数が制御できる範囲を逸脱し、制御不能となった結果、目標の出力電圧を出力できなくなるおそれがあるが、上限電流閾値Itopと下限電流閾値Ibtmとの差が予め定められた値以下となったと判断すると、上限電流閾値Itop及び下限電流閾値Ibtmのうち、一定値としている方の値を上限電流閾値Itopと下限電流閾値Ibtmとの差が大きくなるように変更する。
【0040】
○ 電流閾値の下げ方は階段状に下げる以外にもリニアに連続的に下げてもよい。
○ 電力変換装置はDC/DCコンバータ以外にも、直流を入力して正弦波に変換して出力するACインバータであってもよい。
【符号の説明】
【0041】
10…DC/DCコンバータ、15…接続線、21…インダクタ、22…出力コンデンサ、25…電流センサ、31…駆動信号発生部、37…電流閾値設定部、Itop…上限電流閾値、Ibtm…下限電流閾値、Q1…上アーム用スイッチング素子、Q2…下アーム用スイッチング素子。
図1
図2
図3
図4