(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】乗用型苗移植機
(51)【国際特許分類】
A01C 11/02 20060101AFI20230314BHJP
【FI】
A01C11/02 350E
(21)【出願番号】P 2020081152
(22)【出願日】2020-05-01
【審査請求日】2022-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【氏名又は名称】松田 正道
(74)【代理人】
【識別番号】110000899
【氏名又は名称】特許業務法人新大阪国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今泉 大介
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-284807(JP,A)
【文献】特開平11-168923(JP,A)
【文献】特開平07-177807(JP,A)
【文献】特開平08-317715(JP,A)
【文献】特開2017-121218(JP,A)
【文献】特開平09-154348(JP,A)
【文献】特開2008-118937(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の予備苗載台(38)を装備した走行車体(2)に苗植付部(4)を装着した乗用型苗移植機において、苗植付部(4)の苗載台(51)の上部に、先端に苗掬い部(82c)を有する苗補給台(80)を
設け、
複数の予備苗載台(38)は同一平面上に並べて配置可能であって、同一平面上に並べた時に最後部になる予備苗載台(38c)は、受台(38c1)と、マット苗Nをのせる苗トレイTを載置する載置台(38c2)との2重構造になっており、受台(38c1)に対して載置台(38c2)を後方に向けてスライド移動できる構成となっており、受台(38c1)の上面に係止凹部(38c1’)を設け、載置台(38c2)の下面に係止突起(38c2’)を設け、両者が移動することを規制する構成となっており、載置台(38c2)を作業者が後方に押すと、該係止は外れて、載置台(38c2)を後方に向けてスライド移動でき、
苗補給台(80)を、苗載台(51)の左右方向に設けた複数の苗載置部(51c)の上端に沿って左右方向に移動自在に設けるとともに、苗補給台(80)を、苗載台(51)の上部に左右方向軸心まわりに回動自在に設け、
苗補給台(80)を予備苗載台(38)側へ上方から回動させて、苗補給台(80)の苗載面(82a)から突き出た苗掬い板部(82c)を、予備苗載台(38c)の苗トレイ(T)内のマット苗(N)の下側に差し込み、載置台(38c2)を苗載台(51)側にスライドさせることで、苗トレイ(T)内のマット苗(N)を苗補給台(80)の苗載面(82a)上に掬い取り、
その後、苗補給台(80)を後方に向けて回動させて後ろ急傾斜の苗補給状態(ハ)にすることで、苗補給台(80)の苗載面(82a)上のマット苗(N)は、苗載台(51)の苗載置部(51c)に滑り落ちて、苗補給することができ、
走行車体(2)の後部に施肥装置(5)の肥料ホッパ(60)を設けると共に該肥料ホッパ(60)の後方に苗植付部(4)を装着し、苗補給台(80)を該肥料ホッパ(60)の上方を迂回出来るアーチ状に構成しており、
苗補給を行わない時は、苗補給台(80)を苗載台(51)の上方に収納された収納状態(ロ)に回動しておくと、苗補給台(80)は、その左右側壁(82b)が苗載台(51)の側壁(51d)上面に接当して、収納状態(ロ)が保持され、その収納状態(ロ)において苗補給台(80)は、その裏面が上を向いた凹状になるので、該凹状部に肥料袋(90)等を置く物置として活用できることを特徴とする乗用型苗移植機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行車体に苗植付部を装着した乗用型苗移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
予備苗載台を装備した走行車体に苗植付部を装着した乗用型苗移植機が一般的である。そして、予備苗載台に載置された苗トレイの苗を苗植付部の苗載台に補給するには、苗掬い板にて予備苗載台に載置された苗トレイから苗を掬い取り、苗載台に補給している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
苗掬い板にて予備苗載台に載置された苗トレイから苗を掬い取り、苗載台に補給する作業は、走行車体に搭乗している作業者が掬い取った苗が載っている苗掬い板を片手で持って苗植付部の苗載台に向けて差し出し、他方の手で苗が滑落しないように苗を押えながら行なう。この補給作業は、作業を無理な姿勢で行なわなければならず、作業性が悪いものであった。特に、施肥装置を装備した走行車体から該施肥装置を越えて苗植付部の苗載台に苗を補給する場合は、大変な作業であった。また、苗掬い板を走行車体に積載しておく保管場所も必要となる。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、容易に苗補給が行なえる乗用型苗移植機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
複数の予備苗載台(38)を装備した走行車体(2)に苗植付部(4)を装着した乗用型苗移植機において、苗植付部(4)の苗載台(51)の上部に、先端に苗掬い部(82c)を有する苗補給台(80)を設け、
複数の予備苗載台(38)は同一平面上に並べて配置可能であって、同一平面上に並べた時に最後部になる予備苗載台(38c)は、受台(38c1)と、マット苗Nをのせる苗トレイTを載置する載置台(38c2)との2重構造になっており、受台(38c1)に対して載置台(38c2)を後方に向けてスライド移動できる構成となっており、受台(38c1)の上面に係止凹部(38c1’)を設け、載置台(38c2)の下面に係止突起(38c2’)を設け、両者が移動することを規制する構成となっており、載置台(38c2)を作業者が後方に押すと、該係止は外れて、載置台(38c2)を後方に向けてスライド移動でき、
苗補給台(80)を、苗載台(51)の左右方向に設けた複数の苗載置部(51c)の上端に沿って左右方向に移動自在に設けるとともに、苗補給台(80)を、苗載台(51)の上部に左右方向軸心まわりに回動自在に設け、
苗補給台(80)を予備苗載台(38)側へ上方から回動させて、苗補給台(80)の苗載面(82a)から突き出た苗掬い板部(82c)を、予備苗載台(38c)の苗トレイ(T)内のマット苗(N)の下側に差し込み、載置台(38c2)を苗載台(51)側にスライドさせることで、苗トレイ(T)内のマット苗(N)を苗補給台(80)の苗載面(82a)上に掬い取り、
その後、苗補給台(80)を後方に向けて回動させて後ろ急傾斜の苗補給状態(ハ)にすることで、苗補給台(80)の苗載面(82a)上のマット苗(N)は、苗載台(51)の苗載置部(51c)に滑り落ちて、苗補給することができ、
走行車体(2)の後部に施肥装置(5)の肥料ホッパ(60)を設けると共に該肥料ホッパ(60)の後方に苗植付部(4)を装着し、苗補給台(80)を該肥料ホッパ(60)の上方を迂回出来るアーチ状に構成しており、
苗補給を行わない時は、苗補給台(80)を苗載台(51)の上方に収納された収納状態(ロ)に回動しておくと、苗補給台(80)は、その左右側壁(82b)が苗載台(51)の側壁(51d)上面に接当して、収納状態(ロ)が保持され、その収納状態(ロ)において苗補給台(80)は、その裏面が上を向いた凹状になるので、該凹状部に肥料袋(90)等を置く物置として活用できることを特徴とする乗用型苗移植機である。
本発明によれば、走行車体2に搭乗した作業者は、走行車体2に向かっている苗補給台80先端の苗掬い部82cで予備苗載台38に載置された苗トレイTから苗Nを掬い取り、そのまま苗補給台80にて苗載台51に苗Nを補給することができ、作業性が良い。
本発明に関連する第1の発明は、予備苗載台38を装備した走行車体2に苗植付部4を装着した乗用型苗移植機において、苗植付部4の苗載台51の上部に先端に苗掬い部82cを有する苗補給台80を走行車体2に向けて設けた乗用型苗移植機である。
【0007】
本発明に関連する第1の発明によれば、苗植付部4の苗載台51の上部に先端に苗掬い部82cを有する苗補給台80を走行車体2に向けて設けたので、走行車体2に搭乗した作業者は、走行車体2に向かっている苗補給台80先端の苗掬い部82cで予備苗載台38に載置された苗トレイTから苗Nを掬い取り、そのまま苗補給台80にて苗載台51に苗Nを補給することができ、作業性が良い。
【0008】
本発明に関連する第2の発明は、苗補給台80を苗載台51の左右方向に設けた複数の苗載置部51cの上端に沿って左右方向に移動自在に設けた本発明に関連する第1の発明の乗用型苗移植機である。
【0009】
本発明に関連する第2の発明によれば、本発明に関連する第1の発明の効果に加えて、苗補給台80を苗載台51の左右方向に設けた複数の苗載置部51cの上端に沿って左右方向に移動自在に設けたので、苗補給台80を複数の苗載置部51cの上端に沿って左右方向に移動させて、各苗載置部51cに作業性良く苗補給することができる。
【0010】
本発明に関連する第3の発明は、苗補給台80を苗載台51の上部に左右方向軸心まわりに回動自在に設けた本発明に関連する第1または2の発明の乗用型苗移植機である。
【0011】
本発明に関連する第3の発明によれば、本発明に関連する第1または2の発明の効果に加えて、苗補給台80を苗載台51の上部に左右方向軸心まわりに回動自在に設けたので、苗補給台80先端の苗掬い部82cを苗トレイT内に差し込んで苗Nを掬い取り、苗補給台80にて苗載台51に苗Nを補給する作業性が容易に行なえる。また、苗補給台80を苗載台51の上方に収納された収納状態(ロ)に回動させて収納することができる。
【0012】
本発明に関連する第4の発明は、走行車体2の後部に施肥装置5の肥料ホッパ60を設けると共に該肥料ホッパ60の後方に苗植付部4を装着し、苗補給台80を該肥料ホッパ60の上方を迂回するアーチ状に構成した本発明に関連する第1~3のいずれかの発明の乗用型苗移植機である。
【0013】
本発明に関連する第4の発明によれば、本発明に関連する第1~3のいずれかの発明の効果に加えて、走行車体2の後部に施肥装置5の肥料ホッパ60を設けて機体前後バランスを良好にした構成でありながら、苗補給台80を該肥料ホッパ60の上方を迂回するアーチ状に構成したので、苗載台51に作業性良く苗補給することができる。
【0014】
本発明に関連する第5の発明は、予備苗載台38cを苗補給台80の苗掬い部82cの下方に配置し、予備苗載台38cの苗トレイTを載置する載置台38c2を苗載台51側に移動自在に設けた本発明に関連する第1~4のいずれかの発明の乗用型苗移植機である。
【0015】
本発明に関連する第5の発明によれば、本発明に関連する第1~4のいずれかの発明の効果に加えて、予備苗載台38cを苗補給台80の苗掬い部82cの下方に配置し、予備苗載台38cの苗トレイTを載置する載置台38c2を苗載台51側に移動自在に設けたので、苗掬い部82c先端を予備苗載台38cに載置された苗トレイT内に差し込み、苗トレイTを後方に向けて押すと、予備苗載台38cの載置台38c2ごと後方に押されて、苗トレイT内の苗Nを苗補給台80で掬い取ることが容易に作業性良くできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明における実施の形態の乗用型田植機の側面図である。
【
図2】本発明における実施の形態の乗用型田植機の平面図である。
【
図3】本発明における実施の形態の要部の作用説明用の側面図である。
【
図4】本発明における実施の形態の要部の作用説明用の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づき、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0018】
<全体構成>
図1及び
図2は、本発明の乗用型苗移植機の典型例である施肥装置を装着した乗用型田植機の側面図と平面図である。この施肥装置付き乗用型田植機1は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して苗植付部4が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分が設けられている。なお、乗用型苗移植機の前進方向に向かって左右方向をそれぞれ左、右といい、前進方向と後進方向をそれぞれ前、後という。
【0019】
走行車体2は、駆動輪である左右一対の前輪10,10及び左右一対の後輪11,11を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース12が配置され、そのミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース13,13が設けられ、該左右一対の前輪ファイナルケース13,13の操向方向を変更可能な各々の前輪支持部から外向きに突出する左右前輪車軸に左右一対の前輪10,10が各々取り付けられている。また、ミッションケース12の背面部にメインフレーム15の前端部が固着されており、そのメインフレーム15の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸を支点にして後輪ギヤケース18,18がローリング自在に支持され、その後輪ギヤケース18,18から外向きに突出する後輪車軸に後輪11,11が取り付けられている。
【0020】
エンジン20はメインフレーム15の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が、ベルト伝動装置21及びHST23を介してミッションケース12に伝達される。ミッションケース12に伝達された回転動力は、該ミッションケース12内のトランスミッションにより変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース13,13に伝達されて前輪10,10を駆動すると共に、残りが後輪ギヤケース18,18に伝達されて後輪11,11を駆動する。また、外部取出動力は、走行車体2の後部に設けた植付クラッチケース25に伝達され、それから植付伝動軸26によって苗植付部4へ伝動されるとともに、施肥伝動機構によって施肥装置5へ伝動される。
【0021】
エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に座席31が設置されている。座席31の前方には各種操作機構を内蔵するフロントカバー32があり、その上方に前輪10,10を操向操作するハンドル34が設けられている。エンジンカバー30及びフロントカバー32の下端左右両側は水平状のフロアステップ35になっている。フロアステップ35は一部格子状になっており(
図2参照)、該フロアステップ35を歩く作業者の靴についた泥が圃場に落下するようになっている。フロアステップ35上の後部は、後輪フェンダを兼ねるリヤステップ36となっている。
【0022】
昇降リンク装置3は平行リンク構成であって、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41,41を備えている。これらリンク、すなわち、上リンク40,および下リンク41,41は、その基部側がメインフレーム15の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム42に回動自在に取り付けられ、その先端側に縦リンク43が連結されている。そして、縦リンク43の下端部に苗植付部4に回転自在に支承された連結軸44が挿入連結され、連結軸44を中心として苗植付部4がローリング自在に連結されている。メインフレーム15に固着した支持部材と上リンク40に一体形成したスイングアーム(図示せず)の先端部との間に昇降油圧シリンダ46が設けられており、該昇降油圧シリンダ46を油圧で伸縮させることにより、上リンク40が上下に回動し、苗植付部4がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
【0023】
苗植付部4は6条植の構成で、フレームを兼ねる伝動ケース50、マット苗を載せて左右往復動し苗を一株分づつ各条の苗取出口51a、…に供給するとともに横一列分の苗を全て苗取出口51a、…に供給する苗送りベルト51b、…により苗を下方に移送する苗載台51、苗取出口51a、…に供給された苗を圃場に植付ける苗植付装置52、…、次行程における機体進路を表土面に線引きする左右一対の線引きマーカ70等を備えている。苗植付部4の下部には中央にセンターフロート55、その左右両側にサイドフロート56,56がそれぞれ設けられている。これらフロート、すなわち、センターフロート55,およびサイドフロート56,56を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、フロート、すなわち、センターフロート55,およびサイドフロート56,56が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置52、…により苗が植付けられる。各フロート、すなわち、センターフロート55,およびサイドフロート56,56は圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンターフロート55の前部の上下動が迎角制御センサ(図示せず)により検出され、その検出結果に応じ前記昇降油圧シリンダ46を制御する油圧バルブを切り替えて苗植付部4を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。
【0024】
施肥装置5は、肥料ホッパ60に貯留されている粒状の肥料を繰出部61、…によって一定量づつ繰り出し、その肥料を施肥ホース62、…でフロート、すなわち、センターフロート55,およびサイドフロート56,56の左右両側に取り付けた施肥ガイド(図示せず)、…まで導き、施肥ガイド、…の前側に設けた作溝体(図示せず)、…によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥構内に落とし込むようになっている。ブロア用電動モータ53で駆動するブロア58で発生させたエアが、左右方向に長いエアチャンバ59を経由して施肥ホース62、…に吹き込まれ、施肥ホース62、…内の肥料を風圧で強制的に搬送するようになっている。
【0025】
苗植付部4には、整地装置の一例である整地ロータ27が取り付けられている。また、苗載台51は、その上部裏面に設けた左右方向のレール51fがフレームを兼ねる伝動ケース50に基部が固着された支持枠体65の支持ローラ65aに摺動自在に支持されて左右方向にスライドする構成である。
【0026】
また、走行車体2の前部左右両側には、支持フレーム49に支持された補給用の苗を載せておく一対の予備苗載台38,38が設けられている。
【0027】
予備苗載台38はそれぞれ傾斜支持部材で上下三段に構成され、最上段の第1予備苗載台38a、第2予備苗載台38b及び第3予備苗載台38cからなっている。最上段の第1予備苗載台38aの中央部側面と第2予備苗載台38bの最前部側面がそれぞれ回動軸38a1,38b1の回りに回動自在に第1移動リンク部材39aの両端で支持され、また最上段の第1予備苗載台38aの最後部側面と最下段の予備苗載台38cの最前部側面が第2移動リンク部材39bの両端でそれぞれ回動軸38a2,38c1の回りに回動自在に支持され、また第2予備苗載台38bの中央部側面が回動軸38b2の回りに回動自在に前記第2移動リンク部材39bの中央部で支持され、さらに第2予備苗載台38bの最後部側面と最下段の第3予備苗載台38cの中央部側面とがそれぞれ回動軸38b3,38c2の回りに回動自在に第3移動リンク部材39cの両端で支持されている。
【0028】
第2予備苗載台38bは機体に固定されており、第2予備苗載台38bを中心とし、その上下に第1予備苗載台38aと第3予備苗載台38cが配置され、全体として上下三段に配置される状態と第2予備苗載台38bを中心とし、その前後に第1予備苗載台38aと第3予備苗載台38cがそれぞれ配置され、全体として第1移動リンク部材39a,第2移動リンク部材39b,第3移動リンク部材39cをほぼ同一平面上に配置替えすることができる。すなわち、第2移動リンク部材39bは、その中央部が第2予備苗載台38bの中央部の両側に設けられた回動支点により支持されているので、第2移動リンク部材39bを回動させて、第1、第3予備苗載台38a,38cを第2予備苗載台38bの前後に移動させて、第1,第2,第3予備苗載台38a,38b,38cを同一平面上に配置することで広い苗トレイ載置平面が得られる。
【0029】
また、第1,第2,第3予備苗載台38a,38b,38cを同一平面上に並べて配置するときには、最前部に位置する第1予備苗載台38aの前辺と最後部に位置する第3予備苗載台38cの後辺にそれぞれの平面より上方向に立ち上った第1ストッパ47a、第2ストッパ47bが立ち上がる構成としているので、第1,第2,第3予備苗載台38a,38b,38cを同一平面上に並べて配置するときに、第1,第2,第3予備苗載台38a,38b,38c上に載置された苗トレイTが滑り落ちることがない。
【0030】
また、上下三段からなる第1、第2、第3予備苗載台38a,38b,38cを前後に一段の平面状にする切り換えは、苗トレイを載せたまま行うことができる。
【0031】
また第1、第2、第3予備苗載台38a,38b,38cを上下三段又は同一平面上に並べ替えるときには第1、第2、第3移動リンク部材39a,39b,39cの作動を電動モータ(図示せず)で行ってもよい。このときには電動モータの作動スイッチはオペレーター側とオペレーターとは苗移植機周りの別の場所に居る補助者側の2個所に設けると作業性がよい。
【0032】
また、第1、第2、第3予備苗載台38a,38b,38cを同一平面上に並べた時に最後部になる第3予備苗載台38cは、受台38c1に苗トレイTを載置する載置台38c2の2重構造になっている。そして、受台38c1に対して苗トレイTを載置する載置台38c2を後方に向けてスライド移動できる構成となっている。そして、受台38c1の上面に係止凹部38c1’を設け、載置台38c2の下面に係止突起38c2’を設け、両者が移動することを規制する構成となっている。なお、載置台38c2を強い力で後方に押すと、該係止は外れて、載置台38c2を後方に向けてスライド移動できる。
【0033】
<苗載台51>
苗載台51は、左右方向に6つの苗載置部51cが側壁51dで区切られて一体構成され、その上部裏面に設けた左右方向のレール51fがフレームを兼ねる伝動ケース50に基部が固着された支持枠体65の支持ローラ65aに摺動自在に支持されて左右方向にスライド移動し、各苗載置部51cに載置されたマット苗Nが苗送りベルト51bで横一列分の苗が一斉に苗取出口51aに向けて送られる構成である。
【0034】
そして、苗載台51の上部には、側面視でアーチ状の苗補給台80が左右移動自在に設けられている。即ち、苗補給台80は、苗載台51上端部に左右方向に設けたスライド支持軸51eに外嵌し左右移動及び軸廻りに回動するパイプ材81を基部に設け、基部からアーチ状で側面視円弧状に苗載部82を設けている。苗載部82は、苗載面82aと左右側壁82bと先端の苗掬い部としての苗掬い板部82cとから構成される。
【0035】
よって、苗補給台80は、施肥装置5の肥料ホッパ60の上方を越えて前方に延びる使用状態(イ)と苗載台51の上方に収納された収納状態(ロ)に回動切り換え自在であり、また、苗載台51の各苗載置部51cの上端に対応した位置に左右移動自在である。
【0036】
従って、第1,第2,第3予備苗載台38a,38b,38cを同一平面上に並べて配置して、その上面に苗トレイTを載置した状態(
図3)で、苗載台51に苗を補給するには、苗補給台80を施肥装置5の肥料ホッパ60の上方を越えて前方に延びる使用状態(イ)に回動させて、その苗掬い板部82c先端を第3予備苗載台38cに載置された苗トレイT内に差し込み、苗トレイTを後方に向けて押すと、第3予備苗載台38cの載置台38c2ごと後方に押されて、苗トレイT内のマット苗Nを苗補給台80の苗載面82a上に掬い取ることができ、次に、苗補給台80を後方に向けて回動させて後ろ急傾斜の苗補給状態(ハ)にすると、苗補給台80の苗載面82a上のマット苗Nは、苗載台51の苗載置部51cに滑り落ちて、苗補給することができる。以下同様にして、苗トレイT内のマット苗Nを苗補給台80の苗載面82a上に掬い取り、苗補給台80を左右方向にスライド移動させて、次の苗載台51の苗載置部51cに位置を合わせて、苗補給台80を後方に向けて回動させて後ろ急傾斜の苗補給状態(ハ)にすると、苗補給台80の苗載面82a上のマット苗Nは、次の苗載置部51cに滑り落ちて、苗補給することができる。
【0037】
また、苗補給を行なわない時は、苗補給台80を苗載台51の上方に収納された収納状態(ロ)に回動しておくと、苗補給台80は、その左右側壁82bが苗載台51の側壁51d上面に接当して、収納状態(ロ)が保持される。そして、苗補給台80を収納状態(ロ)にした時には、苗補給台80は、その裏面が上を向いた凹状になるので、該凹状部に肥料袋90等を置く物置として活用できる。
【符号の説明】
【0038】
2 走行車体
4 苗植付部
5 施肥装置
38 予備苗載台
38c 予備苗載台(第3予備苗載台)
38c2 載置台
51 苗載台
51c 苗載置部
60 肥料ホッパ
80 苗補給台
82c 苗掬い部(苗掬い板部)
N 苗(マット苗)
T 苗トレイ
【0039】
(イ) 使用状態
【0040】
(ロ) 苗収納状態
【0041】
(ハ) 苗補給状態