(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】軸受保持体
(51)【国際特許分類】
B21J 9/00 20060101AFI20230314BHJP
B21K 1/05 20060101ALI20230314BHJP
F16C 35/063 20060101ALI20230314BHJP
F16C 35/067 20060101ALI20230314BHJP
F16C 43/04 20060101ALI20230314BHJP
F16C 33/64 20060101ALI20230314BHJP
F16C 19/38 20060101ALI20230314BHJP
F16C 19/18 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
B21J9/00 A
B21K1/05
F16C35/063
F16C35/067
F16C43/04
F16C33/64
F16C19/38
F16C19/18
(21)【出願番号】P 2020186660
(22)【出願日】2020-11-09
(62)【分割の表示】P 2019125653の分割
【原出願日】2018-02-28
【審査請求日】2021-01-05
(31)【優先権主張番号】P 2017038933
(32)【優先日】2017-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】弁理士法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸野 哲朗
(72)【発明者】
【氏名】萩原 信行
(72)【発明者】
【氏名】菊池 徳将
(72)【発明者】
【氏名】小山 寛
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0146380(US,A1)
【文献】中国実用新案第2898424(CN,Y)
【文献】実開昭50-048841(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21J 9/00
B21K 1/05
F16C 35/063
F16C 35/067
F16C 43/04
F16C 33/64
F16C 19/38
F16C 19/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース部材と、軸受ホルダと、抑え部材と、を備え、
前記ケース部材は、
一方側が開口し、かつ、他方側に底部を備えた保持凹部を有しており、
前記軸受ホルダは、転がり軸受が内嵌される保持孔を有し、かつ、前記保持凹部の一部に
前記一方側から内嵌されており、
前記抑え部材は、前記保持凹部の内周面と前記軸受ホルダの外周面との間に、前記保持凹部の前記底部側に向かう方向の予圧を付与される態様で
前記一方側から押し込まれるように内嵌されており、かつ、該内嵌によって生じるくさび効果により、前記軸受ホルダを前記保持凹部の内周面に抑え付けている、
軸受保持体。
【請求項2】
前記ケース部材は、前記保持凹部の前記底部に対応する部位の一部に備えられた貫通孔を、さらに有する、
請求項
1に記載の軸受保持体。
【請求項3】
前記保持凹部の深さ方向から見た前記保持凹部の形状は、長矩形であり、
前記軸受ホルダは、前記保持凹部の長手方向一方側に内嵌され、かつ、前記抑え部材は、前記保持凹部の長手方向他方側に内嵌されている、
請求項1
または2に記載の軸受保持体。
【請求項4】
前記抑え部材に、前記保持凹部の前記底部側に向かう方向の予圧を付与している抑えボルトを、さらに備える、
請求項1~
3のうちのいずれかに記載の軸受保持体。
【請求項5】
前記ケース部材に結合固定され、かつ、前記抑え部材のうち、前記保持凹部の底部と反対側の側面を抑え付けた蓋部材を、さらに備える、
請求項1~
4のうちのいずれかに記載の軸受保持体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転がり軸受を内嵌する軸受ホルダを備えた軸受保持体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両においては、車輪は、
図4に示すようなハブユニット軸受により、懸架装置に対して回転自在に支持されている。
【0003】
図4に示したハブユニット軸受は、使用時に懸架装置に結合固定された状態で回転しない外輪1と、使用時に車輪を支持固定した状態で、この車輪と共に回転するハブ2と、外輪1の内周面に設けられた複列の外輪軌道3a、3bとハブ2の外周面に設けられた複列の内輪軌道4a、4bとの間に転動自在に設けられた複数個の転動体としての玉5とを備えている。
【0004】
ハブ2は、外周面に軸方向外側(
図4の左側)の内輪軌道4aが形成されている軸部材であるハブ本体6と、外周面に軸方向内側(
図4の右側)の内輪軌道4bが形成されている内輪7とを、互いに結合固定することにより構成されている。ここで、ハブ2が軸部材に相当する。より具体的には、ハブ本体6の軸方向内端寄り部分に内輪7を外嵌した状態で、ハブ本体6の軸方向内端部に設けられた円筒部8の軸方向内端部を径方向外方に塑性変形させてかしめ部9を形成して、かしめ部9により、内輪7の軸方向内端面を抑え付けることにより、ハブ2が構成されている。なお、ハブユニット軸受において、軸方向外側は、ハブユニット軸受を車体に設置した状態で、車体の幅方向外側を意味する。また、ハブユニット軸受において、軸方向内側は、ハブユニット軸受を車体に設置した状態で、車体の幅方向内側を意味する。
【0005】
なお、乗用車などの比較的重量の軽い車両では、転動体として玉5を使用したハブユニット軸受により車輪が車両に対して支持されることが多いが、トラックなどの重量の嵩む車両では、特開2000-343905号公報および特開2003-083353号公報に開示され、かつ、
図5に示すように、転動体として円すいころ5aを使用したハブユニット軸受により車輪が車両に対して支持される。
【0006】
かしめ部9は、たとえば、揺動鍛造によって形成される。この場合、たとえば、
図6に示すように、成形型15の中心軸βをハブ本体6の中心軸αに対して所定角度θ(たとえば、1度~5度程度)だけ傾斜させた状態で、成形型15を円筒部8の軸方向内端部に押し付ける。この状態で、成形型15を、ハブ本体6の中心軸αを中心として揺動回転、すなわち公転させる。この際、成形型15は、円筒部8の軸方向内端部との接触部に作用する摩擦力に基づいて、成形型15自身の中心軸βを中心として回転、すなわち自転する。これにより、円筒部8の円周方向一部分に、軸方向外側かつ径方向外側に向いた荷重を加え、かつ、この荷重が加わった部分を円周方向に関して連続的に変化させることにより、
図6に示すように、円筒部8の軸方向内端部を徐々に塑性変形させて、かしめ部9が形成される。
【0007】
なお、かしめ部9により、内輪7の軸方向内端部を抑え付けることにより、ハブ2が構成されているハブユニット軸受では、ハブ本体6と内輪7とのクリープを防止するために、かしめ部9により内輪7の軸方向内端部を抑え付ける力を大きくする必要がある。しかしながら、成形型15の中心軸βのハブ本体6の中心軸αに対する傾斜角度θが5度以下と小さい場合、かしめ部9を形成するための加工荷重が大きくなるため、かしめ部9により内輪7の軸方向内端部を抑え付ける力の調整が難しくなる。かしめ部9により内輪7の軸方向内端部を抑え付ける力が過度に大きくなると、内輪7が、外周面に形成された軸方向内側の内輪軌道4bが膨出するように弾性変形することがある。内輪7に弾性変形が生じると、転動体に付与した予圧が不安定になるなどの問題を生じる。特に、内輪7の弾性変形による影響は、
図5に示すように、転動体として円すいころ5aを使用したハブユニット軸受において顕著である。
【0008】
このような揺動鍛造を行うための装置として、特開2013-91067号公報および特開2015-77616号公報には、シャフト付球面座を備えた揺動鍛造装置が開示されている。
図7に、特開2013-91067号公報に開示された、揺動鍛造装置を構成するシャフト付球面座12と成形型15の結合体23の一例を示す。
【0009】
シャフト付球面座12は、揺動シャフト13と、揺動シャフト13の軸方向一方側端部(
図7の下端部)に、揺動シャフト13と同軸に一体形成された凸球面座14とを備える。シャフト付球面座12を構成する凸球面座14のうち、揺動シャフト13の軸方向に関する一方側部には、成形型15が揺動シャフト13と同軸になるように保持固定されている。凸球面座14の揺動シャフト13の軸方向に関する他方側部(
図7の上側部分)は、揺動鍛造装置を構成するフレームに固定された凹球面座16と球面係合する。
【0010】
シャフト付球面座12を構成する揺動シャフト13の軸方向他方側端部は、揺動鍛造装置のフレームに組み付けられた駆動機構に対して、この駆動機構を構成する転がり軸受28を介して、連結される。また、揺動シャフト13の軸方向中間部とフレーム(凹球面座16)との間には、部分球面状の滑り面を有する、スラスト滑り軸受42が組み付けられている。
【0011】
このような揺動鍛造装置では、駆動機構から、揺動シャフト13の軸方向他方側端部に、シャフト付球面座12および成形型15を揺動回転させるための駆動力が付与される。また、凸球面座14と凹球面座16との球面係合により、シャフト付球面座12および成形型15の揺動回転が許容され、かつ、成形型15に加わる加工反力が支承される。さらに、スラスト滑り軸受42により、シャフト付球面座12および成形型15の揺動回転が許容され、かつ、シャフト付球面座12および成形型15が、フレーム(駆動機構および凹球面座16)に対して、揺動シャフト13の軸方向に関する一方側に移動すること、すなわち、揺動鍛造装置から脱落することが阻止されている。
【0012】
従来の揺動鍛造装置では、揺動シャフト13の軸方向他方側端部と駆動機構との連結部は、シャフト付球面座12および成形型15がフレーム(駆動機構および凹球面座16)に対して揺動シャフト13の軸方向に関する一方側に移動することを阻止する機能を有しておらず、スラスト滑り軸受42が、この機能を担っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特開2000-343905号公報
【文献】特開2003-083353号公報
【文献】特開2013-091067号公報
【文献】特開2015-077616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従来の揺動鍛造装置では、揺動シャフト13の軸方向中間部とフレーム(凹球面座16)との間に、部分球面状の滑り面を有するスラスト滑り軸受42が組み付けられている。したがって、フレーム内に、このスラスト滑り軸受42の設置スペースを確保する必要があり、その分、揺動鍛造装置が大型化する。また、スラスト滑り軸受42に設けられた部分球面状の滑り面は、高精度に形成することが要求されるため、その分、揺動鍛造装置の製造コストが嵩む。
【0015】
また、ハブユニット軸受のかしめ部9を揺動鍛造により形成する場合には、成形型15の揺動角度(ハブ本体6の中心軸αに対する成形型15の中心軸βの傾斜角度θ)を、15度以上30度以下に設定することが、かしめ部9の形成時に内輪7の変形を抑制する観点、および、最大加工荷重を低く抑え、揺動鍛造装置の小型化を図る観点から好ましいとされている(特開2015-77616号公報参照)。しかしながら、従来の揺動鍛造装置では、成形型15の揺動角度θを15度以上と大きく設定すると、その分、スラスト滑り軸受42の外径寸法も大きくなるため、大型化や製造コスト増大の問題が顕著になる。
【0016】
本発明は、このような事情に鑑み、成形型と共に揺動回転するシャフト付球面座を備えた揺動鍛造装置に関して、成形型の揺動角度を15度以上30度以下と大きく設定することができ、かつ、該装置の小型化および製造コストの低減を図ることができる構造の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一態様の軸受保持体は、ケース部材と、軸受ホルダと、抑え部材とを備える。
前記ケース部材は、底部を備えた保持凹部を有する。
前記軸受ホルダは、転がり軸受が内嵌される保持孔を有し、かつ、前記保持凹部の一部に内嵌されている。
前記抑え部材は、前記保持凹部の内周面と前記軸受ホルダの外周面との間に、前記保持凹部の前記底部側に向かう方向の予圧を付与される態様で押し込まれるように内嵌されており、かつ、該内嵌によって生じるくさび効果により、前記軸受ホルダを前記保持凹部の内周面に抑え付けている。
【0018】
本発明の一態様では、前記ケース部材は、前記保持凹部の前記底部に対応する部位の一部に備えられた貫通孔を、さらに有する。
【0019】
本発明の一態様では、前記保持凹部の深さ方向から見た前記保持凹部の形状は、長矩形であり、前記軸受ホルダは、前記保持凹部の長手方向一方側に内嵌され、かつ、前記抑え部材は、前記保持凹部の長手方向他方側に内嵌されている。
【0020】
本発明の一態様では、前記抑え部材に、前記保持凹部の前記底部側に向かう方向の予圧を付与している抑えボルトを、さらに備える。
【0021】
本発明の一態様では、前記ケース部材に結合固定され、かつ、前記抑え部材のうち、前記保持凹部の前記底部と反対側の側面を抑え付けた蓋部材を、さらに備える。
【0022】
前記軸受保持体は、次のような揺動鍛造装置に適用することが可能である。
この揺動鍛造装置は、フレームと、揺動シャフトと、凸球面座と、成形型と、凹球面座と、駆動機構と、を備える。
前記フレームは、基準軸を有している。
前記揺動シャフトは、中心軸と、軸方向一方側端部と、軸方向他方側端部とを備え、該中心軸が前記基準軸に対して傾斜するように配置されている。
前記凸球面座は、前記揺動シャフトの軸方向に関する一方側部と、前記揺動シャフトの軸方向に関する他方側部と、該他方側部に設けられた凸球面部とを備え、前記揺動シャフトの前記軸方向一方側端部に、該揺動シャフトと同軸となるように結合されている。
前記成形型は、前記揺動シャフトの軸方向に関する一方側側面に加工面部を備え、前記凸球面座の前記一方側部に、前記揺動シャフトと同軸となるように結合されている。
前記凹球面座は、前記フレームに固定され、前記凸球面部と球面係合する凹球面部と、前記揺動シャフトが挿通する挿通孔を備える。
前記駆動機構は、前記フレームに組み付けられ、前記揺動シャフトの前記軸方向他方側端部に連結され、該揺動シャフトの前記軸方向他方側端部に対して、前記揺動シャフトと前記凸球面座と前記成形型との結合体を、前記基準軸を中心として、回転させるための駆動力を付与する。
特に、前記揺動鍛造装置においては、前記揺動シャフトの前記軸方向他方側端部が前記駆動機構に対して軸方向一方側に向けて移動することを阻止された状態で支持されている。
【0023】
また、たとえば、前記駆動機構が、前記フレームに対して前記基準軸を中心とする回転を可能に支持された回転体と、該回転体に設けられ、前記揺動シャフトの前記軸方向他方側端部が挿通した保持孔と、該保持孔と前記揺動シャフトの前記軸方向他方側端部との間に設けられた転がり軸受とを備え、前記転がり軸受によって、前記揺動シャフトの前記軸方向他方側端部が前記回転体に対し、軸方向一方側に向けて移動することを阻止された状態で支持されている構成を採用することができる。
また、前記回転体として、本発明の軸受保持体を用いることができる。
【0024】
また、たとえば、前記転がり軸受が、外輪と、内輪と、該外輪と該内輪との間に配置された複数の転動体とを備え、前記外輪と前記内輪との間に作用するアキシアル荷重を支承可能であり、前記内輪が、前記揺動シャフトの前記軸方向他方側端部に、前記揺動シャフトの軸方向に関する他方側への変位を阻止された状態で外嵌されており、前記外輪が、前記保持孔に、前記揺動シャフトの軸方向に関する一方側への変位を阻止された状態で内嵌されている構成を採用することができる。
【0025】
また、たとえば、前記回転体が、前記フレームに対して前記基準軸を中心とする回転を可能に支持されたケース部材と、前記保持孔を有する軸受ホルダとを有し、前記ケース部材に対して前記軸受ホルダが着脱可能に固定されている構成を採用することができる。
【0026】
また、前記揺動シャフトの前記中心軸の前記基準軸に対する傾斜角度は、15度以上30度以下とすることができる。
【0027】
前記揺動鍛造装置は、次のような揺動鍛造方法に適用することが可能である。
この揺動鍛造方法は、軸部材の軸方向端部に設けられた円筒部を径方向外方に塑性変形させて、かしめ部を形成する工程を備え、前記揺動鍛造装置を用いて、前記成形型の中心軸を、前記軸部材の中心軸に対して、所定角度に傾斜させた状態で、前記成形型を前記軸部材の円筒部の軸方向端部に押し付ける。
【0028】
前記成形型の中心軸の前記軸部材の中心軸に対する傾斜角度を、15度以上30度以下に設定することができる。
【0029】
前記揺動鍛造装置は、次のようなハブユニット軸受の製造方法に適用することが可能である。
このハブユニット軸受の製造方法は、使用時に懸架装置に結合固定された状態で回転しない外輪と、使用時に車輪を支持固定した状態で、該車輪と共に回転するハブと、前記外輪の内周面に設けられた複列の外輪軌道と前記ハブの外周面に設けられた複列の内輪軌道との間に転動自在に設けられた複数個の転動体とを備え、前記ハブは、外周面に前記複列の内輪軌道のうちの軸方向外側の内輪軌道が形成されているハブ本体と、外周面に前記複列の内輪軌道のうちの軸方向内側の内輪軌道が形成されている内輪とを、互いに結合固定することにより構成されている、ハブユニット軸受の製造方法であって、前記揺動鍛造装置を用いて、前記ハブ本体の軸方向内端寄り部分に前記内輪を外嵌した状態で、該ハブ本体の軸方向内端部に設けられた円筒部の軸方向内端部を径方向外方に塑性変形させてかしめ部を形成して、該かしめ部により、前記内輪の軸方向内端面を抑え付ける工程を備える。
【0030】
前記揺動鍛造装置は、次のような車両の製造方法に適用することが可能である。
この車両の製造方法は、車輪が、ハブユニット軸受により、車両を構成する懸架装置に回転支持されている構造の車両の製造方法であって、前記ハブユニット軸受の製造方法を用いて、前記ハブユニット軸受を製造する工程を備える。
【発明の効果】
【0031】
このような構成を有する本発明の揺動鍛造装置およびこの揺動鍛造装置を用いた揺動鍛造方法では、揺動シャフトの軸方向他方側端部が駆動機構に対して、軸方向一方側に向けて移動することを阻止された状態で支持されている。このため、この支持部によって、前記揺動シャフトと凸球面座と成形型との結合体がフレームに対して軸方向一方側に向けて移動することが防止される。
【0032】
また、前記揺動シャフトのうち、軸方向に関して前記凸球面座と前記駆動機構との間に位置する部分に、前記揺動シャフトが前記フレームに対して軸方向一方側に向けて移動することを阻止するための部材、たとえば、部分球面状の滑り面を有するスラスト滑り軸受が、組み付けられていない。
【0033】
したがって、基準軸に対する揺動シャフトの傾斜角度である、成形型の揺動角度を15度以上30度以下と大きく設定することができ、かつ、該装置の小型化および製造コストの低減を図ることが可能となる。
【0034】
また、本発明の揺動鍛造装置およびこの揺動鍛造装置を用いた揺動鍛造方法において、駆動機構を構成する回転体が、ケース部材と、ケース部材に対して着脱可能に固定された軸受ホルダ(あるいは、軸受ホルダおよび抑え部材)を有する構成を採用する場合には、軸受ホルダ(あるいは、軸受ホルダおよび抑え部材)を交換することにより、基準軸に対する保持孔の傾斜角度を変更することで、基準軸に対する揺動シャフトの傾斜角度である、成形型の揺動角度を広い範囲で変更することが可能となる。
【0035】
さらに、本発明の揺動鍛造装置および揺動鍛造方法は、ハブユニット軸受の製造方法、および、このハブユニット軸受の製造方法を用いてハブユニット軸受を製造する工程を含む、車両の製造方法において、内輪の変形が抑制されたハブの製造が可能となり、かつ、前記装置の小型化による製造コストの低減が図られる。
【0036】
したがって、本発明の工業的意義はきわめて大きいということができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態の1例に関する、揺動鍛造装置を示す略断面図である。
【
図2(a)】
図2(a)は、
図1の揺動鍛造装置の駆動機構を構成する回転体の一部を具体的に示す、断面図である。
【
図2(b)】
図2(b)は、
図1の揺動鍛造装置の駆動機構を構成する回転体の一部を具体的に示す、平面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示した揺動鍛造装置によりハブユニット軸受のかしめ部を形成する工程を順に示す要部拡大断面図である。
【
図4】
図4は、従来から知られているハブユニット軸受の1例を示す断面図である。
【
図5】
図5は、従来から知られているハブユニット軸受の別の1例を示す断面図である。
【
図6】
図6は、従来から知られている揺動鍛造装置によりハブユニット軸受のかしめ部を形成する工程を示す断面図である。
【
図7】
図7は、従来から知られている揺動鍛造装置を構成する、シャフト付球面座と成形型との結合体の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の実施の形態の1例について、
図1~
図5を参照しつつ、説明する。本例の揺動鍛造装置は、
図4あるいは
図5に示したハブユニット軸受のかしめ部9を形成するために使用される。この揺動鍛造装置は、フレーム10と、昇降台11と、シャフト付球面座12(揺動シャフト13および凸球面座14)と、成形型15と、凹球面座16と、駆動機構17とを備える。
【0039】
フレーム10は、工場などの床面上に載置される。フレーム10は、上下方向の基準軸αを有している。別な言い方をすれば、フレーム10には、上下方向の基準軸αが設定されている。
【0040】
昇降台11は、フレーム10内の下部に、基準軸αに沿った昇降を可能に配置されている。昇降台11には、この昇降台11を昇降駆動するための図示しない油圧機構が接続されている。昇降台11の上面には、被加工物であるハブ本体6を、径方向に関するがたつきなく支持するための支持治具18が備えられている。
【0041】
シャフト付球面座12は、中心軸βを有し、かつ、中心軸βに沿って伸長する揺動シャフト13と、揺動シャフト13の軸方向一方側端部(
図1における下端部)に、揺動シャフト13と同軸に結合された凸球面座14とを備えている。シャフト付球面座12は、中心軸βを基準軸αに対して所定角度θだけ傾斜させた状態で、フレーム10内のうち、昇降台11の上方に設置されている。凸球面座14は、揺動シャフト13の軸方向に関する他方側部(
図1における上側部)側で、揺動シャフト13に結合している。凸球面座14の揺動シャフト13の軸方向に関する他方側部は、揺動シャフト13に結合している部分を除き、凸球面部19により構成されている。凸球面部19の曲率中心は、揺動シャフト13の中心軸β上に存在している。このため、揺動シャフト13と凸球面座14は、同軸に配置される。このようなシャフト付球面座12は、全体を一体に形成されていてもよく、複数の部品を組み合わせて構成されていてもよい。
【0042】
成形型15は、凸球面座14のうちで揺動シャフト13の軸方向に関する一方側部に、揺動シャフト13と同軸に結合されている。成形型15のうちで、揺動シャフト13の軸方向に関する一方側側面は、揺動シャフト13の中心軸βと同軸で円環状の加工面部20により構成されている。このような成形型15は、シャフト付球面座12と別体に構成されていてもよく、シャフト付球面座12の全体あるいはシャフト付球面座12を構成する一部の部品と一体に構成されていてもよい。
【0043】
凹球面座16は、フレーム10内の上下方向中間部に固定されている。この凹球面座16は、凸球面座14の凸球面部19と球面係合する凹球面部22と、この凹球面部22の中央部に設けられた、揺動シャフト13の軸方向一方側端部が挿通する挿通孔21とを備える。凹球面部22の曲率中心は、基準軸α上に存在している。このような凹球面座16は、凹球面部22に凸球面部19を球面係合させることに基づいて、成形型15とシャフト付球面座12との結合体23が基準軸αを中心として揺動回転、すなわち公転することを許容し、かつ、結合体23が中心軸βを中心として回転、すなわち自転することを許容すると同時に、揺動鍛造を行う際に成形型15に加わる加工反力を支承する。
【0044】
本例では、凹球面座16の挿通孔21は、上方に向かうほど内径寸法が大きくなるテーパ孔により構成されている。また、フレーム10の内周面のうち、凹球面座16の挿通孔21の上方に隣接する部分であって、揺動シャフト13の軸方向中間部が挿通した部分は、上方に向かうほど内径寸法が段階的に大きくなる段付孔24になっている。これら挿通孔21および段付孔24の内径寸法は、上述のように、成形型15とシャフト付球面座12との結合体23が基準軸αを中心として揺動回転する際に、揺動シャフト13と干渉しない範囲でできる限り小さくなっている。なお、本例において、フレーム10の内周面のうち、挿通孔21の上方に隣接する部分を段付孔24としている理由は、一般的な加工設備を用いる場合の加工の容易さを考慮したためである。本発明を実施する場合、加工可能であれば、段付孔24は、上方に向かうほど内径寸法が大きくなるテーパ孔に変更することも可能である。
【0045】
駆動機構17は、フレーム10内の上端部に組み付けられている。駆動機構17に、揺動シャフト13のうち、段付孔24から上方に突出した軸方向他方側端部が、連結されている。駆動機構17は、揺動シャフト13の軸方向他方側端部に対して、成形型15とシャフト付球面座12との結合体23が基準軸αを中心として揺動回転するための駆動力を付与する。
【0046】
駆動機構17は、回転体26と、保持孔27と、転がり軸受28とを備える。
【0047】
回転体26は、軸受装置25により、フレーム10の上端部の内側に基準軸αを中心とする回転のみを可能に支持されている。回転体26には、回転体26を回転駆動するための図示しないモータの出力部が、直接または図示しない減速機を介して接続されている。
【0048】
保持孔27は、回転体26の径方向中間部の円周方向の一部に設けられている。保持孔27の中心軸は、基準軸αに対して傾斜角度θと実質的に同じ角度だけ傾斜している。
【0049】
転がり軸受28は、保持孔27の内周面と揺動シャフト13の軸方向他方側端部の外周面との間に配置されており、保持孔27に対して揺動シャフト13の軸方向他方側端部を回転自在に支持している。
【0050】
特に、本例では、転がり軸受28によって、揺動シャフト13の軸方向他方側端部が駆動機構17に対し、軸方向一方側に向けて移動する(
図1の下方に脱落する)ことを阻止された状態で支持されている。
【0051】
転がり軸受28が軸方向一方側に向けて移動することを阻止する機能を担うため、転がり軸受28は、ラジアル荷重の支承能力に加えて、アキシアル荷重の支承能力を有する構成を備える。具体的には、転がり軸受28として、自動調心ころ軸受が使用されている。この自動調心ころ軸受では、軸受外輪である外輪29の内周面と軸受内輪である内輪30の外周面との間に、複数の球面ころ31が転動自在に配列され、かつ、図示しない保持器により、これら複数の球面ころ31の姿勢並びに位置が規制されている。このような構成により、転がり軸受28は、外輪29と内輪30との間に作用するラジアル荷重を支承でき、かつ、外輪29と内輪30との間に作用するアキシアル荷重を支承できる。また、外輪29と内輪30との中心軸同士が多少傾斜した場合でも、これら外輪29と内輪30との間での球面ころ31の転動を円滑に行わせることができるといった、自動調心性を有している。このような自動調心ころ軸受の具体的な構成については、すでに公知であるため、その説明を省略する。なお、本発明を実施する場合、転がり軸受28としては、深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受などを使用することも可能である。
【0052】
外輪29は、保持孔27に、揺動シャフト13の軸方向に関する一方側への変位を阻止した状態で内嵌されている。このため、保持孔27の内周面は、軸方向中間部に軸方向他方側(
図1における上側)を向いた段差面32を有する段付孔により構成されている。外輪29は、保持孔27のうち段差面32よりも軸方向他方側に位置する部分にがたつきなく内嵌され、かつ、外輪29の軸方向一方側端面は段差面32に当接している。
【0053】
内輪30は、揺動シャフト13の軸方向他方側端部に、揺動シャフト13の軸方向に関する他方側への変位を阻止した状態で外嵌されている。このため、内輪30は、揺動シャフト13の軸方向他方側端部にがたつきなく外嵌され、かつ、揺動シャフト13の軸方向他方側端部に設けられた雄ねじ部33にナット34が螺合固定され、このナット34は、内輪30の軸方向他方側端面に当接している。
【0054】
このような構成により、揺動シャフト13の軸方向他方側端部が、駆動機構17に対して、軸方向一方側に向けて移動すること、すなわち、結合体23が揺動鍛造装置から下方に脱落することが阻止される。
【0055】
本例では、雄ねじ部33に対するナット34の螺合位置を調節することにより、ナット34と凸球面座14との間隔を調節することで、成形型15の加工面部20をハブ本体6の円筒部8に押し付ける前の状態で、あるいは、加工面部20を円筒部8に押し付けた状態での、凸球面部19と凹球面部22との球面係合部に存在する隙間(係合代)の大きさの適正化が図られている。
【0056】
本発明において、雄ねじ部33へナット34を螺合固定させる構成に代替して、たとえば、揺動シャフトの軸方向他方側端部に軸受内輪を締り嵌めで外嵌する構成や、軸受内輪の軸方向両端面のうち、揺動シャフトの軸方向に関する他方側の端面に、揺動シャフトの軸方向他方側端部に係止された止め輪を当接させる構成を採用して、揺動シャフトの軸方向他方側端部に外嵌した軸受内輪が、揺動シャフトの軸方向に関する他方側へ変位することを阻止することもできる。
【0057】
また、外輪29の軸方向一方側端面が段差面32に当接する構成に代替して、たとえば、保持孔に軸受外輪を締り嵌めで内嵌する構成や、軸受外輪の軸方向両端面のうち、揺動シャフトの軸方向に関する一方側の端面に、保持孔に螺合固定したナットや保持孔に係止された止め輪を当接させる構成を採用して、保持孔に内嵌した軸受外輪が、揺動シャフトの軸方向に関する一方側へ変位することを阻止することもできる。
【0058】
本例では、回転体26は、
図2(a)および
図2(b)に示すように、ケース部材35と、ケース部材35に対して着脱可能に固定された軸受ホルダ36および抑え部材37を備える。
【0059】
ケース部材35は、回転体26の下部を構成し、厚肉円板状の形状を有し、基準軸αに対して同軸に配置される。ケース部材35は、成形型15と反対側の側面である上側面に開口する有底の保持凹部38を有している。
図2(b)に示すように、保持凹部38の上方から見た形状は、基準軸αを中心とする径方向に伸長する長矩形である。また、ケース部材35は、保持凹部38の底部に対応する部位の一部に、貫通孔39を有している。この貫通孔39も、保持凹部38の伸長方向と同方向に伸長する状態で設けられている。
【0060】
軸受ホルダ36は、保持凹部38の長手方向一方側半部(
図2における右半部)にがたつきなく内嵌されている。一方、抑え部材37は、保持凹部38の長手方向他半部(
図2における左半部)にがたつきなく内嵌されている。
【0061】
軸受ホルダ36は、略四角筒状の形状を有し、径方向内側に保持孔27が設けられている。軸受ホルダ36の外周面のうち、保持凹部38の長手方向に関する他方側(
図2(a)における左側)の端部に、第1傾斜面部40を有している。第1傾斜面部40は、基準軸αの方向(
図2(a)における上下方向)に関して成形型15と反対側(
図2(a)における上側)に向かうほど、基準軸αと直交する方向(
図2(a)における左右方向)に関して保持孔27に向かう方向に傾斜している。本例では、第1傾斜面部40は、保持孔27と同方向に同角度だけ傾斜している。
【0062】
抑え部材37は、略直方体状を有し、抑え部材37の外周面のうち、保持凹部38の長手方向に関する一方側(
図2(a)における右側)の端部に、第2傾斜面部41が設けられている。第2傾斜面部41は、第1傾斜面部40と同方向に同角度だけ傾斜し、第1傾斜面部40と面接触している。
【0063】
この状態で、軸受ホルダ36の下面は、保持凹部38の底部に接触しているのに対し、抑え部材37の下面は、保持凹部38の底部に隙間を介して対向している。
【0064】
本例では、たとえば、図示しない抑えボルトの締め付け力により、抑え部材37に対して保持凹部38の底部側(
図2(a)における下側)に向かう方向の予圧が付与されている。これにより、第1傾斜面部40と第2傾斜面部41との係合部に、くさび効果が生じ、保持凹部38に対する軸受ホルダ36の厳密な位置規制がなされている。また、この状態で、抑え部材37の弾性変形により、抑えボルトに軸力が付与されるため、揺動鍛造を行う際に発生する振動によっても、抑えボルトに緩みが発生することが有効に防止される。
【0065】
なお、図示は省略するが、さらなる安全策として、ボルトなどによってケース部材35に結合固定された蓋部材によって、抑え部材37の上面を抑え付けることで、抑え部材37が上方に浮き上がることを防止する構成も採用可能である。
【0066】
いずれにしても、本例では、上述した抑えボルトや蓋部材などの着脱に基づいて、ケース部材35に対し、軸受ホルダ36および抑え部材37が着脱可能に固定されている。
【0067】
本例では、揺動シャフト13の軸方向他方側端部は、ケース部材35の貫通孔39を通じて、軸受ホルダ36の保持孔27に挿通している。
【0068】
また、揺動シャフト13のうち、軸方向に関して凸球面座14と駆動機構17との間に位置する部分には、揺動シャフト13がフレーム10に対して軸方向一方側に向けて移動することを阻止するための部材、すなわち、成形型15とシャフト付球面座12との結合体23が、フレーム10に対して揺動シャフト13の軸方向一方側に向けて移動する(
図1の下方に脱落する)ことを阻止するための部材、たとえば、部分球面状の滑り面を有するスラスト滑り軸受は、組み付けられていない。
【0069】
なお、本例では、揺動鍛造を行う際の成形型15の揺動角度である、傾斜角度θは、15度以上30度以下に設定されている。本例では、このような大きな傾斜角度θを有しているにもかかわらず、駆動機構17と揺動シャフト13の軸方向他端部の接続部に、揺動シャフト13がフレーム10に対して軸方向一方側に向けて移動することを阻止するための機構が設けられているため、スラスト滑り軸受などの部材を、フレーム10内に配置するスペースが不要である。このため、装置の小型化および低コスト化が図られている。
【0070】
このような構成を有する本例の揺動鍛造装置を用いて、ハブ本体6の軸方向内端部にかしめ部9を形成する際には、
図1に示すように、かしめ部9を形成する前のハブ本体6と、ハブユニット軸受を構成するその他の部品とを、組み立てた状態で、昇降台11の上面に設けられた支持治具18により、ハブ本体6が径方向にがたつくことなく、かつ、ハブ本体6の中心軸を基準軸αに一致させた状態で、支持する。
【0071】
この状態で、昇降台11を上昇させて、
図3(a)に示すように、成形型15の加工面部20の円周方向の一部を、ハブ本体6の軸方向内端部に設けられた円筒部8の軸方向内端部の円周方向の一部に押し付ける。この状態で、基準軸αを中心として回転体26を回転させて、成形型15とシャフト付球面座12との結合体23を、基準軸αを中心として、すなわち、基準軸αと結合体23の中心軸βとの交点Pを基準として、揺動回転させる。なお、たとえば、近接センサ(図示せず)を揺動鍛造装置に設けて、近接センサにより、成形型15の加工面部20の円周方向の一部と、ハブ本体6の軸方向内端部に設けられた円筒部8の軸方向内端部の円周方向の一部との間の距離を測定し、所定の距離となった段階、すなわち、成形型15と円筒部8が完全に接触する以前の接近した状態で、結合体23の揺動回転を開始することも可能である。
【0072】
この際に、成形型15とシャフト付球面座12との結合体23は、円筒部8の軸方向内端部との接触部に作用する摩擦力に基づいて、結合体23自身の中心軸βを中心として回転、すなわち自転する。これにより、円筒部8の円周方向の一部に、軸方向外側かつ径方向外側に向いた荷重が加えられる。この荷重を加える部分を円周方向に関して連続的に変化させることにより、
図3(a)から
図3(b)に順に示すように、円筒部8の軸方向内端部を徐々に塑性変形させて、かしめ部9を形成する。特に、本例では、このような揺動鍛造によって、かしめ部9を形成する際の成形型15の揺動角度(傾斜角度θ)を15度以上30度以下に設定しているため、この揺動鍛造を行う際の最大加工荷重を低く抑えることができる。ただし、本発明において、傾斜角度θを、15度以上30度以下から外れた大きさに設定することも可能である。
【0073】
また、この傾斜角度θは、揺動鍛造の工程中において、一定であることが好ましい。特に、
図5に示した、転動体として円すいころ5aを用いたハブユニット軸受を製造する工程においては、傾斜角度θを15度以上30度以下に設定し、近接センサを用いた揺動鍛造の開始を行い、かつ、揺動鍛造の工程中における傾斜角度θを一定に保持することにより、かしめ部9を形成するための加工荷重を小さく抑えることができて、内輪7が、外周面に形成された軸方向内側の内輪軌道4bが膨出するように弾性変形することを防止することが可能となる。
【0074】
本例の揺動鍛造装置では、揺動シャフト13の軸方向他方側端部が駆動機構17に対し、軸方向一方側に向けて移動することを阻止された状態で支持されている。このため、この支持部によって、成形型15とシャフト付球面座12との結合体23がフレーム10に対して揺動シャフト13の軸方向一方側に向けて移動する(
図1の下方に脱落する)ことが防止される。また、揺動シャフト13のうち、軸方向に関して凸球面座14と駆動機構17との間に位置する部分に、揺動シャフト13がフレーム10に対して軸方向一方側に向けて移動することを阻止するための部材、たとえば、部分球面状の滑り面を有するスラスト滑り軸受は、組み付けられていない。したがって、その分だけ、揺動鍛造装置の小型化および製造コストの低減を図ることができる。
【0075】
また、本例では、ケース部材35に対して軸受ホルダ36および抑え部材37を着脱可能に固定している。したがって、軸受ホルダ36および抑え部材37を交換することで、保持孔27の傾斜角度を変更することにより、成形型15の揺動角度(傾斜角度θ)を広い範囲で変更することが可能である。よって、被加工物(たとえば、ハブ本体6)の種類に応じた最適な揺動角度θを選択することが可能である。なお、ケース部材35の貫通孔39に対する揺動シャフト13の挿通位置は、成形型15の揺動角度(傾斜角度θ)に応じて変化する。
【符号の説明】
【0076】
1 外輪
2 ハブ
3a、3b 外輪軌道
4a、4b 内輪軌道
5 玉
5a 円すいころ
6 ハブ本体
7 内輪
8 円筒部
9 かしめ部
10 フレーム
11 昇降台
12 シャフト付球面座
13 揺動シャフト
14 凸球面座
15 成形型
16 凹球面座
17 駆動機構
18 支持治具
19 凸球面部
20 加工面部
21 挿通孔
22 凹球面部
23 結合体
24 段付孔
25 軸受装置
26 回転体
27 保持孔
28 転がり軸受
29 外輪
30 内輪
31 球面ころ
32 段差面
33 雄ねじ部
34 ナット
35 ケース部材
36 軸受ホルダ
37 抑え部材
38 保持凹部
39 貫通孔
40 第1傾斜面部
41 第2傾斜面部
42 スラスト滑り軸受