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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】玉型形状取得装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 21/20 20060101AFI20230314BHJP
   G02C 13/00 20060101ALI20230314BHJP
   B24B 9/14 20060101ALI20230314BHJP
   G01B 5/20 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
G01B21/20 C
G02C13/00
B24B9/14 A
G01B5/20 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020501759
(86)(22)【出願日】2019-02-18
(86)【国際出願番号】 JP2019005907
(87)【国際公開番号】W WO2019163723
(87)【国際公開日】2019-08-29
【審査請求日】2022-01-31
(31)【優先権主張番号】P 2018030086
(32)【優先日】2018-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】武市 教児
(72)【発明者】
【氏名】下條 茜
【審査官】吉川 陽吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-166344(JP,A)
【文献】特開2013-178432(JP,A)
【文献】特開2011-122899(JP,A)
【文献】特開2015-094804(JP,A)
【文献】特開2017-090547(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 21/20
G02C 13/00
B24B 9/14
G01B 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼鏡の玉型形状を取得する玉型形状取得装置であって、
前記眼鏡のフレームにおけるリムの溝の形状情報である第1形状情報を取得する第1形状情報取得手段と、
前記眼鏡のデモレンズまたは型板の周縁の形状情報である第2形状情報を取得する第2形状情報取得手段と、
前記第1形状情報及び前記第2形状情報に基づいて、前記眼鏡に枠入れするレンズを加工するための加工制御データを取得する加工制御データ取得手段と、
を備えることを特徴とする玉型形状取得装置。
【請求項2】
請求項1の玉型形状取得装置において、
前記加工制御データ取得手段は、前記第1形状情報から前記リムの溝の周長を取得し、前記第2形状情報から前記デモレンズまたは前記型板の外形形状を取得し、前記周長と前記外形形状とに基づいて、前記加工制御データを取得することを特徴とする玉型形状取得装置。
【請求項3】
請求項1または2の玉型形状取得装置において、
前記第1形状情報の取得と、前記第2形状情報の取得と、を同時に行うことを特徴とする玉型形状取得装置。
【請求項4】
請求項3の玉型形状取得装置において、
前記リムの溝の形状情報を測定する第1測定手段と、
前記デモレンズまたは前記型板の形状情報を測定する第2測定手段と、
をそれぞれ備えることを特徴とする玉型形状取得装置。
【請求項5】
請求項1または2の玉型形状取得装置において、
前記第1形状情報の取得と、前記第2形状情報の取得と、を異なるタイミングで行うことを特徴とする玉型形状取得装置。
【請求項6】
請求項5の玉型形状取得装置において、
前記リムの溝の形状情報を測定する第1測定手段と、
前記デモレンズまたは前記型板の形状情報を測定する第2測定手段と、
を備え、
前記第1測定手段と前記第2測定手段とが兼用されることを特徴とする玉型形状取得装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼鏡の玉型形状を取得する玉型形状取得装置に関する。
【背景技術】
【0002】
眼鏡フレームを保持するフレーム保持ユニットと、眼鏡フレームのリムの溝に押し当てた測定子の移動を検出して、リムの溝の形状(例えば、周長、外形形状、等)を測定する測定ユニットと、を備える眼鏡枠形状測定装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、測定子が取り付けられた測定子軸をデモレンズまたは型板に接触させることで、デモレンズまたは型板の形状を測定することが可能な眼鏡枠形状測定装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-021069号公報
【文献】特開2011-122898号公報
【発明の概要】
【0004】
眼鏡フレームにはデモレンズが枠入れされており、リムの溝の外形形状は、眼鏡フレームからデモレンズを外した状態で測定される。眼鏡フレームにデモレンズが付いた状態と、眼鏡フレームからデモレンズを外した状態と、では、眼鏡フレームのリムの溝の外形形状が変形することがある。また、眼鏡フレームをフレーム保持ユニットに保持させると、眼鏡フレームが押圧されて、眼鏡フレームのリムの溝の外形形状が変形することがある。このような状態の眼鏡フレームに測定子を押し当てることで取得したリムの溝の外形形状と、リムの溝の周長と、に基づいて玉型形状を取得し、レンズを加工すると、眼鏡フレームにレンズを上手く枠入れできないことがあった。
【0005】
また、眼鏡フレームから外したデモレンズ(もしくは型板)の形状を測定する際には、デモレンズの外形形状と、デモレンズの外形形状に基づいて演算された周長と、を用いて玉型形状が取得されていた。しかし、演算された周長は、眼鏡フレームのリムの溝の周長とは長さが異なっている場合がある。このような状態において玉型形状を取得し、レンズを加工すると、眼鏡フレームにレンズを上手く枠入れできないことがあった。
【0006】
本開示は、上記従来技術に鑑み、眼鏡フレームへのレンズの枠入れ状態をよくすることが可能な玉型形状取得装置を提供することを技術課題とする。
【0007】
本開示に係る玉型形状取得装置は、眼鏡の玉型形状を取得する玉型形状取得装置であって、前記眼鏡のフレームにおけるリムの溝の形状情報である第1形状情報を取得する第1形状情報取得手段と、前記眼鏡のデモレンズまたは型板の周縁の形状情報である第2形状情報を取得する第2形状情報取得手段と、前記第1形状情報及び前記第2形状情報に基づいて、前記眼鏡に枠入れするレンズを加工するための加工制御データを取得する加工制御データ取得手段と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】玉型形状取得装置の外観略図である。
図2】フレーム保持ユニットの上面図である。
図3】フレーム保持ユニットの斜視図である。
図4】クランプ機構の概略構成図である。
図5A】移動ユニットの概略構成図である。
図5B】測定子保持ユニットの概略構成図である。
図6】玉型形状取得装置の制御系を示す図である。
図7】制御動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<概要>
典型的な実施形態の1つについて、図面を参照して説明する。図1図7は、本実施形態に係る玉型形状取得装置を説明する図である。なお、以下の<>にて分類された項目は、独立または関連して利用され得る。
【0010】
<形状情報取得手段>
例えば、玉型形状取得装置は、第1形状情報取得手段(例えば、制御部50)を備える。第1形状情報取得手段は、眼鏡のフレームにおけるリムの溝の形状情報である第1形状情報を取得する。例えば、第1形状情報は、リムの溝の3次元形状データであってもよい。また、例えば、第1形状情報は、リムの溝の2次元形状データであってもよい。例えば、リムの溝の形状情報は、リムの溝の周長、リムの溝の外形形状、等のデータであってもよい。なお、本実施例では、第1形状情報として、少なくともリムの溝の周長を含む3次元形状データが取得される。
【0011】
例えば、玉型形状取得装置は、第2形状情報取得手段(例えば、制御部50)を備える。第1形状情報取得手段は、眼鏡のデモレンズまたは型板の周縁の形状情報である第2形状情報を取得する。例えば、第2形状情報は、デモレンズまたは型板の2次元形状データであってもよい。また、例えば、第2形状情報は、デモレンズまたは型板の3次元形状データであってもよい。例えば、デモレンズまたは型板の形状情報は、デモレンズまたは型板の周長、デモレンズまたは型板の外形形状、等のデータであってもよい。なお、本実施例では、第2形状情報として、少なくともデモレンズまたは型板の外形形状を含む2次元形状データが取得される。
【0012】
なお、本実施例において、第1形状情報取得手段は、蓄積されたデータから第1形状情報を取得するようにしてもよい。また、本実施例において、第2形状情報取得手段は、蓄積されたデータから第2形状情報を取得するようにしてもよい。すなわち、本実施例では、第1形状情報と、第2形状情報と、の少なくともいずれかが、蓄積されたデータから取得されてもよい。例えば、このような場合には、予め測定された第1形状情報や第2形状情報を蓄積しておき、第1形状情報取得手段あるいは第2形状情報取得手段が、該当するデータを呼び出して設定することで、第1形状情報や第2形状情報を取得することができる。
【0013】
例えば、玉型形状取得装置は、第1形状情報の取得と、第2形状情報の取得と、を同時に行ってもよい。この場合には、玉型形状取得装置が、他の装置により取得された第1形状情報と第2形状情報とを同時に受信する構成としてもよい。また、この場合には、玉型形状取得装置が、リムの溝の形状情報を測定する第1測定手段と、デモレンズまたは型板の形状情報を測定する第2測定手段と、をそれぞれ備え、各形状情報を同時に測定する構成としてもよい。また、この場合には、玉型形状取得装置が、リムの溝の形状情報を測定する第1測定手段と、デモレンズまたは型板の形状情報を測定する第2測定手段と、を兼用して、各形状情報を同時に測定する構成であってもよい。すなわち、1つの測定手段を用いることで、第1形状情報と第2形状情報とを同時に測定する構成であってもよい。
【0014】
なお、1つの測定手段を用いて各形状情報を同時に測定する構成の一例としては、測定子(例えば、測定子281)及び測定子軸(例えば、測定子軸282)を有する測定手段(例えば、測定ユニット200)を用いて、測定子がリムの溝に接触するように、かつ、測定子軸がデモレンズ(または型板)の周縁に接触するように、測定手段を移動させてもよい。また、一例としては、測定子及び測定子軸を有する測定手段を用いて、測定子がリムの溝に接触するように、かつ、測定子軸がデモレンズ(または型板)の周縁に接触するように、フレーム及びデモレンズ(または型板)を移動させてもよい。
【0015】
例えば、玉型形状取得装置がこのような構成であることによって、操作者は、リムの溝の形状情報、及び、デモレンズまたは型板の形状情報、を異なるタイミングで測定するよりも、測定時間を短縮することができる。また、測定が終了するまでの煩わしさを軽減させることができる。
【0016】
例えば、玉型形状取得装置は、第1形状情報の取得と、第2形状情報の取得と、を異なるタイミングで行ってもよい。この場合には、玉型形状取得装置が、他の装置により取得された第1形状情報と第2形状情報とを異なるタイミングで受信する構成としてもよい。また、この場合には、玉型形状取得装置が、リムの溝の形状情報を測定する第1測定手段と、デモレンズまたは型板の形状情報を測定する第2測定手段と、をそれぞれ備え、各形状情報を異なるタイミングで測定する構成としてもよい。また、この場合には、玉型形状取得装置が、リムの溝の形状情報を測定する第1測定手段と、デモレンズまたは型板の形状情報を測定する第2測定手段と、を兼用して、各形状情報を異なるタイミングで測定する構成としてもよい。これによって、1つの測定手段を設けるのみで第1形状情報及び第2形状情報の取得が可能になり、玉型形状取得装置を簡易な構成にすることができる。
【0017】
なお、玉型形状取得装置が第1測定手段または第2測定手段の少なくともいずれかを備える場合、測定手段は、第1形状情報及び第2形状情報を接触式の構成で測定する測定手段であってもよい。また、測定手段は、第1形状情報及び第2形状情報を非接触式の構成で測定する測定手段であってもよい。また、測定手段は、第1形状情報及び第2形状情報の一方を接触式の構成で、他方を非接触式の構成で測定する測定手段であってもよい。
【0018】
例えば、接触式の構成で測定する測定手段は、リムの溝に測定子を接触させる構成、デモレンズまたは型板の周縁に測定子軸を接触させる構成、等であってもよい。例えば、測定子及び測定子軸の移動を検出することで、第1形状情報及び第2形状情報を測定することができる。
【0019】
例えば、非接触式の構成で測定する測定手段は、測定光束を照射する投光光学系と、測定光束が反射された反射光束を受光する受光光学系と、を備えていてもよい。投光光学系は、リムの溝、デモレンズの周縁、型板の周縁、等の少なくともいずれかに測定光束を照射してもよい。また、受光光学系は、測定光束がリムの溝、デモレンズの周縁、型板の周縁、等の少なくともいずれかに反射された反射光束を受光してもよい。例えば、このような反射光束を解析処理することで、第1形状情報及び第2形状情報を測定することができる。
【0020】
<加工制御データ取得手段>
例えば、玉型形状取得装置は、加工制御データ取得手段(例えば、制御部50)を備える。加工制御データ取得手段は、第1形状情報及び第2形状情報に基づいて、眼鏡に枠入れするレンズを加工するための加工制御データを取得する。なお、加工制御データ取得手段は、玉型形状取得装置の制御部により演算されることで取得されてもよい。また、加工制御データ取得手段は、他の装置の制御部により演算された加工制御データを受信することで取得してもよい。
【0021】
例えば、本実施例においては、加工制御データ取得手段が、第1形状情報からリムの溝の周長を取得し、第2形状情報からデモレンズまたは型板の外形形状を取得し、リムの溝の周長と、デモレンズまたは型板の外形形状と、に基づいて、加工制御データを取得してもよい。従来は、眼鏡のフレームにおけるリムの溝の形状情報である第1形状情報、あるいは、デモレンズまたは型板の周縁の形状情報である第2形状情報、のいずれか一方に基づく加工制御データが取得されていた。例えば、第1形状情報に基づく加工制御データは、リムの溝の周長と、リムの溝の外形形状と、に基づいて取得されていた。第1形状情報が接触式の構成により取得されていると、フレームを押圧するように保持した状態で測定がなされるため、リムの溝の外形形状は、実際のリムの溝の外形形状とは異なる場合がある。このような現象は、特にフルリムフレームの場合によく起こり得る。例えば、実際のリムの溝の外形形状とは異なる外形形状と、リムの溝の周長と、から加工制御データを取得し、これに基づく加工をレンズに施すと、レンズをフレームに上手く枠入れできないことがある。
【0022】
また、例えば、第2形状情報に基づく加工制御データは、デモレンズ(もしくは型板)の外形形状と、この外形形状に基づいて演算された周長と、によって取得されていた。しかし、デモレンズの外形形状に基づいて演算された周長は、眼鏡フレームのリムの溝の周長とは長さが異なっている場合がある。このような周長と、デモレンズの外形形状と、から加工制御データを取得し、これに基づく加工をレンズに施すと、レンズをフレームに上手く枠入れできないことがある。
【0023】
例えば、本実施例では、玉型形状取得装置が第1形状情報及び第2形状情報を取得する構成であることによって、これらに基づいた精度のよい加工制御データを取得できるようになる。また、この加工制御データを眼鏡レンズ加工装置等で用いることで、従来に比べて、フレームへのレンズの枠入れ状態をよくすることができる。
【0024】
なお、例えば、加工制御データ取得手段は、第1形状情報及び第2形状情報に基づく加工制御データを直接取得してもよい。また、例えば、加工制御データ取得手段は、第1形状情報及び第2形状情報に基づく玉型形状データを取得し、この玉型形状データに対する加工制御データを取得してもよい。
【0025】
また、例えば、加工制御データ取得手段は、第1形状情報と第2形状情報に加え、レンズのレイアウトデータに基づいて、加工制御データを取得してもよい。すなわち、加工制御データ取得手段は、第1形状情報、第2形状情報、及びレイアウトデータに基づいて、加工制御データを取得するようにしてもよい。もちろん、これらに加えて、レンズの加工条件、レンズのレンズ形状データ、等の少なくともいずれかが用いられてもよい。
【0026】
<実施例>
以下、玉型形状取得装置について、図面を参照して説明する。本実施例では、玉型形状取得装置の左右方向(水平方向)をX方向、上下方向(鉛直方向)をY方向、前後方向をZ方向として表す。
【0027】
図1は玉型形状取得装置の外観略図である。例えば、玉型形状取得装置1は、開口窓2、モニタ(ディスプレイ)3、スイッチ部4、フレーム保持ユニット100、測定ユニット200、取付部300、等を備える。
【0028】
例えば、モニタ3はタッチパネルである。すなわち、モニタ3が操作部(コントローラ)として機能する。本実施例では、モニタ3により、レンズのレイアウトデータ、レンズの加工条件、等を入力することができる。モニタ3から入力された操作指示に応じた信号は、後述する制御部50に出力される。なお、モニタ3はタッチパネル式でなくてもよく、モニタ3と操作部とを別に設ける構成であってもよい。この場合には、マウス、ジョイスティック、キーボード、携帯端末、等の少なくともいずれかを操作部として用いることができる。
【0029】
例えば、モニタ3は、玉型形状取得装置1に搭載されたモニタであってもよい。また、例えば、モニタ3は、玉型形状取得装置1に接続されたモニタであってもよい。この場合には、パーソナルコンピュータのモニタを用いる構成としてもよい。なお、モニタ3は、複数のモニタを併用する構成であってもよい。
【0030】
スイッチ部4は、玉型形状取得装置1に各種の処理を実行させるための信号を入力する際に使用する。例えば、各種の処理とは、測定モードの切り換え、測定の開始、等である。なお、本実施例では、スイッチ部4が玉型形状取得装置1の本体カバーに設けられている。もちろん、スイッチ部4は、モニタ3の画面上おいて電子的に表示されてもよい。この場合には、モニタ3の画面をタッチしてスイッチ部4を操作することができる。
【0031】
フレーム保持ユニット100は、フレームFを所期する状態に保持する。フレーム保持ユニット100は、開口窓2の内部に配置されている。取付部300には、フレームFから取り外したデモレンズDL、または、型板MPを測定する際に使用するホルダ310が取り付けられる。なお、ホルダ310についての詳細は、例えば、特開2013-068439号公報を参照されたい。
【0032】
測定ユニット200は、フレーム保持ユニット100の下部に配置される。測定ユニット200は、フレームFにおけるリムの溝の形状情報(第1形状情報)を測定する。本実施例において、測定ユニット200は、フレームFのリム溝に後述する測定子281を挿入し、測定子281の移動を検出することにより、リムの溝の形状情報を測定する。また、測定ユニット200は、デモレンズDLまたは型板MPの周縁の形状情報(第2形状情報)を測定する。本実施例において、測定ユニット200は、デモレンズDLまたは型板MPの周縁に後述する測定子軸282を接触させ、測定子軸282の移動を検出することにより、デモレンズDLまたは型板MPの周縁の形状情報を測定する。つまり、測定ユニット200は、リムの溝の形状情報を測定するための測定ユニットと、デモレンズDLまたは型板MPの周縁の形状情報を測定するための測定ユニットと、を兼ねる。
【0033】
図2及び図3はフレーム保持ユニット100を説明する図である。図2はフレーム保持ユニット100の上面図である。なお、図2のフレーム保持ユニット100は、フレームを保持した状態である。図3はフレーム保持ユニット100の斜視図である。なお、図3のフレーム保持ユニット100は、取付部300にホルダ310を装着した状態である。
【0034】
例えば、フレーム保持ユニット100は、保持部ベース101、第1スライダー102、第2スライダー103、開閉移動機構110、クランプ機構150、等を備える。
【0035】
第1スライダー102及び第2スライダー103は、保持部ベース101上に載置されている。第1スライダー102は、フレームFの右リムRIR及び左リムRILの上側に当接する第1面105をもつ。第2スライダー103は、フレームFの右リムRIR及び左リムRILの下側に当接する第2面106をもつ。第1面105と、第2面106と、は互いに対向する。第1面105と第2面106は、開閉移動機構110によって、第1面105と第2面106との間隔が開閉される方向(間隔が広がる方向と狭まる方向)に移動する。また、第1面105と第2面106には、クランプ機構150が備えるクランプピンが突き出すように配置されている。
【0036】
クランプピンは、リムの厚み方向(眼鏡装用時の前側及び後側)から、左右のリムをクランプ(保持)する。第1スライダー102には、クランプピンとして、一対のクランプピン230aとクランプピン230bとが設けられている。クランプピン230a及びクランプピン230bは2箇所に配置され、右リムRIR及び左リムRILの上側をクランプする。第2スライダー103には、クランプピンとして、一対のクランプピン230cとクランプピン230dとが設けられている。クランプピン230c及びクランプピン230dは2箇所に配置され、右リムRIR及び左リムRILの下側をクランプする。
【0037】
開閉移動機構110は、2つのガイドレール111、プーリー112、プーリー113、ワイヤー114、バネ115、等を備える。ガイドレール111は、保持部ベース101の左右それぞれに配置され、Y方向に延びている。ワイヤー114は、プーリー112とプーリー113とに掛け渡されている。ワイヤー114の左側には、第1スライダー102の右端部102Rが取り付けられる。ワイヤー114の右側には、第2スライダー103の右端部103Rが取り付けられる。バネ115は、第1スライダー102及び第2スライダー103の間隔を閉じる方向に常時付勢する。開閉移動機構110は、このような構成をもつことによって、X方向の中心線N1を中心に、第1スライダー102と第2スライダー103とを、その間隔が広がる方向と狭まる方向とに移動させる。第1スライダー102が移動すると、第2スライダー103も連動して移動する。
【0038】
図4はクランプ機構150の概略構成図である。なお、図4は第1スライダー102の左側に配置されたクランプ機構150を示している。クランプ機構は、ベース板151、クランプピン230a、クランプピン230b、第1アーム152、第2アーム153、圧縮バネ157、バネ156、ギヤ158、ギヤ159、ワイヤー160、プーリー161、駆動ユニット170、等を備える。
【0039】
ベース板151は、第1スライダー102の内部に配置されている。第1アーム152は、回転軸175によって、ベース板151に対して回転可能に保持されている。第1アーム152には、回転軸175を中心としたギヤ158が形成されている。第2アーム153は、回転軸176によって、ベース板151に対して回転可能に保持されている。第2アーム153には、回転軸176を中心としたギヤ159が形成されている。ギヤ158とギヤ159とは互いに噛合する。第1アーム152の先端には、クランプピン230aが取り付けられている。第2アーム153の先端には、クランプピン230bが取り付けられている。圧縮バネ157は、第1アーム152及び第2アーム153の間に設けられている。圧縮バネ157によって、クランプピン230aとクランプピン230bとの間隔が、常に開く方向に付勢される。第1アーム152の後端には、バネ156の一端が取り付けられている。バネ156の他端には、ワイヤー160が固定されている。ワイヤー160は、ベース板151に回転可能に取り付けられたプーリー161を介して、駆動ユニット170に接続される。
【0040】
例えば、駆動ユニット170は、シャフト171、モータ172、等を有する。シャフト171は、ワイヤー160を巻き取る。モータ172は、シャフト171を回転させる。例えば、モータ172を駆動させ、ワイヤー160を巻き取ると、第1アーム152は回転軸175を中心として反時計回りに回転する。このとき、ギヤ158とギヤ159とは噛合しているため、第2アーム153が回転軸176を中心として時計回りに回転する。これにより、クランプピン230a及びクランプピン230bが連動して閉じられ、左リムRILの上側がクランプされる。
【0041】
なお、右リムRIRの上側をクランプするためのクランプ機構(すなわち、第1スライダー102の右側に配置されたクランプ機構)は、図4に示すクランプ機構150を左右に反転させた構成であってもよい。また、右リムRIR及び左リムRILの下側をクランプするためのクランプ機構(すなわち、第2スライダー103の左側及び右側のそれぞれに配置されたクランプ機構)は、第1スライダー102に配置されたクランプ機構150を上下に反転させた構成であってもよい。
【0042】
また、モータ172及びシャフト171は、4箇所に設けられたクランプ機構150にそれぞれ配置される構成であってもよいが、4箇所のクランプ機構150において共通で使用される構成であってもよい。本実施例では、いずれの場合も、4箇所のクランプピンが同時に開閉するように構成される。
【0043】
測定ユニット200について説明する。図5Aは移動ユニット210の概略構成図である。図5Bは測定子保持ユニット250の概略構成図である。例えば、測定ユニット200は、ベース部211、移動ユニット210、測定子保持ユニット250、等を備える。ベース部211は、X方向及びY方向に伸展した方形状の枠であり、フレーム保持ユニット100の下部に配置される。移動ユニット210は、測定子保持ユニット250を、フレームF、デモレンズDL、または型板MP、に対して相対的に移動させる。測定子保持ユニット250は、測定子軸282、及び、測定子軸282に取り付けられた測定子281、を保持する。
【0044】
移動ユニット210は、測定子保持ユニット250をX方向、Y方向、及びZ方向に移動させる。例えば、移動ユニット210は、Y移動ユニット230、X移動ユニット240、Z移動ユニット220、モータ235、モータ225、モータ245、等を有する。Y移動ユニット230は、測定子保持ユニット250をY方向に移動させる。Y移動ユニット230は、モータ235の駆動により、Y方向に延びる図示なきガイドレールに沿って、測定子保持ユニット250をY方向に移動させる。X移動ユニット240は、Y移動ユニット230をX方向に移動させる。X移動ユニット240は、モータ245の駆動により、X方向に延びるガイドレール241に沿って、Y移動ユニット230をX方向に移動させる。Z移動ユニット220は、測定子保持ユニット250をZ方向に移動させる。Z移動ユニット220はY移動ユニット230に取り付けられ、モータ225の駆動により、Z方向に延びるガイドレール221に沿って、測定子保持ユニット250をZ方向に移動させる。
【0045】
測定子保持ユニット250は、Z方向に延びる回転軸P1の軸回りに測定子軸282を回転する回転ユニット260を有する。回転ユニット260は、測定子軸282が取り付けられた回転ベース251と、回転軸P1を中心として回転ベース251を回転させるモータ265と、を有する。回転ベース251は、測定子軸282を、測定子281の先端方向に移動可能(傾斜可能)に保持する。また、回転ベース251は、測定子軸282を、Z方向に移動可能に保持する。測定子281の先端方向の位置、及び測定子軸282の中心位置は、検知器であるエンコーダ286により検知される。測定子281のZ方向の位置、及び測定子軸282のZ方向の位置は、検知器であるエンコーダ288により検知される。なお、測定子保持ユニット250は、測定子281の先端をリム(右リムRIRと左リムRIL)の溝に押し当てる測定圧を付与するための図示なき測定圧付与機構を備える。
【0046】
<制御部>
図6は、本実施例に係る玉型形状取得装置1の制御系を示す図である。例えば、制御部50には、モニタ3、スイッチ部4、不揮発性メモリ55(以下、メモリ55)、エンコーダ(エンコーダ286、及び288)と、各モータ(モータ172、225、235、245、及び265)、等が電気的に接続されている。メモリ55は、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体であってもよい。例えば、メモリ55としては、ハードディスクドライブ、フラッシュROM、着脱可能なUSBメモリ、等を使用することができる。メモリ55は、測定ユニット200が測定したフレームFにおけるリムの溝の形状情報(第1形状情報)、測定ユニット200が測定したデモレンズDL(または型板MP)における周縁の形状情報(第2形状情報)、制御部50が取得した加工制御データ、等を記憶してもよい。
【0047】
例えば、制御部50は、一般的なCPU(プロセッサ)、RAM、ROM、等で実現される。例えば、CPUは、玉型形状取得装置1における各部の駆動を制御する。例えば、RAMは、各種の情報を一時的に記憶する。例えば、ROMには、CPUが実行する各種プログラムが記憶されている。なお、制御部50は、複数の制御部(つまり、複数のプロセッサ)によって構成されてもよい。
【0048】
<制御動作>
以下、玉型形状取得装置1を用いて加工制御データを取得する手順を、図7に示すフローチャートを用いて、玉型形状取得装置1の制御動作とともに説明する。
【0049】
本実施例において、操作者は、スイッチ部4を操作することで、測定モードを設定する。例えば、リムの溝の形状情報である第1形状情報を取得するためのフレームトレースモードと、デモレンズDL(または型板MP)の周縁の形状情報である第2形状情報を取得するためのパターントレースモードと、のいずれかが、操作者によって設定される。なお、フレームトレースモードによる第1形状情報の取得と、パターントレースモードによる第2形状情報の取得と、はどちらを先に実施してもよい。また、フレームトレースモードによる第1形状情報の取得と、パターントレースモードによる第2形状情報の取得と、は制御部50によって自動的に連続で実施されてもよい。
【0050】
<第1形状情報の取得(S1)>
まず、操作者は、眼鏡のフレームFにおけるリムの溝の形状情報である第1形状情報を取得する。本実施例では、玉型形状取得装置1が備える測定ユニット200を用いてフレームを測定することにより、第1形状情報が取得される。もちろん、玉型形状取得装置1は、別装置にて測定された第1形状情報を受信することによって、第1形状情報を取得する構成としてもよい。
【0051】
操作者は、スイッチ部4を操作して、フレームトレースモードを設定する。また、操作者は、第1スライダー102と第2スライダー103との間隔を広げ、リムの上側と下側をクランプピンでクランプすることで、フレーム保持ユニット100にフレームを保持させる。なお、第1スライダー102の移動が制限される後述の状態(取付部300にホルダ310を取り付けた状態)よりも、第1スライダー102と第2スライダー103との間隔が狭い状態を検知することで、制御部50が自動的に測定モードをフレームトレースモードに設定してもよい。
【0052】
続いて、操作者は、スイッチ部4を操作して、第1形状情報の測定を開始する。制御部50は、測定開始の信号が入力されると、測定ユニット200の駆動を制御して、右リムRIRの第1形状情報を測定する。制御部50は、測定子281を初期位置から測定開始位置に移動させ、測定子281の先端を右リムRIRの溝に挿入する。例えば、本実施例では、測定子281のXY方向における初期位置が、右リムRIR側の位置SR(図2参照)に設定されている。位置SRは、そのX方向の位置が、クランプピン230a及び230bの中央の位置であり、Y方向の位置が、中心線N1の位置であってもよい。もちろん、初期位置は、任意の位置に設定可能であってもよい。
【0053】
制御部50は、初期位置SRにて、測定子281の先端が右リムRIRの下側のクランプピン230a及び230bを向くように、回転ユニット260を回転させる。また、制御部50は、測定子281が右リムRIRの溝に接触するように、測定子保持ユニット250をリム側に移動させる。例えば、このようにして、測定子281は初期位置SRから測定開始位置へ移動され、測定子281の先端が右リムRIRの溝に挿入される。
【0054】
制御部50は、測定子281の先端を右リムRIRの溝に沿って移動させる。このとき、制御部50は、モータ265を駆動することで、回転ベース251を回転させるとともに、回転軸P1(図5B参照)の軸回りに測定子軸282及び測定子281を回転させる。測定子281は、リムの溝の変化に追従して、X方向、Y方向、及びZ方向に移動する。本実施例では、トレース時における測定子281のX方向及びY方向の位置が、エンコーダ286により検知され、トレース時における測定子281のZ方向の位置が、エンコーダ288により検知される。これによって、測定子281が右リムRIRの溝の周方向に移動し、右リムRIRの溝がトレースされる。
【0055】
制御部50は、回転ベース251の回転角(動径角)毎に、基準位置からの右リムRIRの溝までの動径長を得る。例えば、本実施例では、回転ベース251の回転角が0.36度毎に設定されている。また、例えば、本実施例では、基準位置が回転軸Z1の位置に設定されている。例えば、回転ベース251のある回転角(θn)における動径長(rn)は、測定子軸282の回旋角と、回旋中心から測定子281の先端までの距離(これは既知である)と、に基づいて演算される。また、制御部50は、エンコーダ286及びエンコーダ288の検知信号に基づいて、回転ベース251の回転角毎に、X方向、Y方向、及びZ方向におけるリムの溝の位置を得る。回転ベース251を1回転させることで、右リムRIRの溝の全周の3次元形状データ(xn,yn,zn)(n=1、2、3、・・・、N)が取得される。なお、本実施例において、このような3次元形状データは、3次元の直交座標で表されている。3次元形状データは、X方向及びY方向の位置を回転角θn及び動径長rnによって2次元の極座標で表すとともに、Z方向の位置をZ座標で表した(rn,zn,θn)(n=1,2,3、・・・、N)に適宜変換されてもよい。
【0056】
例えば、操作者は、右リムRIRの測定を終えると、上記と同様にして、左リムRILの溝の全周の3次元形状データを取得する。なお、左リムRILの溝における3次元形状データは、右リムRIRの溝における3次元形状データを左右反転させることで取得するようにしてもよい。例えば、制御部50は、取得したこれらの3次元形状データを、第1形状情報としてメモリ55に記憶する。
【0057】
<第2形状情報の取得(S2)>
次に、操作者は、デモレンズDLまたは型板MPの周縁の形状情報である第2形状情報を取得する。本実施例では、玉型形状取得装置1が備える測定ユニット200を用いてデモレンズDLを測定することにより、第2形状情報が取得される。もちろん、玉型形状取得装置1は、別装置にて測定された第2形状情報を受信することによって、第2形状情報を取得する構成としてもよい。
【0058】
操作者は、スイッチ部4を操作して、パターントレースモードを設定する。また、操作者は、右リムRIRから外したデモレンズ(右デモレンズ)DLをホルダ310に取り付け、第1スライダー102と第2スライダー103との間隔を広げて、取付部300にホルダ310を取り付ける。このとき、第1スライダー102がホルダ310に接触し、第1スライダー102の手前側(操作者側)への移動が制限される。なお、第1スライダー102の移動が制限された状態を検知することで、制御部50が自動的に測定モードをパターントレースモードに設定してもよい。
【0059】
続いて、操作者は、スイッチ部4を操作して、第2形状情報の測定を開始する。制御部50は、測定開始の信号が入力されると、測定ユニット200の駆動を制御して、右デモレンズの第2形状情報を測定する。制御部50は、測定子軸282を初期位置から測定開始位置に移動させ、測定子軸282のZ方向における中央部285(図5(B)に示す斜線部)を右デモレンズの周縁に接触させる。例えば、本実施例では、測定子軸282のX方向の位置が、クランプピン230a及び230bの中央の位置に設定されている。また、例えば、本実施例では、測定子軸282のY方向における初期位置が、デモレンズDLの取付中心軸P2(図3参照)の位置に設定されている。もちろん、初期位置は、任意の位置に設定可能であってもよい。
【0060】
制御部50は、このような初期位置にて、測定子軸282の中央部285が、ホルダ310に取り付けられたデモレンズDLの高さに位置するように、測定子保持ユニット250を駆動する。また、制御部50は、測定子軸282の中央部285が、デモレンズDLの周縁に接触するように、測定子保持ユニット250をデモレンズDL側に移動させる。例えば、このようにして、測定子軸282は初期位置から測定開始位置へ移動され、測定子軸281の中央部285が右デモレンズの周縁(言い換えると、右デモレンズに形成されたヤゲンの頂点)に接触する。
【0061】
制御部50は、測定子軸282を右デモレンズの周縁に沿って移動させる。このとき、制御部50は、モータ265を駆動することで、回転ベース251を回転させるとともに、回転軸P1(図5B参照)の軸回りに測定子軸282を回転させる。測定子軸282は、デモレンズDLの周縁の変化に応じて、X方向及びY方向に移動する。本実施例では、トレース時における測定子軸282のX方向及びY方向の位置が、エンコーダ286により検知される。これによって、測定子軸282は、右デモレンズの周縁に沿って移動し、右デモレンズの周縁がトレースされる。
【0062】
制御部50は、回転ベース251の回転角毎に、基準位置から右デモレンズの周縁までの動径長を得る。例えば、本実施例では、基準位置が取付中心軸P2の位置に設定されている。また、制御部50は、エンコーダ286の検知信号に基づいて、回転ベース251の回転角毎に、X方向及びY方向におけるデモレンズDLの周縁の位置を得る。回転ベース251を1回転させることで、右デモレンズの全周の2次元形状データ(xn,yn)(n=1,2,3、・・・、N)が取得される。すなわち、回転ベース251を1回転させることで、右デモレンズに形成されたヤゲンの頂点における2次元形状データを取得する。
【0063】
例えば、操作者は、右デモレンズの測定を終えると、上記と同様にして、左デモレンズの周縁の全周の2次元形状データを取得する。なお、左デモレンズの周縁における2次元形状データは、右デモレンズの周縁における2次元形状データを左右反転させることで取得するようにしてもよい。例えば、制御部50は、取得したこれらの2次元形状データを、第2形状情報としてメモリ55に記憶する。
【0064】
<リムの溝の周長の取得(S3)>
例えば、制御部50は、第1形状情報からリムの溝の周長を取得する。例えば、制御部50は、メモリ55に記憶したリムの溝の3次元形状データを用いて、リムの溝の周長を求める。例えば、リムの溝の3次元形状データは、前述したように、回転ベース251の回転角毎にリムの溝の位置を3次元の直交座標(すなわち、XYZ座標)で表したデータである。例えば、制御部50は、位置座標間の距離をそれぞれ算出し、これらの距離を足し合わせることによって、リムの溝の周長W1を求めることができる。
【0065】
<デモレンズの外形形状の取得(S4)>
また、例えば、制御部50は、第2形状情報からデモレンズDLの外形形状を取得する。例えば、制御部50は、メモリ55に記憶したデモレンズDLの周縁の2次元形状データを用いて、デモレンズDLの外形形状を取得する。例えば、デモレンズDLの周縁の2次元形状データは、前述したように、回転ベース251の回転角毎にデモレンズDLの周縁の位置を2次元の直交座標(すなわち、XY座標)で表したデータである。例えば、制御部50は、各位置座標を繋ぎ合わせることによって、デモレンズDLの外形形状を取得することができる。
【0066】
例えば、制御部50は、第1形状情報から取得したリムの溝の周長と、第2形状情報から取得したデモレンズDLの外形形状と、に基づいて、眼鏡に枠入れするレンズを加工するための加工制御データを取得する。従来は、リムの溝の3次元形状データから、リムの溝の周長と、リムの溝の外形形状と、がそれぞれ取得され、これらに基づいた玉型形状データが取得されていた。しかし、前述のように、リムの溝の3次元形状データは、フレームFが第1スライダー102及び第2スライダー103の間に保持された状態にて測定されており、フレームFはスライダーに押圧されて変形している場合がある。このため、リムの溝の3次元形状データから取得したリムの溝の外形形状は、実際のリムの溝の外形形状とは異なる場合がある。このようなリムの溝の外形形状を用いた玉型形状データから加工制御データを取得し、レンズを加工すると、フレームFにレンズを上手く枠入れできないことがある。
【0067】
また、従来は、デモレンズDLの2次元形状データからデモレンズDLの外形形状が取得され、デモレンズDLの外形形状に基づく周長が演算されることで、玉型形状データが取得されていた。しかし、前述のように、演算された周長は、リムの溝の周長とは長さが異なっている場合がある。このような周長を用いた玉型形状データから加工制御データを取得し、レンズを加工すると、フレームFにレンズを上手く枠入れできないことがある。
【0068】
そこで、本実施例では、3次元形状データの測定時にほとんど変化しないリムの溝の周長と、2次元形状データの測定時にほとんど変形しないデモレンズDLの外形形状と、に基づいた玉型形状データを取得し、このような玉型形状データから加工制御データを取得する。以下、本実施例における玉型形状データ及び加工制御データの取得について詳細に説明する。
【0069】
<玉型形状データの取得(S5)>
例えば、制御部50は、玉型形状データの外形形状をモニタ3に表示する。このような外形形状として、本実施例では、デモレンズDLの外形形状がモニタ3に表示される。例えば、操作者は、モニタ3及びスイッチ部4を操作して、レンズの加工条件を入力する。また、例えば、操作者は、モニタ3及びスイッチ部4を操作して、レンズのレイアウトデータ、レンズのレンズ形状データ、等を入力する。
【0070】
なお、本実施例では、レイアウトデータとして、デモレンズDLの外形形状に対するレイアウトデータ(例えば、デモレンズDLの外形形状と、レンズの光学中心と、の位置関係、等)が入力される。また、本実施例では、レンズ形状データとして、デモレンズDLの外形形状に基づいて測定されたレンズ形状データが入力される。例えば、このようなレンズ形状データの一例としては、デモレンズDLの外形形状に対応したレンズの前屈折面及び後屈折面における位置の位置情報、デモレンズDLの外形形状に対応した位置のコバ面の厚み、レンズの前屈折面におけるカーブ情報(傾斜情報)、等が挙げられる。例えば、操作者は、レンズ形状データを予め眼鏡レンズ加工装置等を用いて測定しておき、これを入力(あるいは受信)するようにしてもよい。もちろん、玉型形状取得装置1が、レンズ形状データを測定するための構成を備えていてもよい。
【0071】
例えば、制御部50は、レイアウトデータやレンズ形状データを取得すると、レンズに形成するヤゲンの頂点位置、ヤゲンのカーブ値、ヤゲンの傾斜角度、等を自動的に設定する。例えば、ヤゲンの頂点の位置は、レンズのコバ厚に基づいて、コバ厚が最も薄い部分の半分の位置を通るように設定されてもよい。例えば、ヤゲンのカーブは、レンズの前面カーブに沿ったカーブであってもよい。なお、設定されたヤゲンの頂点位置、ヤゲンのカーブ値、ヤゲンの傾斜角度、等は、操作者が手動で調整することもできる。
【0072】
続いて、制御部50は、玉型形状データに対する3次元形状データを取得し、これに基づいて、玉型形状データの周長を取得する。本実施例では、上述のように、デモレンズDLの外形形状に対して設定されたヤゲンの頂点のZ方向の位置(Zn)と、メモリ55に記憶されたデモレンズDLの外形形状における動径角毎の動径長(rn)と、に基づいて、制御部50が玉型形状データに対する3次元形状データ(rn,Zn,θn)(n=1,2,3、・・・、N)を取得する。また、制御部50は、動径角毎の位置座標間の距離を算出し、これらの距離を足し合わせて、玉型形状データの周長W2を取得する。
【0073】
ここで、例えば、制御部50は、メモリ55に記憶されたリムの溝の周長W1と、玉型形状データの周長W2と、が異なる長さであった場合には、リムの溝の周長W1と玉型形状データの周長W2とが同一(略同一)の長さとなるように、玉型形状データの大きさを調整してもよい。例えば、周長W1<周長W2であった場合には、周長W1=周長W2となるように、玉型形状データの大きさを全体的に縮小する。また、周長W1>周長W2であった場合には、周長W1=周長W2となるように、玉型形状データの大きさを全体的に拡大する。
【0074】
例えば、玉型形状データの大きさを補正するための補正量Δは、以下の数式にて求められてもよい。なお、本実施例における補正量Δは、眼鏡レンズ加工装置においてレンズを保持するチャック軸と、加工ユニット(例えば、砥石)の回転軸と、の軸間距離を補正するための補正量として算出される。
【0075】
【数1】
【0076】
例えば、制御部50は、このようにして、リムの溝の周長W1と、デモレンズDLの外形形状と、に基づいた玉型形状データ(すなわち、レンズを加工する際の形状データ)を取得することができる。
【0077】
<加工制御データの取得(S6)>
例えば、制御部50は、取得した補正量Δ、玉型形状データ、レンズのレイアウトデータ、レンズの加工条件、等を用いて、眼鏡に枠入れするレンズを加工するための加工制御データを取得する。本実施例では、制御部50によって、眼鏡レンズ加工装置等におけるチャック軸の回転、チャック軸の移動、等を制御する加工制御データが演算される。例えば、制御部50は、このようにして加工制御データを取得し、レンズ周縁加工装置に送信してもよい。もちろん、取得した補正量Δ、玉型形状データ、レンズのレイアウトデータ、レンズの加工条件、等が眼鏡レンズ加工装置に送信され、眼鏡レンズ加工装置の制御部にて加工制御データが演算されてもよい。例えば、レンズ周縁加工装置の制御部は、加工制御データに基づいたレンズの加工を実施する。これによって、操作者は、フレームFへの枠入れ状態がよいレンズを取得することができる。
【0078】
以上説明したように、例えば、本実施例における玉型形状取得装置は、眼鏡のフレームにおけるリムの溝の形状情報である第1形状情報を取得し、眼鏡のデモレンズまたは型板の周縁の形状情報である第2形状情報を取得する。また、第1形状情報及び第2形状情報に基づいて、眼鏡に枠入れするレンズを加工するための加工制御データを取得する。操作者は、第1形状情報と、第2形状情報と、の双方に基づく加工制御データを利用して、レンズの周縁を加工することができるようになる。このため、第1形状情報あるいは第2形状情報のいずれかに基づく加工制御データを利用してレンズの周縁を加工していた従来に比べて、フレームへの加工済みレンズの枠入れ状態をよくすることができる。
【0079】
また、例えば、本実施例における玉型形状取得装置は、第1形状情報からリムの溝の周長を取得し、第2形状情報からデモレンズまたは型板の外形形状を取得する。また、リムの溝の周長と、デモレンズまたは型板の外形形状と、に基づいて、加工制御データを取得する。これによって、操作者は、従来よりも精度のよい加工制御データを取得できるようになる。
【0080】
また、例えば、本実施例における玉型形状取得装置は、第1形状情報の取得と、第2形状情報の取得と、を異なるタイミングで行い、リムの溝の形状情報を測定する第1測定手段と、デモレンズまたは型板の形状情報を測定する第2測定手段と、を兼用する。このため、1つの測定手段を設けるのみでよく、玉型形状取得装置を簡易的な構成にすることができる。
【0081】
<変容例>
なお、本実施例では、測定ユニット200を用いてリムの溝とデモレンズの周縁を測定することによって、リムの溝の形状情報である第1形状情報と、デモレンズの周縁の形状情報である第2形状情報と、をそれぞれ取得する構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、本実施例における玉型形状取得装置は、リムの溝の形状情報を測定する第1測定ユニットと、デモレンズまたは型板の形状情報を取得する第2測定ユニットと、をそれぞれ備える構成であってもよい。この場合、第1形状情報の取得と、第2形状情報の取得と、を同時に行うことができる。操作者は、測定時間を短縮することができ、また、測定の終了を待つ煩わしさを軽減させることができる。
【0082】
また、本実施例では、第1形状情報と第2形状情報とをそれぞれ測定することで取得する構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、第1形状情報と第2形状情報とは、その少なくともいずれかが蓄積されたデータから取得されてもよい。この場合、玉型形状取得装置は、予め測定された第1形状情報または第2形状情報がメモリ55に蓄積された構成であってもよいし、予め測定された第1形状情報または第2形状情報が保存されたクラウドやサーバーにアクセスする構成であってもよい。一例として、リムの溝の形状情報である第1形状情報は、測定ユニット200を用いてリムの溝を測定することにより取得され、デモレンズ(または型板)の周縁の形状情報である第2形状情報は、上記のように蓄積されたデータから該当するデータを呼び出して設定することで取得されてもよい。
【0083】
なお、本実施例では、測定ユニット200を用いて第1形状情報及び第2形状情報を取得する構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、本実施例における玉型形状取得装置は、別装置にて測定された第1形状情報を受信することによって、第1形状情報を取得する構成であってもよい。また、別装置にて測定された第2形状情報を受信することによって、第2形状情報を取得する構成であってもよい。このような場合、玉型形状取得装置は、第1形状情報と第2形状情報とを同時に受信することで取得してもよいし、第1形状情報と第2形状情報とを異なるタイミングで受信することで取得してもよい。
【0084】
なお、本実施例では、測定ユニット200が、測定子281をリムの溝に接触させることで第1形状情報を取得し、測定子軸282をデモレンズの周縁に接触させることで第2形状情報を取得する構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、測定ユニット200は、第1形状情報及び第2形状情報を非接触式で取得する構成であってもよい。この場合、玉型形状取得装置は、リムの溝及びデモレンズの周縁に測定光束を投光する投光光学系と、測定光束が反射された反射光束を受光する受光光学系と、を備えるようにしてもよい。なお、上述のように、第1測定ユニットと、第2測定ユニットと、をそれぞれ備える構成の場合には、このような非接触式の測定ユニットと、測定子281及び測定子軸282を用いた接触式の測定ユニットと、の少なくともいずれかが用いられてもよい。
【0085】
なお、本実施例では、第1形状情報及び第2形状情報から玉型形状データを取得し、玉型形状データを用いて加工制御データを取得する構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、第1形状情報及び第2形状情報を用いて、加工制御データを直接取得するようにしてもよい。
【0086】
なお、本実施例では、第1形状情報からリムの溝の周長を取得し、第2形状情報からデモレンズの周縁の外形形状を取得する構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、第1形状情報からリムの溝の外形形状を取得し、第2形状情報からデモレンズの周長を取得するようにしてもよい。また、リムの溝の外形形状と、デモレンズの周長と、に基づいた加工制御データを取得するようにしてもよい。しかし、フレームへの枠入れ感がより良いレンズを加工するためには、第1形状情報からリムの溝の周長を取得し、第2形状情報からデモレンズの周縁の外形形状を取得し、これらに基づく加工制御データを取得する構成であることが好ましい。
【0087】
なお、本実施例では、玉型形状取得装置1にて玉型形状データ及び加工制御データが取得される場合を例に挙げて説明したがこれに限定されにない。もちろん、別装置(例えば、特開2016-190287号公報に記載の眼鏡レンズ加工装置、等)にて、玉型形状データ及び加工制御データが取得されてもよい。この場合には、第1形状情報及び第2形状情報が別装置に転送される構成としてもよいし、第1形状情報から取得したリムの溝の周長、及び、第2形状情報から取得したデモレンズの外形形状、が別装置に転送される構成としてもよい。
【符号の説明】
【0088】
1 玉型形状取得装置
100 フレーム保持ユニット
150 クランプ機構
200 測定ユニット
210 移動ユニット
250 測定子保持ユニット
281 測定子
282 測定子軸
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7