(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】二次電池用セパレータ、熱可塑性樹脂造粒体、スラリー組成物、及びこれらの製造方法、並びに二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/443 20210101AFI20230314BHJP
H01M 50/426 20210101ALI20230314BHJP
H01M 50/42 20210101ALI20230314BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20230314BHJP
H01M 50/403 20210101ALI20230314BHJP
H01M 50/463 20210101ALI20230314BHJP
C08J 9/36 20060101ALI20230314BHJP
H01M 50/449 20210101ALI20230314BHJP
H01M 50/451 20210101ALI20230314BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20230314BHJP
【FI】
H01M50/443 E
H01M50/426
H01M50/42
H01M50/443 M
H01M50/434
H01M50/403 D
H01M50/463 A
C08J9/36 CER
C08J9/36 CEZ
H01M50/449
H01M50/451
H01M50/489
(21)【出願番号】P 2020517404
(86)(22)【出願日】2020-03-13
(86)【国際出願番号】 JP2020011302
(87)【国際公開番号】W WO2020195988
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-07-13
(31)【優先権主張番号】P 2019063264
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019177758
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】眞鍋 浩一郎
(72)【発明者】
【氏名】山下 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】森 健太郎
【審査官】式部 玲
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-013534(JP,A)
【文献】特開2003-012733(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104600233(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/40-50/497
C08J 9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質基材の少なくとも片面に多孔質層を積層してなるセパレータであって、前記多孔質層の少なくとも一方の表層に熱可塑性樹脂造粒体を含み、前記熱可塑性樹脂造粒体は熱可塑性樹脂粒子を含む造粒体であって、複数の前記熱可塑性樹脂粒子の一次粒子が融着した融着物を含む、二次電池用セパレータ。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂造粒体のメジアン径が0.5μm以上30μm以下である、請求項1に記載の二次電池用セパレータ。
【請求項3】
下記式(1)で表される、前記熱可塑性樹脂造粒体を構成する前記熱可塑性樹脂粒子のメジアン径に対する前記熱可塑性樹脂造粒体のメジアン径の比(A)が、10以上250以下である、請求項1または2に記載の二次電池用セパレータ。
(A)=熱可塑性樹脂造粒体のメジアン径(μm)/熱可塑性樹脂粒子のメジアン径(μm)…(1)
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂粒子が、ガラス転移点が80℃以下の熱可塑性樹脂粒子を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の二次電池用セパレータ。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂粒子が、融点が50℃以上、160℃以下の熱可塑性樹脂粒子を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の二次電池用セパレータ。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂が、ポリフッ化ビニリデン若しくはその共重合体またはアクリル系樹脂を1種以上含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の二次電池用セパレータ。
【請求項7】
前記多孔質層が無機粒子を含む無機粒子層を含み、少なくとも一部の前記熱可塑性樹脂造粒体は、一部分が前記無機粒子層の内部に埋没しており、かつ他の部分が前記無機粒子層の表面から外側に突出している、請求項1~6のいずれか1項に記載の二次電池用セパレータ。
【請求項8】
下記式(4)で表される、前記熱可塑性樹脂造粒体のメジアン径に対する前記無機粒子層の厚みの比(D)が、0.02以上1以下である、請求項7に記載の二次電池用セパレータ。
(D)=無機粒子層の厚み(μm)/熱可塑性樹脂造粒体のメジアン径(μm)…(4)
【請求項9】
前記無機粒子がアルミナであって、エネルギー分散型X線分光法(EDX)で検出され、下記式(5)で表される、FとAlのピクセル数の合計に対するFのピクセル数の比(E)が0.1以上0.5以下である、請求項7または8に記載の二次電池用セパレータ。
(E)=Fのピクセル数/(Fのピクセル数+Alのピクセル数)…(5)
【請求項10】
前記多孔質層の面粗さが0.4μm以上15μm以下である、請求項1~9のいずれか1項に記載の二次電池用セパレータ。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の二次電池用セパレータを用いる二次電池。
【請求項12】
熱可塑性樹脂粒子を含む造粒体であって、複数の前記熱可塑性樹脂粒子の一次粒子が融着した融着物を含
み、前記熱可塑性樹脂が、ポリフッ化ビニリデン若しくはその共重合体を含む、熱可塑性樹脂造粒体。
【請求項13】
下記式(1)で表される、前記熱可塑性樹脂造粒体を構成する前記熱可塑性樹脂粒子のメジアン径に対する前記熱可塑性樹脂造粒体のメジアン径の比(A)が、10以上250以下である、請求項12に記載の熱可塑性樹脂造粒体。
(A)=熱可塑性樹脂造粒体のメジアン径(μm)/熱可塑性樹脂粒子のメジアン径(μm)…(1)
【請求項14】
前記熱可塑性樹脂造粒体のメジアン径が0.5μm以上30μm以下である、請求項12または13に記載の熱可塑性樹脂造粒体。
【請求項15】
前記熱可塑性樹脂粒子が、ガラス転移点が80℃以下の熱可塑性樹脂粒子を含む、請求項12~14のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂造粒体。
【請求項16】
前記熱可塑性樹脂粒子が、融点が50℃以上、160℃以下の熱可塑性樹脂粒子を含む、請求項12~15のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂造粒体。
【請求項17】
二次電池用セパレータ用である、請求項12~
16のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂造粒体。
【請求項18】
少なくとも請求項12~
17のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂造粒体が溶媒に分散した分散液を含むスラリー組成物。
【請求項19】
前記分散液が、少なくとも無機粒子と、前記熱可塑性樹脂造粒体が溶媒に分散した分散液であって、下記式(2)で表される、前記無機粒子のメジアン径に対する前記熱可塑性樹脂造粒体のメジアン径の比(B)が、3以上100以下である、請求項
18に記載のスラリー組成物。
(B)=熱可塑性樹脂造粒体のメジアン径(μm)/無機粒子のメジアン径(μm)…(2)
【請求項20】
前記熱可塑性樹脂造粒体を1wt%以上50wt%以下含む、請求項
18または
19に記載のスラリー組成物。
【請求項21】
下記式(3)で表される、前記無機粒子の含有量に対する前記熱可塑性樹脂造粒体の含有量の比(C)が0.05以上0.7以下である、請求項
19または
20に記載のスラリー組成物。
(C)=熱可塑性樹脂造粒体の含有量(wt%)/無機粒子の含有量(wt%)…(3)
【請求項22】
溶媒に分散した熱可塑性樹脂粒子を、熱可塑性樹脂粒子の融点未満、ガラス転移点以上の乾燥温度条件でスプレードライヤーにより噴霧乾燥造粒することを含む、
二次電池用セパレータ用である熱可塑性樹脂造粒体の製造方法。
【請求項23】
無機粒子、溶媒、および請求項12~
17のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂造粒体を混合することを含む、スラリー組成物の製造方法。
【請求項24】
請求項12~
17のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂造粒体、無機粒子、および溶媒を混合して作製したスラリー組成物を、多孔質基材上に塗布、乾燥する工程を含む、二次電池用セパレータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池用セパレータ、熱可塑性樹脂造粒体、スラリー組成物、及びこれらの製造方法、並びに二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池のような二次電池は、携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、携帯ゲーム機などのポータブルデジタル機器に広く用いられている。近年は自動車用途として、ハイブリッド車、電気自動車、プラグインハイブリッド車などの電源としての使用が拡大してきている。
【0003】
リチウムイオン電池は、一般的に、正極活物質を正極集電体に積層した正極と、負極活物質を負極集電体に積層した負極との間に、二次電池用セパレータと電解質が介在した構成を有している。
【0004】
二次電池用セパレータとしては、ポリオレフィン系多孔質基材が用いられている。二次電池用セパレータに求められる特性としては、多孔構造中に電解液を含み、イオン移動を可能にする特性(イオン伝導性)と、リチウムイオン電池が異常発熱した場合に、熱で溶融することで多孔構造が閉鎖され、イオン移動を停止させることで、発電を停止させる特性(シャットダウン機能)が挙げられる。また、高温時に二次電池用セパレータが熱収縮することで発生する正極と負極の接触による短絡を防ぐために、二次電池用セパレータには寸法安定性が求められている。
【0005】
加えて、近年のリチウムイオン電池の高容量化、高出力化に伴い、二次電池用セパレータには前記特性のみならず、更なる特性が求められている。例えば、充放電を繰り返すことで電極と二次電池用セパレータの間に隙間が発生しサイクル特性が悪化することを防ぐために、二次電池用セパレータには、電解液を含浸した状態での電極との接着性(ウェット接着性)が求められている。
【0006】
また、二次電池の製造工程において、正極、セパレータ、負極を積層した積層体を運搬する際に積層体の形を維持することや、捲回した正極、セパレータ、負極の積層体を円筒型、角型などの型に挿入する前にプレスする際に積層体の形が崩れないようにすることにより、生産性や電池性能を改善することが望まれている。このような観点からは、二次電池用セパレータには電解液を含浸する前のセパレータと電極との接着性(ドライ接着性)が求められている。さらには、二次電池の普及に伴い、二次電池の製造コストを下げることが求められており、二次電池用セパレータには低コスト化が求められている。
【0007】
特許文献1では、含フッ素重合体と多量の無機粒子を多孔質基材上に保持させることで、熱収縮が少なく、無機粒子の多孔質体への密着力を向上した二次電池用セパレータが提案されている。
【0008】
特許文献2では、フッ素系樹脂と無機粒子と架橋高分子粒子を含む多孔質層をポリオレフィンからなる微多孔膜上に積層することで、熱収縮が少なく、電解液を含浸した状態での電極との接着性(ウェット接着性)が付与された二次電池用セパレータが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第2015/083790号
【文献】日本国特開2017-152268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1では、含フッ素重合体を乳化重合法で製造しているため含フッ素重合体の粒径が小さく、電解液を含浸する前のセパレータと電極との接着性(ドライ接着性)、および電解液を含浸した後のセパレータと電極との接着性(ウェット接着性)が不十分になりやすいという課題があった。
【0011】
また、特許文献2では、塗料の溶媒としてフッ素系樹脂を可溶な有機溶剤を用いる必要があり、環境高負荷ならびに高コストになりやすいという課題があった。
【0012】
本発明は上記課題に鑑み、優れた接着性、即ちドライ接着性またはウェット接着性を保持しながら環境負荷およびコストを効果的に抑制できる二次電池用セパレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、熱可塑性樹脂粒子を含み、複数の熱可塑性樹脂粒子の一次粒子が融着した融着物を含む熱可塑性樹脂造粒体を二次電池用セパレータに用いることにより、優れた接着性、即ちドライ接着性またはウェット接着性が得られることを見出し、本発明に想到した。
【0014】
上記課題を解決するため本発明は次の構成を有する。
1.多孔質基材の少なくとも片面に多孔質層を積層してなるセパレータであって、前記多孔質層の少なくとも一方の表層に熱可塑性樹脂造粒体を含み、前記熱可塑性樹脂造粒体は熱可塑性樹脂粒子を含む造粒体であって、複数の前記熱可塑性樹脂粒子の一次粒子が融着した融着物を含む、二次電池用セパレータ。
2.前記熱可塑性樹脂造粒体のメジアン径が0.5μm以上30μm以下である、前記1に記載の二次電池用セパレータ。
3.下記式(1)で表される、前記熱可塑性樹脂造粒体を構成する前記熱可塑性樹脂粒子のメジアン径に対する前記熱可塑性樹脂造粒体のメジアン径の比(A)が、10以上250以下である、前記1または2に記載の二次電池用セパレータ。
(A)=熱可塑性樹脂造粒体のメジアン径(μm)/熱可塑性樹脂粒子のメジアン径(μm)…(1)
4.前記熱可塑性樹脂粒子が、ガラス転移点が80℃以下の熱可塑性樹脂粒子を含む、前記1~3のいずれか1に記載の二次電池用セパレータ。
5.前記熱可塑性樹脂粒子が、融点が50℃以上、160℃以下の熱可塑性樹脂粒子を含む、前記1~4のいずれか1に記載の二次電池用セパレータ。
6.前記熱可塑性樹脂が、ポリフッ化ビニリデン若しくはその共重合体またはアクリル系樹脂を1種以上含む、前記1~5のいずれか1に記載の二次電池用セパレータ。
7.前記多孔質層が無機粒子を含む無機粒子層を含み、少なくとも一部の前記熱可塑性樹脂造粒体は、一部分が前記無機粒子層の内部に埋没しており、かつ他の部分が前記無機粒子層の表面から外側に突出している、前記1~6のいずれか1に記載の二次電池用セパレータ。
8.下記式(4)で表される、前記熱可塑性樹脂造粒体のメジアン径に対する前記無機粒子層の厚みの比(D)が、0.02以上1以下である、前記7に記載の二次電池用セパレータ。
(D)=無機粒子層の厚み(μm)/熱可塑性樹脂造粒体のメジアン径(μm)…(4)
9.前記無機粒子がアルミナであって、エネルギー分散型X線分光法(EDX)で検出され、下記式(5)で表される、FとAlのピクセル数の合計に対するFのピクセル数の比(E)が0.1以上0.5以下である、前記7または8に記載の二次電池用セパレータ。
(E)=Fのピクセル数/(Fのピクセル数+Alのピクセル数)…(5)
10.前記多孔質層の面粗さが0.4μm以上15μm以下である、前記1~9のいずれか1に記載の二次電池用セパレータ。
11.前記1~10のいずれか1に記載の二次電池用セパレータを用いる二次電池。
12.熱可塑性樹脂粒子を含む造粒体であって、複数の前記熱可塑性樹脂粒子の一次粒子が融着した融着物を含む、熱可塑性樹脂造粒体。
13.下記式(1)で表される、前記熱可塑性樹脂造粒体を構成する前記熱可塑性樹脂粒子のメジアン径に対する前記熱可塑性樹脂造粒体のメジアン径の比(A)が、10以上250以下である、前記12に記載の熱可塑性樹脂造粒体。
(A)=熱可塑性樹脂造粒体のメジアン径(μm)/熱可塑性樹脂粒子のメジアン径(μm)…(1)
14.前記熱可塑性樹脂造粒体のメジアン径が0.5μm以上30μm以下である、前記12または13に記載の熱可塑性樹脂造粒体。
15.前記熱可塑性樹脂粒子が、ガラス転移点が80℃以下の熱可塑性樹脂粒子を含む、前記12~14のいずれか1に記載の熱可塑性樹脂造粒体。
16.前記熱可塑性樹脂粒子が、融点が50℃以上、160℃以下の熱可塑性樹脂粒子を含む、前記12~15のいずれか1に記載の熱可塑性樹脂造粒体。
17.前記熱可塑性樹脂が、ポリフッ化ビニリデン若しくはその共重合体またはアクリル系樹脂を1種以上含む、前記12~16のいずれか1に記載の熱可塑性樹脂造粒体。
18.二次電池用セパレータ用である、前記12~17のいずれか1に記載の熱可塑性樹脂造粒体。
19.少なくとも前記12~18のいずれか1に記載の熱可塑性樹脂造粒体が溶媒に分散した分散液を含むスラリー組成物。
20.前記分散液が、少なくとも無機粒子と、前記熱可塑性樹脂造粒体が溶媒に分散した分散液であって、下記式(2)で表される、前記無機粒子のメジアン径に対する前記熱可塑性樹脂造粒体のメジアン径の比(B)が、3以上100以下である、前記19に記載のスラリー組成物。
(B)=熱可塑性樹脂造粒体のメジアン径(μm)/無機粒子のメジアン径(μm)…(2)
21.前記熱可塑性樹脂造粒体を1wt%以上50wt%以下含む、前記19または20に記載のスラリー組成物。
22.下記式(3)で表される、前記無機粒子の含有量に対する前記熱可塑性樹脂造粒体の含有量の比(C)が0.05以上0.7以下である、前記20または21に記載のスラリー組成物。
(C)=熱可塑性樹脂造粒体の含有量(wt%)/無機粒子の含有量(wt%)…(3)
23.溶媒に分散した熱可塑性樹脂粒子を、熱可塑性樹脂粒子の融点未満、ガラス転移点以上の乾燥温度条件でスプレードライヤーにより噴霧乾燥造粒することを含む、熱可塑性樹脂造粒体の製造方法。
24.無機粒子、溶媒、および前記12~18のいずれか1に記載の熱可塑性樹脂造粒体を混合することを含む、スラリー組成物の製造方法。
25.前記12~18のいずれか1に記載の熱可塑性樹脂造粒体、無機粒子、および溶媒を混合して作製したスラリー組成物を、多孔質基材上に塗布、乾燥する工程を含む、二次電池用セパレータの製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明の二次電池用セパレータは、高い接着性、即ちドライ接着性またはウェット接着性を保持しながら環境負荷およびコストを効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の二次電池用セパレータの一実施形態のSEM画像である。
【
図2】
図2は、ウェット接着強度の測定方法を模式的に示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態に係る二次電池用セパレータは、多孔質基材の少なくとも片面に多孔質層を積層してなるセパレータであって、前記多孔質層の少なくとも一方の表層に熱可塑性樹脂造粒体を含み、前記熱可塑性樹脂造粒体は複数の前記熱可塑性樹脂粒子の一次粒子が融着した融着物を含む。
本発明の実施形態に係る二次電池用セパレータは、熱可塑性樹脂造粒体、無機粒子、および溶媒を混合して作製したスラリー組成物を、多孔質基材上に塗布、乾燥する工程を含む製造方法により製造することができる。また、本発明の実施形態に係る二次電池用セパレータは、二次電池に好ましく用いることができる。
以下に、本発明の一実施形態について詳細に説明する。
【0018】
<熱可塑性樹脂造粒体>
本発明の実施形態に係る熱可塑性樹脂造粒体は、熱可塑性樹脂粒子を含む造粒体であって、複数の熱可塑性樹脂粒子の一次粒子が融着した融着物を含む。
本発明の実施形態における熱可塑性樹脂造粒体とは、熱可塑性樹脂粒子を含む造粒体であって、複数の熱可塑性樹脂の一次粒子が互いに隣接する部分において融着した形態をとる、粒子状の熱可塑性樹脂造粒体である。このため、本発明の熱可塑性樹脂造粒体は、溶媒中で剪断力をかけ分散させたスラリー組成物中、ならびに該スラリー組成物を塗布、乾燥して形成した二次電池用セパレータの多孔質層内でも造粒体が崩壊することなく粒径および形状を保持でき、高い接着性を発現できる。本明細書において、造粒体とは、複数の一次粒子から形成される二次粒子を含む。ここで言う一次粒子とは、外見上の幾何学的形態から判断して単位粒子と考えられるものを意味する。
【0019】
本発明の実施形態に係る熱可塑性樹脂造粒体は、二次電池用セパレータ用に好ましく使用することができる。本発明の実施形態に係る熱可塑性樹脂造粒体は、複数の熱可塑性樹脂粒子から造粒されたものであるため造粒体内部に空隙を有しており、同粒径の中実粒子に比べて低比重である。そのため本発明の実施形態に係る熱可塑性樹脂造粒体を含むスラリー組成物を多孔質基材上に塗布、乾燥した場合、同粒径の中実粒子に比べ乾燥膜表面に移行し易く、接着性を発現し易い。また、空隙を有するため同粒径の中実粒子を用いた場合に比べ、樹脂使用量を抑えることができ、コストを低減することができる。さらに、本発明の実施形態に係る熱可塑性樹脂造粒体は、構成する複数の熱可塑性樹脂粒子に起因する凹凸が表面に存在するため、単一の同粒径粒子に比べて表面積が大きく、接着面積が大きくなるため好ましい。
【0020】
本発明の実施形態に係る熱可塑性樹脂造粒体は、下記式(1)を用いて算出される、熱可塑性樹脂造粒体を構成する熱可塑性樹脂粒子のメジアン径に対する熱可塑性樹脂造粒体のメジアン径の比(A)が、10以上250以下であることが好ましい。
(A)=熱可塑性樹脂造粒体のメジアン径(μm)/熱可塑性樹脂粒子のメジアン径(μm)・・・(1)
【0021】
熱可塑性樹脂造粒体を構成する熱可塑性樹脂粒子のメジアン径に対する熱可塑性樹脂造粒体のメジアン径の比(A)が10以上であると、熱可塑性樹脂造粒体の形状が不定形になりにくく、流動性の低下によりハンドリング性が悪化するのを抑制できる。また、かかる比が250以下であると粗大な融着体の割合が増加しにくく、物性のバラツキを抑制できる。熱可塑性樹脂造粒体を構成する熱可塑性樹脂粒子のメジアン径に対する熱可塑性樹脂造粒体のメジアン径の比(A)は15以上がより好ましく、20以上がさらに好ましく、30以上が特に好ましい。同様に、かかる比は200以下がより好ましく、150以下がさらに好ましく、100以下が特に好ましい。
【0022】
上記熱可塑性樹脂造粒体のメジアン径は0.5μm以上30μm以下が好ましい。メジアン径が0.5μm以上であると被着物との接触面積が小さくなりにくく、十分な接着性、即ちドライ接着性またはウェット接着性が得られる。一方、メジアン径が30μm以下であると分散安定性の低下を抑制し、スラリー中で沈降しにくい。熱可塑性樹脂造粒体のメジアン径は、1μm以上がより好ましく、1.5μm以上がさらに好ましく、2μm以上が一層好ましく、9μm以上が特に好ましい。また、メジアン径は、25μm以下がより好ましく、20μm以下がさらに好ましく、15μm以下が特に好ましい。
【0023】
本発明の実施形態に係る熱可塑性樹脂造粒体を構成する熱可塑性樹脂粒子のメジアン径は0.01μm以上1μm以下が好ましい。熱可塑性樹脂粒子のメジアン径は、0.05μm以上がより好ましく、0.1μm以上がさらに好ましい。また同様に、熱可塑性樹脂粒子のメジアン径は0.7μm以下がより好ましく、0.4μm以下がさらに好ましい。メジアン径が0.01μm以上であると、熱可塑性樹脂粒子が造粒前に凝集しにくく、均一な造粒体を形成しやすい。メジアン径が1μm以下であると熱可塑性樹脂造粒体内部の熱可塑性樹脂粒子同士の接触面積が小さくなりにくく、熱可塑性樹脂造粒体が脆くなるのを抑制できる。
【0024】
本発明の実施形態に用いる熱可塑性樹脂は、ガラス転移点が低い熱可塑性樹脂を1種以上含むことが、熱可塑性樹脂粒子間の融着を進める上で好ましい。上記熱可塑性樹脂は、同様の理由から、架橋された熱可塑性樹脂に比べ非架橋の熱可塑性樹脂が好ましい。
ガラス転移点が低い熱可塑性樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、メチルメタクリレート-スチレン共重合体、ポリアミド、ポリアセタール、ポリウレタン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)若しくはその共重合体が挙げられる。上記熱可塑性樹脂は、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)若しくはその共重合体またはアクリル系樹脂を1種以上含むことがより好ましい。上記熱可塑性樹脂は、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)若しくはその共重合体がさらに好ましい。
【0025】
PVdF共重合体を構成する共重合成分、即ちフッ化ビニリデン(VDF)と共重合可能なフッ素系単量体としては、特に限定されるものではないが、フッ化ビニル、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、ペルフルオロメチルビニルエーテルに代表されるペルフルオロアルキルビニルエーテルなどを挙げることができる。これらの中でもVDFとHFPの共重合体は非水電解液に対する化学的、物理的な安定性が高く特に好ましい。
【0026】
PVdFおよびその共重合体の主な工業的製法として、乳化重合法と懸濁重合法の2つが挙げられる。乳化重合法ではメジアン径0.2~0.7μm程度の小粒径粒子が生成する。懸濁重合法ではメジアン径50~300μm程度の大粒径粒子が生成する。しかし、両製法により得られる粒子のメジアン径の中間となるメジアン径0.7μm超50μm未満の粒子を得ることは困難である。
本発明の実施形態に係る熱可塑性樹脂造粒体は、乳化重合法で合成された小粒径のPVdFまたはその共重合体を造粒することが好ましく、これにより、メジアン径0.7μm超50μm未満の造粒体を得やすい。
【0027】
上記熱可塑性樹脂のガラス転移点は80℃以下が好ましい。また、熱可塑性樹脂のガラス転移点は-100℃以上が好ましく、-80℃以上がより好ましく、-60℃以上がさらに好ましい。また同様に、熱可塑性樹脂のガラス転移点は50℃以下がより好ましく、20℃以下がさらに好ましい。ガラス転移点が-100℃以上であると室温および外気温で粘着性が発現するのを抑制し、保管の際などにセパレータ同士が接着して剥離が難しくなるブロッキングが生じるのを防止できる。ガラス転移点が80℃以下であると接着性の発現に高温処理が不要であるため、取扱性が向上する。なお、熱可塑性樹脂造粒体および熱可塑性樹脂粒子についても好ましいガラス転移点の範囲は同様である。熱可塑性樹脂造粒体および熱可塑性樹脂粒子のガラス転移点は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0028】
また熱可塑性樹脂の融点は50℃以上160℃以下が好ましい。
【0029】
上記熱可塑性樹脂の融点は、ドライ接着性の観点からは、50℃以上が好ましく、55℃以上がより好ましく、60℃以上がさらに好ましい。また同様に、熱可塑性樹脂の融点は150℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましく、110℃以下がさらに好ましく、100℃以下が一層好ましく、80℃以下が特に好ましい。融点が50℃以上であると熱可塑性樹脂造粒体同士が保管中および取扱中に融着しにくく、粗大な凝集体が形成されるのを抑制できる。融点が150℃以下であるとドライ接着性の発現に高温処理が不要であり、取扱性が向上する。
【0030】
上記熱可塑性樹脂の融点は、ウェット接着性の観点からは、120℃以上が好ましく、130℃以上がより好ましく、140℃以上がさらに好ましい。また同様に、熱可塑性樹脂の融点は160℃以下が好ましく、155℃以下がより好ましく、150℃以下がさらに好ましく、145℃以下が特に好ましい。融点が120℃以上であると電解液への溶解性が低くなる傾向があり、ウェット接着性を長期間保持しやすい。融点が160℃以下であると電解液に膨潤しやすくなる傾向があり、膨潤した熱可塑性樹脂により被着物へのアンカー効果が発現しやすい。なお、熱可塑性樹脂造粒体および熱可塑性樹脂粒子についても好ましい融点の範囲は同様である。熱可塑性樹脂造粒体および熱可塑性樹脂粒子の融点は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0031】
熱可塑性樹脂の融点の制御は、PVdF共重合体の場合、共重合成分の比率調整によって可能となる。一例として、VDF-HFP共重合体であれば、共重合成分(HFP)比率が大きくなると、融点は低くなる。VDF-HFP共重合体の共重合成分比率は0.3mol%以上20mol%以下が好ましい。
【0032】
上記共重合成分比率は、ドライ接着性の観点からは、9mol%以上が好ましく、10mol%以上がより好ましく、12mol%以上がさらに好ましい。また同様に、共重合成分比率は20mol%以下が好ましく、18mol%以下がより好ましく、16mol%以下がさらに好ましく、14mol%以下が特に好ましい。共重合成分比率が9mol%以上であると熱変形しやすく、より低温の処理で十分なドライ接着性を発現しやすい。共重合成分比率が20mol%以下であると後述する造粒の際に造粒装置壁面への融着が抑制される傾向にあり、高収率を得やすい。
【0033】
上記共重合成分比率は、ウェット接着性の観点からは、0.3mol%以上が好ましく、1mol%以上がより好ましく、2mol%以上がさらに好ましく、3mol%以上が特に好ましい。また同様に、共重合成分比率は9mol%以下が好ましく、8mol%以下がより好ましく、6mol%以下がさらに好ましく、5mol%以下が特に好ましく、4mol%以下が一層好ましい。共重合成分比率が0.3mol%以上であるとポリマーの結晶性が抑えられ、電解液による膨潤度が高くなる傾向があるため、ウェット接着しやすい。共重合成分比率が9mol%以下であると電解液への溶解性が低くなる傾向があり、ウェット接着性を長期間保持しやすい。
【0034】
<熱可塑性樹脂造粒体の製造方法>
本発明の実施形態に係る熱可塑性樹脂造粒体は、一例として、溶媒に分散した熱可塑性樹脂粒子を、好ましくは熱可塑性樹脂粒子の融点未満、ガラス転移点以上の乾燥温度条件でスプレードライヤーにより噴霧乾燥造粒することを含む製造方法によって製造することができる。造粒方法に特に限定は無く、転動造粒法、流動造粒法、転動流動造粒法、噴霧乾燥造粒法、混合造粒法などの公知の製法を用いて作製することができる。これらの中でも噴霧乾燥造粒法が凝集剤などの電池特性に悪影響を与える添加剤が不要なため好ましい。噴霧乾燥造粒法は、これに限定されるものではないが、噴霧乾燥機(スプレードライヤー)を用いて行うのが好ましい。以下、本明細書においては、スプレードライヤーを用いた噴霧乾燥造粒法をスプレードライ法と呼称する。
【0035】
噴霧乾燥造粒法により乾燥させ造粒する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば熱可塑性樹脂粒子分散液を微細な霧状として、好ましくは30℃以上160℃以下の熱風中に噴出させればよい。熱風の温度は40℃以上がより好ましく、50℃以上がさらに好ましく、60℃以上が特に好ましい。また同様に、熱風の温度は130℃以下がより好ましく、100℃以下がさらに好ましく、80℃以下が特に好ましい。熱風の温度を160℃以下とすることで、熱可塑性樹脂造粒体同士の融着による粗大な凝集体の形成を抑制しやすくなる。これにより、複数の熱可塑性樹脂粒子の一次粒子が融着した融着物を含む熱可塑性樹脂造粒体を得ることができる。また、熱可塑性樹脂粒子分散液を微細な霧状にする方法としては、例えば、回転円盤を用いた遠心噴霧による方法や、圧力ノズルを用いた加圧噴霧による方法など、公知の種々の方法を採用することができる。
【0036】
<スラリー組成物>
本発明の実施形態に係るスラリー組成物は、上述した熱可塑性樹脂造粒体が溶媒に分散した分散液である。上記スラリー組成物は、好ましくは無機粒子と熱可塑性樹脂造粒体が溶媒に分散した分散液であって、下記式(2)で表される、無機粒子のメジアン径に対する熱可塑性樹脂造粒体のメジアン径の比(B)が、3以上100以下であることが好ましい。
(B)=熱可塑性樹脂造粒体のメジアン径(μm)/無機粒子のメジアン径(μm)・・・(2)
【0037】
無機粒子のメジアン径に対する熱可塑性樹脂造粒体のメジアン径の比(B)が3以上であると、熱可塑性樹脂造粒体が無機粒子の陰に隠れて多孔質層最表面への露出面積が減少するのを抑制でき、接着性が低下しにくい。無機粒子のメジアン径に対する熱可塑性樹脂造粒体のメジアン径の比(B)が100以下であると、無機粒子が形成する多孔構造を熱可塑性樹脂造粒体が塞ぎにくく、透気度の増大を抑制できる。無機粒子のメジアン径に対する熱可塑性樹脂造粒体のメジアン径の比(B)は4以上がより好ましく、9以上がさらに好ましく、14以上が特に好ましい。同様に、かかる比は80以下がより好ましく、60以下がさらに好ましく、40以下が特に好ましい。
【0038】
上記無機粒子としては、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、非晶性シリカ、結晶性のガラスフィラー、カオリン、タルク、二酸化チタン、アルミナ、マグネシア、水酸化マグネシウム、シリカ-アルミナ複合酸化物粒子、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン、マイカ、ベーマイトなどが挙げられる。これらの無機粒子を1種類で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0039】
上記無機粒子のメジアン径は、0.05μm以上が好ましく、0.20μm以上がより好ましく、0.30μm以上がさらに好ましい。同様に、無機粒子のメジアン径は、5.0μm以下であることが好ましく、3.0μm以下がより好ましく、1.0μm以下がさらに好ましい。無機粒子のメジアン径が0.05μm以上であると、多孔質層が緻密になりにくく透気度が高くなるのを抑制できる。また、空孔径が小さくなることにより電解液の含浸性が低下するのを抑制し、生産性を向上できる。無機粒子のメジアン径が5.0μm以下であると十分な寸法安定性が得られ、また、多孔質層の膜厚が増大するのを抑制し、電池特性を向上できる。
【0040】
上記無機粒子の形状としては特に限定されず、どのような形状であってもよいが、例えば、球状、板状、針状、棒状、楕円状などが挙げられ、いずれの形状であってもよい。
【0041】
スラリー組成物中の熱可塑性樹脂造粒体の含有量は1wt%以上50wt%以下が好ましい。熱可塑性樹脂造粒体の含有量が1wt%以上であると、熱可塑性樹脂造粒体の多孔質層表面への露出量が減少しにくく、接着性が低下するのを抑制できる。熱可塑性樹脂造粒体の含有量が50wt%以下であると多孔構造を熱可塑性樹脂造粒体が塞ぎにくく、透気度の増大を抑制できる。熱可塑性樹脂造粒体の含有量は3wt%以上がより好ましく、5wt%以上がさらに好ましく、7wt%以上が特に好ましい。同様に熱可塑性樹脂造粒体の含有量は30wt%以下がより好ましく、20wt%以下がさらに好ましく、12wt%以下が特に好ましい。
【0042】
本発明の実施形態に係るスラリー組成物は、下記式(3)で表される、無機粒子の含有量に対する熱可塑性樹脂造粒体の含有量の比(C)が、0.05以上0.7以下であることが好ましい。
(C)=熱可塑性樹脂造粒体の含有量(wt%)/無機粒子の含有量(wt%)…(3)
【0043】
無機粒子の含有量に対する熱可塑性樹脂造粒体の含有量の比(C)が0.05以上であると熱可塑性樹脂造粒体が多量の無機粒子に埋没しにくく、多孔質層表面への露出量の減少により接着性が低下するのを抑制できる。また、かかる比が0.7以下であると多孔質層の構造維持に必要な無機粒子が不足しにくく、熱収縮の増大を抑制できる。無機粒子の含有量に対する熱可塑性樹脂造粒体の含有量の比(C)は0.07以上がより好ましく、0.1以上がさらに好ましく、0.15以上が特に好ましい。同様に、かかる比は0.5以下がより好ましく、0.4以下がさらに好ましく、0.35以下が特に好ましい。
【0044】
本発明の実施形態に係るスラリー組成物に用いる溶媒としては、多孔質基材への溶媒の含浸を抑制させる観点から、水を主成分とする溶媒が好ましい。なお、ここで主成分とは溶媒100質量%中、50質量%以上含まれている成分のことを言う。
【0045】
上記の水を主成分とする溶媒中に占める水の割合は50質量%以上が好ましく、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。水の割合が50質量%以上であると、多孔質基材へ塗工する際に基材に塗工液が含浸しにくく所望の多孔質層を形成しやすい。また、塗工液の含浸により多孔質基材の搬送が困難となるのを抑制し、搬送中にシワが発生するのを防止できる。
【0046】
また、本発明の実施形態に係るスラリー組成物に、上記の水を主成分とする溶媒を用いることで、フッ素系樹脂を可溶な有機溶剤などを用いる場合に比べ、環境負荷及びコストを効果的に抑制することができる。
【0047】
本発明の実施形態に係るスラリー組成物には、必要に応じて有機樹脂(バインダー)を添加してもよい。また、上記スラリー組成物に熱可塑性樹脂造粒体、有機樹脂および無機粒子を分散させる場合、必要であれば分散剤を用いてもよい。
【0048】
分散剤の種類としては、特に限定されないが、例えば、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩などのカチオン系界面活性剤、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪酸塩などのアニオン系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノール、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルなどのノニオン系界面活性剤、アルキルベタイン、アルキルアミンオキサイドなどの両性界面活性剤、および上記カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性のフッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤などが挙げられる。分散剤の種類としては、他にもポリビニルピロリドン、ポリカルボン酸塩、ポリスルホン酸塩、ポリエーテルなどの高分子化合物などが挙げられる。これらの分散剤を1種類で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0049】
分散剤の添加量としては、分散させる熱可塑性樹脂造粒体、有機樹脂、および無機粒子の合計100質量部に対して0.1質量部以上40質量部以下が好ましく、より好ましくは0.2質量部以上、さらに好ましくは0.5質量部以上である。また、分散剤の添加量は、好ましくは30質量部以下、さらに好ましくは20質量部以下である。分散剤の添加量が40質量部以下であると、多孔質層に対する熱可塑性樹脂造粒体の含有量が小さくなるのを防ぎ、接着性の低下を抑制できる。
【0050】
熱可塑性樹脂造粒体、有機樹脂、および無機粒子を分散させる方法としては、公知の手法を用いればよい。例えば、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、ロールミル、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、超音波装置、ペイントシェーカーなどが挙げられる。これら複数の混合分散機を組み合わせて段階的に分散を行ってもよい。
【0051】
本発明の実施形態に係るスラリー組成物は、無機粒子、溶媒、および上述の熱可塑性樹脂造粒体を混合することを含む製造方法によって製造することができる。
【0052】
上記スラリー組成物は、後述する二次電池用セパレータに使用する目的で、多孔質基材へ塗工する塗工液に用いることができる。
【0053】
塗工液を調製する順序としては特に限定はされない。分散工程の効率化の観点から、水を主成分とする溶媒に分散剤を添加、混合し、その溶液の中に熱可塑性樹脂造粒体、有機樹脂、および無機粒子を添加して塗工液を調製することが好ましい。
【0054】
塗工液には、粒子同士や粒子と多孔質基剤とを結着させるために、必要であれば有機樹脂(バインダー)を添加してもよい。また、必要であれば適宜、酸化防止剤、安定化剤、消泡剤、レベリング剤などを塗工液に添加してもよい。
【0055】
レベリング剤の種類としては、特に限定されないが、例えば、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩などのカチオン系界面活性剤、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪酸塩などのアニオン系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノール、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルなどのノニオン系界面活性剤、アルキルベタイン、アルキルアミンオキサイドなどの両性界面活性剤、および上記カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性のフッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、ポリビニルピロリドン、ポリカルボン酸塩、ポリスルホン酸塩、ポリエーテルなどの高分子化合物などが挙げられる。これらのレベリング剤を1種類で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0056】
レベリング剤の添加量としては、熱可塑性樹脂造粒体、有機樹脂、および無機粒子の合計100質量部に対して20質量部以下が好ましく、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。レベリング剤の添加量が20質量部以下であると、接着性の低下および二次電池内での副反応による電池特性の低下を抑制できる。
【0057】
<二次電池用セパレータ>
本発明の実施形態に係る二次電池用セパレータは、多孔質基材の少なくとも片面に多孔質層を積層してなるセパレータであって、前記多孔質層の少なくとも一方の表層に熱可塑性樹脂造粒体を含み、前記熱可塑性樹脂造粒体は熱可塑性樹脂粒子を含む造粒体であって、複数の前記熱可塑性樹脂粒子の一次粒子が融着した融着物を含む、二次電池用セパレータである。
さらに、本発明の実施形態に係る二次電池用セパレータは、多孔質基材の少なくとも片面に多孔質層を積層してなるセパレータであって、前記多孔質層の少なくとも一方の表層に上述の熱可塑性樹脂造粒体を含むことが好ましい。また、本発明の実施形態に係る二次電池用セパレータは、好ましくは、上記多孔質層が無機粒子を含む無機粒子層を含み、少なくとも一部の上記熱可塑性樹脂造粒体は、一部分が無機粒子層の内部に埋没しており、かつ他の部分が無機粒子層の表面から外側に突出していることを特徴とする。本発明の実施形態に係る二次電池用セパレータは、リチウムイオン電池などの二次電池に好適に用いることができる。
【0058】
図1は、本発明の二次電池用セパレータの一実施形態のSEM画像である。本発明の実施形態に係る二次電池用セパレータは、多孔質基材1の少なくとも片面に多孔質層を積層してなる。多孔質層は、無機粒子を含む無機粒子層2を含んでおり、さらに、多孔質層の少なくとも一方の表層に熱可塑性樹脂造粒体3を含む。電極との接着性発現のためには、熱可塑性樹脂造粒体3は無機粒子層2の内部に埋没していない状態で表面に付着していればよい。多孔質層からの熱可塑性樹脂造粒体の脱落を防ぎ、接着性を安定して発現させるためには、少なくとも一部の熱可塑性樹脂造粒体3は、その一部分が無機粒子層2の内部に埋没しており、かつ他の部分が無機粒子層2の表面から外側に突出していることが好ましい。
【0059】
本発明の実施形態に係る二次電池用セパレータは、下記式(4)から算出される、熱可塑性樹脂造粒体のメジアン径に対する無機粒子層の厚みの比(D)が0.02以上1以下であることが好ましい。
(D)=無機粒子層の厚み(μm)/熱可塑性樹脂造粒体のメジアン径(μm)・・・(4)
【0060】
熱可塑性樹脂造粒体のメジアン径に対する無機粒子層の厚みの比(D)が0.02以上であると、熱可塑性樹脂造粒体が無機粒子層表面から大きく突出しにくくセパレータの取扱中に多孔質層から脱落するのを抑制でき、電極との十分な接着性が得られる。熱可塑性樹脂造粒体のメジアン径に対する無機粒子層の厚みの比(D)が1以下であると、熱可塑性樹脂造粒体が無機粒子層に埋没しにくく、電極と接触させ易く、十分な接着性が得られる。熱可塑性樹脂造粒体のメジアン径に対する無機粒子層の厚みの比は、0.05以上がより好ましく、0.10以上がさらに好ましく、0.15以上が特に好ましい。同様に、かかる比は0.8以下がより好ましく、0.6以下がさらに好ましく、0.4以下が特に好ましい。
【0061】
無機粒子層の厚みは、0.10μm以上であることが好ましい。より好ましくは、無機粒子層の厚みは0.3μm以上であり、さらに好ましくは0.5μm以上である。同様に、無機粒子層の厚みは5.0μm以下であることが好ましく、4.0μm以下がより好ましく、3.0μm以下がさらに好ましい。無機粒子層の厚みが0.10μm以上であると、熱可塑性樹脂造粒体がセパレータの取扱中に多孔質層から脱落しにくく、電極との十分な接着性が得られる。また、5.0μm以下であると、透気度の上昇が大きくなるのを抑制できるとともに、接着性が十分となる。また、片面のみに積層した場合、カールが著しくなる場合があるため、多孔質基材の両面に無機粒子層を積層させることが好ましい。また、無機粒子層を両面に積層する場合は、同様の理由から、それぞれの面の無機粒子層の厚みの差は、1μm以下にすることが好ましい。
【0062】
本発明の実施形態に係る二次電池用セパレータの多孔質層の面粗さは0.4μm以上15μm以下であることが好ましい。面粗さが0.4μm以上であると、無機粒子層表面からの熱可塑性樹脂造粒体の突出が小さくなりにくく、接着性が十分となる。また、15μm以下であると、熱可塑性樹脂造粒体の無機粒子層への埋没が小さくなるのを抑制し、セパレータ取扱中に熱可塑性樹脂造粒体が脱落するのを防止できる。面粗さは1.0μm以上がより好ましく、1.5μm以上がさらに好ましい。また同様に、面粗さは10μm以下がより好ましく、5μm以下がさらに好ましい。
【0063】
本発明の実施形態に係る二次電池用セパレータは、無機粒子がアルミナであって、エネルギー分散型X線分光法(EDX)により測定され、下記式(5)から算出される、フッ素(F)とアルミニウム(Al)のピクセル数の合計に対するフッ素(F)のピクセル数の比(E)は0.1以上0.5以下であることが好ましい。
(E)=Fのピクセル数/(Fのピクセル数+Alのピクセル数)・・・(5)
【0064】
フッ素とアルミニウムのピクセル数の合計に対するフッ素のピクセル数の比(E)が0.1以上であると、フッ素を含有する熱可塑性樹脂造粒体の無機粒子層表層への分布が小さくなるのを抑制し、接着性を向上できる。また、0.5以下であると、無機粒子層の構造維持に必要な無機粒子が十分となり、熱収縮が増大するのを抑制できる。フッ素とアルミニウムのピクセル数の合計に対するフッ素のピクセル数の比(E)は0.12以上がより好ましく、0.14以上がさらに好ましく、0.16以上が特に好ましい。同様に0.4以下がより好ましく、0.3以下がさらに好ましく、0.25以下が特に好ましい。
【0065】
本発明の実施形態に係る二次電池用セパレータは、上述の熱可塑性樹脂造粒体、無機粒子、および溶媒を混合して作製したスラリー組成物を、多孔質基材上に塗布(塗工)、乾燥する工程を含む製造方法によって製造することができる。塗工方法としては、公知の方法で塗工すればよい。例えば、グラビアコーティング、スリットダイコーティング、ナイフコーティング、キスコーティング、ロールコーティング、バーコーティング、吹き付け塗装、浸漬コーティング、スピンコーティング、スクリーン印刷、インクジェット印刷、パット印刷、他の種類の印刷などが利用できる。塗工方法はこれらに限定されることはなく、用いる熱可塑性樹脂造粒体、有機樹脂、無機粒子、バインダー、分散剤、レベリング剤、使用する溶媒、基材などの好ましい条件に合わせて適宜選択すればよい。また、塗工性を向上させるために、例えば、多孔質基材にコロナ処理、プラズマ処理などの塗工面の表面処理を行ってもよい。
【0066】
多孔質基材の両面に多孔質層を積層させる場合は、片面ずつ塗工して乾燥させてもよいし、両面同時に塗工して乾燥させてもよい。両面同時に塗工して乾燥させる方が、生産性が良く好ましい。
【0067】
また接着性の観点から、片面のみに多孔質層を積層するよりも両面に多孔質層を積層する方が好ましい。両面に多孔質層を積層することで、正極、負極の両面で接着性が得られることから、工程取扱性が優れるためである。
【0068】
[多孔質基材]
本発明の実施形態において、多孔質基材としては、内部に空孔を有する多孔膜、不織布、または繊維状物からなる多孔膜シートなどが挙げられる。多孔質基材を構成する材料としては、電機絶縁性であり、電気的に安定で、電解液にも安定である樹脂から構成されていることが好ましい。また、シャットダウン機能を付与する観点から、用いる樹脂は融点が200℃以下の熱可塑性樹脂が好ましい。ここでのシャットダウン機能とは、リチウムイオン電池が異常発熱した場合に、熱で溶融することで多孔構造を閉鎖し、イオン移動を停止させて、発電を停止させる機能のことである。
【0069】
多孔質基材に用いる熱可塑性樹脂としては、例えばポリオレフィン系樹脂が挙げられる。多孔質基材はポリオレフィン系多孔質基材であることが好ましい。また、ポリオレフィン系多孔質基材は融点が200℃以下であるポリオレフィン系多孔質基材であることがより好ましい。ポリオレフィン系樹脂としては、具体的にはポリエチレン、ポリプロピレン、これらの共重合体、およびこれらを組み合わせた混合物などが挙げられ、例えばポリエチレンを90質量%以上含有する単層の多孔質基材、ポリエチレンとポリプロピレンからなる多層の多孔質基材などが挙げられる。
【0070】
多孔質基材の製造方法としては、ポリオレフィン系樹脂をシートにした後に延伸することで多孔質化する方法やポリオレフィン系樹脂を流動パラフィンなどの溶剤に溶解させてシートにした後に溶剤を抽出することで多孔質化する方法が挙げられる。
【0071】
多孔質基材の厚みは、3μm以上50μm以下が好ましい。多孔質基材の厚みが50μm以下であると多孔質基材の内部抵抗が高くなるのを抑制できる。また、多孔質基材の厚みが3μm以上であると製造し易く、また十分な力学特性が得られる。多孔質基材の厚みは5μm以上がより好ましい。また同様に、多孔質基材の厚みは30μm以下がより好ましい。
【0072】
多孔質基材の透気度は、50秒/100cc以上1000秒/100cc以下であることが好ましい。より好ましくは500秒/100cc以下である。透気度が1000秒/100cc以下であると、十分なイオン移動性が得られ、電池特性の低下を抑制できる。多孔質基材の透気度が50秒/100cc以上であると、十分な力学特性が得られる。
【0073】
<二次電池>
本発明の実施形態に係る二次電池は、上述の二次電池用セパレータを用いた二次電池である。上記二次電池としては、好ましくは、リチウムイオン電池などの二次電池が挙げられる。リチウムイオン電池は、一般に、正極活物質を正極集電体に積層した正極と、負極活物質を負極集電体に積層した負極との間に、二次電池用セパレータと電解質が介在した構成を有する。
【0074】
正極は、活物質、バインダー樹脂、および導電助剤等からなる正極材が集電体上に積層されたものであり、活物質としては、LiCoO2、LiNiO2、Li(NiCoMn)O2、などの層状構造のリチウム含有遷移金属酸化物、LiMn2O4などのスピネル型マンガン酸化物、およびLiFePO4などの鉄系化合物などが挙げられる。バインダー樹脂としては、耐酸化性が高い樹脂を使用すればよい。具体的にはフッ素系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂などが挙げられる。導電助剤としては、カーボンブラック、黒鉛などの炭素材料が用いられる。集電体としては、金属箔が好適であり、特にアルミニウムが用いられることが多い。
【0075】
負極は、活物質、バインダー樹脂および導電助剤等からなる負極材が集電体上に積層されたものであり、活物質としては、人造黒鉛、天然黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボンなどの炭素材料、スズやシリコンなどのリチウム合金系材料、Liなどの金属材料、およびチタン酸リチウム(Li4Ti5O12)などが挙げられる。バインダー樹脂としては、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂などが用いられる。導電助剤としては、カーボンブラック、黒鉛などが用いられている。集電体としては、金属箔が好適であり、特に銅箔が用いられることが多い。
【0076】
電解液は、二次電池の中で正極と負極との間でイオンを移動させる場となっており、電解質を有機溶媒にて溶解させた構成を有する。電解質としては、LiPF6、LiBF4、およびLiClO4などが挙げられる。電解質は、有機溶媒への溶解性、イオン伝導性の観点からは、LiPF6が好適に用いられる。有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ガンマブチロラクトン、およびスルホランなどが挙げられる。これらの有機溶媒を1種類で、または2種類以上混合して使用してもよい。
【0077】
二次電池の作製方法としては、まず活物質と導電助剤をバインダー溶液中に分散して電極用塗布液を調製し、この塗布液を集電体上に塗工して、溶媒を乾燥させることで正極、負極がそれぞれ得られる。乾燥後の塗工膜の膜厚は50μm以上500μm以下とすることが好ましい。得られた正極と負極の間に二次電池用セパレータを、それぞれの電極の活物質層と接するように配置し、アルミラミネートフィルムなどの外装材に封入し、電解液を注入した後に熱プレスする。その後、負極リードや安全弁を設置し、外装材を封止する。このようにして得られた二次電池は、電極と二次電池用セパレータとの接着性が良いため、サイクル特性に優れ、かつ寸法安定性に優れ、また、低コストでの製造が可能となる。
【実施例】
【0078】
〔測定例1:ガラス転移点〕
「JIS K7121:2012 プラスチックの転移温度測定方法」の規定に準じた示差走査熱量測定(DSC)において、株式会社島津製作所製DSC-60(示差走査熱量分析装置)にて、測定パンに2~3mgの熱可塑性樹脂粒子を入れ測定用試料とし、以下の条件にて測定した。観測されるベースラインと変曲点での接線の交点をガラス転移点(℃)とした。
昇温速度 : 10℃/min
測定温度範囲 : -100~200℃
【0079】
〔測定例2:融点〕
「JIS K7121:2012 プラスチックの転移温度測定方法」の規定に準じた示差走査熱量測定(DSC)において、株式会社島津製作所製DSC-60(示差走査熱量分析装置)にて、測定パンに2~3mgの熱可塑性樹脂粒子を入れ測定用試料とし、以下の条件にて測定した。1回目の昇温時の吸熱ピークのピークトップの温度を融点(℃)とした。
昇温、冷却速度 : ±10℃/min
測定温度範囲 : -20~230℃
【0080】
〔測定例3:メジアン径〕
熱可塑性樹脂粒子または熱可塑性樹脂造粒体のメジアン径(体積基準)(μm)を、株式会社堀場製作所製レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-920で測定した。超音波を強度6設定で1分間印加した時点で測定を開始し、測定終了まで超音波印加を継続した。装置内の溶媒は水を使用し、PVdF共重合体の絶対屈折率は1.41とした。
【0081】
〔測定例4:重量平均分子量〕
熱可塑性樹脂粒子の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法を用い、ポリスチレンによる校正曲線と対比させて算出した。
装置 :株式会社島津製作所製 LA-10Aシリーズ
カラム:昭和電工株式会社製 KD-806M × 2本
移動相:ジメチルホルムアミド流量 :1.0ml/min
検出 :示差屈折率計
カラム温度:40℃
【0082】
〔測定例5:無機粒子層の厚み〕
株式会社日立ハイテクノロジーズ製イオンミリング装置IM-4000にて二次電池用セパレータのサンプル断面を切り出し、その断面を株式会社日立ハイテクノロジーズ製超高分解能電解放出形走査電子顕微鏡SU8010にて観察して、その観察領域内において熱可塑性樹脂造粒体の存在しない無機粒子からなる部分について多孔質基材との界面から最も高い所を選択し、無機粒子層の厚み(μm)として計測した。無機粒子層の厚み(μm)としては、100mm×100mmサイズのサンプルから任意の5箇所についてそれぞれ観察、選択、計測し平均した値を用いた。
【0083】
〔測定例6:多孔質層内の熱可塑性樹脂造粒体のメジアン径〕
顕微鏡下で二次電池用セパレータの多孔質層を削り取り、水中で撹拌抽出後、遠心分離により可溶物と不溶物に分離し、不溶物についてさらに無機粒子と熱可塑性樹脂造粒体を分離した。熱可塑性樹脂造粒体についてメジアン径(体積基準)(μm)を株式会社堀場製作所製レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-920で測定した。超音波を強度6設定で1分間印加した時点で測定を開始し、測定終了まで超音波印加を継続した。装置内の溶媒は水を使用し、PVdF共重合体の絶対屈折率は1.41とした。
【0084】
〔測定例7:透気度〕
二次電池用セパレータの100mm×100mmサイズの試料3枚からそれぞれ任意の一箇所を選び、株式会社東洋精機製作所製ガーレー式デンソメーターG-B3Cを用いてJIS P 8117(2009)に準拠して測定を行った。得られた値の平均値を透気度(sec/100cc)とした。
【0085】
〔測定例8:ドライ接着強度〕
活物質が黒鉛、バインダーがフッ化ビニリデン樹脂(PVdF)、導電助剤がカーボンブラックの負極30mm×100mmと二次電池用セパレータ40mm×150mmを、活物質と多孔質層が接触するように設置し、熱ロールプレス機にて0.5MPa、85℃、0.2m/minで熱プレスを行った。続いて、株式会社エー・アンド・デイ製テンシロン万能試験機RTG-1210を用いてピール法(180°剥離、剥離速度100mm/min)にてドライ接着強度(N/m)を測定した。ロードセルはTLU-5N-G(最大荷重容量5N)を装着し、測定開始から測定終了までの100mmの間において連続的に測定した。20~60mmの荷重の平均値を算出し、幅1m当たりの値に換算して剥離強度(ドライ接着強度)とした。なお、剥離界面において、多孔質基材側に多孔質層の一部が残存する場合があるが、この場合も負極と多孔質層の剥離強度(ドライ接着強度)として算出した。
【0086】
〔測定例9:ウェット接着強度〕
一般に、正極にはフッ素系樹脂のバインダーが用いられ、フッ素系樹脂を含む多孔質層がセパレータ上に備えられている場合、フッ素系樹脂同士の相互拡散により接着性が担保されやすい。一方、一般に負極にはフッ素系樹脂以外のバインダーが用いられ、フッ素系樹脂の拡散が起きにくいため、正極に比べ負極はセパレータとの接着性が得られにくい。そこで、本測定では、以下に述べるウェット接着強度を測定することにより、セパレータと負極との間のウェット接着性の指標として評価した。
図2は、ウェット接着強度の測定方法を模式的に示す正面断面図である。以下、
図2を参照して、詳細を記載する。
【0087】
(負極の作製)
増粘剤および活物質の分散剤としてカルボキシメチルセルロースを1.5質量部含む水溶液を、活物質としての人造黒鉛96.5質量部に加えて混合し、さらにバインダーとして、固形分として2質量部のスチレンブタジエンラテックスを加えて混合して負極合剤含有スラリーとした。この負極合剤含有スラリーを、厚みが8μmの銅箔からなる負極集電体の両面に均一に塗付して乾燥して負極層を形成し、その後、ロールプレス機により圧縮成形して集電体を除いた負極層の密度を1.5g/cm3にして、負極5を作製した。
【0088】
(試験用巻回体の作製)
上記で作製された負極5(機械方向161mm×幅方向30mm)と、作製された二次電池用セパレータ4(機械方向160mm×幅方向34mm)を重ね、金属板(長さ300mm、幅25mm、厚さ1mm)を巻き芯として二次電池用セパレータ4が内側になるように二次電池用セパレータ4と負極5を巻き取り、金属板を引き抜いて試験用巻回体7を得た。試験用巻回体は長さ約34mm×幅約28mmとなった。
【0089】
(ウェット接着強度の測定方法)
ポリプロピレンからなるラミネートフィルム(長さ70mm、幅65mm、厚さ0.07mm)を2枚重ね、4辺のうち3辺を溶着した袋状のラミネートフィルム6内に試験用巻回体7を入れた。エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートを体積比3:7で混合した溶媒にLiPF6を1mol/Lの割合で溶解させた電解液500μLをグローブボックス中でラミネートフィルム6の開口部から注入し、試験用巻回体7に含浸させ、真空シーラーで開口部の一辺を封止した。
【0090】
次に、ラミネートフィルム6に封入した試験用巻回体7を、2枚のガスケット(厚さ1mm、5cm×5cm)で挟み込み、精密加熱加圧装置(新東工業株式会社製、CYPT-10)にて98℃、0.6MPaで2分間加圧し、室温で放冷した。ラミネートフィルム6に封入したまま、加圧後の試験用巻回体7について、万能試験機(株式会社島津製作所製、AGS-J)を用いてウェット接着強度を測定した。
【0091】
2本のアルミニウム製L字アングル8(厚さ1mm、10mm×10mm、長さ5cm)を90°部分が上になるように平行に、端部をそろえて配置し、90°部分を支点として支点間距離が15mmとなるよう固定した。2本のアルミニウム製L字アングル8の支点間距離の中間である7.5mm地点に、試験用巻回体の幅方向の辺(約28mm)の中点を合わせて、アルミニウム製L字アングル8の長さ方向の辺からはみ出さないように、試験用巻回体7を配置した。
【0092】
次に、圧子として、アルミニウム製L字アングル9(厚さ1mm、10mm×10mm、長さ4cm)の長さ方向の辺から試験用巻回体の長さ方向の辺(約34mm)がはみ出さないように、かつ平行にして、試験用巻回体の幅方向の辺の中点にアルミニウム製L字アングル9の90°部分を合わせ、90°部分が下になるようにアルミニウム製L字アングル9を万能試験機のロードセル(ロードセル容量50N)に固定した。3個の試験用巻回体を負荷速度0.5mm/minにて測定し、得られた最大試験力の平均値をウェット接着強度(N)とした。
【0093】
〔測定例10:EDX〕
各実施例、比較例で得られた二次電池用セパレータ表面をイオンスパッタ装置(日本電子株式会社製、JEC-3000FC)でスパッタリングした後、走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、SU8010)に接続したエネルギー分散型X線分光装置(オックスフォード・インストゥルメンツ株式会社製、EMAXEvolution X-MAXN)により測定した。加速電圧4.5kV、倍率1千倍で観察視野を定め、電子線像を解像度4096で取り込んだ後、解像度4096でマッピングを行った。マッピング結果に対して相の分析を行い、フッ素とアルミニウムのピクセル数の合計に対するフッ素のピクセル数の比を算出した。
【0094】
〔測定例11:面粗さ〕
各実施例、比較例で得られた二次電池用セパレータを3D形状測定機(株式会社キーエンス製、VR-3200)で観察して、セパレータ表面の面粗さをランダムに10点測定した。得られた値の平均値を求め、面粗さ(μm)とした。
【0095】
[実施例1]
乳化重合法で作製されたフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(VDF/HFP=88/12)粒子の25wt%水分散液を藤崎電機株式会社製スプレードライヤーMDL-050(C)Mを用いて熱風温度50℃で噴霧乾燥し、熱可塑性樹脂造粒体を得た。
【0096】
上記熱可塑性樹脂造粒体に、無機粒子としてアルミナ粒子(メジアン径0.5μm)を不揮発性固形分の質量比で25:75になるように水を加えて混合した。またバインダーとしてアクリル系樹脂を熱可塑性樹脂造粒体と無機粒子の合計100質量部に対して3.9質量部添加し、レベリング剤として界面活性剤であるパーフルオロアルキル化合物を熱可塑性樹脂造粒体と無機粒子の合計100質量部に対して0.4質量部添加してスラリー組成物を調製した。得られたスラリー組成物の固形分濃度は45wt%であった。このスラリー組成物をバーコータを用いて無機粒子層の厚みが片面あたり0.7μmとなる様にポリエチレン多孔質基材(厚み9μm、透気度175sec/100cc)の両面に塗工した。塗工したスラリー組成物を熱風オーブン中で50℃ 2min乾燥することで多孔質層を形成し、本発明の実施形態に係る二次電池用セパレータを得た。
【0097】
[実施例2]
無機粒子層の厚みが片面あたり1.5μmとなる様にバーコータを用いてスラリー組成物を塗工した以外は、実施例1と同様にして本発明の実施形態に係る二次電池用セパレータを得た。
【0098】
[実施例3]
無機粒子層の厚みが片面あたり2.0μmとなる様にバーコータを用いてスラリー組成物を塗工した以外は、実施例1と同様にして本発明の実施形態に係る二次電池用セパレータを得た。
【0099】
[実施例4]
無機粒子層の厚みが片面あたり3.0μmとなる様にバーコータを用いてスラリー組成物を塗工した以外は、実施例1と同様にして本発明の実施形態に係る二次電池用セパレータを得た。
【0100】
[実施例5]
スプレードライヤーの熱風温度を70℃に変えた以外は、実施例3と同様にして本発明の実施形態に係る二次電池用セパレータを得た。
【0101】
[実施例6]
スプレードライヤーの熱風温度を90℃に変えた以外は、実施例3と同様にして本発明の実施形態に係る二次電池用セパレータを得た。
【0102】
[実施例7]
スラリー組成物中の熱可塑性樹脂造粒体と無機粒子の不揮発性固形分の質量比を10:90になるように混合した以外は、実施例3と同様にして本発明の実施形態に係る二次電池用セパレータを得た。
【0103】
[実施例8]
フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体組成VDF/HFP=95/5を用いた以外は、実施例3と同様にして本発明の実施形態に係る二次電池用セパレータを得た。
【0104】
[実施例9]
無機粒子としてメジアン径0.05μmのアルミナ粒子を用いた以外は、実施例3と同様にして本発明の実施形態に係る二次電池用セパレータを得た。
【0105】
[実施例10]
スプレードライヤーで噴霧乾燥後にサイクロンで回収したメジアン径1μmの熱可塑性樹脂造粒体を用いた以外は、実施例1と同様にして本発明の実施形態に係る二次電池用セパレータを得た。
【0106】
[実施例11]
スプレードライヤーで噴霧乾燥後にサイクロンで回収したメジアン径2μmの熱可塑性樹脂造粒体、ならびにメジアン径1μmのアルミナ粒子を用い、無機粒子層の厚みが片面あたり4.0μmとなる様にバーコータを用いてスラリー組成物を塗工した。上記以外は実施例1と同様にして、本発明の実施形態に係る二次電池用セパレータを得た。
【0107】
[実施例12]
スラリー組成物中の熱可塑性樹脂造粒体と無機粒子の不揮発性固形分の質量比を3:97になるように混合した以外は、実施例3と同様にして本発明の実施形態に係る二次電池用セパレータを得た。
【0108】
[実施例13]
スプレードライヤーで噴霧乾燥後にサイクロンで回収したメジアン径2μmの熱可塑性樹脂造粒体を用い、無機粒子層の厚みが片面あたり4.0μmとなる様にバーコータを用いてスラリー組成物を塗工した。上記以外は実施例1と同様にして、本発明の実施形態に係る二次電池用セパレータを得た。
【0109】
[実施例14]
大川原化工機株式会社製スプレードライヤーL-8i型を用い、噴霧方式を遠心噴霧に変えた以外は、実施例6と同様にして本発明の実施形態に係る二次電池用セパレータを得た。
【0110】
[実施例15]
フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体組成VDF/HFP=90/10を用いた以外は、実施例14と同様にして本発明の実施形態に係る二次電池用セパレータを得た。
【0111】
[実施例16]
フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体組成VDF/HFP=95/8を用い、スプレードライヤーの熱風温度を100℃に変えた以外は、実施例14と同様にして本発明の実施形態に係る二次電池用セパレータを得た。
【0112】
[実施例17]
フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体組成VDF/HFP=95/5を用い、スプレードライヤーの熱風温度を110℃に変えた以外は、実施例14と同様にして本発明の実施形態に係る二次電池用セパレータを得た。
【0113】
[実施例18]
フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体組成VDF/HFP=85/15を用い、スプレードライヤーの熱風温度を50℃に変えた以外は、実施例14と同様にして本発明の実施形態に係る二次電池用セパレータを得た。
【0114】
[実施例19]
フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体組成VDF/HFP=96/4を用い、スプレードライヤーの熱風温度を120℃に変えた以外は、実施例14と同様にして本発明の実施形態に係る二次電池用セパレータを得た。
【0115】
[実施例20]
フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体組成VDF/HFP=97/3を用い、スプレードライヤーの熱風温度を125℃に変えた以外は、実施例14と同様にして本発明の実施形態に係る二次電池用セパレータを得た。
【0116】
[実施例21]
フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体組成VDF/HFP=98/2を用い、スプレードライヤーの熱風温度を135℃に変えた以外は、実施例14と同様にして本発明の実施形態に係る二次電池用セパレータを得た。
【0117】
[実施例22]
フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体組成VDF/HFP=100/0を用い、スプレードライヤーの熱風温度を140℃に変えた以外は、実施例14と同様にして本発明の実施形態に係る二次電池用セパレータを得た。
【0118】
[比較例1]
スプレードライヤーによる造粒を行わずに乳化重合法で作製されたメジアン径0.7μmのフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(VDF/HFP=88/12)粒子をスラリー組成物に用いた。上記以外は実施例3と同様にして、二次電池用セパレータを得た。
【0119】
[比較例2]
スプレードライヤーによる造粒を行わずに乳化重合法で作製されたメジアン径0.7μmのフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(VDF/HFP=95/5)粒子をスラリー組成物に用いた。上記以外は実施例3と同様にして、二次電池用セパレータを得た。
【0120】
[比較例3]
スプレードライヤーによる造粒を行わずに、乳化重合法で作製されたメジアン径0.2μmのフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(VDF/HFP=88/12)粒子をスラリー組成物に用いた。上記以外は実施例3と同様にして、二次電池用セパレータを得た。
【0121】
[比較例4]
スプレードライヤーによる造粒を行わずに、懸濁重合法で作製されたメジアン径100μmのフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(VDF/HFP=88/12)粒子をスラリー組成物に用いた。上記以外は実施例3と同様にして、二次電池用セパレータを得た。塗工の際、スラリー組成物にはフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体粒子と思われる多量の沈降が見られ、塗膜は共重合体粒子を引き摺ったスジが観察された。
【0122】
各実施例および比較例で用いた熱可塑性樹脂粒子のガラス転移点、熱可塑性樹脂粒子の融点、熱可塑性樹脂粒子の重量平均分子量、熱可塑性樹脂粒子のメジアン径、熱可塑性樹脂粒子の組成、熱可塑性樹脂造粒体の製法、熱可塑性樹脂造粒体のメジアン径、熱可塑性樹脂粒子のメジアン径に対する熱可塑性樹脂造粒体のメジアン径の比(A)、スラリー組成物の溶媒、スラリー組成物中の無機粒子メジアン径、スラリー組成物中の無機粒子のメジアン径に対する熱可塑性樹脂造粒体のメジアン径の比(B)、スラリー組成物中の熱可塑性樹脂造粒体の含有量、スラリー組成物作製時の熱可塑性樹脂造粒体と無機粒子との質量比、スラリー組成物中の無機粒子の含有量に対する熱可塑性樹脂造粒体の含有量の比(C)について、表1~表3に示す。
【0123】
各実施例および比較例で得られた二次電池用セパレータについて、無機粒子層の厚み(片面)、熱可塑性樹脂造粒体のメジアン径、熱可塑性樹脂造粒体のメジアン径に対する無機粒子層の厚みの比(D)、透気度、面粗さ、ドライ接着強度、ウェット接着強度、およびEDXで検出されるFとAlのピクセル数の合計に対するFのピクセル数の比(E)を測定した。測定結果を表1~表3に示す。なお、比較例1~4に関して、熱可塑性樹脂造粒体のメジアン径を用いて算出する各数値については熱可塑性樹脂粒子のメジアン径を用いて算出した。
【0124】
【0125】
【0126】
【0127】
表1~表3に示すように、実施例1~22は、熱可塑性樹脂造粒体を用いたことで、比較例1~4と比較して、優れたドライ接着強度またはウェット接着強度を示すとともに、同等以上の面粗さ及び透気度を示した。
図1は、実施例1の二次電池用セパレータのSEM画像である。
図1に示すように、本発明の実施形態に係る二次電池用セパレータは、多孔質基材の少なくとも片面に多孔質層を積層してなり、多孔質層の少なくとも一方の表層に熱可塑性樹脂造粒体を含む。
図2は、測定例9に示すウェット接着強度の測定方法を模式的に示す正面断面図である。
【0128】
本発明を詳細にまた特定の実施形態を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は、2019年3月28日出願の日本特許出願(特願2019-063264)および2019年9月27日出願の日本特許出願(特願2019-177758)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明によれば、優れた接着性、即ちドライ接着性またはウェット接着性を保持しながら環境負荷およびコストを効果的に抑制できる二次電池用セパレータを提供することができる。
【符号の説明】
【0130】
1 多孔質基材
2 無機粒子層
3 熱可塑性樹脂造粒体
4 二次電池用セパレータ
5 負極
6 ラミネートフィルム
7 試験用巻回体
8 アルミニウム製L字アングル
9 アルミニウム製L字アングル