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  • 特許-ろう付けプレート熱交換器の製造方法 図1
  • 特許-ろう付けプレート熱交換器の製造方法 図2
  • 特許-ろう付けプレート熱交換器の製造方法 図3
  • 特許-ろう付けプレート熱交換器の製造方法 図4
  • 特許-ろう付けプレート熱交換器の製造方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】ろう付けプレート熱交換器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F28F 3/08 20060101AFI20230314BHJP
   B23K 1/00 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
F28F3/08 311
B23K1/00 330K
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020535201
(86)(22)【出願日】2019-01-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-04-30
(86)【国際出願番号】 EP2019050993
(87)【国際公開番号】W WO2019141701
(87)【国際公開日】2019-07-25
【審査請求日】2021-12-17
(31)【優先権主張番号】1850045-4
(32)【優先日】2018-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】502298310
【氏名又は名称】スウェップ インターナショナル アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】100116872
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 和子
(72)【発明者】
【氏名】ボルネゴード ニクラス
(72)【発明者】
【氏名】アンデション スヴェン
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ ハンス
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-503655(JP,A)
【文献】特表2015-513656(JP,A)
【文献】特開2007-163131(JP,A)
【文献】特開平09-178384(JP,A)
【文献】特開2014-185803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 3/00 - 3/14
B23K 1/00
F28D 9/00 - 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体が熱を交換するプレート間流路であって、媒体が熱を交換するためのポート開口部と選択的に連通し、外部漏れを回避するために外周に沿って周方向にシールされる、プレート間流路の形態下で熱交換器プレートが互いに間隔を保つように、隣接する熱交換器プレート間に接触点を提供するように適合されたプレスパターンが設けられた熱交換器プレートのスタックを含む、ろう付けされたプレート熱交換器を製造する方法であって、
a.隣接するプレート間の接触点の位置を計算するステップと、
b.熱交換器の使用時に各接触点によって伝達されなければならない力を計算するステップと、
c.上記の方法ステップに基づいて、各接触点用のろう付け材料の必要量を計算するステップと、
d.ろう付け材料を熱交換器プレート上にスクリーン印刷するためのスクリーンであって、サイズ、位置、プレート厚さおよび形状が各接触点に必要な量のろう付け材料を提供するように適合された開口部を備えた、スクリーンを提供するステップと、
e.スクリーンを使用してろう付け材料で熱交換器プレートをスクリーン印刷するステップと、
f.熱交換器プレートをスタックに積み重ねるステップと、
g.プレートを結合して熱交換器を形成するために、熱交換器プレートのスタックをろう付けするステップと、
を特徴とする、方法。
【請求項2】
前記スクリーン開口部は、前記ポート開口部からの距離が増加するにつれて、適用されるろう付け材料の量を減少させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
周方向のシールは、各熱交換器プレートに設けられた周方向スカートによって提供され、隣接するプレートのスカートは、重なり合う仕方で互いに接触するように適合される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
熱交換器プレートは、概して長方形であり、ポート開口部は、熱交換器プレートのコーナー近くに配置される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ろう付け材料は、各接触点のいずれかの側に「二重ドット」の形状で配置される、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記二重ドットは、円周、正方形、長方形、半月に似た形状または括弧記号の形状を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
大きな力の伝達を必要とする接触点またはその付近に適用されるろう付け材料の量と、小さな力の伝達を必要とする接触点またはその付近に適用されるろう付け材料の量との比が、1.1~20の範囲、好ましくは1.1~10の範囲にある、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体が熱を交換するプレート間流路であって、媒体が熱を交換するためのポート開口部と選択的に連通し、外部漏れを回避するために外周に沿って周方向にシールされる、プレート間流路の形態下で熱交換器プレート、またはその部分が互いに間隔を保つように、隣接する熱交換器プレート間に接触点を提供するように適合されたプレスパターンが設けられた熱交換器プレートのスタックを含む、ろう付けされたプレート熱交換器を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ろう付けの前に、熱交換器プレート上にろう付け材料を適用(apply)する方法が開示されている。この方法は、要するに、隣接する熱交換器プレートの隆起部と溝との間の接触点ではなく、接触点の近くにろう付け材料を適用することを含む。この方法により、隆起と溝との間のろう付け接合部は、隆起と溝との間の接触点にろう付け材料を適用することによって達成されるろう付け接合部よりも大幅に薄くなる。
【0003】
上記の特許出願による方法により、高い強度を有するろう付け接合部が少量のろう付け材料で達成される。これには、ろう付け材料の大幅な節約を除いて、いくつかの利点があり、熱交換器プレートの材料を溶解することが可能なろう付け材料がろう付け材料として使用されるときに、熱交換器プレートのいわゆる「溶け落ち」のリスクが低減される。
【0004】
驚くべきことに、接触点ではなく、接触点の近くに適用されるろう付け材料の量は、ろう付け接合部の強度に大きな影響を与えないことが示されている。これは、より多くのろう付け材料が使用される場合に、熱交換プレートが作られる板金が、ろう付け材料がプレートの厚さの一部を溶解することに起因して、より多くの侵食を受けるという事実によると思われる。ただし、より多くのろう付け材料を使用すると、ろう付け接合部の全体的な強度は高くなるが、その差は予想よりも小さくなる。
【0005】
本発明の目的は、所与の総量のろう付け材料に対して最適な強度を有するろう付けされた熱交換器を得るために、各接触点の近くまたは各接触点に適用されるろう付け材料の量を最適化することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】スウェーデン国特許第SE539695号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下のステップを含む方法によって上記および他の問題を解決する。
i.隣接するプレート間の接触点の位置を計算するステップと、
ii.熱交換器の使用時に各接触点によって伝達されなければならない力を計算するステップと、
iii.上記の方法ステップに基づいて、各接触点用のろう付け材料の必要量を計算するステップと、
iv.ろう付け材料を熱交換器プレート上にスクリーン印刷するためのスクリーンであって、サイズ、位置、プレート厚さおよび形状が各接触点に必要な量のろう付け材料を提供するように適合された開口部を備えた、スクリーンを提供するステップと、
v.スクリーンを使用してろう付け材料で熱交換器プレートをスクリーン印刷するステップと、
vi.熱交換器プレートをスタックに積み重ねるステップと、
vii.プレートを結合して熱交換器を形成するために、熱交換器プレートのスタックをろう付けするステップ。
【0008】
ろう付け材料の最小限の使用で最大の強度を達成するために、スクリーン開口部は、ポート開口部からの距離が増加するにつれて、適用されるろう付け材料の量を減少させることができる。
【0009】
内部流路を外部漏れからシールするために、周囲シールは、各熱交換器プレートに設けられた周囲スカートによって提供されてもよく、隣接するプレートのスカートは、重なり合う仕方で互いに接触するように適合される。
【0010】
好ましくは、熱交換器プレートは、概して長方形であり、ポート開口部は、熱交換器プレートのコーナーの近くに配置される。これは、材料の効率的な方法でコイルの形態の板金を利用することが可能であるという点で有益である。
【0011】
最小の厚さを有するろう付け接続を提供するために、ろう付け材料は、各接触点の両側に「二重ドット」の形状で配置されてもよい。 二重ドットは、円周、正方形、長方形、半月に似た形、または括弧記号の形をしていてもよい。
【0012】
以下に、本発明は、添付図面を参照して好ましい実施形態の例によって開示される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、ろう付け前のろう付け材料を有する熱交換器プレートをスクリーン印刷するために使用されるスクリーンまたはステンシルの平面図である。
図2図2は、スクリーンにおける開口部の例示的形状の平面図である。
図3図3は、スクリーンにおける開口部の例示的形状の平面図である。
図4図4は、スクリーンにおける開口部の例示的形状の平面図である。
図5図5は、スクリーンにおける開口部の例示的形状の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明をその好ましい実施形態を参照して説明する。ただし、最初に、いくつかの基本的なプロパティについて簡単に説明する。
【0015】
本発明は、ろう付けされた熱交換器を製造するのに有用である。ろう付けされた熱交換器は、プレートがスタックに配置されたときに隣接するプレート間に接触点を形成するように適合された隆起および溝を含むプレスパターンを備えた多数の熱交換器プレートを含む。接触点によって、プレートは、接触点とは別に、媒体が熱を交換するためのプレート間流路がプレート間に形成されるように、互いに距離を置いて保持される。プレート間流路は、エッジシール(通常はプレートの全周に沿って延びるスカートの形)により周方向にシールされ、隣接するプレートのスカートは、互いに重なり合うように適合され、そのため、プレート間流路からの漏れを停止する周囲シールを形成する。
【0016】
プレート間流路は、一般に熱交換器プレートのコーナー近くに配置されるポート開口部と連通する。ほとんどの場合、第1の流体の入口開口部と出口開口部、第2の流体の入口開口部と出口開口部、の4つのポート開口部が提供される。第1の流体の入口開口部および出口開口部は、第1の組のプレート間流路によって互いに連通し、第2の流体の入口開口部および出口開口部は、第2の組のプレート間流路によって互いに連通する。一般に、各組のプレート間流路の流路は、他のすべての流路が第1の組の流路に含まれ、他の流路が第2の組の流路に含まれるように配置される。
【0017】
ポート開口部と流路との間の選択的な連通は、隣接するプレートのポート開口部を取り囲む領域が互いに接触するか、または互いに接触しないように(互いにろう付けした場合、ポート開口部と隣接するプレート間のプレート間流路との間に連通はないが、領域が互いに接触していない場合は連通がある)、異なる高さでポート開口部を取り囲む領域を提供することによってしばしば達成される。
【0018】
運転中、互いに熱交換する流体は、周囲の大気圧を超える圧力を有することが一般的である。そのような圧力から生じる力は、隣接するプレートを互いから離れるように押圧し、そしてプレートを一緒に保つために、隣接するプレートの隆起と溝との間の接触点は、プレートからプレートに力を伝達しなければならない。この力は、圧力と、圧力から生じる力を各接触点が伝達しなければならない領域とに依存する。
【0019】
ポート開口部領域は流体圧力にさらされるので、そしてポート開口部には接触点がないので、理解できるように、ポート開口部の近くのろう付け接合部は、かなり大きな力を伝達する必要がある。したがって、流体圧力により加えられる全体の力は、2~3の接触点のみによって伝達されなければならない。
【0020】
図1を参照すると、ろう付け前の熱交換器プレートへのろう付け材料の塗布パターンが概略的に示される。分かるように、ろう付け材料は、「二重ドット」の形のドットのペアで適用される。各ペアのドットの各々は、隣接する熱交換器プレートの隆起と溝との間の接触点に隣接するように配置される。あるいは、ろう付け材料は、単一のドットとして提供されてもよく、ドットは、隣接するプレートの隆起と溝との間の接触点に配置される。ドットはいかなる形状を有してもよく、例えば、円形の円周、正方形または長方形の形状を有してよい。二重ドットを使用する場合、各ドットの半月または括弧記号に似た形状が良い結果をもたらすことが証明されている(これらの2つの形状のいずれかを使用する場合、各ペアの括弧記号または半月の開口部は、括弧記号が本文で使用されているのと同じ方法で互いに向き合うものとする)。
【0021】
好ましくは、ろう付け材料ドットは、スクリーン印刷、すなわち、ろう付け材料が選択的に適用される領域の上にスクリーンまたはステンシルを配置することに基づく印刷技術によって適用され、スクリーンまたはステンシルには、所望のろう付け材料塗布パターンに対応するサイズ、形状および位置を有する開口部が設けられる。
【0022】
ろう付けされた熱交換器の当業者によく知られているように、そのような熱交換器は、上記の理由により、過度に高い圧力にさらされると、ポート領域の近くで壊れる傾向がある。
【0023】
したがって、スクリーンの開口部のサイズは、ポート開口部の近くで大きくなる。スクリーンの開口部が大きいほど、ろう付け材料が多くなり、ろう付けジョイントが大きくなる。ろう付け材料を多く含むろう付けジョイントは、単位面積あたりの強度は弱くなるが、より大きくなるため、より大きな力を伝達することができる。また、1つの接触点をろう付けするために大量のろう付け材料を使用すると、母材を溶解できるろう付け材料を使用した場合に、溶け落ちのリスクが高まる。ただし、溶け落ちは、ろう付け材料の量にのみ依存するわけではないことに注意されたい。温度や時間などの他の要素も重要である。すべての接触点に等しい量のろう付け材料が適用されている熱交換器では、ろう付け点の特定の割合が母材を溶け落ちさせる可能性がある。ろう付け材料の使用量が少ないほど、この割合が低くなる。最大量のろう付け材料が適用された接触点でさえ、溶け落ちの割合は非常に低くなるが、接触点ごとに使用されるろう付け材料の量が少ない場合、この割合はさらに低い割合に低下することに留意されたい。
【0024】
したがって、大量のろう付け材料が大きな力を受ける接触点の近くまたは接触点に適用され、少量のろう付け材料が小さな力を伝達するために必要な接触点の近くまたは接触点に適用されるように、接触点の近くまたは接触点に適用されるろう付け材料の量を変えることによって、いくつかの予期しない複合的なメリットが得られる。
1.熱交換器の製造に必要なろう付け材料の量が削減される。
2.溶け落ちのリスクが軽減される。
3.熱交換器の破裂強度は、すべてのろう付け接合部が、大きな力を受けるろう付け接合部と同じ程度のろう付け材料を適用されている熱交換器に等しい。
【0025】
再び、図1を参照すると、異なるろう付け材料塗布パターンをどのように使用できるかの例が示されている。図1において、開口部近くの接触点のろう付け材料塗布パターンは、図2に示すように形作られる。つまり、ろう付け材料は、腎臓形のドットの形で適用され、各腎臓形の開口端は、ドットのペアごとに互いに面している。2つのドットの合計面積は比較的大きく、ポート開口部付近の接触点の近くに比較的大量のろう付け材料が適用されることを意味する。図2の塗布パターンは、ゾーンGで使用される。
【0026】
ゾーンGに隣接して、ゾーンFは、ろう付け材料が図3にしたがって、すなわち2つの円形面として適用される領域を区切る。示されている例では、円形面は、0.77mmの半径を有する。隣接するゾーンEでは、ろう付け材料は、図4にしたがって、つまり半径0.67mmの円形面として適用され、ゾーンEに隣接するゾーンDでは、ろう付け材料は、0.58mmの直径を有する円形面として適用される。。
【0027】
領域D、EおよびFでは、最大の円形点(直径0.77mm)と最小の円形領域(0.58mm)との面積比は1.76である。しかしながら、最大点と最小点との間の面積比は、本発明の範囲から逸脱することなく、広い範囲内で変化してよい。例えば、面積比は、各ろう付け接合部の力の要件に応じて、1.1~10の範囲になり得る。
【0028】
ゾーンD~Gに適用されるろう付け材料の量は、ポート開口部からの距離が増加するにつれて減少することに留意されたい。これは、ポートの開口部から長くなるほど、平均接触点の面密度が大きくなるため、各接触点にかかる力が小さくなることを意味する。
【0029】
図5に、ろう付け材料塗布パターンの別の可能な形状を示す。図5によれば、ろう付け材料は、2つの長方形の領域として適用される。この形状は、ろう付け材料が適用される隆起の中央部分から逸脱することなく、かなり大量のろう付け材料が適用されることを可能にするという点で有益である。
【0030】
さまざまな量のろう付け材料適用を得るために、ステンシルの開口部の形状を適合させるための代替または補完として、厚さが変化するスクリーンを使用することもできる(スクリーンが厚い領域では、特定の塗布パターンで適用されるろう付け材料の量が多くなり、スクリーンが薄い場合、ろう付け材料の量は少なくなる)。
【0031】
スクリーンの開口部のさまざまな厚さおよびさまざまな形状を有するスクリーンを組み合わせることによって、適用されるろう付け材料の量を非常に広範囲に変えることが可能である。所与のすべてのスクリーンの厚さには「リリース限界」があるので、所与のスクリーンの厚さに対して、可能な最小の開口サイズがある。要するに、リリース限界は、ろう付け材料が、それが適用される表面よりも開口部の壁により多く付着する限界である。リリース限界を超えると、ろう付け材料の適用は行われない。リリース限界は多くの要因によって異なるが、一般的に言えば、薄いスクリーンは厚いスクリーンよりも小さな開口部を可能にする。したがって、開口部のサイズとスクリーンの厚さの両方を変化させることにより、適用されるろう付け材料の量の多様性を高めることができる。

図1
図2
図3
図4
図5