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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
   A01D 69/00 20060101AFI20230314BHJP
【FI】
A01D69/00 303A
A01D69/00 303G
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021125521
(22)【出願日】2021-07-30
(65)【公開番号】P2023020259
(43)【公開日】2023-02-09
【審査請求日】2021-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003834
【氏名又は名称】弁理士法人新大阪国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 正道
(72)【発明者】
【氏名】五島 一実
(72)【発明者】
【氏名】奥村 和哉
(72)【発明者】
【氏名】板山 真
【審査官】櫻井 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-159956(JP,A)
【文献】特開2013-028305(JP,A)
【文献】特開2012-231710(JP,A)
【文献】特開2010-273608(JP,A)
【文献】特開2010-166929(JP,A)
【文献】特開平03-285605(JP,A)
【文献】実開昭50-099139(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 41/00 - 41/12
A01D 41/133- 41/16
A01D 47/00
A01D 67/00 - 69/12
B60K 20/00 - 20/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体(1)の下部側に走行装置(3)を設け、車体(1)の上部側に操縦部(7)を設けたコンバインにおいて、走行装置(3)の速度を無段階に変速する油圧無段変速装置(14)と、前記操縦部(7)に配置されて前記油圧無段変速装置(14)を変速する主変速レバー(12)と、前記操縦部(7)に配置されて刈取脱穀クラッチ(C)を操作する操作レバー(13)を設け、
操作レバー(13)が、刈取脱穀クラッチ(C)を切り標準速度で走行する走行モードのD位置と、刈取脱穀クラッチ(C)を入れ標準速度で走行する作業モードの標準位置を有し、
操作レバー(13)が、刈取脱穀クラッチ(C)を切り標準速度よりも遅い速度で走行する走行モードのL位置を有し、
前記走行モードのL位置は複数の走行モードのL位置(L1、L2、L3、L4)を有し、
操作レバー(13)をいずれかの走行モードのL位置(L1、L2、L3、L4)に操作すると、そのL位置のデータは制御装置(25)に出力され、
主変速レバー(12)が中立位置から最高速度位置まで操作された場合に、その操作のデータは制御装置(25)に出力され、
制御装置(25)は、入力した前記L位置のデータと前記主変速レバー(12)からのデータに基づき、前記L位置のデータに対応する速度を上限として前記主変速レバー(12)からのデータに対応する速度に油圧無段変速装置(14)を制御する、ことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
車体(1)の下部側に走行装置(3)を設け、車体(1)の上部側に操縦部(7)を設けたコンバインにおいて、走行装置(3)の速度を無段階に変速する油圧無段変速装置(14)と、前記操縦部(7)に配置されて前記油圧無段変速装置(14)を変速する主変速レバー(12)と、前記操縦部(7)に配置されて刈取脱穀クラッチ(C)を操作する操作レバー(13)を設け、
操作レバー(13)が、刈取脱穀クラッチ(C)を切り標準速度よりも遅い速度で走行する走行モードのL位置と、刈取脱穀クラッチ(C)を切り標準速度で走行する走行モードのD位置と、刈取脱穀クラッチ(C)を入れ標準速度で走行する作業モードの標準位置と、刈取脱穀クラッチ(C)を入れ標準速度よりも遅い速度で走行する作業モードの倒伏位置、を有し、各操作位置がL位置、D位置、標準位置、倒伏位置の順番で配置されており、
前記走行モードのL位置は複数の走行モードのL位置(L1、L2、L3、L4)を有し、
操作レバー(13)をいずれかの走行モードのL位置(L1、L2、L3、L4)に操作すると、そのL位置のデータは制御装置(25)に出力され、
制御装置(25)は、入力した前記L位置のデータと前記主変速レバー(12)からのデータに基づき、前記L位置のデータに対応する速度を上限として前記主変速レバー(12)からのデータに対応する速度に油圧無段変速装置(14)を制御し、
前記複数の走行モードのL位置(L1、L2、L3、L4)によって上限とされる速度は、前記D位置により近く配置された走行モードのL位置ほど、高いことを特徴とするコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操縦部に走行速度を変更すると共に刈取脱穀クラッチを操作する操作レバーを備えたコンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のコンバインは、操縦部に走行速度を変更する副変速レバーと刈取脱穀クラッチを操作する作業レバーを備えていた(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-085308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
操縦部に走行速度を変更する副変速レバーと刈取脱穀クラッチを操作する作業レバーの2つの操作レバーがあり、構成が複雑で操作も煩雑であった。
【0005】
本発明の目的は、走行速度の変更と刈取脱穀クラッチの操作が一つの操作レバーで行えて、構成が簡潔で操作が簡単なコンバインを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の本発明は、
車体1の下部側に走行装置3を設け、車体1の上部側に操縦部7を設けたコンバインにおいて、走行装置3の速度を無段階に変速する油圧無段変速装置14と、前記操縦部7に配置されて前記油圧無段変速装置14を変速する主変速レバー12と、前記操縦部7に配置されて刈取脱穀クラッチCを操作する操作レバー13を設け、
操作レバー13が、刈取脱穀クラッチCを切り標準速度で走行する走行モードのD位置と、刈取脱穀クラッチCを入れ標準速度で走行する作業モードの標準位置を有し、
操作レバー13が、刈取脱穀クラッチCを切り標準速度よりも遅い速度で走行する走行モードのL位置を有し、
前記走行モードのL位置は複数の走行モードのL位置(L1、L2、L3、L4)を有し、
操作レバー13をいずれかの走行モードのL位置(L1、L2、L3、L4)に操作すると、そのL位置のデータは制御装置25に出力され、
主変速レバー12が中立位置から最高速度位置まで操作された場合に、その操作のデータは制御装置25に出力され、
制御装置25は、入力した前記L位置のデータと前記主変速レバー12からのデータに基づき、前記L位置のデータに対応する速度を上限として前記主変速レバー12からのデータに対応する速度に油圧無段変速装置14を制御する、ことを特徴とするコンバインである。
第2の本発明は、
車体1の下部側に走行装置3を設け、車体1の上部側に操縦部7を設けたコンバインにおいて、走行装置3の速度を無段階に変速する油圧無段変速装置14と、前記操縦部7に配置されて前記油圧無段変速装置14を変速する主変速レバー12と、前記操縦部7に配置されて刈取脱穀クラッチCを操作する操作レバー13を設け、
操作レバー13が、刈取脱穀クラッチCを切り標準速度よりも遅い速度で走行する走行モードのL位置と、刈取脱穀クラッチCを切り標準速度で走行する走行モードのD位置と、刈取脱穀クラッチCを入れ標準速度で走行する作業モードの標準位置と、刈取脱穀クラッチCを入れ標準速度よりも遅い速度で走行する作業モードの倒伏位置、を有し、各操作位置がL位置、D位置、標準位置、倒伏位置の順番で配置されており、
前記走行モードのL位置は複数の走行モードのL位置(L1、L2、L3、L4)を有し、
操作レバー13をいずれかの走行モードのL位置(L1、L2、L3、L4)に操作すると、そのL位置のデータは制御装置25に出力され、
制御装置25は、入力した前記L位置のデータと前記主変速レバー12からのデータに基づき、前記L位置のデータに対応する速度を上限として前記主変速レバー12からのデータに対応する速度に油圧無段変速装置14を制御し、
前記複数の走行モードのL位置(L1、L2、L3、L4)によって上限とされる速度は、前記D位置により近く配置された走行モードのL位置ほど、高いことを特徴とするコンバインである。
本発明に関連する第1の発明は、車体1の下部側に走行装置3を設け、車体1の上部側に操縦部7を設けたコンバインにおいて、操縦部7に走行速度を変更すると共に刈取脱穀クラッチCを操作する操作レバー13を設けたコンバインである。
【0007】
本発明に関連する第1の発明によれば、操縦部7に走行速度を変更すると共に刈取脱穀クラッチCを操作する操作レバー13を設けたので、従来の走行速度を変更する副変速レバーと刈取脱穀クラッチを操作する作業レバーの2つの操作レバーを設けた構成に比して、構成が簡潔で操作が簡単なコンバインを得ることができる。
【0008】
本発明に関連する第2の発明は、操作レバー13が刈取脱穀クラッチCを切り標準速度で走行する走行モードのD位置と、刈取脱穀クラッチCを入れ標準速度で走行する作業モードの標準位置を有する本発明に関連する第1の発明のコンバインである。
【0009】
本発明に関連する第3の発明は、操作レバー13が刈取脱穀クラッチCを切り標準速度よりも遅い速度で走行する走行モードのL位置を有する本発明に関連する第2の発明のコンバインである。
【0010】
本発明に関連する第4の発明は、操作レバー13が刈取脱穀クラッチCを入れ標準速度よりも遅い速度で走行する作業モードの倒伏位置を有する本発明に関連する第2または3の発明のコンバインである。
【0011】
本発明に関連する第5の発明は、操作レバー13が、刈取脱穀クラッチCを切り標準速度よりも遅い速度で走行する走行モードのL位置と、刈取脱穀クラッチCを切り標準速度で走行する走行モードのD位置と、刈取脱穀クラッチCを入れ標準速度で走行する作業モードの標準位置と、刈取脱穀クラッチCを入れ標準速度よりも遅い速度で走行する作業モードの倒伏位置、を有し、各操作位置がL位置、D位置、標準位置、倒伏位置の順番で配置されている本発明に関連する第1の発明のコンバインである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態にかかるコンバインの正面図である。
図2】同コンバインの側面図である。
図3】同コンバインの要部の平面図である。
図4】同要部の作用説明用側面図である。
図5】同要部の側面図である。
図6】同要部の正面図である。
図7】同要部の平面図である。
図8】同要部の背面図である。
図9】同要部の作用説明用斜視図である。
図10】同要部の側断面図である。
図11】同要部の平断面図である。
図12】同要部の側断面図である。
図13】同要部の作用説明用拡大側断面図である。
図14】同コンバインの制御ブロック図である。
図15】同コンバインにおけるHST出力回転数のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態であるコンバインについて添付図面を参照して説明する。なお、理解を容易にするために、操縦者から見て、前方を前側、後方を後側、右手側を右側、左手側を左側として便宜的に方向を示して説明しているが、これらにより構成が限定されるものではない。
【0014】
コンバインは、図1図2に示すように、車体1の下部側に土壌面を走行する左右走行クローラ2を有する走行装置としてのクローラ走行装置3を配設し、車体1の前端側に分草杆4を備えた刈取部5が設けられている。
【0015】
刈取部5の後方には、操縦席6を備えた操縦部としてのキャビン7があり、また車体1の上方には刈取部5から搬送されてくる穀桿を引き継いで搬送して脱穀・選別する脱穀装置8がキャビン7の左後方に設けられ、該脱穀装置8で脱穀選別された穀粒を一時貯溜するグレンタンク9が脱穀装置8の右側に配置されている。グレンタンク9の後部に排出オーガ10を起伏可能に連接して、グレンタンク9内の穀粒をコンバインの外部に排出する構成としている。
【0016】
コンバインは、オペレータが操縦席6に着座して左側のサイドパネル11に立設する主変速レバー12と操作レバーとしての副変速兼作業レバー13を操作し、エンジンの動力をトランスミッションケースに付設の油圧無段変速装置(以下、「HST」と略記)14にて変速し、左右走行クローラ2,2に動力を伝動して任意の速度で走行する。
【0017】
HST14は、エンジンの駆動力によって駆動されるプランジャ(ピストン)式の可変油圧ポンプと、該可変油圧ポンプからの吐出油の流入によって回転出力するプランジャ式の可変油圧モータとを閉回路を形成するように接続して構成する。前記可変油圧ポンプと可変油圧モータとは、いずれもプランジャの先端部の公転軌跡を拘束する斜盤の角度を変更することにより、吐出油量および流入容積が変更される構成である。即ち、可変油圧ポンプ側の斜盤角度を大きくすると、吐出油量が増加し、この吐出油が流入する可変油圧モータ側のプランジャの公転速度が増速して、該可変油圧モータの出力軸が高速化する。
【0018】
また、可変油圧モータ側の斜盤角度を小さくすると、流入する油量が同一であっても、流入容積が小さくなっているため、プランジャの公転速度が増速して、該可変油圧モータの出力軸が高速化する。尚、この可変油圧モータの斜盤角度変更による増減速状態と、該可変油圧モータの出力トルクとは、反比例の関係となる。
【0019】
そして、図3に示すように、HST14の斜盤角度を変更して変速するのは、モータ15でギヤ16を回転させ、トラニオン軸17aのトラニオンアーム17を回動させて行う。
【0020】
後述する主変速レバー12の主変速ポテンショメータPM1と副変速兼作業レバー13の副変速ポテンショメータPM2の値に応じてトラニオン側ポテンショメータPM3の値が設定値になるようにモータ15を駆動する構成になっている。
【0021】
主変速レバー12は、HST14内の可変油圧ポンプの回転出力を変速するもので、クローラ走行装置3を前進、中立、後進に切り替えると共に走行速度を副変速兼作業レバー13で設定した最高速内で無段に変速する。
【0022】
穀稈の収穫を行う場合には、副変速兼作業レバー13を作業モードの標準位置(又は倒伏位置)にして刈取脱穀クラッチCを入にして刈取部5及び脱穀装置8を駆動しながら走行する。
【0023】
また、操縦席6の前側に立設する操向レバー18を左右に傾倒操作することにより急旋回等の各種旋回走行をすることができる。すなわち、操向レバー18をコンバインを旋回させようとする方向に傾倒操作することにより、左右の走行クローラ2,2に速度差或いは逆回転が与えられて走行方向の変更が行われる構成としている。
【0024】
キャビン7の足元フロアー上には、アクセルペダルとブレーキペダル及び掻込ペダルをオペレータが足で踏み込むことによって作動するように設けている。アクセルペダルは、エンジンの回転を上昇させて出力を増大させ、ブレーキペダルは、トランスミッションケース内のブレーキデスクを締めてクローラ走行装置3の回転を停止する。さらに、掻込ペダルは、トランスミッションケース内の左右サイドクラッチを切り作動してクローラ走行装置3への動力伝動を切るもので、畦際の穀稈を刈り取る際に使用する。
【0025】
ここで、副変速兼作業レバー13部の構成を詳細に説明する。
【0026】
副変速兼作業レバー13は、主変速レバー12を中立位置から高速位置(前進及び後進)まで操作した際の最高速度を変更する。換言すると、主変速レバー12は、走行速度を副変速兼作業レバー13で設定した最高速内で無段に変速する。
【0027】
また、副変速兼作業レバー13は、刈取脱穀クラッチCを操作して刈取部5及び脱穀装置8の駆動を入り切りし、また、刈取部5及び脱穀装置8の駆動速度を変速する。
【0028】
図4乃至図13に示すように、副変速兼作業レバー13は、サイドパネル11を設けた機枠にボルト19にて固定したU字状プレート20に基部が枢支されて、機体前後方向に走行モードのL位置とD位置及び作業モードの標準位置と倒伏位置に操作される。
【0029】
そして、各操作位置は、走行モードのL位置、D位置、作業モードの標準位置、倒伏位置の順番に配置している。通常作業で最もよく使うD位置と標準位置を中央に隣接して配置しているので、操作性が良い。
【0030】
また、副変速兼作業レバー13が直立位置から走行モードは機体後方側(L位置が最後方側)、作業モードは機体前方側(倒伏位置が最前方側)になるようにしており、作業者の操作感覚で操作位置が認識でき、誤操作が防止できるようにしている。
【0031】
副変速兼作業レバー13の取付け構成について説明する。
【0032】
U字状プレート20の対向する左右面には、左右枢支孔21,21と該左右枢支孔21,21から左右面の前端に至る切り欠き21a,21aが設けられている。なお、切り欠き21a,21aの切り欠き幅は、左右枢支孔21,21の直径よりも小さい。
【0033】
副変速兼作業レバー13は、合成樹脂部材で形成した把持部13aとロッド部13b、枢支軸部13c、位置決め係合凹部13d及びピン体24を一体形成した部材で構成されている。
【0034】
従って、副変速兼作業レバー13は、ロッド部13b、枢支軸部13c、位置決め係合凹部13d及びピン体24を一体形成しているので、部品点数を削減でき安価である。
【0035】
副変速兼作業レバー13の枢支軸部13cの左右端面には、切り欠き21a,21aの切り欠き幅を通過できる狭い幅と左右枢支孔21,21にて枢支されて回動する広い幅の小判型の突起14,14が一体形成されている。
【0036】
副変速兼作業レバー13をU字状プレート20に組み付けるには、小判型の突起14,14の幅の狭い部分を切り欠き21a,21aを通過させて左右枢支孔21,21まで移動して、左右枢支孔21,21で副変速兼作業レバー13の操作位置(走行モードのL位置とD位置及び作業モードの標準位置と倒伏位置)にすると、小判型の突起14,14の幅の広い部分が左右枢支孔21,21にて枢支され、副変速兼作業レバー13を操作位置で良好に回動操作することができる。なお、操作位置では、小判型の突起14,14の幅の広い部分が切り欠き21a,21aの幅よりも広いので、小判型の突起14,14が切り欠き21a,21aから抜け出ることはない。
【0037】
なお、U字状プレート20の副変速兼作業レバー13の枢支軸部13cを回動自在に枢支する左右枢支孔21,21近くに左右面を連結する連結板26を設け、U字状プレート20の左右面が開いて副変速兼作業レバー13が外れるのを防止している。
【0038】
従って、副変速兼作業レバー13をU字状プレート20に組み付ける為の他部材を必要とせず、安価であり組み立ても容易である。
【0039】
また、U字状プレート20内に副変速兼作業レバー13を配置して組み付けているので、他部材との干渉等の問題がなくてレイアウト上で有利であり、コンパクトに構成できる。
【0040】
また、U字状プレート20に形成した左右枢支孔21,21で副変速兼作業レバー13の枢支軸部13cを回動自在に枢支する構成なので、特別な枢支部材を必要とせず部品削減効果がある。
【0041】
また、突起14,14の枢支軸部13c左右端面からの突出高さは、U字状プレート20の左右枢支孔21,21の幅と同じであって、左右枢支孔21,21に枢支される突起14,14がU字状プレート20の左右側面から外方に突出せず、他部材と干渉することがない。
【0042】
U字状プレート20の右外側面には、副変速兼作業レバー13の操作位置を検出する副変速ポテンショメータPM2が螺子にて固定されている。
【0043】
副変速ポテンショメータPM2の検出軸22は、U字状プレート20の内方に突出し、先端部に作動アーム23が上方に向けて延びている。そして、該作動アーム23先端部に形成された二股状部23aは、副変速兼作業レバー13のロッド部13bに前後方向に一体的に突出形成されたピン体24に係合している。
【0044】
従って、副変速兼作業レバー13を前後方向に回動操作すると、副変速ポテンショメータPM2は、副変速兼作業レバー13のロッド部13bの前後方向への移動に伴ってピン体24、作動アーム23及び検出軸22を介して副変速兼作業レバー13の操作位置を検出して制御装置25に出力する(図14参照)。
【0045】
副変速ポテンショメータPM2は、U字状プレート20の右外側面に設けられているので、取付けや取り外しが容易であり、ハーネスの着脱も容易である。
【0046】
副変速ポテンショメータPM2の作動アーム23は、U字状プレート20の内方に配置されているので、他部材への干渉が防止される。
【0047】
また、副変速兼作業レバー13のロッド部13bは、枢支軸部13cの左右中心から副変速ポテンショメータPM2がある側から離れる方向に偏倚して(オフセットして)設けているので、U字状プレート20の副変速ポテンショメータPM2が取り付けられている側壁内面とロッド部13b間の広くなっている空間に作動アーム23を配置できて、全体としてコンパクトな構成となる。
【0048】
また、副変速兼作業レバー13を組付けたU字状プレート20に副変速ポテンショメータPM2を組み付けているので、副変速兼作業レバー13との位置ずれが生じず、精度のばらつきが少ない。
【0049】
また、副変速ポテンショメータPM2は、副変速兼作業レバー13の枢支軸部13cより把持部13a側に配置しているので、副変速兼作業レバー13の操作角度よりも副変速ポテンショメータPM2の検出角度が大きくなり、検出精度が良く、コンパクトな構成となる。
【0050】
そして、副変速兼作業レバー13の枢支軸部13cから後方に向けて位置決め係合凹部13dが延びている。
【0051】
位置決め係合凹部13dには、走行モードのL位置を4段回に位置決めする4つの係合凹部L1,L2,L3,L4と、走行モードのD位置を1段回に位置決めする1つの係合凹部D1と、作業モードの標準位置を3段回に位置決めする3つの係合凹部標準1,標準2,標準3と、作業モードの倒伏位置を1段回に位置決めする1つの係合凹部倒伏1が形成されている。
【0052】
一方、U字状プレート20後部の位置決め係合凹部13dに対向する部位には、位置決め係合凹部13dの各係合凹部L1~倒伏1に係合して副変速兼作業レバー13を係止するスチールボール27を保持して位置決め係合凹部13dに向けて付勢する圧縮バネ28を装備したスチールボール保持部29が設けられている。
【0053】
スチールボール保持部29には、圧縮バネ28の付勢力を調節する調節ボルト30が設けられており、該調節ボルト30を締め込むと圧縮バネ28が圧縮されて付勢力が増し、位置決め係合凹部13dの各係合凹部L1~倒伏1に係合するスチールボール27の係合力が大きくなり副変速兼作業レバー13の係止力が増して、副変速兼作業レバー13の操作荷重が増すが操作位置は明確に分るようになるので、作業者の操作フィーリングに合うように調節する。
【0054】
スチールボール27、位置決め係合凹部13dの各係合凹部L1~倒伏1及びロッド部13b基部は、同一平面状に配置しているので、副変速兼作業レバー13の操作に捻じれ荷重が掛からないようにして操作がスムーズに行え、且つ、耐久性も向上する。
【0055】
U字状プレート20後部の剛性が高い部位にスチールボール保持部29を設けU字状プレート20のU字状底部に向けて押し付け力がかかるので、補強部材が無くても撓み等の発生が抑えられる。
【0056】
なお、位置決め係合凹部13dの各係合凹部L1~倒伏1は、スチールボール27表面が嵌まり込む球面凹部としており、副変速兼作業レバー13を回動操作して位置決めされた状態で、枢支軸部13cのスラスト方向へのガタも規制することができる。
【0057】
次に、副変速兼作業レバー13を操作して、位置決め係合凹部13dの各係合凹部L1~倒伏1が係止される位置に操作した時の作用について説明する。
【0058】
副変速兼作業レバー13を位置決め係合凹部13dの係合凹部D1が係止される位置に操作すると、副変速ポテンショメータPM2は制御装置25に副変速兼作業レバー13が走行モードのD位置に操作されたことを出力し、トラニオン側ポテンショメータPM3の検出値が図15で示すP0~P8の範囲でトラニオン軸17aが作動することを許容する。
【0059】
従って、主変速レバー12が中立位置から最高速度位置まで操作された場合に、主変速ポテンショメータPM1がその操作位置を制御装置に出力し、モータ15を駆動して主変速レバー12の操作位置に対応してトラニオン軸17aがトラニオン側ポテンショメータPM3の検出値P0~P8の範囲で作動する。
【0060】
即ち、主変速レバー12が中立位置の場合、トラニオン側ポテンショメータPM3の検出値がP0でトラニオン軸17aが作動せずHSTの出力回転数は0で中立であり、主変速レバー12が最高速度位置の場合、トラニオン側ポテンショメータPM3の検出値がP8になるまでトラニオン軸17aが作動しHSTの出力回転数は最高回転数となり、主変速レバー12が中立位置から最高速度位置の途中の場合、主変速レバー12の操作位置に応じたトラニオン側ポテンショメータPM3の検出値がP0~P8の対応する途中位置になるまでトラニオン軸17aが作動する。
【0061】
そして、刈取脱穀クラッチCを操作して刈取部5及び脱穀装置8の駆動を切り、刈取部5及び脱穀装置8は作動しない。
【0062】
副変速兼作業レバー13を位置決め係合凹部13dの係合凹部L1~L4が係止される位置に操作すると、副変速ポテンショメータPM2は制御装置25に副変速兼作業レバー13が走行モードのL位置に操作されたことを出力し、トラニオン側ポテンショメータPM3の検出値が図15で示すP0~P1,P2,P3,P4の範囲でトラニオン軸17aが作動することを許容する。
【0063】
即ち、副変速兼作業レバー13が係合凹部L4に操作されると、主変速レバー12が中立位置から最高速度位置まで操作された場合に、主変速ポテンショメータPM1がその操作位置を制御装置に出力し、モータ15を駆動して主変速レバー12の操作位置に対応してトラニオン軸17aがトラニオン側ポテンショメータPM3の検出値P0~P4の範囲で作動する。よって、最高速度がトラニオン側ポテンショメータPM3の検出値P4までに規制される。
【0064】
同様にして、副変速兼作業レバー13が係合凹部L3に操作されると、最高速度がトラニオン側ポテンショメータPM3の検出値P3までに規制される。副変速兼作業レバー13が係合凹部L2に操作されると、最高速度がトラニオン側ポテンショメータPM3の検出値P2までに規制される。副変速兼作業レバー13が係合凹部L1に操作されると、最高速度がトラニオン側ポテンショメータPM3の検出値P1までに規制される。
【0065】
そして、刈取脱穀クラッチCを操作して刈取部5及び脱穀装置8の駆動を切り、刈取部5及び脱穀装置8は作動しない。
【0066】
副変速兼作業レバー13を位置決め係合凹部13dの係合凹部標準1~標準3が係止される位置に操作すると、副変速ポテンショメータPM2は制御装置25に副変速兼作業レバー13が作業モードの標準位置に操作されたことを出力し、トラニオン側ポテンショメータPM3の検出値が図15で示すP0~P8,P7,P6の範囲でトラニオン軸17aが作動することを許容する。
【0067】
即ち、副変速兼作業レバー13が係合凹部標準1に操作されると、主変速レバー12が中立位置から最高速度位置まで操作された場合に、主変速ポテンショメータPM1がその操作位置を制御装置に出力し、モータ15を駆動して主変速レバー12の操作位置に対応してトラニオン軸17aがトラニオン側ポテンショメータPM3の検出値P0~P8の範囲で作動する。
【0068】
副変速兼作業レバー13が係合凹部標準2に操作されると、最高速度がトラニオン側ポテンショメータPM3の検出値P7までに規制される。副変速兼作業レバー13が係合凹部標準3に操作されると、最高速度がトラニオン側ポテンショメータPM3の検出値P6までに規制される。
【0069】
そして、刈取脱穀クラッチCを操作して刈取部5及び脱穀装置8の駆動を入れ、作業変速装置31を変速して刈取部5及び脱穀装置8が標準作業速度で作動する。
【0070】
副変速兼作業レバー13を位置決め係合凹部13dの係合凹部倒伏1が係止される位置に操作すると、副変速ポテンショメータPM2は制御装置25に副変速兼作業レバー13が作業モードの倒伏位置に操作されたことを出力し、トラニオン側ポテンショメータPM3の検出値が図15で示すP0~P5の範囲でトラニオン軸17aが作動することを許容する。
【0071】
即ち、副変速兼作業レバー13が係合凹部倒伏1に操作されると、主変速レバー12が中立位置から最高速度位置まで操作された場合に、主変速ポテンショメータPM1がその操作位置を制御装置に出力し、モータ15を駆動して主変速レバー12の操作位置に対応してトラニオン軸17aがトラニオン側ポテンショメータPM3の検出値P0~P5の範囲で作動する。
【0072】
そして、刈取脱穀クラッチCを操作して刈取部5及び脱穀装置8の駆動を入れ、作業変速装置31を変速して刈取部5及び脱穀装置8が標準作業速度よりも増速された高速作業速で作動する。
【0073】
以上要するに、副変速兼作業レバー13の一つのレバーで副変速操作と刈取脱穀クラッチCの操作及び作業変速装置31の変速操作が行えるので、従来のように副変速レバーと作業レバーの二つのレバーを操作するのに対して、作業性が良く、然も、構成も簡潔となり安価である。
【0074】
そして、路上や圃場間移動等で機体を高速走行させる場合には、副変速兼作業レバー13を位置決め係合凹部13dの係合凹部D1が係止される位置(走行モードのD位置)に操作すると、トラニオン側ポテンショメータPM3の検出値がP8になるまでトラニオン軸17aが作動しHSTの出力回転数は最高回転数となるように制御され、主変速レバー12にて中立位置から最高速度位置まで操作することができ、良好な路上や圃場間移動等で高速走行が行える。なお、この時、刈取脱穀クラッチCが切りになっており、刈取部5及び脱穀装置8は作動しない。
【0075】
また、圃場での畦越え、機体のトラックへの積み込み又は納屋等への格納の場合には、副変速兼作業レバー13を位置決め係合凹部13dの係合凹部L1~L4が係止される位置(走行モードのL位置)に操作すると、トラニオン側ポテンショメータPM3の検出値がP0~P1,P2,P3,P4の範囲でトラニオン軸17aが作動することを許容し、例えば、副変速兼作業レバー13を位置決め係合凹部13dの係合凹部L4が係止される位置に操作した時は、主変速レバー12を最高速度位置まで操作してもトラニオン側ポテンショメータPM3の検出値がP4までしか許容していないので、最高速度は検出値P4に対応する速度までしか上がらず、安全に且つ低い速度で容易に畦越え、機体のトラックへの積み込み又は納屋等への格納が行える。なお、この時、刈取脱穀クラッチCが切りになっており、刈取部5及び脱穀装置8は作動しない。
【0076】
また、圃場での収穫作業時には、副変速兼作業レバー13を位置決め係合凹部13dの係合凹部標準1~標準3が係止される位置(作業モードの標準位置)に操作すると、トラニオン側ポテンショメータPM3の検出値がP0~P8,P7,P6の範囲でトラニオン軸17aが作動することを許容する。
【0077】
そして、刈取脱穀クラッチCを操作して刈取部5及び脱穀装置8の駆動を入れ、作業変速装置31を変速して刈取部5及び脱穀装置8が標準作業速度で作動する。
【0078】
従って、圃場条件が良い場合には、副変速兼作業レバー13を位置決め係合凹部13dの係合凹部標準1が係止される位置に操作すると、高速で効率良く収穫作業が行え、また、圃場条件が悪い場合には、副変速兼作業レバー13を位置決め係合凹部13dの係合凹部標準2又は標準3が係止される位置に操作すると、低速で良好な収穫作業が行える。
【0079】
また、圃場の穀稈が倒伏している場合には、副変速兼作業レバー13を位置決め係合凹部13dの係合凹部倒伏1が係止される位置(作業モードの倒伏位置)に操作すると、トラニオン側ポテンショメータPM3の検出値がP0~P5の範囲でトラニオン軸17aが作動することを許容する。
【0080】
そして、刈取脱穀クラッチCを操作して刈取部5及び脱穀装置8の駆動を入れ、作業変速装置31を変速して刈取部5及び脱穀装置8が標準作業速度よりも増速された高速作業速で作動する。
【0081】
従って、主変速レバー12を最高速度位置まで操作してもトラニオン側ポテンショメータPM3の検出値がP5までしか許容していないので、最高速度は検出値P5に対応する速度までしか上がらず、標準位置よりも低い速度で進行し且つ刈取部5及び脱穀装置8が標準作業速度よりも増速された高速作業速で作動しているので、倒伏した穀稈でも適切に収穫することができる。
【0082】
そして、上述のとおり、副変速兼作業レバー13を走行モードのL位置にした時の最高車速は、作業モードの標準位置及び倒伏位置にした時の最高車速よりも遅くなるように設定しているので、安全に且つ低い速度で容易に畦越え、機体のトラックへの積み込み又は納屋等への格納が行える。
【0083】
そして、作業モードの標準位置の係合凹部標準1~標準3は、等間隔で設定されており、標準1から標準3になるほど最高速度が遅くなるように設定されている。また、標準3から倒伏位置の係合凹部倒伏1までの間隔は、係合凹部標準1~標準3の各間隔よりも広く設定されていて、標準3から倒伏1への操作が明確に認識でき、誤操作の防止が図れる。
【0084】
そして、走行モードのL位置は、係合凹部L1~L4が等間隔で設定され、L4からL1側に操作されるほど最高速度が遅くなるように設定されているので、操作感覚が良好である。
【0085】
そして、走行モードのD位置である係合凹部D1と作業モードの標準位置の係合凹部標準1の間隔は、標準1~標準3の各間隔よりも広く設定しているので、走行モードのD位置と作業モードの標準位置間の操作が明確に認識できて誤操作の防止が図れる。
【0086】
なお、上記の実施形態では、位置決め係合凹部13dに各係合凹部L1,L2,L3,L4,D1,標準1,標準2,標準3,倒伏1を一体形成した例を示したが、各係合凹部L1,L2,L3,L4,D1,標準1,標準2,標準3,倒伏1を別部材で構成して位置決め係合凹部13dに取り付ける構成とすれば、異なる係合凹部を位置決め係合凹部13dに取り付ければ別型式やシステム変更が容易に行えて汎用性がます。
【符号の説明】
【0087】
1 車体
3 走行装置(クローラ走行装置)
7 操縦部(キャビン)
13 操作レバー(副変速兼作業レバー)
C 刈取脱穀クラッチ
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