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特許7243816曲げ角度予測方法、曲げ角度予測装置、プログラム及び記録媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】曲げ角度予測方法、曲げ角度予測装置、プログラム及び記録媒体
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/23 20200101AFI20230314BHJP
   G06F 30/10 20200101ALI20230314BHJP
   G01N 3/20 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
G06F30/23
G06F30/10 100
G01N3/20
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021512167
(86)(22)【出願日】2020-04-01
(86)【国際出願番号】 JP2020014990
(87)【国際公開番号】W WO2020204060
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-07-02
(31)【優先権主張番号】P 2019069768
(32)【優先日】2019-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】相藤 孝博
(72)【発明者】
【氏名】米村 繁
【審査官】田中 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-320421(JP,A)
【文献】特許第6330981(JP,B1)
【文献】CHEONG, K. et al.,Evaluation of the VDA 238-100 Tight Radius Bending Test using Digital Image Correlation Strain Measurement,Journal of Physics,2017年09月01日,Conference Series 896 012075,pages1-8,https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1742-6596/896/1/012075/pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/23
G06F 30/10
G01N 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータを用いて曲げ角度を予測する方法であって、
曲げ角度の予測対象である鋼材の材料特性により、前記鋼材の曲げ外側最表層の最大主ひずみを取得する第1ステップと、
有限要素法を用いて既定されている、限界VDA曲げ角度を板厚及び曲げ外側最表層の最大主ひずみの関数で規定した関係式に、前記鋼材の板厚及び前記第1ステップで取得された前記鋼材の前記曲げ外側最表層の最大主ひずみを入力して、前記鋼材の限界VDA曲げ角度を算出する第2ステップと、
を備えたことを特徴とする曲げ角度予測方法。
【請求項2】
前記第1ステップは、材料特性から曲げ外側最表層の最大主ひずみが一意に定まる関係に基づいて、前記鋼材の材料特性に対応する前記鋼材の曲げ外側最表層の最大主ひずみを取得することを特徴とする請求項1に記載の曲げ角度予測方法。
【請求項3】
前記関係式は、限界VDA曲げ角度をθとして、
θ=exp{(εb-b)/a}
εb:曲げ外側最表層の最大主ひずみ
a:板厚tの関係式
b:板厚tの関係式
により表されることを特徴とする請求項1又は2に記載の曲げ角度予測方法。
【請求項4】
前記鋼材の板厚は、予変形を受けた後の値であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の曲げ角度予測方法。
【請求項5】
前記鋼材は、980MPa級以上の鋼種の鋼板であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の曲げ角度予測方法。
【請求項6】

曲げ角度の予測対象である鋼材の材料特性により、前記鋼材の曲げ外側最表層の最大主ひずみを取得する取得部と、
有限要素法を用いて既定されている、限界VDA曲げ角度を板厚及び曲げ外側最表層の最大主ひずみの関数で規定した関係式に、前記鋼材の板厚及び前記取得部で取得された前記鋼材の前記曲げ外側最表層の最大主ひずみを入力して、前記鋼材の限界VDA曲げ角度を算出する算出部と、
を備えたことを特徴とする曲げ角度予測装置。
【請求項7】
前記取得部は、材料特性から曲げ外側最表層の最大主ひずみが一意に定まる関係に基づいて、前記鋼材の材料特性に対応する前記鋼材の曲げ外側最表層の最大主ひずみを取得することを特徴とする請求項6に記載の曲げ角度予測装置。
【請求項8】
前記関係式は、限界VDA曲げ角度をθとして、
θ=exp{(εb-b)/a}
εb:曲げ外側最表層の最大主ひずみ
a:板厚tの関係式
b:板厚tの関係式
により表されることを特徴とする請求項6又は7に記載の曲げ角度予測装置。
【請求項9】
前記鋼材の板厚は、予変形を受けた後の値であることを特徴とする請求項6~8のいずれか1項に記載の曲げ角度予測装置。
【請求項10】
前記鋼材は、980MPa級以上の鋼種の鋼板であることを特徴とする請求項6~9の
いずれか1項に記載の曲げ角度予測装置。
【請求項11】
曲げ角度の予測対象である鋼材の材料特性により、前記鋼材の曲げ外側最表層の最大主ひずみを取得する第1ステップと、
有限要素法を用いて既定されている、限界VDA曲げ角度を板厚及び曲げ外側最表層の最大主ひずみの関数で規定した関係式に、前記鋼材の板厚及び前記第1ステップで取得された前記鋼材の前記曲げ外側最表層の最大主ひずみを入力して、前記鋼材の限界VDA曲げ角度を算出する第2ステップと、
をコンピュータに実行させる曲げ角度予測プログラム。
【請求項12】
前記第1ステップは、材料特性から曲げ外側最表層の最大主ひずみが一意に定まる関係に基づいて、前記鋼材の材料特性に対応する前記鋼材の曲げ外側最表層の最大主ひずみを取得することを特徴とする請求項11に記載の曲げ角度予測プログラム。
【請求項13】
前記関係式は、限界VDA曲げ角度をθとして、
θ=exp{(εb-b)/a}
εb:曲げ外側最表層の最大主ひずみ
a:板厚tの関係式
b:板厚tの関係式
により表されることを特徴とする請求項11又は12に記載の曲げ角度予測プログラム。
【請求項14】
前記鋼材の板厚は、予変形を受けた後の値であることを特徴とする請求項11~13のいずれか1項に記載の曲げ角度予測プログラム。
【請求項15】
前記鋼材は、980MPa級以上の鋼種の鋼板であることを特徴とする請求項11~14のいずれか1項に記載の曲げ角度予測プログラム。
【請求項16】
請求項11~15のいずれか1項に記載の曲げ角度予測プログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲げ角度予測方法、曲げ角度予測装置、プログラム及び記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の衝突時の車体の変形挙動や衝撃エネルギー吸収特性を評価する際に必要となる、例えば自動車の車体に用いられる鋼板の曲げ特性を的確に評価する方法として、VDAドイツ自動車工業会の試験標準規格(非特許文献1)による、金属材料の板曲げ試験(VDA曲げ試験)を用いた評価方法が広まりつつある。VDA曲げ試験は、一対のロール間にパンチを押し込みながら鋼板を曲げてゆき、パンチの反力が最大値となったタイミングにおける鋼板の曲げ角度を、当該鋼板の限界VDA曲げ角度と定義する。この評価方法によれば、連続的な曲げ角度のデータから限界曲げ角度を決定できるだけでなく、測定者によるバラツキが発生しないという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-11458号公報
【文献】特許第6330981号公報
【文献】特開2011-141237号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】VDA 238-100 "Plate bending test for metallic materials" Validation Rule, 01 June 2017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、自動車部材は、鋼板をプレス成形することで形成されている。このプレス成形時には、鋼板に引張力や圧縮力が加わり、鋼板の部位によっては板厚が減肉したり、増肉したりする部位があり、プレス成形前の鋼板の板厚と比べて数%~十数%板厚が変動している部位が生じる。
【0006】
プレス成形部材を溶接することで自動車の車体が組み上げられており、自動車車体の衝突変形予測をコンピュータ上での有限要素解析で行う場合において、前工程である、プレス成形工程で導入された、応力やひずみ及び板厚分布を衝突変形解析のモデルにマッピングして衝突変形解析を行うことで、より衝突変形の予測精度が高まることが知られている。
【0007】
また、一方で衝突時に曲げ部で破断が発生する場合もあるため、衝突変形解析において、例えば鋼板の限界VDA曲げ角度の値を用いて衝突変形解析時の曲げ破断を予測する試みも検討されている。
【0008】
しかしながら、VDA曲げ試験から得られる限界VDA曲げ角度は、鋼板の板厚によって変化する値であるため、各鋼種及び板厚ごとに試験をする必要がある。そのため、例えば、第1工程において、上述のようにプレス成形を行い、鋼板の板厚が変化した部位が生じた場合には、成形後の板厚分布に応じて、限界VDA曲げ角度の値も変化していることになる。しかしながら、成形時における部品内の板厚変動は多岐に亘るものであり、それら全ての板厚の試験片を準備して、VDA曲げ試験を行うことは極めて困難である。そのため、第2工程において車体の衝突変形時の曲げ破断予測を行う場合において、第1工程であるプレス成形工程における応力やひずみ及び板厚分布を取得するだけでは不十分であり、板厚変動に応じた各部位毎の限界VDA曲げ角度を取得することが必要であるが、極めて困難である。
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、有限要素法を用いて、鋼材の材料特性及び板厚を入力値として、鋼材の曲げ外側最表層の最大主ひずみを取得し、これに基づいて鋼材の限界VDA曲げ角度を算出すること、即ち、任意の材料特性を持つ鋼材について、例えば前工程の予変形を受けて板厚が変動した場合に、変形後の任意の板厚における限界VDA曲げ角度を容易且つ正確に取得することを可能とし、その結果を利用した鋼材の曲げ破断予測をして、製品開発に必要なコストの大幅な削減及び開発期間の短縮に寄与することができる曲げ角度予測方法、曲げ角度予測装置、プログラム及び記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、鋭意検討の結果、以下に示す発明の諸様態に想到した。本発明の要旨は、次の通りである。
【0011】
(1)
コンピュータを用いて曲げ角度を予測する方法であって、
曲げ角度の予測対象である鋼材の材料特性により、前記鋼材の曲げ外側最表層の最大主ひずみを取得する第1ステップと、
有限要素法を用いて既定されている、限界VDA曲げ角度を板厚及び曲げ外側最表層の最大主ひずみの関数で規定した関係式に、前記鋼材の板厚及び前記第1ステップで取得された前記鋼材の前記曲げ外側最表層の最大主ひずみを入力(代入)して、前記鋼材の限界VDA曲げ角度を算出する第2ステップと、
を備えたことを特徴とする曲げ角度予測方法。
【0012】
(2)
前記第1ステップは、材料特性から曲げ外側最表層の最大主ひずみが一意に定まる関係に基づいて、前記鋼材の材料特性に対応する前記鋼材の曲げ外側最表層の最大主ひずみを取得することを特徴とする(1)に記載の曲げ角度予測方法。
【0013】
(3)
前記関係式は、限界VDA曲げ角度をθとして、
θ=exp{(εb-b)/a}
εb:曲げ外側最表層の最大主ひずみ
a:板厚tの関係式
b:板厚tの関係式
により表されることを特徴とする請求項1又は2に記載の曲げ角度予測方法。
【0014】
(4)
前記鋼材の板厚は、予変形を受けた後の値であることを特徴とする(1)~(3)のいずれかに記載の曲げ角度予測方法。
【0015】
(5)
前記鋼材は、980MPa級以上の鋼種の鋼板であることを特徴とする(1)~(4)のいずれかに記載の曲げ角度予測方法。
【0016】
(6)
曲げ角度の予測対象である鋼材の材料特性により、前記鋼材の曲げ外側最表層の最大主ひずみを取得する取得部と、
有限要素法を用いて既定されている、限界VDA曲げ角度を板厚及び曲げ外側最表層の最大主ひずみの関数で規定した関係式に、前記鋼材の板厚及び前記取得部で取得された前記鋼材の前記曲げ外側最表層の最大主ひずみを入力(代入)して、前記鋼材の限界VDA曲げ角度を算出する算出部と、
を備えたことを特徴とする曲げ角度予測装置。
【0017】
(7)
前記取得部は、材料特性から曲げ外側最表層の最大主ひずみが一意に定まる関係に基づいて、前記鋼材の材料特性に対応する前記鋼材の曲げ外側最表層の最大主ひずみを取得することを特徴とする(6)に記載の曲げ角度予測装置。
【0018】
(8)
前記関係式は、限界VDA曲げ角度をθとして、
θ=exp{(εb-b)/a}
εb:曲げ外側最表層の最大主ひずみ
a:板厚tの関係式
b:板厚tの関係式
により表されることを特徴とする(6)又は(7)に記載の曲げ角度予測装置。
【0019】
(9)
前記鋼材の板厚は、予変形を受けた後の値であることを特徴とする(6)~(8)のいずれかに記載の曲げ角度予測装置。
【0020】
(10)
前記鋼材は、980MPa級以上の鋼種の鋼板であることを特徴とする(6)~(9)のいずれかに記載の曲げ角度予測装置。
【0021】
(11)
曲げ角度の予測対象である鋼材の材料特性により、前記鋼材の曲げ外側最表層の最大主ひずみを取得する第1ステップと、
有限要素法を用いて既定されている、限界VDA曲げ角度を板厚及び曲げ外側最表層の最大主ひずみの関数で規定した関係式に、前記鋼材の板厚及び前記第1ステップで取得された前記鋼材の前記曲げ外側最表層の最大主ひずみを入力(代入)して、前記鋼材の限界VDA曲げ角度を算出する第2ステップと、
をコンピュータに実行させる角度予測プログラム。
【0022】
(12)
前記第1ステップは、材料特性から曲げ外側最表層の最大主ひずみが一意に定まる関係に基づいて、前記鋼材の材料特性に対応する前記鋼材の曲げ外側最表層の最大主ひずみを取得することを特徴とする(11)に記載の曲げ角度予測プログラム。
【0023】
(13)
前記関係式は、限界VDA曲げ角度をθとして、
θ=exp{(εb-b)/a}
εb:曲げ外側最表層の最大主ひずみ
a:板厚tの関係式
b:板厚tの関係式
により表されることを特徴とする(11)又は(12)に記載の曲げ角度予測プログラム。
【0024】
(14)
前記鋼材の板厚は、予変形を受けた後の値であることを特徴とする(11)~(13)のいずれかに記載の曲げ角度予測プログラム。
【0025】
(15)
前記鋼材は、980MPa級以上の鋼種の鋼板であることを特徴とする(11)~(14)のいずれかに記載の曲げ角度予測プログラム。
【0026】
(16)
(11)~(15)のいずれか1項に記載の角度予測プログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、有限要素法を用いて、任意の材料特性を持つ鋼材について、例えば前工程の予変形を受けて板厚が変動した場合に、変形後の任意の板厚における限界VDA曲げ角度を容易且つ正確に取得することが可能となる。また、得られた限界VDA曲げ角度を利用して鋼材の曲げ破断の有無を予測することができる。これによって、実際の自動車部材についての衝突試験を省略すること、或いは衝突試験の回数を大幅に削減することができる。また、衝突時の破断を防止する鋼材の設計をコンピュータ上で行うことができるため、大幅なコスト削減、開発期間の短縮への寄与が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1A図1Aは、図1Aは、限界VDA曲げ角度を試験的に取得する様子を示す斜視図である。
図1B図1Bは、限界VDA曲げ角度を試験的に取得する様子を拡大して示す正面図である。
図2図2は、板厚ごとの、得られた限界VDA曲げ角度(実験値)及び曲げ外側頂部における曲げ外側最表層の最大主ひずみ(ソリッド要素詳細FEM解析値)を示す図である。
図3図3は、曲げ外側頂部からの距離と曲げ外側最表層の最大主ひずみとの関係を示す特性図である。
図4図4は、限界VDA曲げ角度と曲げ外側最表層の最大主ひずみとの関係を示す特性図である。
図5図5は、第1の実施形態による曲げ角度予測装置を示すブロック図である。
図6図6は、第1の実施形態による曲げ角度予測方法を示すフロー図である。
図7図7は、鋼板の鋼種(強度グレード)と曲げ外側の最大主ひずみの関係を示す図である。
図8図8は、第2の実施形態による曲げ破断予測方法を示すフロー図である。
図9図9は、第3の実施形態による曲げ破断予測方法を示すフロー図である。
図10図10は、コンピュータ機能を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(本発明の基本的骨子)
先ず、本発明の実施形態について開示するに当たり、本発明の基本的骨子について説明する。
【0030】
本実施形態では、鋼板の曲げ性を評価する方法として、ドイツ自動車工業会(VDA)による金属材料の板曲げ試験(VDA曲げ試験)と呼ばれる試験規格を用いる。本発明者は、VDA曲げ試験における鋼板の破断と鋼板の材料特性との関係を種々調査した結果、曲げ外側最表層の最大主ひずみが材料固有の限界値に達すると、VDA曲げ試験において曲げ破断が発生することを知見した。
【0031】
VDA曲げ実験を行う様子を図1A図1Bに示す。一対のロール21,22上に鋼板10を載置し、一対のロール21,22間における鋼板10の表面の中央部位(曲げ中心)にパンチ20を当接させる。パンチ20を押し込みながら鋼板10を曲げてゆき、パンチの押し込み荷重が最大となったタイミング(曲げ破断が発生したタイミング)における鋼板10の曲げ角度を限界VDA曲げ角度θと定義する(図1B)。鋼板10の表面のパンチ20の当接部位に対応した裏面の点Pにおいて、限界VDA曲げ角度θとなったときの最大主ひずみを、曲げ外側頂部における曲げ外側最表層の最大主ひずみと定義する。
【0032】
引張強度クラスが1500MPa級で板厚の異なる3種(板厚:1.0mm,1.4mm,2.3mm)の鋼板について、得られた限界VDA曲げ角度(実験値)及び曲げ外側頂部における曲げ外側最表層の最大主ひずみ(0.1mmメッシュサイズのソリッド要素を用いた詳細FEM解析値)を図2に示す。また、上記の3種の鋼板について、曲げ外側頂部からの距離と曲げ外側最表層の最大主ひずみとの関係を図3に示す。
【0033】
一般的に、FEM解析では、ソリッド要素を用いた詳細なFEMモデル(ソリッドモデル)と、シェル要素を用いたFEMモデル(シェルモデル)とが主に用いられている。ソリッドモデルは、四面体、六面体、または五面体等の3次元のソリッド要素を使用してモデリングされ、一般的に解析時間は長くなるが、解析精度は高い特長がある。シェルモデルは、三角形や四角形のような2次元の面要素であるシェル要素を使用してモデリングされ、一般的に、解析対象が長さ及び幅と比べて厚みが薄い板で構成された部材を対象とした解析において使用されることが多く、解析時間が短い特長がある。そのため、ソリッドモデルでは解析が不可能になる大規模なモデルでの解析であっても、シェル要素を使えば可能となる。
【0034】
図2及び図3に示すように、実験で取得された限界VDA曲げ角度は、板厚1.0mm,1.4mm,2.3mmの各鋼板について、75°,65°,55°となった。
【0035】
VDA曲げ実験を再現したFEMモデルを作成し、ひずみの再現精度が高いソリッド要素を用い、且つサイズが例えば0.1mm程度の詳細なメッシュでモデル化する。このFEMモデルを用いて、VDA曲げ実験において、破断が発生した曲げ角度(限界VDA曲げ角度)までパンチを押し込み、その時の鋼板の曲げ外側の最大主ひずみを求め、限界VDA曲げ角度との関係を調査した。その結果、図2及び図3に示すように、曲げ外側頂部における曲げ外側の最大主ひずみは、限界VDA曲げ角度75°,65°,55°の各鋼板について、0.386,0.396,0.393となり、ほぼ同一と見なし得る値を示した。即ち、鋼板の板厚が異なることで、限界VDA曲げ角度が変化しているにも関わらず、曲げ外側頂部における曲げ外側の最大主ひずみは板厚に依らずほぼ同一の値となることが判った。以下、記載上の便宜のため、曲げ外側頂部の曲げ外側最表層の最大主ひずみを、単に「曲げ外側最表層の最大主ひずみ」と記す。
【0036】
本発明者は、詳細なソリッド要素からなるFEMモデルを用いた場合には、同じ鋼種の鋼板であれば、板厚が異なっても各板厚における限界VDA曲げ角度まで曲げ変形を加えた時の、曲げ外側最表層の最大主ひずみはほぼ等しくなるという上記の知見を用い、様々な板厚における限界VDA曲げ角度を、FEM解析から求めた。他の鋼種においても同様に、詳細なソリッド要素からなるFEMモデルを用いた解析を行い、各板厚における限界VDA曲げ角度を求めた。このようにして求めた、様々な鋼種、様々な板厚における、多数の限界VDA曲げ角度と曲げ外側最表層の最大主ひずみとの関係をプロットした結果を図4に示す。図4では、板厚をt,t,tと示す。
【0037】
本発明者は、図4より、ソリッド要素による曲げ外側最表層の最大主ひずみは、限界VDA曲げ角度と板厚の関数で表される旨を知見した。本発明者は、この知見を具体化すべく精査したところ、リッド要素による曲げ外側最表層の最大主ひずみは、鋼種によらず板厚毎の限界VDA曲げ角度の自然対数の1次式で定式化できることを見出した。
【0038】
ソリッド要素による曲げ外側最表層の最大主ひずみをε、限界VDA曲げ角度をθとして、εは係数a,bを用いて以下のように表される。
ε=a・ln(θ)+b ・・・(1)
【0039】
係数a及び係数bは、板厚tの関係式で表される。この関係式は、試験結果を前記(1)式でフィッティングするために決定されるものであり、特に式の形は問わないが、例えば板厚tの多項式で表すことができる。
【0040】
上記の(1)式より、限界VDA曲げ角度θについて解けば、θは以下のように表される。
θ=exp{(ε-b)/a} ・・・・(2)
【0041】
本実施形態では、上記のように既定された(2)式を用いて、任意の鋼種及び任意の板厚における鋼板の限界VDA曲げ角度を算出する。即ち本実施形態では、限界VDA曲げ角度を、試験やシミュレーションによることなく、極めて簡易に短時間で、しかも正確に得ることができる。
【0042】
(第1の実施形態)
第1の実施形態では、鋼材である鋼板の曲げ角度予測方法及び曲げ角度予測装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。図5は第1の実施形態による曲げ角度予測装置を示すブロック図、図6は第1の実施形態による曲げ角度予測方法を示すフロー図である。
【0043】
本実施形態による曲げ角度予測装置は、図5に示すように、鋼種(強度グレード)判定部1、最大主ひずみ取得部2、及び角度算出部3を備えている。
鋼板の限界VDA曲げ角度を予測するに際して、先ず、鋼種(強度グレード)判定部1には、インプットファイルから鋼板の材料特性が入力される。材料特性として、具体的には、当該材料特性に対応する引張強度特性、例えば応力-ひずみ曲線又は応力-ひずみ曲線をスイフトの式でフィッティングすることで得られるスイフト係数がある。
【0044】
鋼種(強度グレード)判定部1は、ステップS1において、入力された鋼板の材料特性に基づいて、当該鋼板の鋼種(強度グレード)を判定する。
本実施形態では、鋼板の鋼種として、特に980MPa級以上の鋼板を対象とすることが好ましい。曲げ破断が問題となる鋼板は主に高強度材のものであることから、本実施形態では、高強度材の具体的指標として980MPa級以上の鋼板を破断予測の適用対象とする。
【0045】
最大主ひずみ取得部2には、鋼板の鋼種(強度グレード)から曲げ外側最表層の最大主ひずみが一意に定まる関係、例えば図7のような、鋼板の鋼種(強度グレード)と曲げ外側の最大主ひずみとの関係を示すテーブルが格納されている。当該テーブルでは、鋼種(強度グレード)に対応して、曲げ外側の最大主ひずみが板厚に依らずほぼ同一の値となることを利用して、鋼種(強度グレード)ごとに任意の板厚で取得された曲げ外側の最大主ひずみが掲載されている。最大主ひずみ取得部2は、ステップS2において、ステップS1で判定された鋼板の鋼種(強度グレード)に基づいて、上記のテーブルから曲げ外側の最大主ひずみを取得する。
【0046】
角度算出部3には、インプットファイルからの要素毎の鋼板の所定板厚、ここでは予変形後の板厚と、最大主ひずみ取得部2で取得された曲げ外側最表層の最大主ひずみとが入力される。角度算出部3は、ステップS3において、各要素毎に入力された鋼板の予変形後の板厚及び曲げ外側最表層の最大主ひずみに基づき、上記の(2)式を用いて、鋼板の予変形後における限界VDA曲げ角度を算出する。
【0047】
以上説明したように、本実施形態によれば、FEM解析を用いて、任意の材料特性を持つ鋼材について、例えば前工程の予変形を受けて板厚が変動した場合に、変形後の任意の板厚における限界VDA曲げ角度を容易且つ正確に取得することが可能となる。
【0048】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、第1の実施形態による曲げ角度予測方法を利用した、鋼板の曲げ破断予測方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。本実施形態では、プレス成形解析における複数の成形工程において、予変形により鋼板に板厚変動が生じる場合における鋼板の曲げ破断予測方法を例示する。図8は第2の実施形態による曲げ破断予測方法を示すフロー図である。
【0049】
自動車部品は、一般に鋼板をプレス成形することにより形成されている。通常、プレス成形は、鋼板について絞り成形工程、曲げ成形工程、トリム成形工程、リストライク成形工程等の複数の工程を経て、最終的な形状に成形される。軟質な鋼板であれば、曲げ成形中に破断が発生することは殆どないが、例えば980MPaを超えるような高強度の鋼板をプレス成形した場合、曲げ部で破断が発生する可能性がある。本実施形態では、絞り成形工程及び曲げ成形工程を例示し、絞り成形工程を第1成形解析工程S10、曲げ成形工程を第2成形解析工程S20として説明する。
【0050】
絞り成形工程において、鋼板に対して絞り成形を行うと、例えばパンチの押し込みにより肩部は引張変形を受けて板厚が減少する。一方、パンチの押し込みにより材料が流入することによって、部品の周辺部分(ダイフランジ部分)は、周長が縮まることによる圧縮の変形を受けて板厚が増加する。
【0051】
本実施形態では先ず、ステップS11において、第1成形解析工程S10の絞り成形工程についてFEM解析を行う。
続いて、ステップS12において、第1成形解析工程S10のFEMモデルの各要素(メッシュ)ごとに絞り成形後の鋼板の板厚及びひずみ成分を取得する。
【0052】
続いて、ステップS21において、ステップS12で取得された鋼板の板厚及びひずみ成分を、第2成形解析工程S20である曲げ成形工程のFEMモデルの各要素に引き継いでマッピングする。
【0053】
続いて、ステップS22において、図6に示した第1の実施形態による曲げ角度予測方法のステップS1~S3を実行し、鋼板の予変形後の板厚における限界VDA曲げ角度を算出する。
【0054】
続いて、ステップS23において、第2成形解析工程S20の曲げ成形工程についてFEM解析を行う。
そして、ステップS24において、第2成形解析工程S20のFEMモデルの要素ごとに曲げ破断が発生するか否かを判定し、破断が発生すると判定された要素を削除する。
以上により、鋼板の曲げ破断をFEM解析上で精度良く予測することができる。
【0055】
自動車部材のFEM成形解析では、大規模なモデルとなるため、一般に詳細なソリッド要素でのモデル化は計算負荷が高すぎるため困難である。そのため、計算負荷の小さいシェル要素で且つ、例えば1mm~5mm程度の比較的粗い要素サイズでモデル化されることが多い。シェル要素でモデル化した場合、鋼板の曲げ頂部のように局所的にひずみが集中しているような部位においては、要素内でひずみが平均化されることから、用いる要素サイズによって、計算されるひずみの値が異なることが知られている。本実施形態では、このシェル要素の要素サイズ毎のひずみの変化を捉えた上で、ステップS24において、限界VDA曲げ角度における、シェル要素の曲げ外側の限界ひずみを求め、成形解析中のシェル要素の曲げ外側最表層の最大主ひずみが、この曲げ外側の限界ひずみに達するか否かで破断を予測することもできる。
【0056】
第1成形工程における予変形によって付与されたひずみは、当然に第2成形工程にも引き継がれる。そのため、FEM解析においても、第1成形解析工程S10後の板厚と共に、ひずみ成分を取得し、第2成形解析工程S20のFEMモデルの各要素にマッピングする。これにより、シェル要素の曲げ外側のひずみが、限界ひずみに達するか否かで破断を予測する場合において、より精度を向上させることができる。
【0057】
なお、ステップS24では、限界VDA曲げ角度をシェル要素の曲げ外側の限界ひずみに変換することなく、FEM解析において鋼板の曲げ角度が限界VDA曲げ角度に到達したか否かで破断発生の有無を判定することもできる。
【0058】
以上説明したように、本実施形態によれば、第1の実施形態による曲げ角度予測方法を用いて得られた限界VDA曲げ角度を利用して鋼材の曲げ破断の有無を精度良く予測する。これによって、曲げ破断を防止する鋼板の設計をコンピュータ上で行うことができるため、大幅なコスト削減、開発期間の短縮への寄与が実現する。
【0059】
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、第1の実施形態による曲げ角度予測方法を利用した、鋼板の曲げ破断予測方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。本実施形態では、プレス成形解析及びこれに続く衝突解析において、予変形により鋼板に板厚変動が生じる場合における鋼板の曲げ破断予測方法を例示する。図9は第3の実施形態による曲げ破断予測方法を示すフロー図である。
【0060】
自動車部品は、一般に鋼板をプレス成形して形成されており、その後に溶接等の組立て工程を経て自動車車体が形成される。自動車車体は衝突安全性の観点から、衝突時に狙いの反力を発生させながらエネルギー吸収をすることが求められるところ、衝突時に鋼板が破断した場合、狙いの反力が得られない可能性がある。そのため、衝突のFEM解析を行い、事前に破断を予測することが求められている。
【0061】
衝突時に自動車車体の各鋼材は様々な変形をし、衝突入力により圧縮されて座屈するような部位では、鋼板は曲げ変形を受ける。軟質な鋼板であれば曲げ変形中に破断が発生することは殆どないが、例えば980MPaを超える高強度の鋼板の場合、曲げ変形中に破断が発生する可能性がある。
【0062】
鋼板をプレス成形する工程においては、例えばパンチの押し込みにより肩部は引張変形を受けて板厚が減少する。一方、パンチの押し込みにより材料が流入することによって、部品の周辺部分(ダイフランジ部分)は、周長が縮まることによる圧縮の変形を受け、板厚が増加する。
【0063】
本実施形態では先ず、ステップS31において、鋼板の成形解析工程S30においてFEM解析を行う。
続いて、ステップS32において、成形解析工程S30のFEMモデルの各要素(メッシュ)ごとに成形後の鋼板の板厚及びひずみ成分を取得する。
【0064】
続いて、ステップS41において、ステップS32で取得された鋼板の板厚及びひずみ成分を、衝突解析工程S40のFEMモデルの各要素に引き継いでマッピングする。
【0065】
続いて、ステップS42において、図2に示した第1の実施形態による曲げ角度予測方法のステップS1~S3を実行し、鋼板の予変形後の板厚における限界VDA曲げ角度を算出する。
【0066】
続いて、ステップS43において、衝突解析工程S40においてFEM解析を行う。
そして、ステップS44において、衝突解析工程S40のFEMモデルの各要素ごとに曲げ破断が発生するか否かを判定し、破断が発生すると判定された要素を削除する。
以上により、自動車車体の衝突時の曲げ破断をFEM解析上で精度良く予測することができる。
【0067】
本実施形態においても、第2の実施形態と同様に、シェル要素の要素サイズ毎のひずみの変化を捉えた上で、ステップS44において、限界VDA曲げ角度における、シェル要素の曲げ外側の限界ひずみを求め、成形解析中のシェル要素の曲げ外側最表層の最大主ひずみが、この曲げ外側の限界ひずみに達するか否かで破断を予測する。
【0068】
成形工程における予変形によって付与されたひずみは、当然に衝突工程にも引き継がれる。そのため、FEM解析においても、成形解析工程S30後の板厚と共に、ひずみ成分を取得し、衝突解析工程S40のFEMモデルの各要素にマッピングする。これにより、シェル要素の曲げ外側のひずみが、限界ひずみに達するか否かで破断を予測する場合において、より精度を向上させることができる。
【0069】
なお、ステップS44では、限界VDA曲げ角度をシェル要素の曲げ外側の限界ひずみに変換することなく、FEM解析において鋼板の曲げ角度が限界VDA曲げ角度に到達したか否かで破断発生の有無を判定することもできる。
【0070】
以上説明したように、本実施形態によれば、第1の実施形態による曲げ角度予測方法を用いて得られた限界VDA曲げ角度を利用して鋼材の曲げ破断の有無を精度良く予測する。これによって、実際の自動車部材についての衝突試験を省略すること、或いは衝突試験の回数を大幅に削減することができる。また、衝突時の破断を防止する鋼材の設計をコンピュータ上で行うことができるため、大幅なコスト削減、開発期間の短縮への寄与が実現する。
【0071】
(第4の実施形態)
上述した第1の実施形態による曲げ角度予測装置の構成要素である、図5に示した鋼種(強度グレード)判定部1、最大主ひずみ取得部2、及び角度算出部3は、専用のハードウェアにより実現されるものであっても良い。また、上記の各構成要素は、メモリ及びCPU(中央演算装置)により構成され、各構成要素の諸機能を実現するためのプログラムをメモリにロードして実行することによりその機能を実現させるものであっても良い。
【0072】
また、上記の各構成要素の諸機能を実現するためのプログラム(図6の角度予測方法のステップS1~S3、図8の曲げ破断予測方法のステップS10(S11~S12)及びS20(S21~S24)、図9の曲げ破断予測方法のステップS30(S31~S32)及びS40(S41~S44)をコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、上記の各構成要素の処理を実行しても良い。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0073】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものでも良い。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。更に、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものでも良い。また上記のプログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、更に前述した機能をコンピュータシステムに既に記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0074】
一具体例として、第1~第3の実施形態に示した曲げ角度予測装置及び曲げ角度予測方法、並びに曲げ破断予測方法は、図10に示すようなコンピュータ機能100により実施される。
コンピュータ機能100は、CPU101と、ROM102と、RAM103とを備える。また、操作部(CONS)109のコントローラ(CONSC)105と、CRTやLCD等の表示部としてのディスプレイ(DISP)110のディスプレイコントローラ(DISPC)106とを備える。更に、ハードディスク(HD)111、及びフレキシブルディスク等の記憶デバイス(STD)112のコントローラ(DCONT)107と、ネットワークインタフェースカード(NIC)108とを備える。それら機能部101,102,103,105,106,107,108は、システムバス104を介して互いに通信可能に接続された構成としている。
【0075】
CPU101は、ROM102又はHD111に記憶されたソフトウェア、又はSTD112より供給されるソフトウェアを実行することで、システムバス104に接続された各構成部を総括的に制御する。即ち、CPU101は、上述したような動作を行うための処理プログラム(構造体設計支援プログラム)を、ROM102、HD111、又はSTD112から読み出して実行することで、本実施形態における動作を実現するための制御を行う。RAM103は、CPU101の主メモリ又はワークエリア等として機能する。
【0076】
CONSC105は、CONS109からの指示入力を制御する。DISPC105は、DISP110の表示を制御する。DCONT107は、ブートプログラム、種々のアプリケーション、ユーザファイル、ネットワーク管理プログラム、及び本実施形態における上記の処理プログラム等を記憶するHD111及びSTD112とのアクセスを制御する。NIC108はネットワーク113上の他の装置と双方向にデータをやりとりする。
なお、通常のコンピュータ端末装置を用いる代わりに、曲げ角度予測装置に特化された所定の計算機等を用いても良い。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、例えば、自動車部品に公的な鋼板に関連する産業に利用することができる。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10