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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】DC-DCコンバータ
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20230314BHJP
【FI】
H02M3/155 H
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021539724
(86)(22)【出願日】2019-08-09
(86)【国際出願番号】 JP2019031731
(87)【国際公開番号】W WO2021028990
(87)【国際公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006622
【氏名又は名称】株式会社安川電機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100171099
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】佐土原 正志
(72)【発明者】
【氏名】宮本 昌和
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/079538(WO,A1)
【文献】特開2008-017564(JP,A)
【文献】特開2012-070505(JP,A)
【文献】特開2004-201369(JP,A)
【文献】特開2014-033589(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次側と二次側との間でDC-DC電力変換を行うDC-DCコンバータであって、
リアクトルと、
前記リアクトルに接続され、前記リアクトルから前記二次側に電流を導くブロッキングダイオードと、
前記リアクトルと前記ブロッキングダイオードとの間に接続される第1端と、前記一次側の負極に接続される第2端とを有し、前記一次側から前記リアクトルにエネルギーを蓄積するオン期間と、前記リアクトルから前記二次側にエネルギーを放出させるオフ期間とを切り替えるスイッチング素子と、
前記第1端に接続される第1コンデンサと、
前記第1コンデンサに接続され、前記第1コンデンサから前記二次側に電流を導く第1ダイオードと、
前記第1端に接続され、前記オフ期間において前記第1端から電流を導く第2ダイオードと、
前記第2ダイオードに接続され、前記オフ期間において前記第2ダイオードにより導かれた電流により電荷を蓄積する第2コンデンサと、
前記第2ダイオードと前記第2コンデンサとの間と、前記第1コンデンサと前記第1ダイオードとの間とを接続し、前記オン期間において、前記第2コンデンサから前記第1コンデンサに電荷を送る第1追加リアクトルと、を備え、
前記第1コンデンサは、前記第2コンデンサから送られた電荷によって、前記オン期間から前記オフ期間への切り替わりに応じた前記スイッチング素子の端子電圧の上昇を抑制する、DC-DCコンバータ。
【請求項2】
前記第2コンデンサから前記第1コンデンサへの電流を導き、前記第1コンデンサから前記第2コンデンサへの電流をブロックする第3ダイオードを更に備える、請求項記載のDC-DCコンバータ。
【請求項3】
前記第3ダイオードは、前記リアクトルと前記第1コンデンサとの間に設けられている、請求項記載のDC-DCコンバータ。
【請求項4】
前記第3ダイオードは、前記第2コンデンサと前記リアクトルとの間に設けられている、請求項記載のDC-DCコンバータ。
【請求項5】
前記第2コンデンサは、前記一次側の負極と前記第1コンデンサとの間に接続されている、請求項記載のDC-DCコンバータ。
【請求項6】
前記第2コンデンサは、前記一次側の正極と前記第1コンデンサとの間に接続されている、請求項記載のDC-DCコンバータ。
【請求項7】
前記第2コンデンサの静電容量は、前記第1コンデンサの静電容量よりも大きい、請求項のいずれか一項記載のDC-DCコンバータ。
【請求項8】
前記オフ期間において、前記第1コンデンサに接続された前記第2コンデンサの電極と前記一次側の負極との間の電圧は、前記二次側に作用する出力電圧に達する、請求項のいずれか一項記載のDC-DCコンバータ。
【請求項9】
前記オン期間において、前記第1コンデンサの両電極間の電圧は、前記二次側に作用する出力電圧に達する、請求項のいずれか一項記載のDC-DCコンバータ。
【請求項10】
前記オフ期間においてエネルギーを蓄積し、蓄積したエネルギーによって、前記オフ期間から前記オン期間への切り替えに応じて前記スイッチング素子を流れる電流の上昇を抑制する第2追加リアクトルを更に備える、請求項のいずれか一項記載のDC-DCコンバータ。
【請求項11】
前記第2追加リアクトルは、前記第1端から前記二次側の正極への電流を導く、請求項10記載のDC-DCコンバータ。
【請求項12】
前記第2追加リアクトルは、前記第1端と前記ブロッキングダイオードとの間に設けられている、請求項11記載のDC-DCコンバータ。
【請求項13】
前記第2追加リアクトルは、前記ブロッキングダイオードと前記二次側の正極との間に設けられている、請求項11記載のDC-DCコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、DC-DCコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、直流電源に接続される入力端子と、負荷に接続される出力端子と、入力端子と出力端子との間に設けられるリアクトルと、リアクトルと直列接続されるブロッキングダイオードと、一端がリアクトルとブロッキングダイオードとの間に接続されるスイッチング素子と、を有し、入力電圧を昇圧して出力電圧を生成する昇圧チョッパ回路を備えるDC-DCコンバータが開示されている。このDC-DCコンバータは、入力端子とスイッチング素子の一端との間に設けられる第1リアクトルと、第1リアクトルとスイッチング素子との間に設けられ、第1リアクトルと直列接続される第1コンデンサと、アノード端子が第1リアクトルと第1コンデンサとの接続部に接続され、カソード端子が出力端子に接続される第1ダイオードと、を更に備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2015/079538号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、スイッチングロスの更なる抑制に有効なDC-DCコンバータを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係るDC-DCコンバータは、直流電源と負荷との間に設けられるリアクトルと、リアクトルと負荷との間に設けられるブロッキングダイオードと、一端がリアクトルとブロッキングダイオードとの間に接続されるスイッチング素子と、を有し、直流電源からの入力電圧を昇圧して負荷への出力電圧を生成する昇圧チョッパ回路と、直流電源とスイッチング素子の一端との間に設けられる第1リアクトルと、第1リアクトルとスイッチング素子の一端との間に設けられる第1コンデンサと、アノード端子が第1リアクトルと第1コンデンサとの間に接続され、カソード端子がブロッキングダイオードと負荷との間に接続される第1ダイオードと、直流電源と第1リアクトルとの間に設けられる第2コンデンサと、カソード端子が第2コンデンサと第1リアクトルとの間に接続され、アノード端子がスイッチング素子の一端に接続される第2ダイオードと、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、スイッチングロスの更なる抑制に有効なDC-DCコンバータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】DC-DCコンバータの構成を模式的に示す回路図である。
図2】スイッチング素子がオフからオンに切り替わる前におけるDC-DCコンバータの状態を示す図である。
図3】スイッチング素子がオフからオンに切り替わった後におけるDC-DCコンバータの状態を示す図である。
図4】スイッチング素子がオンからオフに切り替わる前におけるDC-DCコンバータの状態を示す図である。
図5】スイッチング素子がオンからオフに切り替わった後におけるDC-DCコンバータの状態を示す図である。
図6】スイッチング素子の一端の電位が上昇した後におけるDC-DCコンバータの状態を示す図である。
図7】DC-DCコンバータの変形例を模式的に示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0009】
図1に示すDC-DCコンバータ1は、直流電源8からの直流の入力電圧を負荷9への直流の出力電圧に変換する電力変換装置である。DC-DCコンバータ1は、昇圧チョッパ回路2と、制御回路3と、ZVS回路4と、ZCS回路5とを有する。
【0010】
昇圧チョッパ回路2は、上記入力電圧を昇圧して上記出力電圧を生成する。昇圧チョッパ回路2は、正極入力端子21と、負極入力端子22と、正極出力端子23と、負極出力端子24と、リアクトル25と、ブロッキングダイオード26と、スイッチング素子27と、平滑コンデンサ28とを有する。
【0011】
正極入力端子21及び負極入力端子22は、直流電源8の正極及び負極にそれぞれ接続される。正極出力端子23及び負極出力端子24は、負荷9の正極及び負極にそれぞれ接続される。負極入力端子22と負極出力端子24とは、コモンラインにより接続され、実質的に同電位となっている。なお、ここでの接続は、電気的な接続を意味する。以下においても同様である。
【0012】
リアクトル25は、直流電源8の正極と負荷9の正極との間に設けられる。例えば、リアクトル25の一端25aは正極入力端子21に接続され、リアクトル25の他端25bは正極出力端子23に接続されている。なお、ここでの接続は、他の導電性の電子部品を介した接続も含む。以下においても同様である。
【0013】
ブロッキングダイオード26は、リアクトル25と負荷9の正極との間に設けられており、リアクトル25から負荷9への電流を通流し、負荷9からリアクトル25への電流をブロックする。例えば、ブロッキングダイオード26のアノード端子26aはリアクトル25の他端25bに接続され、ブロッキングダイオード26のカソード端子26bは正極出力端子23に接続されている。すなわちリアクトル25の他端25bは、ブロッキングダイオード26を介して正極出力端子23に接続されている。
【0014】
スイッチング素子27は、リアクトル25の他端25bと直流電源8の負極との間のオン・オフを切り替える。例えばスイッチング素子27の一端27aは、リアクトル25の他端25bとブロッキングダイオード26のアノード端子26aとの間に接続され、スイッチング素子27の他端27bは負極入力端子22に接続されている。スイッチング素子27の具体例としては、バイポーラトランジスタ、又はMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)等が挙げられる。スイッチング素子27がバイポーラトランジスタである場合、一端27aはコレクタ端子であり、他端27bはエミッタ端子である。スイッチング素子27のベース端子には、スイッチング素子27のオン・オフを切り替える制御信号が入力される。
【0015】
平滑コンデンサ28は、出力電圧を平滑化する。例えば、平滑コンデンサ28の一端28aは、ブロッキングダイオード26のカソード端子26bと正極出力端子23との間に接続され、平滑コンデンサ28の他端28bは、負極出力端子24に接続されている。
【0016】
制御回路3は、上記制御信号をスイッチング素子27に出力(例えばスイッチング素子27のベースに出力)することで、所定のスイッチング周期にてスイッチング素子27のオン・オフを切り替える。スイッチング素子27がオンである場合には、リアクトル25にエネルギーが蓄積される。スイッチング素子27がオンからオフに切り替わると、リアクトル25のエネルギーに蓄積されたエネルギーがブロッキングダイオード26を経て平滑コンデンサ28に蓄積される。これにより出力電圧(正極出力端子23と負極出力端子24との電位差)が昇圧される。制御回路3は、スイッチング素子27のオン期間とオフ期間との各スイッチング周期における比率を所定のレンジで変更することによって、出力電圧を調節する。
【0017】
ZVS回路4は、スイッチング素子27のオンからオフへの切り替わりをソフトスイッチングにする回路である。例えばZVS回路4は、スイッチング素子27がオンからオフに切り替わった直後におけるスイッチング素子27の電圧(一端27aと他端27bとの電位差)の上昇を抑制する。一例として、ZVS回路4は、スイッチング素子27のオンからオフへの切り替わりをZVS(Zero Voltage Switching)にする。ZVSとは、スイッチング素子27がオンからオフに切り替わった直後におけるスイッチング素子27の電圧が実質的にゼロになるスイッチングを意味する。
【0018】
ZVS回路4は、第1リアクトル41と、第1コンデンサ42と、第1ダイオード43と、第2コンデンサ44と、第2ダイオード45とを有する。
【0019】
第1リアクトル41は、直流電源8とスイッチング素子27の一端27aとの間に設けられる。例えば第1リアクトル41は、直流電源8の負極とスイッチング素子27の一端27aとの間に設けられる。一例として、第1リアクトル41の一端41aは負極入力端子22に接続され、第1リアクトル41の他端41bはスイッチング素子27の一端27aに接続されている。
【0020】
第1コンデンサ42は、第1リアクトル41とスイッチング素子27の一端27aとの間に設けられる。例えば、第1コンデンサ42の一端42aは第1リアクトル41の他端41bに接続され、第1コンデンサ42の他端42bはスイッチング素子27の一端27aに接続されている。すなわち第1リアクトル41の他端41bは、第1コンデンサ42を介してスイッチング素子27の一端27aに接続されている。
【0021】
第1ダイオード43は、第1リアクトル41と負荷9の正極との間に設けられており、第1リアクトル41から負荷9への電流を通流し、負荷9から第1ダイオード43への電流をブロックする。例えば、第1ダイオード43のアノード端子43aは第1リアクトル41の他端41bと第1コンデンサ42の一端42aとの間の電路に接続され、第1ダイオード43のカソード端子43bはブロッキングダイオード26のカソード端子26bと正極出力端子23との間の電路に接続される。
【0022】
第2コンデンサ44は、直流電源8と第1リアクトル41との間に設けられる。例えば第2コンデンサ44は、直流電源8の負極と第1リアクトル41との間に設けられる。一例として、第2コンデンサ44の一端44aは負極入力端子22に接続され、第2コンデンサ44の他端44bは第1リアクトル41の一端41aに接続されている。すなわち第1リアクトル41の一端41aは、第2コンデンサ44を介して負極入力端子22に接続されている。
【0023】
第2ダイオード45は、第2コンデンサ44の他端44bとスイッチング素子27の一端27aとの間に設けられ、一端27aから他端44bへの電流を通して他端44bから一端27aへの電流をブロックする。例えば、第2ダイオード45のカソード端子45bは、第2コンデンサ44の他端44bと第1リアクトル41の一端41aとの間の電路に接続され、第2ダイオード45のアノード端子45aはスイッチング素子27の一端27aに接続されている。
【0024】
ZVS回路4は、第2コンデンサ44の他端44bから第1コンデンサ42の一端42aへの電流を通し、第1コンデンサ42の一端42aから第2コンデンサ44の他端44bへの電流をブロックする第3ダイオード46を更に有してもよい。例えば第3ダイオード46は、第1コンデンサ42の一端42aと、第2コンデンサ44の他端44bとの間において、第1リアクトル41に直列に設けられる。
【0025】
一例として、第3ダイオード46は、第1リアクトル41の他端41bと第1コンデンサ42の一端42aとの間に設けられている。第3ダイオード46のアノード端子46aは第1リアクトル41の他端41bに接続され、第3ダイオード46のカソード端子46bは第1コンデンサ42の一端42aに接続されている。すなわち第1リアクトル41の他端41bは、第3ダイオード46を介して第1コンデンサ42の一端42aに接続されている。第3ダイオード46は、第2コンデンサ44の他端44bと第1リアクトル41の一端41aとの間に設けられていてもよい。
【0026】
ZCS回路5は、スイッチング素子27のオフからオンへの切り替わりをソフトスイッチングにする回路である。例えばZCS回路5は、スイッチング素子27がオフからオンに切り替わった直後におけるスイッチング素子27の電流(一端27aから他端27bへの電流)の上昇を抑制する。一例として、ZCS回路5は、スイッチング素子27のオフからオンへの切り替わりをZCS(Zero Current Switching)にする。ZCSとは、スイッチング素子27がオフからオンに切り替わった直後におけるスイッチング素子27の電流が実質的にゼロになるスイッチングを意味する。
【0027】
例えばZCS回路5は、第2リアクトル51を有する。第2リアクトル51は、負荷9の正極とスイッチング素子27の一端27aとの間において、ブロッキングダイオード26に直列に設けられる。例えば第2リアクトル51は、スイッチング素子27の一端27aとブロッキングダイオード26のアノード端子26aとの間に設けられている。
【0028】
第2リアクトル51の一端51aはスイッチング素子27の一端27aに接続され、第2リアクトル51の他端51bはブロッキングダイオード26のアノード端子26aに接続されている。すなわち、スイッチング素子27の一端27aは第2リアクトル51を介してブロッキングダイオード26のアノード端子26aに接続され、リアクトル25の他端25bも第2リアクトル51を介してブロッキングダイオード26のアノード端子26aに接続されている。第2リアクトル51は、ブロッキングダイオード26のカソード端子26bと平滑コンデンサ28の一端28aとの間に設けられていてもよい。
【0029】
以下、図2図6を参照し、上記ZVS及びZCSについて説明する。図2は、スイッチング素子がオフからオンに切り替わる前におけるDC-DCコンバータの状態を示す図である。この状態においては、リアクトル25、第2リアクトル51及びブロッキングダイオード26を経て、正極入力端子21から平滑コンデンサ28に電流i1が流れる。また、第2コンデンサ44の電圧は(他端44bと一端44aとの間の電位差)は、実質的に出力電圧Voutと同等になっている。
【0030】
図2の状態においてスイッチング素子27がオフからオンに切り替わると、その直後には、第2リアクトル51の作用によって、この第2リアクトル51に引き続き上記電流i1が流れ続ける。このため、オン切り替わり直後にはスイッチング素子27の電流は実質的にゼロになる。すなわち、スイッチング素子27のオフからオンへの切り替わりがZCSとなる。
【0031】
その後、図3に示すように、スイッチング素子27を経る電流i2,i3が流れる。電流i2は、リアクトル25及びスイッチング素子27を経て正極入力端子21から負極入力端子22に流れる。これにより、リアクトル25に上記エネルギーが蓄積される。電流i3は、第1リアクトル41、第3ダイオード46、第1コンデンサ42及びスイッチング素子27を経て、第2コンデンサ44の他端44bから第2コンデンサ44の一端44aに流れる。これにより、第2コンデンサ44に蓄積されていた電荷が第1コンデンサ42に移り、図4に示すように、第1コンデンサ42の電圧(一端42aと他端42bとの間の電位差)が出力電圧Voutまで高められる。
【0032】
図4の状態においてスイッチング素子27がオンからオフに切り替わると、その直後には、第1コンデンサ42の電圧が引き続き出力電圧Voutと同等となる。これにより、スイッチング素子27の両端(一端27a及び他端27b)の電位が負極出力端子24の電位と同等になるので、スイッチング素子27の電圧が実質的にゼロになる。すなわち、スイッチング素子27のオンからオフへの切り替わりがZVSとなる。
【0033】
スイッチング素子27がオンであった期間にリアクトル25に蓄積されたエネルギーは、まずは第1コンデンサ42及び第1ダイオード43を経て平滑コンデンサ28に蓄積される。このため、図5に示すように、リアクトル25、第1コンデンサ42及び第1ダイオード43を経て、正極入力端子21から平滑コンデンサ28に電流i4が流れる。第1コンデンサ42の放電が完了すると、スイッチング素子27の電圧が出力電圧Voutまで上昇する。一方、リアクトル25のエネルギーは、第2リアクトル51及びブロッキングダイオード26を経て平滑コンデンサ28にも蓄積される。これにより、出力電圧が昇圧される。
【0034】
また、図6に示すように、スイッチング素子27の電圧が上昇し、その電圧が第2コンデンサ44に残留している電圧を超えると、第2ダイオード45を経て、スイッチング素子27から第2コンデンサ44に電流i5が流れる。上述のように、スイッチング素子27の電圧は出力電圧Voutまで上昇するので、第2コンデンサ44の電圧もVoutまで上昇する。これにより、DC-DCコンバータ1が図2の状態に戻る。以上の動作が上記スイッチング周期で繰り返される。
【0035】
なお、スイッチング素子27のオンからオフへの切り替わりをZVSとするためには、スイッチング素子27がオンからオフに切り替わる前に、第1コンデンサ42の電圧を出力電圧Voutまで高める必要がある。このため、第1コンデンサ42の静電容量と第2コンデンサ44の静電容量とは、以下の条件を満たすように設定されていてもよい。
条件1)第2コンデンサ44の静電容量は第1コンデンサ42の静電容量よりも大きい。
条件2)制御回路3が上記レンジにおいてスイッチング素子27のオフ期間を最小とする場合であっても、スイッチング素子27のオフ期間に第2コンデンサ44の電圧が出力電圧に達する。
条件3)制御回路3が上記レンジにおいてスイッチング素子27のオン期間を最小とする場合であっても、スイッチング素子27のオン期間に第1コンデンサ42の電圧が出力電圧に達する。
【0036】
ただし、スイッチング素子27のオンからオフへの切り替わりは、必ずしもZVSとなっていなくてもよい。少なくとも、スイッチング素子27がオンからオフに切り替わった直後において、スイッチング素子27の電圧の上昇が抑制されればよい。従って、上記条件1~3を満たすことは必須ではない。
【0037】
以上の実施形態においては、第1リアクトル41が直流電源8の負極とスイッチング素子27の一端27aとの間に設けられ、第2コンデンサ44が直流電源8の負極と第1リアクトル41との間に設けられる例を示したが、これに限られない。図7に示すように、第1リアクトル41が直流電源8の正極とスイッチング素子27の一端27aとの間に設けられ、第2コンデンサ44が直流電源8の正極と第1リアクトル41との間に設けられていてもよい。この場合も、スイッチング素子27のオンからオフへの切り替わりをZVSとするための条件は、上述の条件1~3と同じである。
【0038】
〔本実施形態の効果〕
以上に説明したように、DC-DCコンバータ1は、直流電源8と負荷9との間に設けられるリアクトル25と、リアクトル25と負荷9との間に設けられるブロッキングダイオード26と、一端27aがリアクトル25とブロッキングダイオード26との間に接続されるスイッチング素子27と、を有し、直流電源8からの入力電圧を昇圧して負荷9への出力電圧を生成する昇圧チョッパ回路2と、直流電源8とスイッチング素子27の一端27aとの間に設けられる第1リアクトル41と、第1リアクトル41とスイッチング素子27の一端27aとの間に設けられる第1コンデンサ42と、アノード端子43aが第1リアクトル41と第1コンデンサ42との間に接続され、カソード端子43bがブロッキングダイオード26と負荷9との間に接続される第1ダイオード43と、直流電源8と第1リアクトル41との間に設けられる第2コンデンサ44と、カソード端子45bが第2コンデンサ44と第1リアクトル41との間に接続され、アノード端子45aがスイッチング素子27の一端27aに接続される第2ダイオード45と、を備える。
【0039】
このDC-DCコンバータ1によれば、第1リアクトル41、第1コンデンサ42及び第1ダイオード43によって、スイッチング素子27がオンからオフに切り替わる際に、スイッチング素子27の一端27aの電圧上昇が遅らせられる。これにより、スイッチング素子27がオンからオフに切り替わる際の電力消費が抑制される。以下、この作用を「ソフトオフ作用」という。ここで、入力電圧と出力電圧との差異が大きい場合、スイッチング素子27のオン期間中に第1コンデンサ42の電圧を十分に高めることができず、上記ソフトオフ作用が十分に得られない可能性がある。これに対し、このDC-DCコンバータ1は、直流電源8と第1リアクトル41との間に設けられる第2コンデンサ44と、カソード端子45bが第2コンデンサ44と第1リアクトル41との間の電路に接続され、アノード端子45aがスイッチング素子27の一端27aに接続される第2ダイオード45とを更に備える。この構成によれば、スイッチング素子27のオフ期間中に出力電圧に応じた電荷が第2コンデンサ44に供給され、この電荷がスイッチング素子27のオン期間中に第2コンデンサ44から第1コンデンサ42に供給される。このため、入力電圧と出力電圧との差異が大きい場合であっても、出力電圧に応じた電荷を第1コンデンサ42に供給し、第1コンデンサ42の電圧を十分に高めることができる。従って、このDC-DCコンバータ1はスイッチングロスの更なる抑制に有効である。
【0040】
第1リアクトル41は、直流電源8の負極とスイッチング素子27の一端27aとの間に設けられ、第2コンデンサ44は、直流電源8の負極と第1リアクトル41との間に設けられてもよい。第1リアクトル41は、直流電源8の正極とスイッチング素子27の一端27aとの間に設けられ、第2コンデンサ44は、直流電源8の正極と第1リアクトル41との間に設けられてもよい。
【0041】
第2コンデンサ44の静電容量は、第1コンデンサ42の静電容量よりも大きくてもよい。この場合、スイッチング素子27のオン期間中に第1コンデンサ42の電圧をより十分に高めることができる。
【0042】
第2コンデンサ44の静電容量は、スイッチング素子27のオフ期間に第2コンデンサ44の電圧が出力電圧に達するように設定されており、第1コンデンサ42の静電容量は、スイッチング素子27のオン期間に第1コンデンサ42の電圧が出力電圧に達するように設定されていてもよい。この場合、スイッチング素子27のオン期間中に第1コンデンサ42の電圧をより十分に高めることができる。
【0043】
DC-DCコンバータ1は、第1コンデンサ42と、第2コンデンサ44との間において、第1リアクトル41に直列に設けられる第3ダイオード46を更に備えていてもよい。この場合、第1コンデンサ42から第1リアクトル41への電荷の逆流が防止される。このため、スイッチング素子27のオン期間中に第1コンデンサ42の電圧をより十分に高めることができる。
【0044】
DC-DCコンバータ1は、負荷9と、スイッチング素子27の一端27aとの間において、ブロッキングダイオード26に直列に設けられる第2リアクトル51を更に備えていてもよい。この場合、スイッチング素子27がオフからオンに切り替わる際に、スイッチング素子27を流れる電流の上昇が遅らせられる。これにより、スイッチング素子27がオフからオンに切り替わる際の電力消費が抑制される。従って、スイッチングロスを更に抑制することができる。
【0045】
以上のように、DC-DCコンバータ1はスイッチングロスを大幅に低減することが可能で、これにより例えば、単相入力電源用PFC(Power Factor Correction)回路のスイッチングの高速化により小形、低コスト化に寄与する。
【0046】
以上、実施形態について説明したが、本開示は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0047】
1…DC-DCコンバータ、2…昇圧チョッパ回路、8…直流電源、9…負荷、25…リアクトル、26…ブロッキングダイオード、27…スイッチング素子、27a…スイッチング素子27の一端、41…第1リアクトル、42…第1コンデンサ、43…第1ダイオード、43a…第1ダイオード43のアノード端子、43b…第1ダイオード43のカソード端子、44…第2コンデンサ、45…第2ダイオード、45a…第2ダイオード45のアノード端子、45b…第2ダイオード45のカソード端子、46…第3ダイオード、51…第2リアクトル。
図1
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図7