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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】離型フィルムおよび成型品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20230314BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
B32B27/00 L
B32B27/36
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2022139856
(22)【出願日】2022-09-02
【審査請求日】2022-11-07
(31)【優先権主張番号】P 2021193217
(32)【優先日】2021-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】鴻池 昭吾
(72)【発明者】
【氏名】榎本 陽介
【審査官】磯部 洋一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-187934(JP,A)
【文献】特開2015-202662(JP,A)
【文献】特開2016-002730(JP,A)
【文献】特開2018-115310(JP,A)
【文献】特許第6923060(JP,B2)
【文献】特開2017-109306(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の離型面を構成する離型層と、クッション層とが積層してなる積層構造を有する離型フィルムであって、
前記離型層はポリエステル樹脂を30質量%以上含み、かつ、当該ポリエステル樹脂がポリブチレンテレフタレート-ポリテトラメチレングリコール共重合体(PBT-PTMG共重合体)を含むものであって、
前記クッション層は、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリエチレンテレフタレートグリコール樹脂(PETG)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂(PTT)、およびポリヘキサメチレンテレフタレート樹脂(PHT)の中から選ばれる1種または2種以上と、エチレン系コポリマー、α-オレフィン系重合体、α-オレフィン系共重合体、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリメチルペンテン樹脂、ゴム成分の中から選ばれる1種または2種以上と、を含み、かつ、海島構造を有するものであって、
以下の要件1を満たす、離型フィルム。
(要件1)当該離型フィルムについて動的粘弾性測定装置(引張りモード、周波数1Hz、昇温速度5℃/min)で測定される70℃での貯蔵弾性率をA1とし、前記離型フィルムを175℃、120秒、2MPaで処理した後の当該貯蔵弾性率をA2としたとき、 A2/A1≧1.2の関係を満たす。
【請求項2】
少なくとも一方の離型面を構成する離型層と、クッション層とが積層してなる積層構造を有する離型フィルムであって、
前記離型層はポリエステル樹脂を30質量%以上含み、かつ、当該ポリエステル樹脂がポリブチレンテレフタレート(PBT)およびその共重合体を含むものであって、
前記クッション層は、エチレン-メチルアクリレート共重合体(EMA)、および低密度ポリエチレン(LDPE)の中から選ばれる1種または2種を含み、かつ、海島構造を有するものであって、
以下の要件1を満たす、離型フィルム。
(要件1)当該離型フィルムについて動的粘弾性測定装置(引張りモード、周波数1Hz、昇温速度5℃/min)で測定される70℃での貯蔵弾性率をA1とし、前記離型フィルムを175℃、120秒、2MPaで処理した後の当該貯蔵弾性率をA2としたとき、 A2/A1≧1.2の関係を満たす。
【請求項3】
請求項1または2記載の離型フィルムであって、
前記離型層は、前記ポリエステル樹脂として、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリエチレンテレフタレートグリコール樹脂(PETG)、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂(PTT)、およびポリヘキサメチレンテレフタレート樹脂(PHT)の中から選ばれる1種または2種以上を含む、離型フィルム。
【請求項4】
請求項2に記載の離型フィルムであって、
前記クッション層は、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリエチレンテレフタレートグリコール樹脂(PETG)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂(PTT)、およびポリヘキサメチレンテレフタレート樹脂(PHT)の中から選ばれる1種または2種以上を含む、離型フィルム。
【請求項5】
請求項1または2に記載の離型フィルムであって、
前記クッション層の厚み(μm)が前記離型フィルム全体の厚み(μm)に対して50~90%である、離型フィルム。
【請求項6】
請求項1または2に記載の離型フィルムであって、
以下の要件2を満たす、離型フィルム。
(要件2)当該離型フィルムについて動的粘弾性測定装置(引張りモード、周波数1Hz、昇温速度5℃/min)で測定される70℃での損失弾性率をB1とし、前記離型フィルムを175℃、120秒、2MPaで処理した後の当該損失弾性率をB2としたとき、B1<B2の関係を満たす。
【請求項7】
請求項1または2に記載の離型フィルムであって、
以下の要件3を満たす、離型フィルム。
(要件3)当該離型フィルムについて動的粘弾性測定装置(引張りモード、周波数1Hz、昇温速度5℃/min)で測定される100℃での貯蔵弾性率をC1とし、前記離型フィルムを175℃、120秒、2MPaで処理した後の当該貯蔵弾性率をC2としたとき、C2/C1≧1.3の関係を満たす。
【請求項8】
請求項1または2に記載の離型フィルムであって、
以下の要件4を満たす、離型フィルム。
(要件4)当該離型フィルムについて動的粘弾性測定装置(引張りモード、周波数1Hz、昇温速度5℃/min)で測定される150℃での貯蔵弾性率をD1とし、前記離型フィルムを175℃、120秒、2MPaで処理した後の当該貯蔵弾性率をD2としたとき、D2/D1≧1.2の関係を満たす。
【請求項9】
請求項1または2に記載の離型フィルムであって、
前記離型面の算術平均粗さRaが0.1~3.5μmである、離型フィルム。
【請求項10】
請求項1または2に記載の離型フィルムであって、
前記離型フィルムの厚みが50~200μmである、離型フィルム。
【請求項11】
請求項1または2に記載の離型フィルムであって、
ロールツーロール方式に適用される、離型フィルム。
【請求項12】
請求項1または2に記載の離型フィルムであって、
クイックプレス方式に適用される、離型フィルム。
【請求項13】
請求項1または2に記載の離型フィルムの前記一方の離型面が対象物側になるように、前記対象物上に前記離型フィルムを配置する工程と、
前記離型フィルムが配置された前記対象物に対し、加熱プレスを行う工程と、
を含む、成型品の製造方法。
【請求項14】
請求項13に記載の成型品の製造方法であって、
前記離型フィルムを配置する前記工程において、前記対象物の前記離型フィルムが配置される面が、熱硬化性樹脂を含む材料によって形成されている、成型品の製造方法。
【請求項15】
請求項13に記載の成型品の製造方法であって、
前記成型品が、フレキシブル回路基板である、成型品の製造方法。
【請求項16】
請求項13に記載の成型品の製造方法で用いられた前記離型フィルムを粉砕し、離型フィルム用原料に加工する工程と、
当該離型フィルム用原料を用いて、第2離型フィルムを形成する工程と、を有する、離型フィルムの再利用方法。
【請求項17】
請求項16に記載の離型フィルムの再利用方法であって、
前記第2離型フィルムは、第2離型層と、当該第2離型層上に形成された第2クッション層とを有し、
前記第2クッション層は前記フィルム用原料から形成される、離型フィルムの再利用方法。
【請求項18】
請求項13に記載の成型品の製造方法で用いられた前記離型フィルムを粉砕し、フィルム用原料に加工する工程と、
当該フィルム用原料を用いて、第2離型フィルムを形成する工程と、
を有する、第2離型フィルムの製造方法。
【請求項19】
請求項18に記載の第2離型フィルムの製造方法であって、
前記第2離型フィルムは、第2離型層と、当該第2離型層上に形成された第2クッション層とを有し、
前記第2クッション層は前記フィルム用原料から形成される、第2離型フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型フィルムおよび成型品の製造方法に関する。より詳細には、本発明は、離型フィルム、これを用いた成型品の製造方法、離型フィルムの再利用方法および第2離型フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
離型フィルムは、一般的に、成型品を製造する際や異なる材料を貼り合わせた積層体を製造する際に使用される。かかる離型フィルムは、例えば、回路が露出したフレキシブルフィルム(以下「回路露出フィルム」とも称する)に接着剤を介してカバーレイフィルム(以下「CLフィルム」とも称する)を加熱プレスにより接着してフレキシブルプリント回路基板(以下「FPC」とも称する)を作製する際に用いられる。
ここで、接着剤は、熱プレス時に回路面の微細な凹凸を埋めるように流動し、フレキシブルフィルムとカバーレイフィルムとを密着させることができる。かりに、離型フィルムの追従性が不十分であると、接着剤が当該微細な凹凸を充填することができないまま、外部に流出するなどの問題が生じる場合があった。
【0003】
また、近年、ロールツーロール(RtoR)方法等の製造方法による、FPCの製造の自動化、生産性の向上が図られている。例えば、特許文献1には、ロールツーロールによるシワの発生に着目し、これを抑制するため、離型層がクッション層の両面に積層された多層離型フィルムであって、前記離型層がポリブチレンテレフタレート(A)を主成分とし、かつ厚みが32~73μmの範囲にあり、23℃における引張弾性率が1100~1400MPaである多層離型フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-214028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、回路基板の微細化、薄膜化が進み、離型フィルムの各種特性について要求される技術水準は、ますます高くなっている。また、製造工程の高速化等により、離型フィルムの剥離時に過度な応力が生じる場合があった。
そのため特許文献1に開示されるような従来の離型フィルムでは、追従性および離型性を高水準で両立させる点で改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、離型フィルムの剥離時には高い離型性を発揮して、剥離による応力を軽減しつつも、熱プレス時には微細な凹凸に密着できる良好な追従性が得られる離型フィルムの開発に着目し鋭意検討を行った。
その結果、ポリエステル樹脂を30質量%以上含む離型層を備える離型フィルムの動的粘弾性測定における挙動を制御することが、かかる良好な追従性と高い離型性を両立する離型フィルムを実現する観点から有効であることを見出した。
そこで、本発明者は、動的粘弾性測定における挙動に着目し、新たな指標を考案して本発明の離型フィルムの特異な性質を具現化することで、本発明を完成させた。換言すると、本発明の離型フィルムは、動的粘弾性測定における挙動が制御されることによって、熱プレス時には良好な追従性を発揮しつつ、剥離時には高い離型性を発揮できるという特異な性質を発揮できる。
【0007】
本発明によれば、以下の離型フィルム、これを用いた成型品の製造方法、離型フィルムの再利用方法、および第2離型フィルムの製造方法に関する技術が提供される。
【0008】
[1] 少なくとも一方の離型面を構成する離型層を有する離型フィルムであって、
前記離型層はポリエステル樹脂を30質量%以上含み、
以下の要件1を満たす、離型フィルム。
(要件1)当該離型フィルムについて動的粘弾性測定装置(引張りモード、周波数1Hz、昇温速度5℃/min)で測定される70℃での貯蔵弾性率をA1とし、前記離型フィルムを175℃、120秒、2MPaで処理した後の当該貯蔵弾性率をA2としたとき、
A2/A1≧1.2の関係を満たす。
[2] [1]記載の離型フィルムであって、
前記離型層は、前記ポリエステル樹脂として、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリエチレンテレフタレートグリコール樹脂(PETG)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂(PTT)、およびポリヘキサメチレンテレフタレート樹脂(PHT)の中から選ばれる1種または2種以上を含む、離型フィルム。
[3] [1]または[2]に記載の離型フィルムであって、
さらにクッション層を有し、前記クッション層が海島構造を有する、離型フィルム。
[4] [3]に記載の離型フィルムであって、
前記クッション層は、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリエチレンテレフタレートグリコール樹脂(PETG)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂(PTT)、およびポリヘキサメチレンテレフタレート樹脂(PHT)の中から選ばれる1種または2種以上を含む、離型フィルム。
[5] [3]または[4]に記載の離型フィルムであって、
前記クッション層の厚み(μm)が前記離型フィルム全体の厚み(μm)に対して50~90%である、離型フィルム。
[6] [1]乃至[5]いずれか一つに記載の離型フィルムであって、
以下の要件2を満たす、離型フィルム。
(要件2)当該離型フィルムについて動的粘弾性測定装置(引張りモード、周波数1Hz、昇温速度5℃/min)で測定される70℃での損失弾性率をB1とし、前記離型フィルムを175℃、120秒、2MPaで処理した後の当該貯損失弾性率をB2としたとき、B1<B2の関係を満たす。
[7] [1]乃至[6]いずれか一つに記載の離型フィルムであって、
以下の要件3を満たす、離型フィルム。
(要件3)当該離型フィルムについて動的粘弾性測定装置(引張りモード、周波数1Hz、昇温速度5℃/min)で測定される100℃での貯蔵弾性率をC1とし、前記離型フィルムを175℃、120秒、2MPaで処理した後の当該貯蔵弾性率をC2としたとき、C2/C1≧1.3の関係を満たす。
[8] [1]乃至[7]いずれか一つに記載の離型フィルムであって、
以下の要件4を満たす、離型フィルム。
(要件4)当該離型フィルムについて動的粘弾性測定装置(引張りモード、周波数1Hz、昇温速度5℃/min)で測定される150℃での貯蔵弾性率をD1とし、前記離型フィルムを175℃、120秒、2MPaで処理した後の当該貯蔵弾性率をD2としたとき、D2/D1≧1.2の関係を満たす。
[9] [1]乃至[8]いずれか一つに記載の離型フィルムであって、
前記離型面の算術平均粗さRaが0.1~3.5μmである、離型フィルム。
[10] [1]乃至[9]いずれか一つに記載の離型フィルムであって、
前記離型フィルムの厚みが50~200μmである、離型フィルム。
[11] [1]乃至[10]いずれか一つに記載の離型フィルムであって、
ロールツーロール方式に適用される、離型フィルム。
[12] [1]乃至[10]いずれか一つに記載の離型フィルムであって、
クイックプレス方式に適用される、離型フィルム。
[13] [1]乃至[12]いずれか一つに記載の離型フィルムの前記一方の離型面が対象物側になるように、前記対象物上に前記離型フィルムを配置する工程と、
前記離型フィルムが配置された前記対象物に対し、加熱プレスを行う工程と、
を含む、成型品の製造方法。
[14] [13]に記載の成型品の製造方法であって、
前記離型フィルムを配置する前記工程において、前記対象物の前記離型フィルムが配置される面が、熱硬化性樹脂を含む材料によって形成されている、成型品の製造方法。
[15] [13]または[14]に記載の成型品の製造方法であって、
前記成型品が、フレキシブル回路基板である、成型品の製造方法。
[16] [13]乃至[15]いずれ一つに記載の成型品の製造方法で用いられた前記離型フィルムを粉砕し、離型フィルム用原料に加工する工程と、
当該離型フィルム用原料を用いて、第2離型フィルムを形成する工程と、を有する、離型フィルムの再利用方法。
[17] [16]に記載の離型フィルムの再利用方法であって、
前記第2離型フィルムは、第2離型層と、当該第2離型層上に形成された第2クッション層とを有し、
前記第2クッション層は前記フィルム用原料から形成される、離型フィルムの再利用方法。
[18] [13]乃至[15]いずれ一つに記載の成型品の製造方法で用いられた前記離型フィルムを粉砕し、フィルム用原料に加工する工程と、
当該フィルム用原料を用いて、第2離型フィルムを形成する工程と、
を有する、第2離型フィルムの製造方法。
[19] [18]に記載の第2離型フィルムの製造方法であって、
前記第2離型フィルムは、第2離型層と、当該第2離型層上に形成された第2クッション層とを有し、
前記第2クッション層は前記フィルム用原料から形成される、第2離型フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、良好な追従性と高い離型性を両立する離型フィルムが提供される。また、本発明によれば、再利用可能な離型フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態の離型フィルムの断面を模式的に示す断面図である。
図2】本実施形態の離型フィルムの使用方法の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。図面はあくまで説明用のものであり、図面中の各部材の形状や寸法比などは、必ずしも現実の物品と対応するものではない。
【0012】
本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下のことを表す。例えば、「1~5質量%」とは「1質量%以上5質量%以下」を意味する。また、本明細書中、MD方向とはMachine Directionを表し、樹脂の流れ方向を意図し、TD方向とは、Transverse Directionを表し、MD方向に対して直交する方向を意図する。
【0013】
<離型フィルム>
図1は、本実施形態の離型フィルムの断面を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、離型フィルム10は、ポリエステル樹脂を30質量%以上含む離型層1と、クッション層3と、離型層2とが、厚み方向にこの順で積層した積層構造を有する。また、離型層1は、離型フィルム10の一方の面に配されており、離型層2は、離型フィルム10の他方の面に配されて、副離型層ともいう。
【0014】
本実施形態において、離型フィルム10は、回路等を備えた成型対象物に対し、離型層1側が接するように配置される。すなわち、成型対象物に接する側の面を、離型フィルム10の第1の離型面とし、成型対象物に接する側の面とは反対側の面を、離型フィルム10の第2の離型面とする。
【0015】
また、離型フィルム10を配置する前段階における上記成型対象物の表面は、通常、半硬化状態にある熱硬化性樹脂を含む材料によって形成されている。
離型フィルム10は、上記半硬化状態にある熱硬化性樹脂を含む材料によって形成された成型対象物の表面上に配置して用いる。そして、成型対象物の表面に離型フィルム10を配置した状態で、加熱プレスを行うことで、所望の成型品を得ることができる。
【0016】
離型フィルム10は、以下の要件1を満たす。
(要件1)離型フィルム10について動的粘弾性測定装置(引張りモード、周波数1Hz、昇温速度5℃/min)で測定される70℃での貯蔵弾性率をA1とし、離型フィルム10を175℃、120秒、2MPaで処理した後の当該貯蔵弾性率をA2としたとき、A2/A1≧1.2の関係を満たす。
【0017】
要件1の175℃、120秒、2MPaは、離型フィルム10を使用した熱プレスを想定した処理である。すなわち、要件1は、離型フィルム10を使用した熱プレス前後において、70℃での貯蔵弾性率A1が上昇することを意図している。
これにより、本実施形態の離型フィルム10は、熱プレス前には良好な追従性を得つつも、熱プレス後には上昇した貯蔵弾性率A1により高い離型性が得られる。かかるメカニズムの詳細は明らかではないが、離型フィルム10の離型層1がポリエステル樹脂を30質量%以上含むことで、熱プレス時の熱によりポリエステル樹脂の結晶化が進行することで貯蔵弾性率A1を効果的に向上できると推測される。
【0018】
また、本実施形態の離型フィルム10は、熱プレス後にポリエステル樹脂の結晶化が進行するため、使用後の離型フィルム10は比較的高い貯蔵弾性率を有する。そこで、使用済みの離型フィルム10を粉砕し、フィルム用の原料に加工した後、再度、離型フィルムに加工した場合であっても、良好な離型性が得られやすくなる。これにより、離型フィルム10の再利用性を高めることができる。
【0019】
本実施形態において、離型フィルム10は、A2/A1≧1.2を満たすが、好ましくはA2/A1≧1.3であり、より好ましくはA2/A1≧1.4である。
一方、A2/A1の上限値は特に限定されないが、良好な取扱性や加工性等を保持する観点から、5.0以下であることが好ましく、4.0以下であることがより好ましく、安定した追従性および離型性のバランスを得る観点から、3.8以下であることがさらに好ましい。
【0020】
貯蔵弾性率A1は、100~500MPaであることが好ましく、120~300MPaであることがより好ましい。貯蔵弾性率A1をかかる数値範囲とすることで、良好な離型性を保持しつつ、良好な追従性が得られる。
貯蔵弾性率A2は、200~800MPaであることが好ましく、300~650MPaであることがより好ましい。貯蔵弾性率A2をかかる数値範囲とすることで、高い離型性が得られる。また、使用済みの離型フィルム10の再利用性を高めることができる。
【0021】
離型フィルム10は、さらに以下の要件2を満たすことが好ましい。これにより、高い離型性を保持しつつ、追従性を向上しやすくなる。すなわち、離型フィルム10の70℃での損失弾性率を制御することで、粘性、柔軟性といった特性が制御しやすくなり、より追従性が得られやすくなる。
(要件2)離型フィルム10について動的粘弾性測定装置(引張りモード、周波数1Hz、昇温速度5℃/min)で測定される70℃での損失弾性率をB1とし、離型フィルム10を175℃、120秒、2MPaで処理した後の当該貯損失弾性率をB2としたとき、B1<B2の関係を満たす。
【0022】
本実施形態において、離型フィルム10は、B1<B2を満たすことが好ましく、より好ましくはB2/B1≧1.05であり、さらに好ましくはB2/B1≧1.10である。
一方、B2/B1の上限値は特に限定されないが、良好な取扱性や加工性等を保持する観点から、6.0以下であることが好ましく、5.0以下であることがより好ましい。
【0023】
損失弾性率B1は、10~80MPaであることが好ましく、20~50MPaであることがより好ましい。損失弾性率B1をかかる数値範囲とすることで、良好な離型性を保持しつつ、追従性を向上しやすくなる。
損失弾性率B2は、20~160MPaであることが好ましく、30~140MPaであることがより好ましい。損失弾性率B2をかかる数値範囲とすることで、高い離型性と追従性を両立できる。また、使用済みの離型フィルム10の再利用性を高めることができる。
【0024】
離型フィルム10は、さらに以下の要件3を満たすことが好ましい。これにより、一層高い離型性が安定的に得られる。
(要件3)離型フィルム10について動的粘弾性測定装置(引張りモード、周波数1Hz、昇温速度5℃/min)で測定される100℃での貯蔵弾性率をC1とし、離型フィルム10を175℃、120秒、2MPaで処理した後の当該貯蔵弾性率をC2としたとき、C2/C1≧1.5の関係を満たす。
【0025】
本実施形態において、離型フィルム10は、C2/C1≧1.3を満たすことが好ましく、より好ましくはC2/C1≧1.4であり、さらに好ましくはC2/C1≧1.5である。
一方、C2/C1の上限値は特に限定されないが、良好な取扱性や加工性等を保持する観点から、5.0以下であることが好ましく、2.0以下であることがより好ましい。
【0026】
貯蔵弾性率C1は、50~250MPaであることが好ましく、70~200MPaであることがより好ましい。貯蔵弾性率C1をかかる数値範囲とすることで、良好な離型性を保持しつつ、追従性を向上しやすくなる。
貯蔵弾性率C2は、90~300MPaであることが好ましく、100~270MPaであることがより好ましく、120~250MPaであることがさらに好ましい。貯蔵弾性率C2をかかる数値範囲とすることで、高い離型性と追従性を両立できる。また、使用済みの離型フィルム10の再利用性を高めることができる。
【0027】
離型フィルム10は、さらに以下の要件4を満たすことが好ましい。これにより、高い離型性が安定的に得られるとともに、離型フィルム10の再利用性を高めることができる。
(要件4)当該離型フィルムについて動的粘弾性測定装置(引張りモード、周波数1Hz、昇温速度5℃/min)で測定される150℃での貯蔵弾性率をD1とし、前記離型フィルムを175℃、120秒、2MPaで処理した後の当該貯蔵弾性率をD2としたとき、D2/D1≧1.2の関係を満たす。
【0028】
本実施形態において、離型フィルム10は、D2/D1≧1.2であることが好ましく、D2/D1≧1.3であることがより好ましい。
【0029】
貯蔵弾性率D1は、100~500MPaであることが好ましく、120~300MPaであることがより好ましい。貯蔵弾性率D1をかかる数値範囲とすることで、良好な離型性を保持しつつ、良好な追従性が得られる。
貯蔵弾性率D2は、200~800MPaであることが好ましく、300~650MPaであることがより好ましい。貯蔵弾性率D2をかかる数値範囲とすることで、高い離型性が得られる。また、使用済みの離型フィルム10の再利用性を高めることができる。
【0030】
上記の要件1~4を満たす離型フィルム10は、例えば、離型層1およびクッション層3を構成する樹脂材料の選択および組み合わせ、離型フィルム10および各層の厚み等を制御するといった公知の方法を組み合わせることによって実現できる。また、離型性を向上させるため、離型層1の離型面の表面粗さを制御してもよい。
【0031】
離型フィルム10の全体の厚みは、好ましくは50μm以上200μm以下であり、より好ましくは80μm以上150μm以下であり、さらに好ましくは100μm以上120μm以下である。こうすることで、成型品の作製時にプレス圧を離型フィルム10に対してムラなく均一に印加することが可能となる。これにより、弾性率を効果的に高めることができる。また、離型フィルム10の全体の厚みを上記下限値以上とすることで、離型性を向上しやすくなり、一方、離型フィルム10の全体の厚みを上記上限値以下とすることで、離型性と追従性のバランスを図りやすくなる。
【0032】
以下、各層について詳述する。
【0033】
・離型層1(第1の離型層)
離型層1は、離型フィルム10を用いて加熱プレスを行う際に、成型対象物に接する面(第1の離型面)を形成する層である。
【0034】
離型層1はポリエステル樹脂を30質量%以上含む。すなわち、離型層1はポリエステル樹脂を30質量%以上含む樹脂組成物から形成される。これにより、熱プレス時にポリエステル樹脂の結晶化が進行し、熱プレス後の弾性率を高くすることができる。その結果、離型性を向上できる。
離型層1はポリエステル樹脂を、好ましくは40質量%以上含み、より好ましくは50質量%以上含み、さらに好ましくは70質量%以上含み、ことさらに好ましくは90質量%以上含む。これにより、耐熱性をより高めることができ、離型性を向上しやすくなる。
【0035】
本実施形態のポリエステル樹脂は、酸成分としてテレフタル酸等の2価の酸またはエステル形成能を持つ誘導体を用い、グリコール成分として炭素数2~10のグリコール、2価のアルコールまたはエステル形成能を有する誘導体を用いて得ることが出来るポリエステルをいう。
【0036】
上記のポリエステル樹脂として、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリエチレンテレフタレートグリコール樹脂(PETG)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂(PTT)、およびポリヘキサメチレンテレフタレート樹脂(PHT)の中から選ばれる1種または2種以上、またはこれらの樹脂をベースとした共重合体が挙げられる。なかでも、PBT、PETG、およびPBT-PTMG共重合体を含むことが好ましく、PBTおよびPBT-PTMG共重合体を併用することがより好ましい。
PBTは、結晶化速度が比較的速いことから、熱プレス中に十分に結晶化を起こすことができ、離型フィルム10の貯蔵弾性率の上昇に寄与する。これにより離型フィルム10の剛性が上昇し、離型性を向上することができる。また、2種以上のポリエステル樹脂を含むことで、両者の反応を利用した貯蔵弾性率の上昇作用が得られる場合がある。
PBT-PTMG共重合体としては、特に限定されないが、250℃、2.16kgでのMFRが5~80(cm/10min)であることが好ましく、20~60(cm/10min)であることがより好ましく、30~50(cm/10min)であることがさらに好ましい。
【0037】
また、さらに、PETG以外の非晶性ポリエステルを含んでもよい。非晶性ポリエステルは熱プレス温度で貯蔵弾性率が低下するため、対象物に対する追従性を良好にできる。
非晶性ポリエステルは、具体的には、ポリエチレンテレフタレートのエチレングリコールをシクロヘキサンジメタノールで置換した構造である1,4-シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート、イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCTG)等が挙げられる。
【0038】
離型層1は、上記のポリエステル樹脂のほか、他の熱可塑性樹脂、酸化防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、染料および顔料等着色剤、安定剤等の添加剤、フッ素樹脂、シリコンゴム等の耐衝撃性付与剤、有機また無機粒子を含有させてもよい。
【0039】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリ4-メチル1-ペンテン樹脂(ポリメチルペンテン樹脂)、シンジオタクチックポリスチレン樹脂(SPS)、ポリプロピレン樹脂(PP)及び他の成分を共重合した共重合体樹脂等が挙げられる。これらは、1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
本実施形態において、離型層1は粒子を含んでもよい。これにより、離型性および適度な強度が得られ、また、離型フィルム10のシワや気泡が発生することを抑制し良好な外観が得られる。
粒子の平均粒径d50は、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上であり、さらに好ましくは8μm以上である。一方、粒子の平均粒径d50は、好ましくは35μm以下、より好ましくは25μm以下であり、さらに好ましくは18μm以下である。
粒子の平均粒径d50を上記下限値以上とすることで、離型フィルム10の剛性を向上させるとともに、表面粗化したFPCとの離型性を向上させることができる。一方、粒子の平均粒径d50を上記上限値以下とすることで、離型性と追従性とのバランスを良好にし、仕上がり外観が良好な成型品を作製することができる。
【0041】
粒子は、離型フィルム10の剛性を向上させる観点から、無機粒子であることが好ましい。
無機粒子としては、結晶性シリカ、非晶性シリカ、および溶融シリカなどのシリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、アルミナ、窒化アルミニウム、ほう酸アルミウイスカ、窒化ホウ素、アンチモン酸化物、Eガラス、Dガラス、Sガラス、およびゼオライトからなる群から得られる1種または2種以上を用いてなる粒子が挙げられる。無機粒子は、1種類のみの粒子を単独で使用してもよいし、異なる種類の粒子を併用してもよい。無機粒子は、樹脂との密着性を向上させる目的でシランカップリング剤など用いて表面処理を行ってもよいし、分散性を向上させる目的で無機粒子に有機被膜処理を行ったコアシェル型粒子を用いてもよい。
離型フィルムの剛性を向上させる観点から、結晶性シリカ、非晶性シリカ、および溶融シリカなどのシリカであることが好ましく、球状の溶融シリカであることがより好ましい。
【0042】
離型層1全量に対する粒子の含有量は、0.1重量%以上30重量%以下であることが好ましく、1重量%以上20重量%以下であることがより好ましく、5重量%以上15重量%以下であることがさらに好ましい。
離型層1の粒子の含有量を上記下限値以上とすることにより、良好な離型性が得られやすくなり、一方、離型層1の粒子の含有量を上記上限値以下とすることにより、良好な離型性を保持しつつ、コストダウンを図ることができる。
【0043】
離型層1の厚み(μm)は、離型フィルム10全体の厚みに対して、15%以下であり、12%以下が好ましく、10%以下がより好ましい。これにより、後述するクッション層3の変形に対して、離型層1の変形が容易となり接着剤の流れ出しを高度に抑制できる。一方、離型層1の厚み(μm)は、離型フィルム10全体の厚みに対して、4%以上が好ましく、5%以上がより好ましい。これにより、離型フィルム10の良好な離型性が保持できる。
【0044】
また、離型層1の厚みは、適度な強度を得る観点から、好ましくは3μm以上であり、より好ましくは7μm以上であり、さらに好ましくは10μm以上である。一方、成型品に対する埋め込み性を向上させる観点から、離型層1の厚みは、好ましくは35μm以下であり、より好ましくは30μm以下であり、さらに好ましくは25μm以下である。
離型層1の厚みを上記下限値以上とすることにより、良好な離型性が得られやすくなり、一方、離型層1の厚みを上記上限値以下とすることにより、良好な追従性が得られやすくなるとともに、コストダウンを図ることができる。
【0045】
離型フィルム10の第1の離型面の算術平均粗さRaは、0.1~3.5μmが好ましく、0.5~3.0μmがより好ましく、1.0~2.5μmがさらに好ましい。
算術平均粗さRaを上記下限値以上とすることにより、離型性を高めることができる。一方、算術平均粗さRaを上記上限値以下とすることにより、追従性を良好に保持することができるようになる。
なお、算術平均粗さRaは、JIS B 0601(1994)に準じて測定することができる。
【0046】
また、離型フィルム10における算術平均粗さRaは、離型層1に含まれる粒子の粒径、粒子の含有量、離型フィルム10及び離型層1の厚みや離型フィルム10の製造法を制御することによって調整することができる。すなわち、例えば、粒子の粒径が離型層1の厚みよりも大きければ、離型フィルム10の第1の離型面において当該粒子による凹凸が顕著になる傾向があり、また、粒子の含有量が多ければ離型フィルム10の第1の離型面に粒子による凹凸が顕著になる傾向が得られる。
【0047】
・離型層2
離型層2は、離型フィルム10を用いて加熱プレスを行う際に、プレス熱板と接する面(第2の離型面)を形成する層である。
【0048】
離型層2は、樹脂組成物を用いて形成される。離型層2で用いられる樹脂組成物は、上記離型層1で説明したのと同様の樹脂組成物を用いることができる。離型層1と離型層2で用いられる樹脂組成物は、同じであってもよく、異なっていてもよい。また、離型層2は、離型層1と同様の材料を用いて形成されてもよく、異なっていてもよい。
【0049】
また、離型層2は、離型層1と同様に粒子を含んでもよい。粒子の平均粒径d50および含有量は、離型層1と同じであってもよく、また異なるものであってもよい。
【0050】
離型層2の厚みは、適度な強度を得る観点から、好ましくは10μm以上であり、より好ましくは15μm以上である。一方、成型品に対する埋め込み性を向上させる観点から、離型層2の厚みは、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは40μm以下である。
離型層2の厚みは、離型層1の厚みと同じであってもよく、異なっていてもよい。
離型フィルム10の表裏の区別をなくし取扱性を簡便にする観点から、離型層2の厚みは、離型層1の厚みと同じであることが好ましく、くわえて同じ材料・組成であることがより好ましい。
【0051】
・クッション層3
クッション層3は、離型層1と離型層2との間に介在する。クッション層3は、良好な追従性を付与しつつ、離型フィルム10全体に適度なコシを付与するものである。
【0052】
クッション層3は、樹脂組成物を用いて形成される。クッション層3を形成する樹脂組成物は、ポリエステル樹脂を含むことが好ましい。
ポリエステル樹脂としては、上記の離型層1で挙げたものと同様のものを用いることができる。なかでも、クッション層3は、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリエチレンテレフタレートグリコール樹脂(PETG)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)の中から選ばれる1種または2種以上を含むことが好ましく、2種以上を併用することがより好ましい。なかでもポリエチレンテレフタレートグリコール樹脂(PETG)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)を併用することが好ましい。これにより、エステル交換反応がより進行しやすくなり、熱プレス後の弾性率の向上率を高めることができる。
【0053】
またさらに、クッション層は、エチレン系コポリマー;ポリエチレン、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロプレン(PP)等のα-オレフィン系重合体;プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、メチルペンテン等を重合体成分として有するα-オレフィン系共重合体;ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)等のエンジニアリングプラスチックス系樹脂;ポリメチルペンテン樹脂;ゴム成分等の中から選ばれる1種または2種以上を含んでもよい。なかでも、エチレン-メチルメタクリレート共重合体(EMMA)、エチレン-メチルアクリレート共重合体(EMA)、低密度ポリエチレン(LDPE)の中から選ばれる1種または2種以上を含むことが好ましい。
【0054】
上記のエチレン系コポリマーとしては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、エチレン-メチルメタクリレート共重合体(EMMA)、エチレン-エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン-メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン-エチルアクリレート-無水マレイン酸共重合体(E-EA-MAH)、エチレン-アクリレート共重合体(EAA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレンシクロオレフィン共重合体(COC)、及びアイオノマー樹脂(ION)の中から選ばれる1種または2種以上が挙げられる。
【0055】
上記のゴム成分としては、例えば、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体等のスチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、アミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等の熱可塑性エラストマー材料、天然ゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、シリコンゴム等のゴム材料等が挙げられる。
【0056】
クッション層3を構成する混合物としては、たとえば、ポリエステル樹脂、およびα-オレフィン系重合体の混合物、ポリエステル樹脂、α-オレフィン系重合体およびエチレンコポリマーの混合物、ポリエステル樹脂、α-オレフィン系重合体およびゴム成分の混合物、ポリエステル樹脂、およびポリアミド樹脂混合物等が挙げられ、より具体的には、PBT、PETG、およびα-オレフィン系重合体の混合物、PBT、α-オレフィン系重合体およびゴム成分の混合物、PBT、エチレン系コポリマー及びα-オレフィン系重合体の混合物などが挙げられる。
【0057】
クッション層3には、酸化防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、染料および顔料等の着色剤、安定剤等の添加剤、フッ素樹脂、シリコンゴム等の耐衝撃性付与剤、酸化チタン、炭酸カルシウム、タルク等の無機充填剤を含有させてもよい。また、複数の樹脂の相溶性を制御するため、相溶化剤を含有させてもよい。
【0058】
本実施形態においてクッション層3は、海島構造を有することが好ましい。すなわち、クッション層3は特性の異なる2種以上の樹脂を用いて形成されたものであり、一方の樹脂が分散相を形成し、他方の樹脂が連続相を形成することが好ましい。海島構造を有することでクッション性が得られやすくなり、離型性を高めつつも良好な追従性を保持できるようになる。また、熱プレスにより島構造が凝集し、離型フィルム10の弾性率を向上させ、離型性を高めることができると推測される。
例えば、連続相(海部)をポリオレフィン樹脂とし、分散相(島部)をポリエステル樹脂としてもよく、分散相(島部)をポリオレフィン樹脂とし、連続相(海部)をポリエステル樹脂としてもよい。
【0059】
海島構造は、クッション層3の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)や透過電子顕微鏡(TEM)を用いて観察することで確認できる。
【0060】
クッション層3の厚み(μm)は、離型フィルム10全体の厚み(μm)に対して、50~90%であることが好ましく、55~87%であることがより好ましく、60~85%であることがさらに好ましい。
クッション層3の厚さの割合(%)を上記下限値以上とすることにより、離型フィルム10の良好なクッション性が素早く得られ、接着剤の流れ出しを抑制でき、追従性が良好になる。一方、クッション層3の厚さの割合(%)を上記上限値以下とすることにより、離型性を良好に維持でき、加熱プレスによりクッション層3自体が流れ出すことを抑制できる。
【0061】
また、クッション層3の厚みは、30μm以上であることが好ましく、45μm以上であることがより好ましく、60μm以上であることがさらに好ましく、75μm以上であることがことさらに好ましい。
また、クッション層3の厚みは、150μm以下であることが好ましく、120μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることがさらに好ましい。
クッション層3の厚さを上記下限値以上とすることにより、離型フィルム10のクッション性が素早く得られ、接着剤の流れ出しを抑制でき、追従性が良好になる。一方、クッション層3の厚さを上記上限値以下とすることにより、離型性を良好に維持できる。
【0062】
クッション層3を形成する方法としては、例えば、空冷または水冷インフレーション押出法、Tダイ押出法等の公知の方法が挙げられる。
【0063】
<離型フィルム10の製造方法>
離型フィルム10は、共押出法、押出ラミネート法、ドライラミネート法、インフレーション法等公知の方法を用いて作製することができる。また、離型フィルム10は、離型層1と、クッション層3と、離型層2との各層を、別々に製造してからラミネーター等により接合してもよいが、空冷式または水冷式共押出インフレーション法、共押出Tダイ法で成膜することが好ましい。なかでも、共押出Tダイ法で成膜する方法が各層の厚さ制御に優れる点で特に好ましい。また、離型層1と、クッション層3と、離型層2とをそのまま接合してもよいし、接着層を介して接合してもよい。
【0064】
<成型品の製造方法および離型フィルムの使用方法>
次に、本実施形態の成型品の製造方法について説明する。
本実施形態の成型品の製造方法は、上述した離型フィルム10の一方の離型面(離型層1の離型面)が対象物側になるように、対象物上に離型フィルム10を配置する工程と、離型フィルム10が配置された対象物に対し、加熱プレスを行う工程と、を含み、離型フィルム10を配置する前記工程において、対象物の離型フィルム10が配置される面が、熱硬化性樹脂を含む材料によって形成されているものである。
また、離型フィルム10を配置する前記工程の後、離型フィルム10の第2の離型層の離型面(離型層2の離型面)上に資材を配置する工程をさらに含んでもよい。
なお、加熱プレスの条件は、公知の方法を用いることができる。
【0065】
かかる本実施形態の成型品の製造方法を、たとえば、フレキシブルプリント回路基板を作製する際に使用する例について説明する。
この場合、離型フィルム10は、フレキシブルフィルム上に形成された回路を保護するため、当該回路に対してカバーレイフィルムを加熱プレスして密着させる際に、カバーレイとプレス機との間に介在させて使用する。
具体的には、離型フィルム10は、例えば、フレキシブルプリント配線基板の製造工程の一つであるカバーレイプレスラミネート工程において用いられる。より詳細には、離型フィルム10は、回路露出フィルムへのカバーレイフィルム接着時にカバーレイフィルムを回路パターンの凹凸部に密着させるためにカバーレイフィルムを包むように配置され、回路露出フィルム及びカバーレイフィルムと共にプレス機により加熱加圧される。
この時、クッション性の向上のために、紙、ゴム、フッ素樹脂シート、ガラスペーパー等、またはこれらを組合せた資材を離型フィルム10とプレス機の間に挿入した上で加熱加圧することもできる。
【0066】
また、本実施形態の離型フィルム10は、上述した成型品を作製するために以下の方法で使用してもよい。
まず、熱硬化性樹脂を含む材料によって形成されている対象物の表面に対して、上記本実施形態に係る離型フィルム10の離型層1における第1の離型面を配置する。次に、離型フィルム10の離型層2における第2の離型面上に、紙、ゴム、フッ素樹脂シート、ガラスペーパー等、またはこれらを組合せた資材を配置する。その後、離型フィルム10を配置した対象物に対し、金型内でプレス処理を行う。ここで、上述した熱硬化性樹脂は、半硬化状態であっても、硬化状態であってもよいが、半硬化状態であると、当該離型フィルム10の作用効果が一層顕著なものとなる。特に、熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂を含む樹脂組成物である場合には、当該エポキシ樹脂が、硬化反応の中間の段階にあること、すなわち、Bステージ状態にあることが好ましい。
【0067】
また、本実施形態の離型フィルムは、ロールツーロール方式、クイックプレス方式、多段プレス方式等公知の方式に適用することができる。なかでも、ロールツーロール方式、またはクイックプレス方式に適用されることで、離型フィルム10による高い剥離性および良好な追従性が得られやすくなる。
なお、ロールツーロール方式は、プレスする方式が自動化され、離型フィルムやFPCが自動搬送される。常時所定の温度に加熱しておき、熱プレス後すぐに剥離される。クイックプレス方式は、プレス板の上下にクッションシートを取り付けたプレス成形機を、常時所定の温度に加熱しておき、FPC等の対象物を1面でプレス成形機にセットして熱プレスを行う方法である。多段プレス方式は、室温付近のプレス成形機に、複数のFPCをクッションシートを介して重ねてセットし、加圧・昇温後、冷却する過程を経て、熱プレスを行う方法である。
【0068】
<離型フィルムの再利用方法>
次に、本実施形態の離型フィルム10の再利用方法について説明する。
本実施形態の離型フィルム10の再利用方法は、上述の成型品の製造方法で用いられた離型フィルム10を粉砕し、離型フィルム用原料に加工する工程と、
当該離型フィルム用原料を用いて、第2離型フィルムを形成する工程と、
を有する。
【0069】
使用済みの離型フィルム10は、公知の方法で粉砕することができる。例えば、使用済みの離型フィルム10の異物及び汚れを公知の方法で洗浄または除去した後、公知の粉砕機を使用して、例えば、1~50mmに切断・粉砕する。使用済みの離型フィルム10は、枚葉状またはロール状のいずれであってもよい。
次に、粉砕された使用済みの離型フィルム10を公知の方法で加熱溶融し、フィルム用原料に加工する。この際、異物等がある場合、フィルターなどを用いてこれを除去する。
その後、得られたフィルム用原料を用いて、離型フィルム10の製造方法と同様にして、共押出法、押出ラミネート法、ドライラミネート法、インフレーション法等公知の方法を用いて、新たに第2離型フィルムを製造することができる。
【0070】
フィルム用原料には、加工性、保存性を得る点などから、酸化防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、染料および顔料等の着色剤、安定剤等の公知の添加剤を含有させてもよい。
【0071】
また、第2離型フィルムは、第2離型層、および第2離型層上に形成された第2クッション層を有することが好適である。第2クッション層は、上記フィルム用原料を用いて形成することが好ましい。これにより、第2離型フィルムの離型性などの特性を良好にできる。第2離型フィルムの用途としては、例えば、補強板などを貼り合わせる際に、金型と補強板との間に配置される用途等が挙げられる。
【0072】
第2離型層としては、上記離型層1で説明したのと同様の樹脂組成物を用いることができ、離型層1と同様に粒子を含んでもよい。
また、第2離型フィルムは、第2離型フィルムとは反対側の面に第2副離型層をさらに有していてもよい。第2副離型層としては、上記離型層2で説明したのと同様の樹脂組成物を用いることができ、離型層2と同様に粒子を含んでもよい。その他、第2離型フィルムの厚み、および各離型層および第2クッション層の材料等は、公知のものとすることができる。
【0073】
<第2離型フィルムの製造方法>
本実施形態の第2離型フィルムの製造方法は、上述の成型品の製造方法で用いられた離型フィルム10を粉砕し、フィルム用原料に加工する工程と、
当該フィルム用原料を用いて、第2離型フィルムを形成する工程と、
を有する。
また、本実施形態の第2離型フィルムは、第2離型層と、当該第2離型層上に形成された第2クッション層とを有し、前記第2クッション層は前記フィルム用原料から形成されるものとすることが好ましい。
フィルムの形成方法は、離型フィルム10の製造方法と同様に、公知の方法を用いることができる。
【0074】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0075】
本実施形態において、離型フィルム10は、離型層1と、クッション層3と、離型層2とが厚み方向にこの順で積層してなる積層構造を有したものについて説明したが、これに限られない。
例えば、離型フィルムは、接着層、ガスバリア層等を有する4層、5層等の4層以上の構成であってもよい。この場合、接着層、ガスバリア層としては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。
【0076】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
【実施例
【0077】
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0078】
<離型フィルム>
以下のようにして、表1に示す構成の各離型フィルムを作製した。
【0079】
(1)離型層1、2の原料
・ポリブチレンテレフタレート(PBT):品番1100-211S(CHANG CHUN PLASTICS製)
・ポリブチレンテレフタレート-ポリテトラメチレングリコール共重合体共重合(PBT-PTMG共重合体):品番5510S(三菱エンジニアリングプラスチックス製、MFR33cm/10min(260℃、2.16kg))
・ポリメチルペンテン(TPX):品番RT31(三井化学製)
(2)クッション層3の原料
・ポリブチレンテレフタレート(PBT):品番1100-211S(CHANG CHUN PLASTICS製)
・低密度ポリエチレン(LDPE):品番R500(宇部丸善ポリエチレン製)
・エチレン-メチルアクリレート共重合体(EMA):品番EB140F(日本ポリエチレン製)
・ポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG):品番S2008(SKchemicals製)
・ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCTG):品番DN011(Eastman Chemical製)
・ポリメチルペンテン(TPX):品番RT31(三井化学製)
・ポリプロピレン(PP):品番E111G(プライムポリマー製)
【0080】
(3)離型フィルムの製造
3台の押出機にそれぞれ表1に示す離型層1、離型層2、クッション層3の原料を供給し、マルチマニホールドダイより共押出して、離型層1、クッション層3および離型層2の順に積層された離型フィルムを作製した。
この際、各層の厚みと離型面の算術平均粗さRaは表1に示す値となるように作製した。また、フィルムを作製する際の第1ロールの温度は90℃であり、第1ロール及びタッチロールの少なくともいずれか一方を用いて離型面の算術平均粗さRaの調整を行った。
【0081】
<離型フィルムの測定>
得られた離型フィルムを用いて、以下の測定・評価を行った。結果を表1に示す。
(1)要件1~4について
・以下の測定条件で、各離型フィルムの貯蔵弾性率(MPa)、損失弾性率(MPa)を測定した。その後、以下の熱プレス条件で熱プレス処理をし、その後の離型フィルムについて、熱プレス処理前と同様の条件で貯蔵弾性率(MPa)、損失弾性率(MPa)を測定した。70℃での貯蔵弾性率をA1、当該熱プレス後の70℃での貯蔵弾性率をA2とし、70℃での損失弾性率をB1、当該熱プレス後の70℃での損失弾性率をB2とし、100℃での貯蔵弾性率をC1、当該熱プレス後の100℃での貯蔵弾性率をC2とし、150℃での貯蔵弾性率をD1とし、当該熱プレス後の150℃での当該貯蔵弾性率をD2とし、それぞれの値を表1に示す。
【0082】
[測定条件]
装置 粘弾性測定装置 DMA7100
(日立ハイテクサイエンス社製)
開始温度 25℃
終了温度 230℃
昇温速度 5℃/min
サンプリング 3sec
測定モード 引張
周波数 1Hz
歪振幅 10μm
最小張力 50mN
張力ゲイン 1.2
サンプル長 20mm
サンプル幅 4mm
測定方向 MD方向
【0083】
[熱プレス条件]
装置 RR Q-CURE 100TON CONTINUOUS
LAMINATOR (TRM社製RtoRプレス機)
温度 175℃
時間 150sec
圧力 110kg/cm
(フィルムへの面圧でなく、装置設定圧力)
【0084】
(2)海島構造の観察
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、離型フィルムのTD方向に平行な断面を観察し、海島構造の有無を判別した。直径0.1μm以上の島構造が確認できた場合、海島構造があると判断した。
【0085】
(3)離型フィルムの離型層側の面の算術平均粗さRa
JIS B 0601:1994に準拠して測定した。
【0086】
<離型フィルムの評価>
各離型フィルムについて、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
(1)ロールツーロール方式
ロールツーロール方式の装置として、RR Q-CURE 100TON CONTINUOUS LAMINATOR (TRM社製RtoRプレス機)を用いた。図2に示すように、長尺なガラスクロス40、離型フィルム41(幅270mm)、フレキシブル配線板用銅張積層板42(試験片)をロールから巻き出し、熱盤43間でこれらを重ね合わせて熱圧着し、続けて、熱盤43の出口から離型棒44の方向に搬送し、離型フィルム41をフレキシブル配線板用銅張積層板42(試験片)から剥離するように離型棒44を通過させて、以下の離型性1および追従性1の評価を行った。
【0087】
・離型性1:
まず、ロール幅250mm、L/Sが100/100μmの電気配線が形成されたフレキシブル配線板用銅張積層板を用意し、過酷試験とするため、これを試験片とした。
次に、上記のRtoRプレス機を用いて評価を実施した。この時、熱盤間で、試験片の両面に離型フィルムの第1の離型層側の離型面が試験片と対向するようにして離型フィルムが配置され、さらに外側の離型フィルムを挟むようにしてガラスクロスが配置されるようにした。続けて、温度:175℃、時間:150sec、圧力:110kg/cmの条件で熱プレス後、搬送速度:300mm/s、送り量:500mm、熱盤出口から離型棒までの距離:50mmの条件で離型棒の方向に搬送し、成型品を得た。
この際、離型フィルムの離型性を、以下の基準で評価した。
◎:離型棒よりも10mm以上手前で離型した。
○:離型棒あるいは、10mm未満手前で離型した。
×:離型フィルムが離型棒に巻き付く、あるいは破断した。
【0088】
・追従性1:
まず、ロール幅250mm、L/Sが100/100μmの電気配線が形成されたフレキシブル配線板用銅張積層板を用意した。また、有沢製作所製のカバーレイ(CMA0525)に1mm角の開口部を複数作成し、当該カバーレイの接着剤がコーティングされている側の面を、フレキシブル配線板用銅張積層板の両面に貼り付け、仮止めした試験片を作製した。
次に、上記のRtoRプレス機を用いて評価を実施した。この時、熱盤間で、試験片の両面に離型フィルムの第1の離型層側の離型面が試験片と対向するようにして離型フィルムが配置され、さらに外側の離型フィルムを挟むようにしてガラスクロスが配置されるようにした。続けて、温度:175℃、時間:150sec、圧力:110kg/cmの条件で熱プレス後、搬送速度:60mm/s、送り量:500mm、熱盤出口から離型棒までの距離:200mmの条件で離型棒の方向に搬送し、成型品を得た。
このようにして得られた成型品について、カバーレイに形成した開口部内に、該カバーレイの表面にコーティングされている接着剤が上記開口部の外縁部から流れ出した量を光学顕微鏡で観察し、以下の基準に基づいて埋め込み性を評価した。
○:流れ出し量が70μm未満
△:流れ出し量が70μm以上100μm未満
×:流れ出し量が100μm以上
【0089】
(2)クイックプレス方式
クイックプレス方式の装置として、HH46 LAMINATOR (TRM社製クイックプレス機)を用い、以下の離型性2および追従性2の評価を行った。
【0090】
・離型性2:
まず、L/Sが100/100μmの電気配線が形成されたフレキシブル配線板用銅張積層板を用意した。また、有沢製作所製のカバーレイ(CMA0525)に1mm角の開口部を複数作成し、当該カバーレイの接着剤がコーティングされている側の面を、フレキシブル配線板用銅張積層板(幅250mm、長さ170mm)の両面に貼り付け、仮止めした試験片を作製した。
次に、上記のクイックプレス機を用いて評価を実施した。この時、試験片の両面に離型フィルムの第1の離型層側の離型面が試験片と対向するようにして離型フィルムを配置した。続けて、真空条件下180℃、2MPa、真空引き10秒、1分間の熱プレス処理を施し、成型品を得た。離型フィルムと得られた成型品を取り出した後、剥離のきっかけとなるよう、離型フィルムと成型品の間を手で剥離して端部にわずかな隙間を与えて、作業台上に静置した。この際、離型フィルムの離型性を、以下の基準で評価した。
◎:剥離きっかけ付与後、45s未満に全面で離型した。
○:剥離きっかけ付与後、45s以上90s未満に全面で離型した。
×:剥離きっかけ付与後、全面で離型するのに90s以上を要した、あるいは離型しなかった。
【0091】
・追従性2
まず、L/Sが100/100μmの電気配線が形成されたフレキシブル配線板用銅張積層板を用意した。また、有沢製作所製のカバーレイ(CMA0525)に1mm角の開口部を複数作成し、当該カバーレイの接着剤がコーティングされている側の面を、フレキシブル配線板用銅張積層板(幅250mm、長さ170mm)の両面に貼り付け、仮止めした試験片を作製した。
次に、上記のクイックプレス機を用いて評価を実施した。この時、試験片の両面に離型フィルムの第1の離型層側の離型面が試験片と対向するようにして離型フィルムを配置した。続けて、真空条件下180℃、2MPa、真空引き10秒、1分間の熱プレス処理を施し、成型品を得た。このようにして得られた成型品について、カバーレイに形成した開口部内に、該カバーレイの表面にコーティングされている接着剤が上記開口部の外縁部から流れ出した量を光学顕微鏡で観察し、以下の基準に基づいて埋め込み性を評価した。
○:流れ出し量が70μm未満
△:流れ出し量が70μm以上100μm未満
×:流れ出し量が100μm以上
【0092】
・再利用性
上記(2)クイックプレス方式の「離型性2」の評価で用いた各離型フィルムを粉砕し、フィルム用原料に加工した。次いで、フィルム用原料を第2のクッション層として用い、マルチマニホールドダイより共押出して、離型層1、第2のクッション層および離型層2の順に積層された再利用離型フィルムを作製した。
カバーレイを貼り合せたプリント配線板用銅張積層板を用意した。また、補強板として1mm厚のFR4に50μm厚の熱硬化接着剤を貼り合せた補強板を準備し、補強板の接着剤面を用意したプリント配線板用銅張積層板に張り付け、試験片を作製した。
次に、上記のクイックプレス機を用いて評価を実施した。具体的には、再利用離型フィルムの第1の離型層側の離型面が試験片と対向するようにし、試験片の両面に再利用離型フィルムを配置した。続けて、真空条件下180℃、2MPa、真空引き10秒、1分間の熱プレス処理を施し、成型品を得た。再利用離型フィルムと得られた成型品を取り出した後、剥離のきっかけとなるよう、再利用離型フィルムと成型品の間を手で剥離して端部にわずかな隙間を与えて、作業台上に静置した。この際、離型フィルムの離型性を、以下の基準で評価した。
◎:剥離きっかけ付与後、45s未満に全面で離型した。
○:剥離きっかけ付与後、45s以上90s未満に全面で離型した。
×:剥離きっかけ付与後、全面で離型するのに90s以上を要した、あるいは離型しなかった。
【0093】
【表1】
【0094】
【表2】
【符号の説明】
【0095】
1 離型層
2 離型層
3 クッション層
10 離型フィルム
40 ガラスクロス
41 離型フィルム
42 フレキシブル配線板用銅張積層板
43 熱盤
44 離型棒
【要約】
【課題】良好な追従性と高い離型性を両立する離型フィルムを提供する。
【解決手段】本発明の離型フィルム10は、少なくとも一方の離型面を構成する離型層1を有し、離型層1はポリエステル樹脂を30質量%以上含み、以下の要件1を満たす。(要件1)離型フィルム10について動的粘弾性測定装置(引張りモード、周波数1Hz、昇温速度5℃/min)で測定される70℃での貯蔵弾性率をA1とし、離型フィルム10を175℃、120秒、2MPaで処理した後の当該貯蔵弾性率をA2としたとき、A2/A1≧1.2の関係を満たす。
【選択図】図1
図1
図2