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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】逆入力遮断クラッチ
(51)【国際特許分類】
   F16D 41/10 20060101AFI20230314BHJP
   F16D 41/08 20060101ALI20230314BHJP
   F16D 51/12 20060101ALI20230314BHJP
   F16D 63/00 20060101ALI20230314BHJP
   F16D 67/02 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
F16D41/10
F16D41/08 A
F16D51/12
F16D63/00 R
F16D67/02 A
F16D67/02 K
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022542474
(86)(22)【出願日】2022-01-28
(86)【国際出願番号】 JP2022003413
(87)【国際公開番号】W WO2022168764
(87)【国際公開日】2022-08-11
【審査請求日】2022-07-11
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2021/046770
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021018307
(32)【優先日】2021-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】弁理士法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土肥 永生
(72)【発明者】
【氏名】大黒 優也
【審査官】西藤 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-203530(JP,A)
【文献】特開2009-063017(JP,A)
【文献】国際公開第2020/054763(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 41/08-41/10
F16D 51/12
F16D 63/00
F16D 67/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に被押圧面を有し、かつ、外周面に全周にわたって形成された円筒面により構成された内径側嵌合面を有する第1被押圧部材素子と、使用時にも回転しない部分に固定される取付部、および、内周面に全周にわたって形成された円筒面により構成され、かつ、前記内径側嵌合面に径方向に関するがたつきなく外嵌された外径側嵌合面を一体に有する第2被押圧部材素子とを含む、被押圧部材と、
前記第1被押圧部材素子と前記第2被押圧部材素子とのうちの一方の被押圧部材素子に対して回転可能に支持された入力部材と、
前記入力部材と同軸に配置され、かつ、前記第1被押圧部材素子と前記第2被押圧部材素子とのうちの他方の被押圧部材素子に対して回転可能に支持された、出力部材と、
前記入力部材に回転トルクが入力されると、該入力部材との係合に基づき前記被押圧面から離れる方向に移動して前記出力部材と係合することで、前記入力部材に入力された回転トルクを前記出力部材に伝達し、かつ、前記出力部材に回転トルクが逆入力されると、該出力部材との係合に基づき前記被押圧面に近づく方向に移動して前記被押圧面に接触することで、前記出力部材に逆入力された回転トルクを完全に遮断するか、または前記出力部材に逆入力された回転トルクの一部を前記入力部材に伝達し残部を遮断する、係合子と、
を備え
前記入力部材は、前記第1被押圧部材素子と前記第2被押圧部材素子とのうちの一方の被押圧部材素子に対し、入力側軸受により回転可能に支持されており、
前記出力部材は、前記第1被押圧部材素子と前記第2被押圧部材素子とのうちの他方の被押圧部材素子に対し、出力側軸受により回転可能に支持されている、逆入力遮断クラッチ。
【請求項2】
内周面に被押圧面を有し、かつ、外周面に内径側嵌合面を有する第1被押圧部材素子と、使用時にも回転しない部分に固定される取付部を有し、かつ、内周面に、前記内径側嵌合面に径方向に関するがたつきなく外嵌された外径側嵌合面を有する第2被押圧部材素子とを含む、被押圧部材と、
前記第1被押圧部材素子と前記第2被押圧部材素子とのうちの一方の被押圧部材素子に対して回転可能に支持された入力部材と、
前記入力部材と同軸に配置され、かつ、前記第1被押圧部材素子と前記第2被押圧部材素子とのうちの他方の被押圧部材素子に対して回転可能に支持された、出力部材と、
前記入力部材に回転トルクが入力されると、該入力部材との係合に基づき前記被押圧面から離れる方向に移動して前記出力部材と係合することで、前記入力部材に入力された回転トルクを前記出力部材に伝達し、かつ、前記出力部材に回転トルクが逆入力されると、該出力部材との係合に基づき前記被押圧面に近づく方向に移動して前記被押圧面に接触することで、前記出力部材に逆入力された回転トルクを完全に遮断するか、または前記出力部材に逆入力された回転トルクの一部を前記入力部材に伝達し残部を遮断する、係合子と、
を備え
前記入力部材は、該入力部材の回転中心から径方向に外れた部分に入力側係合部を有しており、
前記出力部材は、前記入力側係合部よりも径方向内側に出力側係合部を有しており、
前記係合子は、前記被押圧面に対向する径方向外側面に押圧面を有し、径方向内側面に、前記出力側係合部と係合する出力側被係合部を有し、かつ、径方向中間部に、前記入力側係合部と係合する入力側被係合部を有しており、
前記係合子は、前記出力側係合部を径方向両側から挟むように配置された1対の係合子により構成されており、かつ、前記入力側係合部は、1対の入力側係合部により構成されており、
前記1対の入力側係合部を構成する入力側係合部の先端部同士の間に掛け渡された補強部材をさらに備える、逆入力遮断クラッチ。
【請求項3】
前記入力部材は、該入力部材の回転中心から径方向に外れた部分に入力側係合部を有し、
前記出力部材は、前記入力側係合部よりも径方向内側に出力側係合部を有し、
前記係合子は、前記被押圧面に対向する径方向外側面に押圧面を有し、径方向内側面に、前記出力側係合部と係合する出力側被係合部を有し、かつ、径方向中間部に、前記入力側係合部と係合する入力側被係合部を有する、請求項1に記載の逆入力遮断クラッチ。
【請求項4】
前記係合子が、前記出力側係合部を径方向両側から挟むように配置された1対の係合子により構成されており、前記入力側係合部は、1対の入力側係合部により構成されている、請求項に記載の逆入力遮断クラッチ。
【請求項5】
前記1対の入力側係合部を構成する入力側係合部の先端部同士の間に掛け渡された補強部材を備える、請求項に記載の逆入力遮断クラッチ。
【請求項6】
前記出力側係合部と前記係合子との間に弾性的に挟持された弾性部材を備え、
前記弾性部材は、前記被押圧面に対する前記押圧面の遠近方向である第1方向に関して、前記出力側係合部を前記被押圧面から遠い側に向けて押圧し、かつ、前記第1方向に関して、前記係合子を前記被押圧面に近い側に向けて押圧する、請求項2~5のいずれかに記載の逆入力遮断クラッチ。
【請求項7】
前記第2被押圧部材素子は、内周面に前記外径側嵌合面を有する筒状部を備え、
前記取付部は、前記筒状部から径方向外側に向けて突出する突出部と、該突出部を軸方向に貫通し、かつ、ボルトが挿通される取付孔とを有する、請求項1~6のいずれかに記載の逆入力遮断クラッチ。
【請求項8】
前記入力部材が、前記第2被押圧部材素子に対して回転可能に支持され、かつ、前記出力部材が、前記第1被押圧部材素子に対して回転可能に支持されている、請求項1~7のいずれかに記載の逆入力遮断クラッチ。
【請求項9】
前記入力部材が、前記第1被押圧部材素子に対して回転可能に支持され、かつ、前記出力部材が、前記第2被押圧部材素子に対して回転可能に支持されている、請求項1~7のいずれかに記載の逆入力遮断クラッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力部材に入力される回転トルクを出力部材に伝達するのに対して、出力部材に逆入力される回転トルクを完全に遮断して入力部材に伝達しない、または、その一部のみを入力部材に伝達して残部を遮断する機能を有する、逆入力遮断クラッチに関する。
【背景技術】
【0002】
図21図23は、国際公開2020/054763号に記載された、逆入力遮断クラッチ付電動モータの従来構造の1例を示している。逆入力遮断クラッチ付電動モータ100は、出力シャフト101の途中に、逆入力遮断クラッチ102を備える。すなわち、出力シャフト101は、互いに同軸に配置された第1シャフト103と第2シャフト104とを、逆入力遮断クラッチ102により接続することで構成されている。
【0003】
第1シャフト103は、モータハウジング105の内側に回転自在に支持されている。第1シャフト103の軸方向中間部の周囲には、回転子106が外嵌固定され、かつ、回転子106の周囲には、モータハウジング105に対して支持固定された固定子107が配置されている。すなわち、固定子107に通電することで、回転子106に回転方向の力が付与されると、第1シャフト103が回転する。
【0004】
第2シャフト104は、逆入力遮断クラッチ102のクラッチハウジング108に対し回転自在に支持されている。
【0005】
逆入力遮断クラッチ102は、入力部109と、出力部110と、クラッチハウジング108と、1対の係合子111とを備える。なお、以下の説明において、逆入力遮断クラッチ102に関して、軸方向一方側は、図21の右側であり、軸方向他方側は、図21の左側である。
【0006】
入力部109は、第1シャフト103の軸方向他方側(図21の左側)の端部に備えられている。入力部109は、入力軸部112と、1対の入力側係合部113とを有する。入力軸部112は、段付円柱形状を有する。1対の入力側係合部113は、入力軸部112の先端面の直径方向反対側2箇所位置から軸方向に伸長した凸部により構成されている。
【0007】
出力部110は、第2シャフト104の軸方向一方側(図21の右側)の端部に備えられている。出力部110は、出力側係合部114を有する。出力側係合部114は、略長円柱形状を有し、1対の入力側係合部113の間部分に配置される。
【0008】
クラッチハウジング108は、段付円筒形状を有する。すなわち、クラッチハウジング108は、軸方向他方側の小径円筒部115と、軸方向一方側の大径円筒部116と、該小径円筒部115と該大径円筒部116とを接続する側板部117とを備える。クラッチハウジング108は、大径円筒部116の軸方向他方側部分の内周面に、被押圧面118を有する。すなわち、クラッチハウジング108が、被押圧部材を構成している。
【0009】
さらに、クラッチハウジング108は、大径円筒部116の外周面の円周方向複数箇所から径方向外側に突出した突出部119と、該突出部119を軸方向に貫通するねじ孔120とを有する。
【0010】
クラッチハウジング108は、大径円筒部116の軸方向一方側の端部を、モータハウジング105の軸方向他方側の端部に備えられた円環状の突条121にがたつきなく外嵌し、かつ、モータハウジング105に備えられた通孔122を挿通したボルトを、ねじ孔120に螺合することにより、モータハウジング105と結合固定されている。なお、モータハウジング105は、使用時にも回転しない固定部分に対し支持固定される。
【0011】
それぞれの係合子111は、略半円形板状で、クラッチハウジング108の大径円筒部116の径方向内側に配置されている。係合子111は、被押圧面118に対向する径方向外側面に部分円筒状の凸面からなる押圧面123を有し、かつ、径方向内側面に、後述する出力側被係合部124が備えられた部分を除き平坦面からなる底面125を有する。押圧面123の曲率半径は、被押圧面118の曲率半径以下である。なお、係合子111に関して径方向とは、図22に矢印αで示した底面125に対して直角な方向をいい、図22に矢印βで示した底面125に対して平行な方向を、係合子111に関して幅方向という。
【0012】
1対の係合子111を大径円筒部116の径方向内側に配置した状態で、被押圧面118と押圧面123との間部分、および、それぞれの底面125の間部分の少なくとも一方に隙間が存在するように、大径円筒部116の内径寸法および係合子111の径方向寸法が規制されている。
【0013】
係合子111は、入力側被係合部126および出力側被係合部124を有する。入力側被係合部126は、係合子111の径方向中間部を軸方向に貫通する孔により構成されており、入力側係合部113を緩く挿入できる大きさを有する。このため、入力側係合部113は、係合子111に対して入力部109の回転方向に関する変位が可能であり、係合子111は、入力側係合部113に対して係合子111の径方向の変位が可能である。出力側被係合部124は、係合子111の底面125の幅方向中央部から径方向外方に向けて凹んだ略矩形状の凹部により構成されており、出力側係合部114の短軸方向の先半部を配置できる大きさを有する。
【0014】
逆入力遮断クラッチ102の組立状態で、入力部109の1対の入力側係合部113は、1対の係合子111の入力側被係合部126に軸方向他側から挿入され、かつ、出力部110の出力側係合部114は、1対の出力側被係合部124同士の間に軸方向片側から挿入される。すなわち、1対の係合子111は、出力側係合部114を径方向外側から挟むように配置される。
【0015】
固定子107に通電することに基づいて、第1シャフト103に回転トルクが入力され、入力部109が回転すると、図22に示すように、入力側被係合部126の内側で、入力側係合部113が入力部109の回転方向に回転する。すると、入力側係合部113の径方向内側面が入力側被係合部126の内面を径方向内側に向けて押圧し、それぞれの係合子111を、被押圧面118から遠ざかる方向、すなわち径方向内側に向けて移動させる。これにより、1対の出力側被係合部124が出力部110の出力側係合部114を径方向両側から挟持し、出力側係合部114と1対の出力側被係合部124とが、がたつきなく係合する。この結果、第1シャフト103に入力された回転トルクが、1対の係合子111を介して、出力部110に伝達され、第2シャフト104から出力される。
【0016】
一方、第2シャフト104に回転トルクが逆入力され、出力部110が回転すると、図23に示すように、出力側係合部114が、1対の出力側被係合部124の内側で、出力部110の回転方向に回転する。すると、出力側係合部114の角部が出力側被係合部124の底面を径方向外側に向けて押圧し、それぞれの係合子111を、被押圧面118に近づく方向、すなわち径方向外側に向けて移動させる。これにより、それぞれの係合子111の押圧面123が、クラッチハウジング108の被押圧面118に対して押し付けられる。この結果、第2シャフト104に逆入力された回転トルクが、クラッチハウジング108に伝わることで完全に遮断されて第1シャフト103に伝達されないか、または、第2シャフト104に逆入力された回転トルクの一部のみが第1シャフト103に伝達され残部が遮断される。
【0017】
第2シャフト104に逆入力された回転トルクを完全に遮断して第1シャフト103に伝達されないようにするには、押圧面123が被押圧面118に対して摺動しないように、それぞれの係合子111を、出力部110の出力側係合部114とクラッチハウジング108の被押圧面118との間で強く挟持して、出力部110をロックする。第2シャフト104に逆入力された回転トルクのうちの一部のみが第1シャフト103に伝達され残部が遮断されるようにするには、押圧面123が被押圧面118に対して摺動するように、それぞれの係合子111を出力側係合部114と被押圧面118との間で挟持し、出力部110を半ロックする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【文献】国際公開2020/035708号
【文献】国際公開2006/117343号
【文献】特開2007-40343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
国際公開2020/035708号に記載の逆入力遮断クラッチ付電動モータ100では、被押圧面118を有するクラッチハウジング108をモータハウジング105に対し直接結合固定している。具体的には、モータハウジング105に備えられた通孔122を挿通したボルトを、クラッチハウジング108の突出部119に備えられたねじ孔120に螺合することにより、クラッチハウジング108をモータハウジング105に対し結合固定している。
【0020】
クラッチハウジング108をモータハウジング105に対し、ボルト止めにより結合固定すると、クラッチハウジング108の大径円筒部116に変形が生じ、該大径円筒部116の内周面に備えられた被押圧面118の真円度が低下する可能性がある。そして、被押圧面118の真円度が低下すると、第2シャフト104に回転トルクが逆入力されたときに、係合子111の押圧面123が被押圧面118に当接するまでにかかる時間が、被押圧面118に対する係合子111の周方向に関する位相によってばらつく可能性がある。すなわち、逆入力遮断クラッチ102を、非ロック状態からロック状態または半ロック状態に切り換えるまでにかかる時間にばらつきが生じる可能性がある。この結果、逆入力遮断クラッチ付電動モータ100の制御性が低下したり、逆入力遮断クラッチ102を非ロック状態からロック状態または半ロック状態に切り換えるロック性能が低下したりする可能性がある。
【0021】
国際公開2006/117343号および特開2007-40343号公報には、出力部材に回転トルクが逆入力された際に、内方部材と外方部材との間の空間に配置された係合子(転動体)を、前記空間のうちで径方向に関する幅の狭い側に向けて周方向に移動させ、前記係合子を、前記内方部材と前記外方部材との間で強く挟持することにより、出力部材の回転を防止する逆入力遮断クラッチが記載されている。
【0022】
国際公開2006/117343号および特開2007-40343号公報に記載の逆入力遮断クラッチにおいても、前記外方部材を、使用時にも回転しない部分に直接結合固定すると、前記外方部材の内周面に備えられ、前記係合子と接触する被押圧面の真円度が低下して、制御性やロック性能が低下する可能性がある。
【0023】
本発明は、被押圧面の真円度の低下を防止することができる、逆入力遮断クラッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明の一態様の逆入力遮断クラッチは、被押圧部材と、入力部材と、出力部材と、係合子とを備える。
【0025】
前記被押圧部材は、内周面に被押圧面を有する第1被押圧部材素子と、使用時にも回転しない部分に固定される取付部を有する第2被押圧部材素子とを含む。
【0026】
前記入力部材は、前記第1被押圧部材素子と前記第2被押圧部材素子とのうちの一方の被押圧部材素子に対して回転可能に支持されている。
【0027】
前記出力部材は、前記入力部材と同軸に配置され、かつ、前記第1被押圧部材素子と前記第2被押圧部材素子とのうちの他方の被押圧部材素子に対して回転可能に支持されている。
【0028】
前記係合子は、前記入力部材に回転トルクが入力されると、該入力部材との係合に基づき前記被押圧面から離れる方向に移動して前記出力部材と係合することで、前記入力部材に入力された回転トルクを前記出力部材に伝達する。また、前記係合子は、前記出力部材に回転トルクが逆入力されると、該出力部材との係合に基づき前記被押圧面に近づく方向に移動して前記被押圧面に接触することで、前記出力部材に逆入力された回転トルクを完全に遮断するか、または前記出力部材に逆入力された回転トルクの一部を前記入力部材に伝達し残部を遮断する。
【0029】
本発明の一態様の逆入力遮断クラッチでは、前記第1被押圧部材素子は、外周面に内径側嵌合面を有することができ、かつ、前記第2被押圧部材素子は、内周面に、前記内径側嵌合面に径方向に関するがたつきなく外嵌された外径側嵌合面を有することができる。
【0030】
本発明の一態様の逆入力遮断クラッチでは、前記第2被押圧部材素子は、内周面に前記外径側嵌合面を有する筒状部を備えることができ、かつ、前記取付部は、前記筒状部から径方向外側に向けて突出する突出部と、該突出部を軸方向に貫通し、かつ、ボルトが挿通される取付孔とを有することができる。
【0031】
本発明の一態様の逆入力遮断クラッチでは、前記入力部材を、前記第2被押圧部材素子に対して回転可能に支持し、かつ、前記出力部材を、前記第1被押圧部材素子に対して回転可能に支持することができる。
【0032】
あるいは、前記入力部材を、前記第1被押圧部材素子に対して回転可能に支持し、かつ、前記出力部材を、前記第2被押圧部材素子に対して回転可能に支持することができる。
【0033】
本発明の一態様の逆入力遮断クラッチでは、
前記入力部材は、該入力部材の回転中心から径方向に外れた部分に入力側係合部を有することができ、
前記出力部材は、前記入力側係合部よりも径方向内側に出力側係合部を有することができ、および、
前記係合子は、前記被押圧面に対向する径方向外側面に押圧面を有し、径方向内側面に、前記出力側係合部と係合する出力側被係合部を有することができ、かつ、径方向中間部に、前記入力側係合部と係合する入力側被係合部を有することができる。
【0034】
本発明の一態様の逆入力遮断クラッチは、前記出力側係合部と前記係合子との間に弾性的に挟持された弾性部材を備えることができる。前記弾性部材は、前記被押圧面に対する前記押圧面の遠近方向である第1方向に関して、前記出力側係合部を前記被押圧面から遠い側に向けて押圧し、かつ、前記第1方向に関して、前記係合子を前記被押圧面に近い側に向けて押圧する。
【0035】
本発明の一態様の逆入力遮断クラッチでは、前記係合子を、前記出力側係合部を径方向両側から挟むように配置された1対の係合子により構成することができ、かつ、前記入力側係合部を、1対の入力側係合部により構成することができる。
【0036】
本発明の一態様の逆入力遮断クラッチは、前記1対の入力側係合部を構成する入力側係合部の先端部同士の間に掛け渡された補強部材を備えることができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明の一態様の逆入力遮断クラッチによれば、被押圧面の真円度の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1図1は、本発明の実施の形態の第1例の逆入力遮断クラッチの断面図である。
図2図2は、第1例の逆入力遮断クラッチを図1の右側から見た図である。
図3図3は、第1例の逆入力遮断クラッチの分解斜視図である。
図4図4は、第1例の逆入力遮断クラッチを、一部の部品を省略し、出力側係合部を図1のA-A線で切断し、かつ、入力部材および出力部材のいずれにも回転トルクが入力されていない中立状態で示す図である。
図5図5は、入力部材に回転トルクが入力された状態で示す、図4と同様の図である。
図6図6は、出力部材に回転トルクが逆入力された状態で示す、図4と同様の図である。
図7図7は、第1例の逆入力遮断クラッチを、ハウジング、入力側軸受、および出力側軸受を取り外した状態で示す、斜視図である。
図8図8は、第1例の逆入力遮断クラッチを、ハウジング、入力側軸受、および出力側軸受を取り外した状態で示す、分解斜視図である。
図9図9は、第1例の逆入力遮断クラッチを、ハウジング、出力部材、入力側軸受、および出力側軸受を取り外した状態で示す、斜視図である。
図10図10は、第1例の逆入力遮断クラッチを構成する、それぞれに弾性部材が組み込まれた1対の係合子の斜視図である。
図11図11は、第1例の逆入力遮断クラッチを構成する、それぞれに弾性部材が組み込まれた1対の係合子、および、補強部材を、軸方向に関して出力部材側から見た図である。
図12図12は、第1例の逆入力遮断クラッチを構成する係合子の本体プレートを軸方向から見た図である。
図13図13は、第1例の逆入力遮断クラッチを構成する弾性部材を示す図であり、具体的には、図13(A)は平面図であり、図13(B)は図13(A)の下方から見た正面図であり、図13(C)は斜視図である。
図14図14は、図4の上半部の左右方向中央部の拡大図である。
図15図15(A)(a)は、第1例の構造について、入力部材に回転トルクが入力される前の状態で示す、係合子と入力側係合部との係合部を示す図であり、図15(A)(b)は、図15(A)(a)に示した状態から入力部材に回転トルクが入力された後の状態を示す図であり、図15(B)(a)は、従来構造に相当する参考例の構造について、入力部材に回転トルクが入力される前の状態で示す、係合子と入力側係合部との係合部を示す図であり、図15(B)(b)は、図15(B)(a)に示した状態から入力部材に回転トルクが入力された後の状態を示す図である。
図16図16(A)および図16(B)は、第1例の逆入力遮断クラッチについて、出力側係合部と出力側被係合部とが係合する前後の状態を示す図である。
図17図17は、本発明の実施の形態の第2例の逆入力遮断クラッチの一部を示す断面図である。
図18図18は、第2例の逆入力遮断クラッチの一部を示す、図4に相当する図である。
図19図19は、第2例の逆入力遮断クラッチの一部を示す、図5に相当する図である。
図20図20は、本発明の実施の形態の第3例の逆入力遮断クラッチの断面図である。
図21図21は、従来の逆入力遮断クラッチを示す断面図である。
図22図22は、従来の逆入力遮断クラッチについて、入力部材に回転トルクが入力された状態を示す、図21のB-B断面図である。
図23図23は、従来の逆入力遮断クラッチについて、出力部材に回転トルクが逆入力された状態を示す、図21のB-B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
[第1例]
本発明の実施の形態の第1例について、図1図16を用いて説明する。
【0040】
以下の説明において、軸方向、径方向、および周方向とは、特に断らない限り、逆入力遮断クラッチ1、より具体的には、逆入力遮断クラッチ1を構成する被押圧部材の被押圧面(ハウジング4の被押圧面24)の軸方向、径方向、および周方向をいう。本例において、逆入力遮断クラッチ1の軸方向、径方向、および周方向は、入力部材2の軸方向、径方向、および周方向と一致し、かつ、出力部材3の軸方向、径方向、および周方向と一致する。逆入力遮断クラッチ1に関して、軸方向一方側は、図1図3図7図8図9、および図10の右側であり、軸方向他方側は、図1図3図7図8図9、および図10の左側である。
【0041】
本例の逆入力遮断クラッチ1は、入力部材2と、出力部材3と、被押圧部材であるハウジング4と、係合子としての1対の係合子5とを備える。逆入力遮断クラッチ1は、入力部材2に入力される回転トルクを出力部材3に伝達するのに対して、出力部材3に逆入力される回転トルクは完全に遮断して入力部材2に伝達しない、または、その一部のみを入力部材2に伝達して残部を遮断する逆入力遮断機能を有する。
【0042】
入力部材2は、電動モータなどの入力側機構に接続され、回転トルクが入力される。本例の入力部材2は、入力側係合部としての1対の入力側係合部6を有する。本発明を実施する場合、入力部材2は、複数の部品を組み合わせることにより構成することもできるし、全体を一体に、すなわち1部品により構成することもできる。本例では、入力部材2は、図1図3、および図8に示すように、軸部材7と、1対の入力側係合ピン8とを組み合わせることにより構成されている。
【0043】
軸部材7は、入力軸部9と、1対の入力腕部10とを有する。
【0044】
入力軸部9は、略円柱状に構成されており、その軸方向一方側の端部が前記入力側機構の出力部に接続される。
【0045】
1対の入力腕部10は、入力軸部9の軸方向他方側の端部から、互いに径方向反対側に向けて伸長している。1対の入力腕部10のそれぞれの入力腕部10は、径方向中間部に、軸方向の貫通孔である支持孔11を有する。
【0046】
1対の入力側係合ピン8のそれぞれの入力側係合ピン8は、円柱状のピンにより構成されている。入力側係合ピン8の軸方向一方側の端部が、入力腕部10の支持孔11に圧入により内嵌固定されている。本例では、入力側係合ピン8の軸方向中間部および軸方向他方側の端部により、入力側係合部6が構成されている。
【0047】
本例では、後述する係合子の数に応じて、すなわち、係合子が1対の係合子により構成されていることに応じて、入力腕部および入力側係合部は、1対の入力腕部10および1対の入力側係合部6により構成されている。ただし、本発明を実施する場合に、入力腕部および入力側係合部の数は2個に限られず、係合子の数に応じて、入力腕部および入力側係合部の数を1個とする、あるいは、3個以上とすることもできる。
【0048】
出力部材3は、減速機構などの出力側機構に接続され、回転トルクを出力する。出力部材3は、入力部材2と同軸に配置されており、図3および図4に示すように、出力軸部12と、出力側係合部13とを有する。本発明を実施する場合、出力部材3は、複数の部品を組み合わせることにより構成することもできるし、全体を一体に、すなわち1部品により構成することもできる。本例では、出力部材3は、1部品により構成されている。
【0049】
出力軸部12は、略円柱状に構成されており、その軸方向他方側の端部が前記出力側機構の入力部に接続される。
【0050】
出力側係合部13は、略長円柱状で、出力軸部12の軸方向一方側の端面の中央部から軸方向一方側に伸長している。出力側係合部13の外周面は、図4図6図16(A)、および図16(B)に示すように、短軸方向(図4図6図16(A)、および図16(B)の上下方向)の両側の側面14と、長軸方向(図4図6図16(A)、および図16(B)の左右方向)の両側の側面からなるガイド面15とを有する。ガイド面15は、側面14の両側に配置されており、本例では、両側の側面14のガイド面15が短軸方向に連続してそれぞれ1つの曲面により構成されている。
【0051】
それぞれの側面14は、出力側係合部13の短軸方向に対して直交する平坦面により構成されている。それぞれのガイド面15は、凸曲面により構成されている。具体的には、ガイド面15は、出力側係合部13の中心軸(出力部材3の中心軸)を中心とする部分円筒状の凸面により構成されている。したがって、出力部材3に関しては、たとえば丸棒素材の外周面を、ガイド面15として利用することができ、その分、加工コストを抑えることができる。ただし、本発明を実施する場合に、それぞれのガイド面を、出力部材3の中心軸と平行な軸を中心とする部分円筒状の凸面により、あるいは、部分楕円筒状の凸面などの非円筒状の凸面により構成することもできる。出力側係合部13は、1対の入力側係合部6よりも径方向内側に、具体的には、1対の入力側係合部6の間部分に配置される。
【0052】
本例では、後述する係合子の数に応じて、すなわち、係合子が1対の係合子により構成されていることに応じて、側面およびその両側に配置されるガイド面は、1対の側面14およびそれぞれの側面14の両側のガイド面15により構成されている。ただし、本発明を実施する場合に、側面の数は2個に限られず、係合子の数に応じて、側面の数を1個とする、あるいは、3個以上とすることもできる。
【0053】
ハウジング4は、図1および図2に示すように、中空の円盤状で、使用時にも回転しない固定部材62に固定されて、その回転が拘束されている。ハウジング4は、入力部材2および出力部材3と同軸に配置され、かつ、その内側に、1対の入力側係合部6、出力側係合部13および1対の係合子5などが収容されている。ハウジング4は、軸方向一方側に配置された入力側ハウジング素子(ハウジング本体)16と、軸方向他方側に配置された出力側ハウジング素子17(ハウジング蓋体)と、を、複数本の結合ボルト18により結合することで構成されている。
【0054】
入力側ハウジング素子16は、円筒状の入力側大径筒部19と、円筒状の入力側小径筒部20と、中空円形平板状の側板部21と、フランジ部22とを備える。
【0055】
入力側大径筒部19は、内周面に被押圧面24を有する。すなわち、本例では、入力側ハウジング素子16が、第1被押圧部材素子を構成する。被押圧面24は、入力側ハウジング素子16の中心軸を中心とする円筒面により構成されている。
【0056】
入力側大径筒部19は、フランジ部22よりも軸方向他方側に位置する部分である軸方向他方側の端部の外周面に、内径側嵌合面を構成する入力側インロー嵌合面25を有する。入力側インロー嵌合面25は、入力側ハウジング素子16の中心軸を中心とする円筒面により構成されている。入力側小径筒部20は、内周面の軸方向他方側の端部から中間部にかけての部分に、入力側軸受嵌合面26を有する。入力側軸受嵌合面26は、入力側ハウジング素子16の中心軸を中心とする円筒面により構成されている。すなわち、被押圧面24と入力側インロー嵌合面25と入力側軸受嵌合面26とは、互いに同軸に配置されている。
【0057】
入力側小径筒部20は、入力側大径筒部19の軸方向一方側に、入力側大径筒部19と同軸に配置されている。
【0058】
側板部21は、軸方向から見て中空円形の端面形状を有する。側板部21の径方向外側の端部が入力側大径筒部19の軸方向一方側の端部に接続され、かつ、側板部21の径方向内側の端部が入力側小径筒部20の軸方向他方側の端部に接続されている。
【0059】
フランジ部22は、入力側大径筒部19の軸方向中間部から径方向外側に向けて突出している。フランジ部22は、周方向複数箇所に、軸方向に貫通する通孔23を有する。本例では、フランジ部22は、周方向8箇所に、軸方向に貫通する通孔23を有する。
【0060】
出力側ハウジング素子17は、円筒状の筒状部63と、円筒状の出力側小径筒部28と、中空円形平板状の側板部29と、複数個の取付部64とを備える。すなわち、本例では、出力側ハウジング素子17が、第2被押圧部材素子を構成する。
【0061】
筒状部63は、軸方向一方側部分の内周面に、外径側嵌合面を構成する出力側インロー嵌合面30を有する。出力側インロー嵌合面30は、出力側ハウジング素子17の中心軸を中心とする円筒面により構成されている。出力側インロー嵌合面30は、入力側ハウジング素子16の入力側インロー嵌合面25に対して、がたつきなく嵌合することが可能な内径寸法を有する。
【0062】
また、筒状部63は、入力側ハウジング素子16の通孔23と整合する周方向複数箇所に、軸方向一方側の端面に開口するねじ孔31を有する。本例では、筒状部63は、8個の通孔23と整合する周方向8箇所に、軸方向一方側の端面に開口するねじ孔31を有する。
【0063】
出力側小径筒部28は、筒状部63の軸方向他方側に、筒状部63と同軸に配置されている。出力側小径筒部28は、内周面の軸方向一方側の端部から中間部にかけての部分に、出力側軸受嵌合面33を有する。出力側軸受嵌合面33は、出力側ハウジング素子17の中心軸を中心とする円筒面により構成されている。すなわち、出力側インロー嵌合面30と出力側軸受嵌合面33とは、互いに同軸に配置されている。
【0064】
側板部29は、軸方向から見て中空円形の端面形状を有する。側板部29の径方向外側の端部が筒状部63の軸方向他方側の端部に接続され、かつ、側板部29の径方向内側の端部が出力側小径筒部28の軸方向一方側の端部に接続されている。
【0065】
それぞれの取付部64は、周方向等間隔複数箇所に備えられている。本例では、4個の取付部64が、周方向等間隔4箇所に備えられている。取付部64は、筒状部63の外周面から径方向外側に向けて突出する突出部65と、該突出部65を軸方向に貫通する取付孔32とを有する。
【0066】
ハウジング4は、入力側ハウジング素子16の入力側インロー嵌合面25を、出力側ハウジング素子17の出力側インロー嵌合面30にがたつきなく嵌合させ、かつ、入力側ハウジング素子16のフランジ部22の軸方向他方側の側面を、出力側ハウジング素子17の筒状部63の軸方向一方側の端面に当接させた状態で、それぞれの通孔23に挿通した結合ボルト18を、それぞれのねじ孔31に螺合し、さらに締め付けることにより、入力側ハウジング素子16と出力側ハウジング素子17とを結合固定することによって構成されている。
【0067】
本例では、入力側ハウジング素子16の入力側インロー嵌合面25と入力側軸受嵌合面26とが互いに同軸に配置され、かつ、出力側ハウジング素子17の出力側インロー嵌合面30と出力側軸受嵌合面33とが互いに同軸に配置されている。このため、入力側インロー嵌合面25と出力側インロー嵌合面30とをがたつきなく嵌合させた、ハウジング4の組立状態で、入力側軸受嵌合面26と出力側軸受嵌合面33とは、互いに同軸に配置される。
【0068】
本例では、出力側ハウジング素子17が、それぞれの取付孔32を挿通した支持ボルトを、固定部材62に備えられたねじ孔66に螺合しさらに締め付けることにより、固定部材62に対して支持固定される。これにより、ハウジング4が固定部材62に対して支持固定される。
【0069】
ハウジング4を組み立てた状態で、入力部材2の入力軸部9は、入力側ハウジング素子16の入力側軸受嵌合面26に対し、本例の付加的な構成要素である入力側軸受34により回転可能に支持される。また、出力部材3の出力軸部12は、出力側ハウジング素子17の出力側軸受嵌合面33に対し、本例の付加的な構成要素である出力側軸受35により回転可能に支持される。これにより、入力部材2と出力部材3とが、互いに同軸に配置され、かつ、ハウジング4の被押圧面24に対して同軸に配置される。さらに、この状態で、1対の入力側係合部6および出力側係合部13は、ハウジング4の被押圧面24の径方向内側に配置される。
【0070】
なお、逆入力遮断クラッチ1に関して、後述するロック状態または半ロック状態を非ロック状態に切り換える性能(ロック解除性能)などを高いレベルにしたい場合は、入力部材2と出力部材3との同軸および傾きを厳密に管理する必要がある。その場合は、入力側軸受34と出力側軸受35とのそれぞれを、図示のような単列の転がり軸受から複列の転がり軸受に変更するなどの、一般的な軸受利用方法を適用することもできる。なお、本発明を実施する場合、被押圧面に対する入力部材の同軸性が確保されていれば、入力側軸受を省略することができる。また、被押圧面に対する出力部材の同軸性が確保されていれば、出力側軸受を省略することができる。
【0071】
1対の係合子5のそれぞれの係合子5は、被押圧面24に対向する押圧面39、入力側係合部6と係合可能な入力側被係合部47、および、出力側係合部13と係合可能な出力側被係合部40を有し、被押圧面24の径方向内側に、被押圧面24に対する遠近方向である第1方向(逆入力遮断クラッチ1の中心軸と該係合子5の径方向外側面の周方向中央部とを結ぶ方向、すなわち、図4に矢印αで示した上下方向)の移動を可能に配置されている。係合子5は、押圧面39および出力側被係合部40を有する本体プレート36を1枚のみ備える。1対の係合子5は、出力側係合部13を径方向両側から挟むように配置されている。本例では、係合子5の数を2個として、いずれの係合子5も被押圧面24に対して第1方向の移動を可能に配置している。ただし、本発明を実施する場合、係合子5の押圧面39を被押圧面24に対して第1方向の移動が可能に配置される限り、係合子の数を1個とする、あるいは、3個以上とすることもできる。なお、1対の係合子5を構成するそれぞれの係合子5と、被押圧面24、入力側係合部6、並びに、出力側係合部13との関係およびその作用は共通であるため、以下、説明の簡明化の観点から、係合子5同士の配置についての説明を除き、一方の係合子5側についてのみ説明することとする。
【0072】
本例では、係合子5は、本体プレート36と、1対のリンク部材37と、揺動支持軸38とを備える。
【0073】
本例では、本体プレート36は、略半円形板形状を有する。本例では、本体プレート36の厚さ寸法は、出力側係合部13の軸方向寸法よりも小さい。本体プレート36は、被押圧面24に対向する1対の押圧面39と、出力側被係合部40と、揺動支持部41とを備える。
【0074】
本例では、本体プレート36の外周面は、本体プレート36の弧に相当する凸円弧状の径方向外側面と、本体プレート36の弦に相当するクランク状の径方向内側面から構成されている。なお、本体プレート36に関して径方向とは、本体プレート36の弦に直交する、図4図6における上下方向であって、被押圧面24に対する本体プレート36の遠近方向をいう。また、本体プレート36に関して幅方向とは、本体プレート36の弦に対して平行な、図5に矢印βで示す左右方向であって、本体プレート36に関する径方向と被押圧面24の軸方向とのいずれにも直交する方向をいう。本例では、本体プレート36に関する径方向が、係合子5の被押圧面24に対する遠近方向である第1方向に相当する。本例では、本体プレート36の幅方向が、第1方向と被押圧面24の軸方向とのいずれにも直交する第2方向に相当する。
【0075】
1対の係合子5は、それぞれの本体プレート36の径方向外側面を反対側に向け、かつ、それぞれの本体プレート36の径方向内側面を対向させた状態で、被押圧面24の径方向内側に配置されている。この状態で、被押圧面24と本体プレート36の径方向外側面との間部分、および、それぞれの本体プレート36の径方向内側面の間部分のうちの少なくとも一方に、本体プレート36が径方向に移動することを許容する隙間が存在するように、被押圧面24の内径寸法および本体プレート36の径方向寸法が規制されている。
【0076】
1対の押圧面39は、本体プレート36の径方向外側面の周方向に離隔した2箇所位置に備えられている。1対の押圧面39は、出力部材3のロックまたは半ロック状態で、被押圧面24に対して押し付けられる部分である。押圧面39は、本体プレート36の径方向外側面のうち、周方向に関して該押圧面39から外れた部分よりも、被押圧面24に向けて突出している。押圧面39は、被押圧面24の曲率半径よりも小さな曲率半径を有する部分円筒状の凸面により構成されている。本体プレート36の径方向外側面のうち、周方向に関して1対の押圧面39の間に位置する部分は、被押圧面24に対して接触することのない非接触面である。
【0077】
出力側被係合部40は、本体プレート36のうちで、被押圧面24に対して遠い側の側面に備えられた凹部により構成されている。より具体的には、出力側被係合部40は、本体プレート36の径方向内側面の幅方向中央部において径方向外方に向けて凹んだ略矩形状の凹部により構成されている。1対の係合子5は、図4図6に示すように、それぞれの出力側被係合部40により、出力側係合部13を径方向外側から挟むように配置されている。
【0078】
出力側被係合部40は、図4図6図16(A)、および図16(B)に示すように、その内側に出力側係合部13の短軸方向の先半部を配置できる大きさを有する。ここで、出力側係合部13の短軸方向の先半部とは、たとえば図4において、出力側係合部13のうち、上側に配置された係合子5に対する上側の半部、および、出力側係合部13のうち、下側に配置された係合子5に対する下側の半部である。特に、本例では、出力側被係合部40は、図5および図16(B)に示すように、出力側係合部13の短軸方向の先半部の外周面に合致する内面形状を有する。
【0079】
出力側被係合部40の内面は、底面42と、底面42の両側に配置された被ガイド面43とを有する。底面42は、本体プレート36の径方向に対して直交する平坦面により構成されている。被ガイド面43は、出力側被係合部40の内面のうち、本体プレート36の幅方向に関して両側の端部に位置し、かつ、該幅方向に関して互いに対向している。それぞれの被ガイド面43は、本体プレート36の径方向内側に向かうほど、すなわち、本体プレート36の径方向に関して被押圧面24から遠ざかる方向に向かうほど、2つの被ガイド面43同士の間隔が広くなる方向に傾斜した凹曲面により構成されている。
【0080】
被ガイド面43は、出力側係合部13のガイド面15に接触可能であり、ガイド面15と同じ大きさの曲率半径またはガイド面15よりも僅かに大きい曲率半径を有する、部分円筒状の凹面により構成されている。つまり、本例では、出力側被係合部40は、図5および図16(B)に示すように、出力側係合部13の短軸方向の先半部の外周面に合致する内面形状を有する。すなわち、出力側被係合部40の底面42を、出力側係合部13の側面14に面接触させ、かつ、出力側被係合部40の被ガイド面43を、出力側係合部13のガイド面15に面接触させることが可能である。なお、本発明を実施する場合には、被ガイド面を、部分楕円筒状の凹面などの非円筒状の凹面とすることもできる。
【0081】
揺動支持部41は、本体プレート36の幅方向中央部の径方向外側部に備えられている。揺動支持部41は、揺動支持軸38を介してリンク部材37を揺動可能に支持する部分である。本例では、揺動支持部41は、本体プレート36の幅方向中央部の径方向外側部を軸方向に貫通するプレート側通孔に相当する円孔により構成されている。
【0082】
本体プレート36は、幅方向中央部の径方向内側部に、挿通孔44をさらに備える。挿通孔44は、本体プレート36の幅方向中央部の径方向内側部を軸方向に貫通し、かつ、円周方向に伸長する円弧形の長孔により構成されている。挿通孔44には、入力側係合部6が挿入されている。挿通孔44は、入力側係合部6を緩く挿入できる大きさを有する。具体的には、挿通孔44の内側に入力側係合部6を挿入した際に、入力側係合部6と挿通孔44の内面との間に、周方向に関する隙間および本体プレート36の径方向に関する隙間が存在する。このため、入力側係合部6は、前記周方向に関する隙間の存在に基づいて、挿通孔44(本体プレート36)に対し、入力部材2の回転方向に関する変位が可能であり、挿通孔44(本体プレート36)は、前記本体プレート36の径方向に関する隙間の存在に基づいて、入力側係合部6に対し、本体プレート36の径方向に関する変位が可能である。換言すれば、後述する逆入力遮断クラッチ1の動作時に、挿通孔44の内周縁と入力側係合部6とが干渉して該動作が阻害されることがないように、挿通孔44の大きさが規制されている。
【0083】
本体プレート36は、特に図10に示すように、径方向内側面の幅方向中間部において、出力側被係合部40を幅方向両側から挟む位置に、径方向内側に向けて突出した第1凸部45を有する。本体プレート36は、径方向内側面の幅方向両側部で第1凸部45よりも幅方向外側にある位置に、径方向内側に向けて突出した第2凸部46を有する。
【0084】
1対のリンク部材37は、本体プレート36を軸方向両側から挟むように配置され、かつ、それぞれのリンク部材37が本体プレート36の軸方向に隣接して配置されている。ただし、本発明を実施する場合、リンク部材は、本体プレート36に対して軸方向のいずれか一方の側にのみ隣接して1個だけ配置することもできる。
【0085】
それぞれのリンク部材37は、鋼板などの金属板にプレス加工による打ち抜き加工を施して造られたプレス成形品であって、略長円板形状を有する。リンク部材37は、その長手方向に関する一方側部分である本体プレート36の径方向に関する内側部分に入力側被係合部47を有し、かつ、その長手方向に関する他方側部分である本体プレート36の径方向に関する外側部分に揺動被支持部48を有する。特に、本例の構造では、リンク部材37は、その長手方向に伸長する長孔49を有する。入力側被係合部47は、長孔49の長手方向に関する一方側の端部により構成されている。揺動被支持部48は、長孔49の長手方向に関する他方側の端部であるリンク側通孔により構成されている。ただし、本発明を実施する場合には、入力側被係合部を、リンク部材を軸方向に貫通する円孔により構成し、かつ、揺動被支持部を、リンク部材を軸方向に貫通する円孔であるリンク側通孔により構成することもできる。
【0086】
入力側被係合部47には、入力側係合部6が挿通されている。これにより、リンク部材37の長手方向に関する一方側部分が、入力側係合部6に対し揺動可能に接続されている。
【0087】
揺動支持軸38は、円柱状に構成されており、本体プレート36の揺動支持部41と、それぞれのリンク部材37の揺動被支持部48とに挿通されている。これにより、リンク部材37の長手方向に関する他方側部分が、揺動支持軸38を介して、本体プレート36の揺動支持部41に揺動可能に支持されている。本例では、揺動支持軸38は、軸方向中間部を、本体プレート36の揺動支持部41に隙間嵌めで、すなわち相対回転可能に内嵌し、かつ、軸方向両側部を、リンク部材37の揺動被支持部48に、相対回転可能に内嵌している。揺動支持軸38の軸方向中間部は、本体プレート36の揺動支持部41に圧入により、すなわち相対回転不能に内嵌することもできる。
【0088】
なお、本発明を実施する場合には、本体プレートの揺動支持部を円柱状突起により構成し、かつ、リンク部材の揺動被支持部を、該円柱状突起が相対回転可能に内嵌される孔により構成することもできる。あるいは、リンク部材の揺動被支持部を円柱状突起により構成し、かつ、本体プレートの揺動支持部を、該円柱状突起が相対回転可能に内嵌される孔により構成することもできる。
【0089】
本例では、図4および図6に示すように、係合子5の1対の押圧面39が被押圧面24に接触し、かつ、入力側係合部6が本体プレート36の幅方向中央部に位置する状態で、図14に示すように、揺動支持軸38と入力側係合部6との互いに遠い側の端縁の間の間隔Waが、揺動被支持部48と入力側被係合部47との互いに遠い側の端縁の間の間隔Wb以下になるように設定されている(Wa≦Wb)。なお、これらの間隔WaとWbとの差Wb-Waは、逆入力遮断クラッチ1の組み立てを容易にする観点からは、極力大きいことが望ましいが、その一方で、後述するように入力部材2に回転トルクが入力された際に、直ちに係合子5を径方向内側に移動させて非ロック状態を実現できるようにする観点からは、極力小さいことが望ましい。
【0090】
本例の逆入力遮断クラッチ1は、弾性部材としての1対の弾性部材50を備える。1対の弾性部材50のそれぞれの弾性部材50は入力部材2および出力部材3のいずれにも回転トルクが加わっていない中立状態(図4に示す状態)を含む、すべての使用状態(運転状態)において、出力側係合部13と係合子5との間で弾性的に挟持されることで、出力側係合部13を前記第1方向に関して被押圧面24から遠い側、すなわち径方向内側に向けて押圧し、かつ、係合子5を前記第1方向に関して被押圧面24に近い側、すなわち径方向外側に向けて押圧する。
【0091】
すなわち、中立状態を含むすべての使用状態で、弾性部材50は、係合子5と出力側係合部13の間で挟持されることで、一部(本例では、本体プレート36の幅方向に関する両側部)が係合子5により径方向内側に押圧され、他の一部(本例では、本体プレート36の幅方向に関する中間部)が出力側係合部13により径方向外側に押圧され、その反力で、係合子5を径方向外側に向けて押圧し、出力側係合部13を径方向内側に向けて押圧する。
【0092】
弾性部材50は、中立状態を含むすべての使用状態において、係合子5を径方向外側に向けて押圧することにより、係合子5の押圧面39を被押圧面24に押し付ける。特に中立状態において、係合子5の押圧面39を被押圧面24に押し付けておく理由は、出力部材3に回転トルクが逆入力された際に、直ちにロック状態が実現されるようにするためである。
【0093】
弾性部材50は、第1方向に相当する本体プレート36の径方向に関して出力側係合部13と重畳する位置において、被押圧面24の軸方向に関し本体プレート36の出力側被係合部40に対して軸方向両側に外れた位置に配置された弾性押圧部59を備え、および、該弾性押圧部59を出力側係合部13に弾性的に押し付けている。
【0094】
弾性部材50は、出力部材3および係合子5のいずれにも固定されずに、出力側係合部13と係合子5との間で弾性的に挟持されている。ただし、本発明を実施する場合には、弾性部材を、係合子に固定することもできるし、出力部材に固定することもできる。弾性部材を、係合子または出力部材に固定する場合には、たとえば、ねじ止め、かしめ、接着などの各種の固定手段を採用することができる。
【0095】
本例では、弾性部材50は、図4図10、および図13(A)~図13(C)に示すように、板ばねにより構成されている。弾性部材50は、第2方向に相当する本体プレート36の幅方向に伸長するように配置されている。本例では、弾性部材50は、クランク形状を有する。本例では、弾性部材50の板幅方向(図13(A)における上下方向)寸法W50は、本体プレート36の厚さ寸法よりも大きく、かつ、出力側係合部13の軸方向寸法よりも小さい。
【0096】
本例では、弾性部材50は、支持板部51と、押圧板部52と、連結板部53とを備える。支持板部51は、長板状に構成されており、弾性部材50の伸長方向両側部に配置されている。押圧板部52は、長板状に構成されており、それぞれの支持板部51と略平行で、かつ、弾性部材50の伸長方向中央部に配置されている。連結板部53は、弾性部材50の長さ方向に関して互いに隣り合う支持板部51の端部と押圧板部52の端部とを連結している。それぞれの連結板部53は、互いに非平行に配置されており、支持板部51および押圧板部52の板厚方向に関して押圧板部52から離れるほど、弾性部材50の伸長方向に関して押圧板部52から離れる方向に傾斜している。
【0097】
なお、本発明を実施する場合、弾性部材の形状は、係合子と出力側係合部の配置関係、係合子の底面の構造に応じて、各種形状を採用することができる。すなわち、弾性部材は、中立状態を含むすべての使用状態において、出力側係合部と係合子との間で弾性的に挟持されることで、出力側係合部を第1方向に関して被押圧面から遠い側に向けて押圧し、かつ、係合子を第1方向に関して被押圧面に近い側に向けて押圧できる限り、各種形状を採用することができる。この場合、弾性部材から出力側係合部に加わる押圧力は、全体として第1方向に関して被押圧面から遠い側を向いていればよく、弾性部材から係合子に加わる押圧力は、全体として第1方向に関して被押圧面に近い側を向いていればよい。すなわち、このような条件さえ満たしていれば、弾性部材から出力側係合部のそれぞれの部分に加わる押圧力、および、弾性部材から係合子のそれぞれの部分に加わる押圧力は、第1方向を向いている必要はない。
【0098】
弾性部材50は、出力側被係合部40と整合する箇所に相当する、本体プレート36の幅方向(図13(A)および図13(B)における左右方向)に関する中間部に、該幅方向に伸長し、かつ、第1方向に相当する本体プレート36の径方向(図13(A)における紙面の表裏方向、図13(B)における上下方向)に貫通する第1透孔54を有する。本例では、弾性押圧部59は、被押圧面24の軸方向(図13(A)における上下方向、図13(B)における紙面の表裏方向)に関して第1透孔54の両側に配置されている。本例では、弾性部材50は、第2方向に相当する本体プレート36の幅方向に関して第1透孔54から外れた箇所に相当する、該幅方向に関して第1透孔54を両側から挟んだ部分に、本体プレート36の径方向に貫通する第2透孔55を有する。
【0099】
本例では、第1透孔54は、本体プレート36の径方向視において、図13(A)に示すように、本体プレート36の幅方向に伸長する矩形形状を有する。このような第1透孔54は、押圧板部52と、それぞれの連結板部53と、それぞれの支持板部51の押圧板部52に近い側の端部とを貫通するように備えられている。第1透孔54は、出力側被係合部40と整合する箇所に配置されていることからも分かるように、出力側係合部13と出力側被係合部40とが直接係合することを阻害しないようにするための部位である。それぞれの第2透孔55は、本体プレート36の径方向視において、図13(A)に示すように、矩形形状を有する。このような第2透孔55は、本体プレート36の幅方向に関して、支持板部51の中間部を貫通するように備えられている。
【0100】
本例では、弾性部材50は、図4および図10に示すように、本体プレート36の径方向内側部に組み付けられる。この状態で、弾性部材50の第1透孔54に、本体プレート36の第1凸部45ががたつきなく挿通され、弾性部材50の第2透孔55に、本体プレート36の第2凸部46ががたつきなく挿通され、弾性部材50の支持板部51の板幅方向中間部の径方向外側面が、本体プレート36の径方向内側面のうちで、本体プレート36の幅方向に関して第2凸部46の両側に隣接する部分に当接し、および、弾性部材50の板幅方向両側部が、本体プレート36の軸方向両側に突出している。
【0101】
本例では、弾性部材50は、係合子5との係合、すなわち、第1透孔54と第1凸部45との係合、および、第2透孔55と第2凸部46との係合に基づいて、第1方向に相当する径方向と直交する方向に関する変位、すなわち、被押圧面24の軸方向に関する変位、および、第2方向に相当する本体プレート36の幅方向に関する変位が規制されている。また、弾性部材50は、支持板部51の径方向外側面が、本体プレート36の径方向内側面のうちで、本体プレート36の幅方向に関して第2凸部46の両側に隣接する部分に当接していることに基づいて、径方向外側への変位が規制されている。
【0102】
なお、本発明を実施する場合には、第1透孔54と第1凸部45との係合、および、第2透孔55と第2凸部46との係合のうち、いずれか一方の係合のみに基づいて、第1方向に相当する径方向と直交する方向に関する弾性部材50の変位を規制することもできる。
【0103】
弾性部材50を構成する押圧板部52は、被押圧面24の軸方向視において、出力側被係合部40を跨ぐように配置されている。すなわち、押圧板部52の長さ方向中間部は、第2方向に相当する本体プレート36の幅方向に関して、出力側被係合部40と同じ位置に配置されている。本例では、押圧板部52の板幅方向両側部、すなわち、押圧板部52のうちで板幅方向に関して第1透孔54を挟んだ両側部が、1対の弾性押圧部59に相当する。1対の弾性押圧部59は、本体プレート36に対して軸方向両側に外れた位置に配置されている。弾性部材50の自由状態で、1対の弾性押圧部59は、出力側被係合部40の底面42よりも径方向内側に位置し、底面42と略平行に配置される。
【0104】
特に、図4に示すように、弾性部材50を、出力側係合部13と係合子5との間に配置し、かつ、入力部材2および出力部材3のそれぞれに回転トルクが加わっていない中立状態において、弾性押圧部59は、出力側係合部13の側面14に対して面接触し、径方向外側にわずかに撓み変形する。このため、弾性部材50は、出力側係合部13と係合子5との間で弾性的に挟持されている。これにより、支持板部51は、本体プレート36の径方向内側面を径方向外側に向けて弾性的に押圧し、かつ、弾性押圧部59は、出力側係合部13の側面14を径方向内側に向けて弾性的に押圧する。
【0105】
後述するように、入力部材2に回転トルクが入力された場合(図5参照)、および、出力部材3に回転トルクが逆入力された場合(図6参照)には、弾性部材50が、弾性押圧部59を径方向外側に湾曲させるように弾性変形し、出力側係合部13と出力側被係合部40とが直接係合することを許容する。
【0106】
本例の逆入力遮断クラッチ1は、入力部材2の1対の入力側係合部6を構成する入力側係合部6のそれぞれの先端部、すなわち、1対の入力側係合ピン8を構成する入力側係合ピン8のそれぞれの軸方向他方側の端部の間に掛け渡された補強部材56を備える。
【0107】
補強部材56は、図8図9、および図11に示すように、全体を略矩形板状に構成されている。補強部材56は、中央部に、略長円形の開口形状を有する挿通孔57を備え、かつ、挿通孔57を、該挿通孔57の短径方向に関して両側から挟む部分に、支持孔58を備える。
【0108】
挿通孔57には、出力側係合部13が挿入されている。挿通孔57は、出力側係合部13を緩く挿入できる大きさを有する。このため、出力側係合部13は、挿通孔57の内側で、挿通孔57(補強部材56)に対して相対回転することができる。
【0109】
支持孔58は、入力側係合部6の先端部の外径寸法よりもわずかに小さい内径寸法を有する。1対の入力側係合部6を構成する入力側係合部6のそれぞれの先端部を、補強部材56の支持孔58に圧入することで、1対の入力側係合部6を構成する入力側係合部6のそれぞれの先端部の間に補強部材56を掛け渡している。
【0110】
本例の構造では、軸方向に関して、入力部材2の一部である入力腕部10と補強部材56との間に、1対の係合子5および1対の弾性部材50を配置している。これにより、入力部材2の入力腕部10と補強部材56との間で、1対の係合子5および1対の弾性部材50の軸方向位置を規制している。
【0111】
具体的には、この状態で、入力腕部10の軸方向他方側の側面を、揺動支持軸38の軸方向一方側の側面、および、軸方向一方側のリンク部材37の軸方向一方側面に、摺接または近接対向させている。これにより、揺動支持軸38が、本体プレート36の揺動支持部41から軸方向一方側に抜け出ることを防止し、かつ、軸方向一方側のリンク部材37が、揺動支持軸38から軸方向一方側に脱落することを防止している。
【0112】
また、補強部材56の軸方向一方側の側面を、揺動支持軸38の軸方向他方側の側面、および、軸方向他方側のリンク部材37の軸方向他方側面に、摺接または近接対向させている。これにより、揺動支持軸38が、本体プレート36の揺動支持部41から軸方向他方側に抜け出ることを防止し、かつ、軸方向他方側のリンク部材37が、揺動支持軸38から軸方向他方側に脱落することを防止している。
【0113】
ただし、本発明を実施する場合には、揺動支持軸の軸方向端部に係止した止め輪などにより、リンク部材が揺動支持軸から脱落することを防止することもできる。
【0114】
本例の構造では、入力部材2の入力腕部10と補強部材56とにより、1対の係合子5および1対の弾性部材50を軸方向両側から強く挟持していない。これにより、入力部材2の入力腕部10と補強部材56とが、それぞれの係合子5およびそれぞれの弾性部材50の径方向の動き、および、リンク部材37の揺動を阻害しないようにしている。
【0115】
なお、本発明を実施する場合には、上述のように1対の係合子5および1対の弾性部材50の軸方向位置を規制することができ、かつ、それぞれの係合子5およびそれぞれの弾性部材50の径方向の動き、および、リンク部材37の揺動を阻害しないようにできれば、入力側係合ピンの軸方向両端部を、入力腕部および補強部材のそれぞれに備えられた支持孔に対して、締め代を持たせずに内嵌することもできる。この場合には、入力側係合ピンの端部に係止した止め輪、ハウジングの内面などにより、入力側係合ピンの脱落を防止することができる。
【0116】
本発明を実施する場合には、弾性部材50の軸方向位置の規制を、入力部材2の入力腕部10および補強部材56のみによって行うこともできる。この場合には、弾性部材の軸方向位置を規制するための、弾性部材と係合子との係合構造を省略することができる。
【0117】
本例の逆入力遮断クラッチ1の動作について、次に説明する。
【0118】
入力部材2に入力側機構から回転トルクが入力されると、図5に示すように、入力側係合部6が入力部材2の回転方向(図5の例では時計方向)に回転する。すると、リンク部材37が揺動支持軸38を中心に揺動しつつ、入力側係合部6によって、リンク部材37を介して揺動支持軸38が引っ張られることにより、係合子5(本体プレート36)が、被押圧面24から遠ざかる方向である径方向内側にそれぞれ移動する。これにより、係合子5の押圧面39が被押圧面24から離れるとともに、弾性押圧部59の全体を径方向外側に変位させるように、弾性部材50を弾性変形させる。換言すれば、それぞれの支持板部51を径方向内側に変位させるように、弾性部材50を弾性変形させる。そして、係合子5の1対の出力側被係合部40が出力部材3の出力側係合部13を径方向両側から挟持し、出力側係合部13と1対の出力側被係合部40とが、がたつきなく係合する。この結果、入力部材2に入力された回転トルクが、1対の係合子5を介して、出力部材3に伝達され、出力部材3から出力される。
【0119】
特に、本例の構造では、上述のように係合子5が径方向内側に移動する際に、図4から図5へ、および、図16(A)から図16(B)に経時的に示すように、出力側係合部13の短軸方向の先半部の長軸方向両側に位置するガイド面15により、出力側被係合部40の幅方向両側に位置する被ガイド面43が案内されることで、係合子5が幅方向に移動することを規制される。そして、図5および図16(B)に示すように、出力側被係合部40の底面42が、出力側係合部13の側面14に面接触し、かつ、出力側被係合部40の被ガイド面43が、出力側係合部13のガイド面15に面接触する。このため、本例の構造では、ロックまたは半ロック状態の解除後に、係合子5が幅方向にずれ動いて被押圧面24に接触することを有効に防止できる。本例の構造では、上述したような係合子5の径方向内側への移動の案内を、出力側係合部13を用いて行えるため、該案内を行うためだけに用いられる別部品を組み込む構造に比べて、部品点数を少なくすることができる。
【0120】
本例の構造では、出力側被係合部40の被ガイド面43が、径方向内側に向かうほど2つの被ガイド面43同士の間隔が広くなる方向に傾斜した凹曲面により構成され、かつ、出力側係合部13のガイド面15が、前記凹曲面に合致する凸曲面により構成されている。このため、図16(A)に示すように、係合子5が出力側係合部13から径方向外側に離れた状態では、被ガイド面43とガイド面15との間に隙間が形成され、かつ、該隙間の大きさ(幅方向寸法)は、径方向外側に向かうほど大きくなっている。このため、本例の構造では、係合子5が出力側係合部13から径方向外側に離れた状態において、幅方向や回転方向に関する係合子5の動きを適度に許容することができ、係合子5に無理な力が加わることを有効に防止できる。
【0121】
一方、出力部材3に出力側機構から回転トルクが逆入力されると、図6に示すように、出力側係合部13が、1対の出力側被係合部40の間で、出力部材3の回転方向(図6の例では時計方向)に回転する。すると、出力側係合部13の側面14とガイド面15との接続部である角部が、弾性押圧部59の一部を径方向外側に変位させるようにそれぞれの弾性部材50を弾性変形させて、出力側被係合部40の底面42を径方向外方に向けて直接押圧する。これにより、それぞれの係合子5を、被押圧面24に近づく方向(径方向外側)に移動させて、それぞれの係合子5の押圧面39を被押圧面24に押し付け、摩擦係合させる。この結果、出力部材3に逆入力された回転トルクが、他の部材に固定されて回転しないハウジング4に伝わることで完全に遮断されて入力部材2に伝達されない、または、出力部材3に逆入力された回転トルクの一部のみが入力部材2に伝達され残部が遮断される。
【0122】
出力部材3に逆入力された回転トルクを完全に遮断して入力部材2に伝達されないようにするには、押圧面39が被押圧面24に対して摺動、すなわち相対回転しないように、係合子5を出力側係合部13と被押圧面24との間で強く挟持し、出力部材3をロックする。これに対し、出力部材3に逆入力された回転トルクのうちの一部のみが入力部材2に伝達され残部が遮断されるようにするには、押圧面39が被押圧面24に対して摺動するように、係合子5を出力側係合部13と被押圧面24との間で挟持し、出力部材3を半ロックする。出力部材3が半ロックした状態で、さらに出力部材3に回転トルクが逆入力されると、係合子5が、出力側係合部13と出力側被係合部40との係合に基づいて、押圧面39を被押圧面24に対して摺動させつつ、出力部材3の回転中心を中心として回転する。係合子5が回転すると、入力側係合部6がリンク部材37を介して揺動支持軸38に引っ張られ、入力部材2に回転トルクの一部が伝達される。
【0123】
本例では、係合子5が、本体プレート36の径方向外側面の周方向に離隔した2箇所に押圧面39を有しているため、出力部材3に回転トルクが逆入力された際に、くさび効果によって、被押圧面24と押圧面39との摩擦係合力を大きくすることができる。ただし、本発明を実施する場合には、本体プレートの径方向外側面の周方向1箇所にのみ押圧面を有する構造を採用することもできる。
【0124】
本例の逆入力遮断クラッチ1では、被押圧面24を有する入力側ハウジング素子16と、固定部材62に対して固定される取付部64を有する出力側ハウジング素子17とを別体に構成している。すなわち、被押圧面24を有する入力側ハウジング素子16を、固定部材62に対し直接ボルト止めにより固定してはいない。このため、出力側ハウジング素子17のそれぞれの取付孔32を挿通した支持ボルトを、固定部材62のそれぞれのねじ孔66に螺合しさらに締め付けることにより、ハウジング4を固定部材62に対して支持固定することに伴って、入力側ハウジング素子16に変形が生じることを防止できる。したがって、入力側ハウジング素子16の入力側大径筒部19の内周面に備えられた被押圧面24の真円度の低下を防止することができる。この結果、逆入力遮断クラッチ1を非ロック状態からロック状態または半ロック状態に切り換えるロック性能を良好に確保できる、および/または、逆入力遮断クラッチ1を組み込んだ機械装置の制御性を良好に確保することができる。
【0125】
さらに、本例では、入力側ハウジング素子16の入力側大径筒部19の外周面に備えられた入力側インロー嵌合面25と、出力側ハウジング素子17の筒状部63の内周面に備えられた出力側インロー嵌合面30とをがたつきなく嵌合させている。したがって、出力部材3への回転トルクの逆入力に伴って、それぞれの係合子5の押圧面39により被押圧面24が径方向外側に向けて押圧された場合でも、該被押圧面24が径方向外側に向けて変形することを防止できる。
【0126】
なお、本例の逆入力遮断クラッチ1は、図1に二点鎖線で示すように、入力側ハウジング素子16の入力側小径筒部20の外周面と側板部21の軸方向一方側の側面との間にかけ渡された補強リブ67を備えることもできる。補強リブ67を設ければ、被押圧面24の変形をより効果的に防止することができる。
【0127】
本例の逆入力遮断クラッチ1によれば、中立状態においても、出力部材3のがたつきを抑えることができる。
【0128】
すなわち、本例では、弾性部材50を、第1方向に相当する本体プレート36の径方向に関して、出力側係合部13と重畳する位置に配置し、出力側係合部13と係合子5との間で弾性的に挟持している。このため、逆入力遮断クラッチ1の組み立て作業性を考慮して、逆入力遮断クラッチ1を組み立てた状態における1対の底面42の間の間隔を、出力側係合部13の短軸方向に関する厚さ寸法、すなわち1対の側面14の間の間隔よりもある程度大きくした場合でも、出力側係合部13と出力側被係合部40との間に存在する隙間にかかわらず、出力側係合部13が軽い力で回転することを防止でき、出力部材3のがたつきを抑えることができる。これにより、出力部材3をボールねじ装置のねじ軸に連結し、入力部材2を電動モータに接続するなどして、本例の逆入力遮断クラッチ1を、ナットに固定したステージの位置調整やタイヤの舵角の調整などを行う用途に使用した場合に、ステージやタイヤからナットを介して出力部材3に回転トルクが逆入力されても、ステージの位置やタイヤの舵角が調整後の位置から勢い良くずれることを防止できる、すなわち、ずれの進行を緩やかにできるとともに、異音が発生することを防止できる。
【0129】
本例の構造とは異なるが、係合子が、被押圧面の軸方向に離隔して配置された2枚の本体プレートを含んで構成されている場合には、弾性部材を2枚の本体プレートの間に設置することによって、本体プレートの径方向内側面に備えられた出力側被係合部と弾性部材との干渉を容易に回避することができる。すなわち、出力部材の出力側係合部と本体プレートの出力側被係合部とを、弾性部材を介することなく直接係合させることが容易となる。一方、本例の構造のように、係合子が、1枚の本体プレートのみを備えている場合、上記と同様の手法で出力側被係合部と弾性部材との干渉を回避しようとすると、本体プレートの径方向内側面に、弾性部材を設置するための溝を用意する必要がある。その結果、本体プレートの形状が複雑になり、本体プレートの加工難易度が高くなるため、製造コストが嵩むことが避けられない。
【0130】
これに対して、本例の構造では、弾性部材50が、出力部材3の出力側係合部13に弾性的に押し付ける弾性押圧部59を備えており、かつ、この弾性押圧部59が、本体プレート36の出力側被係合部40に対して軸方向両側に外れた位置に配置されている。このため、本体プレート36の径方向内側面に、弾性部材50を設置するための溝を用意しなくても、本体プレート36の径方向内側面に備えられた出力側被係合部40と弾性部材50との干渉を容易に回避することができる。したがって、本体プレート36の径方向内側面に、弾性部材50を設置するための溝を用意しなくても済む分、本体プレート36の形状を簡素化して、本体プレート36の加工難易度を低くできるため、製造コストを抑えることができる。なお、本発明の弾性部材は、出力側係合部13と出力側被係合部40との係合を阻害せず、出力側係合部13を径方向内側に弾性的に押圧する弾性押圧部59を備えている限り、係合子が本体プレートを1枚しか備えていない構造に限らず、係合子が本体プレートを2枚以上備えている構造にも適用することができる。
【0131】
本例では、弾性部材50を、出力部材3(出力側係合部13)と係合子5とのいずれにも固定せずに、出力側係合部13と係合子5とで弾性的に挟持している。このため、弾性部材50を固定するための作業を省略できるとともに、固定するのに用いる部品を削減することができる。したがって、逆入力遮断クラッチ1の製造コストの低減を図ることができる。また、弾性部材50の設置スペースを小さく抑えられるため、逆入力遮断クラッチ1の小型化を図ることができる。
【0132】
弾性部材50を、係合子5(本体プレート36)に対して係合させることで、弾性部材50が、軸方向、幅方向、および径方向にそれぞれ変位することを規制できる。このため、弾性部材50を、出力部材3および係合子5のいずれにも固定しなくても、弾性部材50の設置位置がずれたり、弾性部材50が出力側係合部13と係合子5との間から脱落したりすることを抑制することができる。このため、弾性部材50により、係合子5および出力側係合部13に対して、所望の大きさおよび向きの弾力を付与することができる。
【0133】
弾性部材50は、中立状態において、係合子5の押圧面39を被押圧面24に押し付ける機能を有している。このため、中立状態で、係合子5の押圧面39を被押圧面24に押し付けておくための専用の部品(ばねなどの付勢部材)を設ける必要がない。したがって、部品点数の低減を図ることができ、かつ、逆入力遮断クラッチ1の小型化を図ることができる。
【0134】
本例の逆入力遮断クラッチ1によれば、入力部材2への回転トルクの入力時に、ロックまたは半ロック状態から非ロック状態への切り換えを円滑に行うことができる。この点について、図15(A)および図15(B)を参照しつつ説明する。
【0135】
図15(A)の(a)(b)は、本例の構造に関して、入力部材2の一部と係合子5の一部との相互の位置関係を示している。より具体的には、図15(A)(a)は、図6に示したロックまたは半ロック状態において、入力側係合部6が係合子5の幅方向中央部に位置し、かつ、リンク部材37が最も径方向内側に寄った状態での、前記位置関係を示している。図15(A)(b)は、図15(A)(a)に示した状態から、入力部材2に回転トルクTが入力されることにより、入力側係合部6が入力部材2の回転方向(図示の例では時計方向)に回転して、入力側係合部6から揺動支持軸38にリンク部材37を介して並進荷重Fが作用し始めた状態での、前記位置関係を示している。
【0136】
一方、図15(B)の(a)(b)は、リンク部材を備えておらず、一体に構成された係合子111が入力側被係合部126および出力側被係合部(図示省略)を有する参考例の構造に関して、入力部109zの一部と係合子111の一部との相互の位置関係を示している。より具体的には、図15(B)(a)は、ロックまたは半ロック状態において、入力側係合部113zが係合子111の幅方向中央部に位置する状態での、前記位置関係を示している。図15(B)(b)は、図15(B)(a)に示した状態から、入力部109zに回転トルクTが入力されることにより、入力側係合部113zが入力部109zの回転方向(図示の例では時計方向)に回転して、入力側係合部113zが係合子111の入力側被係合部126に当接し、入力側係合部113zと入力側被係合部126との当接部Xに、回転トルクTに基づく並進荷重Ftが作用し始めた状態での、前記位置関係を示している。
【0137】
参考例の構造では、図15(B)(b)に示したように、並進荷重Ftの方向、すなわち、入力部109zから係合子111に作用する荷重の方向は、ロック状態または半ロック状態から非ロック状態への切り換え時に係合子111が移動すべき方向である、係合子111の径方向(被押圧面に対する係合子111の遠近方向)に対して大きく傾いている。
【0138】
これに対して、本例の構造では、図15(A)(b)に示したように、並進荷重Fの方向、すなわち、入力部材2から係合子5に作用する荷重の方向は、ロックまたは半ロック状態から非ロック状態への切り換え時に係合子5が移動すべき方向である、係合子5の径方向(被押圧面24に対する係合子5の遠近方向)とほぼ平行な方向になっている。換言すれば、並進荷重Fの方向と係合子5が移動すべき方向とのなす角度が、参考例の構造における、並進荷重Ftの方向と係合子111が移動すべき方向とのなす角度よりも小さい。つまり、本例の構造では、入力部材2に入力された回転トルクTを、係合子5を径方向内側に移動させるための荷重に効率良く変換することができる。このため、本例の構造によれば、入力部材2への回転トルクの入力時に、ロックまたは半ロック状態から非ロック状態への切り換えを円滑に行うことができる。
【0139】
なお、本例の構造における、図15(A)(a)に示した状態での、入力側係合部6の径方向内側面とリンク部材37の入力側被係合部47の内周面との間に存在する隙間Gの大きさ(前述した差Wb-Wa)、および、参考例の構造における、図15(B)(a)に示した状態での、入力側係合部113zの径方向内側面と入力側被係合部126との間に存在する隙間Gzの大きさは、いずれも、逆入力遮断クラッチの組み立てを容易にする観点からは、極力大きいことが望ましいが、その一方で、入力部材2または入力部109zに回転トルクが入力された際に、直ちに係合子5、111を径方向内側に移動させて非ロック状態を実現できるようにする観点からは、極力小さいことが望ましい。したがって、逆入力遮断クラッチの製造においては、これらの事情を考慮して、隙間G、Gzの大きさを、適度な大きさに調整する必要がある。
【0140】
参考例の構造では、隙間Gzの大きさを調整するために、入力側被係合部126のうち、入力側係合部113zの径方向内側面と当接する部分を、切削加工で高精度に仕上げることが必要になる場合があり、この場合には、コストが嵩むと考えられる。これに対して、本例の構造では、リンク部材37の入力側被係合部47と揺動被支持部48との中心間距離を管理するだけで、隙間Gの大きさを調整することができ、リンク部材37は安価なプレス加工で造れるため、コストを抑えやすい。
【0141】
また、押圧面を有する本体プレートに、入力側被係合部を有するリンク部材を揺動可能に支持することで係合子を構成する場合に、1対の本体プレート同士を軸方向に離隔して配置し、かつ、該1対の本体プレートの間に1つのリンク部材を揺動可能に配置する構造が考えられる。ただし、このような構造では、1対の本体プレート同士を軸方向に離隔した状態で結合する必要があり、部品点数が増大してしまう。さらに、ロックまたは半ロック状態において、1対の本体プレートのそれぞれの押圧面を被押圧面に当接または摺接させるために、本体プレートは高い形状精度を要求される。
【0142】
これに対し、本例では、押圧面39を有する本体プレート36の軸方向両側に、入力側被係合部47をそれぞれ有する1対のリンク部材37を、本体プレート36に対し揺動可能に支持する構成を採用している。したがって、部品点数の増大を抑えることができ、かつ、本体プレート36の形状精度を過度に高くする必要がないため、製造コストの増大を抑えることができる。また、入力部材2から回転トルクが入力され、1対の係合子5が径方向内側に移動する際に、本体プレート36が軸方向に倒れるように傾くのを防止することができる。
【0143】
補強部材56が、1対の入力側係合部6を構成する入力側係合部6のそれぞれの先端部の間に掛け渡すように設けられているため、1対の入力側係合部6が互いに離れる方向に変形するのを防止することができる。この理由について、以下で説明する。
【0144】
出力部材3に回転トルクが逆入力されると、1対の係合子5のそれぞれの押圧面39が、被押圧面24に対して押し付けられ、それぞれの押圧面39が被押圧面24に摩擦係合して、逆入力遮断クラッチ1がロックまたは半ロック状態に切り換わる。出力部材3に逆入力される回転トルクが大きくなると、それぞれの押圧面39を被押圧面24に対して押し付ける力も大きくなり、それぞれの押圧面39と被押圧面24との間に作用する摩擦係合力も大きくなる。
【0145】
入力部材2に回転トルクが入力されると、1対の入力側係合部6のそれぞれの入力側係合部6により、リンク部材37および揺動支持軸38を介して、本体プレート36が、それぞれの押圧面39を被押圧面24から遠ざける方向に移動し、それぞれの押圧面39が被押圧面24から離れる。この結果、逆入力遮断クラッチ1が非ロック状態に切り換わる。
【0146】
ここで、逆入力遮断クラッチ1がロックまたは半ロック状態に切り換わる際に、出力部材3に逆入力された回転トルクが大きく、それぞれの押圧面39と被押圧面24との間に作用する摩擦係合力が大きい場合、逆入力遮断クラッチ1をロックまたは半ロック状態から非ロック状態に切り換えるために要するトルク(解除トルク)が大きくなる。本例のような補強部材56を備えていない構造においては、解除トルクが大きくなり、逆入力遮断クラッチ1をロックまたは半ロック状態から非ロック状態に切り換える際に、リンク部材37から入力側係合部6に加わる、本体プレート36の径方向に関して外側を向いた力が大きくなると、入力部材2の入力側係合部6が互いに離れる方向に湾曲するように変形する可能性がある。このような変形が発生すると、入力側係合部6と入力側被係合部47との間に偏当たりが生じて摩耗を生じやすくなったり、逆入力遮断クラッチ1をロックまたは半ロック状態から非ロック状態に切り換える際に、本体プレート36が軸方向に倒れるように傾いて、非ロック状態への切り換えを円滑に行いにくくなったりする可能性がある。
【0147】
本例の逆入力遮断クラッチ1は、補強部材56が、1対の入力側係合部6を構成する入力側係合部6のそれぞれの先端部の間に掛け渡すように設けられているため、入力側係合部6が互いに離れる方向に変形するのを防止することができる。この結果、入力側係合部6と入力側被係合部47との間に偏当たりが生じるのを防止できて、摩耗の発生を抑えることができ、かつ、本体プレート36が軸方向に倒れるように傾くことを防止できて、非ロック状態への切り換えを円滑に行うことができる。
【0148】
なお、本例では、入力側大径筒部19の内周面のうち、被押圧面24およびその近傍部分にのみ高周波焼き入れにより硬化層が形成され、その後研磨加工が施されている。これにより、被押圧面24の硬さを確保しつつ、被押圧面24の寸法精度および真円度を良好に確保している。さらに、逆入力遮断クラッチ1を、非ロック状態からロック状態または半ロック状態に滑らかに切り換えられるようにしている。
【0149】
[第2例]
本発明の実施の形態の第2例について、図17図19を用いて説明する。
【0150】
本例の逆入力遮断クラッチ1aでは、入力部材2aおよび1対の係合子5aの構造が、第1例と一部異なる。以下の説明では、第2例の構造のうち、第1例と異なる部分のみを説明する。
【0151】
本例では、入力部材2aは、入力軸部9と、基板部60と、1対の入力側係合部6aとを有する。
【0152】
基板部60は、軸方向から見て略円形の端面形状を有する。
【0153】
入力軸部9は、基板部60の軸方向一方側の側面の中央部から軸方向一方側に向けて突出している。1対の入力側係合部6aは、基板部60の軸方向他方側の側面の径方向反対側2箇所位置から軸方向他方側に向けて突出している。本例では、1対の入力側係合部6aを構成するそれぞれの入力側係合部6aは、軸方向から見て、周方向に伸長する略楕円形の端面形状を有する。本発明を実施する場合には、1対の入力側係合部を構成するそれぞれの入力側係合部を、基板部とは別体に造られた部品により構成することもできる。
【0154】
1対の係合子5aを構成するそれぞれの係合子5aは、押圧面39および出力側被係合部40を有する1枚の本体プレート36aのみからなる。本体プレート36aに関して、1対の押圧面39を含む径方向外側面の形状、および、出力側被係合部40を含む径方向内側面の形状は、第1例と同様である。
【0155】
本体プレート36aは、入力側被係合部47aを有する。本例では、入力側被係合部47aは、軸方向から見て、本体プレート36aの幅方向に伸長する略矩形の開口形状を有し、かつ、本体プレート36aの幅方向中央位置の径方向中間部を軸方向に貫通する貫通孔により構成されている。入力側被係合部47aは、入力側係合部6aを緩く挿入できる大きさを有する。したがって、入力側被係合部47aの内側に入力側係合部6aを挿入した状態で、入力側係合部6aと入力側被係合部47aの内面との間には、本体プレート36aの幅方向および径方向にそれぞれ隙間が存在する。このため、入力側係合部6aは、入力側被係合部47aに対し、入力部材2aの回転方向に関する変位が可能であり、入力側被係合部47aを備えた本体プレート36aは、入力側係合部6aに対し、該本体プレート36aの径方向の変位が可能である。本例では、入力側被係合部47aは、内周面のうち、本体プレート36aの径方向に関する内側の端部に、該径方向に関して外側を向いた平坦面61を備える。
【0156】
逆入力遮断クラッチ1aの組立状態で、入力部材2aの1対の入力側係合部6aは、1対の係合子5aの入力側被係合部47aに軸方向に挿入される。本発明を実施する場合には、第1例の場合と同様、1対の入力側係合部6aを構成する入力側係合部6aのそれぞれの先端部の間に掛け渡された補強部材を備えることもできる。
【0157】
入力部材2aに入力側機構から回転トルクが入力されると、図19に示すように、入力側被係合部47aの内側で、入力側係合部6aが入力部材2aの回転方向に回転する。すると、入力側係合部6aの径方向内側面が入力側被係合部47aの平坦面61を径方向内方に向けて押圧し、係合子5aが被押圧面24から遠ざかる方向に移動する。これにより、係合子5aの押圧面39が被押圧面24から離れる。これとともに、弾性部材50を構成する弾性押圧部59の全体が径方向外側に変位するように、弾性部材50が弾性変形する。そして、1対の出力側被係合部40が出力部材3の出力側係合部13を径方向両側から挟持し、出力側係合部13と1対の出力側被係合部40とが、がたつきなく係合する。この結果、入力部材2aに入力された回転トルクが、1対の係合子5aを介して、出力部材3に伝達され、出力部材3から出力される。
【0158】
一方、出力部材3に出力側機構から回転トルクが逆入力される際には、図6に示した第1例の場合と同様の動作により、弾性部材50が弾性変形し、かつ、出力部材3に逆入力された回転トルクが、ハウジング4に伝わることで完全に遮断されて入力部材2aに伝達されない、または、出力部材3に逆入力された回転トルクの一部のみが入力部材2aに伝達され残部が遮断される。
【0159】
本例の逆入力遮断クラッチ1aでは、1対の係合子5aを構成するそれぞれの係合子5aが、1枚の本体プレート36aのみからなり、リンク部材および揺動支持軸を有しないため、部品点数を少なく抑えることができる。その他の構成および作用効果は、第1例と同様である。
【0160】
[第3例]
本発明の実施の形態の第3例について、図20を用いて説明する。
【0161】
本例の逆入力遮断クラッチ1bでは、ハウジング4aは、取付部64aを有する入力側ハウジング素子16aと、被押圧面24aを有する出力側ハウジング素子17aとを、複数本の結合ボルト18により結合することで構成されている。すなわち、本例では、入力側ハウジング素子16aが、第2被押圧部材素子を構成し、かつ、出力側ハウジング素子17aが、第1被押圧部材素子を構成する。
【0162】
入力側ハウジング素子16aは、円筒状の筒状部63aと、円筒状の入力側小径筒部20と、中空円形平板状の側板部21aと、複数個の取付部64aとを備える。
【0163】
筒状部63aは、内周面に、外径側嵌合面を構成する入力側インロー嵌合面25aを有する。
【0164】
入力側小径筒部20は、筒状部63aの軸方向一方側に、筒状部63aと同軸に配置されている。
【0165】
側板部21aは、軸方向から見て中空円形の端面形状を有する。側板部21aの径方向外側の端部が筒状部63aの軸方向一方側の端部に接続され、かつ、側板部21aの径方向内側の端部が入力側小径筒部20の軸方向他方側の端部に接続されている。側板部21aは、径方向外側部分の周方向複数箇所に、軸方向に貫通する通孔23aを有する。
【0166】
それぞれの取付部64aは、周方向等間隔複数箇所に備えられている。取付部64aは、筒状部63aの外周面から径方向外側に向けて突出する突出部65aと、該突出部65aを軸方向に貫通する取付孔32aとを有する。
【0167】
出力側ハウジング素子17aは、円筒状の出力側大径筒部68と、円筒状の出力側小径筒部28と、中空円形平板状の側板部29とを備える。
【0168】
出力側大径筒部68は、軸方向中間部内周面に被押圧面24aを有する。被押圧面24aは、出力側ハウジング素子17aの中心軸を中心とする円筒面により構成されている。
【0169】
出力側大径筒部68は、軸方向一方側の端部外周面に、内径側嵌合面を構成する出力側インロー嵌合面30aを有する。出力側インロー嵌合面30aは、出力側ハウジング素子17aの中心軸を中心とする円筒面により構成され、入力側インロー嵌合面25aに対して、がたつきなく嵌合することが可能な外径寸法を有する。
【0170】
出力側大径筒部68は、入力側ハウジング素子16aの通孔23aと整合する周方向複数箇所に、軸方向一方側の端面に開口するねじ孔31aを有する。
【0171】
ハウジング4aは、入力側ハウジング素子16aの入力側インロー嵌合面25aと、出力側ハウジング素子17aの出力側インロー嵌合面30aとをがたつきなく嵌合させ、かつ、出力側ハウジング素子17aの出力側大径筒部68の軸方向一方側の端面を、入力側ハウジング素子16aの側板部21aの軸方向他方側の側面の径方向外側部分に当接させた状態で、それぞれの通孔23aに挿通した結合ボルト18を、それぞれのねじ孔31aに螺合し、さらに締め付けることにより、入力側ハウジング素子16aと出力側ハウジング素子17aとを結合固定することによって構成されている。
【0172】
本例では、入力側ハウジング素子16aが、それぞれの取付孔32aを挿通した支持ボルトを、固定部材62に備えられたねじ孔66に螺合しさらに締め付けることにより、固定部材62に対して支持固定される。これにより、ハウジング4aが固定部材62に対して支持固定される。
【0173】
本例の逆入力遮断クラッチ1bでは、固定部材62に対して固定される取付部64aを有する入力側ハウジング素子16aと、被押圧面24aを有する出力側ハウジング素子17aとを別体に構成している。このため、ハウジング4aを固定部材62に対して支持固定することに伴って、出力側ハウジング素子17aに変形が生じることを防止できる。この結果、出力側ハウジング素子17aの出力側大径筒部68の内周面に備えられた被押圧面24aの真円度の低下を防止することができる。
【0174】
また、入力側ハウジング素子16aの筒状部63aの内周面に備えられた入力側インロー嵌合面25aと、出力側ハウジング素子17aの出力側大径筒部68の外周面に備えられた出力側インロー嵌合面30aとをがたつきなく嵌合させている。したがって、出力部材3への回転トルクの逆入力に伴って、それぞれの係合子5bの押圧面39により被押圧面24aが径方向外側に向けて押圧された場合でも、該被押圧面24aが径方向外側に向けて変形することを防止できる。
【0175】
なお、本例では、係合子5bは、それぞれが押圧面39を有し、かつ、軸方向に離隔して配置された1対の本体プレート36aと、該1対の本体プレート36a同士の間に揺動可能に支持された1つのリンク部材37aとを備える。ただし、係合子として、第1例の係合子5のように、押圧面を有する1つの本体プレートの軸方向両側に、1対のリンク部材を、本体プレートに対する揺動を可能に支持した構成を有する係合子や、第2例の係合子5aのように、1枚の本体プレートのみからなる係合子を採用することもできる。その他の構成および作用効果は、第1例および第2例と同様である。
【0176】
本発明は、第1例~第3例に示すような、係合子を径方向に移動させることで、非ロック状態とロック状態または半ロック状態とを切り換える逆入力遮断クラッチに限らず、国際公開2006/117343号に記載の構造や特開2007-40343号公報に記載の構造のように、係合子を周方向に移動させることで、非ロック状態とロック状態または半ロック状態とを切り換える逆入力遮断クラッチに適用することもできる。
【符号の説明】
【0177】
1、1a、1b 逆入力遮断クラッチ
2、2a 入力部材
3 出力部材
4、4a ハウジング
5、5a 係合子
6、6a 入力側係合部
7 軸部材
8 入力側係合ピン
9 入力軸部
10 入力腕部
11 支持孔
12 出力軸部
13 出力側係合部
14 側面
15 ガイド面
16、16a 入力側ハウジング素子
17、17a 出力側ハウジング素子
18 結合ボルト
19 入力側大径筒部
20 入力側小径筒部
21、21a 側板部
22 フランジ部
23、23a 通孔
24、24a 被押圧面
25、25a 入力側インロー嵌合面
26 入力側軸受嵌合面
28 出力側小径筒部
29 側板部
30、30a 出力側インロー嵌合面
31 ねじ孔
32、32a 取付孔
33 出力側軸受嵌合面
34 入力側軸受
35 出力側軸受
36、36a 本体プレート
37 リンク部材
38 揺動支持軸
39 押圧面
40 出力側被係合部
41 揺動支持部
42 底面
43 被ガイド面
44 挿通孔
45 第1凸部
46 第2凸部
47、47a 入力側被係合部
48 揺動被支持部
49 長孔
50 弾性部材
51 支持板部
52 押圧板部
53 連結板部
54 第1透孔
55 第2透孔
56 補強部材
57 挿通孔
58 支持孔
59 弾性押圧部
60 基板部
61 平坦面
62 固定部材
63、63a 筒状部
64、64a 取付部
65、65a 突出部
66 ねじ孔
67 補強リブ
68 出力側大径筒部
100 逆入力遮断クラッチ付電動モータ
101 出力シャフト
102 逆入力遮断クラッチ
103 第1シャフト
104 第2シャフト
105 モータハウジング
106 回転子
107 固定子
108 クラッチハウジング
109 入力部
110 出力部
111 係合子
112 入力軸部
113 入力側係合部
114 出力側係合部
115 小径円筒部
116 大径円筒部
117 側板部
118 被押圧面
119 突出部
120 ねじ孔
121 突条
122 通孔
123 押圧面
124 出力側被係合部
125 底面
126 入力側被係合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23