(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】金属元素含有物質から金属を回収する方法
(51)【国際特許分類】
C22B 3/18 20060101AFI20230314BHJP
C22B 11/00 20060101ALI20230314BHJP
C22B 3/06 20060101ALI20230314BHJP
C22B 3/10 20060101ALI20230314BHJP
B01J 20/22 20060101ALI20230314BHJP
C12N 1/12 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
C22B3/18
C22B11/00 101
C22B3/06
C22B3/10
B01J20/22 B
C12N1/12 A
(21)【出願番号】P 2022576123
(86)(22)【出願日】2022-08-25
(86)【国際出願番号】 JP2022032077
【審査請求日】2022-12-09
(31)【優先権主張番号】P 2021141688
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【氏名又は名称】小松 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】福島 康之
【審査官】瀧澤 佳世
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/130006(WO,A1)
【文献】特開2017-61739(JP,A)
【文献】国際公開第2018/155687(WO,A1)
【文献】特開2013-67826(JP,A)
【文献】JU, Xiaohui et al,Effective and selective recovery of gold and palladium ions from metal wastewater using a sulfotherm,Bioresource Technology,2016年,Vol. 211,p.759-764
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 3/18
C22B 11/00
C22B 3/06
C22B 3/10
B01J 20/22
C12N 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属元素含有物質に硝酸及び塩を含む溶解液を接触させて、金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液を得る工程と、
金属イオン又は金属錯イオンを含む前記溶液に藻類を浸漬して金属を生成させる工程と、を含み、
前記溶解液中の硝酸の濃度は2~50質量%であり、
前記溶解液中の前記塩の濃度は0.5質量%以上である、金属元素含有物質から金属を回収する方法。
【請求項2】
前記藻類がレプトリングビア属の藍藻である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
レプトリングビア属の前記藍藻が、受託番号FERM BP-22385として寄託されたレプトリングビア属の藍藻である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記溶解液中の硝酸の濃度が3~20質量%である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記溶解液中の塩酸の濃度が20質量%以下である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記金属元素含有物質が、金、パラジウム、白金、及びロジウムからなる群より選ばれる少なくとも一種を含み、
金属イオン又は金属錯イオンを含む前記溶液が、金、パラジウム、白金、及びロジウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属のイオン又は錯イオンを含む溶液であり、
回収する前記金属が、金、パラジウム、白金、及びロジウムからなる群より選ばれる少なくとも一種である、請求項1又は2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、金属元素含有物質から金属を回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
新興国の経済発展に伴って金属資源の枯渇が懸念されており、廃棄された家電、パーソナルコンピューター、携帯電話等、いわゆる都市鉱山から金属資源を回収する技術が求められている。都市鉱山から金属を回収方法はいくつか存在しており、なかでも藻類を利用する方法は、化学的手法に比べて環境に優しく、また、藻類は容易に大量培養可能という点で、期待が大きい。藻類を利用する方法としては、例えば、金属溶液中の金属イオンを藻類に吸着させる方法(例えば、特許文献1)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
藻類を用いて都市鉱山から金属を回収するためには、まず、都市鉱山に含まれる金属を溶解する必要がある。廃電子機器中の電子基板等、金属を含む物質の溶解には、一般的に王水(濃塩酸:濃硝酸=3:1(体積比))が用いられるが、王水は酸化力が高すぎるため、得られた金属溶液に藻類を浸漬すると、藻類が溶けてしまう傾向がある。そこで、本開示は、藻類の溶解を低減するとの目的のもと、藻類の溶解が低減された、金属元素含有物質から金属を回収する方法を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係る金属元素含有物質から金属を回収する方法は、金属元素含有物質に硝酸及び塩を含む溶解液を接触させて、金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液を得る工程と、金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液に藻類を浸漬して金属を生成させる工程と、を含み、溶解液中の硝酸の濃度は2~50質量%であり、溶解液中の塩の濃度は0.5質量%以上である。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、藻類の溶解を低減することができる方法、より具体的には、藻類の溶解が低減された、金属元素含有物質から金属を回収する方法が示される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、藍藻を塩酸で処理した際に生じた塩酸廃液に含まれる元素を示す。
【
図2】
図2は、藍藻をエタノールで処理した際に生じたエタノール廃液の吸収スペクトルを示す。
【
図3】
図3は、エタノールで処理した又は処理していない藍藻を四塩化金酸水溶液に浸漬することで得られた溶液の吸収スペクトルを示す。
【
図4】
図4の(A)は、温泉水に藍藻を浸漬することで得られた溶液の元素濃度を示し、
図4の(B)は、温泉水に藍藻を浸漬した際の金属の吸着率を示す。
【
図5】
図5の(A)は、四塩化金酸水溶液中の金濃度と藍藻の表面に吸着した金ナノ粒子の密度との関係を示し、
図5の(B)は、四塩化金酸水溶液に24時間浸漬した藍藻の表面のSEM画像を示す。
【
図6】
図6は、四塩化金酸水溶液に藍藻を50℃又は75℃で浸漬することで得られた溶液の吸収スペクトルを示す。
【
図7】
図7は、異なる波長の光を当てながら四塩化金酸水溶液に藍藻を浸漬することで得られた溶液の吸収スペクトルを示す。
【
図8】
図8は、四塩化金酸水溶液(金濃度:50ppm又は200ppm)に藍藻を浸漬することで得られた溶液中の金ナノ粒子のTEM画像を示す。
【
図9】
図9は、金コロイド溶液のTOF-SIMSの結果を示す。
【
図10】
図10は、金コロイド溶液のFT-IRの結果を示す。
【
図11】
図11の(A)は、超音波処理前後の藍藻表面のSEM画像を示し、
図11の(B)は、四塩化金酸水溶液に藍藻を浸漬することで得られた溶液と、該藍藻の懸濁液を超音波処理して得られた溶液の吸収スペクトルを示す。
【
図12】
図12は、2500×gで30分間遠心する前と後の、金コロイド溶液の吸収スペクトルを示す。
【
図14】
図14は、藻/Au比と藍藻への金の吸着率との関係を示す。
【
図15】
図15は、ロジウム、パラジウム、白金、又は金の質量に対する藍藻の質量の比と、藍藻への各金属の吸着率との関係を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の一側面に係る金属元素含有物質から金属を回収する方法は、金属元素含有物質に硝酸及び塩を含む溶解液を接触させて、金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液を得る工程と、金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液に藻類を浸漬して金属を生成させる工程と、を含み、溶解液中の硝酸の濃度は2~50質量%であり、溶解液中の塩の濃度は0.5質量%以上である。
【0009】
藻類はレプトリングビア属の藍藻であってよく、レプトリングビア属の藍藻は、受託番号FERM BP-22385(原寄託日:2020年1月17日、寄託当局:独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センター(IPOD)(郵便番号292-0818、日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 120号室))として寄託されたレプトリングビア属の藍藻であってよい。
【0010】
溶解液中の硝酸の濃度は3~20質量%であってよい。溶解液中の硝酸の濃度がこの範囲にあると、金属元素含有物質をより迅速に溶解することができる。
【0011】
溶解液中の塩酸の濃度は20質量%以下であってよい。溶解液中の塩酸の濃度がこの範囲にあると、藻類の溶解をより低減することができる。
【0012】
金属元素含有物質は、金、パラジウム、白金、及びロジウムからなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでよく、かつ、金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液は、金、パラジウム、白金、及びロジウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属のイオン又は錯イオンを含む溶液であってよく、かつ回収する金属は、金、パラジウム、白金、及びロジウムからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。
【0013】
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。
【0014】
本開示の一側面に係る金属元素含有物質から金属を回収する方法は、金属元素含有物質に硝酸及び塩を含む溶解液を接触させて、金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液を得る工程と、金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液に藻類を浸漬して金属を生成させる工程と、を含む。溶解液中の硝酸の濃度は2~50質量%であり、溶解液中の塩の濃度は0.5質量%以上である。
【0015】
金属元素含有物質に硝酸及び塩を含む溶解液を接触させる工程では、硝酸及び塩を含む溶解液により金属元素含有物質(より具体的には、金属元素含有物質に含まれる金属又は金属化合物)の一部又は全部が溶解し、金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液が得られる。硝酸及び塩を含む溶解液の酸化力は過度に高くないため、金属元素含有物質を王水で処理した場合と比較して、得られた金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液に藻類を浸漬したときの藻類の溶解を低減することができる。また、金属元素含有物質を王水で処理した場合、得られた金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液の酸化力を低下させるためには該溶液を中和する必要があるが、中和により、該溶液に含まれている金属以外の溶解物が析出し、該溶液の粘性が高くなる傾向がある。これに対し、硝酸及び塩を含む溶解液の酸化力は過度に高くないため、藻類を浸漬する前に金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液を中和する必要がない。さらに、本発明者らは、金属元素含有物質の溶解に王水を用いる場合は、藻類を浸漬する前に王水を希釈することで、藻類の溶解が抑えられることも見いだしたが、硝酸及び塩を含む溶解液を使用する本側面に係る方法によれば、そのような希釈工程も不要である。本明細書において、王水とは、濃塩酸(35質量%塩酸)と濃硝酸(60質量%硝酸)を3:1の体積比で混合して得られる溶液である。
【0016】
金属元素含有物質は、金属元素、より具体的には金属又は金属化合物を1種以上含有する物質であれば特に限定されず、例えば、廃電子機器中の電子基板等、いわゆる都市鉱山であってよい。金属元素含有物質に含まれる金属元素は、例えば、金、銀、銅、スズ、コバルト、鉄、シリコン、ニッケル、白金、パラジウム、ロジウム、又はレアメタルであってよく、レアメタルとしては、例えば、ストロンチウム、マンガン、セシウム、レアアース等が挙げられ、レアアースとしては、例えば、イットリウム、スカンジウム、ルテチウム等が挙げられる。金属元素含有物質は、好ましくは金、パラジウム、白金、及びロジウムからなる群より選ばれる少なくとも一種を含み、より好ましくは金又はパラジウムを含み、さらに好ましくは金を含む。
【0017】
硝酸及び塩を含む溶解液に含まれる塩は、硝酸と併用することにより酸化力を増大させることが可能な塩であれば特に限定されず、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、及びアルミニウム塩が挙げられる。塩は、好ましくはハロゲン化物であり、より好ましくは塩化物である。塩化物としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、及び塩化アルミニウムが挙げられる。溶解液は、1種以上の塩を含んでよい。溶解液は、例えば、硝酸を含む、海水、人工海水、又はにがりであってよい。
【0018】
金属元素含有物質を迅速に溶解する観点から、硝酸及び塩を含む溶解液中の硝酸濃度は2質量%以上であり、好ましくは3質量%以上である。藻類の溶解を低減する観点から、溶解液中の硝酸濃度は50質量%以下であり、好ましくは、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、10質量%以下、又は5質量%以下である。
【0019】
金属元素含有物質を迅速に溶解する観点から、硝酸及び塩を含む溶解液中の総塩濃度は0.5質量%以上であり、1質量%以上、2質量%以上、3質量%以上、4質量%以上、6質量%以上、8質量%以上、10質量%以上、又は20質量%以上であることが好ましい。溶解液中の総塩濃度は、金属の精錬を容易にする観点から、例えば、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、10質量%以下、8質量%以下、6質量%以下、4質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、又は1質量%以下であってよい。溶解液中の総塩濃度が高いほど、金属元素含有物質の溶解にかかる時間は短くなる一方、生成した金属の精錬コストは高くなる傾向がある。金属元素含有物質を迅速に溶解するとともに、生成した金属の精錬コストを抑える観点から、溶解液中の総塩濃度は、好ましくは1~10質量%である。
【0020】
溶解液は、例えば、2~20質量%の硝酸及び0.5質量%以上の塩を含んでよく、3~20質量%の硝酸及び0.5質量%以上の塩を含んでよく、3~10質量%の硝酸及び1~10質量%の塩を含んでよい。
【0021】
金属元素含有物質を迅速に溶解する観点から、金属元素含有物質に含まれる金属の質量に対する溶解液中の硝酸の質量の比(以下、硝酸/金属比ともいう)は、好ましくは100以上、より好ましくは150以上である。藻類の溶解を低減する観点から、硝酸/金属比は、2500以下、2000以下、1500以下、1000以下、500以下、又は250以下であることが好ましい。
【0022】
金属元素含有物質を迅速に溶解する観点から、金属元素含有物質に含まれる金属の質量に対する溶解液中の塩の総質量の比(以下、塩/金属比ともいう)は、25以上、50以上、100以上、150以上、200以上、300以上、400以上、500以上、又は1000以上が好ましい。塩/金属比は、生成した金属の精錬を容易にする観点から、例えば、2500以下、2000以下、1500以下、1000以下、500以下、400以下、300以下、200以下、150以下、100以下、又は50以下であってよい。溶解液中の塩/金属比が高いほど、金属元素含有物質の溶解にかかる時間は短くなる一方、生成した金属の精錬コストは高くなる傾向がある。金属元素含有物質を迅速に溶解するとともに、生成した金属の精錬コストを抑える観点から、塩/金属比は、好ましくは50~500である。
【0023】
溶解液のpHは、特に限定されず、例えば-5~8であってよい。
【0024】
王水は、藻類にダメージを与えるだけでなく、金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液中の化学平衡をずらし、金属イオン又は金属錯イオンの還元反応を起こりにくくするため、金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液に王水が含まれると、藻類に吸着する金属の量が低減する傾向にある。より詳細には、王水に含まれる塩酸は高い解離定数(低いpKa)を有するため、王水の濃度が上がると(すなわち、塩酸の濃度が上がると)、溶液中の水素イオンと塩素イオンの濃度が上がり、ルシャトリエの原理で化学平衡がずれる。そうすると、溶液中で、金属イオン又は金属錯イオンがイオンの状態で存在しにくくなり、藻類により還元されにくくなる(例えば四塩化金酸の場合、HAuCl4がH+及び[AuCl4]-にイオン化しにくくなる)。したがって、藻類の溶解を低減する観点及び藻類に吸着する金属の量を増やす観点から、溶解液は、王水を含まないことが好ましい。藻類の溶解を低減する観点及び藻類に吸着する金属の量を増やす観点から、溶解液中の塩酸の濃度は、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、2.6質量%以下、1.3質量%以下、1質量%以下、0.53質量%以下、又は0.26質量%以下であることが好ましく、溶解液は塩酸を含まないことが好ましい。
【0025】
金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液は、金属元素含有物質に含まれる上述の金属元素のイオン又はその錯イオンを含む。金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液は、1種以上の金属イオン又は金属錯イオンを含んでよい。金属イオン又は金属錯イオンは、好ましくは金、パラジウム、白金、及びロジウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属のイオン又は錯イオンであり、より好ましくは金錯イオン又はパラジウム錯イオンであり、さらに好ましくは金錯イオンである。金錯イオンとしては、例えば、テトラクロリド金(III)酸イオン([AuCl4]-)、ジシアノ金(I)酸イオン([Au(CN)2]-)、及びAu(HS)2
-が挙げられる。パラジウム錯イオンとしては、例えば、テトラクロリドパラジウム(II)酸イオン([PdCl4]2-)が挙げられる。白金錯イオンとしては、例えば、ヘキサクロリド白金(IV)酸イオン([PtCl6]2-)が挙げられる。
【0026】
金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液中の金属元素(例えば、金、パラジウム、白金、ロジウム等、回収対象である金属の元素)の濃度は特に限定されず、10-3~105質量ppmであってよい。金属が後述するナノ粒子の形態を取るのに必要な、十分な核発生及び結晶成長を促進する観点から、金属元素の濃度は、0.001質量ppm以上、より好ましくは0.01質量ppm以上、さらに好ましくは0.1質量ppm以上である。生成した金属ナノ粒子(例えば金ナノ粒子)の凝集を防ぐ観点から、金属元素(例えば金)の濃度は、好ましくは200質量ppm未満、より好ましくは100質量ppm以下、さらに好ましくは50質量ppm以下である。また、藻類に吸着した金属ナノ粒子の量を増やす観点からは、金属元素の濃度は、例えば、10000質量ppm以下、5000質量ppm以下、2500質量ppm以下、1000質量ppm以下、500質量ppm以下、250質量ppm以下、125質量ppm以下、又は50質量ppm以下であってよく、12質量ppm以上又は25質量ppm以上であってよい。藻類に吸着した金属ナノ粒子の量を増やす観点から、金属元素の濃度は、好ましくは12~250質量ppm、より好ましくは12~125質量ppm、さらに好ましくは25~125質量ppm、特に好ましくは25~50質量ppmである。
【0027】
金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液は、上述の濃度で硝酸及び塩を含んでよい。すなわち、金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液中の硝酸濃度は、2質量%以上又は3質量%以上であってよい。藻類の溶解を低減する観点から、金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液中の硝酸濃度は、好ましくは、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、10質量%以下、又は5質量%以下である。また、金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液中の総塩濃度は、0.5質量%以上、1質量%以上、2質量%以上、3質量%以上、4質量%以上、6質量%以上、8質量%以上、10質量%以上、又は20質量%以上であってよい。金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液中の総塩濃度は、生成した金属の精錬を容易にする観点から、例えば、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、10質量%以下、8質量%以下、6質量%以下、4質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、又は1質量%以下であってよい。金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液中の総塩濃度は、好ましくは1~10質量%である。
【0028】
藻類の溶解を低減する観点及び藻類に吸着する金属の量を増やす観点から、金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液は、王水を含まないことが好ましい。藻類の溶解を低減する観点及び藻類に吸着する金属の量を増やす観点から、金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液中の塩酸の濃度は、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、2.6質量%以下、1.3質量%以下、1質量%以下、0.53質量%以下、又は0.26質量%以下であることが好ましく、金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液は塩酸を含まないことが好ましい。
【0029】
金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液のpHは、特に限定されず、例えば、-5~8であってよい。
【0030】
金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液に藻類を浸漬する工程では、藻類が金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液中で金属イオン又は金属錯イオンを還元し、金属原子を生成する。例えば、金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液がテトラクロリド金(III)酸イオン([AuCl4]-)を含む場合、藻類は、[AuCl4]-をAu原子に還元する。生成した金属原子は藻類に吸着し、ある種の金属原子は、その吸着量が十分であれば、結晶化してナノ粒子を形成する。藻類上で結晶化してナノ粒子を形成する金属原子としては、例えば、金、パラジウム、白金、及びロジウムが挙げられる。ナノ粒子化した金属は、藻類に吸着したままであるか、藻類から溶液中に遊離する。
【0031】
藻類は、金属イオン又は金属錯イオンを還元して金属を生成する能力を有する藻類であれば特に限定されず、例えば、藍藻(シアノバクテリア)、緑藻、褐藻、紅藻、又は珪藻であってよい。藻類としては、例えば、Enzyme and Microbial Technology95(2016)28-4, “A review on the biosynthesis of metallic nanoparticles (gold andsilver) Using bio-components of microalgae: Formation mechanism andapplications”の表1に記載された藻類を使用することができる。藍藻としては、例えば、レプトリングビア属(Leptolyngbya)の藍藻、及びスピルリナ・プラテンシス(Spirulina platensis)等のスピルリナ属の藍藻が挙げられる。緑藻としては、例えば、クロレラ・ブルガリス(chlorella vulgaris)が挙げられる。褐藻としては、例えば、パディナ・パヴォニカ(Padina pavonica)等のウミウチワ属の褐藻、及びカジメが挙げられる。紅藻としては、例えば、ガルディエリア・スルフラリア(Galdieria sulphuraria)等のイデユコゴメ綱の紅藻が挙げられる。
【0032】
レプトリングビア属の藍藻は、例えば、受託番号FERM BP-22385(原寄託日:2020年1月17日)として、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センター(IPOD)(郵便番号292-0818、日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 120号室)に寄託された、レプトリングビア属の藍藻であってよい。
【0033】
藻類は、保管又は保存性(すなわち、腐敗を防ぐ)の観点から、好ましくは藻類の乾燥物である。金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液中での分散性を高める観点から、乾燥物は好ましくは粉末状である。
【0034】
金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液が酸性溶液である場合に藻類の乾燥物の減肉を低減する目的で、藻類の乾燥物のS/V比(面積と体積の比)を低くする観点から、また、取り扱いのし易さ及びスペースを有効利用する観点から、藻類の乾燥物はより好ましくはシート状(海苔形状)である。
【0035】
藻類に吸着する金属の量を増やす観点から、藻類は、好ましくは酸で処理された藻類であり、より好ましくは酸及び有機溶剤で処理された藻類である。酸及び有機溶剤で処理された藻類は、金属の回収量を向上する観点及び回収する金属の純度を向上させる観点からも好ましい。ここで、酸又は有機溶剤で藻類を処理するとは、具体的には、藻類、好ましくは水洗した藻類を、酸又は有機溶剤に浸漬することを意味する。なお、藻類を酸及び有機溶剤で処理することは必須ではなく、藻類を酸及び有機溶剤で処理しなくてもよいし、藻類を酸及び有機溶剤のいずれか一方のみで処理してもよい。
【0036】
酸は特に限定されず、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、又はこれらの任意の組合せであってよい。藻類を酸で処理することにより、藻類を構成する金属元素(Fe、Cu、B、Ca、P、Mg、K、Sr、Mn、Ba等)を藻類から取り除くことができる。
【0037】
藻類に吸着する金属の量を増やす観点から、酸での処理は1回又は2回であることが好ましい。酸で2回処理するとは、藻類を酸に浸漬した後、酸を除去し、再度藻類を酸に浸漬することを意味する。酸処理の時間(すなわち酸に浸漬する時間)は特に限定されず、例えば5分~120分であってよく、望ましくは10分~60分である。
【0038】
酸処理に使う酸の濃度は、例えば1~15質量%であってよく、望ましくは5~10質量%である。藻類と酸の割合は、例えば、1gの藻類に対して、酸1~10000mL、10~1000mL、又は100~400mLであってよい。
【0039】
有機溶剤は特に限定されず、例えば、エタノール、アセトン、ジクロロメタン等、光合成色素を抽出することのできる溶剤を用いてもよい。有機溶剤での処理の時間(すなわち有機溶剤への浸漬時間)は、好ましくは30分~120分であり、より好ましくは30分~60分である。有機溶剤での処理は、酸での処理の前又は後のいずれに行ってもよいが、好ましくは酸での処理の後に行う。
【0040】
有機溶剤の濃度は、例えば10~100質量%又は50~100質量%であってよく、望ましくは100質量%である。藻類と有機溶剤の割合は、例えば、1gの藻類に対して、有機溶剤0.1~10000mL、1~1000mL、又は10~100mLであってよい。
【0041】
金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液中の金属元素(例えば、金、パラジウム、白金、ロジウム等、回収対象である金属の元素)の質量に対する藻類の質量の比(以下、藻/金属比ともいう)は特に限定されず、例えば0.1~10000であってよい。藻類に吸着する金属の量を増やす観点から、藻/金属比は、例えば、4以上、9以上、10以上、40以上、111以上、120以上、185以上、200以上、又は1000以上であってよい。藻/金属比の上限は特に限定されないが、藻/金属比は、例えば、10000以下、2000以下、1000以下、300以下、200以下、120以下、111以下、100以下、40以下、又は9以下であってよい。藻/金属比が高いほど、藻類に吸着する金属の量が増える一方、使用する藻類の量が増えることでコストも上がる。藻類に吸着する金属の量を増やすとともに、藻類にかかるコストを抑える観点から、藻/金属比は、好ましくは9~1000、より好ましくは9~300、さらに好ましくは9~100、特に好ましくは9~30である。
【0042】
金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液中に、金及び/又はパラジウムの金属イオン又は金属錯イオンと、ロジウム及び/又は白金の金属イオン又は金属錯イオンが含まれる場合、金及び/又はパラジウムを藻類に選択的に吸着させる観点から、金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液中のロジウムの質量に対する藻類の質量の比は、好ましくは11以下であり、金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液中の白金の質量に対する藻類の質量の比は、好ましくは16以下である。
【0043】
金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液に浸漬する藻類の量は、溶液中の金属元素濃度及び藻類の種類に応じて適宜決定することができるが、金属イオン又は金属錯イオンの還元反応を進行させる観点から、金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液100mLあたり、好ましくは0.2mg以上、より好ましくは2mg以上、さらに好ましくは3mg以上、特に好ましくは20mg以上の藻類を浸漬する。
【0044】
金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液に藻類を浸漬する際の温度は特に限定されず、例えば0~100℃であってよい。藻類からの金属ナノ粒子の遊離を低減し、藻類に吸着した金属ナノ粒子の量を増やす観点からは、浸漬時の温度は、好ましくは10~100℃、より好ましくは50~100℃、さらに好ましくは70~100℃である。浸漬時の温度は、例えば、10~50℃、51~70℃、又は71~100℃であってよい。一方、溶液中に遊離する金属ナノ粒子の量を増やす観点(すなわち、後述する金属コロイド溶液の濃度を上げる観点)からは、浸漬時の温度は、好ましくは0~75℃、より好ましくは0~50℃、さらに好ましくは0~30℃である。
【0045】
金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液に藻類を浸漬する時間は、金属イオン又は金属錯イオンの還元反応を十分に進行させる観点から、例えば、0.5時間以上、1時間以上、3時間以上、8時間以上、又は24時間以上であってよい。金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液に藻類を浸漬する時間の上限は特に限定されないが、例えば、100時間以下、48時間以下、24時間以下、8時間以下、3時間以下、又は1時間以下であってよい。金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液に藻類を浸漬する時間が1~8時間であれば十分に短いといえ、かつ高回収率も達成できる。
【0046】
金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液への藻類の浸漬は、光の照射下で行ってもよく、遮光しながら行ってもよい。金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液(及び溶液中の藻類)に光を照射することで、藻類からの金属ナノ粒子の脱離を低減し、より多くの金属ナノ粒子を藻類に吸着した状態に維持することができる。この場合、金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液に照射する光は、可視光又は紫外線であってよく、例えば自然光(太陽光)であってよい。藻類からの金属ナノ粒子の遊離を低減し、藻類に吸着した金属ナノ粒子の量を増やす観点から、金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液に照射する光は、好ましくは800nm以下(例えば、435~800nmの白色光)、より好ましくは545nm以下(例えば、495~545nmの緑色光)、さらに好ましくは490nm以下(例えば、435~490nmの青色光)、特に好ましくは400nm以下(例えば、350~400nmの紫外線)の波長を有する光である。光の照射強度は、金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液100mLあたり、10~1000mWであってよく、100~1000mWであってよい。本明細書において、mWは放射束の強度を示す単位を意味する。一方、金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液(及び溶液中の藻類)を遮光することで、藻類から溶液中に遊離する金属ナノ粒子の量を増やすことができる。この場合、溶液中に遊離する金属ナノ粒子の量を増やす観点から、金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液への藻類の浸漬は、好ましくは800nm以下、より好ましくは545nm以下、さらに好ましくは490nm以下、特に好ましくは400nm以下(すなわち紫外線)の波長を有する光を遮光しながら行う。
【0047】
金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液に藻類を浸漬する間、金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液をかくはんすることが好ましい。かくはんの回転数は特に限定されず、例えば100~1000rpmであってよい。
【0048】
上述のとおり、生成した金属は、ナノ粒子化した金属など、結晶化した金属原子であってもよく、結晶化していない金属原子であってもよい。また、金属(特に、金属ナノ粒子)は、表面が非金属化合物又は金属化合物で修飾された金属であってもよい。本明細書においては、表面修飾を有する金属も「金属」の範囲に含まれる。
【0049】
本開示の本側面に係る金属元素含有物質から金属を回収する方法は、生成した金属(藻類に吸着しているか、溶液中に分散している)を回収する工程をさらに含んでよい。金属を回収する方法は特に限定されず、回収する金属の所望の形態、所望の純度等に応じて、適宜選択できる。金属の回収は、例えば、藻類が浸漬された溶液から藻類を分離(又は回収)し、残った溶液(金属コロイド溶液)を回収することにより、又は回収した藻類から金属を回収することにより、行うことができる。
【0050】
得られた金属コロイド溶液中の金属は、金属コロイド溶液を遠心して金属を濃縮することにより、又は金属コロイド溶液に凝集剤(例えば、海の塩、NaCl、MgCl2等)を添加して金属を沈殿させることにより、回収してもよい。
【0051】
藻類が浸漬された溶液から藻類を分離(又は回収)するために、金属を回収する工程は、藻類が浸漬された溶液をろ過する工程を含んでよい。藻類が浸漬された溶液に金属ナノ粒子が含まれる場合、この工程により、金属ナノ粒子を含むろ液、すなわち金属コロイド溶液を得ることができる。金属原子はナノ粒子化している場合のみ藻類から溶液中に遊離することができ、結晶化していない金属原子は藻類から遊離しない。したがって、金属元素含有物質に、藻類上で結晶化してナノ粒子を形成可能な金属(例えば、金、パラジウム、白金、及びロジウム)と、藻類上でナノ粒子を形成できない金属との両方が含まれる場合であっても、本工程により、ナノ粒子を形成可能な金属のみを選択的に回収することができる。
【0052】
一実施形態において、金属を回収する工程は、藻類を超音波処理する工程をさらに含んでよい。超音波処理は、藻類が浸漬された溶液から藻類を分離する前(すなわち、例えば上記ろ過工程の前)に行ってもよく、藻類が浸漬された溶液から藻類を回収し、藻類を再度液体に懸濁してから行ってもよい。藻類を超音波処理することで、藻類に吸着した金属ナノ粒子を藻類から簡便に脱離させることができる一方、結晶化していない金属原子は藻類から脱離しない。したがって、藻類に、金属ナノ粒子と、結晶化していない金属原子とが吸着している場合、かかる藻類が浸漬又は懸濁された溶液を超音波処理することにより、金属ナノ粒子は溶液中に遊離し、結晶化していない金属原子は藻類に吸着したまま残るため、金属ナノ粒子と、結晶化していない金属原子とを分離することができる。すなわち、本工程によれば、藻類上でナノ粒子を形成可能な金属を選択的に回収でき、かつ、藻類上でナノ粒子を形成できない金属も選択的に回収できる。超音波処理の条件は特に限定されず、例えば、20~100kHzの超音波で、10~60分藻類を処理することができる。
【0053】
一実施形態において、金属を回収する工程は、藻類が浸漬された溶液を超音波処理する工程と、超音波処理した溶液をろ過する工程と、を含んでよい。かかる実施形態によれば、藻類が浸漬された溶液を超音波処理しない場合と比べてより多くの金属ナノ粒子を含むろ液、すなわち、より高い濃度の金属コロイド溶液を得ることができる。また、別の実施形態において、金属を回収する工程は、藻類が浸漬された溶液をろ過する工程と、ろ過後の藻類を超音波処理する工程と、を含んでよい。超音波処理は、水、水溶液等の任意の液体に回収した藻類を懸濁し、懸濁液を超音波処理することにより行うことができる。超音波処理後の懸濁液をろ過することにより、金属ナノ粒子を含むろ液、すなわち金属コロイド溶液を得ることができる。藻類が浸漬された溶液には、生成した金属ナノ粒子とともに金属ナノ粒子以外の成分(例えば、還元されずに残った金属イオン又は金属錯イオン)も含まれる場合があるが、本実施形態では、ろ過によって藻類が浸漬された溶液から藻類を回収した後に、藻類に吸着した金属ナノ粒子を回収するため、より純度の高い金属コロイド溶液を得ることができる。
【0054】
一実施形態において、金属を回収する工程は、回収した藻類から金属を回収するために、回収した藻類を焼成する工程をさらに含んでよい。この工程により、藻類自体は除去され、藻類に吸着した金属を回収することができる。また、藻類を焼成する前に、藻類を所望の形に成形してもよい。これにより、藻類を焼成して所望の形を有する金属成形物を得ることができる。焼成は、例えば空気中で容易に行うことができる。焼成の温度は特に限定されず、金属の融点に応じて適宜選択できる。焼成の温度は、例えば、800~1200℃であってよい。焼成の温度は一定であってもよく、又は段階的に昇温してもよい。例えば、まずは藻類を、藻類が燃焼する温度で一定時間加熱し、次いで、金属の結晶性を上げるために、金属の融点付近の温度で加熱を継続してもよい。
【0055】
本開示の本側面に係る金属元素含有物質から金属を回収する方法において、金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液からの金属の回収は、一回のみ行ってもよいが、複数回に分けて行うこともできる。すなわち、一実施形態において、金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液から金属を回収する上記方法は、金属元素含有物質に硝酸及び塩を含む溶解液を接触させて、金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液を得る工程の後に、
(i)金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液に藻類を浸漬して、金属を生成させるとともに金属を藻類に吸着させる工程と、
(ii)金属を吸着させた藻類を回収する工程と、
(iii)回収した藻類から金属を回収する工程と、を含んでよく、藻類を浸漬する工程(i)と、藻類を回収する工程(ii)とは、2回以上行うことができる。ここで、2回目以降の浸漬に使用する藻類は、金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液から回収した藻類とは別の藻類である。いいかえれば、一度使用した藻類を再度利用することはなく、金属の吸着には常に新たな藻類を使用する。
【0056】
金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液に藻類を浸漬して、金属を生成させるとともに金属を藻類に吸着させる工程(i)の詳細は、金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液に藻類を浸漬して金属を生成させる上述の工程と同様である。ただし、藻/金属比は、好ましくは0.1~1100である。また、金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液に藻類を浸漬する際の温度は、藻類からの金属ナノ粒子の遊離を低減し、藻類に吸着した金属ナノ粒子の量を増やすことが可能な温度に調節することが好ましい。すなわち、浸漬時の温度は、好ましくは10~100℃、より好ましくは50~100℃、さらに好ましくは70~100℃である。また、藻類からの金属ナノ粒子の遊離を低減し、藻類に吸着した金属ナノ粒子の量を増やすために、好ましくは800nm以下、より好ましくは545nm以下、さらに好ましくは490nm以下、特に好ましくは400nm以下(すなわち紫外線)の波長を有する光を、金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液に照射してよい。
【0057】
金属を吸着させた藻類を回収する方法は特に限定されず、例えば、藻類が浸漬された金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液をろ過することにより、該溶液から藻類を回収してもよい。
【0058】
藻類に吸着した金属は、上述の方法、すなわち、藻類を焼成することにより又は藻類を超音波処理することにより、回収できる。これらの方法の詳細は、上述のとおりである。藻類から金属を回収する工程(iii)は、任意の段階に、かつ任意の回数行うことができる。
【0059】
後述する試験例13で示されるように、藻/金属比が高いほど、藻類を浸漬する工程(i)毎に吸着できる金属の量は多くなり、所定の回収率(例えば、80%)を達成するために必要な上記工程(i)及び(ii)の繰り返しの回数は少なくなる。しかしながら、藻/金属比が高いほど、藻類の利用効率(例えば、藻類の単位質量あたりに回収できる金属の質量を指標とすることができる)は低下するため、低い藻/金属比で工程(i)及び(ii)を多く繰り返す場合と比較して、所定の回収率を達成するまでにより多くの藻類が必要となり、藻類にかかるコストが高くなる。したがって、工程(i)及び(ii)の繰り返し回数を抑えつつ藻類にかかるコストを低減する観点から、上記工程(i)及び(ii)は、好ましくは3~1100の藻/金属比で1~30回行い、より好ましくは20~400の藻/金属比で2~10回行い、さらに好ましくは40~100の藻/金属比で3~5回行う。
【0060】
金属元素含有物質から金属を回収する上記方法の一実施形態によれば、金を含む金属元素含有物質から、金を金ナノ粒子の形態で回収することができる。したがって、本開示の一側面は、金を含む金属元素含有物質に硝酸及び塩を含む溶解液を接触させて、金イオン又は金錯イオンを含む溶液を得る工程と、金イオン又は金錯イオンを含む溶液に藻類を浸漬して金ナノ粒子を生成させる工程と、を含む、金ナノ粒子の製造方法を示す。
【0061】
金属元素含有物質、並びに硝酸及び塩を含む溶解液の詳細は、上述のとおりである。金属元素含有物質は、好ましくは金属元素として金のみを含む。金を含む金属元素含有物質に硝酸及び塩を含む溶解液を接触させて、金イオン又は金錯イオンを含む溶液を得る工程の詳細は、金属元素含有物質に硝酸及び塩を含む溶解液を接触させて、金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液を得る上述の工程と同様である。
【0062】
金イオン及び金錯イオンを含む溶液の詳細は、金属イオン又は金属錯イオンとして少なくとも金イオン又は金錯イオンを必ず含むこと以外は、金属イオン又は金属錯イオンを含む上述の溶液と同様である。すなわち、金イオン又は金錯イオンを含む溶液は、金イオン又は金錯イオン以外の金属イオン又は金属錯イオンを含んでもよい。金イオン又は金錯イオンを含む溶液は、好ましくは金属イオン又は金属錯イオンとして金イオン又は金錯イオンのみを実質的に含む。
【0063】
金イオン又は金錯イオンを含む溶液に藻類を浸漬して金ナノ粒子を生成させる工程の詳細は、金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液に藻類を浸漬して金属を生成させる上述の工程と同様である。
【0064】
金ナノ粒子の製造方法は、生成した金ナノ粒子を回収する工程をさらに含んでよい。生成した金ナノ粒子を回収する工程の詳細は、生成した金属を回収する上述の工程と同様である。
【0065】
金属元素含有物質から金属を回収する上記方法の一実施形態によれば、藻類に金属を吸着させてから藻類を回収、成形、及び焼成することで、金属を金属成形物の形態で回収することができる。したがって、本開示の一側面は、金属成形物の製造方法を示す。金属成形物の製造方法は、金属元素含有物質に硝酸及び塩を含む溶解液を接触させて、金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液を得る工程と、金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液に藻類を浸漬して、金属を生成させるとともに該金属を藻類に吸着させる工程と、金属を吸着させた藻類を回収する工程と、回収した藻類を成形する工程と、成形された藻類を焼成して、金属成形物を得る工程と、を含む。
【0066】
金属元素含有物質、並びに硝酸及び塩を含む溶解液の詳細は、上述のとおりである。金属元素含有物質に硝酸及び塩を含む溶解液を接触させて、金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液を得る工程の詳細は、上述のとおりである。
【0067】
金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液及び藻類の詳細は上述のとおりである。金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液に藻類を浸漬して、金属を生成させるとともに該金属を藻類に吸着させる工程の詳細は、金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液に藻類を浸漬して金属を生成させる上述の工程と同様である。ただし、金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液に藻類を浸漬する際の温度は、藻類からの金属ナノ粒子の遊離を低減し、藻類に吸着した金属ナノ粒子の量を増やすことが可能な温度に調節することが好ましい。すなわち、浸漬時の温度は、好ましくは10~100℃、より好ましくは50~100℃、さらに好ましくは70~100℃である。また、藻類からの金属ナノ粒子の遊離を低減し、藻類に吸着した金属ナノ粒子の量を増やすために、好ましくは800nm以下、より好ましくは545nm以下、さらに好ましくは490nm以下、特に好ましくは400nm以下(すなわち紫外線)の波長を有する光を、金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液に照射してよい。
【0068】
金属を吸着させた藻類を回収する方法は特に限定されず、例えば、藻類が浸漬された溶液をろ過することにより、該溶液から藻類を回収してもよい。
【0069】
回収した藻類を成形する工程では、藻類を所望の形(例えば、星形又はハート形)に成形する。藻類を成形する方法は特に限定されず、例えば、所望の形を有する型に藻類を入れることで、藻類を成形することができる。
【0070】
成形された藻類を焼成する工程における焼成の条件は、上述した焼成の条件と同様であってよい。
【0071】
金属成形物は身飾品用であってよい。すなわち、製造した金属成形物は、ネックレス、イヤリング等の身飾品として応用できる。
【0072】
以上述べたとおり、本開示によれば、例えば都市鉱山から金属を所望の形態で回収することが可能であるため、持続可能な開発目標(SDGs)の目標12「持続可能な消費と生産のパターンを確保する」に貢献することができる。
【実施例】
【0073】
以下の試験例において、ppmは全て質量ppmであり、藻/Au比、藻/Rh比、及び藻/Pt比とは、それぞれ金、ロジウム、及び白金の質量に対する藍藻の質量の比である。別段の記載がない限り、以下の試験例は、20~30℃の室温(RT)で、白色発光ダイオード(LED)(465~800nm)の室内照明下で行った。以下の試験例において、人工海水は、マリンアート SF-1(大阪薬研株式会社製)を溶解させた水(塩濃度:3.8質量%)である。マリンアート SF-1に含まれる成分は次のとおりである:塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化カリウム、臭化カリウム、無水塩化ストロンチウム、塩化リチウム、塩化マンガン、塩化アルミニウム、タングステン酸ナトリウム、塩化マグネシウム、無水硫酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ホウ砂、フッ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、塩化コバルト、塩化第二鉄、及びモリブデン酸アンモニウム。
【0074】
<藍藻の準備>
以下の試験例において、藍藻としては、受託番号FERM BP-22385(原寄託日:2020年1月17日)として、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センター(IPOD)(郵便番号292-0818、日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 120号室)に寄託されたレプトリングビア属の藍藻の乾燥粉末を用いた。以下の試験例(ただし、試験例1及び2を除く)において用いた藍藻は、次のように準備した。
(1)藍藻を培養し、培養液をろ過して藍藻を1.5L(乾燥状態で約1.5g)回収した。
(2)約4Lの水道水に藍藻を10分間浸漬し、時折かくはんすることで、藍藻を洗浄した。この洗浄を3回行い、フッ素樹脂製洗浄カゴを用いて水を切った。
(3)水道水の代わりに純水を用いて、(2)と同様の洗浄を3回行った。
(4)2Lの7質量%塩酸溶液に藍藻を10分間浸漬し、ステンレスざるを用いてろ過した。約4Lの純水に藍藻を10分間浸漬し、時折かくはんすることで、藍藻を洗浄した。
(5)約4Lの純水に藍藻を10分間浸漬し、時折かくはんすることで、藍藻を洗浄した。この洗浄を3回行い、ステンレスざるを用いて水を切った。
(6)藍藻を空気中で乾燥させた後、ドライポンプを用いてさらに真空乾燥させた。
(7)ワンダークラッシャーWC-3L(大阪ケミカル株式会社製)を用いて藍藻を粉砕し、粉末状の藍藻乾燥物を得た。
【0075】
<金属の吸着率>
以下の試験例において、藍藻への金属(例えば金)の吸着率は次のように求めた。藍藻浸漬後の金属溶液をろ過し、ろ液中の金属元素濃度を誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)により測定した。下式から吸着率を算出した。
吸着率(%)=(藍藻を加える前の金属溶液中の金属元素濃度)-(ろ液中の金属元素濃度)/(藍藻を加える前の金属溶液中の金属元素濃度)×100
【0076】
<金ナノ粒子の密度>
以下の試験例において、藍藻の表面に吸着した金ナノ粒子の密度(個/cm2)は、藍藻のSEM画像(2~10万倍)中の、白い点として観察される金ナノ粒子の数を数えることで求めた。
【0077】
<試験例1>藍藻の塩酸処理
藍藻の乾燥粉末を上述のとおり調製した。ただし、(4)の塩酸処理及び洗浄は1~3回行った。塩酸廃液に含まれる元素をICP-MSにより分析した。また、塩酸処理前後の藍藻の元素組成をX線光電子分光法(XPS)により分析した。
【0078】
塩酸廃液に含まれる元素を
図1に示す。
図1中、リファレンスは7質量%塩酸溶液である。1ppbはICP-MSの検出限界である。
図1に示されるように、3回目の塩酸処理でも、P、B、Cr、及びFeの溶出が続いていた。なお、P及びBは藍藻の構成元素であり、Cr及びFeはろ過に用いたステンレスざるから溶出したと考えられる。藍藻の元素組成を表1に示す。塩酸で藍藻を処理することにより、藍藻の主な構成元素は、C、N、O、P、及びSのみになった。
【0079】
【0080】
四塩化金酸・四水和物を溶解させたイオン交換水(金濃度:0.57ppm)500mLに0.1gの上記藍藻の乾燥粉末を加え、該四塩化金酸水溶液を500rpmでかくはんしながら、藍藻を1時間浸漬した(藻/Au比:351)。藍藻を含む溶液を油こし紙でろ過し、ろ液中の金濃度から、藍藻への金の吸着率を算出した。結果を表2に示す。藍藻を塩酸で1回又は2回処理した場合、藍藻を塩酸で3回処理した場合と比較して、金の吸着率が高かった。
【0081】
【0082】
<試験例2>藍藻のエタノール処理
藍藻の乾燥粉末を上述のとおり調製した。ただし、(4)の塩酸処理及び洗浄の後に、500mLのエタノールに藍藻を約30分間浸漬する工程を追加した。エタノール廃液(黄黒色)の吸収スペクトルを求めることで、エタノール廃液中に溶出された成分を分析した。また、エタノール処理後の藍藻の元素組成をXPSで分析した。
【0083】
エタノール廃液の吸収スペクトルを
図2に示す。吸収スペクトルから、エタノール処理によって、光合成色素(クロロフィルa、フィコエリトリン、及びフィコシアニン)が溶出したことが分かった。エタノール処理後の藍藻の元素組成を表3に示す。塩酸処理後に藍藻をエタノールで処理することにより、塩酸処理後には残存していたP及びSが消失し、藍藻の主な構成元素は、C、O、及びNのみになった。
【0084】
【0085】
四塩化金酸・四水和物を溶解させたイオン交換水500mLに0.3gの上記藍藻の乾燥粉末を加え、該四塩化金酸水溶液を500rpm又は750rpmでかくはんしながら、藍藻を3時間浸漬した。藍藻を含む溶液を油こし紙でろ過し、ろ液中の金濃度から、藍藻への金の吸着率を算出した。浸漬の条件及び吸着率を表4に示す。また、ろ液の吸収スペクトルを
図3に示す。比較のため、エタノール処理をしなかった藍藻を用いて、同様に金の吸着率及び吸収スペクトルを求めた。
【0086】
【0087】
藍藻をエタノールで処理した場合、藍藻をエタノールで処理しなかった場合と比較して、金の吸着率が大幅に向上した。また、藍藻をエタノールで処理した場合、510~650nmの吸光度が1.7倍上昇した。これは、ろ液中の金ナノ粒子の濃度が、藍藻のエタノール処理により1.7倍上昇したことを示す。
【0088】
<試験例3>浸漬条件の検討
金属溶液500mLに藍藻の乾燥粉末を加え、該溶液を500rpmでかくはんしながら藍藻を浸漬した。浸漬の条件を表5に示す。藍藻を含む溶液を油こし紙でろ過し、ろ液中の金濃度から、藍藻への金の吸着率を算出した。金属溶液として、参考例6~15では四塩化金酸・四水和物を溶解させたイオン交換水を用いて、参考例16では温泉水を用いた。結果を表5に併せて示す。
【0089】
【0090】
四塩化金酸水溶液中の金が極低濃度(0.12ppm)でも、80%を超える吸着率が得られた。藍藻の量が多いほど(すなわち、藻/Au比が大きいほど)、吸着率が高くなる傾向があった。浸漬時間は吸着率に影響を与えなかった。
【0091】
金属溶液として温泉水を用いた参考例16では、金以外の金属についてもろ液中の濃度を測定し、吸着率を算出した。結果を
図4の(A)及び(B)に示す。
図4の(A)はろ液中の金属濃度を示し、
図4の(B)は金属の吸着率を示す。1ppbはICP-MSの検出限界である。
【0092】
<試験例4>金ナノ粒子の分析1
四塩化金酸・四水和物を溶解させたイオン交換水200mLに0.2gの藍藻の乾燥粉末を加え、該四塩化金酸水溶液を500rpmでかくはんしながら、藍藻を25℃で1~48時間浸漬した。溶液中の金濃度は、12.5ppm、25ppm、50ppm、125ppm、250ppm、500ppm、1000ppm、2500ppm、5000ppm、又は10000ppmに調節した。油こし紙、ろ紙(1.6μm)、及びろ紙(0.7μm)をこの順に用いて藍藻を含む溶液をろ過し、藍藻を乾燥させた。藍藻の表面をSEMにより観察し、藍藻の表面に吸着した金ナノ粒子の密度を測定した。結果を
図5の(A)及び(B)に示す。
【0093】
図5の(A)は、四塩化金酸水溶液中の金濃度と藍藻の表面に吸着した金ナノ粒子の密度との関係を示す。50ppm以上の金濃度では、金濃度が低いほど(すなわち、藻/Au比が大きいほど)、藍藻の表面に吸着した金ナノ粒子の密度が上昇することが示された。8時間以下の浸漬時間では、浸漬時間が長くなるほど、藍藻の表面に吸着した金ナノ粒子の密度が上昇する傾向があった。
図5の(B)は、四塩化金酸水溶液(金濃度:25ppm)に24時間浸漬した藍藻の表面のSEM画像である。
図5の(B)の左の画像は一万倍の像であり、右の画像は五万倍の像である。これらの画像から、藍藻の表面にナノ粒子が吸着していることが明らかである。また、透過電子顕微鏡(TEM)及びX線回折(XRD)を用いた分析から、藍藻の表面に吸着したナノ粒子が金単結晶であることが確認された。
【0094】
<試験例5>金ナノ粒子の分析2
四塩化金酸・四水和物を溶解させたイオン交換水(金濃度:50ppm)200mLに0.2gの藍藻の乾燥粉末を加え、該四塩化金酸水溶液を500rpmでかくはんしながら、藍藻を50℃又は75℃で24時間浸漬した。油こし紙、ろ紙(1.6μm)、及びろ紙(0.7μm)をこの順に用いて藍藻を含む溶液をろ過し、藍藻を乾燥させた。藍藻の表面をSEMで観察し、藍藻の表面に吸着した金ナノ粒子の密度を測定した。ろ液は回収し、その吸光度を測定した。
【0095】
藍藻の表面に吸着した金ナノ粒子の密度を表6に示す。比較のため、25℃で藍藻を浸漬した試験例4における金ナノ粒子の密度を併せて表6に示す。浸漬時の温度が50℃又は75℃の場合、ナノ粒子の密度が、浸漬時の温度が25℃の場合の2倍程度に上昇した。
【0096】
【0097】
図6にろ液の吸収スペクトルを示す。浸漬時の温度が50℃又は75℃の場合、ろ液は透明であり、510~650nmにおける吸収が見られなかったことから、ろ液中には金ナノ粒子がほとんど含まれていないことが分かった。一方、浸漬時の温度が25℃の場合は、ろ液が金ナノ粒子に特有の赤色を帯びており、ろ液中に金ナノ粒子が存在していることが示唆された。
【0098】
<試験例6>金ナノ粒子の分析3
四塩化金酸・四水和物を溶解させたイオン交換水(金濃度:100ppm)200mLを含むビーカーに0.3gの藍藻の乾燥粉末を加え、該四塩化金酸水溶液を300rpmでかくはんしながら、藍藻を白色LED(435~800nm)の室内照明下、30℃で3日間浸漬した。藍藻を含む溶液をろ過し、ろ液の吸光度を測定した。同様の実験を、紫外線(UV)LED(350~400nm、照射強度:150mW(放射束の強度単位))、青色LED(435~490nm、照射強度:200mW(放射束の強度単位))、若しくは緑色LED(495~545nm、照射強度:200mW(放射束の強度単位))を照射しながら、又はビーカー全体を赤黄色セロファン(600nm以下の光を吸収。ビーカー内は600~800nm、100mW(放射束の強度単位)の光で照射された。)で覆いながら行った。また、同様の実験を、ビーカー全体をアルミホイルで覆うことで遮光しながら行った。各ろ液の吸光度を
図7に示す。
【0099】
図7において、リファレンスは藍藻を浸漬する前の四塩化金酸水溶液である。
図7に示されるように、溶液をアルミホイルで遮光した場合(暗条件)は、溶液を遮光しなかった場合(明条件)と比較して510~650nmの吸光度が高かった。また、溶液に照射する光が高エネルギーであるほど、510~650nmの吸光度が低下した。これらの結果から、遮光された暗条件下では、生成した金ナノ粒子は、藍藻から溶液中に遊離する傾向があるのに対し、溶液に光を照射すると、生成した金ナノ粒子の藍藻からの遊離が低減し、より多くの金属ナノ粒子が藍藻に吸着したままになることが分かった。また、照射する光が高エネルギーであるほど、金ナノ粒子の遊離が低減し、藍藻に吸着した金ナノ粒子の量が増えることも分かった。
【0100】
<試験例7>金ナノ粒子の分析4
四塩化金酸・四水和物を溶解させたイオン交換水(金濃度:50ppm又は200ppm)200mLに0.2gの藍藻の乾燥粉末を加え、該四塩化金酸水溶液を500rpmでかくはんしながら、藍藻を25℃で24時間浸漬した。油こし紙、ろ紙(1.6μm)、及びろ紙(0.7μm)をこの順に用いて藍藻を含む溶液をろ過した。ろ液を回収し、ろ液中の金ナノ粒子をTEMにより観察した。
【0101】
TEM画像を
図8に示す。
図8の左の画像は50ppmの金を含む四塩化金酸水溶液から得られた金ナノ粒子を示し、右の画像は200ppmの金を含む四塩化金酸水溶液から得られた金ナノ粒子を示す。金濃度が200ppmの場合は金ナノ粒子の一部が凝集したのに対し、金濃度が50ppmに場合は金ナノ粒子が凝集せず、金ナノ粒子が分散した金コロイド溶液が得られた。
【0102】
金濃度50ppmの四塩化金酸水溶液から得られた金コロイド溶液中の金ナノ粒子のゼータ電位を、動的光散乱法(DLS)により測定した。ゼータ電位は-20mVであり、これは金ナノ粒子が溶液中に安定的に分散できることを示す。
【0103】
<試験例8>金ナノ粒子の分析5
試験例7における金濃度50ppmの四塩化金酸水溶液から得られた金コロイド溶液について、金ナノ粒子の表面状態を解明するために種々の分析を行った。
【0104】
まず、金コロイド溶液中の金ナノ粒子の平均粒子径を、動的光散乱法(DLS)により、及び510~650nmの吸光度を測定することにより求めた。DLSにより測定された平均粒子径は105nmであった。一方、金コロイド溶液の吸収極大波長から算出された平均粒子径は約90nmであった。DLSによって求められる粒子径はストークス半径に対応する(すなわち、反応に関与する構造全体を粒子として仮定した場合の粒子径である)のに対し、吸光度から算出される粒子径は金ナノ粒子それ自体の粒子径である。したがって、これら平均粒子径の差(15nm)は、金ナノ粒子の表面修飾構造の大きさであると推定される。
【0105】
次に、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)により、金コロイド溶液中に存在する分子種を分析した。分析用のサンプルは、清浄なSi基板(10mm×10mm)上の直径約10mmの領域に、ホットプレートで100℃に加熱しながら金コロイド溶液を合計3mL塗布及び乾燥させることで調製した。TOF-SIMSの結果を
図9に示す。AuC
2N
2及びAu
2C
3N
3が有意に観察された。また、CN、CNO、及びCOOH等のフラグメントも確認された。これらの結果から、金ナノ粒子中にAuCN系の化合物が存在していることが強く示唆された。
【0106】
次に、全反射測定法(ATR)を利用したフーリエ変換赤外線分光法(FT-IR)により、金コロイド溶液中に存在する分子種を分析した。分析用のサンプルは、金コロイド溶液を上記と同様にしてSi基板に塗布及び乾燥させた後、乾燥物を削り落としてクリスタルに挟むことにより調製した。FT-IRの結果を
図10に示す。コロイド溶液は、アミド結合、タンパク質、及びデンプンを有することが分かった。また、C-H-O系の結合も観察された。
【0107】
以上の結果から、金ナノ粒子には、C、O、N、及びHを主成分とし、アミド結合を有するAuCN系の分子である、10~50nmのサイズの表面修飾が存在すること分かった。これらの特徴から、推定される金ナノ粒子の表面修飾としては、アミノ酸が複数結合してなるタンパク質が有力である。
【0108】
<試験例9>金ナノ粒子の単離
四塩化金酸・四水和物を溶解させたイオン交換水(金濃度:50ppm)200mLに0.2gの藍藻の乾燥粉末を加え、該四塩化金酸水溶液を500rpmでかくはんしながら、藍藻を25℃で3時間浸漬した。油こし紙、ろ紙(1.6μm)、及びろ紙(0.7μm)をこの順に用いて藍藻を含む溶液をろ過した。ろ液(金コロイド溶液)は回収し、その吸光度を測定した。藍藻はイオン交換水200mLに懸濁し、25℃、38kHzで1時間超音波処理した。超音波処理後の溶液をろ紙(0.7μm)を用いてろ過し、ろ液の吸光度を測定した。また、超音波処理の前後に藍藻の表面をSEMにより観察し、藍藻の表面に吸着した金ナノ粒子の密度を測定した。
【0109】
藍藻表面のSEM画像を
図11の(A)に示す。
図11の(A)の左の画像は超音波処理前の藍藻の表面を示し、右の画像は超音波処理後の藍藻の表面を示す。超音波処理前の藍藻に吸着していた金ナノ粒子の密度は4×10
9個/cm
2であり、超音波処理後の藍藻に吸着していた金ナノ粒子の密度は1×10
9個/cmであった。
【0110】
図11の(B)にろ液の吸収スペクトルを示す。藍藻を超音波処理する前とした後の両方のろ液で、金ナノの粒子に由来する510~650nmの吸収が見られた。なお、藍藻の超音波処理により得られた金コロイド溶液は、超音波処理前に回収した金コロイド溶液より赤みを帯びており、その吸収波長は短波化していた。これは、藍藻の超音波処理により得られた金コロイド溶液中の金ナノ粒子の粒子径がより小さかったことを示す。
【0111】
これらの結果から示されるように、藍藻を超音波処理することにより、藍藻に吸着した金ナノ粒子の7割程度を、金コロイド溶液として回収することができた。
【0112】
<試験例10>金ナノ粒子の分級
四塩化金酸・四水和物を溶解させたイオン交換水(金濃度:50ppm)200mLに0.3gの藍藻の乾燥粉末を加え、該四塩化金酸水溶液を500rpmでかくはんしながら、藍藻を25℃で3時間浸漬した。油こし紙、ろ紙(1.6μm)、及びろ紙(0.7μm)をこの順に用いて藍藻を含む溶液をろ過した。ろ液(金コロイド溶液)を1.5mL遠心管に回収し、2500×gで30分間遠心した。
【0113】
遠心前のコロイド溶液と遠心後の上清の吸収スペクトルを
図12に示す。遠心により大きな粒子が沈殿し、コロイド溶液中の中心粒子径が70nm(544nmでの吸収に対応)から55nm(535nmでの吸収に対応)に変化した。以上の結果から、金コロイド溶液中の金ナノ粒子の粒径を遠心分離により揃えることができることが示された。
【0114】
<試験例11>金の回収
四塩化金酸・四水和物を溶解させたイオン交換水(金濃度:5000ppm、金の絶対量:5.0g、pH:2.5)1Lに5.0gの藍藻の乾燥粉末を加え、該四塩化金酸水溶液をかくはんしながら、藍藻を3時間浸漬した(藻/Au比:1)。藍藻を含む溶液を油こし紙でろ過し、藍藻を一日以上自然乾燥させた。SiC製のるつぼに乾燥させた藍藻を入れ、電気炉を用いて大気中、800℃で一時間及び1000℃で一時間加熱した。
【0115】
加熱後、るつぼを室温に戻したところ、黄色の粒状の金が0.39g得られていた。金の初期質量に対する収率は約8%と、高回収率であった。純度が3N(99.9%以上)の金はくすんだ赤茶色であるが、純度が4N(99.99%以上)以上の金は黄金色である。したがって、回収された金は、その色合いから、極めて高い純度を有することが分かった。また、得られた金の元素組成をXPSで分析したところ、99.9%超がAuであり、0.1%未満のP及びOが含まれていた。藍藻に含まれるリンは揮発しにくいため、検出されたPは藍藻に由来すると思われる。試験例2で示されたように、塩酸処理後に藍藻をエタノールで処理することにより、藍藻に含まれるリンを除去することができるため、エタノール処理をした藍藻を用いることで、より純度の高い金を得られると予想される。
【0116】
<試験例12>金成形物の作製
四塩化金酸・四水和物を溶解させたイオン交換水(金濃度:2000ppm)500mLに2.5gの藍藻の乾燥粉末を加え、該四塩化金酸水溶液を500rpmでかくはんしながら、藍藻を25℃で3時間浸漬した。藍藻を含む溶液を油こし紙でろ過し、藍藻を水で洗浄した後、ドライヤーで5分間予備乾燥させた。星形及びハート形の型を用いて藍藻を成形し、一日自然乾燥させた。SiC製のるつぼに乾燥させた藍藻を入れ、電気炉を用いて大気中、800℃で一時間及び1000℃で一時間加熱した。加熱後、るつぼを室温に戻した。
図13に示すように、星形及びハート形の金を得ることができた。
【0117】
<試験例13>都市鉱山からの金属の回収
3質量%の硝酸を含む人工海水(塩濃度:3.8質量%)400mLに金線(金属源)0.12gを加え、200℃、500rpmで20時間かくはんして金線を溶解させた。得られた金溶液に3gの藍藻の乾燥粉末を加え、金溶液をかくはんしながら、藍藻を3時間浸漬した。藍藻を含む溶液を油こし紙でろ過し、藍藻を乾燥させた。乾燥させた藍藻を800℃で1時間及び1000℃で1時間焼成した。焼成残さの元素組成をXPSにより分析し、金の回収率を下式のとおり算出した。
金の回収率(%)=(焼成残さの質量)×(焼成残さ中の金の割合)/(金属源に含まれる金の質量)
【0118】
金線の代わりに金メッキを含む電子基板19.9g(推定総金属量:0.4g、推定金量:0.02g)を金属源として用いて同様の実験を行い、金の回収率を算出した。金属の溶解の条件及び藍藻の浸漬の条件と併せて、結果を表7に示す。
【0119】
【0120】
金属源として金線及び電子基板のいずれを用いた場合にも、金を回収することができた。金属源として電子基板を用いた場合は、金の他に銀、スズ、銅、及びコバルトも回収することができた。実施例17については、人工海水の替わりに根岸湾の海水を用いた場合にも、金線が溶解した。
【0121】
実施例17における金回収率を、四塩化金酸水溶液に藍藻を浸漬した試験例3の参考例6、8~13における藍藻への金の吸着率と併せて、
図14に示すグラフにプロットした。
図14より、金線を溶解することにより得られた金溶液に藍藻を浸漬した場合の金の回収率は、四塩化金酸水溶液に藍藻を浸漬した場合の金の吸着率とほぼ一致した。
【0122】
ここで藍藻の利用効率について検討する。
図14に示すように、藻/Au比が50のとき、金の吸着率は35%程度である。この藻/Au比で、0.02gの金を含有する金属溶液を用いて80%以上の回収率を達成するには、表8に示すように、藍藻への金の吸着及び吸着した金の回収操作を4回行う必要があると推定される。この場合に必要な藍藻の合計量はわずか2.35gである。一方、同じ金属溶液を用いて一回の吸着及び回収操作で80%以上の収率を達成するためには、推定800gもの藍藻が必要となる。したがって、藍藻の利用効率の観点からは、一度に高い藻/Au比で金の回収を行うよりも、低い藻/Au比で、多段階で金の回収を行う方が好ましい。
【0123】
【0124】
上記の結果から、様々な藻/Au比について、一回の吸着及び回収操作あたりの金の回収率、80%の金を回収するのに必要な吸着及び回収操作の回数、並びに溶液中に1g相当の金が含まれる場合に80%の金を回収するのに必要な藍藻の量を算出した。結果を表9に示す。
【表9】
【0125】
<試験例14>金の溶解条件の検討1
0~50質量%の硝酸を含む人工海水(塩濃度:3.80質量%)100mLに金配線を含む電子基板1g(推定総金属量:0.02g)を加え、金配線が完全に溶解するまで、200℃、300rpmでかくはんした。得られた金属溶液に0.2gの藍藻の乾燥粉末を加え、金属解液を300rpmでかくはんしながら、藍藻を3時間浸漬した。藍藻を含む溶液を油こし紙でろ過し、藍藻を乾燥させた。乾燥後の藍藻の質量を測定し、下式のとおり藍藻の残存率を算出した。
藍藻の残存率(%)=(金属溶液から回収した藍藻の乾燥質量)÷(金属溶液に加えた藍藻の質量)×100
【0126】
人工海水中の硝酸の濃度、金配線の溶解にかかった時間、及び藍藻の残存率を表10に示す。
【0127】
【0128】
人工海水中の硝酸の濃度が2質量%以上であると、金配線を完全に溶解することができた。硝酸濃度が20質量%以下の場合は、硝酸濃度が高いほど、金配線の溶解にかかる時間は短かった。一方、硝酸の濃度が高くなるほど藍藻も溶けやすくなり、浸漬後の藍藻の残存率が低下した。
【0129】
<試験例15>金の溶解条件の検討2
10質量%の硝酸及び0.1~20質量%の塩(マリンアート SF-1(大阪薬研株式会社製))を含む溶液100mLに金配線を含む電子基板1g(推定総金属量:0.02g)を加え、金配線が完全に溶解するまで、200℃、300rpmでかくはんした。
【0130】
溶液中の塩濃度と溶解にかかった時間を表11に示す。塩濃度が高いほど、金配線をより短時間で溶解することができた。塩濃度が0.1質量%の場合は、48時間経過しても、金配線が溶けきらなかった。
【0131】
【0132】
塩濃度が10質量%の場合について、得られた金属溶液に試験例14と同様にして藍藻を浸漬し、藍藻の残存率を求めた。残存率は約79%で、塩濃度が3.8%の場合と差はなかった。この結果から、溶液中の塩の濃度は、金の溶解には影響を与えるものの、藍藻の溶解には影響を与えないことが分かった。
【0133】
<試験例16>異なる金属の吸着
塩化ロジウム、四塩化パラジウム酸ナトリウム、六塩化白金酸、及び四塩化金酸を溶解させたイオン交換水200mLに藍藻の乾燥粉末を加え、得られた金属溶液をかくはんしながら、藍藻を3時間、室温で浸漬した。浸漬した藍藻の量、金属溶液中の各金属元素の濃度、及び各金属の質量に対する藍藻の質量の比を表12に示す。藍藻を含む溶液をろ過し、ろ液中の各金属の濃度から、藍藻への各金属の吸着率を算出した。吸着率を表12及び
図15に示す。
【0134】
【0135】
ロジウム、パラジウム、白金、及び金のいずれの金属も、藍藻に吸着することができた。ロジウム及び白金については、金属溶液中のロジウム、白金の質量に対する藍藻の質量の比がそれぞれ1~11、1~16程度であると、これらの金属は藍藻にほとんど吸着しなかった。このことから、ロジウム、パラジウム、白金、及び金のイオン又は錯イオンを含む溶液において、藻/Rh比が11以下かつ藻/Pt比が16以下の場合は、金及びパラジウムを選択的に回収できることが示された。
【0136】
<試験例17>金の溶解条件の検討3
四塩化金酸・四水和物を溶解させた1~10質量%王水(金濃度:10ppm)200mLに0.20gの藍藻の乾燥粉末を加え、該四塩化金酸水溶液をかくはんしながら、藍藻を25℃で1日浸漬した(藻/Au比:100)。藍藻を含む溶液をろ過し、ろ液中の金濃度から、藍藻への金の吸着率を算出した。また、回収した藍藻を乾燥させた後、乾燥後の藍藻の質量を測定し、試験例14と同様にして藍藻の残存率を算出した。結果を表13に示す。
【0137】
【0138】
藍藻を浸漬する王水の濃度が高いほど金の吸着率が低下し、王水の濃度が10質量%(すなわち、塩酸濃度が2.6質量%かつ硝酸濃度が1.5質量%)の場合は、6%の金しか藍藻に吸着することができなかった。
【0139】
[付記]
[1] 金属元素含有物質に硝酸及び塩を含む溶解液を接触させて、金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液を得る工程と、
金属イオン又は金属錯イオンを含む前記溶液に藻類を浸漬して金属を生成させる工程と、を含み、
前記溶解液中の硝酸の濃度は2~50質量%であり、
前記溶解液中の前記塩の濃度は0.5質量%以上である、金属元素含有物質から金属を回収する方法。
[2] 前記藻類がレプトリングビア属の藍藻である、[1]に記載の方法。
[3] レプトリングビア属の前記藍藻が、受託番号FERM BP-22385(原寄託日:2020年1月17日、寄託当局:独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センター(IPOD)(郵便番号292-0818、日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 120号室))として寄託されたレプトリングビア属の藍藻である、[2]に記載の方法。
[4] 前記溶解液中の硝酸の濃度が3~20質量%である、[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[5] 前記溶解液中の塩酸の濃度が20質量%以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の方法。
[6] 前記金属元素含有物質が、金、パラジウム、白金、及びロジウムからなる群より選ばれる少なくとも一種を含み、
金属イオン又は金属錯イオンを含む前記溶液が、金、パラジウム、白金、及びロジウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属のイオン又は錯イオンを含む溶液であり、
回収する前記金属が、金、パラジウム、白金、及びロジウムからなる群より選ばれる少なくとも一種である、[1]~[5]のいずれかに記載の方法。
【要約】
金属元素含有物質から金属を回収する方法は、金属元素含有物質に硝酸及び塩を含む溶解液を接触させて、金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液を得る工程と、金属イオン又は金属錯イオンを含む溶液に藻類を浸漬して金属を生成させる工程と、を含み、硝酸及び塩を含む溶解液中の硝酸の濃度は2~50質量%であり、硝酸及び塩を含む溶解液中の塩の濃度は0.5質量%以上である。