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特許7243953回路板構造及び絶縁基板を形成するための組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】回路板構造及び絶縁基板を形成するための組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/10 20060101AFI20230314BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20230314BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20230314BHJP
   C08K 5/56 20060101ALI20230314BHJP
   C08L 67/03 20060101ALI20230314BHJP
   C08L 79/00 20060101ALI20230314BHJP
   H01B 1/02 20060101ALI20230314BHJP
   H01B 1/04 20060101ALI20230314BHJP
   H01B 1/12 20060101ALI20230314BHJP
   H01B 3/00 20060101ALI20230314BHJP
   H01B 3/42 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
C08L77/10
C08K3/00
C08K5/00
C08K5/56
C08L67/03
C08L79/00 A
H01B1/02 Z
H01B1/04
H01B1/12 G
H01B3/00 A
H01B3/42
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018168267
(22)【出願日】2018-09-07
(65)【公開番号】P2020015886
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2018-09-07
【審判番号】
【審判請求日】2021-08-03
(31)【優先権主張番号】107125551
(32)【優先日】2018-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】514209308
【氏名又は名称】佳勝科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100116872
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 和子
(72)【発明者】
【氏名】李 弘榮
【合議体】
【審判長】杉江 渉
【審判官】海老原 えい子
【審判官】藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-295093(JP,A)
【文献】特開2011-32316(JP,A)
【文献】特開2008-37982(JP,A)
【文献】特開2006-8976(JP,A)
【文献】国際公開第2018/101214(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/056294(WO,A1)
【文献】特表2014-533325(JP,A)
【文献】特開2017-75339(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板を形成するための組成物において、 下記構造の繰り返し単位を有し、
【化1】
又はそれらの組み合わせであり、R、R及びRはC2n+1であり、且つnは、正整数である100重量部の変性液晶ポリマーと、 0.5重量部~85重量部である誘電体フィラーと、 を含み、 前記誘電体フィラーの平均粒径は、0.1~20μmであり、 前記変性液晶ポリマーは、可溶性であり、並びに、 前記誘電体フィラーは、セラミック材料、変性セラミック材料、導電性粒子、変性導電性粒子、有機材料及び変性有機材料からなる群から選ばれる、組成物。
【請求項2】
前記セラミック材料は、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、チタン酸バリウムストロンチウム(BST)、酸化チタン、酸化鉛、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、ペロブスカイト立方晶構造(CaCuTi12、CCTO)及びマグネシウムニオブ酸鉛-チタン酸鉛(PMN-PT)からなる群から選ばれる請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記変性セラミック材料は、シリル基を含有する変性基を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記導電性粒子は、炭素類粒子及び金属粒子を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記炭素類粒子は、カーボン60(C60)、グラフェン、カーボンブラック、炭素繊維及びカーボンナノチューブからなる群から選ばれる請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記金属粒子は、銀、アルミニウム、銅、ニッケル、亜鉛及び鉄からなる群から選ばれる請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記変性導電性粒子は、アミノ基、アニリノ基、カルボキサミド基、カルボキシル基及びヒドロキシル基からなる群から選ばれる変性基を含有する変性炭素類粒子を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記有機材料は、導電性ポリアニリン及び銅フタロシアニン(CuPc)からなる群から選ばれる請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記変性有機材料は、スルホン酸基、ヒドロキシル基、エーテル基、アミノ基及び(p-クロロメチルベンゼン)ビニル基からなる群から選ばれる変性基を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の前記絶縁基板を形成するための組成物を含む少なくとも1つの絶縁基板と、 前記絶縁基板に位置する少なくとも1つの再配線層と、 を備える回路板構造。
【請求項11】
前記絶縁基板と前記再配線層との間に位置する接着層を更に備える請求項10に記載の回路板構造。
【請求項12】
前記接着層は、フッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、アラルキルエポキシ樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーンゴム系樹脂、ポリ-p-キシレン系樹脂、液晶ポリマー、ビスマレイミド系樹脂及びポリイミド樹脂からなる群から選ばれる請求項11に記載の回路板構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁基板を形成するための組成物及び回路板構造に関する。
【背景技術】
【0002】
コンシューマ電子製品に対して、システムインパッケージ(System in Package;SIP)技術は、主に、コスト削減と小型化の特徴を示すべきである。素子を統合するためのプラットフォームとしての基板には、2つの方向がある。その一方は、よく見られる有機材料基板又は多層プリント回路基板(Printed Wiring Board;PWB)を使用するが、他方は、シリコン基板等の無機材料基板を使用する。後者は、通常、チップ回路やプロセスに組み合わせた小型化の利点を有するが、コストが考慮指標の1つである。前者の場合、低コストの機能に加えて、高密度相互接続(High-Density Interconnection;HDI)技術のような現時の高度なプロセス技術によって、また特殊材料に組み合わせて、システムインパッケージを達成させることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
また、情報通信製品の高速化、高周波化につれて、無線通信ネットワーク、衛星通信機器、高出力及び広帯域製品、高速コンピュータ及びコンピュータワークステーション等の次世代製品の開発に必要な基板材料としては、高ガラス転移温度(Glass Transition Temperature;Tg)、低損失係数(Dissipation Factor;Df)及び低誘電率(Dielectric Constant;Dk)を有するものでなければならない。現在、プリント回路基板(printed circuit board;PCB)に使用される銅箔基板は、量的にも技術的にも、主にエポキシ樹脂からなるFR-4板である。しかし、FR-4は、その誘電率や損失係数等の電気的特性が既に高周波の要求を満たすことができなくなっている。従って、高誘電率を有し、低損失係数を維持することのできる基板材料が業界で必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様は、絶縁基板を形成するための組成物を提供する。この組成物の組成成分を調整することで、絶縁基板の誘電定数値を制御することができる。
【0005】
前記絶縁基板を形成するための組成物において、
【化1】
【化2】
【化3】
【0006】
本発明のある実施形態によれば、誘電体フィラーは、セラミック材料、変性セラミック材料、導電性粒子、変性導電性粒子、有機材料及び変性有機材料からなる群から選ばれる。
【0007】
本発明のある実施形態によれば、セラミック材料は、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、チタン酸バリウムストロンチウム(BST)、酸化チタン、酸化鉛、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、ペロブスカイト立方晶構造(CaCuTi12、CCTO)及びマグネシウムニオブ酸鉛-チタン酸鉛(PMN-PT)からなる群から選ばれる。
【0008】
本発明のある実施形態によれば、変性セラミック材料は、シリル基を含有する変性基を含む。
【0009】
本発明のある実施形態によれば、導電性粒子は、炭素類粒子及び金属粒子を含む。
【0010】
本発明のある実施形態によれば、炭素類粒子は、カーボン60(C60)、グラフェン、カーボンブラック、炭素繊維及びカーボンナノチューブ(Carbon Nanotube;CNT)からなる群から選ばれる。
【0011】
本発明のある実施形態によれば、金属粒子は、銀、アルミニウム、銅、ニッケル、亜鉛及び鉄からなる群から選ばれる。
【0012】
本発明のある実施形態によれば、変性導電性粒子は、アミノ基、アニリノ基、カルボキサミド基、カルボキシル基及びヒドロキシル基からなる群から選ばれる変性基を含有する変性炭素類粒子を含む。
【0013】
本発明のある実施形態によれば、有機材料は、導電性ポリアニリン及び銅フタロシアニン(CuPc)からなる群から選ばれる。
【0014】
本発明のある実施形態によれば、変性有機材料は、スルホン酸基、ヒドロキシル基、エーテル基、アミノ基及び(p-クロロメチルベンゼン)ビニル基からなる群から選ばれる変性基を含む。
【0015】
本発明の別の態様は、回路板構造を提供することにある。この回路板構造は、少なくとも1つの絶縁基板と、少なくとも1つの再配線層と、を備える。この少なくとも1つの絶縁基板は、絶縁基板を形成するための上記のような組成物を含む。この少なくとも1つの再配線層は、絶縁基板に位置する。
【0016】
本発明のある実施形態によれば、この回路板構造は、絶縁基板と再配線層との間に位置する接着層を更に備える。
【0017】
本発明のある実施形態によれば、接着層は、フッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、アラルキルエポキシ樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーンゴム系樹脂、ポリ-p-キシレン系樹脂、液晶ポリマー、ビスマレイミド系樹脂及びポリイミド樹脂からなる群から選ばれる。
【0018】
下記添付図面の説明は、本発明の上記及び他の目的、特徴、メリット及び実施形態をより分かりやすくするためのものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は本発明の複数の実施形態による回路板構造を示す断面模式図である。
図2図2は本発明の複数の実施形態による回路板構造を示す断面模式図である。
図3図3は本発明の複数の実施形態による回路板構造を示す断面模式図である。
図4図4は本発明の複数の実施形態による回路板構造を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の内容についての記述をより詳細且つ完全にするために、以下、本発明の実施態様と具体的な実施例について説明的な叙述を提出するが、これは本発明の具体的な実施例を実施又は運用する唯一の形式ではない。下記で開示する各実施例において、有益な場合には互いに組み合わせ又は取り替わってもよいし、更なる記載又は説明をせずに、1つの実施例において他の実施例を加えてもよい。
【0021】
本開示内容の記述をより詳細化し充実させるためには、添付図面及び以下に述べられる各種の実施形態を参考することができ、図面において同じ番号は、同じ又は類似の素子を示す。
【0022】
本明細書で使用される用語は、一般的に、その通常の意味を表し、実践者を更にガイドするために、以下、特別な用語について具体的に定義する。便宜上、ある用語を例えばイタリック体及び/又は引用符等によって特別に標示することがある。その用語は、特別に標示されるかにかかわらず、その範囲や意味が如何なる影響も受けず、通常の用語の範囲や意味と同じである。同じことが1以上の形態で説明されてもよいことは、理解される。従って、本明細書では、1つ又は複数の用語に用いられる代替の言語と同義語が本明細書で使用されることがあるが、その用語が本明細書で論じられる内容において如何なる特殊の意味を有することを示唆することを意図するものではない。ある用語の同義語が使用されるが、1つ又は複数の同義語を繰り返し使用しても、他の同義語の使用が妨げられることはない。本明細書で論じられる如何なる例も、説明するためのものであり、如何なる形態により範囲や意義を限定することを意図するものではない。同様に、本発明は、本明細書に記載された各種の実施形態に限定されない。
【0023】
内容に特に明記されない限り、本明細書で使用される単数の用語は、複数の指示対象を含む。「一実施形態」のような特定の指示を参照することで、本開示の実施形態の少なくとも一方において、特定の特徴、構造や特性を示すので、各所の「一実施形態において」のような用語が特別な指示として現われる場合、同じ実施形態を参照する必要がなく、更に、1つ又は複数の実施形態では、これらの特定な特徴、構造や特性を状況に応じて適宜に組み合わせてもよい。
【0024】
本発明の一態様は、絶縁基板を形成するための組成物において、下記式(1)の構造の繰り返し単位を有する100重量部の変性液晶ポリマーと、0.5重量部~85重量部の誘電体フィラーと、を含む組成物を提供する。
【化4】
【0025】
【化5】
【0026】
【化6】
【0027】
【化7】
【化8】
【0028】
本発明の各種の実施例によれば、上記Arのいずれか1つは、任意のY及び任意のXと互いに組み合わせてよい。異なる組み合わせにおいて、同じ又は異なる技術的効果を有することがある。
【0029】
より詳しくは、上記の変性液晶ポリマーは、特定の溶剤に溶解して、変性液晶ポリマー溶液を形成することができる。例として、この特定の溶剤は、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、γ-ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、2-ブトキシエタノール及び2-エトキシエタノールからなる群から選ばれてよい。従来の液晶ポリマーと比べると、可溶性液晶ポリマーの特定溶剤への溶解度はより高い。理解すべきなのは、変性液晶ポリマー溶液は、コーティング等の類似なプロセスによって支持プレート上に形成し、また加熱プロセスによって溶剤を乾燥するまで蒸発させて変性液晶ポリマーを含む絶縁基板を形成することができる。
【0030】
例として、変性液晶ポリマー溶液は、上記溶剤の1つ及び芳香族液晶ポリエステルを含む芳香族液晶ポリエステル溶液であってもよい。芳香族液晶ポリエステルの固形分の重量百分率は、1wt%~85wt%であり、例えば、5wt%、15wt%、25wt%、35wt%、45wt%、55wt%、65wt%又は75wt%であってもよい。芳香族液晶ポリエステルの固形分の重量百分率がある数値よりも小さい場合、例えば1wt%よりも小さい場合、絶縁基板を必要な厚さにするために、複数回のコーティングプロセスが必要であり、かなり時間やコストがかかる。逆に、芳香族液晶ポリエステルの固形分の重量百分率がある数値よりも大きい場合、例えば85wt%よりも大きい場合、芳香族液晶ポリエステルの固形分は、溶剤に溶解しにくく糊化(gelatinization)が生じる。具体的には、芳香族液晶ポリエステルは、以下のような繰り返し単位を有し、
【化9】
Arは、1,4-フェニレン基、1,3-フェニレン基、2,6-ナフタレン基又は4,4′-ビフェニレン基であり、Yは、-O-又は-NH-であり、且つXは、カルボキサミド基、イミド基、アミジノ基、アミノカルボニルアミノ基、アミノノチカルボニル基、アミノカルボニルオキシ基、アミノスルホニル基、アミノスルホニルオキシ基、アミノスルホニルアミノ基、カルボキシルエステル、(カルボキシルエステル)アミノ基、(アルコキシカルボニル)オキシ基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシアミノ基、アルコキシアミノ基、シアナト基、イソシアナト基又はそれらの組み合わせである。
【0031】
誘電体フィラーの含有量がある数値、例えば85重量部よりも大きい場合、誘電体フィラーの間は互いに連通するので、材料が絶縁体から導電体に変わり、材料の誘電率や導電率が激しく変わり、更に絶縁基板としての性能を失う。複数の実施形態において、誘電体フィラーは、セラミック材料、変性セラミック材料、導電性粒子、変性導電性粒子、有機材料及び変性有機材料からなる群から選ばれる。より具体的には、複数の例示において、セラミック材料は、チタン酸バリウム(Barium Titanate;BT)、チタン酸鉛、チタン酸バリウムストロンチウム(Barium Strontium Titanate;BST)、酸化チタン、酸化鉛、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(ZrTi)O;PZT)、ペロブスカイト立方晶構造(CaCuTi12;CCTO)及びマグネシウムニオブ酸鉛-チタン酸鉛(PMN-PT)からなる群から選ばれる。複数の例示において、変性セラミック材料は、変性基を含む、変性セラミック材料の変性基がシリル基を含む。複数の例示において、導電性粒子は、炭素類粒子及び金属粒子を含む。例として、炭素類粒子は、カーボン60(C60)、グラフェン(Graphene)、カーボンブラック、炭素繊維及びカーボンナノチューブ(Carbon Nanotube;CNT)からなる群から選ばれる。金属粒子は、銀、アルミニウム、銅、ニッケル、亜鉛及び鉄からなる群から選ばれる。複数の例示において、変性導電性粒子は、変性基を含む変性炭素類粒子を含む。変性炭素類粒子の変性基は、アミノ基、アニリノ基、カルボキサミド基、カルボキシル基及びヒドロキシル基からなる群から選ばれる。複数の例示において、有機材料は、導電性ポリアニリン及び銅フタロシアニン(Copper Phthalocyanine;CuPc)からなる群から選ばれる。複数の例示において、変性有機材料は、スルホン酸基、ヒドロキシル基、エーテル基、アミノ基及び(p-クロロメチルベンゼン)ビニル基からなる群から選ばれる変性基を含む。理解すべきなのは、誘電体フィラーは、上記変性液晶ポリマーの溶液に加えてコーティング等の類似なプロセスによって支持プレート上に形成し、また加熱プロセスによって溶剤を乾燥するまで蒸発させて誘電率が高められた絶縁基板を形成する。注意すべきなのは、誘電体フィラーは、変性液晶ポリマーの溶液に溶解するものではなく、変性液晶ポリマーの溶液に均一に分散される。
【0032】
ある実施形態において、誘電体フィラーの平均粒径は、0.1~20μmである。複数の実施例によれば、誘電体フィラーの平均粒径がある数値、例えば0.1μmよりも小さい場合、誘電率の向上効果が著しくない。逆に、誘電体フィラーの平均粒径がある数値、例えば20μmよりも大きい場合、誘電体フィラー粒子の分散性を制御しにくく、且つ誘電体フィラー粒子の間にある互いの連通を容易にし、更に後の絶縁基板がその絶縁性能を失う。従って、誘電体フィラーの平均粒径は、例えば0.5μm、1.0μm、1.5μm、2.0μm、2.5μm、3.0μm、3.5μm、4.0μm、4.5μm、5.0μm、5.5μm、6.0μm、6.5μm、7.0μm、7.5μm、8.0μm、8.5μm、9.0μm、9.5μm、10.0μm、12.0μm、14.0μm、16.0μm又は18.0μmであってよい。
【0033】
一般的に、変性液晶ポリマー自体が優れた加工性、耐熱性、低吸水率、低い誘電率(Dk)(例えば、2~4にある)及び低い損失係数(Df)(例えば、0.003~0.008にある)の特性を有するので、本発明の絶縁基板を形成するための組成物は、上記誘電率を高めることができる誘電体フィラーを含み、誘電率を3~200の間に高め、且つ損失係数を0.003~0.008にあるようにしてよい。典型的に、誘電体材料は、誘電率の高低によって高誘電率(例えば、4よりも大きい)や低誘電率(例えば、4以下)に分けられる。高誘電体材料は、主に、電子製品の消費電力を削減するように、ゲート誘電体材料、エネルギー貯蔵材料及び無線通信材料等の分野に用いられるが、低誘電体材料は、主に、抵抗器の遅延(RC delay)による悪影響を低減するように、電子パッケージング材料の調製に使用される。
【0034】
他の代替的な実施形態において、絶縁基板を形成するための組成物は、変性ポリイミド(Polyimide;PI)及び誘電体フィラーを含んでよい。具体的には、変性ポリイミドは、芳香族モノマーや/又は他の吸水性を低下させるのに役立つ官能性モノマーを含む。例として、芳香族モノマーは、芳香族ジアミン、芳香族二無水物、芳香族ポリアミド、ポリフェニレンテレフタルアミド(polyphenylene terephthalamide;PPTA)、ポリ-p-フェニレンベンゾオキサゾール((poly(p-phenylene-2,6-benzobisoxazole;PBO)及びp-ヒドロキシ安息香酸と6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸との共重合体(poly(p-hydroxybenzoic acid-co-2-hydroxy -6-naphthoic acid))を含んでよい。誘電体フィラーの特徴や実施例については、上記において詳しく説明したので、ここで繰り返して説明しない。
【0035】
本発明の別の態様は、回路板構造10を提供する。図1図4は、本発明の複数の実施形態による回路板構造を示す断面模式図である。まず図1を参照されたい。回路板構造10は、少なくとも1つの絶縁基板12と、少なくとも1つの再配線層14と、を含む。この少なくとも1つの絶縁基板12は、上記に記載の絶縁基板を形成するための組成物を含む。つまり、この少なくとも1つの絶縁基板12を形成する組成物は、100重量部の変性液晶ポリマーと、0.5重量部~85重量部の誘電体フィラーと、を含む。変性液晶ポリマー及び誘電体フィラーの両者の特徴及び実施例については、上記において詳しく説明したので、ここで繰り返して説明しない。この少なくとも1つの再配線層14は、絶縁基板に位置する。
【0036】
ある実例において、再配線層14の材料は、銅、アルミニウム、鉄、銀、パラジウム、ニッケル、クロム、モリブデン、タングステン、亜鉛、マンガン、コバルト、金、錫、鉛又はステンレス、或いはそれらの少なくとも2種を混合させてなる合金を含んでよい。より詳しくは、再配線層14は、例えば、銅箔、アルミニウム箔、銀箔、錫箔又は/及び金箔のような金属箔(metal foil)をエッチングすることで形成する。ある実施例において、再配線層14の表面は、コーティング処理によって、例えばニッケル金層、亜鉛層又はコバルト層のような被覆層(未図示)を再配線層14の表面に覆うようにする。
【0037】
図2を参照すると、複数の実施例において、回路板構造10は、絶縁基板12と再配線層14との間に位置する接着層16を更に含んでよい。より具体的には、接着層16は、再配線層14と同じパターンを有する。接着層16の形成により、絶縁基板12と再配線層14との間により優れた結合力を持つようになる。複数の例示において、接着層16は、フッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂(PPO/PPE)、アラルキルエポキシ樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーンゴム系樹脂、ポリ-p-キシレン系樹脂、液晶ポリマー、ビスマレイミド系樹脂及びポリイミド樹脂からなる群から選ばれる。例として、フッ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン(Polytetrafluoroethylene;PTFE)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(Polyfluoroalkoxy;PFA)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(Fluorinated Ethylene Propylene;FEP)、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(Ethylene-tetra-fluoro-ethylen;ETFE)を含んでよい。アラルキルエポキシ樹脂は、ビフェニル型エポキシ樹脂を含んでよい。図1及び図2に示す回路板構造10の模式図は、片面回路板(single sided circuit board)構造である。
【0038】
しかしながら、本発明は、上記の片面回路板に限定されない。回路板構造10は、必要なラインレイアウトによって絶縁基板12及び再配線層14のそれぞれの層数を決定する多層回路基板(multilayer circuit board)構造であってもよい。図3に示す回路板構造10は、2層の絶縁基板12及び3層の再配線層14を有し、且つこの2層の絶縁基板12がそれぞれ隣接する2つの再配線層14の間に挟まれることに、図1に示す回路板構造10と異なる。理解すべきなのは、任意の2層の再配線層14の間の信号伝送は、絶縁基板12に設けられる導電性ブラインドホール18によって実施される。従って、回路板構造10は、絶縁基板12を貫通する少なくとも1つの導電性ブラインドホール18を更に含んでもよい。ある実施例において、導電性ブラインドホール18の材料は、再配線層14の材料と類似してよい。
【0039】
図4を参照されたい。複数の実施例において、回路板構造10は、絶縁基板12と再配線層14との間に位置する接着層16を更に含んでよい。より具体的には、導電性ブラインドホール18は、接着層16を貫通し、隣接する2層の再配線層14に電気的接続される。接着層16の特徴や実施例については、上記において詳しく説明したので、ここで繰り返して説明しない。本発明の他の実施例において、回路板構造は、2層以上の絶縁基板、及び絶縁基板の間にある再配線層を含んでもよい。
【0040】
要するに、本発明の絶縁基板を形成するための組成物は、変性液晶ポリマー及び誘電体フィラーを含み、この組成物の組成成分を調整して絶縁基板の誘電率を大幅に高めることで、高誘電率(例えば、4~200)の絶縁基板が高周波信号伝送でも低誘電損失係数(例えば、0.003~0.008)を有し、信号伝送の遅延又は損失を低減させ、それにより、信号伝送の速度及び/又は周波数を増加させる。更に、本発明の絶縁基板を形成するための組成物は、高温高湿である厳しい環境での信号伝送の品質及び安定性を確保することができる。
【0041】
本発明を実施例により前述の通りに開示したが、これは本発明を限定するものではなく、当業者なら誰でも、本発明の精神と領域から逸脱しない限り、多様の変更や修飾を加えることができる。従って、本発明の保護範囲は、後の特許請求の範囲で指定した内容を基準とするものである。
【符号の説明】
【0042】
10 回路板構造
12 絶縁基板
14 再配線層
16 接着層
18 導電性ブラインドホール
図1
図2
図3
図4