(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】管継手用ナット、管継手、流体圧機器及び流体制御システムと、ナット回転用治具及び管継手用ナットの螺回方法
(51)【国際特許分類】
F16L 19/02 20060101AFI20230314BHJP
【FI】
F16L19/02
(21)【出願番号】P 2019178168
(22)【出願日】2019-09-30
【審査請求日】2021-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000102511
【氏名又は名称】SMC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】土居 義忠
(72)【発明者】
【氏名】沖田 譲
(72)【発明者】
【氏名】新見 洋二
(72)【発明者】
【氏名】上田 宗史
(72)【発明者】
【氏名】藤原 従道
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特表昭60-500096(JP,A)
【文献】特開2014-145397(JP,A)
【文献】特開2010-127459(JP,A)
【文献】特開2016-017543(JP,A)
【文献】特開2019-148319(JP,A)
【文献】特開2003-108261(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材製の継手本体の外周壁に刻設された雄ネジ部に螺合される雌ネジ部が刻設される樹脂材製の管継手用ナットであって、
前記雌ネジ部が内周壁に刻設された中空の大径筒部と、
前記大径筒部に連設され、中空で且つ該大径筒部に比して小径な円筒形状をなすとともに、その先端面に管材が挿通される差込孔が形成された小径筒部と、
を有し、
前記小径筒部の外周壁に、該小径筒部の直径方向外方に向かって突出し且つ該小径筒部の直径方向に直交する長手方向に沿って延在する複数個の山部が形成され、
隣り合う前記山部同士の間に、該小径筒部の直径方向内方に向かって陥没し且つ直径方向に直交する長手方向に沿って延在する複数個の係合用溝が形成され、
前記山部を含む前記小径筒部の外径は、前記大径筒部の外径よりも小さく、
且つ前記係合用溝において、前記大径筒部から離間する側の端部が開放端である管継手用ナット。
【請求項2】
請求項1記載の管継手用ナットにおいて、前記大径筒部の外周壁に、該大径筒部の直径方向外方に向かって突出し且つ直径方向に直交する長手方向に沿って延在する複数個の係合用突起が形成された管継手用ナット。
【請求項3】
請求項1又は2記載の管継手用ナットと、請求項1記載の継手本体とを含んで構成される管継手。
【請求項4】
流体が流通する流体供給管もしくは流体排出管、又は、パイロット流体が流通するパイロット流体流通管の少なくともいずれかが請求項3記載の管継手を介して接続された流体圧機器。
【請求項5】
請求項4記載の流体圧機器において、前記流体供給管又は前記流体排出管と、前記パイロット流体流通管とが並列配置された流体圧機器。
【請求項6】
請求項4又は5記載の流体圧機器において、所定の部材に位置決め固定される位置決め固定用部材を含み、
前記位置決め固定用部材の点対称位置に、互いに逆方向に突出するとともに、各々の厚み方向に沿って貫通孔が形成された第1タブ部及び第2タブ部が設けられた流体圧機器。
【請求項7】
請求項4~6のいずれか1項に記載された流体圧機器が複数個並列配置された流体制御システム。
【請求項8】
請求項7記載の流体制御システムにおいて、1個の前記流体圧機器に設けられた管継手用ナットと、該流体圧機器に隣接する別の流体圧機器に設けられた管継手用ナットとのピッチが、前記管継手用ナットを構成する最大外径部の外径と略同等である流体制御システム。
【請求項9】
ナットを回転させるためのナット回転用治具において、
前記ナットは、樹脂材製の継手本体の外周壁に刻設された雄ネジ部に螺合される雌ネジ部が刻設される樹脂材製の管継手用ナットであり、
前記管継手用ナットは、
前記雌ネジ部が内周壁に刻設された中空の大径筒部と、
前記大径筒部に連設され、中空で且つ該大径筒部に比して小径な円筒形状をなすとともに、その先端面に管材が挿通される差込孔が形成された小径筒部と、
を有し、
前記小径筒部の外周壁に、該小径筒部の直径方向外方に向かって突出し且つ該小径筒部の直径方向に直交する長手方向に沿って延在する複数個の山部が形成され、
隣り合う前記山部同士の間に、該小径筒部の直径方向内方に向かって陥没し且つ直径方向に直交する長手方向に沿って延在する複数個の係合用溝が形成され、
前記山部を含む前記小径筒部の外径は、前記大径筒部の外径よりも小さく、
且つ前記係合用溝において、前記大径筒部から離間する側の端部が開放端であり、
開口が形成されて弧状をなし、前記ナットに装着される弧状装着部と、
前記弧状装着部に連なり且つ直線状に延在する柄部と、
を有し、
前記弧状装着部の内面に、前記
係合用溝に係合される1個以上の爪部が設けられ、
且つ前記弧状装着部が、前記柄部よりも薄肉で且つ円弧状に湾曲した湾曲板からなるとともに、前記開口が拡開された後に閉じる方向に弾性を示すナット回転用治具。
【請求項10】
請求項9記載の治具において、前記柄部の剛性が前記弧状装着部よりも大きいナット回転用治具。
【請求項11】
請求項9又は10記載のナット回転用治具によって管継手用ナットを回転させることで、継手本体に螺合するか又は前記継手本体との螺合を解除する管継手用ナットの螺回方法において、
前記ナット回転用治具を構成する弧状装着部に形成された開口に、該開口を前記管継手用ナットで拡開しながら該管継手用ナットを進入させ、
前記弧状装着部の内方壁に形成された爪部を、前記管継手用ナットの外周壁に形成された係合用溝に係合する一方で、前記開口からの前記管継手用ナットの進入が終了した際、前記弧状装着部の弾性によって前記開口を閉じて前記管継手用ナットに前記弧状装着部を装着し、
その後、前記ナット回転用治具を構成する柄部を介して前記管継手用ナットにトルクを付与することで前記管継手用ナットを回転させる管継手用ナットの螺回方法。
【請求項12】
請求項11記載の螺回方法において、前記管継手用ナットが、大径筒部と小径筒部とを有し、且つ前記小径筒部に係合用溝が形成されたものであるとともに、該管継手用ナットが設けられた少なくとも2個の流体圧機器が隣接して前記管継手用ナット同士が互いに隣接し、且つ前記管継手用ナット同士のピッチが前記大径筒部の外径と略同等であるとき、前記弧状装着部を、互いに隣接する前記小径筒部同士の間から挿入する管継手用ナットの螺回方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を流通させるための管材を継手本体に接続する管継手用ナット、前記継手本体と前記管継手用ナットで構成される管継手、該管継手を含む流体圧機器、及び前記流体圧機器を複数個含む流体制御システムと、前記管継手用ナットを螺回するために好適なナット回転用治具、及び管継手用ナットの螺回方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体や医薬品等の製造装置や食品等の加工装置には、高純度薬液や超純水等が供給源から供給される。ここで、配管には、流体圧機器の1種である流量制御バルブが介装される。供給源と流量制御バルブの間には流体供給管が介在する一方、流量制御バルブと製造装置ないし加工装置等の間には、流体排出管が介在する。流体供給管又は流体排出管と流量制御バルブは、管継手を介して接続される。
【0003】
管継手は、第1継手部材の内周壁に刻設された雌ネジに対し、第2継手部材の外周壁に刻設された雄ネジが螺合されることで構成される。周知の通り、雌ネジに対する雄ネジの螺合は、スパナやレンチ等の適切な工具によって第1継手部材又は第2継手部材が回転されることでなされる。
【0004】
近時、製造装置等のコンパクト化を図るため、複数個の流量制御バルブが集中配置されることがある。この場合、それぞれの流量制御バルブに設けられた管継手が密集する。このような状況下で流体供給管又は流体排出管を流量制御バルブに取り付けるべく工具を回動させると、工具が別の管継手に干渉する。これに起因し、雌ナット又は雄ナットをそれ以上回転させること、換言すれば、締め付けを行うことが困難となる。同様の理由から、雌ナット又は雄ナットを、互いの螺合を解除する逆方向に回転させることも困難である。
【0005】
特許文献1には、上記した不具合を解消するためのネジ込み継手(管継手)が提案されている。このネジ込み継手は、第1継手部材としての雌ナットと、第2継手部材としての雄ナットとを含む。雌ナットは、その軸線方向に直交する方向からの平面視で正六角形状をなすトルク付与部と、雌ネジが内周壁に刻設された円筒形状の最大外径部とからなる。一方、雄ナットは、外周壁に雄ネジが刻設された円筒部と、その軸線方向に直交する方向からの平面視で正六角形状をなす固定部とからなる。トルク付与部及び固定部の対向辺同士の距離は、最大外径部の外径よりも短尺に設定されている。なお、流体が流通する流通管は、雌ナット及び雄ナットに個別に収容されるスリーブに通される。
【0006】
この構成においては、管継手同士が密集する状況下であっても、互いに隣接するトルク付与部同士、又は固定部同士のピッチが、最大外径部同士のピッチに比して大きくなる。上記したように、トルク付与部及び固定部の対向辺同士の距離が、最大外径部の外径よりも短尺であるからである。従って、トルク付与部、又は固定部を工具で挟み、さらに、該工具を回動させる(トルク付与部又は固定部にトルクを付与する)ことで、雌ナット又は雄ナットを回転させることが可能となる。いずれであっても、雄ネジと雌ネジの螺合、又は螺合解除がなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の
図1、
図2、
図9及び
図10を参照して分かるように、該特許文献1に記載の流体供給システムでは、流量制御バルブを開閉動作するパイロット流体を給排するための給排管を、流体供給管や流体排出管が設けられた箇所とは全く別の箇所に設けるようにしている。これに対し、給排管と流体供給管、又は給排管と流体排出管を並列配置することが想定される。この場合、流量制御バルブが集中配置されたときには、必然的に給排管も密集する。従って、上記のように工具を回動させると、工具が給排管に干渉し易い。このため、雌ナット又は雄ナットをそれ以上回転させること、換言すれば、締め付けを行うことが困難である。
【0009】
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、例えば、給排管等が並列配置されるような場合や、その先端面に何らかの部材が近接するように対向配置されるような場合等、形成されるスペースが狭小であっても締め付けを行うことが容易な管継手用ナット、それを含んで構成される管継手、及び該管継手を介して管材が接続された流体圧機器、該流体圧機器を複数個含む流体制御システムと、管継手用ナットを回転させて締め付けを行う際等に好適なナット回転用治具、及びそれを用いた管継手用ナットの螺回方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するために、本発明の一実施形態によれば、樹脂材製の継手本体の外周壁に刻設された雄ネジ部に螺合される雌ネジ部が刻設される樹脂材製の管継手用ナットであって、
前記雌ネジ部が内周壁に刻設された中空の大径筒部と、
前記大径筒部に連設され、中空で且つ該大径筒部に比して小径な円筒形状をなすとともに、その先端面に管材が挿通される差込孔が形成された小径筒部と、
を有し、
前記小径筒部の外周壁に、該小径筒部の直径方向内方に向かって陥没し且つ直径方向に直交する長手方向に沿って延在する複数個の係合用溝が形成された管継手用ナットが提供される。
【0011】
本発明の別の一実施形態によれば、上記の管継手用ナットを含んで構成される管継手が提供される。
【0012】
本発明のまた別の一実施形態によれば、流体が流通する流体供給管もしくは流体排出管、又は、パイロット流体が流通するパイロット流体流通管の少なくともいずれかが上記の管継手を介して接続された流体圧機器が提供される。
【0013】
本発明のさらに別の一実施形態によれば、上記の管継手用ナットを含んで構成された流体圧機器が複数個並列配置された流体制御システムが提供される。
【0014】
本発明のさらにまた別の一実施形態によれば、ナットを回転させるためのナット回転用治具において、
開口が形成されて弧状をなし、前記ナットに装着される弧状装着部と、
前記弧状装着部に連なり且つ直線状に延在する柄部と、
を有し、
前記弧状装着部の内面に、前記ナットに指向して突出する1個以上の爪部が設けられ、
且つ前記弧状装着部は、前記開口が拡開されたときに閉じる方向に弾性を示すナット回転用治具が提供される。
【0015】
本発明のさらにまた別の一実施形態によれば、上記のナット回転用治具によって管継手用ナットを回転させることで、継手本体に螺合するか又は前記継手本体との螺合を解除する管継手用ナットの螺回方法において、
前記ナット回転用治具を構成する弧状装着部に形成された開口に、該開口を前記管継手用ナットで拡開しながら該管継手用ナットを進入させ、
前記弧状装着部の内方壁に形成された爪部を、前記管継手用ナットの外周壁に形成された係合用溝に係合する一方で、前記開口からの前記管継手用ナットの進入が終了した際、前記弧状装着部の弾性によって前記開口を閉じて前記管継手用ナットに前記弧状装着部を装着し、
その後、前記ナット回転用治具を構成する柄部を介して前記管継手用ナットにトルクを付与することで前記管継手用ナットを回転させる管継手用ナットの螺回方法が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、大径筒部よりも小径な小径筒部を該大径筒部に連設するようにしている。この小径筒部に複数個の係合用溝を形成しているので、管継手用ナットを回転させる作業者は、ナット回転用治具の爪部を係合用溝に係合し、さらに、該ナット回転用治具を回動させることで小径筒部にトルクを付与すればよい。これに伴い、管継手用ナットが容易に回転する。
【0017】
大径筒部同士が近接するように隣接している場合においても、該大径筒部に比して小径な小径筒部同士の間には比較的大きなクリアランスが形成される。このクリアランスからナット回転用治具を差し込めば、該ナット回転用治具を小径筒部に外嵌して上記のように係合することが容易となる。従って、狭小スペースにおいても小径筒部にトルクを付与して管継手用ナットを回転させることが可能である。その結果として、雌ネジ部と雄ネジ部を強力に螺合することや、これとは逆に雌ネジ部と雄ネジ部の螺合を解除することが容易となる。
【0018】
また、ナット回転用治具の弧状装着部は、開口が拡開された後に閉じる方向に作用する弾性を示す。従って、管継手用ナット等のナットに弧状装着部を装着する際には、開口を開きながら弧状装着部内にナットを進入させればよい。このため、狭小スペースであってもナットに弧状装着部を容易に装着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】前記流体制御システムを構成する第1エアオペレートバルブの全体概略斜視図である。
【
図4】前記第1エアオペレートバルブの概略縦断面図である。
【
図5】弁ボディから第1ナットを取り外した状態の要部概略斜視図である。
【
図7】ナット回転用治具(第1工具)の、小径筒部に対してトルクを付与する弧状装着部(小半円環部)を小径筒部に外嵌した状態を示す要部概略斜視図である。
【
図8】第2工具を用い、外径が長手方向に沿って略一定である従来技術に係る管継手用ナットの締め付け(増し締め)を行っているときの要部概略斜視図である。
【
図10】本発明の実施の形態に係る管継手用ナット(第1ナット)に対して締め付け(増し締め)を行っているときの要部概略斜視図である。
【
図12】従来技術に係る管継手用ナット同士が対向している場合において、管継手用ナット同士の間の管材に回転用の第2工具を差し込んだ状態を示す要部概略斜視図である。
【
図13】
図12から第2工具を変位させて一方の管継手用ナットに外嵌した状態を示す要部概略斜視図である。
【
図14】本実施の形態に係る管継手用ナット同士(第1ナットと第2ナット)が対向している場合において、一方の管継手用ナット(第1ナット)を回転させているときの要部概略斜視図である。
【
図15】
図4から、弁部が弁座から離間して開状態となった第1エアオペレートバルブの概略縦断面図である。
【
図16】タブ部が設けられていない位置決め固定用部材(エンドプレート)を用いて構成された流体制御システムの全体概略斜視図である。
【
図17】
図16に示す構成において、
図8に示す管継手用ナットを用いるとともに中央の管継手用ナットを第2工具によって螺回している状態を示す要部正面図である。
【
図18】
図16に示す構成において、第1ナットを用いるとともに中央の第1ナットを第1工具によって螺回している状態を示す要部正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る流体圧機器及び流体制御システムにつき、該流体圧機器に設けられるとともに管継手用ナットを含んで構成される管継手、さらには、該管継手用ナットを回転させるナット回転用治具、及びそれを用いた管継手用ナットの螺回方法との関係で好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。なお、以下における「下」及び「上」は、特に
図4及び
図15における下方及び上方に対応するが、これは理解を容易にするための便宜的なものであり、流体圧機器を実使用する際の方向を特定するものではない。また、流体やパイロット流体が流通する各管は、全て断面を示している。
【0021】
はじめに、
図1に示す流体制御システム10につき説明する。この流体制御システム10は、台座12上にそれぞれ位置決め固定された第1エアオペレートバルブ14a~第3エアオペレートバルブ14cを備える。これら第1エアオペレートバルブ14a~第3エアオペレートバルブ14cは、圧縮エアをパイロット流体として動作する空気圧機器(流体圧機器)であり、高純度薬液や超純水等の流体の流量を制御する流量制御バルブとして機能する。
【0022】
第1エアオペレートバルブ14a~第3エアオペレートバルブ14cは、パイロット圧が作用しないときには閉止する、いわゆるノーマルクローズバルブである。第1エアオペレートバルブ14a~第3エアオペレートバルブ14cが開状態にあるとき、流体がA1側からA2側に向かって流通する。以下、A1からA2に向かう方向を「流通方向」とも表記する。従って、「流通方向上流側」はA1側であり、「流通方向下流側」はA2側である。
【0023】
第1エアオペレートバルブ14aにつき説明すると、全体概略斜視図である
図2に示すように、該第1エアオペレートバルブ14aは、台座12(所定の部材)に近接する側からエンドプレート20(位置決め固定用部材)、弁ボディ22、第1ハウジング24、第2ハウジング26をこの順序で備える。第1エアオペレートバルブ14aは、これらエンドプレート20、弁ボディ22、第1ハウジング24、第2ハウジング26が同一軸線上に連なることにより、縦長の略直方体形状をなす。なお、エンドプレート20、弁ボディ22、第1ハウジング24及び第2ハウジング26はいずれも樹脂材からなる。樹脂材の好適な例としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、パーフルオロアルコキシアルカン等の耐薬品性、耐熱性に優れるフッ素化合物樹脂が挙げられる。
【0024】
流体制御システム10の概略平面図である
図3に示すように、第1エアオペレートバルブ14aのエンドプレート20の一側面には、流通方向に対して直交するB1方向に向かう第1タブ部28が突出形成される。第1タブ部28は、A2側に偏倚する位置に、エンドプレート20と一体的に設けられる。また、該一側面の裏面である他側面には、B1方向と逆方向であるB2方向に向かう第2タブ部30が突出形成される。第2タブ部30は、A1側に偏倚する位置に、エンドプレート20と一体的に設けられる。すなわち、第1タブ部28と第2タブ部30は、エンドプレート20において点対称となる位置に、互いに逆方向に突出している。その結果、第1タブ部28と第2タブ部30は、いわゆる千鳥配置となっている。
【0025】
第1タブ部28、第2タブ部30には、その厚み方向に沿って延在する貫通孔としての第1長穴32、第2長穴34がそれそれ形成される。これら第1長穴32、第2長穴34に据付ネジ36のネジ部が通されるとともに、該ネジ部が台座12に形成されたネジ穴に螺合されることにより、第1エアオペレートバルブ14aが台座12に位置決め固定される。
【0026】
弁ボディ22のA1側端面、A2側端面には、それぞれ、本実施の形態に係る管継手用ナットとしての第1ナット40、第2ナット42が取り付けられ、これにより第1管継手部44、第2管継手部46(いずれも管継手)が構成されている。これら第1管継手部44、第2管継手部46については後に詳述する。
【0027】
図4は第1エアオペレートバルブ14aの概略縦断面図であり、
図5は弁ボディ22から第1ナット40を取り外した状態を示す要部概略斜視図である。これら
図4及び
図5に示すように、弁ボディ22には、A1側端面に第1継手本体48が突出形成されるとともに、A2側端面に第2継手本体50が突出形成される。第1継手本体48の延在方向はA1側であり、第2継手本体50の延在方向はA2側である。すなわち、第1継手本体48及び第2継手本体50は、流通方向に沿って延在する。第1継手本体48及び第2継手本体50が弁ボディ22に対して一体的に設けられていることは勿論である。換言すれば、第1継手本体48及び第2継手本体50は弁ボディ22の一部位であり、このために樹脂材からなる。
【0028】
図4に示すように、弁ボディ22の内部には入口流路52、弁室54及び出口流路56が形成される。入口流路52は、第1継手本体48のA1側先端から弁室54に至るまで延在し、該弁室54に臨んで開口する。この開口の近傍には、弁座58が設けられる。一方、出口流路56は、弁室54から第2継手本体50のA2側先端に至るまで延在する。すなわち、入口流路52と出口流路56は、弁室54を介して連通する。
【0029】
弁ボディ22の内部には、弁座58を囲繞して弁室54を形成する第1筒壁部60、該第1筒壁部60を囲繞する第2筒壁部62が第1ハウジング24に向かって延在するように設けられる。第1筒壁部60と第2筒壁部62の間には、環状溝64が形成される。この環状溝64には、ダイヤフラム66の外縁部が挿入される。該ダイヤフラム66の径方向中心の下面からは、弁座58に向かうようにして弁部68が突出形成される。弁部68が弁座58に着座することにより、入口流路52と弁室54の連通が遮断される。また、ダイヤフラム66の径方向中心の上面には、略円柱形状をなす係合凸部70が第1ハウジング24に向かうようにして突出形成される。
【0030】
なお、第2筒壁部62の外周壁の、A1側端部とA2側端部は、弁ボディ22の、略矩形状をなす外壁に対して一体的に連なる。
【0031】
第1ハウジング24の、弁ボディ22に臨む下面には、前記第1筒壁部60に対向する位置に環状突起72が突出形成される。該環状突起72は、第2筒壁部62の内側に挿入されて第1筒壁部60とともにダイヤフラム66の外縁部を挟持する。この挟持により、ダイヤフラム66が弁ボディ22と第1ハウジング24に保持される。一方、第2ハウジング26に臨む上面には、環状突起72に比して大径な環状係合部74が突出形成される。
【0032】
第1ハウジング24は中空体であり、その内室は、隔壁76によって下室80と上室82に区画される。下室80及び上室82は流通方向に沿う水平断面が略真円形状をなし、下室80に比して上室82が大径である。なお、下室80と弁室54はダイヤフラム66を介して隔てられる。換言すれば、ダイヤフラム66は、下室80と弁室54の連通を遮断している。また、第1ハウジング24のA2側端面には、下室80に連通する呼吸ポート84が形成される。一方、第1ハウジング24のA1側端面には、上室82に連通する第1パイロットポート86が形成される。
【0033】
隔壁76には、その下端及び上端が下室80内及び上室82内にそれぞれ突出する第1案内筒部88が一体的に設けられる。第1案内筒部88は、その軸線方向に沿って貫通する第1案内孔90が形成された円筒形状部からなる。
【0034】
第2ハウジング26の天井壁の内面からは、第2案内筒部92、第3筒壁部94が第1ハウジング24に向かうようにして突出する。第2案内筒部92と第3筒壁部94の間には、環状の第1凹部96が形成される。また、第3筒壁部94と、第2ハウジング26の、略矩形状をなす外壁との間に、環状の第2凹部98が形成される。第1凹部96にはリターンスプリング100の大部分が収容され、一方、第2凹部98には環状係合部74が挿入される。さらに、第2ハウジング26のA1側端面には第2パイロットポート102が形成される。第1凹部96と第2パイロットポート102は、第3筒壁部94を貫通する連絡流路104を介して連通する。
【0035】
第1ハウジング24及び第2ハウジング26には、ピストン部108が一体的に設けられた弁棒110が収容される。前記リターンスプリング100の下端はピストン部108の上端面に着座し、これにより弁棒110を弁座58側に指向して常時弾発付勢している。後述するように、弁棒110は、ピストン部108がパイロット流体の圧力(パイロット圧)を受けることで変位する。なお、ピストン部108の比較的長尺な側周壁と、上室82の内周壁との間には若干のクリアランスが形成されるが、両壁の間は環状シール部材126によってシールされる。
【0036】
また、弁棒110は、ピストン部108の下端面から突出する第1軸部112と、ピストン部108の上端面から突出する第2軸部114と、該第2軸部114に連なり第2ハウジング26の天井壁に向かって延在する小径の第3軸部116とをさらに有する。第1軸部112には、ピストン部108に向かって陥没する係合穴118が形成される。該係合穴118には、ダイヤフラム66の一部位である前記係合凸部70が係合される。この係合により、ダイヤフラム66が係合凸部70を介して弁棒110に保持される。
【0037】
第1軸部112は、第1ハウジング24の一部位である第1案内筒部88に形成された第1案内孔90に挿通される。その一方で、第2軸部114及び第3軸部116は、第2ハウジング26の一部位である第2案内筒部92に形成された第2案内孔120に挿入される。第2案内孔120が第2ハウジング26の天井壁で開口しているので、流体制御システム10を作動させる作業者ないし使用者は、第1エアオペレートバルブ14aを平面視したとき、第2案内孔120内の第3軸部116を視認することが可能である(
図3参照)。なお、第1エアオペレートバルブ14aが閉状態にあるとき、第3軸部116の上面と第2ハウジング26の天井壁の上面は略面一である。
【0038】
弁棒110は、第1軸部112が第1案内筒部88に支持され、且つ第2軸部114が第2案内筒部92に支持された状態で変位する。加えて、ピストン部108の側周壁が広範囲にわたって上室82の内周壁に沿って延在するとともに、前記両壁間のクリアランスが僅かである。従って、弁棒110の軸線方向が第1エアオペレートバルブ14aの軸線方向に対して傾斜することが回避される。なお、弁棒110が変位するとき、第1軸部112が第1案内筒部88に案内されるとともに、第2軸部114が第2案内筒部92に案内されることは勿論である。
【0039】
弁棒110が変位すると、ダイヤフラム66の係合凸部70が第1軸部112によって押し出されるか、又は引っ張られる。このため、ダイヤフラム66は弁棒110と同一方向に変位する。この変位に伴い、該ダイヤフラム66の弁部68が弁座58に対して着座又は離間する。すなわち、入口流路52と弁室54の連通遮断又は連通がなされ、第1エアオペレートバルブ14aが閉状態又は開状態となる。
【0040】
なお、
図4における参照符号122、124、126、128、130は環状シール部材を示す。また、エンドプレート20の四方の隅角部にはネジ締結孔(図示せず)が形成される一方、弁ボディ22、第1ハウジング24及び第2ハウジング26の四方の隅角部にはロッド挿通孔(図示せず)が形成される。第2ハウジング26のロッド挿通孔からタイロッド(図示せず)が挿通されるとともに、該タイロッドのネジ部が前記ネジ締結孔に螺合される。これにより、エンドプレート20、弁ボディ22、第1ハウジング24及び第2ハウジング26が締結される。
【0041】
第2ハウジング26のロッド挿通孔には、ゴム製キャップ134(
図1~
図3参照)が圧入される。該ゴム製キャップ134により、ロッド挿通孔及びネジ締結孔が閉塞されて気密ないし液密に保たれる。すなわち、ロッド挿通孔やネジ締結孔内に粉塵や液体等の異物が侵入することが防止される。また、金属であるタイロッドがゴム製キャップ134で遮蔽されるので、タイロッドが湿分や液から保護される。すなわち、湿分や液の付着に起因してタイロッドに腐食が生じること等が有効に防止される。加えて、タイロッドを源として腐食粉や金属粉等の異物が発生した場合であっても、該異物がゴム製キャップ134によってロッド挿通孔に封入される。従って、異物が流体等に混入する懸念が払拭される。
【0042】
図1に示すように、第1パイロットポート86、第2パイロットポート102には、第1ジョイント140、第2ジョイント142を介して第1給排管144、第2給排管146(いずれもパイロット流体流通管)がそれぞれ接続される。具体的には、第1パイロットポート86、第2パイロットポート102の内周壁に雌ネジがそれぞれ刻設されるとともに、第1ジョイント140、第2ジョイント142の外周壁に雄ネジがそれぞれ刻設される。雌ネジに対して雄ネジが螺合されることにより、第1給排管144、第2給排管146が第1ジョイント140、第2ジョイント142を介して第1ハウジング24、第2ハウジング26にそれぞれ保持される。
【0043】
ここで、第1エアオペレートバルブ14a~第3エアオペレートバルブ14cを上記したようにノーマルクローズバルブとして構成するとき、第2パイロットポート102に第2給排管146を取り付けることは必須ではない。例えば、第2パイロットポート102をプラグ部材で閉塞するようにしてもよい。
【0044】
次に、弁ボディ22に設けられた第1管継手部44、第2管継手部46につき説明する。
【0045】
図5、及び
図4の要部拡大図である
図6に示すように、第1管継手部44は、弁ボディ22のA1側端面から突出した第1継手本体48と、第1ナット40とを備え、これら第1継手本体48及び第1ナット40で流体供給管150(管材)を挟持するものである。勿論、流体供給管150の内部は、第1継手本体48内の入口流路52に連通する。
【0046】
第1継手本体48は、弁ボディ22に一体的に連なる比較的大径な円筒形状の基端部152を有する。該基端部152の外周壁には、雄ネジ部154が刻設される。
【0047】
また、第1継手本体48は、基端部152からA1側に突出する比較的小径な円筒形状の延出軸部156を有する。該延出軸部156の端部には、A1側からA2側に向かうに従って徐々に拡径するテーパ面158が設けられる。
【0048】
延出軸部156の外周面において、テーパ面158よりもA2側には、流体供給管150の拡径部150aの内壁面に当接する複数個の環状凸部164が設けられる。複数個の環状凸部164は断面略三角形の先端部を有し、相互に所定間隔をおいて延出軸部156の軸線方向に沿って並設されている。また、環状凸部164の高さは略同一である。なお、
図5及び
図6では環状凸部164を5個設けた場合を例示しているが、環状凸部164の個数は特にこれに限定されるものではなく、例えば、1個のみであってもよい。
【0049】
一方、第1ナット40は、比較的大径な大径筒部170と、該大径筒部170に連設されてA1側に突出する小径筒部172とを有する。小径筒部172が大径筒部170に比して小径であることは勿論である。また、大径筒部170及び小径筒部172は双方とも、中空の円筒形状をなす。従って、大径筒部170内には第1内孔174が形成されるとともに、小径筒部172内には第2内孔176が形成される。第1内孔174の内径は、第2内孔176の内径に比して大径に設定されている。
【0050】
そして、大径筒部170の、第1内孔174を形成する内周壁には、第1継手本体48の雄ネジ部154に螺合する雌ネジ部178が刻設される。また、大径筒部170の外周壁には、複数個の係合用突起180が大径筒部170の直径方向外方に向かって突出するように設けられる(
図1~
図3参照)。従って、第1ナット40において、その中心から外面までの距離
の2倍として定義される外径が最大となる部位、すなわち、最大外径部は、係合用突起180が設けられた部位である。各係合用突起180は、直径方向に直交する方向、すなわち、大径筒部170の長手方向(流通方向)に沿って延在する。そして、この場合、係合用突起180は6個設けられ、互いに略等間隔で離間している。
【0051】
小径筒部172のA1側端面(先端面)には、流体供給管150が差し込まれる断面円形状の差込孔182が形成される。また、小径筒部172の内周壁には、断面鋭角状の環状押圧部184が形成されている。第1継手本体48に対して第1ナット40が締め込まれたとき、環状押圧部184は、流体供給管150の傾斜する外周面をテーパ面158側に向かって押圧する。
【0052】
第2内孔176は、差込孔182に比して大径である。該第2内孔176を形成する内周壁は、第1継手本体48の延出軸部156の各環状凸部164から所定間隔で離間する。各環状凸部164の先端と前記内周壁との離間距離は、流体供給管150の拡径部150aの形成時における該拡径部150aの厚さよりも小さい。
【0053】
小径筒部172の外周壁には、大径筒部170の外周壁の係合用突起180よりも多数個の山部が小径筒部172の直径方向外方に向かって突出する。各山部は、小径筒部172の直径方向に直交する長手方向(流通方向)に沿って延在する。このため、隣り合う山部同士の間に、小径筒部172の直径方向内方に向かって陥没し、且つ直径方向に直交する長手方向に沿って延在する係合用溝186が形成される。山部と係合用溝186が小径筒部172の円周方向に沿って交互に連なることにより、小径筒部172の外周壁が、いわゆる直歯が刻設されたような形状となっている。
【0054】
以上のように構成される第1ナット40は、弁ボディ22(継手本体)と同じく樹脂材からなる。流体供給管150も同様に樹脂材からなる。両樹脂材の好適な例としては、上記したようなフッ素化合物樹脂が挙げられる。
【0055】
弁ボディ22のA2側端面に配設された第2管継手部46は、第1継手本体48、第1ナット40、流体供給管150の各々と同様に構成された第2継手本体50、第2ナット42、流体排出管188を含んで構成される。従って、第2管継手部46についての詳細な説明は省略する。なお、第2継手本体50及び第2ナット42に関しては、第1継手本体48及び第1ナット40に関する説明中の「A1」を「A2」に置き換えるものとする。また、流体排出管188の拡径部の参照符号を188aとする(
図6参照)。
【0056】
残余の第2エアオペレートバルブ14b、第3エアオペレートバルブ14cは、第1エアオペレートバルブ14aと同様に構成されている。従って、同一の構成要素には同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0057】
図7に、小径筒部172に対してトルクを付与して第1ナット40(又は第2ナット42)を回転させる、本実施の形態に係るナット回転用治具である第1工具200を示す。この第1工具200は、柄部としての小ハンドル202と、弧状で薄肉の湾曲板からなり、略半円形状をなす小半円環部204(弧状装着部)とを有する。小ハンドル202の剛性は、小半円環部204よりも大きく設定されている。
【0058】
小半円環部204は、環状体が略半円形状に切りかかれたような形状、すなわち、弧状をなす。このため、小半円環部204に開口205が形成される。また、小半円環部204は、薄肉の湾曲板からなるために弾性に富む。すなわち、開口205に外力が作用して該開口205が拡開されたとき、前記外力から解放されると、該開口205は容易に閉じる。すなわち、小半円環部204が元の形状に戻る。
【0059】
さらに、小半円環部204の内方壁には、3個の係合爪206(爪部)が直径方向内方に向かって、すなわち、第1ナット40(又は第2ナット42)に向かって突出形成されている。小半円環部204の内径は、第1ナット40及び第2ナット42の小径筒部172の外径に略一致する。また、隣接する係合爪206同士のピッチないし位相差は、隣接する係合用溝186同士のピッチないし位相差に略等しい。従って、3個の係合爪206は、3個の係合用溝186に係合することが可能である。
【0060】
なお、
図7では係合爪206が3個である場合を例示しているが、係合爪206の個数は特にこれに限定されるものではなく、1個以上であればよい。すなわち、係合爪206は2個以下であってもよいし、4個以上であってもよい。
【0061】
図8には、大径筒部170に対してトルクを付与することが可能な第2工具210が示されている。第2工具210は、小ハンドル202に比して肉厚且つ長尺な大ハンドル212と、内径が小半円環部204に比して大きく且つ半円よりも若干大きな円弧形状の大半円環部214とを有する。大半円環部214には開口215が形成されるとともに、その内方壁において、5個の係合凹部216が直径方向外方に向かって陥没する。大半円環部214の内径は、第1ナット40及び第2ナット42の大径筒部170の外径に略一致する。また、隣接する係合凹部216同士のピッチないし位相差は、隣接する係合用突起180同士のピッチないし位相差に略等しい。従って、5個の係合凹部216は、5個の係合用突起180に係合することが可能である。
【0062】
なお、
図8では、係合用突起180が6個(係合用突起180同士の位相差が約60°)、係合凹部216が5個である場合を例示しているが、係合用突起180及び係合凹部216の個数は特にこれに限定されるものではない。例えば、係合用突起180が同じく6個であっても係合凹部216を4個以下としてもよい。また、係合用突起180を5個以下又は6個超とし、係合凹部216を4個以下又は6個超としてもよい。
【0063】
第1工具200及び第2工具210はいずれも、樹脂材からなる。樹脂材としては、上記と同様にポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、パーフルオロアルコキシアルカン等のフッ素化合物樹脂等が例示されるが、それ以外の樹脂材であってもよい。その他の樹脂材の具体例としては、ポリプロピレンやポリエチレン等が挙げられる。
【0064】
本実施の形態に係る第1ナット40及び第2ナット42(管継手用ナット)、第1管継手部44及び第2管継手部46、第1エアオペレートバルブ14a~第3エアオペレートバルブ14c(流体圧機器)、これらを含む流体制御システム10、第1工具200は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、その作用効果につき、流体制御システム10の組立過程にて実施される管継手用ナット(第1ナット40、第2ナット42)の螺回方法との関係で説明する。
【0065】
流体制御システム10を構成するべく、先ず、第1エアオペレートバルブ14a~第3エアオペレートバルブ14cを台座12上に位置決め固定する。このためには、第1エアオペレートバルブ14a~第3エアオペレートバルブ14cのそれぞれの第1タブ部28の第1長穴32、第2タブ部30の第2長穴34に据付ネジ36のネジ部を通し、該ネジ部を、台座12に形成されたネジ穴に仮螺合する。この時点では、第1長穴32、第2長穴34の長手方向に沿って第1エアオペレートバルブ14a~第3エアオペレートバルブ14cを変位させることが可能である。すなわち、第1エアオペレートバルブ14a~第3エアオペレートバルブ14cの位置を調整することができる。その後、据付ネジ36を増し締めする。
【0066】
第1タブ部28と第2タブ部30が千鳥配置されている(
図3参照)ので、例えば、第1エアオペレートバルブ14aの第2タブ部30と、第2エアオペレートバルブ14bの第1タブ部28とが流通方向上流側(A1側)、下流側(A2)に沿って並ぶ。すなわち、第1エアオペレートバルブ14aの第2タブ部30が、第2エアオペレートバルブ14bの第1タブ部28又は第2タブ部30とB1側又はB2側に並ぶように配置されることはない。従って、第1エアオペレートバルブ14a、第2エアオペレートバルブ14bの弁ボディ22同士の離間距離を、第1エアオペレートバルブ14aの第2タブ部30のB2方向への突出長さ(又は第2エアオペレートバルブ14bの第1タブ部28のB1方向への突出長さ)に略等しくすることができる。
【0067】
このため、第1エアオペレートバルブ14aと第2エアオペレートバルブ14bが最近接する。第2エアオペレートバルブ14bと第3エアオペレートバルブ14cについても同様である。以上のような理由から、流体制御システム10のコンパクト化を図ることができる。
【0068】
なお、
図3では、第1エアオペレートバルブ14a~第3エアオペレートバルブ14cの、第1パイロットポート86、第2パイロットポート102が設けられた側を流体入口側、その裏面を流体出口側としているが、これは例示にすぎない。すなわち、第1エアオペレートバルブ14a~第3エアオペレートバルブ14cの少なくともいずれか1個を、第1パイロットポート86、第2パイロットポート102が設けられた側を流体出口側、その裏面を流体入口側とすることを妨げるものではない。
【0069】
次に、第1ジョイント140を介して第1パイロットポート86に第1給排管144を接続するとともに、第2ジョイント142を介して第2パイロットポート102に第2給排管146を接続する。なお、第1エアオペレートバルブ14a~第3エアオペレートバルブ14cを台座12上に位置決め固定する前に、第1パイロットポート86、第2パイロットポート102のそれぞれに第1給排管144、第2給排管146を接続するようにしてもよい。
【0070】
次に、第1管継手部44を構成する。具体的には、先ず、第1ナット40の差込孔182に流体供給管150の端部を差し込み、流体供給管150の端部を大径筒部170側に所定長さだけ引き出す。そして、この端部の中空内部に第1継手本体48を挿入する。
【0071】
さらに、第1継手本体48の延出軸部156を第1ナット40の大径筒部170内に挿入し、第1ナット40の雌ネジ部178を第1継手本体48の雄ネジ部154に沿って螺回させる。すなわち、第1ナット40の締め付けを行う。締め付けは、例えば、作業者がいわゆる手締めを行い、その後、増し締めを行えばよい。
【0072】
第1ナット40が締め込まれることに伴い、流体供給管150が延出軸部156のテーパ面158に沿って先端側から順に拡径する。また、第1ナット40の小径筒部172の内周壁と第1継手本体48の延出軸部156が、軸線方向に次第に重なり合っていく。その結果、延出軸部156の複数個の環状凸部164が、テーパ面158に近接する側から順に、小径筒部172の、第2内孔176を形成する内周壁と対向する。環状凸部164と対向する内周壁は、拡径した流体供給管150の外壁面を該環状凸部164に向けて押圧する。
【0073】
すなわち、流体供給管150は、延出軸部156によって拡径された後、テーパ面158に近接する側から順にしごかれながら変形する。従って、拡径部150aの内周壁は、各環状凸部164に接触する部位において圧縮される一方、その両側において直径方向内方に膨出し、隣り合う環状凸部164間の空間に入り込む。
【0074】
このようにして流体供給管150に拡径部150aが形成されるとともに、該拡径部150aが延出軸部156の複数個の環状凸部164と第1ナット40の小径筒部172の内周壁との間で挟持される。すなわち、拡径部150aの内周壁が複数個の環状凸部164に密着する。これにより、環状凸部164の先端と拡径部150aの内壁面との間でシールがなされる。
【0075】
第1ナット40をさらに手締め又は増し締めによって螺回すると、延出軸部156のテーパ面158と第1ナット40の環状押圧部184との間に流体供給管150が挟み込まれて押圧を受ける。その結果、テーパ面158と、小径筒部172の内周壁によって押圧された流体供給管150の傾斜する内壁面とが密着する。このため、テーパ面158と流体供給管150の傾斜する内壁面との間でもシールがなされる。
【0076】
ここで、従来技術に係る管継手用ナット230に対して増し締めを行う場合を
図8及び
図9に示す。なお、視認や理解を容易にするべく、
図8では弁ボディ22や第1ハウジング24等を省略するとともに、係合用突起180には第1ナット40の係合用突起180と同一の参照符号を付している。また、管継手用ナット230の外径は、第1ナット40の大径筒部170の外径と同一であり、且つ該管継手用ナット230の長手方向に沿って略一定である。
【0077】
上記したように、第1エアオペレートバルブ14a~第3エアオペレートバルブ14cは並列配置されている。従って、第1エアオペレートバルブ14a~第3エアオペレートバルブ14cの管継手用ナット230はB1側からB2側に並列する。
【0078】
図8及び
図9では、第2エアオペレートバルブ14bに設けた管継手用ナット230を第2工具210にて増し締めする場合を例示している。この場合、第2工具210の係合凹部216を係合用突起180に係合させて管継手用ナット230を回転させるためには、
図17を併せ参照して諒解されるように、隣接する管継手用ナット230同士のピッチP1を、管継手用ナット230の最大外径部の外径(管継手用ナット230の中心から係合用突起180の外面に至るまでの距離
の2倍)と工具幅を足し合わせた和の値以上に設定する必要がある。何故なら、ピッチP1がそれ未満であるときには、管継手用ナット230の長手方向に沿って第2工具210を進行させると、大半円環部214に管継手用ナット230が干渉するからである。
【0079】
従って、第1エアオペレートバルブ14aと第2エアオペレートバルブ14b、第2エアオペレートバルブ14bと第3エアオペレートバルブ14cを、管継手用ナット230の最大外径部の外径と工具幅の和未満となるまで近接させることはできない。すなわち、この場合、第1エアオペレートバルブ14a~第3エアオペレートバルブ14cを上記のように最近接させることが困難である。
【0080】
しかも、
図9に示すように、管継手用ナット230を回転させると、回転角度θ1が比較的小さい段階で、第2工具210の大ハンドル212に第1ジョイント140や第1給排管144が干渉する。この場合、大半円環部214を管継手用ナット230から一旦離脱させ、大ハンドル212を回転前の位置に戻し、係合凹部216に係合用突起180を再係合して管継手用ナット230を再回転させればよいが、この回数が多いと増し締め作業が煩雑となる。
【0081】
また、θ1が、隣接する係合用突起180の位相差(係合用突起180が6個である図示の例では60°)未満であると、係合凹部216に係合用突起180を再係合しようとする際、第1エアオペレートバルブ14aの管継手用ナット230が大ハンドル212に干渉することがあり得る。この場合、係合凹部216に係合用突起180を再係合すること自体が困難である。
【0082】
一方、本実施の形態では、
図10及び
図11に示すように、第1ナット40の大径筒部170同士が最近接した場合においても、小径筒部172が大径筒部170に比して小径であるため、隣接する小径筒部172同士の間に比較的大きなクリアランスが形成される。第2エアオペレートバルブ14bに設けられた第1ナット40に対して増し締めを行う際、作業者は、このクリアランスから第1工具200の小半円環部204を挿入した後、小半円環部204の開口205から該小径筒部172を進入させる。小半円環部204が弾性に富むので、この際、小半円環部204の開口205が容易に拡開する。このため、小径筒部172を開口205から進入させることが容易である。
【0083】
小径筒部172の開口205からの進入が終了すると略同時に、拡開した開口205が、小半円環部204の弾性によって閉じる。これと略同時、又はその前に、小半円環部204の内方壁に形成された3個の係合爪206が3個の係合用溝186にそれぞれ係合する。これにより、第1工具200が小径筒部172から脱落することなく該小径筒部172に装着(外嵌)される。この状態で、作業者が小ハンドル202を回動させることで小径筒部172にトルクを付与すれば、該小径筒部172と、小径筒部172に連なる大径筒部170とが一体的に回転する。小ハンドル202の剛性が小半円環部204よりも大きいので、小ハンドル202から小径筒部172にトルクが効率よく伝達される。
【0084】
このように、第1ナット40に小径筒部172を設けた本実施の形態によれば、大径筒部170を最近接させた場合においても第1ナット40を回転させることが可能である。すなわち、場合によっては、隣接する第1ナット40同士の間のピッチP2を、特に
図16及び
図18に示すように、第1ナット40の最大外径部の外径(大径筒部170の中心から係合用突起180の外面までの距離
の2倍)に略等しくすることもできる。従って、第1エアオペレートバルブ14a~第3エアオペレートバルブ14cを上記のように最近接させて並列配置させることができる。
【0085】
しかも、
図11に示すように、小径筒部172の外径が大径筒部170に比して小さいので、第1ナット40の小径筒部172を回転させる場合、第1工具200の小ハンドル202に第1ジョイント140や第1給排管144が干渉するに至るまでの回転角度θ2が、回転角度θ1に比して大きくなる。このため、一度の小径筒部172へのトルク付与により、第1ナット40を大きく回転させることができる。小ハンドル202に第1ジョイント140や第1給排管144が干渉した場合には、小半円環部204を小径筒部172から一旦離脱させ、小ハンドル202を回転前の位置に戻し、係合爪206を係合用溝186に再係合して第1ナット40を再回転させればよい。1回の回転における第1ナット40の回転角度θ2を大きくすることができるので、第1ナット40の再回転回数を少なくすることができる。
【0086】
また、隣接する係合用溝186同士のピッチないし位相差が小さいので、再係合の際、第1エアオペレートバルブ14aの第1ナット40が小ハンドル202に干渉することが有効に回避される。従って、係合爪206を係合用溝186に再係合することが容易である。以上のような理由から、たとえ回転角度θ2が小さい場合であっても、増し締め作業を行うことが容易となる。
【0087】
第2管継手部46は、上記と同様にして第2ナット42を第2継手本体50に締め付けることにより構成することができる。なお、第2管継手部46側(A2側)には第1パイロットポート86、第2パイロットポート102が設けられていないので、第1工具200、第2工具210のいずれを用いたとしても、該工具200、210が第1ジョイント140や第1給排管144等に干渉する懸念がない。このような場合、第2工具210を用いて第2ナット42を回転させるようにしてもよい。
【0088】
具体的には、第2ナット42の大径筒部170の外周壁に設けられた係合用突起180中の5個に対し、第2工具210の大半円環部214の内方壁に形成された5個の係合凹部216を、
図8と同様に係合する。その後に大ハンドル212を介して大径筒部170にトルクを付与すればよい。これにより、大径筒部170と、該大径筒部170に連なる小径筒部172とが一体的に回転する。
【0089】
このように、第1ナット40及び第2ナット42の各大径筒部170の外周壁に係合用突起180を設けることにより、第1工具200にて小径筒部172にトルクを付与して第1ナット40及び第2ナット42を回転させることのみならず、第2工具210にて大径筒部170に対してトルクを付与することで第1ナット40及び第2ナット42を回転させることが可能となる。そして、後者の場合、小径筒部172を回転させる場合に比して大きなトルクを付与することができる。このため、管材等が密集しておらず第2工具210を回動させ易い場所では、第1ナット40及び第2ナット42の増し締め作業を容易に遂行することができるという利点が得られる。
【0090】
すなわち、小径筒部172に係合用溝186を形成するとともに大径筒部170に係合用突起180を設けることにより、第1工具200と第2工具210の双方を選択的に用いることができる。このため、第2工具210に給排管等が干渉するときには第1工具200を用いて狭小スペースでも小径筒部172を確実に回転させる一方で、第2工具210に給排管等が干渉する懸念がないときには第2工具210を用いて大径筒部170に大きなトルクを付与するようにしてもよい。
【0091】
ところで、第1エアオペレートバルブ14a~第3エアオペレートバルブ14cの上流側(又は下流側)に何らかの流体制御器が設けられることが想定される。従来技術において流体制御器と第1エアオペレートバルブ14a~第3エアオペレートバルブ14cを流通方向に沿って近接させた場合、
図12に示すように、流体制御器に設けられた管継手用ナット230と、第1エアオペレートバルブ14a~第3エアオペレートバルブ14cに設けられた管継手用ナット230とが対向する。第2工具210は厚肉で且つ工具幅が大きいため、弾性(可撓性)に乏しい。このため、大半円環部214の開口が大きくなることはほとんどない。結局、この状況下において、例えば、第2エアオペレートバルブ14bの管継手用ナット230に大半円環部214を直接外嵌することは困難である。
【0092】
従って、第2エアオペレートバルブ14bの管継手用ナット230を増し締めするには、先ず、流体制御器に設けられた管継手用ナット230と、これに対向する第2エアオペレートバルブ14bの管継手用ナット230との間に露呈する流体供給管150を大半円環部214に通す(
図12参照)。その後、
図13に示すように、第2工具210を第2エアオペレートバルブ14bの管継手用ナット230側(A2側)に指向して変位させる必要がある。これにより、第2工具210の係合凹部216が管継手用ナット230の係合用突起180に係合する。
【0093】
これに対し、流体制御器に前記第2ナット42を用い且つ第1エアオペレートバルブ14a~第3エアオペレートバルブ14cに前記第1ナット40を用いるとともに、流体制御器と第1エアオペレートバルブ14a~第3エアオペレートバルブ14cを流通方向に沿って近接させた場合、
図14に示すように、第2ナット42の小径筒部172と第1ナット40の小径筒部172が対向する。第1工具200は薄肉で且つ工具幅が小さいので、弾性(可撓性)が比較的大きい。従って、小半円環部204を小径筒部172に外嵌しようとする際には、小半円環部204の開口205が容易に拡開する。このため、小径筒部172を開口205から進入させることが容易である。
【0094】
さらに、小半円環部204を小径筒部172に進入させた後は、その弾性によって開口205が閉じる。また、係合爪206が係合用溝186に係合する。以上により、第1工具200が小径筒部172に装着される。このため、第2エアオペレートバルブ14bの第1ナット40の小径筒部172に小半円環部204を直接外嵌し、その後に小径筒部172にトルクを付与して第1ナット40を回転させることができる。
【0095】
従って、流体制御器に設けられた第2ナット42と、これに対向する第2エアオペレートバルブ14bの第1ナット40との間に流体供給管150を露呈させる必要はない。場合によっては、第2ナット42の下流側端面と第1ナット40の上流側端面を当接させることも可能である。この分、流体制御器と第1エアオペレートバルブ14a~第3エアオペレートバルブ14cを近接させることができるので、流体制御システム10の一層のコンパクト化、換言すれば、集積化を図ることができる。
【0096】
第1エアオペレートバルブ14a~第3エアオペレートバルブ14cによる流体の流量制御は、以下のようにして行われる。
【0097】
第1エアオペレートバルブ14a(又は第2エアオペレートバルブ14b、第3エアオペレートバルブ14c)を開状態として高純度薬液や超純水等を流通させるには、第1給排管144から第1パイロットポート86を介してパイロットエアを上室82に供給する。これにより上室82の内圧が上昇し、弁棒110を構成するピストン部108が下面からパイロットエアの押圧を受ける。その結果、
図15に示すように、弁棒110が、パイロットエアのパイロット圧に応じた変位量で、第2ハウジング26側(すなわち、
図4及び
図15における上方)に変位する。このとき、弁棒110を構成してピストン部108から突出した第1軸部112及び第2軸部114が、第1案内孔90、第2案内孔120の各内周壁に案内される。また、ピストン部108の外周壁が、上室82の内周壁に摺接する。さらに、リターンスプリング100がピストン部108に押圧されて圧縮される。
【0098】
弁棒110が上方に変位することに伴い、係合凸部70が第1軸部112の係合穴118に係合したダイヤフラム66が弁棒110と同一方向(すなわち、上方)に向かって変位する。これにより、ダイヤフラム66の弁部68が弁座58から離間する。なお、ダイヤフラム66の上方への変位に伴って下室80の内容積が減少するので、下室80内の大気が呼吸ポート84から排出される。
【0099】
弁部68が弁座58から離間することで入口流路52と弁室54が連通するとともに、入口流路52と出口流路56が弁室54を介して連通する。従って、流体供給管150を介して入口流路52に到達していた流体が弁室54に導入され、さらに、該弁室54から出口流路56を介して流体排出管188に流通する。これにより、製造装置ないし加工装置等に高純度薬液や超純水等が供給される。
【0100】
第1エアオペレートバルブ14a~第3エアオペレートバルブ14cが開状態となると、第3軸部116の上端が第2案内孔120から露呈する。作業者ないし使用者は、露呈した第3軸部116を視認することにより、第1エアオペレートバルブ14a~第3エアオペレートバルブ14cが開状態にあることを認識することができる。
【0101】
高純度薬液や超純水等の流体の流通を停止するには、上記とは逆に弁部68を弁座58に着座させればよい。すなわち、第1給排管144からのパイロットエアの供給を停止する。さらに、第1パイロットポート86を介して上室82内のパイロットエアを排出する。この排出に伴って上室82の内圧が低下すると、リターンスプリング100の弾発力が上室82の内圧を上回る。その結果、リターンスプリング100が伸張し、ピストン部108を第1ハウジング24側に向かって弾発付勢する。以上により、ピストン部108を含む弁棒110が下方に変位して元の位置に戻る。
【0102】
この変位によって下室80の内容積が増加するので、大気が呼吸ポート84を介して下室80内に導入される。又は、第2パイロットポート102を呼吸ポートとして機能させるようにしてもよい。この場合、第2パイロットポート102に第2給排管146を取り付ける必要は特にない。なお、弁棒110が下方に変位する際にも、第1軸部112及び第2軸部114が第1案内孔90、第2案内孔120の内周壁に案内されることは勿論である。
【0103】
弁棒110が元の位置に戻る(下方に変位する)ことに伴い、ダイヤフラム66が弁棒110と一体的に下方に向かって変位し、その弁部68が弁座58に着座する。この着座により、入口流路52と出口流路56の弁室54を介しての連通が遮断される。すなわち、入口流路52内の流体が弁室54以降の下流側に流通することが阻止される。
【0104】
第1エアオペレートバルブ14a~第3エアオペレートバルブ14cが閉状態となると、第3軸部116の上端が第2案内孔120内に戻る。作業者ないし使用者は、第3軸部116の上面が第2ハウジング26の天井壁の上面に対して略面一となったことを視認することで、第1エアオペレートバルブ14a~第3エアオペレートバルブ14cが閉状態に戻ったことを認識することができる。
【0105】
本発明は、上記した実施の形態に特に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0106】
例えば、流体圧機器は、作動油をパイロット流体とするものであってもよい。また、流体圧機器は、アクチュエータ等、流量制御バルブ以外の機器であってもよい。
【0107】
また、この実施の形態では、流量が制御される流体が流通する管材を接続するための管継手を、第1ナット40、第2ナット42を含んで構成するようにしているが、第1給排管144、第2給排管146を第1パイロットポート86、第2パイロットポート102に接続するための管継手を、第1ナット40、第2ナット42を含んで構成するようにしてもよい。
【0108】
さらに、第1パイロットポート86及び第2パイロットポート102を、第2継手本体50と並列配置するようにしてもよい。
【0109】
さらにまた、
図16に示すように、第1タブ部28、第2タブ部30を設けることなくエンドプレート250を構成するようにしてもよい。この場合、エンドプレート250の下面にネジ穴(図示せず)を刻設し且つ台座12に長穴(図示せず)を貫通形成し、該長穴に通した据付ネジ(図示せず)を前記ネジ穴に螺合すればよい。この場合、第1タブ部28、第2タブ部30が存在しない分、第1エアオペレートバルブ14aと第2エアオペレートバルブ14b、第2エアオペレートバルブ14bと第3エアオペレートバルブ14cを近接させることができる。
【0110】
この構成において、従来技術に係る管継手用ナット230を用いた場合、
図17に示すように、隣接する管継手用ナット230同士のピッチP1’を、
図8に示すピッチP1よりも小さく設定し得る。しかしながら、この場合においても、ピッチP1’を、管継手用ナット230の外径(大径筒部170の外径)と、第2工具210の工具幅を足し合わせた和以上に確保する必要がある。このため、第1エアオペレートバルブ14aと第2エアオペレートバルブ14b、第2エアオペレートバルブ14bと第3エアオペレートバルブ14cを最近接させることができない可能性がある。
【0111】
これに対し、第1ナット40(又は第2ナット42)を用いた場合には、
図18に示すように、隣接する小径筒部172同士の間に比較的大きなクリアランスが形成される。第1ナット40(又は第2ナット42)を螺回させるときには、上記と同様に、このクリアランスから第1工具200の小半円環部204を挿入し、該小半円環部204を小径筒部172に外嵌することが可能である。
【0112】
従って、この場合においても、隣接する第1ナット40同士(又は第2ナット42同士)のピッチP2’を、大径筒部170の外径と略同等に設定することができる。このため、第1タブ部28、第2タブ部30を省略して第1エアオペレートバルブ14aと第2エアオペレートバルブ14b、第2エアオペレートバルブ14bと第3エアオペレートバルブ14cの最近接を図り、流体制御システム10のコンパクト化を図ることができる。
【0113】
勿論、
図18に示す構成においても、第1ナット40(又は第2ナット42)の小径筒部172に形成された係合用溝186に第1工具200の係合爪206を係合することにより、該第1ナット40(又は第2ナット42)を容易に締め付けることができる。
【0114】
以上とは別に、第1エアオペレートバルブ14a~第3エアオペレートバルブ14cをノーマルオープンバルブとして構成することも可能である。この場合、リターンスプリング100をピストン部108の下面側に配設し、ピストン部108を第2ハウジング26側に指向して弾発付勢する。また、第2パイロットポート102に第2給排管146を取り付ける一方で、第1パイロットポート86をプラグ部材で閉塞するようにしてもよい。
【0115】
又は、第1エアオペレートバルブ14a~第3エアオペレートバルブ14cを、いわゆる複動型バルブとして構成するようにしてもよい。この場合、第1エアオペレートバルブ14a~第3エアオペレートバルブ14cを開状態とするには第1パイロットポート86から上室82にパイロット流体を供給する一方、閉状態とするには第2パイロットポート102から第2ハウジング26内にパイロット流体を供給すればよい。従って、この構成において、リターンスプリング100を組み込む必要は特にない。
【符号の説明】
【0116】
10…流体制御システム 12…台座
14a~14c…第1~第3エアオペレートバルブ
20、250…エンドプレート 22…弁ボディ
24、26…第1、第2ハウジング 28、30…第1、第2タブ部
32、34…第1、第2長穴 40、42…第1、第2ナット
44、46…第1、第2管継手部 48、50…第1、第2継手本体
52…入口流路 54…弁室
56…出口流路 58…弁座
66…ダイヤフラム 68…弁部
70…係合凸部 80…下室
82…上室 84…呼吸ポート
86、102…第1、第2パイロットポート 88、92…第1、第2案内筒部
90、120…第1、第2案内孔 100…リターンスプリング
108…ピストン部 110…弁棒
112、114、116…第1~第3軸部 134…ゴム製キャップ
140、142…第1、第2ジョイント
144、146…第1、第2給排管 150…流体供給管
154…雄ネジ部 156…延出軸部
158…テーパ面 164…環状凸部
170…大径筒部 172…小径筒部
178…雌ネジ部 180…係合用突起
182…差込孔 186…係合用溝
200…第1工具 202…小ハンドル
204…小半円環部 205、215…開口
206…係合爪 210…第2工具
212…大ハンドル 214…大半円環部
216…係合凹部 230…管継手用ナット