(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】眼科用レンズを提供するためのシステム
(51)【国際特許分類】
G02C 13/00 20060101AFI20230314BHJP
G02C 7/02 20060101ALI20230314BHJP
G06F 17/00 20190101ALI20230314BHJP
【FI】
G02C13/00
G02C7/02
G06F17/00
(21)【出願番号】P 2020134838
(22)【出願日】2020-08-07
(62)【分割の表示】P 2016510989の分割
【原出願日】2014-04-16
【審査請求日】2020-09-04
(32)【優先日】2013-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518040079
【氏名又は名称】エシロール エンテルナショナル
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】ティエリ バウダールト
(72)【発明者】
【氏名】ロベール ペレグリ
【審査官】池田 博一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第00/048035(WO,A1)
【文献】特表2004-534964(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第2028533(EP,A1)
【文献】中国特許出願公開第101946203(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 13/00
G02C 7/02
G06F 30/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼科用レンズ計算装置(1)、管理構成要素(2)および眼科用レンズ製造モジュール(3)を備える眼科用レンズを提供するシステムであって、
前記眼科用レンズ計算装置(1)は、受領手段(10)および作成手段(11)を備え、
前記管理構成要素(2)は、受領手段(20)および伝達手段(20)を備え、
前記眼科用レンズ製造モジュール(3)は、受領手段(30)および処理手段(31)を備え、
前記受領手段(10)は、注文側(4)から前記眼科用レンズの注文要求を受け取るように構成され、
前記注文要求は、少なくとも前記眼科用レンズに対する装着者の処方データを含み、
前記作成手段(11)は、前記注文要求の受領に応じて、眼科用レンズモデルを作成するように構成され、
前記眼科用レンズモデルは、提供される前記眼科用レンズに関するデータを含み、
前記眼科用レンズモデルデータは、前記眼科用レンズに関する幾何学的データを含み、
前記眼科用レンズモデルの前記幾何学的データは、前記眼科用レンズの表面を連続的に定義する数学関数を使用することによりコード化され、
前記受領手段(20)は、前記眼科用レンズの前記注文要求及び所定フォーマットの前記眼科用レンズモデルを受け取るように構成され、
前記伝達手段(20)は、前記眼科用レンズモデルを眼科用レンズ製造モジュール(3)に送るように構成され、
前記受領手段(30)は、前記眼科用レンズモデルを受け取るように構成され、
前記処理手段(31)は、前記眼科用レンズモデルデータから眼科用レンズ製造工程データを計算する関数を含む関数ライブラリを使用し、前記眼科用レンズ製造工程データを前記眼科用レンズモデルに収集するように構成され、
前記眼科用レンズモデルは、前記眼科用レンズを製造するステップに関する製造工程データをさらに含み、
前記製造工程データは、前記眼科用レンズのマーキングに関するデータ、前記眼科用レンズの材料に関するデータ、前記眼科用レンズの表面の処理に関するデータ、前記眼科用レンズの着色に関するデータ、前記眼科用レンズの表面生成に関するデータ、前記眼科用レンズの研磨に関するデータ、前記眼科用レンズのエッジングに関するデータ、眼鏡フレームへの前記眼科用レンズの取り付けに関するデータ、前記眼科用レンズの管理に関するデータのうちの少なくとも1つを含み、
眼科用レンズ製造装置(6)をさらに含み、
前記眼科用レンズ製造装置(6)は、
- 前記眼科用レンズ製造モジュールから前記眼科用レンズモデルを受け取るように構成された受領手段(60)と、
- 前記製造工程データから前記眼科用レンズを製造するステップを実行するように構成された製造手段(61)とを含むことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記眼科用レンズ計算装置(1)は、前記眼科用レンズモデルの作成前に概略眼科用レンズモデルの迅速な作成を行うように構成された即席最適化手段(12)をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
コンバータ(5)をさらに含み、
前記コンバータ(5)は、
- 前記眼科用レンズ計算装置(1)から眼科用レンズモデルを受け取り、
- 前記所定フォーマットの前記眼科用レンズモデルに変換する
ことを行うように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記幾何学的データは、前記眼科用レンズの前面に関するデータ、前記眼科用レンズの後面に関するデータ、前記前面及び後面の相対的位置に関するデータ、及び前記眼科用レンズの形状に関するデータを含むことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記関数ライブラリが少なくとも前記眼科用レンズの表面のパラメータを処理する関数を含むことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記関数ライブラリは、少なくとも前記眼科用レンズの表面に関するパラメータを処理する関数を含むことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
第1伝達ステップ(S1)と、眼科用レンズモデル作成ステップ(S2)と、受領ステップ(S3)と、第2伝達ステップ(S4)とを含む、眼科用レンズを提供するための方法であって、
- 前記第1伝達ステップ(S1)では、眼科用レンズの注文要求が注文側(4)から眼科用レンズ計算装置(1)に送られ、前記注文要求が少なくとも前記眼科用レンズの装着者の処方データを含み、
- 前記眼科用レンズモデル作成ステップ(S2)では、眼科用レンズモデルが前記注文要求から作成され、前記眼科用レンズモデルが提供される前記眼科用レンズに関するデータを含み、前記眼科用レンズモデルデータが前記眼科用レンズに関する幾何学的データを含み、前記眼科用レンズモデルの前記幾何学的データは、前記眼科用レンズの表面を連続的に定義する数学関数を使用することによりコード化され、
- 前記受領ステップ(S3)では、前記眼科用レンズモデル及び前記注文要求が管理構成要素(2)において受け取られ、
- 前記伝達ステップ(S4)では、前記眼科用レンズモデルが前記管理構成要素(2)から眼科用レンズ製造モジュール(3)に送られ、
処理ステップ(S5)と、収集ステップ(S6)とをさらに含み、
- 前記処理ステップ(S5)では、前記眼科用レンズモデルデータから眼科用レンズ製造工程データを計算するため、関数ライブラリが前記眼科用レンズ製造モジュール(3)において使用される関数を含み、
前記関数によって前記眼科用レンズ製造工程データが決定され、
- 前記収集ステップ(S6)では、前記眼科用レンズ製造工程データが前記眼科用レンズモデルに収集され、
第3伝達ステップ(S7)をさらに含み、
- 前記第3伝達ステップ(S7)では、
前記眼科用レンズ製造工程データを含む前記眼科用レンズモデルが前記眼科用レンズ製造モジュール(3)から眼科用レンズ製造装置(6)に送られ、
製造ステップ(S8)をさらに含み、
- 前記製造ステップ(S8)では、
前記眼科用レンズ製造装置(6)において前記眼科用レンズが前記
眼科用レンズ製造工程データから製造されることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼科用レンズを提供するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書における本発明の背景の検討は、本発明の背景を説明するために含まれている。これは、言及される文献のいずれも、いずれかの請求項の優先日において公開されていたか、知られていたか又は公知の一般的知識の一部であったことの承認と解するべきではない。
【0003】
眼科用レンズは、一般的に眼科用レンズ装着者の多くの異なる種類の視力欠陥を矯正するために使用される。これらは、近眼(近視)、遠眼(遠視)、乱視、及び一般的に加齢に伴う近距離視力欠陥(老眼)などの欠陥を含む。
【0004】
眼科用レンズは、主としてプラスチック材料から製造され、且つ、一般的に、互いに協働して必要な屈折特性(一般的に装着者の処方に対応する)を与える2つの対向表面を有する。
【0005】
現在、眼科用レンズを提供するために、アイケア開業者は、眼科用レンズ製造所に注文要求を送ることにより眼科用レンズ製造所に眼科用レンズを注文する。この注文要求は、装着者のデータ、たとえば装着者の処方、眼鏡フレームのデータ、たとえば装着者が選択した眼鏡フレームの種類、及びレンズデータ、たとえば装着者が選択した眼科用レンズの種類を含んでいる。
【0006】
眼科用レンズ製造所は、注文要求を受け取り、それを眼科用レンズ設計者に送る。レンズ設計者は、注文要求に含まれているデータを使用して眼科用レンズ設計を計算する。眼科用レンズ設計は、装着者に提供される眼科用レンズの幾何学的データ及びその眼科用レンズの製造工程に関する製造工程データを含んでいる。
【0007】
レンズ設計者により決定された眼科用レンズ設計は眼科用レンズ製造所に送られ、その計算設計に基づいて眼科用レンズが製造される。その眼科用レンズは、次にアイケア開業者に送られる。
【0008】
現在の眼科用レンズ提供プロセスには、いくつかの欠点がある。
【0009】
第1に、各眼科用レンズ設計者はそれぞれの設計方式を有するため、眼科用レンズ製造所は種々の設計に適合する必要がある。また、レンズ設計者が新しい設計を創り出した場合、提供プロセスに関連しているすべての関係者、特に眼科用レンズ製造所は、新しい設計に適合するために相互伝達手段を更新しなければならない。これは、新しい眼科用レンズ設計の提案を複雑で時間がかかる高コストの作業にしている。
【0010】
同様に、各製造所はそれぞれの装置を有するため、各レンズ設計者は、種々の眼科用レンズ製造所の製造工程データの計算に適合する必要がある。
【0011】
第2に、製造工程データは、製造工程の開始に先立って計算され、製造工程中に製造工程データの一部を再計算すること、たとえば測定された工程データに基づいて製造工程データを更新することはできない。眼科用レンズの幾何学的データの再計算なしに、製造工程データの一部を再計算することもできない。これは、正確さの欠如及び/又は計算資源の浪費をもたらすであろう。
【0012】
第3に、各眼科用レンズ設計者は、それぞれのデータフォーマットを有しており、また、各眼科用レンズ製造所は、幾何学的データ及び製造工程データを使用するためのそれぞれのツールを有する。これは、同一の処方及びレンズ定義に基づいて2つの別の製造所により製造された2つのレンズ間に著しい差異をもたらすであろう。これは、レンズ設計者の出力データフォーマット又は製造装置の入力データフォーマットの管理に大きな複雑さももたらすであろう。
【0013】
第4に、計算を開始するためにアイケア開業者注文と眼科用レンズ製造所との間及び眼科用レンズ製造所とレンズ設計者との間の2つの送受のステップが必要である。これは、提供プロセスを複雑化する。
【0014】
第5に、現在、製造計算装置と製造装置との間の連絡は、点グリッドを含むSDF(又はHSC)ファイルを使用して行われる。数値コマンドが数値ツールの各軸のエンジンを操るために、このグリッドは製造装置において精細にモデル化されなければならない。このグリッドは、しばしば、製造装置のレベルにおいて再サンプリングされる。これは、正確さの欠如及び/又は計算資源の浪費をもたらすであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の1つの目的は、上述した欠点を有さない眼科用レンズを提供するためのシステム及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的のために、本発明は、眼科用レンズを提供するためのシステムであって、:
- 眼科用レンズ計算装置であって、
- 注文側から眼科用レンズの注文要求を受け取るように構成された受領手段であって、前記注文要求が少なくとも眼科用レンズの装着者の処方データを含む受領手段、及び
- 注文要求の受領に応じて、眼科用レンズモデルを作成するように構成された作成手段であって、前記眼科用レンズモデルが、提供される眼科用レンズに関するデータを含み、前記眼科用レンズモデルデータが眼科用レンズに関する幾何学的データを含む作成手段
を含む眼科用レンズ計算装置と:
- 管理構成要素であって、
- 眼科用レンズの注文要求及び所定のフォーマットの眼科用レンズモデルを受け取るように構成された受領手段と、
- 眼科用レンズモデルを眼科用レンズ製造モジュールに送るように構成された伝達手段と
を含む管理構成要素と:
- 眼科用レンズ製造モジュールであって、
- 眼科用レンズモデルを受け取るように構成された受領手段と、
- 眼科用レンズモデルデータから眼科用レンズ製造工程データを計算する関数を含む関数ライブラリを使用するように構成された処理手段と
を含む眼科用レンズ製造モジュールと
を含むシステムを提案する。
【0017】
眼科用レンズ計算装置は、さらに、眼科用レンズモデルの作成前に概略眼科用レンズモデルの迅速な作成を行うように構成された即席最適化手段を含み得る。
【0018】
このシステムは、:
- 眼科用レンズ計算装置から眼科用レンズモデルを受け取ることと、
- 所定フォーマットの受け取られた眼科用レンズモデルを変換することと
を行うように構成されたコンバータをさらに含むことができる。
【0019】
眼科用レンズモデルの幾何学的データは、眼科用レンズの表面を連続的に定義する数学関数を使用することによりコード化することができる。
【0020】
眼科用レンズモデルは、マークアップ言語を使用することによりコード化することもできる。
【0021】
幾何学的データは、眼科用レンズの前面に関するデータ、眼科用レンズの後面に関するデータ、前面及び後面の相対的位置に関するデータ、及び眼科用レンズの形状に関するデータを含むことができる。
【0022】
眼科用レンズモデルは、さらに、前記眼科用レンズを製造するステップに関する製造工程データを含むことができ、この製造工程データは、以下のデータ:眼科用レンズのマーキングに関するデータ、眼科用レンズの材料に関するデータ、眼科用レンズの表面の処理に関するデータ、眼科用レンズの着色に関するデータ、眼科用レンズの表面生成に関するデータ、眼科用レンズの研磨に関するデータ、眼科用レンズのエッジングに関するデータ、眼鏡フレームへの眼科用レンズの取り付けに関するデータ、眼科用レンズの管理に関するデータのうちの少なくとも1つを含む。
【0023】
このシステムは、:
- 眼科用レンズ製造モジュールから眼科用レンズモデルを受け取るように構成された受領手段、及び
- 前記製造工程データから前記眼科用レンズを製造するステップを実行するように構成された製造手段
を含む眼科用レンズ製造装置をさらに含むことができる。
【0024】
関数ライブラリは、少なくとも眼科用レンズの表面のパラメータを処理する関数を含むことができる。
【0025】
関数ライブラリは、少なくとも眼科用レンズの2つの表面に関するパラメータを処理する関数を含むことができる。
【0026】
本発明は、さらに、眼科用レンズの注文要求を処理するための管理構成要素であって、:
- 受領手段であって、
- 眼科用レンズの注文要求であって、少なくとも眼科用レンズの装着者の処方データを含む注文要求、及び
- 所定のフォーマットの眼科用レンズモデルであって、提供される眼科用レンズに関するデータを含み、前記眼科用レンズモデルデータは眼科用レンズに関する幾何学的データを含む眼科用レンズモデル
を受け取るように構成された受領手段と、
- 眼科用レンズモデルを眼科用レンズ製造モジュールに送るように構成された伝達手段と
を含む管理構成要素を提案する。
【0027】
本発明は、さらに、眼科用レンズを提供するための製造工程データを計算するように構成された眼科用レンズ製造モジュールであって、:
- 提供される眼科用レンズに関するデータを含む眼科用レンズモデルを受け取るように構成された受領手段であって、前記眼科用レンズモデルデータは、眼科用レンズに関する幾何学的データを含む受領手段と、
- 眼科用レンズモデルデータから眼科用レンズ製造工程データを計算する関数を含む関数ライブラリを使用するように構成された処理手段と
を含む眼科用レンズ製造モジュールを提案する。
【0028】
本発明は、さらに、眼科用レンズを製造するステップを実行するように構成された眼科用レンズ製造装置であって、:
- 眼科用レンズ製造モジュールから眼科用レンズモデルを受け取るように構成された受領手段であって、眼科用レンズモデルは、提供される眼科用レンズに関するデータを含み、この眼科用レンズモデルデータは、眼科用レンズに関する幾何学的データを含み、この眼科用レンズモデルは、さらに、前記眼科用レンズを製造するステップに関する製造工程データを含む受領手段、及び
- 前記製造工程データから前記眼科用レンズを製造するステップを実行するように構成された製造手段
を含む眼科用レンズ製造装置を提案する。
【0029】
本発明は、さらに、眼科用レンズを提供するための方法であって、:
- 眼科用レンズの注文要求が注文側から眼科用レンズ計算装置に送られる第1伝達ステップであって、この注文要求が少なくとも眼科用レンズの装着者の処方データを含む第1伝達ステップと、
- 眼科用レンズモデルが注文要求から作成される眼科用レンズモデル作成ステップであって、この眼科用レンズモデルが、提供される眼科用レンズに関するデータを含み、この眼科用レンズモデルデータが眼科用レンズに関する幾何学的データを含む眼科用レンズモデル作成ステップと、
- 眼科用レンズモデル及び注文要求が管理構成要素において受け取られる受領ステップと、
- 眼科用レンズモデルが管理構成要素から眼科用レンズ製造モジュールに送られる第2伝達ステップと
を含む方法を提案する。
【0030】
この方法は、:
- 眼科用レンズモデルデータから製造工程データを計算するため、関数を含む関数ライブラリが眼科用レンズ製造モジュールにおいて使用される処理ステップ、及び
- 前記製造工程データが前記眼科用レンズモデルに収集される収集ステップ
をさらに含みことができる。
【0031】
本方法は、製造工程データを含む眼科用レンズモデルが眼科用レンズ製造モジュールから眼科用レンズ製造装置に送られる第3伝達ステップをさらに含むことができる。
【0032】
本発明は、さらに、1つ以上の記憶された命令シーケンスを含むコンピュータプログラム製品を提案する。この命令シーケンスは、処理装置からアクセス可能であり、処理装置により実行されたときに処理装置にこの方法のステップを実行させる。
【0033】
本発明は、さらに、コンピュータプログラム製品の1つ以上の命令シーケンスを格納するコンピュータ読み取り可能媒体を提案する。
【0034】
特に別段の指定がない限り、以下の検討から明らかになるように、本明細書の全体を通じて「計算する」、「算出する」、「作成する」等の用語を使用した検討は、計算システムのレジスタ及び/又はメモリ内において電子的数量などの物理量として表されているデータを操作するか及び/又はその計算システムのメモリ、レジスタ又はその他の情報記憶、伝送又は表示装置内において同様に物理量として表される他のデータに変換するコンピュータ若しくは計算システム、又は同様の電子計算装置の作動及び/又は処理を指す。
【0035】
本発明の実施形態は、本明細書における動作を行うための装置を含み得る。この装置は、所望の目的のために特に構築することができる。又は、それは、コンピュータ中に記憶されているコンピュータプログラムにより選択的に起動されるか又は再構成される汎用コンピュータ又はデジタルシグナルプロセッサ(「DSP」)を含み得る。かかるコンピュータプログラムは、フロッピー(登録商標)ディスク、光ディスクを含む任意の種類のディスク、CD-ROM、光磁気ディスク、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、電気的にプログラム可能な読み取り専用メモリ(EPROM)、電気的に消去可能且つプログラム可能な読み取り専用メモリ(EEPROM)、磁気又は光カード、又は電子命令の記憶に適し、且つ、コンピュータシステムバスに接続可能なその他の任意の種類の媒体等を含むがそれらに限定されないコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納することができる。
【0036】
本明細書において提示されるプロセス及び表示は、任意の特定のコンピュータ又はその他の装置に本質的に関連するものではない。種々の汎用システムが本明細書における教示によるプログラムで使用され得る。又は所望の方法を実行するためにより特殊化された装置を構築することも好都合であることが明らかになるであろう。種々のこれらのシステムの望ましい構造が以下の説明から明らかとなるであろう。また、本発明の実施形態は、任意の特定のプログラム言語に関連して説明されるのではない。本明細書において記述された本発明の教示を実現するために種々のプログラム言語を使用できることが理解される。
【0037】
本発明の非限定的実施形態について、これらから添付図面を参照しつつ説明する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明の実施形態による眼科用レンズを提供するためのシステムの概略図である。
【
図2】未加工眼科用レンズ及び眼科用レンズのエッジングを行うためのエッジの概略図である。
【
図3】製造工程に先立つ、偏光フィルタを含む眼科用レンズを示す。
【
図5】本システムがさらにコンバータを含む本発明の実施形態を示す。
【
図6】本発明の実施形態に従って眼科用レンズを提供するためのデータ処理の方法のステップを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図中の要素は、簡明及び明瞭となるように描かれており、必ずしも実寸に比例していない。たとえば、本発明の実施形態の理解の向上に資するために図中の一部の要素の寸法が他の要素との対比において誇張されることがある。
【0040】
図1は、本発明の実施形態に従って眼科用レンズを提供するためのシステムを示している。
【0041】
本発明に関しては、用語「眼科用レンズ」は、レンズブランク、未加工レンズ、又は半製品レンズを指し得る。眼科用レンズの提供プロセスは、眼科用レンズの計算プロセス及び/又は製造プロセスの任意の段階を指し得ることが理解される。
【0042】
このシステムは、眼科用レンズ計算装置1、管理構成要素2、及び眼科用レンズ製造モジュール3を含む。
【0043】
眼科用レンズ計算装置1は、矢印F1により示されているように注文側4から眼科用レンズの注文要求を受け取るように構成された送受手段10を含む。
【0044】
注文側4は、アイケア開業者の装置を指し得る。
【0045】
注文要求は、少なくとも眼科用レンズの装着者の処方データを含む。処方データは、装着者の視力欠陥を矯正するために眼科医により決定された球面度数、円筒度数、円筒軸、加入度数、及び処方プリズムなどの一連の光学特性を含む。
【0046】
眼科用レンズ計算装置1は、さらに、注文要求の受領に応じて、提供される眼科用レンズに関するデータを含む眼科用レンズモデルを作成するように構成された作成手段11を含む。
【0047】
眼科用レンズモデルは、マークアップ言語、たとえば、Extensible Markup Language(XML)を使用してコード化され得る。
【0048】
眼科用レンズモデルデータは、眼科用レンズに関する幾何学的データを含んでいる。この幾何学的データは、眼科用レンズの前面に関するデータ、眼科用レンズの後面に関するデータ、前面及び後面の相対的位置に関するデータ、及び/又は眼科用レンズの形状に関するデータを含み得る。
【0049】
幾何学的データは、眼科用レンズの表面を連続的に定義する数学関数を使用することによりコード化することができる。この数学関数は、たとえば、Non-uniform Rational Basis Spline(NURBS)関数である。NURBS関数は、COLLAborative Design Activity(COLLADA)標準フォーマットを使用して定義され得る。
【0050】
有利には、製造モジュール3及び製造装置のための入力フォーマットとしてNURBSを使用することにより、入力フォーマットが点グリッドを含んでいる場合に必要なこれらのレベルにおける幾何学的データの余分なサンプリングを回避する。
【0051】
眼科用レンズモデルは、さらに、眼科用レンズを製造する1つ又はいくつかのステップに関する製造工程データも含み得る。この製造工程データは、以下のデータ:眼科用レンズのマーキングに関するデータ、眼科用レンズの材料に関するデータ、眼科用レンズの表面の処理に関するデータ、眼科用レンズの着色に関するデータ、眼科用レンズの表面生成に関するデータ、眼科用レンズの研磨に関するデータ、眼科用レンズのエッジングに関するデータ、眼鏡フレームへの眼科用レンズの取り付けに関するデータ、眼科用レンズの管理に関するデータのうちの少なくとも1つを含み得る。
【0052】
眼科用レンズ計算装置1は、さらに、眼科用レンズモデルの作成前に概略眼科用レンズモデルの迅速な作成を行うように構成された即席最適化手段12を含み得る。概略眼科用レンズモデルは、眼科用レンズモデルに比してより迅速に計算され、矢印F2により示されているように注文側4に送付され得る。
【0053】
管理構成要素2は、眼科用レンズの注文要求及び所定フォーマットの眼科用レンズモデルを受け取るように構成された送受手段20を含む。注文要求及び眼科用レンズモデルは、矢印F3により示されているように、計算装置1から同時に受け取られ得る。本発明の別の実施形態によると、眼科用レンズモデルのみが計算装置1から受け取られる。この実施形態では、注文要求は、矢印F4により示されているように、注文側4から受け取られる。
【0054】
送受手段20は、さらに、眼科用レンズモデルを眼科用レンズ製造モジュール3に送るように構成される。
【0055】
眼科用レンズ製造モジュール3は、眼科用レンズモデルを受け取るように構成された送受手段30を含んでいる。眼科用レンズモデルは、矢印F5により示されているように管理構成要素2から受け取られるか、又は矢印F6により示されているように計算装置1から直接受け取られ得る。
【0056】
眼科用レンズ製造モジュール3は、さらに、眼科用レンズモデルデータから眼科用レンズ製造工程データを計算する関数を含む関数ライブラリを使用するように構成された処理手段31を含んでいる。
【0057】
この関数ライブラリは、眼科用レンズの表面の1個又は数個のパラメータを処理する1個又は数個の関数を含み得る。かかる関数は、眼科用レンズの表面の点の高度、導関数、法線、及び/又は曲率を計算する関数を含み得る。
【0058】
関数ライブラリは、さらに、眼科用レンズの2つの表面に関する1個又は数個のパラメータを処理する1個又は数個の関数を含み得る。かかる関数は、眼科用レンズの所定の点における、所定の方向の眼科用レンズの厚さを計算する関数、及び/又は眼科用レンズの所定の点における眼科用レンズの屈折率を計算する関数を含み得る。
【0059】
関数ライブラリは、さらに、製造工程中に測定されるシフト、たとえばブロックシフトに基づいて眼科用レンズの表面(たとえば後面)を再計算する1個又は数個の関数を含み得る。かかる関数は、製造工程中に測定された実際の製造工程データを考慮することにより提供プロセスの精度を改善することを目的とする。
【0060】
眼科用レンズの表面の連続的定義は、再計算を容易にする。実際には、既知のシステムでは、眼科用レンズの表面は、点グリッドを使用して離散的な方法により定義される。この離散的定義は、再計算ステップに先立つ補間ステップの必要性を招く。
【0061】
関数ライブラリは、さらに、デジタル形状決定を行う1個又は数個の関数を含み得る。デジタル形状決定とは、レンズLの表面仕上げ後に、レンズLのエッジが最小厚さ及びレンズLが取り付けられるフレームFのエッジまでの最小限の距離を有することを確実にするために、未加工眼科用レンズL(
図2)から、レンズLをエッジングするためのエッジE
1を決定することである。比較のために、
図2は、デジタル形状決定なしに決定されたエッジE
2を示している。
【0062】
関数ライブラリは、さらに、製造工程前に眼科用レンズLに挿入される偏光フィルタPF(
図3及び4)が製造工程後に眼科用レンズLの表面全部を覆うか否かを決定する1個又は数個の関数を含み得る。提示した例においては、この関数は、製造工程後に偏光フィルタPFがレンズ領域Aを覆わないであろうことを示す。
【0063】
レンズ製造モジュール3により計算された眼科用レンズ製造工程データは、眼科用レンズモデルに収集され得る。従って、眼科用レンズモデルを眼科用レンズ製造装置6に転送することのみ必要である。
【0064】
眼科用レンズ製造装置6は、眼科用レンズ製造モジュール3から眼科用レンズモデルを受け取るように構成された送受手段60を含んでいる。眼科用レンズモデルは、矢印F7により示されているようにレンズ製造モジュール3から直接受け取られ得る。本発明の別の実施形態によると、眼科用レンズモデルは、矢印F7,1及びF7,2により示されているように管理構成要素2経由でレンズ製造モジュール3から受け取られる。
【0065】
眼科用レンズ製造装置6は、さらに、製造工程データから眼科用レンズを製造するステップを実行するように構成された製造手段61を含んでいる。
【0066】
図5に示した本発明の実施形態によると、このシステムは、さらに、矢印F
3,1により示されているように眼科用レンズ計算装置1から眼科用レンズモデルを受け取り、且つ、所定のフォーマットの受け取られた眼科用レンズモデルを変換するように構成されたコンバータ5を含み得る。コンバータ5は、計算装置1と管理構成要素2の間に配置され、且つ、矢印F
3,2により示されているように所定のフォーマットの眼科用レンズモデルを管理構成要素2に送るように構成され得る。別の方法として、コンバータ5は、管理構成要素2の中に埋め込むこともできる。コンバータ5は、計算装置1の構成に関係なく、所定のフォーマットの眼科用レンズモデルを作成及び使用する機能をシステムに与えることを目的としている。
【0067】
上記において開示したレンズ提供システムでは、すべての装置が提供される眼科用レンズの共通の定義、眼科用レンズモデル及びそれを使用する共通の方法、関数ライブラリを共有している。
【0068】
その結果、眼科用レンズモデルデータは、製造側で再計算される必要がない。
【0069】
さらに、同一の処方及びレンズ定義に基づいて2つの異なる製造所により製造された2つのレンズ間の差異が低減し、従って、提供されるレンズの一貫性が改善される。
【0070】
また、新しい設計又は新しい装置(計算装置、モジュール、装置)の組み込みが容易になる。
【0071】
さらに、眼科用レンズモデルの使用は、システムの装置間の通信プロセスを容易にし、従って送受ステップを削減することができる。
【0072】
図6を参照すると、本発明の実施形態に従って眼科用レンズを提供するための方法について以下において説明する。この方法は、:
- 第1伝達ステップS1
- 眼科用レンズモデル作成ステップS2
- 受領ステップS3
- 第2伝達ステップS4
- 処理ステップS5
- 収集ステップS6
- 第3伝達ステップS7、及び
- 製造ステップS8
を含む。
【0073】
第1伝達ステップS1中、眼科用レンズの注文要求が注文側4から眼科用レンズ計算装置1に送られる。上述したように、注文要求は、少なくとも眼科用レンズの装着者の処方データを含んでいる。
【0074】
眼科用レンズモデル作成ステップS2中、眼科用レンズモデルが注文要求から作成される。眼科用レンズモデルは、提供される眼科用レンズに関するデータを含んでいる。眼科用レンズモデルデータは、眼科用レンズに関する幾何学的データを含んでいる。
【0075】
受領ステップS3中、眼科用レンズモデル及び注文要求が管理構成要素2において受け取られる。
【0076】
第2伝達ステップS4中、眼科用レンズモデルが管理構成要素2から眼科用レンズ製造モジュール3に送られる。
【0077】
処理ステップS5中、眼科用レンズモデルデータから製造工程データを計算するため、関数を含む関数ライブラリが眼科用レンズ製造モジュール3において使用される。
【0078】
収集ステップS6中、製造工程データが眼科用レンズモデルに収集される。
【0079】
第3伝達ステップS7中、製造工程データを含む眼科用レンズモデルが眼科用レンズ製造モジュール3から眼科用レンズ製造装置6に送られる。
【0080】
製造ステップS8中、眼科用レンズが製造工程データから製造される。