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特許7243970デニムや他の圧迫ガーメント及びそれらを製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】デニムや他の圧迫ガーメント及びそれらを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/05 20060101AFI20230314BHJP
   A41D 31/18 20190101ALI20230314BHJP
【FI】
A41D13/05 143
A41D31/18
【請求項の数】 20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018027864
(22)【出願日】2018-02-20
(65)【公開番号】P2019002116
(43)【公開日】2019-01-10
【審査請求日】2020-12-24
(31)【優先権主張番号】17167582.0
(32)【優先日】2017-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507343327
【氏名又は名称】サンコ テキスタイル イスレットメレリ サン ベ ティク エーエス
【氏名又は名称原語表記】SANKO TEKSTIL ISLETMELERI SAN. VE TIC. A.S.
【住所又は居所原語表記】Organize Sanayi Bolgesi 3. Cadde 16400 Inegol-Bursa(TR)
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【弁理士】
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【弁理士】
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】ファティー コヌコウルー
(72)【発明者】
【氏名】セルカン メルツ
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-508101(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0004563(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D13/00-13/12
A41D20/00
A41D31/00-31/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
布製の生地から作られた円周方向部分(60、66)を有する圧迫ガーメント(68、80)であって、前記圧迫ガーメントは、弛緩状態にあるとき、前記円周方向部分の円周方向の長さは、前記円周方向部分の軸方向(28)に沿って、最初に増加し、その後減少し次に増加するように、複数回増減しているものにおいて、
前記円周方向部分(60、66)は、1つの伸縮性織布生地(10)の少なくとも1枚のパネル(2、4)を含んでおり、
前記円周方向部分を構成する前記パネル(2、4)は、生地全体が均一な弾性を有する前記1つの伸縮性織布生地を裁断して作られたものであり、
前記パネル(2、4)は横方向に結合されて、前記円周方向部分の前記軸方向(28)に沿って対向する長手方向の両端部まで伸びる縫い目を形成しており、
前記圧迫ガーメントが着用者(70)に着用されているようなストレス状態にあるとき、前記円周方向部分の前記軸方向(28)の各位置における前記円周方向の長さ(12C、14C、16C、18C、20C、22C、24C、26C)は、
前記円周方向部分の異なる前記軸方向の位置において、前記着用者のサイズに応じて前記円周方向の長さの延伸度は異なるが、前記軸方向の各位置において、前記円周方向部分の全体にわたって、同じ程度のガーメント圧迫(P)を発揮するような長さとなっており、
前記延伸度は、U(計算値)=((U(延伸状態)-U(弛緩状態))/U(弛緩状態))であり、
前記U(延伸状態)は、着用されたストレス状態における前記圧迫ガーメントの円周方向の長さ、前記U(弛緩状態)は、弛緩状態における前記圧迫ガーメントの円周方向の長さであり、
普通の着用者によって着用された前記円周方向部分が延伸状態にある場合に、様々な複数の前記軸方向位置(12、14、16、18、20、22、24、26)において、前記着用者の肉体部分に同じ程度の円周方向ガーメント圧迫(P)を発揮させるための、複数の延伸状態の円周方向生地の長さが式(1)によって計算され、
Pi=(20π*Fi)/Ui (1)
但し、前記圧迫ガーメントの部分の複数の様々な前記軸方向位置の対応する一つと関連している各測定点iにおいて、P=ガーメント圧迫(kPa)、F=ガーメント圧迫力(N/cm)、及びU=円周方向の肉体長さ(cm)であり、かつ、前記Uは前記各測定点iにおける前記延伸状態にある前記圧迫ガーメントの前記円周方向の長さに等しく、
前記伸縮性織布生地は、前記弛緩状態における前記圧迫ガーメントの円周方向の長さに基づいて裁断されたものであり、前記少なくとも1枚のパネルにおいて、前記複数の様々な前記軸方向位置(12、14、16、18、20、22、24、26)のそれぞれにおいて、前記弛緩状態における前記圧迫ガーメントの円周方向の長さに構成されていることを特徴とする圧迫ガーメント。
【請求項2】
請求項1に記載の圧迫ガーメント(68、80)において、
前記円周方向部分は、前記弛緩状態にあるとき、前記軸方向に隆起部(504、506)を含んでいることを特徴とする圧迫ガーメント。
【請求項3】
請求項1に記載の圧迫ガーメント(68、80)において、
前記円周方向部分は前記弛緩状態にあるとき、前記軸方向の位置に沿って前記円周方向に延びる隆起部(504)を含んでいることを特徴とする圧迫ガーメント。
【請求項4】
請求項1~のいずれか1項に記載の圧迫ガーメント(68、80)において、
前記伸縮性織布生地は、一重でありコーティングされていない材料であることを特徴とする圧迫ガーメント。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載の圧迫ガーメント(68、80)において、
前記円周方向部分は前記伸縮性織布生地の単一の前記パネル(2、4)しか含まないことを特徴とする圧迫ガーメント。
【請求項6】
請求項1に記載の圧迫ガーメント(68、80)において、
前記円周方向部分は、前記伸縮性織布生地(10)の2枚の前記パネル(2、4)を含んでおり、前記2枚のパネルは、前記円周方向部分の前記軸方向(28)に沿って伸びる前記縫い目を形成するように接合され、前記各パネルは、前記円周方向部分の前記長手方向の一端から対向する長手方向の他端まで完全に延びていることを特徴とする圧迫ガーメント。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載の圧迫ガーメント(68、80)において、
前記伸縮性織布生地(10)はデニムを含むことを特徴とする圧迫ガーメント。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の圧迫ガーメントにおいて、
前記圧迫ガーメントは、1着のジーンズ(68)を含み、前記円周方向部分は、パンツの脚部(60)の大腿部分を含むことを特徴とする圧迫ガーメント。
【請求項9】
請求項1~のいずれか1項に記載の圧迫ガーメントにおいて、
前記圧迫ガーメントは、前記着用者の脚部の下部をカバーする圧迫靴下(80)あるいはスリーブを含むことを特徴とする圧迫ガーメント。
【請求項10】
布製の生地から作られた円周方向部分(60、66)を有する圧迫ガーメントの製造方法であって、前記圧迫ガーメントは、弛緩状態にあるとき、前記円周方向部分の円周方向の長さは、前記円周方向部分の軸方向(28)に沿って、最初に増加し、その後減少し次に増加するように、複数回増減しているものにおいて、
前記円周方向部分(60、66)は、1つの伸縮性織布生地(10)の少なくとも1枚のパネル(2、4)を含んでおり、
一重でコーティングされていない前記1つの伸縮性織布生地(10)を提供するステップ(1001)と、
複数の円周方向生地の長さを計算するステップ(1003)と、
前記パネル(2、4)を形成するために、一重でコーティングされていない前記1つの伸縮性織布生地(10)を裁断するステップ(1005)と、
前記パネルを、前記円周方向部分の前記軸方向(28)に沿って対向する長手方向の両端部まで伸びる縫い目を形成するように、横方向に結合し、前記圧迫ガーメント(68)の前記円周方向部分を形成する(1007)ステップを含んでおり、
前記圧迫ガーメントが着用者(70)に着用されているようなストレス状態にあるとき、前記円周方向部分の前記軸方向(28)の各位置における前記円周方向の長さ(12C、14C、16C、18C、20C、22C、24C、26C)は、
前記円周方向部分の異なる前記軸方向の位置において、前記着用者のサイズに応じて前記円周方向の長さの延伸度は異なるが、前記軸方向の各位置において、前記円周方向部分の全体にわたって、同じ程度のガーメント圧迫(P)を発揮するような長さとなっており、
前記延伸度は、U(計算値)=((U(延伸状態)-U(弛緩状態))/U(弛緩状態))であり、
前記U(延伸状態)は、着用されたストレス状態における前記圧迫ガーメントの円周方向の長さ、前記U(弛緩状態)は、弛緩状態における前記圧迫ガーメントの円周方向の長さであり、
前記計算するステップ(1003)において、普通の着用者によって着用された前記円周方向部分が延伸状態にある場合に、様々な複数の前記軸方向位置(12、14、16、18、20、22、24、26)において、前記着用者の肉体部分に同じ程度の円周方向ガーメント圧迫(P)を発揮させるための、複数の前記延伸状態の円周方向生地の長さが式(1)によって計算されるものであり、
Pi=(20π*Fi)/Ui (1)
但し、前記圧迫ガーメントの部分の複数の様々な前記軸方向位置の対応する一つと関連している各測定点iにおいて、P=ガーメント圧迫(kPa)、F=ガーメント圧迫力(N/cm)、及びU=円周方向の肉体長さ(cm)であり、かつ、前記Uは前記各測定点iにおける前記延伸状態にある前記圧迫ガーメントの前記円周方向の長さに等しく、
前記裁断するステップにおいて、前記伸縮性織布生地は、前記弛緩状態における前記圧迫ガーメントの円周方向の長さに基づいて裁断され、前記少なくとも1枚のパネルにおいて、前記複数の様々な前記軸方向位置(12、14、16、18、20、22、24、26)のそれぞれにおいて、複数の弛緩状態の円周方向生地の長さに生成され、
前記圧迫ガーメントが着用者(70)に着用されているようなストレス状態にあるとき、前記円周方向部分の前記軸方向(28)の各位置における前記円周方向の長さ(12C、14C、16C、18C、20C、22C、24C、26C)は、
前記円周方向部分の異なる前記軸方向の位置において、前記着用者のサイズに応じて前記円周方向の長さの延伸度は異なるが、前記軸方向の各位置において、前記円周方向部分の全体にわたって、同じ程度のガーメント圧迫(P)を発揮するような長さとなっている、ことを特徴とする圧迫ガーメントの製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、
前記裁断するステップにおいて、前記一重でコーティングされていない伸縮性生地(10)を裁断して、前記円周方向部分が前記弛緩状態にある場合、前記円周方向部分が前記軸方向(62)に沿って、少なくとも複数回増減する(225、227、229)ような円周方向長さを生成することを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の方法であって、
前記裁断するステップにおいて、前記軸方向(62)に延びる単一の前記縫い目(65)を有する単一の前記パネルを形成することを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項10又は11に記載の方法であって、
前記裁断するステップが、前記円周方向部分の前記軸方向に延びる前記縫い目を形成するように接合される2枚の前記パネル(2、4)を形成することを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項10~13のいずれか1項に記載の方法であって、
前記一重でコーティングされていない前記伸縮性織布生地が、均一な弾性を有する前記一重でコーティングされていない伸縮性織布生地であることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項10~14のいずれか1項に記載の方法であって、
前記伸縮性織布生地(10)は、デニムであることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項10~15のいずれか1項に記載の方法であって、
前記圧迫ガーメントは、1着のジーンズ(68)を含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項10~15のいずれか1項に記載の方法であって、
前記圧迫ガーメントは、圧迫靴下(80)を含むことを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項10に記載の方法であって、
前記異なる延伸度は、前記圧迫ガーメントが前記着用者(70)により着用された延伸状態にあるときに、前記軸方向位置の連続する3つの軸方向位置(14,16,18)からなる少なくとも1つのグループに沿って前記延伸度が増減を繰り返すような、異なる前記延伸度を含んでいることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であって、さらに、
前記一重でコーティングされていない伸縮性織布生地(10)の少なくとも1枚のパネルを使用して、モデル円周方向ガーメント部分を製造するステップ(2005)と、
前記複数の様々な軸方向位置の夫々における、前記弛緩状態にある前記モデル円周方向ガーメント部分の円周方向の長さを測定するステップ(2007)と、
前記複数の延伸した円周方向の長さ(U)を提供する(2013)ために、前記モデル円周方向ガーメント部分を、それぞれの前記軸方向位置における円周方向の長さが予め分かっている肉体モデル部材の上に載置することによって、前記モデル円周方向ガーメント部分を延伸させるステップ(2011)と、
前記軸方向位置の各々で前記一重でコーティングされていない伸縮性織布生地の荷重-伸び関係を使用して、前記延伸度に基づいた前記ガーメント圧迫力(F)を計算するステップ(2023)とを含んでいることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項18に記載の方法であって、さらに、
前記一重でコーティングされていない伸縮性織布生地(10)の少なくとも1枚のパネルを使用して、モデル円周方向ガーメント部分を製造するステップ(2005)と、
前記複数の様々な軸方向位置の夫々における、前記弛緩状態にある前記モデル円周方向ガーメント部分の円周方向の長さを測定するステップ(2007)と、
前記複数の延伸した円周方向の長さを提供する(2013)ために、前記モデル円周方向ガーメント部分を、それぞれの前記軸方向位置における円周方向の長さが予め分かっている肉体モデル部材の上に載置することによって、前記モデル円周方向ガーメント部分を延伸させるステップ(2011)と、
前記モデル円周方向ガーメント部分の各軸方向位置で前記ガーメント圧迫Pを測定するステップ(2019)と、
前記各軸方向位置で、前記測定されたガーメント圧迫Pに基づいて前記ガーメント圧迫力Fを計算するステップ(2023)と、
前記延伸円周方向長さ及び前記弛緩状態の円周方向長さを用いて、前記各軸方向位置における延伸度を計算するステップ(2015,2017)と、
前記一重の伸縮性織布生地(10)の荷重-伸び曲線および各軸方向位置における前記計算された延伸度を用いて、前記各軸方向位置での生地圧迫力fを決定するステップ(2029)と、
計算された前記ガーメント圧迫力Fを決定された前記生地圧迫力fと比較することによって縫い目補正係数を決定するステップ(2031)と、
前記各軸方向位置で所望のガーメント圧迫を生成するために必要な前記ガーメント圧迫力Fを決定するステップ(2039)と、
前記必要なガーメント圧迫力Fに前記縫い目補正係数を乗ずることによって、前記必要なガーメント圧迫力Fを、それぞれの前記軸方向位置における生地圧迫力fに変換するステップ(2043)と、
前記必要な生地圧迫力f及び前記荷重-伸び曲線を使用して、前記生地の円周方向長さを決定するステップ(2051)を含み、
前記肉体モデル部材の既知の円周方向の長さまたは寸法が、特定の着用者のサイズについてのサイズチャートと関連していることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、最も広義には、繊維産業、及びガーメント(衣服)の製造に関する。特に本発明は、様々の種々のタイプの圧迫特性を有する伸縮性ガーメント、それらを製造する方法、及び伸縮性圧迫ガーメントの着用者に圧迫を加える方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧迫ガーメントは、着用者の肉体の複数の部位を圧迫する繊維製品である。このような圧迫ガーメントは、多くの医療分野において、筋肉支持の改良、及び/又は血流促進等の多くの目的に対して有用である。さらに、圧迫ガーメントは、運動能力の増進、筋肉疲労の軽減、及び筋肉回復の補助をするスポーツウェアとして人気がある。
【0003】
医療及び治療用のアプリケーションとしてデザインされた多種の圧迫ガーメントは、圧迫ストッキング、あるいは他のガーメントのような、着用者の肉体部位の円周方向を包み、血行不良、リンパ水腫、血栓症、又は他の静脈及びリンパ系の機能不全を治療するのに使用される圧迫物品である。特許文献1及び特許文献2は、例えばリンパ水腫を扱うために、圧迫ガーメントを使用することを開示している。
【0004】
スポーツウェアとして設計された圧迫ガーメントは、スポ-ツをしている間、血液循環及び筋肉の動きを高める。これらの圧迫ガーメントは、筋肉の硬直による痛みを軽減し、かつ、筋肉への血流と酸素飽和を向上させ、スポーツ活動を助長する。スポーツウェアとしての圧迫ガーメントには、多数の肉体の部位用のシャツ、ショーツ、パンツ、タイツ、ソックス、スリーブス、及び下着がある。
【0005】
織物産業で製造されている通常のガーメントには、多様な弾性を有する各種のガーメントがある。高い弾力性を有するガーメントは、破断することなく、かなりの長さに伸張できる、ポリウレタン繊維等の多種多様の弾性材料を使用して製造することができる。
弾性繊維の例としては、エラスタン及びスパンデックス、並びにそれに類似の材料がある。
弾力性の低いガーメントは、多種多様の天然及び合成繊維を使用して製造することができる。弾力性の低い繊維は、一般に、限られた弾性を有すると共に、高い回復特性を有している。
特許文献3(発明の名称:伸縮性複合ヤーン、製造方法及び織物)には、様々な弾性係数を有する多様な繊維が記載されている。
【0006】
圧迫療法では、特に足及び脚における血液循環を管理するために特別に設計されたガーメントを利用する。特に、圧迫靴下には、運動選手だけでなく、他の人にとっても多くの大きな健康上の利点がある。圧迫靴下を着用すると、血液に酸素を供給し、栄養素を身体の特定の領域に供給し、痛みや衰弱を軽減し、腫れを予防し、損傷した組織を再生するのを助けることによって、脚を活性化させる。
圧迫靴下は、皮膚の直下の組織に直接圧力を加えることにより、脚を徐々に優しく圧迫する。皮下組織に圧力を加えることによって、余分な液体が毛細血管に戻ることが促進される。圧迫療法はまた、血液を前方に流すことによって、浅い静脈に血液が過剰に充填されるのを防止する。
【0007】
圧迫療法は、誰に対しても行うことができる。この圧迫療法の対象者の1つが、静脈疾患に苦しむ人々である。慢性的な静脈疾患救済を得るための医療プロセスは、圧迫靴下が弁を効率的に作動させることを可能にする。圧縮理論によって治療することができる他の症状又は状態には、外科手術、妊娠、脚の損傷、静脈の血栓、長期間殆ど又は全く動かないことによる肥満又は過剰体重増加、静脈瘤の「クモ」静脈静、又は老化やランニングや高強度運動による循環障害が含まれる。
【0008】
慢性静脈疾患救済の医療プロセスは、圧迫靴下が弁を効率的に作動させることを可能にする。圧迫靴下は、ランナーの乳酸塩閾値を改善し、ランニングに伴う痛みを軽減させる。様々な研究により、運動中に着用される圧迫ガーメントが疲労や筋肉痛を軽減し、さらに、それらが、航空機の乗客の深部静脈血栓症(DVT)を軽減させることも証明されている。
【0009】
医療用及びスポーツ用の圧迫靴下及びその他の圧迫ガーメントは、伝統的にニット技術によって製造されてきた。しかし、最近、圧迫靴下は、カラーとスタイルの面でファッショナブルになっている。ニットで製造されたガーメントには、多くの欠点及び限界がある。
このような限界の一つは、ニット技術が、染色、洗濯、レーザー処理、及びその他の多様な織物処理に適しないことである。
従って、ニットで製造された圧迫ガーメントは、非常に使いづらく、むしろ不利益であり、用途が限定されている。
【0010】
様々なニット圧迫ガーメントは、生地の異なる位置で異なるレベルの圧縮を呈する。幾つかの例では、医療用途のニット圧迫ガーメントは、血液循環を促進するために使用され、ガーメントの全体にわたって、異なるレベルの圧迫を提供する。
特許文献4は、ガーメントの中の1つ以上の部位が複数のエリアを有し、各エリアにおいて、各前記ガーメントの生地の弾性が、予め低減されているものを開示している。特に、これらのエリアには、プリントされた模様が施されており、この模様が施されているエリアの生地の弾性は、低減されている。
【0011】
特許文献5は、多数のパネルで形成されたガーメントを開示している。このガーメントにおいて、第2のパネルの伸縮性材料は、第1のパネルの伸縮性材料と比較して、高い伸縮性及び回復特性を有している。
特許文献6は、着用者の骨盤の周りの脚の関節を、外部から回転させるための力を生成するように、異なる密度に織ってある織物のパーツを有するズボンを開示している。
また、特許文献7は、圧迫ガーメント、特に、様々な複数の異なる生地パネルで製造された、循環機能を改善するようになっている下半身の全長に及ぶガーメントを開示している。
【0012】
特許文献8は、体に合うジーンズを提供するために、使用者のシルエットに、ジーンズを積極的に適合させたフォームフィットジーンズを提供する、ジーンズ及び測定システムを開示している。幾つかの領域において、内側表面上にポリウレタンコーティングを使用して、複数の異なるタイプのガーメント部分を形成することにより、異なる延伸度が得られる。
特許文献9は、様々な対角線で、十字の配置で一緒に縫い合わされたエラストマー材料の多くの細片で作られた圧迫短辺を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】米国特許出願公開第2011/0257575号明細書
【文献】米国特許出願公開第2005/0113729号明細書
【文献】米国特許出願公開第2013/0260129号明細書
【文献】米国特許出願公開第2012/0210487号明細書
【文献】米国特許出願公開第2012/0222187号明細書
【文献】米国特許出願公開第2012/0100778号明細書
【文献】米国特許出願公開第2013/0174317号明細書
【文献】米国特許出願公開第2014/0165265号明細書
【文献】米国特許第6,430,752号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
外観の異なる多様な生地パネルは、ガーメントを作成するために結合するセクションの多様性と、これらのセクション間の縫い目の多様性とのために、審美的に満足できるものではない。
これは、使用者がガーメントを、「普段着」のファッショナブルな衣服として着用したい場合、すなわち特別な作業以外のときに着用したい場合に、特に問題である。
【0015】
さらに、様々な場所で多様な生地パネルを一緒に接合するための多様な縫い目があると、これらの多様な縫い目は着用者には不快であることは明らかである。多様な圧迫強度を有する多様な生地パネルは、異なるタイプの生地から製造され、変化する圧縮力を生成する。
【0016】
このように、単一の圧迫ガーメントを製造するのにも、多様な異なる生地が必要であり、多様な生地片を製造し、多様な生地パネルを接合しなければならない。特性の異なる生地を製造することは、面倒であり、コスト高となる。
多様な異なるタイプの織物を製造するということは、単一の圧迫ガーメントを作るのを非常に高価なものとする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
これらの課題及び目的は、請求項1に記載した圧迫ガーメント、及び請求項11に記載した圧迫ガーメントの製造方法によって達成される。
【0018】
本発明は、延伸状態のガーメントの円周長に応じて、異なるガーメントの延伸度により同じ円周方向ガーメント圧迫を発揮させることができるという知見に基づいている。ガーメントの延伸度は、弛緩状態におけるガーメントの周囲長、及び使用者が着用したときのようなガーメントの延伸した周囲長さに基づいて決定される。
この延伸度は、荷重-伸び曲線の上のガーメント圧迫力(F)に関係している。このガーメント圧迫力(F)は、使用者の肉体部分の延伸状態の長さ又は周囲長(U)と共に、ガーメント円周方向圧迫(P)を決定し、さらに、着用者のガーメントによって与えられるガーメント圧迫(P)に関連している。
これらの関係のために、一重でコーティングされていない生地材料のような、単一の生地材料で作られた圧迫ガーメントの円周方向部分は、様々な軸方向位置で異なる延伸度、つまり異なる程度の変形度を有しているが、同じ大きさのガーメント圧迫を提供する。本発明は、そのようなガーメントの製造方法をも提供するものである。
【0019】
特に、本発明の1つの目的は、数学的関係に基づいて、必要なガーメントの寸法を決定し、それに応じて、均一な弾性特性を有する1つの伸縮性織布生地のパネルを裁断し、それにより、弛緩状態の周囲長、及びガーメントの円周方向部分の延伸度が変わるものの、着用者に加えられるガーメント円周方向圧迫(P)は、ガーメント円周方向部分の全ての軸方向位置において同じであるようにすることにある。
幾つかの実施形態では、前記弛緩状態の周囲長は、軸方向に沿って増減を複数回繰り返す。幾つかの実施形態では、前記延伸度は、軸方向に沿って複数回増減する。
【0020】
本発明の幾つかの目的によれば、均一な弾性特性を有する1つの伸縮性織布生地(10)から作られた円周方向部分(66)を含み、この圧迫ガーメントが着用者(70)により着用されたストレス状態にあるとき、この円周方向部分の異なる軸方向位置で異なる延伸度を示すが、しかし、この円周方向部分の全体にわたって、同じ程度のガーメント圧迫(P)を発揮するようになっていることを特徴とする圧迫ガーメント(68、80)が提供される。
【0021】
幾つかの圧迫ガーメント(68、80)の実施形態において、前記延伸度は、((U(延伸状態)-U(弛緩状態)/U(弛緩状態))からなる。但し、U(延伸状態)は、着用されたストレス状態における圧迫ガーメントの円周方向の長さ、U(弛緩状態)は、弛緩状態における圧迫ガーメントの円周方向の長さである。
【0022】
圧迫ガーメントが弛緩状態にあるとき、円周方向部分の円周方向長さ(12C、14C、16C、18C、20C、22C、24C、26C)の値は、この円周方向部分(66)の軸方向に沿って、まず増加し、次に減少するということを、少なくとも複数回繰り返えす。
【0023】
幾つかの実施形態において、前記円周方向部分は、弛緩状態にあるとき、軸方向に隆起部(504、506)があってもよい。
幾つかの実施形態において、前記円周方向部分は、弛緩状態にあるときに、軸方向位置に沿って円周方向に延びる隆起部(504)を有していてもよい。
【0024】
前記圧迫ガーメントは単層で、コーティングされていない材料で製作してもよい。
前記円周方向部分(66)は、伸縮性織布生地の単一のパネル(2、4)しか含まないものでもよい。
【0025】
幾つかの実施形態では、前記円周方向部分(66)は、この円周方向部分(66)の軸方向(28)に沿って伸びる縫い目を形成するように接合された、伸縮性織布生地(10)の2枚のパネル(2、4)であり、これらの各パネルは、円周方向部分の長手方向の一端から対向する長手方向の他端まで完全に延びている。
伸縮性織布生地(10)は、デニムを含んでいてもよい。
【0026】
幾つかの実施形態では、圧迫ガーメントは1対のジーンズ(68)を含んでいてもよく、また、その円周方向部分は、パンツの脚(60)の大腿部分を含んでいてもよい。
この圧迫ガーメントは、着用者の脚の下部をカバーする、圧迫靴下(80)あるいは袖を含んでいてもよい。
【0027】
本発明の他の目的は、着用者の血行不良、リンパ浮腫、血栓症及び他の静脈及びリンパ系機能不全の治療のために、上記いずれかの圧迫ガーメント(68)を使用することにある。
【0028】
本発明の他の目的は、圧迫ガーメントを製造する方法を提供することにある。この方法は、コーティングされていない伸縮性織布生地(10)を提供し、少なくとも1枚のパネル(2、4)を形成するために、一重でコーティングされていない伸縮性織布生地(10)を裁断し(1005)、前記圧迫ガーメント(68)の円周方向部分(60)を形成する(1007)各ステップを含んでおり、
前記少なくとも1枚のパネル(2、4)は、前記円周方向部分の長手方向の両端部まで伸びており、前記圧迫ガーメントが、着用者(70)に着用されたようなストレス状態にあるとき、前記円周方向部分は、様々な軸方向位置(12、14、16、18、20、22、24、26)で、異なる延伸度を示すが、しかし、同じ程度の円周方向ガーメント圧迫(P)を発揮することを特徴としている。
【0029】
幾つかの実施形態では、この方法は、前記裁断ステップが、前記円周方向部分が弛緩状態にある場合に、一重のコーティングされていない伸縮性織物(10)を裁断して、前記円周方向部分が軸方向に沿って、少なくとも複数回増減する(225、227、229)ような円周方向長さを生成するステップを含んでいる。
【0030】
幾つかの実施形態では、この方法は、前記裁断が、前記軸方向(62)に延びる単一の縫い目(65)を有する単一のパネルを形成することを含んでいる。
幾つかの実施形態では、この方法は、前記裁断が、円周方向部分(60)の軸方向に延びる縫い目を形成するように接合される2枚のパネル(2、4)を形成することを含んでいる。
【0031】
幾つかの実施形態では、この方法は、前記コーティングされていない伸縮性織布生地が、均一な弾性を有する一重のコーティングされていない伸縮性織布生地である、ことを含んでいる。
【0032】
幾つかの実施形態では、この方法は、デニムである伸縮性織布生地(10)を含んでいる。
幾つかの実施形態では、この方法は、1着のジーンズ(68)を含む圧迫ガーメントを含んでいる。
幾つかの実施形態では、この方法は、圧迫靴下(80)を含む圧迫ガーメントを含んでいる。
【0033】
幾つかの実施態様では、この方法は、前記圧迫ガーメントが着用者(70)により着用された延伸状態にあるときに、前記軸方向位置の連続する3つの軸方向位置(14、16、18)からなる少なくとも1つのグループに沿って、延伸度が増減を繰り返すような、異なる延伸度を含んでいる。
【0034】
幾つかの実施態様において、前記方法は、普通の着用者によって着用された円周方向ガーメント部分が延伸状態にある場合に、様々な複数の軸方向位置(12、14、16、18、20、22、24、26)において、前記着用者の肉体部分に同じ程度のガーメント周方向圧迫(P)を発揮させるための複数の弛緩状態の円周方向生地の長さを、式(1)によって計算する(1003)ことを含んでいる。
=(20π*F)/Ui (1)
但し、圧迫ガーメント部分の複数の様々な軸方向位置の対応する一つと関連している各測定点iにおいて、P=ガーメント周方向圧迫(kPa)、F=ガーメント圧迫力(N/cm)、及びU=円周方向の肉体長さ(cm)である。
また、前記裁断は計算に基づいており、前記複数の弛緩状態の円周方向生地の長さを生成する。
【0035】
幾つかの実施態様において、この方法は、さらに、
一重でコーティングされていない伸縮性織布生地(10)の少なくとも1枚のパネルを使用して、モデル円周方向ガーメント部分を製造するステップ(2005)と、
複数の様々な軸方向位置における、弛緩状態にある前記モデル円周方向ガーメント部分の円周方向の長さを測定するステップ(2007)と、
前記複数の延伸した円周方向の長さ(U)を提供する(2013)ために、前記モデル円周方向ガーメント部分を、それぞれの軸方向位置における円周方向の長さが予め分かっている肉体モデル部材の上に載置することによって、前記モデル円周方向ガーメント部分を延伸させるステップ(2011)と、
前記軸方向位置の各々で、前記一重でコーティングされていない伸縮性織布生地の荷重-伸び関係を使用して、前記延伸度に基づいたガーメント圧迫力(F)を計算するステップ(2023)とを含んでいる。
【0036】
幾つかの実施態様において、この方法は、肉体モデル部材の既知の円周方向の長さまたは寸法が、特定の着用者のサイズについてのサイズチャートと関連しており、さらに、
一重でコーティングされていない伸縮性織布生地(10)の少なくとも1枚のパネルを使用して、モデル円周方向ガーメント部分を製造するステップ(2005)と、
複数の様々な軸方向位置の夫々における、弛緩状態にある前記モデル円周方向ガーメント部分の円周方向の長さを測定するステップ(2007)と、
前記複数の延伸した円周方向の長さ(U)を提供する(2013)ために、前記モデル円周方向ガーメント部分を、それぞれの軸方向位置における円周方向の長さが予め分かっている肉体モデル部材の上に載置することによって、前記モデル円周方向ガーメント部分を延伸させるステップ(2011)と、
前記モデル円周方向ガーメント部分の各軸方向位置で、前記ガーメント圧迫Pを測定するステップ(2019)と、
前記各軸方向位置で、前記測定されたガーメント圧迫Pに基づいて、ガーメント圧迫力Fを計算するステップ(2023)と、
前記延伸円周方向長さ及び前記弛緩状態の円周方向長さを用いて、前記各軸方向位置での延伸度を計算するステップ(2015,2017)と、
前記一重の伸縮性織布生地(10)の荷重-伸び曲線、および各軸方向位置での前記計算された延伸度を用いて、前記各軸方向位置での生地圧迫力fを決定するステップ(2029)と、
計算された前記ガーメント圧迫力Fを、決定された前記生地圧迫力fと比較することによって縫い目補正係数を決定するステップ(2031)と、
前記各軸方向位置で、所望のガーメント圧迫を生成するために必要な前記ガーメント圧迫力Fを決定するステップ(2039)と、
前記必要なガーメント圧迫力Fに前記縫い目補正係数を乗ずることによって、前記必要なガーメント圧迫力Fを、それぞれの軸方向位置における生地圧迫力fに変換するステップ(2043)と、
前記必要な生地圧迫力f及び前記荷重-伸び曲線を使用して、前記生地の円周方向長さを決定するステップ(2051)を更に含んでいる。
【0037】
本発明を何ら制限するものではない実施形態、及び添付した図面を参照することにより、以下の詳細な説明から、本発明をよく理解しうると思う。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】結合して1着のジーンズ用パンツ脚部を製造することができる、2枚の伸縮性生地を示す図である。これら2枚の伸縮性生地は、各々、本発明の態様によって裁断された幾何学的形状を有している。
図2】結合して1着のジーンズ用パンツ脚部を製造することができる、2枚の伸縮性生地の他の実施形態を示す図である。これら2枚の伸縮性生地は、各々、本発明の態様に従って切断される。
図3】結合して1着のジーンズ用パンツ脚部を製造することができる、2枚の伸縮性生地の更に他の実施形態を示す図である。これら2枚の伸縮性生地の各々は、本発明の態様に従って形成される。
図4】従来技術によって裁断されたパンツ脚部と、本発明の実施形態によるパンツ脚部の一部分であって、本発明の一態様に基づいて決定され裁断された寸法を有する生地パネルとの比較図である。
図5】本発明の一態様によるパンツ脚部を形成するために、互いに接合された2枚の伸縮性生地を示す図である。
図5A】弛緩状態で隆起部を有するが、着用者に均一な圧迫を提供する圧迫衣類の本発明の実施形態を示す図である。
図6】普通の着用者に着用されるように、本発明によって形成された圧迫ガーメントのパンツ脚部の実施形態を示す図である。
図7】伸縮性弾性材料で形成された円筒形圧迫ガーメント部分に、非弾性材料で形成された円筒形ガーメント部分を接合して形成された、ガーメント部分を示す図である。
図8】本発明の実施形態によって製造された圧迫ガーメントの圧迫靴下の一例を示す図である。
図9】本発明の実施形態による、圧迫ガーメントの製造方法の一態様を示すフローチャートである。
図10A】本発明による圧迫ガーメントを製造方法の、詳細例の前半を示すフローチャートである。
図10B】本発明による圧迫ガーメントを製造方法の、詳細例の後半を示すフローチャートである。
図11荷重-伸び曲線の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明の、幾つかの実施態様において、伸縮性生地で製造された圧迫ガーメントが提供される。このガーメントは、腕、脚、足、腹部またはそれらの一部のような、着用者の肉体部分を包む少なくとも1つの円周方向部分を備えている。幾つかの実施態様では、前記ガーメント又は前記ガーメントの少なくとも円周方向部分は、単一の生地で製造されている。
【0040】
本発明の幾つかの実施形態によれば、伸縮性生地自体は、均一性、即ち一定の弾性を有している。一方、他の実施形態では、弾性は、生地全体で変化する。ガーメントは、デニムガーメントが好ましく、本発明の効果的な幾つかの実施態様によれば、この圧迫ガーメントは、1対のソックス又は1対のパンツ或いはズボンである。ガーメントが普通の着用者によって着用されたとき、すなわちガーメントが圧迫されたとき、このガーメントは、ガーメントの全体にわたって均一な、又は、円周方向部分の異なる軸方向位置で変化する、圧迫力をもたらす。
【0041】
均一な弾性を有する伸縮性生地は、単層の、コーティングされていない生地であってもよく、その円周方向部分は、単一のパネルで構成されていてもよいし、複数のパネルで構成されていてもよく、各パネルは、円周方向部分の軸方向の全体に沿って延びている。
【0042】
円周方向ガーメントは、この圧迫ガーメントの全体で均一な、又は、この圧迫ガーメントの軸方向位置に沿って変化する圧縮力を有するが、軸方向又は長手方向に沿って相互に結合される多様な生地ピースは必要でない。むしろ、1枚の生地ピース、又は2枚以上の生地ピースを横方向に結合して使用し、長手方向に延びる単数又は複数の縫い目を形成し、均一な、又は様々な軸方向位置で変化し得るガーメント圧迫を生成することができる。
単一の織物パネル、又は複数の生地パネルの各織物パネルは、周方向部分の長手方向の一端から、対向する長手方向の端まで完全に延びている。
幾つかの実施態様では、複数の生地パネルが、着用される1つの伸縮性織布生地タイプから製造される。即ち、これらの生地パネルは、各々、均一の弾性を有する生地のような同じ材料で製造され、結合されて、圧迫ガーメントの円周方向部分となる。
【0043】
本発明の1つの態様によれば、ヒト又は他の動物の血行不良、リンパ浮腫、血栓症、又は他の静脈及びリンパ系機能障害を治療する方法が提供される。この治療方法は、本発明の種々の特徴による圧迫ガーメントを製造すること、及び着用者が治療用の圧迫ガーメントの円周方向部分を着用することを含んでいる。
本発明の1つの態様によれば、前述したガーメントを、ヒト又は他の動物の血行不良、リンパ浮腫、血栓症、又は他の静脈及びリンパ系機能障害の治療への使用を提供する。
【0044】
本発明の1つの態様によれば、種々の軸方向位置において、望ましいガーメント圧迫を有するガーメントの円周方向部分を製造するために、寸法を計算して、対応する幾何学的裁断片を形成する方法が提供される。
【0045】
圧迫ガーメントは、円周方向部分の様々な軸方向位置に複数の周方向バンドを有するものとして「特徴づける」ことができるが、これらの「バンド」の各々は、同じ生地材料で製造されている。換言すると、実施形態において、いわゆる「バンド」の軸方向位置に拘わらず、各バンドは、全て単一の生地材料で製造されている。この円周方向部分は、1枚の生地パネルで製造されているか、又は、それぞれ同じ円周方向に結合されている2枚のパネルで製造され、結合されて前記円周方向部分を形成している。
幾つかの実施態様において、円周方向部分の生地パネルは、円周方向部分の長手方向端部から、対向する長手方向端部まで完全に延びている。前記円周方向バンドは、周方向部分の全体にわたって、均一な圧迫を提供するように、すなわち円周方向バンドの各々が同じ圧縮を提供するように調整されていると有利である。前記円周方向バンドは、前記圧迫ガーメントが普通の着用者によって着用されたとき、程度の異なる延伸度、または同じ延伸度を生ずるようにしてもよい。
好適な実施態様によれば、様々な軸方向位置で延伸度の程度は異なるが、着用者に加えられるガーメント周方向圧迫(P)の程度は同じものである。
なお、「延伸度」とは、弛緩状態の生地の長さと比較した、特定の時間における生地の延伸長さを指す。
【0046】
ここで使用される用語「着用者」、及び「普通の着用者」の表現は、特定のガーメントの特定のサイズに関連する産業標準サイズチャートの肉体部分の寸法と実質的に等しい肉体部分寸法を有するヒトに対して使用する。幾つかの実施態様において、普通の着用者とは、解剖学的構造が、特定のガーメントの特定サイズに関するサイズ、又は寸法チャートに等しい肉体部分寸法を有している着用者である。すなわち、平均的又は正常な範囲内にある特定のガーメントタイプ及びサイズを着用するヒトに対して使用する。
【0047】
圧迫ガーメントによって加えられる圧縮力は、ガーメントが着用者によって着用されるときに、すなわち、圧迫ガーメントの円周部分がストレス状態にあり、ガーメント圧迫(P)が関係している場合に発揮される円周方向に加えられる力である。
【0048】
一様な圧迫は、着用者の肉体部分の全ての部分、例えば足に、同じ量の圧迫を提供する。一様な圧迫は、足に関して、より包括的なサポート、救済及び予防手段を提供することが分かっている。
【0049】
本明細書の開示は、生地を幾何学的又は他の形状に裁断して、少なくとも1枚の生地パネルを形成することに関するものである。このパネルは、少なくとも1つの非線形縁部を有していてもよい。このパネルは、別のパネル、又は同じ生地パネルの別の縁部に接合されて、圧迫ガーメントの円周部分を形成する。着用されていないとき等の弛緩状態にあるとき、円周部分は、軸方向に沿って起伏を呈していてもよい。すなわち軸方向に沿って見たときに、一連の隆起が存在していてもよい。
【0050】
一つの実施態様において、生地の弾性は、生地全体で均一であり、形成されたガーメントは、着用者が着用した時、様々な円周を有する解剖学的構造位置を含む全ての位置で均一なガーメント圧迫を発揮する。均一な弾性ガーメントに関するこの実施態様において、幾何学的裁断により、ガーメントに沿った種々の位置において、特定の生地寸法及び圧迫レベルが形成されるので、この延伸度は、様々な軸方向位置において変化し、円周方向部分全体で同じガーメント圧迫を発揮する。換言すれば、様々な位置における一様な圧迫は、本実施態様のガーメントが使用者に着用された時、様々な延伸度を与えるように、このガーメントをデザインすることによって得られる。
ガーメント圧迫は圧縮力であり、円周方向圧迫、すなわち円周方向に作用する圧縮力である。
【0051】
本発明の開示を通して、「同じガーメント圧迫」又は「同じ程度のガーメント圧迫」又は「同じ圧縮」とは、圧縮値が実質的に同じであることを意味し、例えば、+/-5%を超えて変動しない。
【0052】
他の実施態様によれば、着用者が着用したときに、異なる延伸度又は同程度の延伸度により、ガーメント圧迫は、円周方向部分の様々な位置で変化する。
【0053】
本発明の一態様として、均一な、即ち一定の弾性、又は不均一な弾性を有する伸縮性生地を開示する。さらに、この生地に幾何学的裁断又は他の裁断を施して、少なくとも1枚の生地パネルを製造する方法も開示する。この幾何学的裁断は、生地及び製造しようとするガーメントに関する種々の要素を考慮した計算によって決定される。製造される生地は、少なくとも1つの非線形縁部のような様々な形状を含む縁部を有していてもよく、また、工学的パターン設計によって決定される種々の位置において、特定の寸法を有していてもよい。
【0054】
前記パネルは、別のパネル又は生地パネルの別の縁部と結合されて、1つの縫い目と、圧迫ガーメント又は圧迫ガーメントの円周方向部分を形成する。この圧迫ガーメント又は圧迫ガーメントの円周方向部分は、生地の弾性が、生地全体で均一である態様、又は異なっている態様を含めて、全ての軸方向位置で圧迫が均一である。
本発明の開示における圧迫ガーメントの円周方向部分は、この円周方向部分の長手方向に沿って配置され、かつ互いに結合された多様な生地パネルを必要としない。
【0055】
この圧迫ガーメントは、円周方向部分を含んでおり、この円周方向部分は、着用者の肉体を包み、かつ軸方向に沿った様々な位置、従って、着用者が着用した時、様々な円周方向長さを有するヒト解剖学的構造の様々な位置に対して、計算された望ましい圧縮力(「ガーメント圧迫」)を有している。
【0056】
裁断は、ガーメントが着用された時、望ましい延伸度を付与し、かつガーメントの様々な位置において望ましい圧迫効果を発揮するように計算された、様々な位置における特定のガーメント寸法を提供する工学的パターン設計に基づいて実行される。この幾何学的裁断によって、1つ以上の特別仕様の縁部を有する生地パネルが製造される。
この生地パネルを使用し、この生地パネルの2つの縁部を一緒に結合し、円周方向部分を形成することによって、圧迫ガーメントを製造した場合、圧迫ガーメントが着用された時、この円周方向部分は、様々な位置において、望ましい圧迫度を発揮する。
この円周方向部分は、弛緩状態で軸方向に沿って起伏を呈してもよい。すなわち、軸方向に沿って見た場合、一連の隆起があってもよい。着用されたとき、この円周方向部分は、異なる程度まで伸びるが、同じガーメント圧迫を提供する。
【0057】
いずれかの円周方向位置で発揮されるガーメント圧迫(P)は、その位置における生地の種類、ガーメントの延伸度に依存し、さらに、その位置における着用者の解剖学的構造の周囲長に依存する。
【0058】
幾何学的裁断を決定するのに使用する計算は、多くの係数に基づいており、様々な式又はアルゴリズムを使用して、様々な位置における望ましい圧迫を生成する幾何学的裁断を行なうことができる。この係数には、生地の荷重-伸び特性、望ましい圧迫等級、ブランドに基づいたガーメントのサイズチャートまたは測定チャート、縫い目の補正及びその他様々な補正係数、及び圧迫標準規格等がある。
前述した内容及び要素を考慮した様々なアルゴリズム及び式を使用して、種々の図形が形成される。
【0059】
幾つかの実施態様では、製造方法は、所望のガーメント圧迫Pを生成するために、ガーメントが普通の着用者によって着用され、このガーメントの円周方向位置が延伸状態にあるときに、この普通の着用者の肉体部分に、所望のガーメント圧迫Pが生ずるようにするために、式(1)に従って、軸方向の複数の異なる位置における、生地の複数の円周方向長さを計算することを含んでいる。
Pi=(20π*F)/U (1)
但し、圧迫ガーメント部分の複数の様々な軸方向位置の対応する一つと関連している各測定点iにおいて、P=ガーメント圧(kPa)、F=ガーメント圧迫力(N/cm)、及びU=円周方向の肉体長さ(cm)である。 は各測定点iにおける延伸状態にあるガーメントの円周方向長さに等しい。
幾何学的裁断は、以下に説明するように、これらの計算に基づいて行われる。
【0060】
本発明の実施態様によって、多種類の圧迫ガーメントが製造される。ガーメントの円周方向部分は、袖スリーブ又は膝スリーブ及び脚スリーブのようなスリーブ、靴下、シャツ、カラー、又はその他様々な部分である。幾つかの実施態様において、圧迫ガーメント自体は、円周方向ガーメント、即ち、ソックス、又は複数の膝スリーブ及び複数の脚スリーブのように、着用者の1つの肉体部分を包むガーメントである。
【0061】
幾つかの実施態様では、着用者の膝にまで延びる圧迫靴下が提供されるが、違う長さの圧迫靴下も、提供される。幾つかの実施態様において、「圧迫靴下」は、実際に、着用者の足首から膝まで達するスリーブである。即ちそれらは、着用者の足部を覆うものではない。幾つかの実施態様では、手首サポート、肘サポート、膝サポート、又は足首サポート等の圧迫装具を提供する。
【0062】
幾つかの実施態様において、圧迫ガーメントは、1着のタイツである。幾つかの実施態様において、圧迫ガーメントは、普段着のファッションガーメントである。幾つかの効果的な実施態様において、圧迫ガーメントは、1着のパンツ又は伸縮性デニムで製造されたジーンズであって、多くの態様において、デニムパンツは、足首で圧迫度が大きく、各々のパンツ脚部に沿って上に向かって、圧迫度が小さくなっている。
他の効果的な実施態様において、圧迫ガーメントは、1着のパンツ又は伸縮性デニムで製造された圧迫靴下であり、延伸度及びガーメント圧迫(P)は、円周方向ガーメントの全体にわたって一定である。
【0063】
図1は、生地の2枚のパネルを示しており、これらは結合されて、1着のパンツ、又はジーンズのパンツ脚部を形成するものである。図1は、結合して1つのパンツ脚部を形成する生地の2枚のパネルを示しているが、様々な別の態様において、本発明に従ったガーメント長の計算及び幾何学的裁断を使用して製造された生地パネルを使用して、圧迫靴下又はスリーブ、或いは前述した他のガーメントのような別の円周方向ガーメント、及び円周方向ガーメント部分を製造できることを理解されるべきである。
他の態様では、1枚のパネル又は複数のパネルを、様々な他の形状とし、かつ使用して、様々な他のガーメントやアパレルを製造することができる。
【0064】
図1は、結合されて1着のズボン、即ちジーンズ又はパンツのパンツ脚部を形成する前方パネル2及び後部パネル4を示している。前方パネル2は、裁断縁部6によって画定されており、後部パネル4は、裁断縁部8によって画定されている。図示した態様では、前方パネル2及び後方パネル4は、各々、生地10で形成されている。
生地10は、前述した適切な伸縮性生地であれば如何なるものでもよい。生地10は、全体を通して、均一な弾性を有する単層のコーティングされていない材料であってもよい。
好ましい実施態様では、生地10は、生地全体で弾性が一定であるという特徴を有している。弾性が均一な幾つかの実施態様では、縦糸方向の弾性は、横糸方向の弾性とは異なっていてもよく、他の態様では、縦糸方向及び横糸方向の弾性は、同じでもよい。
他の実施態様では、弾性は生地10の全体で変化する。
幾つかの実施態様において、生地10は、未処理の生地である。幾つかの実施態様において、生地10は、コーティングされていない生地である。幾つかの実施態様において、生地10は、未処置及びコーティングされていない生地である。
別の態様においては、2枚より多くの生地パネルが、生地10、即ち均一の弾性を有する同じタイプの生地から製造されてもよい。これら複数枚のパネルは、結合されて、1つの圧迫ガーメントの円周方向部分を形成し、各パネルは、形成された円周方向部分の全長に沿って延びている。
前述した又は後述する幾つかの実施態様において、前方パネル2、及び/又は後方パネル4のいずれか又は双方は、均一な弾性、又は不均一な弾性を有していてもよい。
【0065】
幾つかの実施態様において、生地10は、1つの伸縮性織布生地であると効果的である。
【0066】
生地10は、エラスタン及びスパンデックス及び他の同様の材料のような高い弾性度を提供する、様々なタイプのエラストマー繊維で形成してもよい。生地10は、単層又は単一レベルの材料であるのが有利である。
生地10に使用される低弾性率の繊維の例としては、天然の繊維、及びポリエステル、レーヨン、ナイロン、ポリエステルのような合成繊維、及びPBTのようなエラストマルチエステル、及びバイオコンポーネントポリエステルポリ(トリメチレンテレフタレート)/ポリエチレンテレフタレート(PTT/PER)がある。
特定された弾性繊維は、単なる例であって、様々な態様においては、様々な別の適切な弾性繊維又は様々な弾性繊維の組み合わせを使用して、生地10を製造することができる。弾性繊維は、同じ又は様々な弾性率を有する、同じ又は様々な繊維で製造することができる。
【0067】
幾つかの実施態様において、2種類の弾性繊維を使用して、生地10のヤーンが製造されるが、この弾性繊維の1つは、原長の400%まで伸びる延伸度があり、他の1つの弾性繊維は、原長の約20%しか伸びない低延伸性繊維である。
別の実施態様では、生地10を製造するのに使用される繊維は、様々な弾性率を有している繊維の組み合わせである。幾つかの実施形態では、生地10は、熱可塑性弾性繊維で形成される。
幾つかの実施態様において、軟質セグメント及び硬質セグメントのよく結合された構成を有していて特別な弾性を有する、熱可塑性エラストマー及び熱可塑性ポリウレタン(TPU)が使用される。集合的にエラスタンと呼ばれる、多種多様の弾性ポリウレタン材料を使用することができる。
【0068】
生地10は、生地材料の単層であり、この生地10は、結合されて複合繊維をはじめとして様々なヤーンを形成する様々な繊維から製造してもよい。幾つかの実施態様において、非弾性及び弾性繊維は、生地10の縦糸方向及び横糸方向の両方に伸びる。
幾つかの実施態様において、弾性材料は、モノフィラメント及び/又はステープルファイバーに紡糸され、そのまま、又は他の繊維と一緒にヤーンとして使用されてもよい。
幾つかの実施態様において、生地10は、1つ以上の弾性繊維の弾性コアを含んでおり、かつ前記コアを覆う非弾性シースを有する弾性ヤーンで製造される。
一つの特定の態様においては、弾性コアは、元の長さに対して、400%の延伸度ある高弾性繊維と、元の長さに対して、約20%の延伸度の低弾性繊維の2本の弾性繊維を含んでいる。他の態様においては、生地10を製造するのに使用される繊維は、様々な弾性率を有する繊維の組み合わせである。非弾性シースは、コットン、又は他の天然繊維、或いは合成繊維で製造してもよい。
【0069】
弾性特性を有する1本以上の複合繊維を含伸縮性コアと、絶縁性シース被覆を組み合わせることによってヤーンを製造する方法は、特許文献3に開示されている。なお、特許文献3に記載されている内容の全ては、本願明細書の一部を構成するものとして、参照用として本願明細書に組み込まれる。
弾性コアヤーンを使用する幾つかの実施態様において、コアは、1本以上の複合繊維の束を含んでおり、その内の幾つか又は全ては、弾性繊維である。コアを形成する繊維は、撚り、混合、又は同時押し出しによって、一緒に結合してもよい。繊維を交絡する実施態様において、これらの繊維は、様々な交絡度に交絡される。弾性コアは、1つ以上のコア繊維によって付与される優れた回復性、及びレジリエンス性を有しているという特徴がある。
【0070】
コア繊維紡績技術及びリング繊維紡績技術は、繊維産業界で、周知の汎用技術であり、各々様々な性質を有する2本以上の繊維を結合して、1本のヤーン構成体を形成する技術を含んでいる。繊維を紡糸してヤーンを製造する技術及びその他の多種多様な方法を使用して、生地10を製造することができる。
【0071】
生地10は、本発明の様々な実施態様によって、圧迫ガーメントを製造するために使用することができる下記の生地で製造することもできる。
非染色生地、及びインディゴ、反応性、ピグメント、及び硫黄後染め化工生地のようなあらゆるタイプの染色生地を、生地10として使用することができる。コットンと、ビスコース、レーヨン、モダル、キュプラ(テンセルのような有枝鎖繊維)のようなセルロース系繊維とのブレンドのような繊維を有する生地を、生地10として使用することができる。リネン、ウール、カシミア等のような天然繊維の混合繊維を、生地10として使用することもできる。
本発明の実施態様において、コットンと、ポリエステル、pbt(ポリブチレンテレフタレート)、ナイロン6.0、ナイロン6.6[例、コージュラ(CORDURA(登録商標))、T400(登録商標)等]のような人造繊維との混合繊維を使用して、生地10を製造することもできる。ポリエステル、ナイロン等のようなステープル、又はフィラメント繊維のような人造繊維を使用して製造された、様々な生地も使用することもできる。
上述した繊維と共に製造された、平織、綾織、キャンバス(パナマ)、サテン、及びドビータイプの織布等様々なタイプの織布を使用して、生地10を製造することもできる。エラスタン、またはエラスタン、pbt(ポリブチレンテレフタレート)、T400(登録商標)、ポリエステル等のような、横糸方向、縦糸方向、及び横糸及び縦糸両方向に弾性繊維を有する伸縮性織布のような、延伸織布を使用することもできる。
幾つかの実施態様では、生地3は、質量が1oz/sqyd(33.906gr/sqm)~14oz/sqyd(474gr/sqm)の生地であるが、他の態様では、様々な生地質量のものも使用される。
【0072】
幾つかの実施態様において、前方パネル2及び後方パネル4は、両方とも、前述した生地10で製造され、それらの実施態様では、前方パネル2及び後方パネル4は、同じ生地で製造される。即ち生地10は、均一な弾性を有しているので有利である。別の態様では、前方パネル2だけ、又は後方パネル4だけが、前述した生地10で製造されている。
本発明の一態様によれば、均一な弾性を有する生地10で形成された1枚のパネルを、異なる材料の生地に接合させて、パンツ脚部又は他の円周方向圧迫ガーメント又はガーメント部分が製造される。この円周方向圧迫ガーメント又はガーメント部分は、各軸方向位置で同じ布地パネルから形成されている。すなわち、各パネルは、円周方向圧迫ガーメント又はガーメント部分の一方の長手方向の端部から他方の長手方向の端部まで完全に延びているように製造する。
【0073】
更に、図1を参照して説明する。前方パネル2は、裁断縁部6で画定されており、かつ長手方向、即ち、前方パネル2の軸方向(軸方向28)の全体において、この前方パネル2は、対向する縁部6A及び6Bで画定されている。同様に、後方パネル4は、裁断縁部8で画定されており、かつ長手方向、即ち、後方パネル4の軸方向全体において、この後方パネル4は、対向する縁部8A及び8Bで画定されている。
各パネルの寸法、即ち前方パネル2及び後方パネル4の寸法、即ち対向する縁部6A及び6Bの間の距離、及び対向する縁部8A及び8Bの間の距離の各々は、これらのパネル2及び4が結合されてパンツ脚部を形成する時、本発明の工学的パターン設計に基づいて決定され、望ましい圧迫効果及び望ましい円周方向寸法を与えるように設計される。
様々な位置の寸法が一旦決定されると、図5に示すような決定された寸法のガーメントを生成するための、幾何学的裁断が行われる。
【0074】
別の態様では、1つの縫い目だけを有するパンツ脚部を形成するために、単一のパネルが使用され、決定された寸法のものを生成するための幾何学的な裁断を、前記単一のパネルを形成するために使用してもよい。この態様によれば、単一パネル材料は、対向する長手方向縁部を有しており、対向する長手方向縁部は、1本の縫い目とするために互いに結合され、それによって、1つの円周方向圧迫ガーメント、即ち1つのパンツ脚部が形成される。
【0075】
様々な態様において、生地10は、単層、即ち、一重の生地である。この円周方向部分は、圧迫性円周方向部分である。即ち、この部分は、普通の着用者が着用して応力がかかった時、円周方向圧迫を付与する。着用した衣服によって発揮されるこの円周方向圧迫は、ガーメント圧迫(P)と呼ばれ、kPa単位で測定することができる。
この圧迫性円周方向部分は、圧迫を発揮するものであり、パネル間に目立った重なり部分はない。しかしながら、当然、縫い目には、2枚の生地パネルの間に僅かな重なり部分を含んでいる。
本発明の様々な態様において、様々なタイプの縫い目を使用することができる。例えば、ロックスティッチ、チェーンスティッチ、安全スティッチ、サージングスティッチ、重なりスティッチ、ジグザグスティッチ、カバースティッチ、ブラインドスティッチ、メロースティッチ、フラットロックティッチ、接着テープによる熱シームシール、超音波ウェルディング、レーザーウェルディング、又はそれらの多様な組み合わせ等、様々なタイプの縫い目を使用することができる。しかし、これらに限定されるものではない。
【0076】
伸縮性織布生地の単層で製造された圧迫性円周方向部分は、如何なる弾性ストラップ、又は圧迫性円周方向部分に付着又は圧迫性円周方向部分に積層されたその他の圧迫性機能、又はストラップも無いことを特徴としている。
圧迫性円周方向部分も、生地の平面に対して鋭角又は直角方向に延び、かつ不均等な厚さを有する生地を形成する、如何なる生地又は延長部分を含んでいない。
【0077】
前述した様々な態様において、後方パネル4及び前方パネル2のような2枚のパネル又は単一パネルは、各々長手方向の長さ、即ち長手方向28に沿うガーメントの長さ、即ちパネル2及び4だけで製造された円周方向部分の一方の長手方向端部21から、対向する長手方向端部23にまで、完全に延びている。
【0078】
幾つかの実施態様では、均一な弾性を有する同じ生地の3層以上のパネルを配置し、その長手方向に沿って完全に延ばし、円周方向圧迫ガーメントを製造してもよい。換言すれば、均一な弾性を有する生地10を複数の生地パネルに裁断し、それを結合して、圧迫ガーメントの円周方向部分を形成し、複数の生地パネルの各々を、この圧迫ガーメントの円周方向部分の一方の端部から他方の端部へ延ばす。そして、円周方向に発揮される圧迫を、これらの生地パネルに形成された円周方向部分だけで生成する。即ち、内側又は外側の圧迫性ストラップ又はその他の装具によらずに生成する。
【0079】
図1の例において、前方パネル2及び後方パネル4のいずれか又は双方は、生地10の繊維の縦糸方向及び横糸方向に対して様々な角度で裁断される。
【0080】
前方パネル2の対向する縁部6A及び6Bは、図示した例のように、生地10の幾何学的裁断によって形成された非線形縁部である。また、図示した例のように、後方パネル4の対向する縁部8A及び8Bは、生地10の幾何学的裁断によって形成された非線形縁部である。
用語「非線形」は、各々の縁部の一つ以上が、複数の線形セグメントを含んでいたとしても、各々の縁部は連続した線形縁部ではないこと、即ち連続した直線縁部ではないことを意味する。
幾つかの実施態様において、前方パネル2及び/又は後方パネル4は、ギザギザがある形状であり、これら前方パネル2及び後方パネル4の縁部は、連続した滑らかな形状ではない。他の態様では、対向する縁部の一方は、直線の縁部であり、他方の縁部は、より誇張された裁断になっている。幾つかの実施態様において、縁部6A、6B、8A及び8Bの1つ若しくは複数は、本願明細書に記載の方法を適用した、様々な位置で寸法が決定された直線部分である。
【0081】
色々の態様において、縁部6A、6B、8A及び8Bの1つ若しくは複数は、多くの直線部分のセクション、及び多くの湾曲部分のセクションを含んでいる。幾つかの実施形態では、複数の直線部分は、互いに角度を有し、従って連続した直線状の縁部を形成するようには結合しない隣接直線部分を含んでいる。
幾つかの実施形態では、1つまたは複数のエッジ6A、6B、8A、8Bは、多数の直線エッジ部分だけで形成された非線形エッジであり、幾つかの実施形態では、1つ以上またはエッジ6A、6B、8A、8Bは、直線部分と接続された少なくとも1つの湾曲部分を含んでいる。幾つかの実施態様において、全ての縁部6A、6B、8A、及び8Bは、連続した湾曲縁部であり、この湾曲縁部は、周期的または規則的に出入りするものである。
幾つかの実施態様において、全ての縁部6A、6B、8A、及び8Bは、連続的に真っ直ぐな縁部である。幾つかの実施態様において、対向する縁部、例えば後方パネル4の対向する縁部8A及び8Bは、互いに平行である。このことは、前方パネル2及び/又は後方パネル4に関しても言えることである。
【0082】
他の態様では、対向する縁部、例えば、前方パネル2の対向する縁部6A及び6Bは、直線であり、互いに他に対して、角度を有している。このことは、前方パネル2及び/又は後方パネル4に対しても適用される。幾つかの実施態様では、1つ以上の縁部6A、6B、8A、及び8Bは、湾曲部分及び直線部分の両方を含んでおり、これらの直線部分は、パネルの大部分の長さ、即ち位置12から位置24へ沿って延びている。縁部6A、6B、8A及び8Bは、各々、ジグザグ又は曲がったような様々な非線形形状であってもよく、この非線形縁部の形状は、規則的な反復セクション又は不規則な縁部を含んでてもよい。
【0083】
図1において、前方パネル2及び後方パネル4は、それぞれ多くの位置12、14、16、18、20、22、24、及び26を有するものとして示してある。これらは、本発明の特徴を説明するのに役立つように、幾分自由に描いてあり、これらの8つの位置は、例示的目的で示したものである。
幾つかの実施態様において、測定位置は、ガーメントの寸法を計算するための業界標準位置を表わしている。望ましい圧迫を生成するのに必要なガーメント長は、位置12、14、16、18、20、22、24、及び26の各々に対して算出され、生地は、この算出結果に従って裁断される。
様々な実施態様において、見た目の寸法以外に、このようにして特定された「位置」のいずれかにおいて、布地材料に物理的な差異はなく、この布地材料の弾性またはその他の特徴は、前方パネル2及び/又は後方パネル4のそれぞれの全体にわたって一定である。
【0084】
図1において、前方パネル2は、図示した非線形の対向する縁部6A及び6Bと関連した様々な位置12、14、16、18、20、22、24、及び26において、特定の幅を有している。後方パネル4は、図示した非線形の対向する縁部8A及び8Bと関連した様々な位置12、14、16、18、20、22、24、及び26において、特定の幅を有している。任意に記載した8つの領域12、14、16、18、20、22、24、及び26は、各々対向する縁部の特定の形状、配置又は位置に関連づけて記載されている。
【0085】
複数の態様において、より多くの数の指定された領域が使用され、多くの数の特定の幅が決定される。従って、指定した領域間には、多くの数のセグメントが存在し、曲がった縁部のように、滑らかに見える縁部が形成される。
【0086】
図2は、前方パネル及び後方パネルの対向する縁部を形成するのに使用される幾何学的裁断の他の実施形態を示している。図2において、前方パネル102は、図示したように、対向する縁部106A及び106Bに関連した様々な位置112、114、116、118、120、122、124、及び126において、特定の幅を有している。対向縁部106A及び106Bの部分は、直線状であり、かつ、互いに角度をもって対向しており、対向縁部106A及び106Bの一部は湾曲している。
後方パネル104は、非線形を特徴とする対向縁部108A及び108Bに関連する様々な位置112、114、116、118、120、122、124、及び126において、図示したような特定の幅を有している。記載した8つの領域112、114、116、118、120、122、124、及び126は、各々対向する縁部の特定の形状、配置又は位置に関連づけて記載されている領域であるが、寸法が算出された位置の部分だけを表わしている。例えば、縁部108の曲がっている位置では、滑らかな効果を発揮させるために、互いに接近した複数の位置で、複数の計算がなされる。
【0087】
図2において、各位置112、114、116、118、120、122、124、及び126、並びに多くの他の位置において、上記記載に従って決定された幾何学的裁断を行い、望ましい寸法とされている。即ち、寸法112R、114R、116R、118R、120R、122R、124R、126R、及び寸法112F、114F、116F、118F、120F、122F、124F、及び126Fは、それぞれ位置112、114、116、118、120、122、124、及び126に対応して、定められている。
幾つかの実施態様において、112R、114R、116R、118R、120R、122R、124R、及び126Rの大部分又は全ての寸法は、互いに異なっており、また、幾つかの実施態様において、112F、114F、116F、118F、120F、122F、124F、及び126Fの大部分又は全ての寸法は、互いに異なっている。
【0088】
図3は、本発明に基づく幾何学的裁断の他の態様を示している。図3において、前方パネル202は、対向縁部206A及び206Bによって画定されており、後方パネル204は、対向縁部208A及び208Bによって画定されているが、ガーメントの長さが決定された特定の位置は示していない。
縁部206Aは、複数の直線セグメント及び曲がった部分を含んでいる。この曲がった部分は、ガーメント長さが決定される互いに近接して離間している多数の軸方向位置を使用した結果として形成される。縁部206Aは、例えば、隣接する線形セグメント209,211及び213を含んでおり、これらは、各々互いに角度をもっており、また湾曲部分217に隣接し、この湾曲部分217に対して角度を持っている直線セグメント219も示してある。
湾曲部分215は、線形セグメント213に隣接し、かつこの線形セグメント213に対して角度をもっている。用語「互いに対して角度を持っている」とは、それらが共直線ではないことを意味している。
縁部206A及び206Bは、各々、縁部208A及び208Bと結合されて、円周方向ガーメントを形成している。
軸方向28に沿って進むと、3つの連続した軸方向位置225、227、及び229に沿って、前方パネル202の幅が拡大し減少していることが分かる。前方パネル202の幅は、点223から点225へかけて減少し、次に位置225と位置227の間で増大し、さらに位置227と位置229の間で減少している。それに伴って、前方パネル202と後方パネル204を接合して圧迫ガーメントを製造する時、円周方向ガーメント部分における円周方向の長さが、増減するという特徴がある。
着用していない時等、すなわち弛緩状態では、上記のような円周部分は、隆起した波状の外観を呈している(図5A参照)。
【0089】
前述した実施態様のいずれにおいても、対向する縁部6A、6B、8A、8B、106A、106B、108A、108B、206A、206B、208A、208Bは、複数の様々な位置における望ましい寸法を計算して得られる特別仕様の値である。
【0090】
再度、図1を参照して説明する。各位置12、14、16、18、20、22、24、及び26において、本発明の態様によって決定された幾何学的裁断が行われる。すなわち、対応する位置12、14、16、18、20、22、24、及び26で望ましい寸法、すなわち寸法12R、14R、16R、18R、20R、22R、24R、及び26R、及び寸法12F、14F、16F、18F、20F、22F、24F及び26Fが生成される。
幾つかの実施態様において、大部分又は全ての寸法12R、14R、16R、18R、20R、22R、24R及び26Rは、互いに異なっている。幾つかの実施態様において、大部分又は全ての寸法12F、14F、16F、18F、20F、22F、24F及び26Fも、互いに異なっている。
【0091】
図1において、計算された寸法12R、14R、16R、18R、20R、22R、24R及び26R、並びに寸法12F、14F、16F、18F、20F、22F、24F及び26Fは、前方パネル2が後方パネル4に接合されて縫い目を形成し、これを普通の着用者が着用した時に、円周方向ガーメント部分が、望ましい圧迫効果を発揮するように設計されている。
同様に、図2において、機械的パターン設計に基づいて算出された寸法112R、114R、116R、118R、120R、122R、124R及び126R、並びに寸法112F、114F、116F、118F、120F、122F、124F及び126Fは、工学的パターン設計に基づいて製造され、前方パネル102と後方パネル104を結合して縫い目を形成し、これを普通の着用者が着用した時、円周方向ガーメント部分が望ましい圧迫効果を発揮するように、設計されている。
種々の円周方向ガーメント又は円周方向ガーメント部分を製造してもよい。「円周方向ガーメント」又は「円周方向ガーメント部分」とは、ガーメント又はガーメント部分が、着用者の腕、脚、胴体、足首、膝、肘等の肉体部分を取り囲むという意味である。
【0092】
前記寸法は、1つの軸又は長手方向28に沿って連続的に増加し、或いは軸方向に沿って軸方向に沿って増減していてもよい。即ち、前記寸法は、図3に示したように、1つの軸軸方向、又は長手方向28に、連続して長くも短くもなっていない。
別の言い方をすれば、幾つかの実施態様において、軸方向28に沿って進むと、前記工学的なガーメントの寸法は、まず、2つの連続した位置の間で増大している。例えば、位置22から20までの間で増大し、次に位置20と18の間で減少している。換言すれば、最小及び/又最大寸法は、中央のどこかにあり、末端位置12又は26にはない。いくつかの実施形態では、寸法は、軸方向28に沿って何回も、増加し、次に減少し、そして増加する。
【0093】
以下の記載は、図1に示した態様及び図2及び図3に示した態様の両方に適用されるが、表現を簡潔及び明快にするために、図1に関して、以下の記載を続ける。
【0094】
算出された寸法は、圧迫ガーメントの円周方向部分の円周方向寸法に沿う総寸法を提供するように計算される。前方パネル2及び後方パネル4の両方を使用する幾つかの実施態様において、例えば位置14における円周方向寸法に沿う総寸法は、寸法14F及び14Rの総計である。
前方パネル2及び後方パネル4のような2枚のパネルを使用する実施態様の場合、これらのパネルは接合されて、長手方向、即ちガーメントの円周方向部分の長手方向に沿って延びる縫い目が形成されている。換言すれば、これら2枚のパネルは、円周方向に沿った縫い目を形成するようには接合されていない。
幾つかの実施態様においては、パネルを1枚だけ使用し、対向する縁部を相互に結合することで、1つの算出された寸法が、図5に、寸法12C、14C、及び16Cとして示すような、円周方向の総寸法となるようにしても良い。例えば、1枚の後方パネル4だけを使用して、圧迫ガーメントの円周方向部分を形成する場合、寸法14F自体が、位置14における円周方向寸法に沿った総寸法を表わしている。
【0095】
図1において、対向する縁部6A及び6B、及び対向する縁部8A及び8Bを形成するのに使用される幾何学的裁断を決定するガーメント寸法は、幾つかの係数に基づいて決定され、これらの多くの係数は、様々な数学的式又はアルゴリズムに織り込むことができる。
【0096】
幾つかの実施態様において、上述したように、一つの係数は、生地10の荷重-伸び特性である。特定の材料における荷重と伸びとの間の関係は、その特定の材料の荷重伸び曲線として知られている。
この荷重-伸び曲線は、材料毎に固有であり、所定の間隔の引張荷重または圧縮荷重(応力)に対する変形量(歪)を記録することによって得られる。
この荷重-伸び曲線は、しばしば、最良適合公式によって生成される曲線を使用することにより表わされる。最良適合公式曲線が、この荷重-伸び関係における他のデータポイントの推定を可能にする。これらの曲線は、弾性係数(E)を含む材料の多くの特性を示し、幾何学的裁断を決定する際の要因と考えられる様々な荷重-伸び特性を示している。この荷重-伸び曲線を使用して、特定の変形量に関連する生地圧迫力Fを推定することができる。
生地圧迫力Fは、特定の位置での、弛緩状態のガーメントの円周方向長さに対する延伸度、すなわち使用者の解剖学的構造のサイズに依存する延伸度に基づいている。生地圧迫力Fは、式(1)に示すように、ガーメント圧迫Pを予測するために周長「U」と共に使用することができる。
【0097】
式(1)において、位置12、14、16、18、20、22、24、及び26のそれぞれは、測定点「i」で表わされる。この測定点「i」において、ガーメント圧迫P、及び望ましいガーメント長が計算される。この計算は、例示した8つの位置の代りに、他の態様では様々な位置で実施してもよい。
【0098】
前記の通り、着用者の肉体部分に作用する圧迫、即ちガーメント圧迫Pは、下記の式(1)から算出される。
=(20π*F)/U (1)
但し、
P=測定点(i)におけるガーメント圧迫(kPa)
F=測定点(i)におけるガーメント圧迫力(N/cm)
U=測定点(i)におけるガーメントの円周方向長さ(cm)
【0099】
ガーメント圧迫は、ガーメントが着用者に着用された時のように、ガーメントが延伸状態の時に発揮される。この応力状態におけるガーメントの円周方向長さU、即ち測定点iにおける延伸状態のガーメントの円周方向長さは、測定点iにおける肉体部分の円周方向長さと同じである。ガーメント圧迫力Fは、ガーメントの延伸度で決定される。ガーメント圧迫を示す荷重-伸び曲線を使用し、ガーメント圧迫力Fに変換することができる。
図11は、荷重-伸び曲線の一例を示す。
延伸度は、弛緩状態のガーメントに対する延伸したガーメントの長さに依存し、これは、特定の測定位置iにおける着用者の解剖学的サイズに依存している。
【0100】
延伸度が決定されると、これを、特定の生地に関係する荷重-伸び曲線と共に使用して、ガーメント圧迫力F値を予することができる。式(1)は、(ガーメント圧迫力Fの異なる強さに関連した)異なる伸長度により、Uが変化する円周上の各位置で、同じガーメント圧迫(P)を提供できることを示している。
【0101】
脚のような着用者の解剖学的構造の周囲は、着用者が着用したストレス状態のガーメントの延伸状態の周長(U)と等しいので、この長さは、任意の従来の測定手段を用いて測定することができる。
延伸度は、幾つかの実施形態では、[(U(延伸状態)-U(弛緩状態))/U(弛緩状態)]として表すことができる。使用する式に応じて、他の実施形態では、U(延伸状態)/U(弛緩状態)として表すこともできる。この延伸度は、任意の従来の測定ツールを使用して、延伸された長さと緩和された長さとを比較することによって測定することができる。
【0102】
式(1)に従って、同じガーメント圧迫Pを提供するためには、延伸状態の円周方向長さUが増加するにつれて、Fの値は増加する。この延伸度は、荷重-伸び曲線に従って、ガーメント圧迫力Fに応じて変化する。
【0103】
ストレス状態のときの、P(kPa単位のガーメント圧迫)は、様々な測定点iで測定することができる。幾つかの実施形態では、SwisslasticのMST Professionalや、Hohenstein InstituteのHosy等の様々な適切なデバイスを使用して、ガーメント圧迫Pを測定することができる。他の実施形態では、他の適切なデバイスを使用することもできる。例えば、Hatra測定ツールは、英国標準に従って圧縮を測定するものであり、Pico Pressは、使用可能な可搬型圧縮測定装置である。また、Hosy装置は、圧縮力Fを測定し、測定値を、ガーメント圧迫Pとともに提供することができる。
【0104】
荷重-伸び曲線を、既知又は望ましいガーメント圧迫P、測定された生地圧迫力F、及び式(1)のUのような既知の解剖学的構造寸法と関連させて使用し、好ましいガーメント圧迫Pを生成するのに必要な弛緩したガーメント寸法、例えば、寸法12R、14R、16R、18R、20R、22R、24R及び26Rを決定することもできる。
【0105】
一実施形態によれば、ガーメント圧迫P及びU(延伸状態の測定点iにおけるガーメントの周囲長(cm))が得られ、式(1)を用いてFを解くことができる。Fの値が決定されると、延伸量を決定するために荷重-伸び曲線を調べることができる。延伸量が既知であるので、U(弛緩状態)、すなわち延伸していない長さを得ることができる。
【0106】
様々な場所で、所望のガーメント圧迫P、従ってガーメントの寸法を決定する際に考慮され得る1つの要因が、望ましい圧迫等級である。
圧迫は圧力であり、単位ミリメータ水銀(mmHg)で表わされることが多く、かつ様々なカテゴリ又はクラスに分類され、それぞれ、例えば、8-15mmHg、15-20mmHg、20-30mmHg、25-35mmHg、30-40mmHg、40-50mmHg、及び50mmHg以上の圧迫力にグループ分けされる。
幾つかの取り決めによれば、圧迫等級1は、圧迫20-30mmHgと規定されており、圧迫等級2は、圧迫30-40mmHgと規定されており、圧迫等級3は、圧迫40-50mmHgと規定されており、圧迫等級4は、50mmHg以上と規定されている。幾つかの取り決めによれば、8-15mmHgは、適度な圧迫と規定され、15-20mmHgは、中間圧迫と規定されている。
【0107】
圧迫等級に関する他の取り決め、及び定義を使用することができる。しかしながら、どのように圧迫等級を規定したかということとは無関係に、寸法、即ち幾何学的裁断を算出すると考えられる係数の一つは、特定の肉体部位にとって望ましい圧迫等級である。
【0108】
所望のガーメント圧迫P、したがって所望の寸法を決定する際に利用され得る別の要因は、サイズチャートである。特定のガーメントサイズに関する業界標準サイズチャートは、例えば、様々な場所での着用者の解剖学的構造の特定の寸法を有する「男性用ジーンズサイズL」のように、基本的にサイズと関連する。この業界標準のサイズチャートは通常、標準サイズであるが、製造元と製造元、地域と地域によって異なる場合がある。
例えば、日本におけるサイズ「M」は、米国におけるサイズ「M」の人の肉体とは異なる寸法を基準としている。米国では、サイズチャートは、男性用のジーンズのサイズ「M」が、男性の脚の特定の位置での特定の寸法に関連付けられている。
【0109】
測定チャートは、特定のスタイルの特定のサイズのジーンズのような、特定のガーメントの特定のサイズに基づいている。この測定チャートは、普通の着用者のサイズと関連して、ガーメントの様々な位置における関連するガーメント寸法を提供するものであり、同じ製造者により製造されたとしても、製品毎に異なっている。
この測定チャートは、主として、製造者の仕様と製品仕様の両者からなり、本発明では、測定チャートは本発明の方法及び原理によって決定され、異なるガーメントの種類および異なる生地によって異なる場合がある。測定チャートは、例えば、米国における女性のサイズ「Z」のドレススラックスの、特定の場所における特定のガーメント寸法を提供することができる。
【0110】
特定のガーメントのために、所望のガーメント圧迫「P」を発揮するのに必要なガーメント寸法の計算には、特定のサイズチャートに関連付けられた普通の着用者のサイズ情報、すなわち、式(1)におけるガーメント圧迫力「F」を計算するための式(1)の「U」、を使用することができる。そして、荷重-伸び曲線と延伸状態のガーメントの寸法を用いて、望ましい圧迫値を生成するのに必要な弛緩したガーメントの周囲長が決定される。
【0111】
ガーメント圧迫Pを決定するために考慮されるさらなる要因には、縫い目補正、及び他の補正等の補正係数が含まれる。
縫い目補正は、縫い目の形成が、伸縮性ガーメントに作用する影響、特に、特定の縫い目がガーメントの圧迫特性に与える影響を考慮する。
その他の補正係数としては、幾何学的裁断を決定する際の係数があり、この係数には、生地の仕様、ブランド、製造業者の仕様、又は製造仕様が考えられる。
【0112】
他の実施態様において考えられる他の係数には、製造業者又はブランド仕様で選択された圧迫等級、選択された圧迫標準規格、選択されたサイズチャート及びその他の係数がある。
【0113】
様々なガーメント方向におけるガーメント圧迫力F,及びガーメント圧迫P、延伸状態にある及び延伸状態でない(弛緩状態)ガーメントの寸法を評価又は計算するために、上述した各係数は、上記式(1)のような種々の式、並びにアルゴリズムにおいて、種々組み合わせて使用される。
【0114】
上述した係数は、単なる例と考えるべきであり、望ましいガーメント圧迫や寸法を決定又は/計算するための様々な式に関して使用される、様々な係数を制限するものではない。一旦、望ましいガーメント寸法が決定されたら、幾何学的裁断を行ない、着用される圧迫ガーメントの長手方向に沿った様々な位置において、望ましい圧迫力及びガーメント圧迫値を発揮する望ましい寸法を生成することができる。幾つかの実施態様において、上述した2つ以上の係数が考察され、かつ他の係数も関連付けて考慮される。幾つかの実施形態においては、望ましいガーメント寸法を生成するための幾何学的裁断を作成する方法を計算する際に、異なる係数に異なる重み付けを行う。
【0115】
幾つかの実施態様では、上記式(1)又は他の式で示された係数が、前述した位置のような、様々な位置において望ましい圧迫を発揮するのに必要な、前方パネル2及び後方パネル4の望ましい幅を決定するのに使用される。生地10は、特定された位置において決定された寸法を有するパネルを形成するために裁断される。幾つかの実施態様において、幾何学的裁断は、対向する両縁部を非線形縁部とする幾何学的裁断を含んでいる。
他の実施態様において、本発明に従った工学的パターン設計に基づいて設計された円周方向の長さを有する幾何学的裁断の結果として、対向する縁部の一方の縁部は、直線又は従来の裁断のままであり、これに対向する縁部の他方の縁部は、非線形又は湾曲状、或いは部分的に湾曲状又は直線である。
幾つかの実施態様においては、各々のパネル2及び4を互いに結合するのを容易にするために、互いに接合されるパネル2及び4の対応する縁部に、相補的な幾何学的裁断を行なうことが有利である。
【0116】
[実施例]
工学的パターン設計を使用して、所望のガーメント寸法を生成するために、幾何学的裁断を作製する方法の具体的な一例は、次の通りである。
【0117】
生地が選択されたら、この生地の荷重-伸び曲線、及びこの生地にとって最適の式を採用する。
次に、幾つかの実施態様において、選択された生地により、1つのサンプル圧迫ガーメントを製造する。このサンプル圧迫ガーメントは、円周方向の形状、即ち、筒状である。
次に、位置12、14、16、18、20、22、24、及び26のように、多数の測定点において、このサンプル圧迫ガーメントの弛緩状態での、円周方向の長さを測定する。
【0118】
種々の実施形態において、弛緩状態におけるサンプル圧迫ガーメントから得られたこれらの円周方向の測定値を、位置12、14、16、18、20、22、24、及び26の各々における特定のサイズのガーメントのサイズ又は測定チャートと比較し、延伸度を決定する。その理由は、前記サイズチャートが、指定された前記各々の位置において特定のサイズを有する、普通の着用者の円周方向の長さを表わしており、これは、着用者が着用してガーメントが延伸状態のときの、延伸長さと等しいからである。
【0119】
次に、幾つかの実施態様において、サンプル圧迫ガーメントがテストされる。すなわち、ガーメントがサイズチャートに従った同じ寸法を有する肉体モデル部材上のような延伸状態にあるときの、位置12、14、16、18、20、22、24、及び26の各々における実際のガーメント圧迫Pが測定される。
多くの実施態様において、ガーメント圧迫の測定値は、kPa、「キロパスカル(ニュートン/cm)、又はmmHgで表わされる。
【0120】
ある実施態様では、位置12、14、16、18、20、22、24、及び26の各々における実際のガーメント圧迫Pは、mmHgのような圧力単位で測定され、下記の式を使用して圧力からガーメント圧迫力Fに変換される。
F=[(測定圧力)×(サイズチャートからのサイズ測定値)/470]
これによって、単位がN/cmのガーメント圧迫力Fが得られる。
他の実施態様では、実際のガーメント圧迫Pは、単位kPaとして測定され、サイズチャートからのサイズ測定値又は式(1)の測定チャートを使用して、圧力からガーメント圧迫力Fへ変換される。
このように、いずれの実施形態でも、ガーメント圧迫力Fが決定される。
本発明は、上記の計算に限定されるものではなく、他の態様においては、他の単位及び他の変換を使用して、ガーメント圧迫Pを測定し、かつガーメント圧迫力Fを測定することができる。
【0121】
伸び率は、位置12、14、16、18、20、22、24、及び26の各々における、サイズチャートに基づく延伸状態のガーメントの円周方向の長さと、弛緩状態の圧迫ガーメントの長さとを比較して決定される。この伸びは、延伸した円周方向の長さ、すなわち、体にピッタリとしたガーメントの着用者の解剖学的構造「U」のサイズと、弛緩状態のサンプルガーメント測定値との比である。
幾つかの実施態様において、この伸びは、位置12、14、16、18、20、22、24、及び26の各々において、[(U(延伸状態)-U(弛緩状態))/U(弛緩状態)]で表わされる。
この延伸状態のサンプル圧迫ガーメントの円周長は、サイズチャートを調べることによって、または、特定のサイズに関連するサイズチャートの寸法を有する肉体モデルの部材上において、延伸状態のサンプル圧迫ガーメントの長さを測定することによっても決定することができる。
2つの長さ(延伸したガーメントの円周方向の長さ、及び弛緩状態のガーメントの円周方向の長さ)は延伸度を表示しており、これは、荷重-伸び曲線と共に使用することにより、位置12、14、16、18、20、22、24、及び26における生地圧迫力fを予測できる。
【0122】
縫い目の補正係数は、a)測定されたガーメント圧迫Pを使用して得たガーメント圧迫力Fを、b)延伸度に基づく、上述した位置12、14、16、18、20、22、24、及び26における荷重-伸び曲線から得た生地圧迫力fと比較することによって得ることができる。
【0123】
圧力で表わされた望ましいガーメント圧迫Pが、位置12、14、16、18、20、22、24、及び26毎に特定される。
【0124】
次に、望ましいガーメント圧迫Pを生成するのに必要なガーメント圧迫力Fが、圧力で表される望ましいガーメント圧迫を用いて計算される。そして、例えば、望ましいガーメント圧迫が圧力単位kPaで識別される場合、式(1)を使用して各位置での標準サイズチャートの測定値を求める。
次に、ガーメント圧迫力Fは、このガーメント圧迫力Fに、各々の位置12、14、16、18、20、22、24、及び26における縫い目補正係数を乗じることによって、生地圧迫力fに変換される。
【0125】
次に、荷重-伸び曲線は、この生地圧迫力fと、各々の位置12、14、16、18、20、22、24、及び26毎に算出された伸び率とを関連付けるのに使用される。
サイズチャートに従って、既知の伸び率及び既知の延伸状態のガーメントの長さを利用して、望ましいガーメント圧迫Pを提供する弛緩状態のガーメントの長さを、各々の位置毎に決定することができる。
【0126】
次に、上記のよう決定された弛緩状態のガーメントの長さを含む1つまたは複数の生地パネルを製造するために、圧迫ガーメントまたは圧迫ガーメントの円周方向部分が、生地に幾何学的裁断を行うことによって形成される。この弛緩状態のガーメントの長さを決定する方法は、図10A及び図10Bに示してある。
【0127】
前に記載した内容は、ガーメントの様々な位置における望ましい圧迫値及び他の係数に基づいて、ガーメントに沿った適切な位置における必要なガーメント測定値を決定するために製造されたサンプル圧迫ガーメントを使用した一例であることに留意するべきである。
【0128】
他の態様において、様々な他の方法及び技術を使用して、様々な位置における望ましい圧迫値に基づいて、望ましいガーメント寸法が決定される。多くの態様においては、製作されたサンプルガーメントは必要なく、ガーメント寸法は、前述した多様な係数に基づいている。
【0129】
具体例
幾つかの実施態様において、ガーメントの位置12、14、16、18、20、22、24、及び26における、望ましいガーメント圧迫値は、望ましい圧迫等級、又は他の圧迫レベル、及び圧迫標準規格と呼ばれる。各位置12、14、16、18、20、22、24、及び26における圧迫値を選択して結合し、最大治療効果を挙げる圧迫ガーメントが提供される。
【0130】
効果的な実施態様において、生成された圧迫値は、各位置12、14、16、18、20、22、24、及び26において同じである。すなわち、着用者に均一な圧迫が加えられる。この効果のある態様において、延伸度は、式(1)によって予測されるように、様々な位置で変化する。
幾つかの実施形態では、延伸度は、圧迫ガーメントが着用者により着用され延伸状態にあるとき、3つの連続する軸方向位置の1つ以上のグループに沿って、伸びの程度が増加し、次に減少し、次に増加するというように、異なる延伸度を含んでいる。この場合、ガーメント圧迫Pは一定であり、Uは変化し、ガーメント圧迫力Fもまた、延伸度に応じて変化する
【0131】
別の態様では、生成された圧迫値は、それぞれの位置12、14、16、18、20、22、24、及び26の一つ以上、又は全てにおいて異なっている。このような態様によれば、様々な位置における異なる圧迫値は、徐々に、突然或いは不規則に変化する。これらの圧迫値は、一つの軸又は長手方向28に沿って、連続的に大きくなり、圧迫勾配を形成する。あるいはまた、これらの圧迫値は、軸方向に沿って増加及び減少する。
【0132】
幾つかの実施態様において、これらの圧迫値は、一つの軸、又は長手方向28に沿って、連続的に増加も、連続的に減少もしない。換言すれば、最大又は最小のガーメント圧迫値は、ガーメントの一つの端部には無く、むしろ不均一な圧迫の中間位置にある。
【0133】
望ましいガーメント圧迫値を発揮するのに必要なガーメントの寸法に基づいて、前方パネル2及び後方パネル4を製造するために、生地10に幾何学的裁断が行われる。
【0134】
望ましい圧迫力を発揮するように決定されたガーメントの寸法は、圧迫ガーメントの円周方向部分の様々な軸方向位置毎に決定される円周方向の長さを表わしている。
唯1枚のパネル、例えば1枚の前方パネル2又は後方パネル4を使用する幾つかの実施態様において、円周方向の長さは、上記したガーメントの寸法(12F、14F、16F、18F、20F、22F、24F、及び26F、12R、14R、16R、18R、20R、22R、24R、及び26R)の1つを表わしている。
前方パネル2が後方パネル4に接合されている他の態様において、円周方向の長さは、前記2つのパネルが一緒に接合されている時の円周方向の総寸法である。例えば、位置16における全円周方向の総寸法は、ガーメント寸法16Fとガーメント寸法16Rの総和である。なぜならば、2つのパネル16F、16Rは、位置16で一体に接合されているからである。この円周方向の長さは、図5に、円周方向の長12C、14C、16C、18C、20C、22C、及び24Cとして示してある。
【0135】
ガーメントの様々な位置におけるガーメント寸法12F、14F、16F、18F、20F、22F、24F、及び26F、12R、14R、16R、18R、20R、22R、24R、及び26Rを生成するために、決定されたガーメント寸法に基づいて、幾何学的裁断が行なわれる。
【0136】
一つの態様によれば、生地10を幾何学的裁断した後、前方パネル2及び後方パネル4を形成し、これらのパネルを円周方向部材として製造し、前方パネル2及び後方パネル4の各々の縁部を接合することで縫い目を形成し、図示した実施形態の場合には、1つのパンツ脚部を製造する。
【0137】
図4は、本発明の態様に従って製造された前方パネル2と、従来の裁断による前方パネル34との比較を示している。図4は、従来の裁断による前方パネル34の外側縁部36が、前方パネル2の対向する縁部6A、6Bとは顕著に異なっていることを示している。
本発明の態様に従って製造された前方パネル2の裁断と、従来の裁断による前方パネル34との間の違いは、本発明によって前方パネル2の特定の寸法が決定された位置である任意の位置38、40、42、44、46、48、50、52及び54を含む様々な位置で、明らかにすることができる。他の実施形態では、他の位置が使用される。
【0138】
図5は、1つの円周方向部材として製造された、図1に示すような2枚の生地パネル10、即ち、図示した態様において、1着のパンツ68である圧迫ガーメントのパンツ脚部60を示している。他の態様では、他の圧迫ガーメントが製造される。
他の態様によれば、圧迫ガーメントの他の円周方向部分、又は他の圧迫ガーメントが製造される。
パンツ脚部60は、軸方向62及び円周方向64で画定され、かつ円周方向ガーメント部分であり、筒状又は円柱状ガーメント部分とも呼称される。
円周方向部材、即ち図5に示すような弛緩状態にあるパンツ脚部60は、軸方向62に直線の外側縁部を有していない。むしろ、図1に示すように、位置12、14、16、18、20、22、及び24は、様々な幅、即ち、円周方向64に沿って異なった長さを有している。位置12、14、16、18、20、22、及び24において、パンツ脚部60は、様々な円周方向長さ12C、14C、16C、18C、20C、22C、及び24Cを有している。これは、図1に示し、かつ説明したように、縁部6A、6B、8A、及び8Bの幾何学的裁断に起因する。
【0139】
再度、図5を参照する。パンツ脚部60は、位置16よりも位置18において、狭くなっている。即ち、パンツ脚部60が弛緩状態にある時、パンツ脚部60は、円周方向64において、位置18における長さは、位置16における長さより短くなっている。
効果的な態様において、パンツ脚部60の生地は、一定の弾性(即ち、均一弾性)を有しており、位置12、14、16、18、20、22、及び24において、複数の円周方向バンド領域を有していることを特徴としている。これら複数の円周方向バンド領域は、実質的に相互に平行で、軸方向62を横切っている。これらの円周方向バンドは、生地10の様々な長さからなっている。
更に、図5は、生地の円周方向の長さが、図示したように、軸方向62の1つの方向に沿って、また、逆の軸方向に沿って、増減していることを示している。着用時のパンツ脚部60の延伸度についても、これと同様である。
換言すれば、弛緩状態において、円周方向の長さ12C、14C、16C、18C、20C、22C、及び24Cは、1つの長手方向又は1つの軸方向28に沿って、連続的に長くもなっていないし、連続的に短くもなっていない。言い換えれば、幾つかの実施態様において、軸方向28に沿って進むと、弛緩状態の機械的設計によるガーメントの円周方向の長さは、先ず、2つの連続した位置の間で増加し、次に、減少している。
例えば、位置22から20の間で増加し、次に、位置20と18の間で減少している。
換言すれば、最大及び/又は最小寸法は、例えば、位置16、20又は22のような中間位置にある。
【0140】
他の態様において、パンツ60の円周方向の長さは、軸方向62に沿って、絶えず、増加又は減少しており、1つの軸方向に沿って勾配を形成している。
【0141】
前述した態様のいずれかに従って、様々な位置12、14、16、18、20、22、24,及び26において、着用者が着用すると延伸度は変化するが、圧迫力は同じである。パンツ脚部60の円周方向の寸法は、位置12、14、16、18、20、22、24,及び26において、同じか、又は異なっていてもよく、全ての位置で同じか、又は様々な位置で変化する円周方向ガーメント圧迫を発揮することができる。
【0142】
図5Aは、本発明の方法による可能な圧迫の実施形態を示す。圧迫ガーメントは、弛緩状態で隆起部を有するが、これは着用者に均一な圧迫を提供する。
圧迫ガーメント500は、本発明の方法に従って形成された、弛緩状態の1着のパンツである。圧迫ガーメント500は、脚部502に沿って均一な圧迫を提供する。
弛緩状態では、脚部502は、隆起部504及び谷部分506としてマークされた起伏を含んでいる。
着用者により着用されてガーメンントが圧迫されると、圧迫ガーメント500の軸方向508に沿う異なる位置が異なる程度で延伸するが、しかし、同じガーメント圧迫Pが提供される。
【0143】
図6は、円周方向部材、即ち、ガーメンントの普通の着用者である着用者70の肉体部分にぴったりと着用されてストレス状態にあるパンツ脚部60を示している。その肉体部分は、ヒトの脚であるが、他の態様では、円周方向部材は、ヒトの解剖学的構造の他の部分又は動物に着用されてもよい。
図6は、着用者により着用された時、パンツ脚部60が着用者70によってぴったりと着用されており、着用者の肉体部分の形状にぴったり適合しているので、パンツ68のパンツ脚部60が、着用者の肉体、即ち脚66の直線箇所に対応する幾つかの箇所の軸方向62において、ほぼ直線状の外表面を含んでいることを示している。
パンツ脚部60は、円周方向、即ち、筒状又は円筒状ガーメント部分であり、接合されて縫い目65を形成する1つ又は2つの生地パネルで製造されている。生地パネルは、各々、一方の長手方向の端部から他方の長手方向の端部、即ち、位置25から位置27へ完全に伸張している。
縫い目65は、軸方向62へ延びており、幾つかの実施態様では、チェーンスティッチ、安全スティッチ、又はオーバーラップスティッチであるが、これら以外に様々な縫い目を使用することができる。
縫い目65は、例示的な位置にのみ記載したが、他の態様として、縫い目を別の位置に形成することもある。
【0144】
幾つかの実施態様において、パンツ脚部60は、位置12、14、16、18、20、22、24,及び26の各々において、異なる程度に延伸しても良く、延伸度及び弛緩状態のガーメント寸法に基づいて、位置12、14、16、18、20、22、24,及び26の各々において、同じ圧迫力を与えることができるという特徴がある。好ましい態様によれば、生地の弾性は、生地の全体において均一である。
【0145】
このように、図6を参照して様々な実施態様を理解することができる。
幾つかの実施態様では、普通の着用者が着用したストレス状態の時、発揮される圧迫は均一ではなく、円周方向の圧迫率は、位置12又は24のような端部において、最大及び/又は最小値となる。ガーメント圧迫は、軸方向62に沿って、双方に増減し、圧迫プロファイルは、軸方向位置16、18、及び20のように、3つの連続した軸方向位置の少なくとも1グループに沿って、圧迫値が、増加し、次に減少し、次に増加することを特徴としている。
適用された円周方向ガーメント圧迫は、連続的に減少又は増加して、着用者の肉体部分の軸方向に沿って圧迫勾配を形成してもよい。効果のある態様において、幾何学的裁断によって、圧迫ガーメントの長さ全体に亘って同じ円周方向圧迫力を有する円周方向圧迫ガーメント、すなわち、同じガーメント圧迫Pを発揮する。
【0146】
他の態様において、円周方向部材は、添付した図面に示したようなパンツ脚部以外の、圧迫ガーメント又は圧迫ガーメントの一部を形成する。
幾つかの実施態様において、円周方向部材は、2枚以上の生地パネルで製造されており、これら2枚以上の生地パネルは、各々、円周方向部材の長手方向全長に沿って延びている。一方、幾つかの実施態様では、圧迫ガーメントの円周方向部材は、織布10の単一材である。
【0147】
図7は、本発明の圧迫ガーメントの他の実施態様を示している。図7は、様々な軸方向位置12、14、16、18及び20において、ガーメントによって発揮される円周方向圧迫度(ガーメント圧迫P)を有している上述したパンツ脚部60の円周方向ガーメント部分51を示している。
円周方向ガーメント部分51は、長手方向の一方の端部55から、同じく他方の端部57へ延びている1枚又は複数枚の生地ピースで製造されている。円周方向ガーメント部分51に接合されているのは、延長円周方向ガーメント部分である。延長円周方向ガーメント部分53は、非圧迫ガーメント部分である。即ち、延長円周方向ガーメント部分53は、非弾性の生地で製造される。延長円周方向ガーメント部分53は、長手方向端部55において、長手方向に、円周方向ガーメント部分51に接合されており、円周方向ガーメント部分51と共通の軸59を共有している。
この態様に従って製造されるガーメントは、均一な圧迫の円周方向部分51と延伸円周方向部分53との組み合わせである。
【0148】
図8は、本発明の態様によって製造される圧迫ガーメントである圧迫靴下80を示している。圧迫靴下80は、前述した方法のいずれかに従って製造され、着用者によって着用されたストレス状態において、様々な圧迫度や一様な圧迫を有している。幾つかの実施態様において、圧迫靴下80は、足先部84を含まなくてもよく、着用者の下肢を覆いさらに足首の位置88の下方に延びるスリーブがあってもよい。
【0149】
図9は、本発明による圧迫ガーメントを製造する1つの方法を示している。
ステップ1001において、生地が提供される。生地は、伸縮性生地であり、前述したような生地10である。
ステップ1003では、生地裁断、即ち幾何学的裁断の計算がなされる。特に、様々な位置におけるガーメントの寸法が、前述したような多数の係数に基づいて決定される。所望の寸法を生成するために、1つ又は複数の幾何学的裁断を行ない、1枚又は複数の生地パネルを製造する。様々な式及び/又はアルゴリズムを使用して、前記係数に基づいてパネル裁断片を製造する。裁断は、ガーメントの様々な異なる位置で所望の圧迫値を提供するように設計されている。
【0150】
ステップ1005において、生地は、1枚又は複数枚のパネルに裁断される。前述したように、1枚又は複数枚のパネルは、上述したような様々な形状のエッジを含んでいる。
ステップ1007において、1枚又は複数枚のパネルを使用して、圧迫ガーメントが製造される。圧迫ガーメントは、着用者の肉体部分を包む円周方向部分を含んでいる。
幾つかの実施態様において、円周方向部分は、1枚の生地パネルの両縁部を接合して、単一の縫い目を有する円周方向部分を形成することによって製造される。他の態様において、円周方向部分は、パネルを含む複数の生地ピースを、少なくとも1つの非線形縁部で接合することによって製造される。
円周方向における材料の様々な長さの結果、例えば、図1における長さ12F、14F、16F、18F、20F、22F、24F、26F、12R、14R、16R,18R、20R、22R、24R、26Rにより、様々な位置における生地の延伸度は、着用されたとき、同じであっても異なってもよい。1つの有利な実施形態では、延伸度は軸方向の異なる位置で変化するが、しかしガーメント圧迫Pは同じ値である
【0151】
図10A及び図10Bは、共に、式(1)に従って、幾何学的裁断を行って圧迫ガーメントを製造するための手順、及び様々な計算を実行するためのフローチャートを表している。
【0152】
ステップ2001において、生地、即ち、前述したような均一な弾性を有する伸縮性織布生地を選択する。
ステップ2003において、最適な式を使用して、選択した生地ごとに発生する生地の荷重-伸び曲線を取得する。
ステップ2005において、選択した生地で、サンプル圧迫ガーメントを製造する。
このサンプル圧迫ガーメントは、筒状、即ち円周方向の形状をしている。
ステップ2007において、サンプル圧迫ガーメントが弛緩状態にある時の、サンプル圧迫ガーメントの円周を、複数の点iで測定する。これらの複数の点iは、サンプル圧迫ガーメントの軸方向に沿った複数の点を表わしている。ステップ2009は、U(弛緩状態)がステップ2007で得られることを示している。
【0153】
ステップ2011で、標準サイズチャート測定値が取得される。この標準的なサイズチャート測定値は、弛緩状態のサンプル圧迫ガーメントの円周方向の様々な場所iにおけるU(延伸状態)を同定するのに使用される。標準サイズチャート測定値は、着用者の解剖学的構造を示しており、従って、着用され、延伸状態にある圧迫ガーメントの様々な場所における円周長を表している。幾つかの実施態様において、サンプル圧迫ガーメントは、標準サイズチャート測定値を含む肉体の部分モデル上に配置され、サンプル圧迫ガーメントの長さ、U(延伸状態)は、各位置iで得られる。
【0154】
ステップ2013は、ステップ2011で得られたサンプル圧迫ガーメント長さ(U(延伸状態)を表わす。
ステップ2015において、サンプル圧迫ガーメントの実際の伸びが、(U(延伸状態)、及び(U(弛緩状態)を使用して算出される。
ステップ2017は、本実施形態における実際の伸びが、
U(計算値)=(U(延伸状態-U(弛緩状態))/U(弛緩状態)
であることを示している。
【0155】
ステップ2019において、サンプル圧迫ガーメントによって発揮するガーメント圧迫は、サンプル圧迫ガーメントの各々の点iで測定される。この圧力測定は、圧力単位kPa(キロパスカル)で表されるが、他の態様では、mmHgのような他の圧力単位を使用することもできる。ガーメント圧迫、すなわち圧力は、上記のようにして測定することができる。
ステップ2021は、ガーメント圧迫Pが、ステップ2019における各々の点iにおいて得られることを示している。
【0156】
ステップ2023において、ガーメント圧迫力Fは、ステップ2019で測定されたガーメント圧迫Pと、kPaで測定されたガーメント圧迫Pを用い、式(1)を使用し、実際に測定された延伸状態にある円周方向長さのU(延伸状態)(=サイズチャート測定値)に基づいて、計算される。
他の態様において、ガーメント圧迫Pは、mmHgで測定され、ガーメント圧迫Pに基づいてガーメント圧迫力Fを計算するのに使用される式は、次の式でもよい。
ガーメント圧迫力F=(ガーメント圧迫*U(延伸状態)/470
他の態様によれば、他の数学的な関係を使用することもできる。
ステップ2023で算出されたガーメント圧迫力は、ステップ2025で取得される。
【0157】
ステップ2027において、伸び、即ち、U(計算値)と、荷重-伸び曲線とを使用して、各々の位置iにおける生地圧迫力fを計算する。ステップ2029で、この生地圧迫力fの値を取得する。
【0158】
ステップ2031において、縫い目の補正が計算される。この縫い目の補正は、各々の位置iにおける、ステップ2029で記載した生地圧迫力fの、ステップ2025で得たガーメント圧迫力Fに対する比率である。縫い目の補正係数は、純粋数である。
ステップ2033において、様々な圧迫レベルと圧迫標準が考慮され、それらの考慮に基づき、ステップ2035において、各々の位置iごとに望ましいガーメント圧迫が特定される。
次に、ステップ2037において、各位置iにおける望ましいガーメント圧迫Pが、得られる。
【0159】
ステップ2039において、上記ステップ2023及びステップ2025の計算が実行され、ステップ2037の望ましいガーメント圧迫Pを生成するために必要なガーメント圧迫力Fを決定する。ステップ2041は、このようにして「必要なガーメント圧迫力F」が得られることを示している。
ステップ2043において、各々の位置iにおいて、ガーメント圧迫力Fが必要な生地圧迫力fを生成するように調整される。特に、ガーメント圧迫力Fに縫い目補正係数を乗じて、必要なガーメント圧迫Pを生成するための生地圧迫力fを算出する。ステップ2045において、生地圧迫力fが決定される。
【0160】
ステップ2047において、生地の荷重-伸び曲線を使用して、既知の生地圧迫力fを利用し、伸びU(計算値)が決定される。伸びに関して、U(計算値)は、ステップ2049で計算されて既知となり、U(延伸状態)の値も既知となる。即ち、ステップ2051において、各々の位置iにおける、標準サイズチャート測定値のU値、U(弛緩状態)の値を決定することができる。
【0161】
これらの値、すなわち、U(弛緩状態)の値は、上述したようにして製造される圧迫ガーメント、又は圧迫ガーメント部分の円周方向の長さの値である。
【0162】
図11は、荷重-伸び曲線の2つの例を示す。各荷重-伸び曲線において、ガーメント圧迫P(kPa)に相当する「荷重」kgf(重量キログラム)が、横座標に示されたガーメントの延伸との関係で表されている。
提示された荷重-伸び曲線で、ガーメント圧迫Pに対する、既知の長さのサンプルガーメント試料についての伸びが、ミリメートルで表されている。1kgf=9.8Nの関係があるので、式(1)を用いて、ガーメント圧迫力F(N/cm)を算出することができる。さらに、延伸度を、(U(延伸状態)-U(弛緩状態))/U(弛緩状態)、又は(U(延伸状態)/U(弛緩状態))のようにして計算することができる。
他の実施形態では、横座標に表される延伸度は、上記引用した式の1つを表すか、又はパーセンテージストレッチとして表すことができる。例示的な荷重-伸び曲線は、試料標本の例であり、様々な他のタイプの荷重-伸び曲線を様々な実施形態で使用することができる。ガーメント圧迫を示す荷重-伸び曲線を使用し、ガーメント圧迫力Fに変換することができる。
【0163】
開示した本発明の圧迫ガーメントは、着用者の肉体部分へ圧力を掛けるのに使用することができる。本発明は、全体に弾性を有しており、かつ、様々な軸方向位置で所望の圧迫レベルを発生するように調整された、異なる軸方向位置における生地の円周方向長さを有する円周部分を含む、織布の圧迫ガーメントを提供する。
前述しかつ図5に示したように、ガーメントが弛緩状態にある時、円周方向の長さは、様々な位置において、異なっているか、又は同じである。
【0164】
ストレス状態、例えば、着用者が着用した時、ガーメントは、様々な位置で、様々な程度又は同じ程度に延伸し、前述したように、軸方向位置に沿って同じか又は異なっている圧迫を生成する。
好適な実施形態によれば、ガーメントは、様々な位置で異なる程度まで伸び、軸方向のすべての位置で、一様な圧迫を提供する。幾つかの実施態様において、圧迫ガーメントは、図5図5A及び図6に示したような、1着のジーンズである。
【0165】
幾つかの実施態様において、ジーンズは、ファッショナブルな外観をもった伸縮性デニムで製造される。幾つかの実施態様において、圧迫ガーメントは、図8に示したような1対の圧迫靴下である。
【0166】
従って、当業者は、ここに明確には記載または明示されてはいないが、本発明の原理を具体化し、かつ、その発明の精神及び発明の範囲に含まれている様々なアレンジメントを創出することができることを理解されると思う。更に、ここに記載した全ての実施形態及び条件付の用語は、主として、単に、教育目的のため、及び本発明の原理及び当該技術を促進、助成するべく発明者によって寄与された概念を読者が理解するのを補助することを意図し、ここに特定して記載された実施形態及び条件は、それらに制限を加えずに、解釈、理解されるべきである。
さらに、ここに記載した本発明の原理、特徴及び態様、並びにそれらの特定の実施形態は、構成及び機能面の両方から、それらの均等物も包含することを意図するものである。
【0167】
更に、現在公知の均等物、及び将来開発される均等物、即ち、構成の如何に拘わらず、同じ機能を達成する開発された要素からなる均等物の両方も含むことを意図している。
【0168】
例示的な実施態様に関する記載は、全ての記載の一部と考えるべき添付した図面と関連付けて理解されるべきである。本願の明細書に記載した相対的用語、「より低い」、「より上位」、「水平な」、「垂直な」、「上に」、「下に」、「上へ」、「下へ」、「先端」及び「底部」並びにそれらの派生語(例:「水平に」、「下方へ」、「上方へ」等)は、その際記載した方向、又は論究した図面に示した方向を指していると理解されるべきである。これらの相対的用語は、便宜上の表現であって、装置が、特定の方向に構成され又は操作されるべきであることを要しない。
「結合された」及び「連結された」のような取り付け、結合等に関する用語は、特段の断り書きが無い限り、複数の構成体が、直接的又は間接的に、介在する構成物を介して、可動的又は固着、或いは相関関係をもって、相互に確保又は取り付けられている関係を意味している。
【0169】
以上、本発明を例示的な態様に関して記載したが、本発明は、それらの態様に限定されない。添付した複数の請求項は、本発明の範囲、及び本発明の均等物の範囲を逸脱せずに、当業者が創出する、開示した内容の他の変形及び態様も包含するものと、広く解釈するべきである。
【符号の説明】
【0170】
2 前方パネル
4 後部パネル
6 裁断縁部
6A、6B 縁部
8 裁断縁部
8A、8B 縁部
10 伸縮性織布生地
12~26 軸方向位置
12F~26F ガーメント寸法
12R~26R ガーメント寸法
21 長手方向端部
23 長手方向端部
28 軸方向
60 パンツ脚部
62 軸方向
64 円周方向
65 縫い目
66 円周方向部分
68 圧迫ガーメント
70 着用者
80 圧迫ガーメント
500 圧迫ガーメント
12C~26C 円周方向の生地長さ
504,506 隆起部
508 軸方向
図1
図2
図3
図4
図5
図5A
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11