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特許7243975内視鏡手術用牽引力評価装置および内視鏡訓練装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】内視鏡手術用牽引力評価装置および内視鏡訓練装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20230314BHJP
   G02B 23/24 20060101ALI20230314BHJP
   A61B 34/30 20160101ALI20230314BHJP
【FI】
A61B1/00 650
G02B23/24 Z
A61B34/30
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018228136
(22)【出願日】2018-12-05
(65)【公開番号】P2020089531
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-09-29
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 5th Surgical Education Summit,札幌市教育文化会館,2018年7月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】304028346
【氏名又は名称】国立大学法人 香川大学
(73)【特許権者】
【識別番号】514174475
【氏名又は名称】株式会社ファイトロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100134979
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 博
(74)【代理人】
【識別番号】100167427
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】藤原 理朗
(72)【発明者】
【氏名】古沢 延之
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-522017(JP,A)
【文献】国際公開第2018/074081(WO,A1)
【文献】特開2013-006025(JP,A)
【文献】特開平08-224245(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00-1/32
G02B 23/24-23/26
A61B 34/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を保持する保持部を有する試料保持アームと、
該試料保持アームに加わる荷重を測定する荷重測定部と、を備えており、
前記試料保持アームの保持部が導電性素材によって形成されており、
該保持部がアースされている
ことを特徴とする内視鏡手術用牽引力評価装置
【請求項2】
前記保持部と前記荷重測定部との間および/または前記荷重測定部と装置本体との間に設けられる関節部を有している
ことを特徴とする請求項1記載の内視鏡手術用牽引力評価装置
【請求項3】
前記関節部には、
前記試料保持アームの移動方向を検出するセンサが設けられている
ことを特徴とする請求項2記載の内視鏡手術用牽引力評価装置
【請求項4】
試料を保持する保持部を有する試料保持アームと、
該試料保持アームに加わる荷重を測定する荷重測定部と、を備えており、
前記保持部と前記荷重測定部との間および/または前記荷重測定部と装置本体との間に設けられる関節部を有しており、
該関節部には、
前記試料保持アームの移動方向を検出するセンサが設けられている
ことを特徴とする内視鏡手術用牽引力評価装置
【請求項5】
前記試料保持アームの保持部が導電性素材によって形成されており、
該保持部がアースされている
ことを特徴とする請求項4記載の内視鏡手術用牽引力評価装置。
【請求項6】
前記関節部のセンサが測定した測定値を表示する測定値表示部が設けられている
ことを特徴とする請求項5記載の内視鏡手術用牽引力評価装置
【請求項7】
前記荷重測定部のセンサが測定した測定値を表示する測定値表示部が設けられている
ことを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の内視鏡手術用牽引力評価装置
【請求項8】
内視鏡を使用した施術の訓練装置であって、
試料を保持する保持部を有する試料保持アームと、該試料保持アームに加わる荷重を測定する荷重測定部と、を備える牽引力評価装置と、
該牽引力評価装置の試料保持アームが配置される中空な施術領域を有する中空構造体と、を備えており、
該中空構造体には、
前記施術領域と外部との間を連通する貫通孔が形成されている
ことを特徴とする内視鏡訓練装置。
【請求項9】
前記中空構造体には複数の貫通孔が形成されている
ことを特徴とする請求項8記載の内視鏡訓練装置。
【請求項10】
前記中空構造体の内部を撮影する内視鏡と、
該内視鏡により撮影された画像を表示する画像表示部と、を備えている
ことを特徴とする請求項9記載の内視鏡訓練装置。
【請求項11】
前記牽引力評価装置が、
請求項1から7のいずれかに記載の内視鏡手術用牽引力評価装置である
ことを特徴とする請求項8、9または10記載の内視鏡訓練装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡手術用牽引力評価装置および内視鏡訓練装置に関する。さらに詳しくは、内視鏡を使用した生体内における治療や手術の訓練に使用される内視鏡手術用牽引力評価装置および内視鏡訓練装置に関する。
【背景技術】
【0002】
腹腔鏡による手術では、生体に設けた複数のポートからカメラや手術器具を挿入して、カメラの画像を見ながら術者が、手術器具によって切除や切開などの様々な施術を実施する。この際に、腸などの柔軟な組織を切除や切開する場合には、電気メスなどを組織に押し当てても組織が変形して切除できない場合がある。このため、腸などを鉗子によって引っ張り、組織にある程度の張力を発生させることが行われる。また、患部等を確認するために、組織の移動や伸展等のために組織を引っ張ることが行われる。
【0003】
とくに、内視鏡手術において組織を精度良く切除するためには、鉗子で組織を把持して組織に適切な張力(カウンタートラクション)をかける必要がある。カウンタートラクションが不足すると電気メスなどによって切除する際に周囲の組織や神経などに障害を与える可能性がある。一方、過剰なカウンタートラクションが加わった場合には出血が生じたりする可能性がある。したがって、鉗子により組織を引っ張って組織に適切な張力を発生させたり伸展させたりするためには、鉗子によって組織を引っ張る訓練が重要になってくる。
【0004】
かかる訓練を実施して適切なカウンタートラクションを加えながら組織を切除できる外科医を育成するためには、組織にかけるカウンタートラクションの定量的な値を把握しながら、カウンタートラクションをかけて組織切除するトレーニングが必要である。
【0005】
これまでも内視鏡による施術などを訓練する機器が開発されており、組織切除の訓練を実施する装置として、特許文献1の内視鏡トレーニングシステムが開発されている。この内視鏡トレーニングシステムでは、制御ボックス内に切除する対象物として、張力を加えた複数の輪ゴムを設置している。そして、輪ゴムの切断を実施させることによって、手術器具の正確な操作と、体内の組織を正確に切除する技術を向上させることができる旨の記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-6025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の技術は、あくまでも最初から張力を加えた輪ゴムを切断させるものであり、組織に適切な張力を発生させる訓練は実施できない。
【0008】
現状では、カウンタートラクションを定量的に評価する装置がないので、組織にかけるカウンタートラクションの定量的な値を把握しながら、カウンタートラクションをかけて組織切除するトレーニングを行うことはできない。
【0009】
また、内視鏡による施術をサポートする装置として、鉗子などを保持するホルダーを備えた装置も開発されている。かかる装置においてホルダーに保持された鉗子によってカウンタートラクションを発生させる場合、ホルダーを駆動することになるが、発生するカウンタートラクションを制御するためには、その定量的な評価が重要である。しかし、現状では、カウンタートラクションを定量的に評価できる機能を有するホルダーを備えた装置は存在しない。
【0010】
本発明は上記事情に鑑み、組織に加える張力を測定できる内視鏡手術用牽引力評価装置、内視鏡の器具によって組織に適切な張力を発生させる訓練を実施できる内視鏡訓練装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の内視鏡手術用牽引力評価装置は、試料を保持する保持部を有する試料保持アームと、該試料保持アームに加わる荷重を測定する荷重測定部と、を備えていることを特徴とする。
本発明の内視鏡訓練装置は、内視鏡を使用した施術の訓練装置であって、本発明の牽引力評価装置と、該牽引力評価装置の試料保持アームが配置される中空な施術領域を有する中空構造体と、を備えており、該中空構造体には、前記施術領域と外部との間を連通する貫通孔が形成されていることを特徴とする
【発明の効果】
【0012】
本発明の内視鏡用牽引力評価装置によれば、試料保持アームの保持部に組織やダミー組織等の試料を保持させた状態で、鉗子によって試料を引っ張れば、荷重測定部によって試料に加わる力、つまり、鉗子による引っ張り力を検出できるので、鉗子による牽引力を適切に評価することができる。
本発明の内視鏡訓練装置によれば、試料保持アームの保持部に組織やダミー組織等の試料を保持させた状態で、中空構造体の貫通孔から鉗子を挿入すれば、鉗子によって試料を把持したり引っ張ったりすることができる。そして、試料を引っ張れば、荷重測定部によって試料に加わる力、つまり、鉗子による引っ張り力を検出できるので、鉗子による操作について適切に把握することができる
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態の内視鏡訓練装置1の概略説明図であって、(A)は外観図であり、(B)は部分断面図である。
図2】(A)は試料Sを保持する試料保持アーム11の概略説明図であり、(B)は試料保持アーム11、関節部15、荷重測定部16がこの順で連結されている状態の概略説明図である。
図3】(A)は本実施形態の内視鏡手術補助装置100の概略説明図であり、(B)は制御部200の一例を示したブロック図である。
図4】組織に加える荷重(引っ張る力)が切除時間に与える影響を確認した実験のデータである。
図5】本実施形態の内視鏡訓練装置1の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施形態の内視鏡訓練装置は、内視鏡などの施術の訓練をするための装置であって、手術器具による組織の取り扱い方法を適切に訓練できるものである。
【0015】
本実施形態の内視鏡訓練装置では、生体の実際の組織や、組織の代替品として使用されるダミー組織を試料として使用するが、使用する試料はとくに限定されない。生体内の実際の組織の性質(柔軟性や伸展性、強度等)に近いものを使用することが望ましい。
【0016】
また、本実施形態の内視鏡訓練装置による訓練に使用する手術器具もとくに限定されない。例えば、腹腔鏡の施術に使用される鉗子や電気メス等、また、軟性内視鏡の施術に使用される鉗子や電気メス等を挙げることができる。
【0017】
以下では、腹腔鏡の施術の訓練の場合を説明するが、軟性内視鏡の場合には後述する中空構造体の貫通孔に軟性内視鏡を挿入しその鉗子孔から鉗子を突出させれば同様の訓練を実施することができる。
【0018】
<本実施形態の内視鏡訓練装置1>
図1および図5において、符号2は、本実施形態の内視鏡訓練装置1の装置本体を示している。この装置本体2には、中空構造体3と、測定部10とが設けられている。
なお、装置本体2の構造はとくに限定されず、中空構造体3と測定部10を設置できる程度の大きさと強度を有していればよい。
【0019】
<中空構造体3>
図1および図5に示すように、装置本体2の上面には中空構造体3が設けられている。この中空構造体3は、フード3aと底板3bとから構成されており、フード3aと底板3bとによって囲まれた中空な施術領域3hを有している。フード3aおよび底板3bは例えば、プラスチックやガラス、鉄などの金属によって形成されており、外部からの力が加わっても施術領域3hを維持できる程度の強度に形成されている。
【0020】
この中空構造体3のフード3aには、施術領域3hと外部との間を連通する複数の貫通孔3gが設けられている。この貫通孔3gは、内視鏡Eや鉗子F等が挿通できる程度の大きさ(例えば5~20mm程度)の孔である。したがって、この貫通孔3gを通して内視鏡Eや鉗子F等を施術領域3hに挿入すれば、中空構造体3内において試料Sを取り扱うことができる。
なお、貫通孔3gには、貫通孔3gから内部が見えないようにする部材を設けてもよい。例えば、ゴム製のフィルムなどのシート状の部材に切り込みを設けて、内部は見えないが、切り込みの部分から鉗子F等を挿入できるようにしてもよい。
【0021】
<測定部10>
図1および図5に示すように、装置本体2の上面において、中空構造体3の側方には、測定部10が設けられている。この測定部10は、訓練に使用する試料Sを保持する試料保持アーム11と、この試料保持アーム11に連結された関節部15と、この関節部15に連結された荷重測定部16と、を備えている。また、測定部10は、関節部15および荷重測定部16からの信号を処理する制御部17と、この制御部17からの信号によって関節部15や荷重測定部16からの信号等を表示する測定値表示部19も備えている。
【0022】
<試料保持アーム11>
図2に示すように、試料保持アーム11は、アーム部13と、このアーム部13の先端に保持部12を備えている。この保持部12は、試料Sを保持する一対の把持爪12a,12aを有している。この一対の把持爪12a,12aは、その基端が軸支されており、その基端を支点として先端が駆動機構からの駆動力によって接近離間できるようになっている。例えば、一対の把持爪12a,12aは、モータ等の駆動部と公知のギア機構等を有する駆動機構によって接近離間できるようになっている。したがって、駆動機構によって一対の把持爪12a,12aの先端を接近離間させれば、一対の把持爪12a,12a間に試料Sを挟んだり離したりすることができる。しかも、駆動機構の駆動力を調整すれば、試料Sを挟んで保持する力を調整することができる。
【0023】
なお、一対の把持爪12a,12aを駆動する駆動機構の構成はとくに限定されない。一対の把持爪12a,12aを接近離間させることができる機構であればよい。駆動機構を作動させる方法もとくに限定されず、どのような方法を採用してもよい。例えば、駆動機構を制御部17と電気的に接続しておき、この制御部17からの指令によって駆動機構が作動するようにしてもよい。
【0024】
また、一対の把持爪12a,12aは、上述したような駆動機構を有していなくてもよく、一対の把持爪12a,12aの先端が接近離間し、かつ、接近した状態で試料Sを保持する力を発生させるようになっていればよい。例えば、バネによって一対の把持爪12a,12aの先端が接近する方向に付勢されるようになっていれば、バネの力によって試料Sをある程度しっかりと保持しておくことができる。また、一対の把持爪12a,12aの先端が離間するように力を加えれば、試料Sを着脱することもできる。そして、特別な駆動機構を試料保持アーム11に設けなくても良くなるので、試料保持アーム11の構造を簡素化できる。
【0025】
<関節部15>
図1および図2に示すように、試料保持アーム11のアーム部13の基端には、関節部15が設けられている。この関節部15は、例えば公知の自在継手のように、アーム部13をその軸方向が変更可能かつ回転可能となるように保持している。この関節部15には、アーム部13の軸方向の角度変化や回転角度の変化を検出するセンサ15bを備えている。このセンサ15bはとくに限定されず、公知の加速度センサやジャイロセンサ等の慣性センサを使用することができる。例えば、センサ15bとして公知の9軸センサ等の加速度センサを使用すれば、試料保持アーム11のアーム部13の動きを精度よく検出することができる。なお、センサ15bの出力信号は制御部17に送信されるようになっている。
【0026】
したがって、試料保持アーム11の保持部12に保持された試料Sが鉗子F等によって引っ張られた場合に、保持部12(つまり試料S)に対してどのような方向に力が加わりどのように保持部12の姿勢が変化したかをセンサ15bによって検出することができる。例えば、後述する荷重測定部16が力を検出する方向をx軸とし、このx軸と直交する方向をy軸、z軸とする。この場合、実際に試料Sが引っ張られた方向がx軸となす角度を、θy、θzとし、荷重測定部16が検出した力f(x)とする。すると、x軸方向、θy、θzはセンサ15bで検出できるので、実際に試料Sが引っ張られた方向において試料Sを引っ張った力Fは、以下の式で求めることができる。

F={f(x)/cos(θy)}/cos(θz)
【0027】
<荷重測定部16>
図1および図2に示すように、関節部15には、関節部15に対して回転可能となるように荷重測定部16が連結されている。例えば、図2(B)に示すように、荷重測定部16は、関節部15の軸15aを回転可能であるが軸方向には移動できないように保持している。なお、荷重測定部16と関節部15とが回転可能に連結される構造はとくに限定されない。また、荷重測定部16と関節部15とは、相対的な回転が固定されていてもよい。
【0028】
この荷重測定部16は、関節部15に加わる力を検出するセンサを備えており、装置本体2に連結されている。つまり、試料保持アーム11に加わる力、言い換えれば、鉗子F等によって試料Sに加えられる力が関節部15を介して荷重測定部16に加わるので、荷重測定部16のセンサはその力の大きさを検出できるようになっている。かかる荷重測定部16のセンサには、例えば、ロードセルやテンションゲージ、歪ゲージ、MEMSセンサ等を採用することができるが、試料Sに加えられる力を検出できるものであれば採用することができる。なお、荷重測定部16のセンサの出力信号は制御部17に送信されるようになっている。
【0029】
<制御部17>
図1に示すように、制御部17は、関節部15のセンサ15bや荷重測定部16のセンサの出力信号が入力されるものである。そして、制御部17は、入力された信号を記憶するとともに、入力された信号に基づいて、測定値を測定値表示部19に表示させる機能を有している。例えば、関節部15のセンサ15bや荷重測定部16のセンサからの出力信号の時系列の変化を、そのまま測定値表示部19に連続グラフとして表示させたり、測定値表示部19に数値として表示させたりする機能を有している。また、どの方向にどの程度の力で引っ張り力が発生しているかを測定値表示部19に表示させる機能を有していてもよい。
【0030】
本実施形態の内視鏡訓練装置1では、試料保持アーム11の保持部12の一対の把持爪12a,12aに保持された試料Sを、中空構造体3の貫通孔3gから施術領域3h内に挿入した鉗子Fによって引っ張ることができる。すると、試料保持アーム11に連結された荷重測定部16によって試料Sに加わる力、つまり、鉗子Fによって試料Sを引っ張る力を検出できる。つまり、荷重測定部16によって、鉗子Fを介して試料Sに加える荷重を把握できる。すると、訓練者がどの程度の力をどのように試料Sに加えているかを数値として把握できるので、訓練者の施術の問題点や改善方法を具体的に提示でき、訓練者の習熟度を迅速に高めることができる。
【0031】
しかも、本実施形態の内視鏡訓練装置1を用いて、熟練した術者によって施術を実施させてそのデータを測定しておけば、熟練した術者と訓練者の施術の差を客観的に比較できるので、訓練者の施術の問題点や改善方法をより明確にすることができる。
【0032】
とくに、測定部10が測定値表示部19を有していれば、どの程度の力を試料Sに加えているか、また、どの方向に力を加えているか、などについて、訓練者自身が訓練を実施しているときにリアルタイムで把握できる。すると、訓練者が、自身の操作と実際に試料Sに加わる力との関係を理解しやすくなるので、訓練者の習熟度を高めやすくなる。
【0033】
<本実施形態の内視鏡訓練装置1の使用例>
本実施形態の内視鏡訓練装置1が以上のような構造を有しているので、以下のような訓練を実施することができる。
【0034】
<引張訓練>
まず、試料保持アーム11の保持部12の一対の把持爪12a,12aに試料Sを保持させれば、訓練の準備が完了する。
【0035】
この状態で、中空構造体3の貫通孔3gから施術領域3h内に鉗子Fを挿入し、鉗子Fによって試料Sを把持する。
【0036】
そして、鉗子Fによって試料Sを引っ張れば、試料Sをどの程度の力で引っ張っているか、また、どの方向に引っ張っているかを測定値表示部19の表示によって確認することができる。なお、図1では測定値表示部19が測定部10の本体の側面に設けられているが、測定値表示部19を設ける場所はとくに限定されない。図5に示すように測定値表示部19を測定部10の本体の上面に設けてもよい。
【0037】
<伸展訓練>
上述した引張訓練と同様の方法で訓練準備をした後、中空構造体3の複数の貫通孔3gから施術領域3h内に複数の鉗子Fを挿入すれば、試料Sを伸展する訓練を実施することができる。
【0038】
例えば、2つの鉗子Fを施術領域3h内に挿入し、試料保持アーム11の保持部12から離間しかつ互いに離間するように2つの鉗子Fを移動させて試料Sを引っ張る。すると、試料Sは、保持部12、2つの鉗子Fを頂点とするような形状に伸展することができるので、どのような方向にどのような力で試料Sを引っ張れば、適切に試料Sを伸展できるかについて訓練することができる。
【0039】
<切断訓練>
保持部12全体(または一対の把持爪12a,12a)を金属等の導電性材料で形成しておき、この保持部12(または一対の把持爪12a,12a)をアースしておけば、伸展訓練や引張試験を実施しつつ、試料Sを切除する訓練も実施できる。
【0040】
例えば、伸展訓練や引張試験を実施しつつ、貫通孔3gから施術領域3h内に電気メスを挿入すれば、電気メスによって試料Sを電気メスによって切断したり試料Sの一部を切除したりすることができる。
【0041】
電気メスにより試料Sを切断したり切除したりするには、試料Sに適切な張力を発生させて、試料Sを伸ばしたり伸展したりする必要がある。つまり、試料Sを鉗子Fによって本実施形態の内視鏡訓練装置1を使用すれば、どのような力でどのような方向に引っ張ったり伸展したりすれば電気メスによる切除や切断が実施しやすいかを実際に体験できる。
【0042】
なお、保持部12をアースする方法はとくに限定されない。保持部12全体(また一対の把持爪12a,12a)と装置本体2や設置構造物等とを導線等によって接続したり、保持部12において試料Sと接触する部分に導電性材料を取り付けておきこの導電性材料と装置本体2や設置構造物等とを導線等によって接続したりする方法を採用することができる。
【0043】
参考として、試料S(寿技研株式会社製品VTT(Versatile Training Tissue))の両端を引っ張った状態で電気メスを使用して切開した場合に、試料Sに加える荷重(引っ張る力)が切除時間に与える影響を確認した。
図4に示すように、荷重を増加させるに従って切除時間が短縮していることが確認できる。
【0044】
なお、組織を切除する器具として、上述した電気メス以外に、超音波凝固切開装置もある。超音波凝固切開装置は超音波振動により組織を切開すると同時に切開部分を凝固により出血を抑制する装置である。かかる超音波凝固切開装置の場合、切除時間が短くなりすぎると切開部分の組織の凝固が不十分な場合がある。したがって、本実施形態の内視鏡訓練装置1によって超音波凝固切開装置による切除訓練をしておけば、組織の切除と組織の凝固とを適切に実施するために組織に加える荷重を訓練者が把握することができる。
【0045】
<牽引力評価装置>
本実施形態の内視鏡訓練装置1では、中空構造体3を設けずに、引張訓練や伸展訓練、切断訓練を実施してもよい。この場合、実際の生体での鉗子F等とは異なる環境での訓練になるが、試料Sの取り扱いを訓練したり、試料Sに加える力を把握したりすることができる。このように、本実施形態の内視鏡訓練装置1において中空構造体3を設けない内視鏡訓練装置が、特許請求の範囲にいう牽引力評価装置に相当する。
【0046】
<中空構造体3について>
なお、上記例では、フード3aに複数の貫通孔3gを設けた場合を説明したが、貫通孔3gは一つでもよい。貫通孔3gが一つでも、試料Sを鉗子Fで引っ張ることは可能である。
【0047】
フード3aは上述したような素材で形成されていれば外部からの力が加わっても施術領域3hを維持できるが、柔軟性を有する素材によって形成してもよい。例えば、柔軟なシート状の部材によってフード3aを形成してもよい。この場合には、フード3aを底板3bから離間しておく骨組みのようなものを設けておけば、フード3a事態に強度がなくても施術領域3hを形成することができる。
【0048】
フード3aは、透明な素材によって形成されていてもよいし、不透明な材料によって形成されていてもよい。フード3aが透明な素材によって形成されていれば、実際の鉗子Fの動きなどを確認しながら施術の訓練を実施できる。
【0049】
一方、フード3aが不透明な材料によって形成されていれば、実際の施術に近い環境で訓練を実施できる。つまり、貫通孔3gから内視鏡Eを入れれば、目視で鉗子Fは確認できないが、内視鏡Eが撮影した画像を確認しながら施術を行うことができる。すると、実際の施術に近い環境で訓練を実施できる。
【0050】
フード3aが透明な素材で形成されている状態でも、内視鏡Eが撮影した画像を確認しながら施術を行ってもよい。この場合、内視鏡Eの画像と目視画像との相違を把握できるので、習熟度が低い訓練者の習熟度を高めやすくなる。
【0051】
底板3bは必ずしも設けなくてもよく、装置本体2の上面とフード3aによって中空な施術領域3hが形成されるようになっていてもよい。
【0052】
<測定部10について>
測定部10は、必ずしもフード3aの側面から試料保持アーム11を施術領域3h内に挿入するようになっていなくてもよい。例えば、中空構造体3の施術領域3h内に測定部10全体が収容されていてもよい。
【0053】
上記例では、測定部10が測定値表示部19を有している場合を説明したが、測定部10は必ずしも測定値表示部19を有していなくてもよい。例えば、ケーブル等によって外部のパソコン等に制御部17からデータを転送して、パソコン等と接続されたディスプレイ等に測定結果を表示させるようにしてもよい。
【0054】
上記例では、関節部15が試料保持アーム11と荷重測定部16との間に設けられている場合を説明したが、関節部15は荷重測定部16と装置本体2との間に設けてもよい。
また、単に試料Sに加わる引っ張り力だけを検出するのであれば、関節部15は設けなくてもよい。
【0055】
<試料保持器具>
上述した測定部10の試料保持アーム11と関節部15は、これらだけで試料S等を保持する器具として使用することができる。例えば、力を加えても損傷しない組織の取り扱いを訓練する場合には、試料Sに加わる荷重を測定する必要性は低い。しかし、組織の動かせ方や組織の姿勢をどのように変化させたり維持したりすればよいかを把握する上では、試料Sの向きやどの方向に試料Sをどの順番で移動させるかが重要になる。そこで、上述したような組織の取り扱いを訓練する際に試料Sを保持する器具として、試料保持アーム11と関節部15とが連結された器具を使用してもよい。すると、関節部15に設けられたセンサ15bによって、試料保持アーム11の動きや姿勢、つまり、試料Sの動きや姿勢を把握できるので、訓練者が自己の施術について適切に把握できる。この試料保持アーム11と関節部15とが連結された器具が、特許請求の範囲にいう試料保持器具に相当する。
【0056】
なお、この試料保持器具は、上述したような訓練に限られず、実際の施術の際に、後述する内視鏡手術補助装置100において、鉗子Fに代えて、組織を保持する器具として使用することも可能である。
【0057】
<内視鏡測定部20について>
上述したように、フード3aの貫通孔3gから内視鏡Eを挿入して内部の画像を撮影する場合、既存の内視鏡装置を使用してもよい。しかし、本実施形態の内視鏡訓練装置1自体が内視鏡Eを有していてもよい。この場合、内視鏡Eを使用した訓練の際に、内視鏡装置を別途準備しなくてもよくなるので、いつでも内視鏡Eを使用した訓練ができるので、訓練内容や訓練の自由度を高くできる。
【0058】
例えば、図1および図5に示すように、内視鏡Eを備えた内視鏡測定部20を装置本体2に設ける。そして、内視鏡測定部20に内視鏡Eで撮影された画像を表示させる画像表示部21を設ければ、内視鏡Eで撮影された画像を確認しながら施術を実施することができる。もちろん、内視鏡測定部20に画像表示部21を設けず、内視鏡Eで撮影された画像を内視鏡訓練装置1とは別に設けられたディスプレイD等に表示してもよい。
【0059】
なお、内視鏡測定部20に設ける内視鏡Eはとくに限定されず、一般的な軟性内視鏡や腹腔鏡と同等のものを使用してもよいし、画像を撮影する機能のみを有するものを使用してもよい。
なお、図1では画像表示部21が内視鏡測定部20の本体の側面に設けられているが、画像表示部21を設ける場所はとくに限定されない。図5に示すように画像表示部21を内視鏡測定部20の本体の上面に設けてもよい。
【0060】
<本実施形態の内視鏡手術補助装置100>
上述した内視鏡訓練装置1において、後述する内視鏡手術補助装置100を使用して施術者が訓練を実施した場合には、かかる訓練の結果が制御部17に記憶される。また、制御部17に記憶されているデータと、後述する操作用コントローラ140の指示とを対応させて内視鏡手術補助装置100に記憶させておけば、内視鏡手術補助装置100訓練した施術者が実際に施術を実施する際に、そのデータに基づいて本実施形態の内視鏡手術補助装置100の作動を制御することも可能になる。すると、施術者の指向や施術方法に適したサポートを本実施形態の内視鏡手術補助装置100が実現できる可能性がある。
【0061】
以下に、本実施形態の内視鏡手術補助装置100について説明する。
【0062】
図3(A)に示すように、本実施形態の内視鏡手術補助装置100は、ロボットアーム110と、ロボットアーム110を駆動する駆動部130と、ロボットアーム110の作動を入力する操作用コントローラ140と、操作用コントローラ140からの信号に基づいて駆動部130の作動を制御する制御部200と、を備えている。
【0063】
<操作用コントローラ140>
操作用コントローラ140は、内視鏡手術を実施する施術者が本実施形態の内視鏡手術補助装置100のロボットアーム110に対して、必要な動作を入力するものである。例えば、足踏み用のペダルを複数設けてこの複数のペダルを踏むことによってロボットアーム110の動作を入力する方法などを挙げることができる。
なお、操作用コントローラ140は、上述したような足踏み用のペダルに限られず、施術者が施術を実施しながらロボットアーム110の動作を入力できるものであればよい。
【0064】
<ロボットアーム110>
図3(A)において、符号111は支柱を示している。この支柱11の下端にはキャスター等を有するベース111bが設けられており、キャスター等によって床などを移動できるようになっている。
【0065】
なお、支柱11のベース111bとして、キャスター等は設けず、下端にベースプレートを設けてもよい。ベースプレートを設ければ、安定して支柱11を床などに立設することができる。
【0066】
この支柱111の上端部には、第一アーム112の基端部が連結されている。この、第一アーム112は、その軸方向が略水平になるように設けられている。
【0067】
なお、第一アーム112の基端部は、支柱111に対して第一アーム112が移動できないように固定されていてもよいし、相対的に移動するようになっていてもよい。例えば、第一アーム112の先端が、その基端を支点として上下に揺動したり、その基端を支点として水平方向に旋回したりするようになっていてもよい。
【0068】
この第一アーム112の先端部には、第二アーム113の先端部が連結されている。具体的には、第二アーム113は、その先端部を支点として、その基端部が第一アーム112に対して上下に揺動するように設けられている。例えば、第二アーム113の先端部に揺動軸114の一端部を固定し、揺動軸114の他端部を第一アーム112の先端部に回転可能に連結すれば、揺動軸114を支点として、第二アーム113の基端部を上下に揺動させることが可能になる。
【0069】
この第二アーム113には、その軸方向に沿って移動可能な器具保持部115が設けられている。この器具保持部115は、内視鏡Eによる施術を行う際に腸などの臓器を保持したりする鉗子F等を保持しておくものである。この器具保持部115は、案内レール等によって第二アーム113の軸方向に沿って移動可能に設けられている。この器具保持部115には、上述した荷重センサや加速度センサが設けられている。つまり、器具保持部115に加わる力、言い換えれば器具保持部115に保持された鉗子F等に加わる力を検出する荷重センサや、器具保持部115の姿勢を検出する加速度センサが設けられている。
【0070】
なお、器具保持部115が鉗子F等を保持する方法や構造はとくに限定されない。例えば、クランプを器具保持部115に設けておき、このクランプによって鉗子F等を挟んで保持してもよい。
また、器具保持部115の移動を案内する方法は特に限定されない。例えば、レールを設けてそのレールに沿って器具保持部115が移動するようになっていてもよいし、軸等にスライド可能に器具保持部115を取り付けてもよい。
【0071】
<駆動部130>
駆動部130は、ロボットアーム110の第二アーム113の揺動や、器具保持部115の移動を行うものである。
【0072】
<第二アーム113の揺動>
図3(A)に示すように、揺動軸114には、プーリなどを介して無端ベルト131が巻き掛けられており、この無端ベルト131は、モータ等の駆動部132の主軸に設けられたプーリ133に巻き掛けられている。このため、駆動部を駆動すれば、無端ベルト131の駆動に伴って揺動軸114を回転させることができ、揺動軸114の回転に伴って第二アーム113を揺動させることができる。
【0073】
なお、第二アーム113を揺動させる方法は上記のごとき方法に限定されない。例えば、第一アーム112の先端部に駆動部としてモータを設け、そのモータの主軸に第二アーム113の先端を固定してもよい。また、ギアを有する減速機を介して駆動部の駆動力を揺動軸114に伝達するようにしてもよい。
【0074】
<器具保持部115の移動>
図3(A)に示すように、器具保持部115の先端(第二アーム113の先端側の端部)には、ワイヤー135の一端が連結されている。このワイヤー135の他端は、ワイヤー135の他端を繰り出したり巻き取ったりする例えばウインチなどの駆動部136が設けられている。
【0075】
一方、器具保持部115の基端(第二アーム113の基端側の端部)には、ワイヤー137の一端が連結されている。このワイヤー137の他端は、ワイヤー137の他端を繰り出したり巻き取ったりする例えばウインチなどの駆動部138が設けられている。
【0076】
かかる構成とすれば、駆動部136によってワイヤー135を巻取りながら、駆動部138によってワイヤー137を繰り出せば、器具保持部115を第二アーム113の軸方向に沿って、第二アーム113の先端側に移動させることができる。
【0077】
逆に、駆動部136によってワイヤー135を繰り出しながら、駆動部138によってワイヤー137を巻き取れば、器具保持部115を第二アーム113の軸方向に沿って、第二アーム113の基端側に移動させることができる。
【0078】
なお、器具保持部115を移動させる方法は上記のごとき方法に限定されず、種々の方法を作用することができる。
【0079】
例えば、第二アーム113が基端から先端に向かって下傾しているような場合には、ワイヤー137と駆動部138だけを設けてもよい。この場合でも、ワイヤー137を巻き取れば器具保持部116を第二アーム113の基端に向かって移動させることができるし、ワイヤー137を繰り出せば器具保持部115の自重によって器具保持部115を第二アーム113の先端に向かって移動させることができる。
【0080】
また、ワイヤー135と駆動部136だけを設けてもよい。この場合には、器具保持部115の基端側に錘などを連結しておき、器具保持部115を常時基端側に引っ張る力が加わるようにしておく。すると、ワイヤー135を巻き取れば器具保持部115を第二アーム113の先端に向かって移動させることができるし、ワイヤー135を繰り出せば錘の荷重によって器具保持部115を第二アーム113の先端に向かって移動させることができる。
【0081】
さらに、第二アーム113の先端と基端との間で周回するベルトやワイヤーを設けておき、このベルトやワイヤーに器具保持部115を連結しておく。この場合には、ベルトやワイヤーを先端と基端との間で往復移動させれば、器具保持部115を第二アーム113の先端と基端との間で往復移動させることができる。
【0082】
<制御部200>
制御部200は、操作用コントローラ140からの入力に基づいて、上述した駆動部130の駆動を制御するものである。また、具体的には、操作用コントローラ140からの入力指示に応じて、駆動部132を作動させて第二アーム113を揺動させたり駆動部135,137を作動させて器具保持部115を移動させたりするものである。
【0083】
また、制御部200には、上述した内視鏡訓練装置1の訓練に内視鏡手術補助装置100を使用した際における、駆動部130と操作用コントローラ140からの入力とを関連付けた訓練データが記憶されている。つまり、施術者が訓練において操作用コントローラ140を操作した際における操作量や操作速度等と、駆動部130の作動状態のデータ(訓練データ)が関連付けられて制御部200に記憶されている。
【0084】
この制御部200には、器具保持部115に設けられた荷重センサや加速度センサの出力が入力されるようになっている。そして、制御部200は、荷重センサや加速度センサの出力と訓練データとを比較して、駆動部130の作動を制御する機能も有している。例えば、操作用コントローラ140から器具保持部115を移動させて組織を引っ張る指令が入力された際に、荷重センサや加速度センサが検出した信号に基づいて得られる情報と、訓練データの情報と、を比較して、適切な方向に適切な力で組織を引っ張るように駆動部130の作動を制御するフィードバック制御を行う機能を有している。なお、制御部200が荷重センサや加速度センサが検出した信号に基づいて得られる情報と、訓練データの情報と、に基づいて駆動部130の作動を制御する方法はフィードバック制御に限られず、とくに限定されない。
【0085】
以上のような構成であるので、本実施形態の内視鏡手術補助装置100を使用して内視鏡を使用した施術をサポートすることができる。
なお、本実施形態の内視鏡手術補助装置100は、施術者自身が操作してもよいし、施術を補助する助手(補助者という)が操作してもよい。
【0086】
まず、本実施形態の内視鏡手術補助装置100の器具保持部115に使用する鉗子Fなどを取り付ける。そして、施術者が操作用コントローラ140を操作して、鉗子Fなどが取り付けられた器具保持部115を、第二アーム113の軸方向に沿って第二アーム113の先端側に移動させる。すると、鉗子Fなどを患者の体に形成された穴に挿入することができ、鉗子F等の先端を腹腔などの内部に配置することができる。
【0087】
なお、本実施形態の内視鏡手術補助装置100は、器具保持部115を第二アーム113の軸方向に沿って第二アーム113の先端側に移動させと、鉗子Fなどを患者の体に形成された穴に挿入することができる位置に設置しておく。
【0088】
ついで、鉗子F等の先端が腸などの所望の組織を把持できる位置まで移動すると、補助者や施術者が鉗子F等を操作して所望の組織を鉗子F等に把持させる。
なお、鉗子F等を操作する鉗子操作部を設け、操作用コントローラ140によって鉗子F等による組織等の把持解放を操作できるようにしてもよい。
【0089】
所望の組織を把持した状態となれば、施術者が操作用コントローラ140を操作することによって、所望の組織を伸展したり弛緩したりすることができる。つまり、所望の組織を把持した鉗子F等を第二アーム113の軸方向に沿って第二アーム113の基端方向に移動させれば、所望の組織を引っ張って伸展することができる。一方、所望の組織を把持した鉗子F等を第二アーム113の軸方向に沿って第二アーム113の先端方向に移動させれば、所望の組織に加わっている張力を弱めることができるので、所望の組織を弛緩することができる。
【0090】
そして、操作用コントローラ140を操作した際に器具保持部115が移動する速度や量は、適切な方向に適切な力で組織が引っ張られるように、制御部200が制御する。したがって、施術者が操作用コントローラ140の操作に必要以上に気を使わないでも、施術者の予定している動きを鉗子F等にさせることができるので、施術者による施術の効率を高めることができる。
【0091】
なお、制御部200によるフィードバック制御などを行わない場合でも、加速度センサや荷重センサの測定値を表示する表示部を設けておけば、この表示部の表示を確認しながら施術者が操作用コントローラ140を操作することができる。
【0092】
<制御部200について>
本実施形態の内視鏡手術補助装置100において、各部の作動を制御する制御部はとくに限定されない。しかし、以下の機能を有する制御部200、つまり、デュアルコア・ロックステップ方式の回路を有する制御部を使用すれば、誤動作が少なく安全性が向上するという効果が得られるので、好ましい。つまり、1つの演算回路だけによる制御回路を使用する場合に比べて、制御部200では、2つの演算回路を用いて両者の演算結果を比較しながら制御を実行するので、内視鏡手術補助装置200の誤動作を低減することができる。したがって、内視鏡手術補助装置200に制御部200を設ければ、内視鏡手術補助装置200の誤動作が少なくなり、施術の際の安全性を向上させることができる。
【0093】
以下に、制御部200について、説明する。
なお、以下では、制御部200からの信号によって、内視鏡手術補助装置100の駆動部130の各機器の作動が制御される場合を代表として説明する。
【0094】
図3(B)に示すように、制御部200は2つの演算回路(CPU)201、202、2つの遅延回路203,204、比較回路205を有している。また、エラーが生じたときの処理を実行するエラー信号モジュール206も有している。
【0095】
制御部200では、一方の演算回路201による演算結果と他方の演算回路202の演算結果を比較回路205によって比較して、両者が一致する場合には駆動部130の作動を進行させるが、両者が一致しない場合には駆動部130の動作を停止するようになっている。以下、制御部200における演算の例を説明する。
【0096】
まず、操作用コントローラ140等から信号が入力されると演算回路201が所定の演算を実行する。この演算回路201の演算結果は、遅延回路204に供給され、所定の遅延時間(T1)の後に比較回路205に送信される。
【0097】
一方、操作用コントローラ140等から信号は遅延回路203にも供給され、所定の遅延時間(T2)後に遅延回路204から演算回路202に入力される。すると、演算回路203が演算を開始してから所定の遅延時間(Ts)後に演算回路202において演算回路201で同様の演算が実行される。この演算回路202の演算結果は、演算終了と同時に比較回路205に送信される。
【0098】
なお、遅延回路204により演算回路201から比較回路205に演算結果が供給される遅延時間(T1)と、遅延回路204により演算回路202に信号が入力される遅延時間(T2)とが同じ時間となるように、遅延回路203,204は構成されている。
【0099】
演算回路201の演算結果と演算回路202の演算結果が入力された比較回路205では、両演算結果が比較される。そして、比較回路205で両演算結果を比較した結果、両演算結果が一致する場合には、演算回路201(または演算回路202)の演算結果に基づいて駆動部130の作動が継続される。そして、演算回路201および演算回路202では、操作用コントローラ140等から入力される信号に基づく演算が実施され、上記と同様に比較回路205による両演算結果の比較が行われる。
【0100】
一方、演算回路201の演算結果と演算回路202の演算結果が一致しない場合には比較回路205は、比較結果(エラー情報)をエラー信号モジュール206に送信する。このとき、エラー信号モジュール206は駆動部130の作動が停止させる指令を送信して、駆動部130の作動を停止する。
【0101】
以上のように、制御部200では、1つの演算回路だけによる制御回路に比べて、2つの演算回路201,202を用いて両者の演算結果を比較しながら制御を実行するので、誤動作を低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明の内視鏡訓練装置は、生体内における治療や手術の際において、生体の組織を切除する訓練を行う装置として適している。
【符号の説明】
【0103】
1 内視鏡訓練装置
3 中空構造体
3h 施術領域
3g 貫通孔
11 試料保持アーム
12 保持部
15 関節部
16 荷重測定部
19 測定値表示部
100 内視鏡手術補助装置
110 ロボットアーム
130 駆動部
140 操作用コントローラ
200 制御部
S 試料
F 鉗子
図1
図2
図3
図4
図5