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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】抗原の捕捉装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/04 20060101AFI20230314BHJP
【FI】
G01N1/04 G
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019001331
(22)【出願日】2019-01-08
(65)【公開番号】P2020112374
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2021-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】594113942
【氏名又は名称】株式会社梁瀬産業社
(73)【特許権者】
【識別番号】591032703
【氏名又は名称】群馬県
(74)【代理人】
【識別番号】100109368
【弁理士】
【氏名又は名称】稲村 悦男
(72)【発明者】
【氏名】須永 芳幸
(72)【発明者】
【氏名】近藤 康人
【審査官】野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0038303(US,A1)
【文献】国際公開第2017/188346(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0144248(US,A1)
【文献】特開昭57-030950(JP,A)
【文献】特表平06-509023(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00-1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗原を捕捉する抗原の捕捉装置であって、
真空ユニットと、
前記抗原が捕捉される検査液を内部空間内に貯留する貯留用容器と、この貯留用容器の下部に着脱自在に連結されるもので内部に前記抗原を捕捉するフィルタが配設されると共に前記真空ユニットに連通する捕捉用容器と、この捕捉用容器の下部に解除可能に連結され前記フィルタにより前記抗原が捕捉された後の検査液を内部空間内に収納する回収容器とを備えた捕捉ユニットとを備え、
前記貯留用容器と前記回収容器とを連通させる第1連通路及び前記真空ユニットに連通する連通路を有する連通部と前記回収容器とを連通させる第2連通路が形成されたニードルを前記捕捉用容器に形成し且つ前記第1連通路の下面開口よりも前記第2連通路の下面開口の位置が上方に位置するように形成し、
前記真空ユニットを、前記捕捉用容器の前記連通部と第1連結パイプを介して連結する真空用容器と、空気の流量を調整するため前記第1連結パイプの途中に配設される流量調整弁と、前記真空用容器と第2連結パイプを介して連結される真空源と、前記第2連結パイプの途中に配設される開閉弁とから構成し
前記ニードルの下端形状を鋭利な形状にして前記捕捉用容器の内部空間内に蓋体で閉塞されている前記回収容器を挿入させると前記ニードルの下端が前記蓋体を突き刺して前記捕捉用容器内に前記フィルタが配設された状態で前記捕捉用容器と前記回収容器とを連結させると、前記貯留用容器の内側面に上面及び下面を開口して中空状を呈し下方に向けて延在するように形成された案内筒が前記捕捉用容器内で保持した前記フィルタに前記貯留用容器内の前記検査液を導くようにし、且つ前記貯留用容器の前記内部空間と前記回収容器の前記内部空間とが前記第1連通路を介して連通させると共に前記回収容器の前記内部空間と前記捕捉用容器の前記連通部の前記連通路とが前記第2連通路を介して連通させ、
前記真空ユニットの前記開閉弁を開き且つ前記流量調整弁を閉じた状態にして前記真空源により前記真空用容器の内部を真空とし、その後に前記開閉弁を閉じ且つ前記流量調整弁を適度に開いた状態にして前記真空用容器により前記第2連通路を介して前記回収容器内の空気を吸引すると、
前記回収容器内の空気が外部へ移動するに伴って前記案内筒により前記貯留用容器内の前記検査液が導びかれて前記フィルタにより前記抗原が捕捉された後の前記検査液が前記第1連通路を介して前記回収容器に落下して回収する
ことを特徴とする抗原の捕捉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がん細胞、ノロウイルス、インフルエンザウイルスなどの抗原を捕捉する抗原の捕捉装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来は、不織布などの繊維製品を折り畳むことで表面積を大きくし、ウイルスなどの分離フィルタに使用しているものがあるが、この方法では前記不織布にウイルスだけでなく、多くの不純物も残ることから、ウイルスを取り出すための煩雑な処理工程が必要となる課題があった。
【0003】
このため、国際公開2017/188346号公報(特許文献1)において、特定の酵素によって切断され得るペプチド部位及び当該ペプチド部位に連結された細胞接着性部位を有するポリペプチドによって修飾されているマイクロファイバーよりなる不織布をフィルタとして使用する技術が提案された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2017/188346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1にて提案された前記フィルタを、どのように抗原の捕捉装置に組み込んで且つ前記抗原を捕捉するかの具体的な構造が提案されてはいない。
【0006】
そこで本発明は、上記問題点に鑑み、フィルタの取付け、取り外しを容易にし、前記フィルタにて確実に抗原を捕捉し、この捕捉した後の液体も回収し易くするようにすると共に誠に使い勝手の良い抗原の捕捉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため本発明は、抗原を捕捉する抗原の捕捉装置であって、
真空ユニットと、
前記抗原が捕捉される検査液を内部空間内に貯留する貯留用容器と、この貯留用容器の下部に着脱自在に連結されるもので内部に前記抗原を捕捉するフィルタが配設されると共に前記真空ユニットに連通する捕捉用容器と、この捕捉用容器の下部に解除可能に連結され前記フィルタにより前記抗原が捕捉された後の検査液を内部空間内に収納する回収容器とを備えた捕捉ユニットとを備え、
前記貯留用容器と前記回収容器とを連通させる第1連通路及び前記真空ユニットに連通する連通路を有する連通部と前記回収容器とを連通させる第2連通路が形成されたニードルを前記捕捉用容器に形成し且つ前記第1連通路の下面開口よりも前記第2連通路の下面開口の位置が上方に位置するように形成し、
前記真空ユニットを、前記捕捉用容器の前記連通部と第1連結パイプを介して連結する真空用容器と、空気の流量を調整するため前記第1連結パイプの途中に配設される流量調整弁と、前記真空用容器と第2連結パイプを介して連結される真空源と、前記第2連結パイプの途中に配設される開閉弁とから構成し
前記ニードルの下端形状を鋭利な形状にして前記捕捉用容器の内部空間内に蓋体で閉塞されている前記回収容器を挿入させると前記ニードルの下端が前記蓋体を突き刺して前記捕捉用容器内に前記フィルタが配設された状態で前記捕捉用容器と前記回収容器とを連結させると、前記貯留用容器の内側面に上面及び下面を開口して中空状を呈し下方に向けて延在するように形成された案内筒が前記捕捉用容器内で保持した前記フィルタに前記貯留用容器内の前記検査液を導くようにし、且つ前記貯留用容器の前記内部空間と前記回収容器の前記内部空間とが前記第1連通路を介して連通させると共に前記回収容器の前記内部空間と前記捕捉用容器の前記連通部の前記連通路とが前記第2連通路を介して連通させ、
前記真空ユニットの前記開閉弁を開き且つ前記流量調整弁を閉じた状態にして前記真空源により前記真空用容器の内部を真空とし、その後に前記開閉弁を閉じ且つ前記流量調整弁を適度に開いた状態にして前記真空用容器により前記第2連通路を介して前記回収容器内の空気を吸引すると、
前記回収容器内の空気が外部へ移動するに伴って前記案内筒により前記貯留用容器内の前記検査液が導びかれて前記フィルタにより前記抗原が捕捉された後の前記検査液が前記第1連通路を介して前記回収容器に落下して回収する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、貯留用容器を捕捉用容器から着脱自在に取り付けできるため、フィルタの取付け、取り外しを容易にし、前記フィルタにて確実に抗原を捕捉し、この捕捉した後の検査液も回収し易くするようにすると共に誠に使い勝手の良い抗原の捕捉装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】捕捉装置の第1の実施形態を簡略的に表した図である。
図2】分解した状態の捕捉ユニットの縦断面図である。
図3】一体化した状態の捕捉ユニットの縦断面図である。
図4】ニードルの要部拡大図であって、わずか右横方向から見た図である。
図5】フィルタとがん細胞捕捉に関する模式図である。
図6】捕捉装置についての第2の実施形態を簡略的に表した図である。
図7】ニードルの他の実施形態を示す要部拡大図であって、(イ)は正面図、(ロ)は縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1乃至図5に基づいて、がん細胞などの標的細胞、ノロウイルスやインフルエンザウイルスなどの標的ウイルス(以下、「抗原」という。)を捕捉する捕捉装置1についての、生体内に侵入して抗体をつくらせ、その抗体とだけ結合して反応する物質である前記抗原であるがん細胞を例とした第1の実施形態について説明する。先ず、2は検査液である人間の血液中の前記がん細胞を捕捉する捕捉ユニットで、上部から前記がん細胞が捕捉される前記血液を貯留する内部空間S1を有する貯留用容器3と、前記貯留用容器3の下部に着脱自在に連結結合されるもので内部に前記がん細胞を捕捉する、例えば円板状(四角形状でもよい。)のフィルタ4が配設されると共に真空源に連通する捕捉用容器5と、この捕捉用容器5の下部に連結され前記フィルタ4により前記がん細胞が捕捉された後の血液を収納するために内部空間S4を有するガラス製の回収容器6とを備えている。
【0015】
前記貯留用容器3は、概ね中空円筒状を呈し、例えばポリプロピレン樹脂で作製される。この貯留用容器3の内側面3Aの下部には全周に亘って雌ネジ溝7が形成される。また、前記雌ネジ溝7より上方に位置する前記内側面3Aから中心に向けて且つ下方に向かうに従って徐々に内径が小さくなると共に上面及び下面を開口する中空状の案内筒8が形成される。即ち、前記貯留用容器3の内側面3Aには、この内側面3Aから垂れ下がるように延在する(延びて存在する)前記案内筒8が形成される。
【0016】
前記捕捉用容器5は、例えばABS樹脂で一体成形にて作製し、上面が開口して上部に前記内部空間S1に連通する内部空間S2を有すると共に外側面には全周に亘って前記雌ネジ溝7と螺合する雄ネジ溝13が形成された円筒状の小径上部10と、この小径上部10に連なると共に側部には水平方向に延びた外気に連通する連通路14Aを有する連通部14が形成されている中間部11と、この中間部11に連なると共に下面を開口した内部空間S3を有する円筒状の大径下部12とから構成される。なお、前記捕捉用容器5の前記小径上部10の外径より前記貯留用容器3の前記下部の内径を大きく形成する。
【0017】
そして、所定間隔毎に(90度毎に)凹部9Aが形成された前記中間部11と前記小径上部10との段差部9上に前記フィルタ4を載置した状態において、前記捕捉用容器5の前記小径上部10に形成された前記雄ネジ溝13を前記貯留用容器3の前記雌ネジ溝7に螺合させることにより、前記貯留用容器3と前記フィルタ4を収納した前記捕捉用容器5とを連結して一体化することができる。このとき、前記案内筒8が前記フィルタ4を前記凹部9Aより内方(中心寄り)に位置する前記段差部9上に押し付けて動かないように保持して前記貯留用容器3内の血液を確実に前記フィルタ4に導いて(前記フィルタ4を通過するようにして)、前記がん細胞を捕捉する。即ち、前記段差部9に形成される前記捕捉用容器5の前記中間部11の上面開口の面積より前記フィルタ4の上面の面積の方が大きく、前記案内筒8の下面開口の面積は前記フィルタ4の上面の面積より小さく且つ前記中間部11の上面開口の面積より大きいので、前記案内筒8が前記フィルタ4を前記段差部9に上方から押し付けて動かないように保持し、前記貯留用容器3内の血液を確実に前記フィルタ4を通過するようにして、前記がん細胞を捕捉することができる。
【0018】
なお、前記段差部9上に載置した前記フィルタ4をピンセット(図示せず)で取り出す際に、このピンセットの先端の一方が前記凹部9A内に入って他方との間で前記フィルタ4(その周端部が前記凹部9Aの上方に位置している。)を挟むことができるので、前記フィルタ4を摘み易く、このために前記凹部9Aは前記段差部9上面に形成されたものであるが、必ずしも形成しなくともよい。
【0019】
このため、前記貯留用容器3を前記捕捉用容器5から着脱自在に取り外したり、取付けたりすることができ、前記捕捉用容器5から前記フィルタ4を簡単に取り出したり、収納したりすることができる。
【0020】
この場合、逆に、前記捕捉用容器5の前記小径上部10の内径を前記貯留用容器3の前記下部の外径より大きくし、且つ前記捕捉用容器5の前記小径上部10の内側面に雌ネジ溝を形成すると共に前記貯留用容器3の下部の外側面3Bに雄ネジ溝を形成し、両者を螺合させることにより、前記貯留用容器3と前記捕捉用容器5とを連結して一体化してもよい。
【0021】
そして、前記中間部11と前記大径下部12との第1段差部18A中央部には、前記大径下部12の前記内部空間S3内の上下方向のほぼ中央位置まで延びるニードル15が設けられる。このニードル15内部には、前記内部空間S2とS3とに連通する内径が短い横断面形状が円形の血液流路16と、この血液流路16と同径であって前記連通部14の前記連通路14Aと前記内部空間S3とに連通する内径が短く前記血液流路16と内径と同径の横断面形状が円形の空気通路17とが形成されている。また、横断面したときの外形が円形状の前記ニードル15の下端部は先端形状が鋭利となるように、形成されている。
【0022】
しかも、図4に示すように、前記ニードル15の下端部の前記血液流路16を含む側の一方の側部(図2における円柱の左半分)において、前記ニードル15の中心軸(中心軸線)を通る(含む)縦長の仮想平面VF(前記円柱の左半部と右半部との境界平面)との間で成す角度が鋭角である、例えば20度程度となるような第1傾斜平面(傾斜面)FFが形成される。即ち、前記血液流路16を含む側の前記ニードル15の一方の半分において、前記ニードル15の中心軸を通る(含む)縦長の前記仮想平面VFとの間で成す角度が20度程度となる前記第1傾斜平面FFが形成される。
【0023】
また、外観視できる前記血液流路16の下面開口よりも前記空気通路17の下面開口の位置が上方に位置するように、前記ニードル15の下端部の前記空気通路17を含む側の他方の側部(図2における円柱の右半分)において、前記仮想平面VFの一部である平面15Aが形成されると共にこの平面15Aの上端部から上方には前記ニードル15の中心を通る縦長の前記仮想平面VFとの間で成す角度が鋭角である、例えば30度程度となる第2傾斜平面(傾斜面)SFが形成される。
【0024】
従って、前記平面15A(前記仮想平面VFの一部である。)と前記第1傾斜平面FFとの成す角度が前述したように20度程度であり、また前記平面15Aより上方に位置する前記仮想平面VFと前記第2傾斜平面SFとの成す角度が前述したように30度程度である。
【0025】
このように、前記ニードル15の下部に、前記第1傾斜平面FF、前記第2傾斜平面SF、及び前記第1傾斜平面FFと前記第2傾斜平面SFとの段差面である前記平面15Aを形成することにより、前記ニードル15の下端部の先端形状を鋭利なものとしている。なお、前記ニードル15の中心軸線と前記血液流路16の中心軸線は平行であると共に前記ニードル15の前記中心軸線と前記空気通路17の中心軸線も平行であって、且つ前記ニードル15の前記中心軸線から前記血液流路16の前記中心軸線への距離と前記ニードル15の前記中心軸線から前記空気流路17の前記中心軸線への距離は同一であり、前記ニードル15を横断した外形が円形の平面において、前記血液流路16の前記中心軸線、前記ニードル15の前記中心軸線、及び前記空気通路17の前記中心軸線が同じ直線上にあって、この円形の中心点のまわりに180度回すと元の形にぴったり重なり、前記血液流路16と前記空気通路17とは点対称となるように形成されるが、必ずしも点対称でなくともよい。
【0026】
従って、下面を開口せる前記捕捉用容器5の前記内部空間S3内に上面の開口をゴム製の蓋体6Aで密閉(閉塞)させた状態の有底円筒状の前記回収容器6を押し込みながら挿入すると、下端の形状が鋭利な前記ニードル15が前記蓋体6Aの中心部を一部破りながら突き刺すことになり、更に押し込むと、前記回収容器6の前記蓋体6Aが前記捕捉用容器5の前記中間部11と前記大径下部12との第2段差部18Bに当接して係止することになる。このため、前記捕捉用容器5と前記回収容器6とが連結して一体化し、前記血液流路16の前記下面開口及び前記空気通路17の前記下面開口が前記回収容器6の前記内部空間S4内に位置することとなって、前記貯留用容器3の前記内部空間S1と前記回収容器6の前記内部空間S4とが前記血液流路16を介して連通すると共に、前記回収容器6の前記内部空間S4と前記捕捉用容器5の前記連通部14の前記連通路14Aとが前記空気通路17を介して連通することとなる。なお、中央部の薄肉の前記第1段差部18Aの外側に厚肉の前記第2段差部18Bが連なっている。
【0027】
次に、20は上面が開口せるガラス製の真空用容器で、上面の前記開口を開閉する蓋体21には流入用パイプ22と流出側パイプ23(共にガラス製)とが設けられている。そして、前記捕捉用容器5の前記中間部11に形成された前記連通部14と前記流入用パイプ22とはフレキシブルな第1連結パイプ24で連結されており、この第1連結パイプ24の途中には空気の流量を調整するために全閉から全開まで調整できる流量調整弁25が配設される。
【0028】
28は真空源である真空ポンプで、図示しないが電源及び駆動スイッチに接続されている。そして、前記流出側パイプ23と前記真空ポンプ28とはフレキシブルな第2連結パイプ29で連結されており、この第2連結パイプ29の途中には開閉弁27及び流量計26が配設される。この流量計26は前記第2連結パイプ29内を流れる空気の流量値を計測し且つ表示するものである。
【0029】
従って、前記捕捉用容器5の前記連通部14と第1連結パイプ24を介して連結する真空用容器20と、空気の流量を調整するため前記第1連結パイプ24の途中に配設される流量調整弁25と、前記真空用容器20と第2連結パイプ29を介して連結される真空源である前記真空ポンプ28と、第2連結パイプ29の途中に配設される開閉弁27とから真空ユニット30が構成される。
【0030】
ここで、前述したフィルタ4について、詳述する。このフィルタ4はマイクロファイバーよりなる不織布が使用されるが、ナノファイバーよりなる不織布を使用してもよい。ここで、「不織布」とは、一般に、繊維を三次元構造で重ねて結合させたシート状の素材である。また、「マイクロファイバー」とは、一般に、数μm程度の極細の直径を有する繊維で、がん細胞を効率良く非破壊で回収するために、例えばポリスチレンマイクロファイバーを使用する。
【0031】
そして、本実施形態で使用する不織布は、そのポアサイズは5~20μmの範囲が好ましく、10~15μmがより好ましく、また厚さは0.5~3.0mm程度のものを使用し、エレクトロスピニング法を使用して製造したものを使用する。この「エレクトロスピニング法」とは、ポリマー(及び、必要に応じて分散補助剤)を揮発性溶媒(例えば、クロロホルム、ジクロメタン、ヘキサフルオロイソプロピルアルコール、又はこれらの混合溶液)に溶解した溶液を、電極間で形成された静電場中に吐出し、溶液を電極(アース電極)に向けて曳糸することにより、繊維状物質を製造する方法である。
【0032】
なお、図5に示すように、前記フィルタ4の前記不織布を構成する前記マイクロファイバーは、特定の細胞、例えば血液中のがん細胞CTCを捕捉できる抗体Abが結合している。また、前記抗体Abには、前記マイクロファイバーと結合するタグペプチドTagと、前記がん細胞CTCに無害な酵素などにより切断される酵素切断ペプチドPPが結合されている。前記酵素は、ここではコラーゲンの加水分解酵素であるコラゲナーゼを用いることができる。
【0033】
以上のような構成により、血液中の前記がん細胞CTCの捕捉及び回収について、以下説明する。先ず、前述したように、前記貯留用容器3と前記捕捉用容器5とが連結して一体化されていない状態で、前記中間部11と前記小径上部10との段差部9上に前記フィルタ4を載置し、前記捕捉用容器5の前記小径上部10に形成された前記雄ネジ溝13を前記貯留用容器3の前記雌ネジ溝7に螺合させることにより、前記貯留用容器3と前記フィルタ4を収納した前記捕捉用容器5とを連結して一体化する。そして、前記捕捉用容器5の前記内部空間S3内に前記蓋体6Aで閉塞させた状態の前記回収容器6を押し込みながら挿入させると、下端の形状が鋭利な前記ニードル15が前記蓋体6Aの中心部を一部破りながら突き刺すことになり、更に押し込むと、前記回収容器6の前記蓋体6Aが前記第2段差部18Bに当接して係止する。
【0034】
そして、前記フィルタ4が配設された前記捕捉用容器5の上部に前記貯留用容器3を、下部に前記回収容器6を連結して一体化し、テーブルの上に立てた状態にして、前記流量調整弁25を全閉にし、前記開閉弁27を開いた状態にする。
【0035】
そして、真空源である前記真空ポンプ28を駆動させると、前記真空用容器20内の空気は前記ニードル15の前記空気通路17、前記連通部14の前記連通路14A及び前記第2連結パイプ29を介して容器外部へと吸引され、徐々に真空の度合を強めていく。従って、前記流量計26が前記第2連結パイプ29内を流れる空気の流量値を計測し且つ表示するので、作業者は適当な前記流量値を見て、前記開閉弁27を閉じると共に前記真空ポンプ28の駆動を停止させる。
【0036】
そして、検査するための血液を前記貯留用容器3内に入れて、前記流量調整弁25を徐々に開く。即ち、作業者は、前記回収容器6内の空気が真空となった前記真空用容器20内に移動するに伴い、前記貯留用容器3内の血液も移動して、前記貯留用容器3内の前記内部空間S1から前記フィルタ4を介して、更に前記捕捉用容器5の前記内部空間S2、前記ニードル15の前記血液流路16を介して前記がん細胞CTCが捕捉された後の血液が前記回収容器6内に落下することになるが、この落下する状態(特に、落下する速度)を見ながら、前記流量調整弁25の開き具合を調整する。
【0037】
なお、このとき、前記流量調整弁25をいきなり開度を大きく開いたりすると、前記血液流路16から血液が飛散したり、ときに前記血液流路16の下面開口を介して前記回収容器6内に落下しないで前記ニードル15の下端部を回り込んで前記血液流路16から前記空気通路17を介して前記真空用容器20内へと導かれることも想定できるが、前述したように、前記血液流路16の下面開口よりも前記空気通路17の下面開口の位置が上方に位置するように前記ニードル15に前記血液流路16及び前記空気通路17を形成したから、前記回収容器6内に落下することなく前記空気通路17を介して前記真空用容器20内へと導かれることが極力防止される。更には、仮に前記血液流路16から血液が落下せずに前記空気通路17へと導かれても、前記第1連結パイプ24を介して前記真空用容器20内に収容することになるため、直接前記真空ポンプ28へと導かれるのが防止できる。従って、前記真空ポンプ28を長期に亘って使用することができることになる。
【0038】
そして、前記貯留用容器3内の全ての血液中の前記がん細胞CTCが前記フィルタ4にて捕捉されて、この捕捉後の血液が前記回収容器6内に収容されると、前記流量調整弁25を閉じる。その後、前記捕捉用容器5から前記がん細胞CTCが捕捉された後の血液を収容した前記回収容器6を取り外し、代わりに新たな前記回収容器6を前記捕捉用容器5に取付ける。また、使用した前記貯留用容器3を前記捕捉用容器5から取り外し、代わりに新たな前記貯留用容器3を前記捕捉用容器5に取付ける。
【0039】
次いで、前述した酵素であるコラゲナーゼを含む液体を、前記貯留用容器3内に注ぐと、前記フィルタ4のマイクロファイバーにタグペプチドTagを介して吸着されている前記酵素切断ペプチドPPが切断され、前記がん細胞CTCが前記抗体Abに捕捉された状態で、前記フィルタ4を通過して前記コラゲナーゼを溶かした液体と共に前記ニードル15の前記血液流路16を介して前記回収容器6内に回収される。従って、前記捕捉用容器5から前記回収容器6を取り外し、この前記回収容器6内に収容された液体を検査することにより、例えばがん細胞CTCの量を把握し、現在の身体の状態を知ることができる。
【0040】
また、図6に基づいて、抗原の前記捕捉装置1についての第2の実施形態について説明するが、第1の実施形態と異なる構成について、説明する。この実施形態は予め前記真空用容器20内部を真空状態として、これを真空源として使用するものである。即ち、前記真空ユニット30を、前記捕捉用容器5の前記連通部14と前記第1連結パイプ24を介して連結すると共に内部を予め真空とした前記真空用容器20と、空気の流量を調整するため前記第1連結パイプ24の途中に配設されて使用する前は全閉状態とした前記流量調整弁25とから構成し、前記真空用容器20の上面の前記開口を開閉する蓋体21には前記流入用パイプ22と前記流出側パイプ23とが設けられており、前記流出側パイプ23には真空状態を維持するために蓋体31が設けられている。
【0041】
なお、前記第1連結パイプ24を前記捕捉用容器5の前記連通部14から外して、前記流量調整弁25を全閉にした状態で、前記蓋体31が外された前記流出側パイプ23を介して、真空源を利用して前記真空用容器20内の空気を吸引して真空状態とし、前記流出側パイプ23に前記蓋体31を取り付ける。
【0042】
そして、前記フィルタ4が配設された前記捕捉用容器5に前記貯留用容器3及び前記回収容器6を連結して一体化した状態の前記連通部14に前記第1連結パイプ24を取付ける。そして、検査するための血液を前記貯留用容器3内に入れて、前記流量調整弁25を徐々に開くと、前記回収容器6内の空気が真空となった前記真空用容器20内に移動するに伴い、前記貯留用容器3内の血液も移動して、前記貯留用容器3内の前記内部空間S1から前記フィルタ4を介して、更に前記捕捉用容器5の前記内部空間S2、前記ニードル15の前記血液流路16を介して前記がん細胞CTCが捕捉された後の血液が前記回収容器6内に落下することになり、回収される。以後の処理は、第1の実施形態と同様であり、説明は省略する。
【0043】
次に、前記ニードル15の他の実施形態を示すもので、図7(イ)の正面図及び図7(ロ)の縦断面図に基づいて、前記ニードル15の下端部の先端形状を鋭利なものとした他の実施形態について、説明する。即ち、前記ニードル15の下端部を下に向かうに従って外径が細くなるような外形が円錐形状を呈する円錐部15Bとする。この場合、前記ニードル15の前記中心軸線と母線との角度が鋭角である前記円錐部15Bの外側面に現れる前記血液流路16の前記下面開口と前記空気通路17の前記下面開口の位置とは同じ高さレベルにあるが、前記血液流路16の下面開口から落下した前記がん細胞CTCが捕捉された後の血液は前記円錐部15Bの外側面に沿って前記回収容器6内に確実に回収されることになる。
【0044】
なお、前記血液流路16の前記下面開口と前記空気通路17の前記下面開口の位置とは同じ高さレベルとせずに、前記ニードル15を横断した外形が円形の平面において、前記血液流路16の前記中心軸線、前記ニードル15の前記中心軸線、及び前記空気通路17の前記中心軸線が同じ直線上にあっても、前記ニードル15の前記中心軸線からの前記血液流路16の前記中心軸線への距離より前記空気通路17の前記中心軸線への距離を長く形成することにより、前記空気通路17の前記下面開口を前記血液流路16の前記下面開口より上方に位置するように形成することができ、このように形成することにより、前記がん細胞が捕捉された後の血液が前記回収容器6内に落下することなく前記空気通路17を介して前記真空用容器20内へと導かれることが極力防止され、より確実に前記回収容器6内に落下させることができる。
【0045】
また、以上の図7に示すような実施形態に限らず、前記ニードル15の下端部の先端形状を鋭利なものにする実施形態は種々考えられる。即ち、下端部を点とした図7の実施形態や、下端部を線として図2図4に示す実施形態に限らず、鋭利な形状としていない位置における前記ニードル15の横断面する外形が円形部分の平面積より少なくとも底面積の小さい形状とすることにより、鋭利な形状とすることができる。
【0046】
また、以上の実施形態では、前記抗原として前記がん細胞CTCを捕捉する捕捉装置1について説明したが、食品から抽出された抽出液に含まれるノロウイルス、インフルエンザウイルスなどの抗原を捕捉する場合についても適用できる。この場合、前述したフィルタ4の厚さを変更したり、他の捕捉する抗原に適したフィルタを使用してもよい。また、以上の実施形態では、前記がん細胞CTCが捕捉された後の血液を収容した前記回収容器6を取り外し、代わりに新たな前記回収容器6を前記捕捉用容器5に取付けて、前述した酵素であるコラゲナーゼを含む液体を、前記貯留用容器3内に注ぐと、前記がん細胞CTCが前記抗体Abに捕捉された状態で、前記フィルタ4を通過して前記コラゲナーゼを溶かした液体と共に前記回収容器6内に回収されるので、この回収容器6を取り外して収容された液体を検査することにより、前記がん細胞CTCの量を把握し、現在身体の状態を知ることができたが、抗原の種類などによっては、この抗原を捕捉した状態の前記フィルタを前記捕捉用容器5から取り出して、捕捉された抗原の量を検査するようにしてもよい。
【0047】
以上本発明の実施態様について説明したが、上述の説明に基づいて当業者にとって種々の代替例、修正又は変形が可能であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で前述の種々の代替例、修正又は変形を包含するものである。
【符号の説明】
【0048】
1 捕捉装置
2 捕捉ユニット
3 貯留用容器
4 フィルタ
5 捕捉用容器
6 回収容器
6A 蓋体
8 案内筒
14 連通部
14A 連通路
15 ニードル
15A 平面
16 血液流路(第1連通路)
17 空気通路(第2連通路)
20 真空用容器
24 第1連結パイプ
25 流量調整弁
27 開閉弁
28 真空ポンプ
29 第2連結パイプ
30 真空ユニット
S1、S2、S3、S4 内部空間
FF 第1傾斜平面
SF 第2傾斜平面
CTC がん細胞
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7