(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】シフト装置
(51)【国際特許分類】
B60K 20/02 20060101AFI20230314BHJP
【FI】
B60K20/02 A
(21)【出願番号】P 2019036518
(22)【出願日】2019-02-28
【審査請求日】2021-08-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】平下 賢宏
(72)【発明者】
【氏名】伏屋 陽介
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-84032(JP,A)
【文献】特開2016-29291(JP,A)
【文献】実開昭57-34024(JP,U)
【文献】実開平6-79608(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 20/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに交差する第1方向と第2方向とに移動されてシフト位置が変更されるシフト体と、
前記シフト体の移動を停止させる停止体と、
互いに同一の部材にされると共に、それぞれ前記シフト体又は前記停止体に設けられ、それぞれ前記シフト体又は前記停止体と当接されて前記シフト体及び前記停止体への衝撃を吸収する
複数の吸収部材と、
を備え、前記シフト体が前記第1方向に移動される際における1つの
前記吸収部材の前記シフト体又は前記停止体との当接面積と前記シフト体が前記第2方向に移動される際における他の1つの
前記吸収部材の前記シフト体又は前記停止体との当接面積とが互いに相違され
るシフト装置。
【請求項2】
複数の前記吸収部材が前記シフト体又は前記停止体と当接される際における前記シフト体の移動方向を互いに相違される請求項1記載のシフト装置。
【請求項3】
前記シフト体がホーム位置から前記第1方向と前記第2方向とに移動される請求項1又は請求項2記載のシフト装置。
【請求項4】
複数の前記吸収部材が前記シフト体又は前記停止体との当接面の面積を互いに相違される請求項1~請求項3の何れか1項記載のシフト装置。
【請求項5】
前記吸収部材の一側に設けられ、前記シフト体又は前記停止体と当接可能にされる大断面部と、
前記吸収部材の他側に設けられると共に、前記大断面部の断面積に比し断面積が小さくされ、前記シフト体又は前記停止体と当接可能にされる小断面部と、
を備える請求項1~請求項4の何れか1項記載のシフト装置。
【請求項6】
前記吸収部材の前記シフト体又は前記停止体との当接面に突出されて設けられる突出部を備える請求項1~請求項5の何れか1項記載のシフト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シフト体が移動されてシフト位置が変更されるシフト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載のシフト装置では、レバーに一対のクッションが設けられると共に、プレートに一対のストッパが設けられており、一方のクッションが一方のストッパと当接されてレバー及びプレートへの衝撃を吸収すると共に、他方のクッションが他方のストッパと当接されてレバー及びプレートへの衝撃を吸収する。
【0003】
ここで、このシフト装置では、一対のクッションが、同一の部材にされると共に、ストッパとの当接態様を互いに同一にされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事実を考慮し、複数の吸収部材が互いに同一の部材にされる場合でも複数の吸収部材がシフト体及び停止体への衝撃の吸収態様を互いに相違させることができるシフト装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様のシフト装置は、移動されてシフト位置が変更されるシフト体と、前記シフト体の移動を停止させる停止体と、互いに同一の部材にされると共に、それぞれ前記シフト体又は前記停止体に設けられ、それぞれ前記シフト体又は前記停止体と当接されて前記シフト体及び前記停止体への衝撃を吸収すると共に、前記シフト体又は前記停止体との当接態様を互いに相違される複数の吸収部材と、を備える。
【0007】
本発明の第2態様のシフト装置は、本発明の第1態様のシフト装置において、複数の前記吸収部材が前記シフト体又は前記停止体と当接される際における前記シフト体の移動方向を互いに相違される。
【0008】
本発明の第3態様のシフト装置は、本発明の第1態様又は第2態様のシフト装置において、複数の前記吸収部材が前記シフト体又は前記停止体との当接面積を互いに相違される。
【0009】
本発明の第4態様のシフト装置は、本発明の第1態様~第3態様の何れか1つのシフト装置において、複数の前記吸収部材が前記シフト体又は前記停止体との当接面の面積を互いに相違される。
【0010】
本発明の第5態様のシフト装置は、本発明の第1態様~第4態様の何れか1つのシフト装置において、前記吸収部材の一側に設けられ、前記シフト体又は前記停止体と当接可能にされる大断面部と、前記吸収部材の他側に設けられると共に、前記大断面部の断面積に比し断面積が小さくされ、前記シフト体又は前記停止体と当接可能にされる小断面部と、を備える。
【0011】
本発明の第6態様のシフト装置は、本発明の第1態様~第5態様の何れか1つのシフト装置において、前記吸収部材の前記シフト体又は前記停止体との当接面に突出されて設けられる突出部を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1態様のシフト装置では、シフト体が移動されて、シフト位置が変更される。また、シフト体の移動を停止体が停止させる。さらに、複数の吸収部材がそれぞれシフト体又は停止体に設けられており、複数の吸収部材が、それぞれ、シフト体又は停止体と当接されて、シフト体及び停止体への衝撃を吸収する。
【0013】
ここで、複数の吸収部材が互いに同一の部材にされると共に、複数の吸収部材がシフト体又は停止体との当接態様を互いに相違される。このため、複数の吸収部材が互いに同一の部材にされる場合でも、複数の吸収部材がシフト体及び停止体への衝撃の吸収態様を互いに相違させることができる。
【0014】
本発明の第2態様のシフト装置では、複数の吸収部材がシフト体又は停止体と当接される際におけるシフト体の移動方向を互いに相違される。このため、複数の吸収部材がシフト体の移動方向に対応してシフト体及び停止体への衝撃の吸収態様を互いに相違させることができる。
【0015】
本発明の第3態様のシフト装置では、複数の吸収部材がシフト体又は停止体との当接面積を互いに相違される。このため、複数の吸収部材がシフト体及び停止体への衝撃の吸収態様を容易に互いに相違させることができる。
【0016】
本発明の第4態様のシフト装置では、複数の吸収部材がシフト体又は停止体との当接面の面積を互いに相違される。このため、複数の吸収部材がシフト体及び停止体への衝撃の吸収態様を容易に互いに相違させることができる。
【0017】
本発明の第5態様のシフト装置では、吸収部材の一側の大断面部及び吸収部材の他側の小断面部がシフト体又は停止体と当接可能にされる。
【0018】
ここで、大断面部の断面積に比し小断面部の断面積が小さくされる。このため、大断面部によるシフト体及び停止体への衝撃の吸収量を大きくできると共に、小断面部によるシフト体及び停止体への衝撃の吸収量を小さくできる。
【0019】
本発明の第6態様のシフト装置では、吸収部材のシフト体又は停止体との当接面に突出部が突出されて設けられる。このため、吸収部材の当接面がシフト体又は停止体と当接される前に、突出部がシフト体の移動力を吸収できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態に係るシフト装置を示す右斜め後方から見た分解斜視図である。
【
図2】(A)及び(B)は、本発明の実施形態に係るシフト装置の主要部を示す図であり、(A)は、前プレート及びレバーを示す後方から見た後面図であり、(B)は、後プレート及びレバーを示す前方から見た前面図である。
【
図3】(A)及び(B)は、本発明の実施形態に係るシフト装置の前プレートを示す右斜め後方から見た斜視図であり、(A)は、前プレートのクッション装着前を示し、(B)は、前プレートのクッション装着後を示している。
【
図4】(A)及び(B)は、本発明の実施形態に係るシフト装置の後プレートを示す右斜め前方から見た斜視図であり、(A)は、後プレートのクッション装着前を示し、(B)は、後プレートのクッション装着後を示している。
【
図5】本発明の実施形態に係るシフト装置のレバー等を示す左斜め後方から見た斜視図である。
【
図6】(A)及び(B)は、本発明の実施形態に係るシフト装置のクッションを示す図であり、(A)は、側面図であり、(B)は、平面図である。
【
図7】(A)~(D)は、本発明の実施形態に係るシフト装置のクッションの第1変形例を示す図であり、(A)は、正面図であり、(B)は、平面図であり、(C)は、背面図であり、(D)は、側面図である。
【
図8】(A)~(C)は、本発明の実施形態に係るシフト装置のクッションの第2変形例を示す図であり、(A)は、正面図であり、(B)は、平面図であり、(C)は、背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1には、本発明の実施形態に係るシフト装置10が右斜め後方から見た分解斜視図にて示されており、
図2の(A)及び(B)には、シフト装置10の主要部が示されている。なお、
図1~
図5では、シフト装置10の前方を矢印FRで示し、シフト装置10の左方を矢印LHで示し、シフト装置10の上方を矢印UPで示す。
【0022】
本実施形態に係るシフト装置10は、フロア式のものにされて、車両(自動車)の車室の床部(車体側)における車幅方向中央部に設置されており、シフト装置10の前方、左方及び上方は、それぞれ車両の前方、左方及び上方に向けられている。
【0023】
図1、
図2の(A)及び(B)に示す如く、シフト装置10には、停止体を構成する収容体としての樹脂製で略直方体形箱状のプレート12が設けられており、プレート12は、車室の床部に設置されている。プレート12は、前側の前プレート12Aと後側の後プレート12Bとが組付けられて構成されており、前プレート12A内は、後側に開放されると共に、後プレート12B内は、前側に開放されている。
【0024】
プレート12内の上部には、略球状の支持孔14が形成されており、支持孔14は、前プレート12Aと後プレート12Bとに分割されて設けられると共に、内部が上側及び下側に開放されている。支持孔14の左部及び右部における上側面及び下側面には、支持部としての球面状の支持面14Aが形成されており、支持面14Aは、前プレート12Aと後プレート12Bとに分割されて設けられている。
【0025】
前プレート12Aの左壁の下部には、第1装着部としての略矩形柱状の左装着孔16(
図3(A)参照)が形成されており、左装着孔16は、左右方向に延伸されて右側(前プレート12A内)に開放されると共に、前後方向寸法が上下方向寸法に比し大きくされている。左装着孔16は、上下方向中央における上下方向に垂直な面に対し対称な形状にされており、左装着孔16の左側部分の上下方向寸法は、左装着孔16の右側部分の上下方向寸法に比し大きくされている。左装着孔16の左側部分には、上側部分及び下側部分において、押圧部としての断面L字形板状の押圧板16Aが一体形成されており、押圧板16Aの左側部分(基端側部分)は、左装着孔16の左側部分の左面と一体にされると共に、押圧板16Aの右側部分(先端側部分)は、左装着孔16の左側部分の上面又は下面と一体にされている。左装着孔16は、後側に開放されており、左装着孔16の後側は、後プレート12Bによって閉鎖されている。
【0026】
後プレート12Bの左側部分の下部には、第2装着部としての略矩形柱状の中装着孔18(
図4(A)参照)が形成されており、中装着孔18は、前後方向に延伸されると共に、左右方向寸法が上下方向寸法に比し大きくされている。中装着孔18は、上下方向中央における上下方向に垂直な面に対し対称な形状にされると共に、左右方向中央における左右方向に垂直な面に対し対称な形状にされている。中装着孔18の前側部分の左面は、左側に凹状に湾曲されると共に、中装着孔18の前側部分の右面は、右側に凹状に湾曲されており、中装着孔18の前側部分の上下方向及び左右方向の寸法は、それぞれ中装着孔18の後側部分の上下方向及び左右方向の寸法に比し大きくされている。中装着孔18の前側部分には、上面及び下面の左右方向中央部と左面及び右面の上下方向中央部とにおいて、押圧部としての矩形柱状の押圧柱18Aが一体形成されており、押圧柱18Aは、前後方向に延伸されている。中装着孔18は、前側に開放されており、中装着孔18の左側部分は、前プレート12Aによって閉鎖されると共に、中装着孔18の右側部分は、後プレート12B内に開放されている。
【0027】
後プレート12Bの後壁の下部には、左右方向中間部において、第3装着部としての略矩形柱状の後装着孔20(
図4(A)参照)が形成されている。後装着孔20は、中装着孔18(押圧柱18Aを含む)と同一のものにされており、後装着孔20は、前後方向に延伸されると共に上下方向寸法が左右方向寸法に比し大きくされる配置にされている。後装着孔20は、前側に開放されており、中装着孔18の下側部分は、下記節度体46の固定台46Aによって閉鎖されると共に、中装着孔18の上側部分は、後プレート12B内に開放されている。
【0028】
プレート12内の下部には、追加吸収部材としての略矩形板状の前クッション22が設けられており、前クッション22は、前プレート12Aの前壁に固定されている。前クッション22は、例えばハイトレル(登録商標)製にされており、前クッション22は、弾性を有している。
【0029】
プレート12内の下部には、吸収部材としてのクッション24が3個設けられており、3個のクッション24は、同一の部材(同一の形状及び大きさの部材)にされて、それぞれプレート12の左装着孔16、中装着孔18及び後装着孔20に装着されている(以下、左装着孔16のクッション24を左クッション24Aといい、中装着孔18のクッション24を中クッション24Bといい、後装着孔20のクッション24を後クッション24Cという)。クッション24は、例えばハイトレル(登録商標)製にされており、クッション24は、弾性を有している。
【0030】
図6の(A)及び(B)には、クッション24が示されている。なお、
図6の(A)及び(B)では、クッション24の幅方向を矢印Wで示し、クッション24の肉厚方向を矢印Tで示し、クッション24の基端側(延伸方向一側)を矢印Bで示す。
【0031】
図6の(A)及び(B)に示す如く、クッション24は、略矩形柱状にされており、クッション24は、幅方向中央における幅方向に垂直な面に対し対称な形状にされると共に、肉厚方向中央における肉厚方向に垂直な面に対し対称な形状にされている。また、クッション24の幅方向両側面は、凸状に湾曲されている。
【0032】
クッション24の基端側には、大断面部としての厚肉部26が設けられており、クッション24の先端側には、小断面部としての薄肉部28が設けられている。厚肉部26は、薄肉部28に比し肉厚方向寸法が大きくされており、厚肉部26は、下記貫通孔32の部分を除き薄肉部28に比し断面積(延伸方向に垂直な断面積)が大きくされると共に、薄肉部28に比し延伸方向寸法が小さくされている。厚肉部26のクッション24先端側(薄肉部28側)の端面には、肉厚方向両側において、段差面30が形成されており、段差面30は、クッション24の延伸方向に垂直に配置されている。クッション24の基端側(厚肉部26側)の端面は、当接面としての平面状の基端面26Aにされると共に、クッション24の先端側(薄肉部28側)の端面は、当接面としての平面状の先端面28Aにされており、基端面26Aは、先端面28Aに比し面積が大きくされている。クッション24の基端面26Aより先端側における外周面は、全周において、外側へ向かうに従いクッション24の先端側へ向かう方向に傾斜されており、クッション24の先端面28Aより基端側における外周面は、全周において、凸状に湾曲されている。
【0033】
クッション24の基端面26Aの肉厚方向中央部には、突出部としての断面略半円状の基端リップ26Bが一体形成されており、基端リップ26Bは、クッション24の延伸方向外側に突出されると共に、クッション24の幅方向に延伸されている。クッション24の先端面28Aの肉厚方向中央部には、突出部としての断面略半円状の先端リップ28Bが一体形成されており、先端リップ28Bは、クッション24の延伸方向外側に突出されると共に、クッション24の幅方向に延伸されている。
【0034】
クッション24の厚肉部26には、クッション24延伸方向の中間部において、矩形状の貫通孔32が形成されており、貫通孔32は、クッション24を肉厚方向に貫通すると共に、クッション24の幅方向に延伸されている。クッション24の厚肉部26の肉厚方向両側面には、それぞれ、貫通孔32よりクッション24先端側において、平面視略矩形状の溝部34が一対形成されており、溝部34は、クッション24の基端側(貫通孔32側)及び先端側(薄肉部28側)に開放されている。各対の溝部34は、クッション24の幅方向に並べられており、各対の溝部34は、クッション24基端側の部分において、互いに連通されている。
【0035】
図1、
図2(A)、
図3の(A)及び(B)に示す如く、左クッション24Aは、プレート12の左装着孔16に後側から挿入されている。左クッション24Aの厚肉部26は、左装着孔16の左側部分に挿入されると共に、左クッション24Aの薄肉部28は、左装着孔16の右側部分に挿入されており、左クッション24Aの幅方向、延伸方向及び肉厚方向は、それぞれ前後方向、左右方向及び上下方向に平行に配置されている。左クッション24Aの左側部分は、左装着孔16の前面と後プレート12Bとの間において前後方向に圧縮されており、左クッション24Aの厚肉部26は、左装着孔16の左側部分における一対の押圧板16Aの右側部分間において上下方向に圧縮されると共に、左装着孔16の左側部分の右面と一対の押圧板16Aの左側部分との間において左右方向に圧縮されている。左クッション24Aの薄肉部28と左装着孔16の右側部分の上面及び下面との間には、隙間が設けられており、左クッション24Aの薄肉部28は、左装着孔16から右側に所定寸法突出されている(例えば先端面28Aが0.5mm以上突出されている)。
【0036】
図1、
図2(B)、
図4の(A)及び(B)に示す如く、中クッション24Bは、プレート12の中装着孔18に前側から挿入されており、中クッション24Bは、左クッション24Aの後側かつ右側に配置されている(
図5参照)。中クッション24Bの薄肉部28は、中装着孔18の後側部分に挿入されると共に、中クッション24Bの厚肉部26は、中装着孔18の前側部分に挿入されており、中クッション24Bの延伸方向、幅方向及び肉厚方向は、それぞれ前後方向、左右方向及び上下方向に平行に配置されている。中クッション24Bの厚肉部26は、中装着孔18の前側部分における上側及び下側の押圧柱18A間と左側及び右側の押圧柱18A間とにおいてそれぞれ上下方向と左右方向とに圧縮されており、中クッション24Bの厚肉部26は、段差面30において、中装着孔18の前側部分の後面に係止されている。中クッション24Bの厚肉部26の左側部分は、中装着孔18の前側部分の後面と前プレート12Aとの間において前後方向に圧縮されており、中クッション24Bの厚肉部26の右側部分は、中装着孔18から前側に特定寸法突出されている(例えば基端面26Aが0.5mm突出されている)。
【0037】
後クッション24Cは、プレート12の後装着孔20に前側から挿入されており、後クッション24Cは、中クッション24Bの後側かつ右側に配置されている(
図5参照)。後クッション24Cの薄肉部28は、後装着孔20の後側部分に挿入されると共に、後クッション24Cの厚肉部26は、後装着孔20の前側部分に挿入されており、後クッション24Cの延伸方向、肉厚方向及び幅方向は、それぞれ前後方向、左右方向及び上下方向に平行に配置されている。後クッション24Cの厚肉部26は、後装着孔20の前側部分における上側及び下側の押圧柱18A間と左側及び右側の押圧柱18A間とにおいてそれぞれ上下方向と左右方向とに圧縮されており、後クッション24Cの厚肉部26は、段差面30において、後装着孔20の前側部分の後面に係止されている。後クッション24Cの厚肉部26の下側部分は、後装着孔20の前側部分の後面と下記節度体46の固定台46Aとの間において前後方向に圧縮されており、後クッション24Cの厚肉部26の上側部分は、後装着孔20から前側に特定寸法突出されている(例えば基端面26Aが0.5mm突出されている)。
【0038】
図1、
図2の(A)及び(B)に示す如く、プレート12内には、シフト体としての樹脂製で長尺略柱状のレバー36が収容されている。レバー36の上下方向中間部には、略球状の球軸38が形成されており、球軸38の左部及び右部における上側面及び下側面には、被支持部としての球面状の回転面38Aが形成されており、回転面38Aは、プレート12の支持面14Aに嵌合されている。回転面38Aは、支持面14Aに回転可能に支持されており、レバー36は、球軸38(支持面14A及び回転面38Aの曲率中心)を中心として、前後方向(シフト方向、第1方向)及び左右方向(セレクト方向、第2方向)に回動(移動)可能にされている。
【0039】
レバー36の上側部分は、プレート12の上側に延出されており、レバー36は、上端部において、車両の乗員(例えば運転手)によって回動操作可能にされている。レバー36は、シフト位置(所定位置)としての「H」位置(ホーム位置)に配置されており(
図5参照)、レバー36は、「H」位置から後側に回動操作されて、シフト位置としての「M」位置(マニュアル位置)に配置されると共に、「H」位置から左側に回動操作されて、シフト位置としての「N」位置(ニュートラル位置)に配置される。さらに、レバー36は、「N」位置から前側に回動操作されて、シフト位置としての「R」位置(リバース位置)に配置されると共に、「N」位置から後側に回動操作されて、シフト位置としての「D」位置(ドライブ位置)に配置される。また、レバー36の前後方向におけるシフト位置間(「H」位置と「M」位置との間、「N」位置と「R」位置との間及び「N」位置と「D」位置との間)の回動量(回動角度)は、レバー36の左右方向におけるシフト位置間(「H」位置と「N」位置との間)の回動量(回動角度)に比し大きくされている。
【0040】
レバー36の下側部分には、当接部としての有底円筒状の当接筒36Aが形成されており、当接筒36A内は、下側に開放されている。レバー36の当接筒36Aの左側及び右側には、それぞれ当接部としての略台形柱状の左突起36B及び右突起36Cが一体形成されており、左突起36Bの左端面及び右突起36Cの右端面は、左右方向に垂直に配置されている。
【0041】
レバー36の下側には、付勢機構としての節度機構40が設けられている。
【0042】
節度機構40には、接触部材としての略有底円筒状の節度ピン42が設けられており、節度ピン42は、レバー36の当接筒36A内に嵌合されて、レバー36を構成している。節度ピン42内は、上側に開放されており、節度ピン42の下端面は、下側に凸状に湾曲されている。節度ピン42内には、付勢部材としての節度スプリング44(圧縮コイルスプリング)が挿入されており、節度スプリング44は、当接筒36A内の上面(底面)と節度ピン42内の下面(底面)との間に掛渡されて、節度ピン42を下側に付勢している。
【0043】
節度ピン42の下側には、停止体を構成する接触体としての節度体46が設けられている。節度体46の下側部分には、略矩形柱状の固定台46Aが設けられており、節度体46は、固定台46Aにおいて、プレート12内の下端部に固定されている。節度体46の上側部分の上側面には、接触面としての節度面46Bが形成されており、節度面46Bは、下側に凹状に湾曲されている。節度ピン42の下端面は、節度スプリング44の付勢力により節度面46Bの底部(最下部)に接触されており、これにより、レバー36が「H」位置に配置(保持)されている。レバー36が「H」位置から回動操作される際には、節度スプリング44の付勢力に抗して節度ピン42の下端面が節度面46Bの底部から離間される。レバー36が「H」位置以外の位置に配置された状態で操作力の作用を解除された際には、節度スプリング44の付勢力により節度ピン42の下端面が節度面46Bの底部に移動されて、レバー36が「H」位置に回動(復帰)される。
【0044】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0045】
以上の構成のシフト装置10では、レバー36が回動操作されて、レバー36のシフト位置が変更される(
図5参照)。
【0046】
レバー36が「H」位置から「M」位置に後側へ回動操作される際には、レバー36の当接筒36Aが、前側に回動されて、プレート12の前クッション22に当接されることで、レバー36の回動が停止される。このため、前クッション22がレバー36及びプレート12への衝撃を吸収して、レバー36とプレート12との当接音の発生が抑制される。
【0047】
レバー36が「N」位置から「D」位置に後側へ回動操作される際には、レバー36の当接筒36Aが、前側に回動されて、プレート12の前クッション22に当接されることで、レバー36の回動が停止される。このため、前クッション22がレバー36及びプレート12への衝撃を吸収して、レバー36とプレート12との当接音の発生が抑制される。
【0048】
レバー36が「N」位置から「H」位置に右側へ回動操作される際には、レバー36の左突起36Bの左端面が、左側に回動されて、プレート12の左クッション24Aの先端面28A(先端リップ28Bを含む)に当接されることで、レバー36の回動が停止される。このため、左クッション24Aがレバー36及びプレート12への衝撃を吸収して、レバー36とプレート12との当接音の発生が抑制される。
【0049】
レバー36が「M」位置から「H」位置に前側へ回動操作される際には、レバー36の左突起36Bの後面が、後側に回動されて、プレート12の中クッション24Bの基端面26A(基端リップ26Bを含む)に当接されることで、レバー36の回動が停止される。このため、中クッション24Bがレバー36及びプレート12への衝撃を吸収して、レバー36とプレート12との当接音の発生が抑制される。
【0050】
レバー36が「N」位置から「R」位置に前側へ回動操作される際には、レバー36の当接筒36Aが、後側に回動されて、プレート12の後クッション24Cの基端面26A(基端リップ26Bを含む)に当接されることで、レバー36の回動が停止される。このため、後クッション24Cがレバー36及びプレート12への衝撃を吸収して、レバー36とプレート12との当接音の発生が抑制される。
【0051】
ここで、左クッション24A、中クッション24B及び後クッション24Cが同一の部材(クッション24)にされている。さらに、レバー36の左突起36Bの左端面が左クッション24Aの先端面28Aに当接され、レバー36の左突起36Bの後面が中クッション24Bの基端面26Aに当接され、レバー36の当接筒36Aが後クッション24Cの基端面26Aに当接されるため、左クッション24A、中クッション24B及び後クッション24Cがレバー36との当接態様を互いに相違される。このため、左クッション24A、中クッション24B及び後クッション24Cが同一の部材にされる場合でも、左クッション24A、中クッション24B及び後クッション24Cがレバー36及びプレート12への衝撃の吸収態様を互いに相違させることができる。
【0052】
また、レバー36が「N」位置から「H」位置に右側へ回動操作される際には、レバー36が左クッション24Aの先端面28Aに当接される。さらに、一般に、レバー36の左右方向への回動操作力は、レバー36の前後方向への回動操作力に比し小さくされる。しかも、左クッション24Aでは、薄肉部28側の先端面28Aが厚肉部26側の基端面26Aに比し面積を小さくされている。このため、レバー36が「N」位置から「H」位置に右側へ回動操作される際には、レバー36と左クッション24Aの先端面28Aとの当接面積が比較的小さくされて、左クッション24Aの薄肉部28(先端面28Aを含む)がレバー36及びプレート12への比較的小さい衝撃を適切に吸収でき、レバー36とプレート12との当接音の発生を適切に抑制できる。
【0053】
一方、レバー36が「M」位置から「H」位置に前側へ回動操作される際及びレバー36が「N」位置から「R」位置に前側へ回動操作される際には、それぞれレバー36が中クッション24B及び後クッション24Cの基端面26Aに当接される。さらに、一般に、レバー36の前後方向への回動操作力は、レバー36の左右方向への回動操作力に比し大きくされる。しかも、中クッション24B及び後クッション24Cでは、厚肉部26側の基端面26Aが薄肉部28側の先端面28Aに比し面積を大きくされている。このため、レバー36が「M」位置から「H」位置に前側へ回動操作される際及びレバー36が「N」位置から「R」位置に前側へ回動操作される際には、それぞれ、レバー36と中クッション24B及び後クッション24Cの基端面26Aとの当接面積が比較的大きくされて、中クッション24B及び後クッション24Cの厚肉部26(基端面26Aを含む)がレバー36及びプレート12への比較的大きい衝撃を適切に吸収でき、レバー36とプレート12との当接音の発生を適切に抑制できる。
【0054】
さらに、クッション24(左クッション24A、中クッション24B及び後クッション24C)では、薄肉部28及び厚肉部26のクッション24延伸方向寸法が容易に調整可能にされている。このため、薄肉部28による衝撃吸収量を容易に調整できると共に、厚肉部26による衝撃吸収量を容易に調整できる。
【0055】
しかも、クッション24(左クッション24A、中クッション24B及び後クッション24C)の基端面26A及び先端面28Aにそれぞれ先端リップ28B及び基端リップ26Bが突出されて形成されている。このため、レバー36がクッション24の先端面28A及び基端面26Aに当接される前にそれぞれ先端リップ28B及び基端リップ26Bがレバー36の回動力を吸収でき、レバー36とプレート12との当接音の発生を効果的に抑制できる。
【0056】
また、レバー36が「H」位置と「M」位置との間で前後方向に回動操作される際には、レバー36の左突起36Bの左端面が左クッション24Aの先端面28A(先端リップ28Bを含む)に対し摺動されるが、左クッション24Aでは、先端面28Aが基端面26Aに比し面積を小さくされている。このため、レバー36の左クッション24Aに対する摺動抵抗を小さくできる。
【0057】
さらに、レバー36が「H」位置と「N」位置との間で左右方向に回動操作される際には、レバー36の左突起36Bの後面が中クッション24Bの基端面26A(基端リップ26Bを含む)の右側部分のみに対し摺動される。このため、レバー36の中クッション24Bに対する摺動抵抗を小さくできる。
【0058】
また、左クッション24Aがプレート12の左装着孔16に挿入されており、左クッション24Aの段差面30が左装着孔16の左側部分の右面に当接されている。このため、左クッション24Aの左装着孔16からの右側(プレート12内)への脱落を制限できる。
【0059】
さらに、中クッション24B及び後クッション24Cがそれぞれプレート12の中装着孔18及び後装着孔20に挿入されており、中クッション24B及び後クッション24Cの段差面30がそれぞれ中装着孔18及び後装着孔20の前側部分の後面に当接されている。このため、レバー36が中クッション24B及び後クッション24Cに当接された際にそれぞれ中クッション24B及び後クッション24Cの後側への移動を制限できる。
【0060】
また、上述の如く、左クッション24A、中クッション24B及び後クッション24Cが同一の部材にされている。このため、左クッション24A、中クッション24B及び後クッション24Cが異なる部材にされる場合とは異なり、左クッション24A、中クッション24B及び後クッション24Cの間違いによるプレート12への誤組付けを抑制できる。さらに、左クッション24A、中クッション24B及び後クッション24Cを成形する金型の費用を低減でき、左クッション24A、中クッション24B及び後クッション24Cの部品費を低減できる。
【0061】
(第1変形例)
図7の(A)~(D)には、クッション24(左クッション24A、中クッション24B及び後クッション24C)の第1変形例が示されている。
【0062】
図7の(A)~(D)に示す如く、本変形例では、クッション24の基端面26A及び先端面28Aにそれぞれ基端リップ26B及び先端リップ28Bが設けられていない。さらに、クッション24の厚肉部26に貫通孔32が設けられていない。
【0063】
クッション24の厚肉部26の肉厚方向両側では、それぞれ、一対の溝部34が、クッション24の基端側に開放されていないと共に、クッション24基端側の部分において互いに連通されていない。また、各溝部34の底面がクッション24の薄肉部28の肉厚方向側面と面一にされている。
【0064】
ここで、本変形例でも、基端リップ26B及び先端リップ28Bによる作用及び効果を除き、上記実施形態と同様の作用及び効果を奏することができる。
【0065】
(第2変形例)
図8の(A)~(C)には、クッション24(左クッション24A、中クッション24B及び後クッション24C)の第2変形例が示されている。
【0066】
図8の(A)~(C)に示す如く、本変形例では、クッション24の基端面26A及び先端面28Aにそれぞれ基端リップ26B及び先端リップ28Bが設けられていない。さらに、クッション24の厚肉部26に貫通孔32及び溝部34が設けられていない。
【0067】
クッション24の厚肉部26の幅方向両側部分には、それぞれ断面略半楕円状の凹部26Cが形成されており、凹部26Cは、クッション24の延伸方向に延伸されると共に、クッション24の基端面26Aから開放されている。
【0068】
ここで、本変形例でも、基端リップ26B及び先端リップ28Bによる作用及び効果を除き、上記実施形態と同様の作用及び効果を奏することができる。
【0069】
なお、上記実施形態(第1変形例及び第2変形例を含む)では、クッション24(左クッション24A、中クッション24B及び後クッション24C)の厚肉部26の薄肉部28側の端面に段差面30が設けられる。しかしながら、例えばクッション24の肉厚方向側面が傾斜面にされて、クッション24の厚肉部26の薄肉部28側の端面に段差面30が設けられなくてもよい。
【0070】
また、上記実施形態(第1変形例及び第2変形例を含む)では、複数のクッション24(左クッション24A、中クッション24B及び後クッション24C)の材質が同一にされる。しかしながら、複数のクッション24の材質が相違されてもよい。
【0071】
さらに、上記実施形態(第1変形例及び第2変形例を含む)では、クッション24(左クッション24A、中クッション24B及び後クッション24C)がプレート12に設けられる。しかしながら、クッション24が節度体46(例えば節度面46B)又はレバー36(節度ピン42を含む)に設けられてもよい。
【0072】
また、上記実施形態(第1変形例及び第2変形例を含む)では、レバー36(シフト体)が回動される。しかしながら、シフト体が回転(中心軸線周りに回転)又はスライドされてもよい。
【0073】
さらに、上記実施形態(第1変形例及び第2変形例を含む)では、シフト装置10をフロア式のものにして車室の床部に設置した。しかしながら、シフト装置10を車室のコンソール、インストルメントパネル又はステアリングコラムに設置してもよい。
【符号の説明】
【0074】
10・・・シフト装置、12・・・プレート(停止体)、24・・・クッション(吸収部材)、26・・・厚肉部(大断面部)、26A・・・基端面(当接部)、26B・・・基端リップ(突出部)、28・・・薄肉部(小断面部)、28A・・・先端面(当接部)、28B・・・先端リップ(突出部)、36・・・レバー(シフト体)、46・・・節度体(停止体)