(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】半導体結晶ウェハの製造装置および製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20230314BHJP
B24B 27/06 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
H01L21/304 611W
B24B27/06 D
(21)【出願番号】P 2022170276
(22)【出願日】2022-10-25
【審査請求日】2022-10-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502330849
【氏名又は名称】有限会社サクセス
(73)【特許権者】
【識別番号】521081850
【氏名又は名称】有限会社ドライケミカルズ
(74)【代理人】
【識別番号】240000693
【氏名又は名称】弁護士法人滝田三良法律事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒井 愼介
(72)【発明者】
【氏名】千葉 哲也
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特許第7045676(JP,B1)
【文献】特開2005-014126(JP,A)
【文献】特開2007-245280(JP,A)
【文献】特開2001-015458(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形状に研削加工された半導体結晶インゴットからスライス状にウェハを切り出す半導体結晶ウェハの製造装置であって、
前記半導体結晶インゴットの側面全体に周回する複数の凹溝を形成するためのドラム砥石であって、該複数の凹溝に対応した複数の凸部が側面に形成された溝加工ドラム砥石と、
前記複数の凹溝に配置された複数のワイヤーを周回させながら前進させることにより前記半導体結晶インゴットをスライス状に切断するワイヤーソー装置と、
前記ワイヤーソー装置において、前記半導体結晶インゴットを支持するインゴット支持手段と前記複数のワイヤーを介して対向する位置
で、前記複数の凹溝に配置された複数のワイヤーを撮像する撮像手段と
、
前記撮像手段が先端側に設けられ、前記ワイヤーソー装置のフレームから該撮像手段を撮像を行う前記位置に進行させると共に、撮像後に後退させて退避可能なスライダーと
を備え、
前記撮像手段による撮像画像から前記複数の凹溝に対する前記複数のワイヤーのずれ角が検出されることを特徴とする半導体結晶ウェハの製造装置。
【請求項2】
請求項1記載の半導体結晶ウェハの製造装置において、
前記インゴット支持手段は、前記撮像手段
による撮像画像により検出されたずれ角を0とするように回転して前記半導体結晶インゴットを固定するずれ角調整手段を有することを特徴とする半導体結晶ウェハの製造装置。
【請求項3】
円筒形状に研削加工された半導体結晶インゴットからスライス状にウェハを切り出す半導体結晶ウェハの製造方法であって、
前記半導体結晶インゴットの側面全体に周回する複数の凹溝を形成する溝加工工程と、
前記溝加工工程において形成された複数の凹溝に配置された複数のワイヤーを周回させながら前進させることにより前記半導体結晶インゴットをスライス状に切断する
ワイヤーソー装置による切断工程とを備え、
前記溝加工工程では、前記
複数の凹溝に対応した複数の凸部が側面に形成された溝加工ドラム砥石を互いに平行な回転軸上でそれぞれ回転させながら前記半導体結晶インゴットに圧接することにより該凹溝を形成し、
前記切断工程では、前記複数の凹溝に配置された複数のワイヤーを周回させながら前進させることにより前記半導体結晶インゴットをスライス状に切断する際に、
撮像手段が先端側に設けられたスライダーを前記ワイヤーソー装置のフレームから進行させて、前記半導体結晶インゴットを支持するインゴット支持手段と該複数のワイヤーを介して対向する位置
で該複数の凹溝に配置された該複数のワイヤーを
該撮像手段により撮像させ、撮像画像から、該複数の凹溝に対する該複数のワイヤーのずれ角を検出し、該ずれ角が0となるように調整され
、ずれ角の調整後に前記スライダーを後退させて退避させることを特徴とする半導体結晶ウェハの製造方法。
【請求項4】
請求項3記載の半導体結晶ウェハの製造方法において、
前記切断工程では、切断に先立って、前記インゴット支持手段において、前記撮像手段
による撮像画像により検出されたずれ角を0とするように回転して前記半導体結晶インゴットを固定するずれ角調整工程が実行されることを特徴とする半導体結晶ウェハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒形状に研削加工された半導体結晶インゴットからスライス状にウェハを切り出す半導体結晶ウェハの製造装置および製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の半導体結晶ウェハであるSiCウェハの製造方法としては、下記特許文献1に示すように、ウェハ形状形成工程として、結晶成長させた単結晶SiCの塊を円柱状のインゴットに加工するインゴット成形工程と、インゴットの結晶方位を示す目印となるよう、外周の一部に切欠きを形成する結晶方位成形工程と、単結晶SiCのインゴットをスライスして薄円板状のSiCウェハに加工するスライス工程と、修正モース硬度未満の砥粒を用いてSiCウェハを平坦化する平坦化工程と、刻印を形成する刻印形成工程と、外周部を面取りする面取り工程とを含み、次に、加工変質層除去工程として、先行の工程でSiCウェハに導入された加工変質層を除去する加工変質層除去工程を含み、最後に、鏡面研磨工程として、研磨パッドの機械的な作用とスラリーの化学的な作用を併用して研磨を行う化学機械研磨(CMP)工程を含むSiCウェハの製造方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、かかる従来のSiCウェハの製造方法では、製造工程が多く複雑であり、装置構成が複雑となり製造コストが嵩むという問題ある。
【0005】
一方で、製造工程を簡略化した場合には、SiCウェハに要求される品質を安定して得ることが困難となる。
【0006】
そこで、本発明は、高品質な半導体結晶ウェハを簡易かつ確実に製造することができる半導体結晶ウェハの製造装置および製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明の半導体結晶ウェハの製造装置は、円筒形状に研削加工された半導体結晶インゴットからスライス状にウェハを切り出す半導体結晶ウェハの製造装置であって、
前記半導体結晶インゴットの側面全体に周回する複数の凹溝を形成するためのドラム砥石であって、該複数の凹溝に対応した複数の凸部が側面に形成された溝加工ドラム砥石と、
前記複数の凹溝に配置された複数のワイヤーを周回させながら前進させることにより前記半導体結晶インゴットをスライス状に切断するワイヤーソー装置と、
前記ワイヤーソー装置において、前記半導体結晶インゴットを支持するインゴット支持手段と前記複数のワイヤーを介して対向する位置で、前記複数の凹溝に配置された複数のワイヤーを撮像する撮像手段と、
前記撮像手段が先端側に設けられ、前記ワイヤーソー装置のフレームから該撮像手段を撮像を行う前記位置に進行させると共に、撮像後に後退させて退避可能なスライダーと
を備え、
前記撮像手段による撮像画像から前記複数の凹溝に対する前記複数のワイヤーのずれ角が検出されることを特徴とする。
【0008】
第1発明の半導体結晶ウェハの製造装置によれば、半導体結晶インゴットの側面全体に周回する複数の凹溝を形成する、該複数の凹溝に対応した複数の凸部が側面に形成された溝加工ドラム砥石と、これに対応させた追加部材により構成される。
【0009】
1つ目の追加部材部材は、半導体結晶インゴットの側面全体に形成された複数の凹溝に配置された複数のワイヤーを周回させるワイヤーソー装置である。
【0010】
2つ目の追加部材は、ワイヤーソー装置において、半導体結晶インゴットを支持するインゴット支持手段と前記複数のワイヤーを介して対向する位置に設けれ、前記複数の凹溝に配置された複数のワイヤーを撮像する撮像手段である。
【0011】
以上の構成において、溝加工ドラム砥石によって半導体結晶インゴットの側面全体に形成された複数の凹溝に対して、複数の凹溝に複数のワイヤーを正確に配置することで、複数のワイヤーで精度よく半導体結晶インゴットをスライス状に切断することができる。
【0012】
ここで、複数の凹溝に複数のワイヤーを正確に配置するために、撮像手段による撮像画像から、複数の凹溝の進行方向(長手方向)に対する複数のワイヤーの進行方向のずれ角が検出される。
【0013】
そのため、ずれ角を正確に把握することができ、例えば、ずれ角を打ち消すように、半導体結晶インゴットの支持手段の調整やワイヤーソーボビンの調整などを行うことができる。
【0014】
このように、第1発明の半導体結晶ウェハの製造装置によれば、精度よく半導体結晶インゴットをスライス状に切断することができ、高品質な半導体結晶ウェハを簡易かつ確実に製造することができる。
【0015】
第2発明の半導体結晶ウェハの製造装置は、第1発明において、
前記インゴット支持手段は、前記撮像手段による撮像画像により検出されたずれ角を0とするように回転して前記半導体結晶インゴットを固定するずれ角調整手段を有することを特徴とする。
【0016】
第2発明の半導体結晶ウェハの製造装置によれば、インゴット支持手段に構成され、複数のワイヤーによる切断面に対して垂直に伸びる回転軸を中心に回転してずれ角が0となる位置で半導体結晶インゴットを固定するずれ角調整手段により、ずれ角を打ち消して0とするように回転してフィットした位置で半導体結晶インゴット固定させることができる。
【0017】
これにより、複数の凹溝の進行方向(長手方向)に対する複数のワイヤーの進行方向のずれ角が0となり、複数の凹溝に複数のワイヤーを正確に配置することができる。
【0018】
このように、第2発明の半導体結晶ウェハの製造装置によれば、簡易な構成で実際に、精度よく半導体結晶インゴットをスライス状に切断することができ、高品質な半導体結晶ウェハを簡易かつ確実に製造することができる。
【0019】
第3発明の半導体結晶ウェハの製造方法は、円筒形状に研削加工された半導体結晶インゴットからスライス状にウェハを切り出す半導体結晶ウェハの製造方法であって、
前記半導体結晶インゴットの側面全体に周回する複数の凹溝を形成する溝加工工程と、
前記溝加工工程において形成された複数の凹溝に配置された複数のワイヤーを周回させながら前進させることにより前記半導体結晶インゴットをスライス状に切断するワイヤーソー装置による切断工程とを備え、
前記溝加工工程では、前記複数の凹溝に対応した複数の凸部が側面に形成された溝加工ドラム砥石を互いに平行な回転軸上でそれぞれ回転させながら前記半導体結晶インゴットに圧接することにより該凹溝を形成し、
前記切断工程では、前記複数の凹溝に配置された複数のワイヤーを周回させながら前進させることにより前記半導体結晶インゴットをスライス状に切断する際に、撮像手段が先端側に設けられたスライダーを前記ワイヤーソー装置のフレームから進行させて、前記半導体結晶インゴットを支持するインゴット支持手段と該複数のワイヤーを介して対向する位置で該複数の凹溝に配置された該複数のワイヤーを該撮像手段により撮像させ、撮像画像から、該複数の凹溝に対する該複数のワイヤーのずれ角を検出し、該ずれ角が0となるように調整され、ずれ角の調整後に前記スライダーを後退させて退避させることを特徴とする。
【0020】
第3発明の半導体結晶ウェハの製造方法によれば、半導体結晶インゴットの側面全体に溝加工ドラムの複数の凸部に対応した凹溝を形成する溝加工工程と、溝加工工程において形成された複数の凹溝に配置された複数のワイヤーを周回させながら前進させることにより前記半導体結晶インゴットをスライス状に切断する切断工程とが実行される。
【0021】
ここで、溝加工ドラム砥石によって半導体結晶インゴットの側面全体に形成された複数の凹溝に対して、複数の凹溝に複数のワイヤーを正確に配置することで、複数のワイヤーで精度よく半導体結晶インゴットをスライス状に切断することができる。
【0022】
複数の凹溝に複数のワイヤーを正確に配置するために、ワイヤーソー装置において、半導体結晶インゴットを支持するインゴット支持手段と前記複数のワイヤーを介して対向する位置に設けれ、前記複数の凹溝に配置された複数のワイヤーを撮像する撮像手段による撮像画像から、複数の凹溝の進行方向(長手方向)に対する複数のワイヤーの進行方向のずれ角が検出される。
【0023】
そのため、ずれ角を正確に把握することができ、例えば、ずれ角を打ち消すように、半導体結晶インゴットの支持手段の調整やワイヤーソーボビンの調整などを行うことができる。
【0024】
このように、第3発明の半導体結晶ウェハの製造方法によれば、精度よく半導体結晶インゴットをスライス状に切断することができ、高品質な半導体結晶ウェハを簡易かつ確実に製造することができる。
【0025】
第4発明の半導体結晶ウェハの製造方法は、第3発明において、
前記切断工程では、切断に先立って、前記インゴット支持手段において、前記撮像手段による撮像画像により検出されたずれ角を0とするように回転して前記半導体結晶インゴットを固定するずれ角調整工程が実行されることを特徴とする。
【0026】
第4発明の半導体結晶ウェハの製造方法によれば、切断に先立って、インゴット支持手段において、複数のワイヤーによる切断面に対して垂直に伸びる回転軸を中心に回転してずれ角が0となる位置で半導体結晶インゴットを固定するずれ角調整工程により、ずれ角を打ち消して0とするように回転してフィットした位置で半導体結晶インゴット固定させることができる。
【0027】
これにより、複数の凹溝の進行方向(長手方向)に対する複数のワイヤーの進行方向のずれ角が0となり、複数の凹溝に複数のワイヤーを正確に配置することができる。
【0028】
このように、第4発明の半導体結晶ウェハの製造方法によれば、簡易な構成で実際に、精度よく半導体結晶インゴットをスライス状に切断することができ、高品質な半導体結晶ウェハを簡易かつ確実に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本実施形態のSiCウェハ(半導体結晶ウェハ)の製造方法の工程全体を示すフローチャート。
【
図2】
図1のSiCウェハの製造方法における溝加工工程およびパット溝形成工程により構成される本実施形態のSiCウェハの製造装置を示す説明図。
【
図3】
図1のSiCウェハの製造方法における溝加工工程および研磨工程の内容を示す説明図。
【
図4】
図1のSiCウェハの製造方法における切断工程の内容を示す説明図。
【
図5】
図1のSiCウェハの製造方法における切断工程でのずれ角調整を示す説明図。
【
図6】
図1のSiCウェハの製造方法における第1面加工工程および第2面加工工程の内容を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1に示すように、本実施形態において、半導体結晶ウェハであるSiCウェハの製造方法は、円筒形状に研削加工されたSiCインゴットからスライス状に切り出したSiCウェハを得る方法であって、溝加工工程(STEP100/
図1)と、研磨工程(STEP110/
図1)と、切断工程(STEP120/
図1)と、第1面加工工程(STEP130/
図1)と、第2面加工工程(STEP140/
図1)とを備える。
【0031】
図2~
図6を参照して各工程の詳細および本実施形態のSiCウェハの製造装置について説明する。
【0032】
図2に示す溝加工工程(STEP100/
図1)において使用する溝加工ドラム砥石20を共通に用いて、予めパッド溝形成加工を行う。
【0033】
溝加工ドラム砥石20は、SiCインゴット10の側面全体に周回する複数の凹溝11を形成するためのドラム砥石であって、複数の凹溝11に対応した複数の凸部21が側面に形成されている。
【0034】
まず、パッド溝形成加工では、複数の凹溝11を研磨するための円筒状の研磨パッド30に対する加工であって、研磨パッド30と溝加工ドラム砥石20とを互いに平行な回転軸上でそれぞれ回転させながら、溝加工ドラム砥石20を研磨パッド30に圧接することにより研磨パッド30の側面全体に複数の凸部21に対応した複数のパッド溝31が形成される。
【0035】
このとき、研磨パッド30は、(必要に応じて適度な水分を含ませた上で)冷凍させることにより固化させた状態でパット溝31が形成される。そして、パット溝31が形成された研磨パット30は、解凍(必要に応じて乾燥)処理した後で、以下の工程で用いられる。
【0036】
次に、溝加工工程(STEP100/
図1)では、共通の溝加工ドラム砥石20により、かかるSiCインゴット10に対して、側面全体に周回する複数の凹溝11を形成する。
【0037】
具体的に、溝加工工程(STEP100/
図1)では、複数の凹溝11に対応した複数の凸部21が側面全体に形成された溝加工ドラム砥石20を互いに平行な回転軸上でそれぞれ回転させながらSiCインゴット10に圧接することにより凹溝11を形成する。
【0038】
このとき、SiCインゴット10は、その両端面が一対の保護板15,15を介して保護された状態で回転自在に支持される。
【0039】
保護板15は、例えば、ポリ塩化ビニールなどの合成樹脂であり、SiCインゴット10とは必要に応じて接着剤などを介して接合される。
【0040】
かかる一対の保護板15,15により、SiCインゴット10の両端部を保護することができ、両端部の欠けや割れを防止することができる。そのため、複数の凹溝11を両端面の際まで形成することができ、ひいては、後述するSiCウェハ100をより多く切断して得ることができる。
【0041】
また、SiCインゴット10を回転軸に挟持して固定する際に、必要に応じて保護板15,15を加工(例えば、穴あけ)して固定することができる。加えて、この場合にも、SiCインゴット10自体の加工を伴わないため、SiCインゴット10を傷めることもない。
【0042】
以上の加工工程により形成されたSiCインゴット10の複数の凹溝11と、研磨パッド30の複数のパッド溝31とは、溝加工ドラム砥石20の複数の凸部21に対応した同一形状(同一ピッチ)となっている。
【0043】
そのため、
図3に示すように、溝加工工程(STEP100/
図1)でSiCインゴット10に複数の凹溝11を形成するとほぼ同時に、研磨工程(STEP110/
図1)において、凹溝11とピッチが同一の研磨パッド30の複数のパッド凸部32(隣接する2つのパッド溝31,31間の凸部)により、凹溝11に沿った研磨をすることができる。
【0044】
ここで、研磨工程(STEP110/
図1)では、CMPスラリー(化学的機械的液体研磨剤)を介して研磨してもよいが、研磨パッド30の表面に一時的にまたは連続的に粉末研磨剤(バフ研磨剤)を添加するようにしてもよい。
【0045】
さらに、
図4Aに示すように、切断工程(STEP120/
図1)では、溝加工工程(STEP100/
図1)において形成された複数の凹溝11に、切断加工装置であるワイヤーソー装置4のボビン41,41間に渡された複数のワイヤー42を配置し、ワイヤー42を周回させながら前進させることによりSiCインゴット10をスライス状に切断する。
【0046】
このとき、複数の凹溝11に複数のワイヤー42を正確に配置することで、SiCインゴット10を1回でスライス状に精度よく切断することができる。
【0047】
そのため、本実施形態では、ワイヤーソー装置4は、SiCインゴット10を支持するインゴット支持手段43と複数のワイヤー42を介して対向する位置に設けれ、複数の凹溝11に配置された複数のワイヤー42を撮像する撮像手段44を備える。
【0048】
インゴット支持手段43は、SiCインゴット10を支持すると共に、その基部は、例えば、ロータリテーブルにより構成され、複数のワイヤー42による切断面に対して垂直に伸びる回転軸Z(図中では鉛直方向)を中心に矢印の向きに回転して任意の位置で固定されるずれ角調整手段としての機能を備える。
【0049】
撮像手段44は、例えば、CCDカメラ等により構成され、
図4Bに示すように、ワイヤーソー装置4のフレーム45に中空枠型の接続プレート46を介して接続されると共に、接続プレート46(正確には、接続プレート46および接続プレート46と一体に構成された補助接続プレート46´)の中空枠内を進退自在に構成された電動スライダー47の先端側に複数の凹溝11と重なる複数のワイヤー42を撮像するように配置される。
【0050】
なお、本実施形態では、撮像手段44と電動スライダー47との間にフォーカス・ズーム調整用の電動テーブル(上下動作テーブル)を備える構成としているが、電動テーブルは省略してもよい。
【0051】
このように構成されたワイヤーソー装置4による切断工程(STEP120/
図1)では、まず切断に先立って、ずれ角調整工程が実行される。
【0052】
ずれ角調整工程では、まず、電動スライダー47の先端側を進行させて、撮像手段44の撮像方向が複数の凹溝11と複数のワイヤー42とが重なる撮影位置(図中SiCインゴット10の直下から真上を撮影するよう)に配置する。
【0053】
この状態で、撮像手段44による撮像画像を取得し、撮像画像から複数の凹溝11に対する複数のワイヤーのずれ角42が検出される。
【0054】
具体的には、
図5に実際の撮像画像を示すように、凹溝11の進行方向(図中左右方向)と、ワイヤー42の進行方向(図中左右方向)とのずれ角(非平行)を検出することができる。
【0055】
ずれ角の検出は、目視により行ってもよいが、例えば、撮像画像を二値化した上でエッジ検出処理などを行うことで、凹溝11の幅位置(上下位置)の進行方向とワイヤー42の幅位置(上下位置)の進行方向とをそれぞれ直線として検出し、これらの直線間の傾きからずれ角を画像処理により検出してもよい。
【0056】
次に、検出されたずれ角を打ち消して0とするように、支持手段43を回転軸Z回りに回転させて、撮像画像でずれ角が0となったことを確認した上で、その位置でSiCインゴット10を固定する。
【0057】
なお、角度調整手段を電動式のロータリテーブルにより構成し、撮像画像から自動調整可能に構成する場合には、前記直線間の傾きに対応した偏差をロータリテーブルのステッピングモータへの出力ステップ数として出力するフィードバック制御により構成してもよい。
【0058】
このようにしてずれ角の調整が完了すると、電動スライダー47の先端側を後退させて退避させる。
【0059】
このように、複数の凹溝11に複数のワイヤー42を正確に配置することで、SiCインゴット10を1回でスライス状に精度よく切断することができる。
【0060】
加えて、スライス状に切断されて得られるSiCウェハ100は、
図5に示すように、いずれもその周縁がピッチが正確に一致した研磨パッド30により角部が均一に面取りされているため、切断後に改めて面取り加工などを施す必要もない。
【0061】
なお、本実施形態の半導体結晶ウェハ(SiCウェハ)の製造装置(切断装置)の構成としては、上述の溝加工ドラム砥石20と、研磨パッド30と、ワイヤーソー装置40により構成される。
【0062】
次に、
図6に示すように、第1面加工工程(STEP130/
図1)では、切断面のいずれか一方の一面110を支持面として、残る他面120にメカニカルポリッシュ(高精度研削加工)を施す。
【0063】
具体的には、第1面加工工程(STEP130/
図1)では、メカニカルポリッシュを施すメカニカルポリッシュ装置50(超高合成高精度研削加工装置)により、研削加工を行う。
【0064】
メカニカルポリッシュ装置50は、スピンドル51と、定盤であるプラテン52上のダイアモンド砥石53とを備える。
【0065】
まず、ここで一面110を上面として、スピンドル51の吸着プレートである真空ポーラスチャック54に吸着させて支持させ、他面120を下面として、ダイアモンド砥石53により他面120を研削加工する。
【0066】
このとき、スピンドル51およびダイアモンド砥石53は、図示しない駆動装置により回転駆動されると共に、図示しないコンプレッサーなどによりスピンドル51がダイアモンド砥石53に押圧されることにより他面120に研削加工が施される。
【0067】
なお、研削加工後には、ドレッサー等によりダイアモンド砥石53へのドレッシングが施されてもよい。
【0068】
また、メカニカルポリッシュ装置50は、必要に応じて、加工時に複数の機能水を使用可能なように機能水供給配管を有してもよい。
【0069】
次に、第2面加工工程(STEP140/
図1)では、第1面加工工程により、高精度研削加工が施された他面120を上面として、一面110に対して、第1面加工工程と同様の高精度研削加工を施す。
【0070】
すなわち、他面120を上面として、スピンドル51の吸着プレートである真空ポーラスチャック54に吸着させ、一面110を下面として、ダイアモンド砥石53により一面110を研削加工する。
【0071】
この場合にも、必要に応じて、ドレッサー等をダイアモンド砥石53に押圧することによりドレッシングが施されてもよい。
【0072】
かかる第1面加工工程(STEP130/
図1)および第2面加工工程(STEP140/
図1)のメカニカルポリッシュ(高精度研削加工)処理によれば、切断研磨工程により得られた高い平坦性を有するトランスファレス切断面のいずれか一方を支持面(吸着面)として、残りの面に順次、メカニカルポリッシュ(高精度研削加工)を施していくことで、いわゆる転写を防止して高品質なSiCウェハを得ることができると共に、従来の遊離砥石加工、すなわち1次~4次の複数回のラップなど複雑な製造工程を大幅に簡略化することができる。
【0073】
より具体的には、砥石を替えて粗研削や複数回の仕上げ研削を行う必要がなく、例えば、♯30000以上の砥石により直接1回の研削加工により仕上げまで行うことができるため、簡易であるばかりでなく、SiCウェハ100から利用できる真性半導体層を大きく確保するすることができるという優位性がある。
【0074】
なお、第1面加工工程(STEP130/
図1)および第2面加工工程(STEP140/
図1)の高精度研削加工処理において、SiCウェハ100のサイズは、現在8インチまでであり、それぞれの口径のウェハはヘッドの面積に応じて、セットされ、(12インチまでが可能)高精度研削加工処理が行われる。
【0075】
以上が本実施形態のSiCウェハの製造方法の詳細である。以上、詳しく説明したように、かかる本実施形態のSiCウェハの製造方法および装置によれば、溝加工ドラム砥石20によってSiCインゴット10の側面全体に形成された複数の凹溝11に対して、複数の凹溝11に複数のワイヤー42を正確に配置することができ、凹溝11が切断の際のガイドになりながらも凹溝11の片側面(例えば、幅方向の一方の面)にワイヤー42が偏ることなく、ワイヤーの切削部位を凹溝11の底部に集中させて、複数のワイヤー42で精度よく1回でSiCインゴット10をスライス状に切断することができる。
【0076】
なお、上記実施形態において、パッド溝形成加工は、パット溝31およびパッド凸部32が、SiCインゴット10の側面全体に周回する複数の凹溝11(溝加工ドラム砥石20の複数の凸部21)と同一形状となるように変更されてもよい。
【0077】
具体的には、パッド溝形成加工おいて、予め、円筒状のパッド溝加工砥石を準備し、溝加工ドラム砥石20とパッド溝加工砥石とを互いに平行な回転軸上でそれぞれ回転させながら圧接することにより、複数の凸部21に対応したパッド加工溝(パッド加工凸部)をパッド溝加工砥石に形成した上で、パッド溝加工砥石と研磨パッド30とを互いに平行な回転軸上でそれぞれ回転させながら、パッド溝加工砥石を研磨パッド30に圧接することにより研磨パッド30の側面全体にパッド加工溝(パッド加工凸部)に対応した複数のパッド溝を形成してよい。
【0078】
また、本実施形態のSiCウェハの製造方法において、上述の一連の処理の後、必要に応じて、化学機械研磨(CMP)工程やウェハ洗浄工程が行われてもよい。
【0079】
さらに、本実施形態は、半導体結晶ウェハの製造方法として、SiCインゴットからSiCウェハを製造する場合について説明したが、半導体結晶は、SiCに限定されるものはなく、ガリヒソ、インジュウムリン、シリコン、その他の化合物半導体であってもよい。
【0080】
また、本実施形態では、溝加工工程(STEP100/
図1)において、SiCインゴット10は、その両端面が一対の保護板15,15を介して保護された状態で回転自在に支持される場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、一対の保護板15,15を省略して回転軸に直接SiCインゴット10を固定してもよい。
【0081】
さらに、溝加工工程(STEP100/
図1)以外の工程、例えば、研磨工程(STEP110/
図1)や切断工程(STEP120/
図1)においても、SiCインゴット10の両端面を一対の保護板15,15により保護した状態で加工処理を行うようにしてもよい。
【0082】
また、本実施形態では、
図4のように、ワイヤーソー装置4とSiCインゴット10との位置関係が、SiCインゴット10が周回するワイヤー42の外側に配置されて、(相対的に)ワイヤー42が周方向外方(図中上側)に進行する場合について説明したが、これに限定されるものではない。
【0083】
例えば、SiCインゴット10が周回するワイヤー42の内側に配置されて、(相対的に)ワイヤー42が周方向内方(図中下側)に進行する場合であってもよい。なお、この場合には、撮像手段44は、ワイヤー42の上側(SiCインゴット10の真上から真下を撮影するよう)に配置される。
【符号の説明】
【0084】
1…SiC結晶(半導体結晶)、4…ワイヤーソー装置、10…SiCインゴット(半導体結晶インゴット)、11…凹溝、15,15…一対の保護板、20…溝加工ドラム砥石、21…凸部、30…研磨パッド、31…パッド溝、32…パッド凸部、41…ボビン、42…ワイヤー、43…インゴット支持手段、44…撮像手段、45…フレーム、46…接続プレート、46´…補助接続プレート、47…電動スライダー、50…メカニカルポリッシュ装置(超高合成高精度研削加工装置)、51…スピンドル、52…プラテン、53…ダイアモンド砥石、54…真空ポーラスチャック(吸着プレート)、100…SiCウェハ(半導体結晶ウェハ)、110…一面、120…他面。
【要約】 (修正有)
【課題】高品質な半導体結晶ウェハを簡易、かつ、確実に製造する半導体結晶ウェハの製造装置及び製造方法を提供する。
【解決手段】半導体結晶ウェハであるSiCウェハの製造方法は、溝加工工程と、研磨工程と、切断工程と、第1面加工工程と、第2面加工工程と、を備える。切断工程では、ワイヤーソー装置4は、複数の凹溝11に配置された複数のワイヤー42を周回させながら前進させることによりSiCインゴット10をスライス状に切断する際に、SiCインゴットを支持するインゴット支持手段43と、電動スライダー47の先端側の複数のワイヤーを介して対向する位置に設けられ、複数の凹溝に配置された複数のワイヤーを撮像する撮像手段44と、を有し、撮像手段による撮像画像から、複数の凹溝に対する複数のワイヤーのずれ角を検出し、ずれ角を0とするように調整する。
【選択図】
図4