(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】無線通信装置、無線通信プログラム及び無線通信方法
(51)【国際特許分類】
H04W 40/34 20090101AFI20230314BHJP
H04W 84/20 20090101ALI20230314BHJP
【FI】
H04W40/34
H04W84/20
(21)【出願番号】P 2018235369
(22)【出願日】2018-12-17
【審査請求日】2021-07-02
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成28年度国立研究開発法人情報通信研究機構「高度通信・放送研究開発委託研究/未来を創る新たなネットワーク基盤技術に関する研究開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
(74)【代理人】
【識別番号】100180275
【氏名又は名称】吉田 倫太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100161861
【氏名又は名称】若林 裕介
(72)【発明者】
【氏名】濱上 卓磨
(72)【発明者】
【氏名】四方 博之
(72)【発明者】
【氏名】新野 淳
【審査官】倉本 敦史
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-253518(JP,A)
【文献】国際公開第2010/007738(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークトポロジを構築し、構築されたネットワークトポロジに従いデータの伝送を行うマルチチャネル方式のマルチホップ無線ネットワークを構成する無線通信装置において、
自ノードが孤立ノードであることか否かを判定する孤立判定手段と、
自ノードが孤立ノードであると判定された場合、チャネルを変更するか否かを判定するチャネル判定手段と、
前記チャネル判定手段で判定されたチャネルに関する情報に従い、親ノード宛のデータ送信を行う無線送信手段とを備
え、
さらに、前記マルチホップ無線ネットワークにおける各チャネルは、制御パケットの送受信により経路を構築する経路構築期間と、チャネルを変更したノードのみデータ送信を行う孤立ノードデータ送信期間と、通常のデータ送信期間とからなるフレーム構成を備え、
前記各チャネルの前記経路構築期間の開始タイミングが異なる
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記経路構築期間、前記孤立ノードデータ送信期間、及び前記データ送信期間における各期間の開始は、前記経路構築期間、前記孤立ノードデータ送信期間、前記データ送信期間の順に行われることを特徴とする請求項
1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記無線送信手段は、チャネルを変更した後、変更後のチャネルの前記経路構築期間において、前記制御パケットの受信とネットワークトポロジ構築を試み、前記制御パケットを受信し、ネットワークトポロジを構築できた場合には、変更後のチャネルの前記孤立ノードデータ送信期間においてデータ送信を行うことを特徴とする請求項
1又は
2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記孤立判定手段は、前記経路構築期間における前記制御パケットの受信の有無に応じて、自ノードが孤立ノードであることか否かを判定することを特徴とする請求項
1~
3のいずれかに記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記孤立判定手段は、前記制御パケットを受信できた場合、上位ノードとの通信品質を基に、自ノードが孤立ノードであることか否かを判定することを特徴とする請求項
4に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記孤立判定手段は、前記制御パケットを受信できた場合、前記制御パケットに記載されている情報を基に、自ノードが孤立ノードであることか否かを判定することを特徴とする請求項
4に記載の無線通信装置。
【請求項7】
前記チャネル判定手段は、自ノードが孤立ノードであると判定された場合、前記経路構築期間の開始が異なる別のチャネルに自ノードのチャネルを変更することを特徴とする請求項
1~
6のいずれかに記載の無線通信装置。
【請求項8】
ネットワークトポロジを構築し、構築されたネットワークトポロジに従いデータの伝送を行うマルチチャネル方式のマルチホップ無線ネットワークを構成する無線通信装置に搭載されるコンピュータを、
自ノードが孤立ノードであることか否かを判定する孤立判定手段と、
自ノードが孤立ノードであると判定された場合、チャネルを変更するか否かを判定するチャネル判定手段と、
前記チャネル判定手段で判定されたチャネルに関する情報に従い、親ノード宛のデータ送信を行う無線送信手段として機能さ
せ、
さらに、前記マルチホップ無線ネットワークにおける各チャネルは、制御パケットの送受信により経路を構築する経路構築期間と、チャネルを変更したノードのみデータ送信を行う孤立ノードデータ送信期間と、通常のデータ送信期間とからなるフレーム構成を備え、
前記各チャネルの前記経路構築期間の開始タイミングが異なる
ことを特徴とする無線通信プログラム。
【請求項9】
ネットワークトポロジを構築し、構築されたネットワークトポロジに従いデータの伝送を行うマルチチャネル方式のマルチホップ無線ネットワークを構成する無線通信装置に使用する無線通信方法おいて、
孤立判定手段、チャネル判定手段、及び無線送信手段を備え、
前記孤立判定手段は、自ノードが孤立ノードであることか否かを判定し、
前記チャネル判定手段は、自ノードが孤立ノードであると判定された場合、チャネルを変更するか否かを判定し、
前記無線送信手段は、
前記チャネル判定手段で判定されたチャネルに関する情報に従い、親ノード宛のデータ送信を行
い、
さらに、前記マルチホップ無線ネットワークにおける各チャネルは、制御パケットの送受信により経路を構築する経路構築期間と、チャネルを変更したノードのみデータ送信を行う孤立ノードデータ送信期間と、通常のデータ送信期間とからなるフレーム構成を備え、
前記各チャネルの前記経路構築期間の開始タイミングが異なる
ことを特徴とする無線通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置、無線通信プログラム及び無線通信方法に関し、例えばマルチホップ無線通信システムを構成する無線通信装置に適用し得るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、無線通信システムとして、基地局(以下、BS(Base Station)とも呼ぶ)及び無線移動局(以下、「ノード」とも呼ぶ)で構成され、ノードに備え付けられたセンサ(例えば、温湿度センサや加速度センサ)で取得されたデータを定期的にBSに送信する、センサネットワークシステムが知られている。
【0003】
従来、センサネットワークシステムの通信に特定小電力無線を用いる場合、使用する周波数帯の特性や送信出力の制限により、ノード間の通信距離が十分に確保できない場合が存在する。そのため、従来のセンサネットワークシステムでは、一つの基地局で管理されるエリア内のすべてのノードが、基地局と直接通信できるとは限らない。
【0004】
そこで、このようなセンサネットワークシステムでは、各ノードは自身と直接通信可能なエリア内に存在する他のノード(以下、「隣接ノード」とも呼ぶ)にデータを伝送し、さらに、そのデータを受信したノードが隣接ノードにデータを伝送するというマルチホップ無線通信でデータ伝送が行われる。以下、マルチホップ無線通信が採用されたネットワークシステムを「マルチホップ無線通信システム」とも呼ぶ。
【0005】
このマルチホップ無線通信システムにおいてシステムに参加するノードが多数存在する場合には、使用する周波数(以下、「チャネル」とも呼ぶ)を複数用意する、マルチチャネル方式を採用することがある。
【0006】
また、一般に、マルチホップ無線通信システムでは、隣接ノードが存在しないノード(以下、「孤立ノード」とも呼ぶ)を発生させないための対策が必要である。例えば、特許文献1では、孤立ノードが孤立したことを周辺のノードに知らせるためのパケットを送信し、そのパケットによる他のパケットへの干渉が他ノードによって検出されることで孤立ノードを検出する方式や、そのパケット自体を受信したノードが、孤立ノード宛に制御パケットを送信する方式が提案されている。
【0007】
一方、マルチチャネルを用いたマルチホップ無線通信システムでは、ノードは特定のチャネルを割り当てられ、そのチャネルを用いて無線通信を行う。そして、この割り当てられたチャネルがネットワークトポロジを正しく反映したものではない場合、異なるチャネルであれば通信可能であるにも関わらず、孤立ノードとなる場合がある。この問題の対策として、例えば、特許文献2では、チャネルの変更方式として基地局からの情報を基にネットワークに参加する全ノードが同時にチャネルを変更する方式が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第4953328号公報
【文献】特願2003-179506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、基地局を含むネットワークに参加する全ノードが孤立ノードを検知する仕組みを必要としており、また、検知するためには、各ノードが制御パケットを送信する必要がある。
【0010】
制御パケットの送信は、ネットワークへの負担を増大させ、多数ノードを収容し、かつ、高頻度にパケットの送受信が行われるネットワークにおいては、その負担は無視できないものになる。
【0011】
また、特許文献2に記載の技術は、集中制御的にチャネルの制御を行うことができるが、孤立ノードは制御パケットを受信することができないために、チャネルを変更することができない。
【0012】
以上のような問題に鑑みて、孤立ノード対策のための制御パケットや集中制御を必要としないで、孤立ノードがデータを送信することができる無線通信装置、無線通信プログラム及び無線通信方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の本発明は、ネットワークトポロジを構築し、構築されたネットワークトポロジに従いデータの伝送を行うマルチチャネル方式のマルチホップ無線ネットワークを構成する無線通信装置において、(1)自ノードが孤立ノードであることか否かを判定する孤立判定手段と、(2)自ノードが孤立ノードであると判定された場合、チャネルを変更するか否かを判定するチャネル判定手段と、(3)前記チャネル判定手段で判定されたチャネルに関する情報に従い、親ノード宛のデータ送信を行う無線送信手段とを備え、(4)さらに、前記マルチホップ無線ネットワークにおける各チャネルは、制御パケットの送受信により経路を構築する経路構築期間と、チャネルを変更したノードのみデータ送信を行う孤立ノードデータ送信期間と、通常のデータ送信期間とからなるフレーム構成を備え、(5)前記各チャネルの前記経路構築期間の開始タイミングが異なることを特徴とする。
【0014】
第2の本発明の無線通信プログラムは、ネットワークトポロジを構築し、構築されたネットワークトポロジに従いデータの伝送を行うマルチチャネル方式のマルチホップ無線ネットワークを構成する無線通信装置に搭載されるコンピュータを、(1)自ノードが孤立ノードであることか否かを判定する孤立判定手段と、(2)自ノードが孤立ノードであると判定された場合、チャネルを変更するか否かを判定するチャネル判定手段と、(3)前記チャネル判定手段で判定されたチャネルに関する情報に従い、親ノード宛のデータ送信を行う無線送信手段として機能させ、(4)さらに、前記マルチホップ無線ネットワークにおける各チャネルは、制御パケットの送受信により経路を構築する経路構築期間と、チャネルを変更したノードのみデータ送信を行う孤立ノードデータ送信期間と、通常のデータ送信期間とからなるフレーム構成を備え、(5)前記各チャネルの前記経路構築期間の開始タイミングが異なることを特徴とする。
【0015】
第3の本発明は、ネットワークトポロジを構築し、構築されたネットワークトポロジに従いデータの伝送を行うマルチチャネル方式のマルチホップ無線ネットワークを構成する無線通信装置に使用する無線通信方法おいて、孤立判定手段、チャネル判定手段、及び無線送信手段を備え、(1)前記孤立判定手段は、自ノードが孤立ノードであることか否かを判定し、(2)前記チャネル判定手段は、自ノードが孤立ノードであると判定された場合、チャネルを変更するか否かを判定し、(3)前記無線送信手段は、前記チャネル判定手段で判定されたチャネルに関する情報に従い、親ノード宛のデータ送信を行い、(4)さらに、前記マルチホップ無線ネットワークにおける各チャネルは、制御パケットの送受信により経路を構築する経路構築期間と、チャネルを変更したノードのみデータ送信を行う孤立ノードデータ送信期間と、通常のデータ送信期間とからなるフレーム構成を備え、(5)前記各チャネルの前記経路構築期間の開始タイミングが異なることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、孤立ノード対策のための制御パケットや集中制御を必要としないで、孤立ノードがデータを送信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1の実施形態に係る無線通信装置の機能的構成について示すブロック図である。
【
図2】第1の実施形態に係る無線通信システム(ネットワーク)の一例を示す全体構成図(その1)である。
【
図3】第1の実施形態に係る無線通信システム(ネットワーク)の一例を示す全体構成図(その2)である。
【
図4】第1の実施形態に係るスーパーフレームの構成を示す説明図である。
【
図5】第1の実施形態に係るスーパーフレームの具体例を示す説明図である。
【
図6】第1の実施形態に係る無線通信システム(ネットワーク)の一例を示す全体構成図(その3)である。
【
図7】第2の実施形態に係るスーパーフレームの構成を示す説明図である。
【
図8】第2の実施形態に係るスーパーフレームの具体例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(A)第1の実施形態
以下、本発明による無線通信装置、無線通信プログラム及び無線通信方法の第1の実施形態を、図面を参照しながら詳述する。
【0019】
(A-1)第1の実施形態の構成
(A-1-1)全体構成
図2は、第1の実施形態に係る無線通信システム(ネットワーク)の一例を示す全体構成図(その1)である。
【0020】
無線通信システム1には、無線マルチホップネットワークであるネットワークNを構成するノードとして基地局20(
図2中の「BS」は基地局を示している)と複数の無線通信装置10が配置されているものとする。以下では、基地局20及び各無線通信装置10を総じて、「局」又は「ノード」と呼ぶこともある。また、無線通信システム1は、マルチチャネル方式を用いている事を前提とする。
【0021】
基地局20は、ネットワークN全体(各無線通信装置10)を管理するノードであるものとする。無線通信システム1に配置される各装置の数は限定されないものであるが、この実施形態の無線通信システム1では、1個の基地局20と、n個の無線通信装置10(10-1~10-n)が配置されているものとして説明する。
【0022】
無線マルチホップネットワークを構成している各ノードは、例えば、IEEE802.15.4を利用した通信に対応可能なものとすることができる。なお、無線通信方式は、各局間で無線マルチホップ通信が可能であれば、IEEE802.15.4に限定されない。
【0023】
基地局20及び各無線通信装置10には、それぞれネットワーク上で固有のアドレス(例えば、MACアドレス、ショートアドレス、IPアドレス等)が割り当てられている。基地局20と各無線通信装置10との間で通信は行われるが、無線通信装置10同士で通信を行わない。すなわち、各無線通信装置10は、原則として、基地局20を最終的な宛先としたユニキャストのデータパケットの送信は行なうが、他の無線通信装置10を最終的な宛先としたユニキャストのデータパケットの送信は行わないものとする。仮に、無線通信装置10同士の通信が必要な場合には、基地局20を中継して通信するようにしてもよい。
【0024】
また、本実施形態では、各ノードは複数のチャネルを用いて無線通信を行うが、同一チャネルのノード間のみ通信を行うことができる。チャネル制御の詳しい説明は動作の項で述べる。
【0025】
(A-1-2)無線通信装置10の詳細な構成
次に、無線通信装置10の機能的構成について
図1を用いて説明する。
【0026】
図1は、第1の実施形態に係る無線通信装置の機能的構成について示すブロック図である。
【0027】
図1に示すように、無線通信装置10は、アンテナ101、無線信号送受信部102、データ処理部103、ネットワーク管理部104、パケット生成部105、タイマー部106、孤立判定部107、及びチャネル判定部108を有している。また、無線通信装置10は、外部システム30に接続されている。
【0028】
無線通信装置10は、ハードウェア的な無線通信インタフェース(例えば、アンテナ101等)を除く他は、コンピュータにプログラム(実施形態に係る無線通信プログラム)をインストールすることにより実現するようにしてもよく、その場合でも機能的構成は、
図1のように示すことができる。
【0029】
無線通信装置10は、外部システム30から供給されたデータを、基地局20宛に送信し、基地局20を送信元とするパケットを受信した場合には、当該パケットのデータを外部システム30に供給する。例えば、外部システム30がセンサ(例えば、温度、湿度、人間の脈拍等のバイタルサインを検知するセンサ)である場合、無線通信装置10は、外部システム30から検知結果(センサデータ)が供給されると、当該検知結果(センサデータ)を挿入したパケットを基地局20宛に送信する。なお、無線通信装置10において、外部システム30(アプリケーション)の構成は限定されないものである。また、無線通信装置10では、内部のコンピュータで実行されるアプリケーションで発生するデータの送信を行う構成としても良い。
【0030】
アンテナ101は、他のノード(他の無線通信装置10及び基地局20)との無線信号の送受信を行う。
【0031】
無線信号送受信部102は、アンテナ101を用いて無線信号を送受信する処理を行う。具体的には、無線信号送受信部102はアンテナ101で受信した信号の復調とその信号に含まれるパケットの受信を行う。無線信号送受信部102は、受信したパケットに含まれるデータをデータ処理部103に送付する。また、無線信号送受信部102は、パケット生成部105から送られてきたパケットを変調して無線信号に変換し、アンテナ101を用いて当該無線信号の送信を開始する。
【0032】
データ処理部103は、無線信号送受信部102で受信したパケット(受信した無線信号を復調して得られたパケット)を処理する。データ処理部103は、無線信号送受信部102で得られたパケットの種類を判別する処理を行う。データ処理部103は、例えば、受信したパケットが制御パケットである場合には、無線制御に関する情報(ネットワークの管理に必要な情報)をネットワーク管理部104に供給する。そして、データ処理部103は、受信したパケットのデータが、外部システム30に供給するデータ(例えば、基地局20からのセンサデータ送信指示のコマンド)である場合には、当該データを外部システム30に供給する。
【0033】
ネットワーク管理部104は、データ処理部103から送付された情報を基に親ノードを決定し、パケット送信の際に送信先に関する情報(親ノードのアドレス)及び無線通信に必要な情報をパケット生成部105に送付する。また、ネットワーク管理部104は、データ処理部103から送付された情報を基に自身の隣接ノードを特定し、特定した隣接ノード情報を保持すると共に、隣接ノード情報を孤立判定部107にも送付する。さらに、ネットワーク管理部104はチャネル判定部108から送付されたチャネルに関する情報を無線信号送受信部102に通知する。
【0034】
パケット生成部105は、ネットワーク管理部104から送られてきた情報と外部システム30から供給されてきた情報を挿入したパケットを生成(供給されてきたデータのパケット化)し、生成したパケットを無線信号送受信部102に送付する。
【0035】
孤立判定部107は、ネットワーク管理部から送られてきた隣接ノード情報を基に自身が孤立ノードであるか否かを判定し、その判定結果をチャネル判定部108に通知する。例えば、孤立判定部107は、自ノードの隣接ノード数が「0」となったとき、自ノードが孤立ノードであると判定し、そうでないとき、自ノードが孤立ノードでないと判定する。
【0036】
チャネル判定部108は、孤立判定部107から送付された情報を基に自身のチャネルの変更の可否を決定し、必要な場合、チャネルを変更する。また、チャネル判定部108は、変更したチャネルに関する情報をネットワーク管理部104に通知する。チャネル判定部108の詳細については、動作の項で述べる。
【0037】
タイマー部106は、孤立判定部107から送付されたた指示に従い時間の測定を行い、その時刻経過後、孤立判定部107にその旨(タイムアウト)を通知する。
【0038】
(A-2)実施形態の動作
次に、以上のような構成を有するこの実施形態の無線通信システム1の動作を説明する。
【0039】
ネットワークNでは、
図3に示すようなトポロジで基地局20、無線通信装置10-1~10-5が配置/接続されているものとして説明する。
【0040】
ここでは、チャネル数を2つとしており、同一チャネルのノード間のみ通信をすることできる。ただし、基地局20は、全チャネルと通信可能であるものとする。
図3の状態(初期状態)では、無線通信装置10-1、10-3、10-5にch1が、無線通信装置10-2、10-4にch2が割り当てられているものとする。
【0041】
また、無線通信システム1(ネットワークN)では、各チャネル(ch1、ch2)は、
図4に示すスーパーフレーム構成を採用しているものとする。
図4において、スーパーフレーム50は、ネットワークトポロジを構成するための経路構築期間(以下、単に「経路構築期間」と呼ぶ)と、親ノード宛にデータパケットを送信しマルチホップ通信で基地局20までデータを伝送するための通信期間(以下、「データ送信期間」と呼ぶ)からなるものとする。このスーパーフレーム50を繰り返すことで、各ノードは定期的にデータを基地局20に送信することになる。
【0042】
図5は、第1の実施形態に係るスーパーフレームの具体例(2つのチャネルのスーパーフレーム)を示す説明図である。
図5に示すように、本実施形態の無線通信システム1では、チャネルごとにスーパーフレーム50(50-1、50-2)の開始タイミングが異なる。例えば、チャネルch1のスーパーフレーム50-1の経路構築期間が終了した後に、チャネルch2のスーパーフレーム50-2の経路構築期間が開始される。
【0043】
経路構築期間では、基地局20と各無線通信装置10、又は各無線通信装置10間で制御パケットの通信を行うことで、各ノードのネットワーク管理部104が、親ノードを決定し、ネットワークトポロジを構築することになる。経路構築期間が始まると、各ノードの孤立判定部107は、経路構築期間の終了を知らせるためのタイマー設定の指示を行う。タイマー部106は、孤立判定部107の判定した結果に従い、経路構築期間を終了させるタイマーをセットする。
【0044】
なお、経路構築期間では、制御パケットのやり取りを通じてネットワークトポロジを構築するが、トポロジ構築のためのルーティング方式や親ノード決定のためのメトリックについては種々様々な方法を適用することができる。例えば、ネットワーク管理部104は、単純にフラッディングを用いても良いし、メトリックとして受信信号強度を用いて、ネットワークトポロジを構築しても良い。
【0045】
そして、孤立判定部107は、タイマーにより通知される経路構築期間の終了タイミングまでに制御パケットを受信できなかった場合、自ノードが孤立ノードであると判定する。
【0046】
例えば、上記
図4のチャネルとスーパーフレーム構成を保持するネットワークN(
図3の状態)から、チャネルch1の経路構築期間を経た結果が
図6である。
【0047】
図6は、チャネルch1の経路構築期間が終了した時点でのネットワークの状態を示す説明図である。
図6において、ノード間を繋ぐ直線(通信路L1、L2)はその両端のノードが通信可能な状態にあることを示している。一方、破線(通信路L3~L5)は、両端のノードは接続可能範囲内に存在するが、チャネルが異なるために通信できなかったか、又は経路構築期間が始まっていないために通信できていないことを示していてる。つまり、
図6において、無線通信装置10-5が孤立ノードである。以下、無線通信装置10-5を例に挙げて、自身が孤立ノードである場合の動作について述べる。
【0048】
無線通信装置10-5の孤立判定部107は、チャネルch1の経路構築期間において制御パケットを受信できなかったことから自身を孤立ノードであると判断し、チャネル判定部108に孤立ノードであることを通知する。
【0049】
孤立判定部107からの通知を受けたチャネル判定部108は、自身のチャネルの変更の可否を判断する。例えば、孤立判定部107は、チャネルch2の経路構築期間がチャネルch1の経路構築期間より後に始まることを利用し、自身のチャネルをチャネルch1からチャネルch2に変更することを決定する。
【0050】
なお、チャネルやスーパーフレーム50の構成はノードが事前に知っていることを前提とし、当該情報の通知方法は限定されないものである。例えば、無線通信装置10がネットワークNに参加するためのペアリングのシーケンス時に基地局20から通知されるようにしても良いし、制御パケット内にチャネルやスーパーフレームの構成を含むようにしても良い。
【0051】
チャネル判定部108は、チャネルを変更することを決定すれば、変更後のチャネル(
図6の例では、チャネルch2)をネットワーク管理部104に通知する。ネットワーク管理部104は、チャネル判定部108からチャネルの変更を通知されると、無線信号送受信部102にチャネルの変更を通知すると共に、自身の持つネットワークの管理情報(例えば、自身の現在のチャネルやチャネルごとのスーパーフレームの構成)を更新する。
【0052】
その後、無線通信装置10-5は、チャネルch2の経路構築期間において、制御パケットの受信を試みる。
図6の例においては、無線通信装置10-5は無線通信装置10-4からの制御パケットを受信することができる。その場合、無線通信装置10-5は、制御パケットを受信すると事前に定められたアルゴリズムに従い親ノード(ここでは、無線通信装置10-4)を決定し、チャネルch2のデータ送信期間において、親ノード宛にデータパケットを送信する。
【0053】
無線通信装置10-5は、チャネルch2でデータパケットの送信完了後、次のスーパーフレーム50においてチャネルch1にチャネルを戻しても良いし、チャネルch2のままでデータ通信を続けても良い。
【0054】
(A-3)第1の実施形態の効果
第1の実施形態によれば、以下のような効果を奏することができる。
【0055】
第1の実施形態の無線通信システム1(マルチチャネル方式を用いたマルチホップ無線ネットワーク)では、無線通信装置10が、自身が孤立ノードであるか否かを判断し、自律分散的に自身のチャネルを変更することとした。
【0056】
仮に、各無線通信装置10が、自律分散的にチャネル変更を行わない場合を想定する。例えば、先述の
図6の無線通信装置10-5は、孤立ノードのままであるため、データパケットを送信することができず、基地局20でのデータ収集率の劣化、すなわち、ネットワークの品質の低下を招くことになる。
【0057】
第1の実施形態の無線通信システム1は、孤立ノードのための制御パケットを別に用意することなく、孤立ノードのデータパケットの送信を実現でき、また、基地局20が集中制御を行うことなくノードのチャネル変更を実現できる。すなわち、ネットワークに負荷をかけることなく、データ収集率を改善することができる。
【0058】
例えば、孤立ノードのための制御パケットを必要とする方式を用いたネットワークでは、孤立ノード以外のノードも孤立ノードのための制御を行う必要があり、その分だけ消費電力が増加し、各ノードの稼働時間及びネットワークの寿命が短くなる。第1の実施形態の無線通信システム1では、余計な制御パケットを用いた孤立ノードの制御が不要なため、従来の方法に比べてノードとネットワークの寿命を延ばすことが可能となる。
【0059】
(B)第2の実施形態
以下、本発明による無線通信装置、無線通信プログラム及び無線通信方法の第2の実施形態を、図面を参照しながら詳述する。
【0060】
(B-1)第2の実施形態の構成
第2の実施形態の無線通信システム1、及び無線通信装置10の構成についても、第1の実施形態と同様に、
図1、2を用いて示すことができる。
【0061】
第2の実施形態では、スーパーフレームの構成が第1の実施形態と異なるが、その他の構成は、基本的に第1の実施形態と同一である。第1の実施形態との差異は動作の項で述べる。
【0062】
(B-2)第2の実施形態の動作
次に、以上のような構成を有する第2の実施形態の無線通信システム1の動作を、図面を参照しながら説明する。
【0063】
第2の実施形態に係る無線通信システム1(マルチチャネルを用いたマルチホップ無線ネットワーク)の構成は、以下のスーパーフレームの構成を除いて、第1の実施形態の構成と同様である。
【0064】
図7は、第2の実施形態に係るスーパーフレームの構成を示す説明図である。
図7において、スーパーフレーム50Aは、経路構築期間、孤立ノードデータ送信期間、及びデータ送信期間から構成される。
【0065】
経路構築期間及びデータ送信期間は、第1の実施形態のスーパーフレーム(
図4)と基本的に同様である。
【0066】
データ送信期間は、事前にそのチャネルに割り当てられているノードでデータ送信が行われる期間である。一方、第2の実施形態に特有の孤立ノードデータ送信期間は、チャネル判定部108の判定に従い、別のチャネルから或るチャネルにチャネルを変更したノードがデータ送信を行う期間である。
【0067】
孤立ノードデータ送信期間は、独立に設けてもよいし、例えば、データ送信期間のノードの多元接続をTDMA(Time Division Muitiple Access)により行うネットワークにおいてはTDMAの空きスロットとしても良い。
【0068】
図7のスーパーフレーム50Aでは、孤立ノードのデータ送信を早期に完了できるように孤立ノードデータ送信期間を経路構築期間の直後に配置した例を示しているが、配置はこれに限定されるものではない。
【0069】
以下、第2の実施形態の動作を、先述の
図3の無線通信システム1における無線通信装置10-5と
図8のチャネルとスーパーフレームの構成を用いて説明する。
【0070】
無線通信装置10-5は、第1の実施形態と同様、チャネルch1の経路構築期間において自身が孤立ノードであることを検知すると、チャネルch2にチャネルを切り替える。
【0071】
また、チャネルch2の経路構築期間において、制御パケットを受信することができた場合、無線通信装置10-5のネットワーク管理部104は、孤立ノードデータ送信期間において、データパケットを送信するようパケット生成部105に指示する。
【0072】
無線通信装置10-5のパケット生成部105は、指示された時間(孤立ノードデータ送信期間)にデータパケットを送信する制御を行う。さらに、ネットワーク管理部104は、チャネル判定部108に、孤立ノードデータ送信期間においてデータパケットを送信したことを通知する。
【0073】
チャネル判定部108は、ネットワーク管理部104からの通知を受信した時刻において、元の割り当てられていたチャネル(ここではチャネルch1)の経路構築期間が始まっていなければ、チャネルを元のチャネルに変更する。
【0074】
チャネル判定部108はチャネルの変更を決定した場合、ネットワーク管理部104に変更したチャネルを通知し、ネットワーク管理部104は、無線信号送受信部102に変更したチャネルを通知し、自身のネットワークに関する情報を変更する。
【0075】
(B-3)第2の実施形態の効果
本発明を適用することで第1の実施形態の効果に加え、以下の効果を得ることができる。
【0076】
スーパーフレームに孤立ノードデータ送信期間を設けることにより、当該チャネルにもともと割り当てられているノードのデータ送信と衝突することなく通信することができる。これにより、通信品質が向上する。
【0077】
また、データ送信期間においてデータパケットを送信する場合、データパケットの送信を完了した時刻では既に元のチャネルの経路構築期間が始まっている場合があるが、孤立ノードデータ送信期間を設けることで、孤立ノードは早い時刻においてデータパケットを送信することが可能となり、結果、元のチャネルに変更することが容易になる。
【0078】
(C)他の実施形態
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、以下に例示するような変形実施形態も挙げることができる
(C-1)上記第1及び第2の実施形態では、対象とする無線マルチホップネットワーク(ネットワークN)に、経路構築期間とデータ送信期間、又は経路構築期間とデータ送信期間と孤立ノードデータ送信期間からなるスーパーフレーム構成を採用する例を示したが、本発明を適用するネットワークはこのような無線マルチホップネットワークに限定するものではなく、例えば、経路構築とデータ送信のタイミングが異なるネットワークであれば良い。
【0079】
(C-2)上記第1及び第2の実施形態では、対象とする無線マルチホップネットワーク(ネットワークN)に、マルチチャネルとして2チャネル用いた例を示したが、適用するチャネルの数は限定されるものにはなく、3チャネル以上のマルチチャネルのマルチホップ無線ネットワークに本発明を適用しても良い。
【0080】
その場合、孤立ノードは、チャネルの変更を任意の順番で行ってよく、例えばチャネルch1→チャネルch2→チャネルch3・・・と制御パケットを受信できるまで続けてもよいし、あるチャネルで制御パケットを受信できなければ元のチャネルに変更するようにしても良い。
【0081】
(C-3)上記第1及び2の実施形態では、1台のノード(無線通信装置10)に着目して本発明を適用する例を示したが、複数のノードに同時に適用しても良い。
【0082】
(C-4)上記第1及び2の実施形態では、孤立ノードに対して本発明を適用する例を示したが、孤立ノード以外にも本発明を適用しても良い。
【0083】
例えば、親ノードとの通信品質や基地局までのルートの通信品質が悪く、データ送信期間における自身のデータ送信タイミングでは通信に失敗すると判断されるノードに対して本発明を適用しても良い。
【0084】
さらに、チャネルごとの収容されているノード数に偏りがある場合に、チャネルごとのノード数の均等化を図るために、偏りの原因となっているノードに対して、もともとの割り当てチャネルを変更するように指示を出しても良い。その場合、基地局から送信される制御パケットに変更指示を含め、指示を受けたノードが新しい割り当てチャネルを探索する際に本発明を適用し、割り当てチャネルを変更しても良い。
【符号の説明】
【0085】
1…無線通信システム、10…無線通信装置、20…基地局、30…外部システム、50、50A…スーパーフレーム、101…アンテナ、102…無線信号送受信部、103…データ処理部、104…ネットワーク管理部、105…パケット生成部、106…タイマー部、107…孤立判定部、108…チャネル判定部、N…ネットワーク。