(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】グリース供給装置
(51)【国際特許分類】
E21D 11/00 20060101AFI20230314BHJP
【FI】
E21D11/00 B
(21)【出願番号】P 2019008719
(22)【出願日】2019-01-22
【審査請求日】2021-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】595076352
【氏名又は名称】松村石油株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000179395
【氏名又は名称】株式会社ヤマダコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩下 篤
(72)【発明者】
【氏名】福田 隆正
(72)【発明者】
【氏名】足立 英明
(72)【発明者】
【氏名】金田 修一
(72)【発明者】
【氏名】秦野 淳
(72)【発明者】
【氏名】井筒 直之
(72)【発明者】
【氏名】石川 秀和
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-096087(JP,A)
【文献】特開2017-101487(JP,A)
【文献】特開2004-162266(JP,A)
【文献】特開平08-333991(JP,A)
【文献】特開2006-336664(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/00
F16N 11/08
F16N 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テールシールにグリースを注入する複数の注入装置と、
複数の前記注入装置に前記グリースを補給する補給装置とを備えており、
前記注入装置は、注入ポンプとタンクとを備え、
前記補給装置は、補給ポンプと大型タンクとを備えており、
前記注入ポンプの下端部には、前記タンクに内接し前記タンク内のグリースの量に応じて昇降可能な内蓋が設けられ、
前記注入ポンプは、門型のフレームに昇降可能に支持され、下端部から前記タンク内のグリースを吸引して、上端部に接続された配管ホースを介してグリースを押し出す
ことを特徴とするグリース供給装置。
【請求項2】
前記タンクは、定置式であり、前記フレームの内側の設置スペースに固定されており、
前記タンクの上部は、開放され、
前記タンクの下端部側面には、前記グリースの補給口が前記内蓋の下側位置で形成されており、
前記補給口には、前記補給装置から延在する補給配管が接続される
ことを特徴とする請求項1に記載のグリース供給装置。
【請求項3】
複数の前記注入装置のうち少なくとも一つが、前記テールシールのグリース室に前記グリースを注入する本注入装置であり、残りが、前記本注入装置とは別の予備注入装置である
ことを特徴とする
請求項1または請求項2に記載のグリース供給装置。
【請求項4】
前記補給装置は、前記注入装置の後方に設けられている
ことを特徴とする
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のグリース供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テールシールにグリースを供給するグリース供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
テールシールにグリースを供給するグリース供給装置は、シールド内の切羽近傍に設けられている(特許文献1,2参照)。グリース供給装置は、充填材注入ポンプと充填材タンクとを備えている。充填材タンクは、交換可能である。充填材タンク内の充填材がなくなると、空の充填材タンクを、充填材が貯留された新たな充填材タンクに交換することで、グリースの補充を行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-98894号公報
【文献】特開平4-174194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、大断面トンネルを高速掘進する掘削工事においては、充填材タンクとして利用するドラム缶を、一日当たり複数缶使用することとなる。充填材タンクを交換するには、新しい充填材タンクを、バッテリー機関車等の軌道設備で切羽近傍まで運搬する工程、充填材タンクを交換する工程、空の充填材タンクを立坑まで引き上げる工程、搬出のドラックへの積み込む工程等の多くの作業が必要となる。そのため、作業員の増員や、軌道設備やクレーンの増強が必要となる。また、切羽近傍は、スクリュコンベアやエレクタ等の多くの機器が配置されており、充填材タンクの交換作業を行う十分なスペースの確保が困難であった。さらに、材料の供給が間に合わなければ、掘進を停止しなければならない虞があった。
【0005】
このような観点から、本発明は、グリースの補充作業を容易に行うことができるグリース供給装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するための第一の発明は、テールシールにグリースを注入する複数の注入装置と、複数の前記注入装置に前記グリースを補給する補給装置とを備えたグリース供給装置である。前記注入装置は、注入ポンプとタンクとを備え、前記補給装置は、補給ポンプと大型タンクとを備えており、前記注入ポンプの下端部には、前記タンクに内接し前記タンク内のグリースの量に応じて昇降可能な内蓋が設けられ、前記注入ポンプは、門型のフレームに昇降可能に支持され、下端部から前記タンク内のグリースを吸引して、上端部に接続された配管ホースを介してグリースを押し出すことを特徴とする。
【0007】
前記構成のグリース供給装置によれば、注入装置のタンクへのグリースの補給は、補給装置にて容易に行うことができる。また、大型タンクへのグリースの補充はまとめて大量に行うことができるので、補充作業(大型タンクを交換する場合も含む)の回数を減らすことができる。また、補給装置を切羽から離れた位置に設置すれば、補充作業(交換作業)のスペースを確保できる。したがって、グリースの補充作業の手間と時間が軽減され、補充作業を容易に行うことができる。
【0008】
本発明に係るグリース供給装置においては、前記タンクは、定置式であり、前記フレームの内側の設置スペースに固定されており、前記タンクの上部は、開放され、前記タンクの下端部側面には、前記グリースの補給口が前記内蓋の下側位置で形成されており、前記補給口には、前記補給装置から延在する補給配管が接続されるものが好ましい。
本発明に係るグリース供給装置においては、複数の前記注入装置のうち少なくとも一つが、前記テールシールのグリース室に前記グリースを注入する本注入装置であり、残りが、前記本注入装置とは別の予備注入装置であるものが好ましい。このような構成によれば、本注入装置のタンクのグリースが減った時に、予備注入装置を用いてグリース室へのグリースの注入を行うようにすれば、間断なくグリースの注入を行うことができる。また、予備注入装置を用いている間に、補給装置の大型タンクからグリースが減った注入装置のタンクに、グリースを補給することができる。
【0009】
また、本発明に係るグリース供給装置においては、前記補給装置は、前記注入装置の後方に設けられているものが好ましい。このような構成によれば、補充作業(交換作業)を、種々の機器が配置された切羽近傍から離れた、後方の広いスペースで行うことができる。したがって、グリースの補充作業が行い易く、補充作業を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るグリース供給装置によれば、グリースの補充作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係るグリース供給装置を示した概略構成図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るグリース供給装置を示したシステム構成図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るグリース供給装置の注入装置を示した側面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るグリース供給装置の補給装置を示した側面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るグリース供給装置の補給装置を示した平面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るグリース供給方法を示したフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態に係るグリース供給装置を、添付した図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、本実施形態においては、シールド掘進機1の後端部には、前後に間隔をあけて4列のテールシール2,2,2,2が設けられている。前後に隣り合うテールシール2,2間には、グリース室3が形成されている。グリース室3は、前後のテールシール2,2とセグメント4の外周面とで区画されている。グリース室3は、三列形成されており、掘進方向後方から後列グリース室3a、中列グリース室3bおよび前列グリース室3cとなっている。
【0015】
図2に示すように、後列グリース室3aには、複数(本実施形態では、18個)の注入ノズルTGR1~TGR18が設けられている。注入ノズルTGR1~TGR18は、シールド本体(外筒)の周方向に所定間隔で配置されている。中列グリース室3bには、複数(本実施形態では、18個)の注入ノズルTGM1~TGM18が設けられている。注入ノズルTGM1~TGM18は、シールド本体(外筒)の周方向に所定間隔で配置されている。前列グリース室3cには、複数(本実施形態では、18個)の注入ノズルTGF1~TGF18が設けられている。注入ノズルTGF1~TGF18は、シールド本体(外筒)の周方向に所定間隔で配置されている。各注入ノズルTGR,TGM,TGFには、圧力センサ5と開閉弁6とがそれぞれ接続されている。圧力センサ5は、各注入ノズルのグリースの吐出圧力を検出して、後記する制御装置に発信する。制御装置は、受信した圧力よりテールシール2のシール状態を検知する。
【0016】
本発明の実施形態に係るグリース供給装置10は、後列グリース室3a、中列グリース室3bおよび前列グリース室3cのそれぞれにグリース(充填材)を供給する。
図1および
図2に示すように、かかるグリース供給装置10は、注入装置11と補給装置31と制御装置(図示せず)とを備えている。
【0017】
注入装置11は、テールシール2(具体的には、テールシール2,2間のグリース室3)にグリースを注入するものである。注入装置11は、複数設けられており、それぞれが注入ポンプ12と小型タンク(タンク)13とを備えている。注入装置11は、シールド掘進機1に牽引される後続台車7a上に設置されている。注入ポンプ12は、テールシール2のシール性能を確保するためにグリース室3にグリースを高圧注入する。注入ポンプ12の注入圧力は、掘削土砂内の水圧と配管の圧力損失を加えた値となる。注入ポンプ12の下端部には、内蓋12aが設けられている。内蓋12aは、小型タンク13に内接するものであって、タンク内のグリースの量に応じて昇降可能となっている。
図3に示すように、注入ポンプ12は、門型のフレーム14に昇降可能に支持されている。注入ポンプ12は、下端部から小型タンク13内のグリースを吸引して、上端部に接続された配管ホース15を介してグリースを押し出す。フレーム14の内側には、小型タンク13の設置スペースが設けられている。
【0018】
小型タンク13は、例えば200リットルのドラム缶からなり、設置スペースに固定されている。つまり、小型タンク13は、定置式であって交換はされない。小型タンク13は、上部が開放されている。小型タンク13の下端部側面には、グリースの補給口16が形成されている。補給口16は、内蓋12aの下側に位置している。補給口16には、補給装置31から延在する補給配管38(
図1および
図2参照)が接続される。小型タンク13には、内部のグリースの量を検知するレベル計(図示せず)と検知したグリース残量を制御装置に発信するグリース量発信機(図示せず)が設けられている。
【0019】
図1および
図2に示すように、複数の注入装置11のうち少なくとも一つ(本実施形態では、三つ)は、各グリース室3にグリースを供給する複数の本注入装置17であり、残り(本実施形態では、一つ)は、本注入装置17とは別の予備注入装置18である。本注入装置17は、第一注入装置17aと第二注入装置17bと第三注入装置17cとからなる。
図2に示すように、平常運転時には、第一注入装置17aは後列グリース室3aにグリースを注入し、第二注入装置17bは中列グリース室3bにグリースを注入し、第三注入装置17cは前列グリース室3cにグリースを注入する。第一注入装置17aと第二注入装置17bと第三注入装置17cと予備注入装置18とは、同等の構成である。
【0020】
第一注入装置17aの注入ポンプ12には、後列グリース室3aの各注入ノズルTGRに繋がる第一注入配管19aが接続されている。第一注入配管19aの下流側は、分岐して各注入ノズルTGRにそれぞれ接続されている。
【0021】
第二注入装置17bの注入ポンプ12には、中列グリース室3bの各注入ノズルTGMに繋がる第二注入配管19bが接続されている。第二注入配管19bの下流側は、分岐して各注入ノズルTGMに接続されている。第二注入配管19bには、第一注入配管19aに繋がる連結配管20bが接続されている。
【0022】
第三注入装置17cの注入ポンプ12には、前列グリース室3cの各注入ノズルTGFに繋がる第三注入配管19cが接続されている。第三注入配管19cの下流側は、分岐して各注入ノズルTGFに接続されている。第三注入配管19cには、後列グリース室3aの各注入ノズルTGRに繋がる連結配管20cが接続されている。
【0023】
予備注入装置18は、第一注入装置17a、第二注入装置17bおよび第三注入装置17cのいずれかがグリースの補給や故障等の理由で停止している際に作動する注入装置である。予備注入装置18の注入ポンプ12には、第一注入配管19a、第二注入配管19bおよび第三注入配管19cに繋がる予備注入配管21が接続されている。予備注入配管21の下流側は、分岐して第一注入配管19a、第二注入配管19bおよび第三注入配管19cにそれぞれ接続されている。
【0024】
各注入配管19a,19b,19c,21には、圧力センサ22が接続されている。圧力センサ22は、各注入配管19a,19b,19c,21内のグリース圧力を検出して、制御装置51に発信する。各注入配管19a,19b,19c,21および連結配管20b,20cの適所には、開閉弁23が設けられている。開閉弁23を適宜開閉することで、各注入配管19a,19b,19c,21および連結配管20b,20cの連通状態を切り替える。
【0025】
補給装置31は、グリースが減った注入装置11にグリースを補給するものである。
図2、
図4および
図5に示すように、補給装置31は、補給ポンプ32と大型タンク33とを備えている。補給ポンプ32は、注入ポンプ12の注入圧よりも小さい補給圧にて、大型タンク33から小型タンク13にグリースを補給する。具体的には、補給ポンプ32の圧送圧力は、テールシール2のシール性能に関係しないので、後記する補給配管38内をグリースが移動できるとともに、グリースを小型タンク13内に圧入できる圧力(配管の圧力損失のみ)であればよい。なお、補給配管38の長さが大幅に長い場合や、土被り量が小さく掘削土砂内の水圧が低い場合には、補給ポンプ32の補給圧が、注入ポンプ12の注入圧よりも大きくなることもある。補給ポンプ32は、小型タンク13へのグリースの補充速度が速い性能を備えたものが好ましい。
【0026】
図4および
図5に示すように、補給ポンプ32は、門型のフレーム34に昇降可能に支持されている。具体的には、補給ポンプ32は、門型のフレームの脚部間に架け渡された昇降梁35に吊り下げられている。昇降梁35の両端部には、上下方向に延在する伸縮ジャッキ36,36が設けられている。伸縮ジャッキ36,36が伸縮することで、昇降梁35と補給ポンプ32が昇降する。補給ポンプ32は、下端部から大型タンク33内のグリースを吸引して、上端部に接続された配管ホース37を介してグリースを押し出す。補給ポンプ32の下端部には、内蓋32aが設けられている。内蓋32aは、大型タンク33に内接するものであって、タンク内のグリースの量に応じて昇降可能となっている。フレーム34の内側には、大型タンク33の設置スペースが設けられている。
【0027】
大型タンク33は、例えば1立方メートルのドラム缶からなり、設置スペースに交換可能に設置されている。大型タンク33は、グリース量が減った時に、グリースが充填された新たな大型タンク33に交換することで、グリースが補充される。なお、グリースの補充は、大型タンクの交換に限定されるものではなく、設置された大型タンクにグリースのみを充填して補充してもよい。大型タンク33は、上部が開放されており、上部開口部から補給ポンプ32が挿入されている。大型タンク33の交換時には、補給ポンプ32が大型タンク33と干渉しない高さまで補給ポンプ32を上昇させ、大型タンク33を図示しないフォークリフトで持ち上げて横に移動させる。大型タンク33は、内部のグリースの量を検知するレベル計(図示せず)と検知したグリース残量を制御装置に発信するグリース量発信機(図示せず)とを備えている。大型タンク33には、蓋体(図示せず)が設けられている。蓋体は、大型タンク33を補給装置31から取り外して運搬する際に取り付けるものであって、グレーン等で吊り上げる際の係止部が形成されている。
【0028】
図1および
図2に示すように、補給装置31の補給ポンプ32には、各注入装置11の小型タンク13に繋がる補給配管38が接続されている。補給配管38の下流側は、分岐して各小型タンク13の補給口16に接続されている。補給配管38の下流端部には、注入装置11ごとに切替弁24(
図2参照)が設けられている。グリースが補給される注入装置11の切替弁24を開状態にし、他の注入装置11の切替弁24を閉状態とすることで、所望の注入装置11の小型タンク13にグリースが流れる。
【0029】
補給装置31は、注入装置11の後方に設けられた台車7bに設置されている。補給装置31が設置される位置は、セグメント組立装置等の機器が設けられている位置よりも後方で、大型タンク33の交換スペースが確保可能な位置である。なお、補給装置31は、シールド掘進機1の後方に構築されたトンネル内に設けられた軌道設備8(
図1参照)の後方に設けてもよい。この場合、補給配管38は、軌道設備8に干渉しない位置で、軌道設備8に沿って延在する。補給配管38は、注入配管19a,19b,19c,21と比較して長くなる。
【0030】
制御装置51は、注入装置11、補給装置31および開閉弁6,23の動作を制御するものである。制御装置51は、コンピュータからなり、注入装置11、補給装置31、圧力センサ5,22、開閉弁6,23およびグリース量発信機と接続されている。制御装置51は、グリース量発信機から取得したデータに基づいて、各注入装置11の小型タンク13内のグリース残量をモニタリングしている。そして、第一注入装置17a、第二注入装置17bおよび第三注入装置17cのいずれかの小型タンク13内のグリースが所定の残量を下回ったら、該当注入装置11(たとえば第一注入装置17a)の注入ポンプ12を停止させるとともに、予備注入装置18の注入ポンプ12を作動させる制御を実行する。これと同時に、開閉弁23を適宜開閉させて、予備注入装置18からグリースを後列グリース室3aへ注入させる。さらに、予備注入装置18からグリース室3へグリースを注入する間に、補給装置31の補給ポンプ32を作動させる制御を実行し、第一注入装置17aの小型タンク13にグリースを補給する。当該小型タンク13へのグリースの補給が完了したなら、予備注入装置18の注入ポンプ12を停止させるとともに、第一注入装置17aの注入ポンプ12を作動させる制御を実行する。これと同時に、開閉弁23を適宜開閉させて、第一注入装置17aからグリースを後列グリース室3aへ注入する。
【0031】
また、制御装置51は、予備注入装置18の小型タンク13内のグリースの残量が所定の量を下回ったら、補給装置31の補給ポンプ32を作動させる制御を実行し、予備注入装置18の小型タンク13にグリースを供給する。かかるグリースの残量は、第一注入装置17a、第二注入装置17bおよび第三注入装置17cのいずれかの小型タンク13の設定容量よりも大きい容量となるように設定されている。なお、予備注入装置18へのグリースの補給は、通常運転時(第一注入装置17a、第二注入装置17bおよび第三注入装置17cの作動中)に行うように設定されている。
【0032】
次に、前記構成のグリース供給装置10を用いたグリース供給方法を、
図6を参照しながら説明する。
図6に示すように、かかるグリース供給方法は、切替工程と補給工程と再切替工程と交換工程とを備えている。
【0033】
切替工程は、グリースが減った本注入装置17からのグリース供給を、予備注入装置18からのグリース供給へと切り替える工程である(STEP1)。切替工程は、本注入装置17のいずれかのグリースが所定量より少なくなると行われる。切替工程は、本注入装置17のいずれかのグリースが所定の残量を下回ったことが検知されると、制御装置51によって自動的に行われる。切替工程では、グリースが減った本注入装置17からグリース室3へのグリースの注入を停止させる制御を実行するとともに、予備注入装置18からグリース室3へのグリースの注入を開始する制御を実行する。これによって、グリース室3へのグリースの注入が中断されることなく、間断なく行われる。
【0034】
補給工程は、グリースの注入が停止された本注入装置17の小型タンク13に、補給装置31の大型タンク33から新たなグリースを補給する工程である(STEP2)。補給工程は、制御装置51によって自動的に行われる。補給工程では、グリースが減った注入装置11の切替弁24を開状態にするとともに、他の注入装置11の切替弁24を閉状態とする制御を実行し、補給ポンプ32を作動させる制御を実行する。これによって、補給すべき注入装置11の小型タンク13にグリースが補給される。
【0035】
なお、セグメント4の組立時などの本注入装置17が停止しているときは、各小型タンク13のレベル計によって計測されたグリース残量を比較して、残量が少ない小型タンク13から優先してグリースを補給する。
【0036】
再切替工程は、予備注入装置18からのグリース供給を、グリースが補給された本注入装置17からのグリース供給へと切り替える工程である(STEP3)。補給装置31から注入装置11へのグリースの補給が完了したら行われる。再切替工程は、補給が為された注入装置11のグリースが所定の充填量(充満値)に達したことが検知されると、制御装置51によって自動的に行われる。再切替工程では、予備注入装置18からグリース室3へのグリースの注入を停止させる制御を実行するとともに、グリースが補給された本注入装置17からグリース室3へのグリースの注入を開始させる制御を実行する。
【0037】
交換工程は、大型タンク33を交換する工程である。交換工程は、補給装置31のグリースが所定量より少なくなると行われる。制御装置51は、補給装置31の大型タンク33のグリースが所定の残量を下回ったことを検知すると、それを表示する。作業員は、当該表示を確認し、補給工程が行われていないときに大型タンク33の交換を行う。大型タンク33の交換を行うに際しては、作業員が補給装置31の伸縮ジャッキ36,36を伸長させて、補給ポンプ32を大型タンク33と干渉しない高さまで上昇させる。そして、フォークリフトやローラーコンベアを用いて、大型タンク33を横に移動させる。その後、大型タンク33に蓋体を取り付けクレーンで吊り上げて、トラック等に搬送する。そして、グリースが充填されている新たな大型タンクを、クレーンやフォークリフトを用いて、補給装置31の設置スペースまで移動させる。その後、補給ポンプ32を下降させて、補給可能な状態となる。交換工程は、注入装置11でグリース室3にグリースを注入している間に並行して行う。
【0038】
以下に、本実施形態に係るグリース供給装置10およびグリース供給方法の作用効果を説明する。かかるグリース供給装置10およびグリース供給方法によれば、グリースのドラム缶の交換は大型タンク33を交換すれば良いので、交換作業の回数を減らすことができる。また、補給装置31は、注入装置の後方に設置されているので、交換作業のスペースを確保し易い。したがって、クレーンやフォークリフトを用いて大型タンクの交換(グリースの補充)を容易に行うことができる。
【0039】
さらに、大型タンク33を軌道設備よりも後方に設けた場合には、軌道設備で大型タンク33を運搬する必要がないので、軌道設備やクレーンの増強が不要である。また、大型タンク33の運搬距離を短くできるので、グリースの補充作業の手間と時間を低減できる。したがって、補充作業をより一層容易に行うことができる。
【0040】
注入ポンプ12は、テールシール2のシール性能を確保するためにグリースを高圧注入できるものであるが、補給ポンプ32は、グリースを小型タンク13に圧送できれば良いので、小さい圧送能力を備えていればよい。したがって、補給ポンプ32の調達コストを、高圧注入機能を備えたポンプよりも抑えることができる。
【0041】
また、従来、空ドラムは、ドラム缶底部に残るグリースも含めて、廃棄物として処分する必要があったが、本実施形態の大型タンク33は再利用できるので、廃棄物が低減され、環境に優しい施工を行うことができる。さらに、大型タンク33を再利用することで、納入時重量と返納時重量を計測して、使用したグリース分のみ補充することができる。これによって、廃棄するグリースがなく、グリースのコストおよび廃棄物の発生を低減できる。
【0042】
さらに、補給装置31から送られたグリースは注入装置11の小型タンク13の下端部から補給されるので、グリースへのエアの混入を防止することができる。したがって、注入ポンプ12による確実なグリースの圧送を行うことができる。
【0043】
本実施形態においては、本注入装置17の小型タンク13のグリースが減った時に、予備注入装置18を用いてグリース室3へのグリースの注入を行うことで、グリースの注入を連続して行うことができる。また、予備注入装置18を用いてグリースを注入している間に、グリースが減った注入装置11の小型タンク13に、グリースを補給することができるので、時間ロスが発生しない。
【0044】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定する趣旨ではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。たとえば、前記実施形態では、本注入装置17の小型タンク13内のグリースの残量が残量を下回った時に、補給装置31からグリースを補給するようにしているが、これに限定されるものではない。本注入装置17を一定時間使用した後に、予備注入装置18に切り替えて、補給装置31から本注入装置17にグリースを補給するようにしてもよい。また、小型タンク13の重量を計測しておき、重量が所定値よりも小さくなったときに、予備注入装置18に切り替えて、補給装置31から本注入装置17にグリースを補給するようにしてもよい。
【0045】
また、前記実施形態では、補給装置31の大型タンク33を交換することでグリースの補充を行っているが、これに限定されるものではない。大型タンク33を定置式のものとして、大型タンク33にグリースを直接補充するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 シールド掘進機
2 テールシール
3 グリース室
10 グリース供給装置
11 注入装置
12 注入ポンプ
13 小型タンク(タンク)
17 本注入装置
18 予備注入装置
31 補給装置
32 補給ポンプ
33 大型タンク