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  • 特許-焙煎装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】焙煎装置
(51)【国際特許分類】
   A23N 12/10 20060101AFI20230314BHJP
【FI】
A23N12/10 Z
A23N12/10 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020117745
(22)【出願日】2020-07-08
(65)【公開番号】P2022015107
(43)【公開日】2022-01-21
【審査請求日】2021-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】598171830
【氏名又は名称】エジソンハード株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591112278
【氏名又は名称】大正電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(74)【代理人】
【識別番号】100148910
【弁理士】
【氏名又は名称】宮澤 岳志
(72)【発明者】
【氏名】藤田 英人
(72)【発明者】
【氏名】小川 泰孝
【審査官】木戸 優華
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-123143(JP,A)
【文献】特開2000-236861(JP,A)
【文献】特開2004-024094(JP,A)
【文献】特開2005-137304(JP,A)
【文献】特開平06-209749(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0374361(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0304886(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0142078(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1427807(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23N 12/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーヒー豆その他の穀類または茶葉等の焙煎対象物を加熱し焙煎するためのものであって、
焙煎対象物を内部に収容しその内部の雰囲気を大気圧よりも高圧としながら内部の雰囲気が流出入しないように維持できる密閉可能な収容容器と、
前記収容容器の内部に配設され、密閉した収容容器の内部に収容した焙煎対象物を加熱する加熱機構とを具備し、
焙煎対象物を加熱し焙煎する全期間に亘り、前記収容容器を密閉したまま収容容器内の雰囲気を外部に漏出させず、なおかつ収容容器内の圧力を0.5MPa以上の高圧に保ち、その状態で収容容器内で焙煎した対象物を得る焙煎装置。
【請求項2】
前記収容容器の内部に不活性ガスを注入するガス注入機構を具備し、
前記収容容器の内部の空気の一部または全部を前記不活性ガスで置換した状態で密閉した収容容器の内部の焙煎対象物を前記加熱機構により加熱し焙煎する請求項1記載の焙煎装置。
【請求項3】
焙煎対象物を加熱し焙煎する際の前記収容容器の内部の圧力を制御可能な請求項1または2記載の焙煎装置。
【請求項4】
焙煎対象物を加熱し焙煎する際の前記加熱機構の温度を制御可能な請求項1、2または3記載の焙煎装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーヒー豆その他の穀類または茶葉等の焙煎対象物を加熱し焙煎するための焙煎装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ドラムの内にコーヒー豆等の焙煎対象物を収め、ドラムを回転させながら焙煎対象物を加熱して焙煎を行う焙煎装置が公知である(例えば、下記特許文献を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-083716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既存の焙煎装置では、熱風即ち高熱の空気が焙煎対象物に当たってこれを加熱する。焙煎対象物に吹き当たった空気は、ダクトを通じて大気に放出される。その放出される空気には、焙煎対象物の香りや風味を司る成分が含まれている。つまり、焙煎の過程で、焙煎対象物の香りや風味の一部を逃がし、損なっていることになる。
【0005】
以上の問題に着目してなされた本発明は、焙煎する対象物の成分を極力逃がさないような焙煎装置を実現しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、コーヒー豆その他の穀類または茶葉等の焙煎対象物を加熱し焙煎するためのものであって、焙煎対象物を内部に収容しその内部の雰囲気を大気圧よりも高圧としながら内部の雰囲気が流出入しないように維持できる密閉可能な収容容器と、前記収容容器の内部に配設され、密閉した収容容器の内部に収容した焙煎対象物を加熱する加熱機構とを具備し、焙煎対象物を加熱し焙煎する全期間に亘り、前記収容容器を密閉したまま収容容器内の雰囲気を外部に漏出させず、なおかつ収容容器内の圧力を0.5MPa以上の高圧に保ち、その状態で収容容器内で焙煎した対象物を得る焙煎装置を構成した。
【0007】
加えて、前記収容容器の内部に不活性ガスを注入するガス注入機構を具備し、前記収容容器の内部の空気の一部または全部を前記不活性ガスで置換した状態で密閉した収容容器の内部の焙煎対象物を前記加熱機構により加熱し焙煎するものとすることが好ましい。
【0008】
また、焙煎対象物を加熱して焙煎する際、前記収容容器の内部の圧力や前記加熱機構の温度を柔軟に制御可能であればより好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、焙煎する対象物の成分を極力逃がさないような焙煎装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態の焙煎装置の正断面図。
図2】同実施形態の焙煎装置の側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。図1に本実施形態の焙煎装置の正断面図を、図2に同実施形態の焙煎装置の側断面図を、それぞれ示す。本実施形態の焙煎装置は、焙煎対象物4、特にコーヒー豆を内部に収容し、その内部の雰囲気を大気圧よりも高圧としながら内部の雰囲気が流出入しないように維持できる密閉可能な収容容器1と、収容容器1の内部に不活性ガス、特に窒素ガスを注入するガス注入機構2と、密閉した収容容器1の内部で焙煎対象物4を加熱する加熱機構3とを具備してなる。
【0012】
収容容器1は、内部空間を囲繞する本体11と、その本体11の正面側を開閉する扉12とを備えている。扉12を開けば、内部空間を外部に開放することができる。扉12を閉じれば、内部空間を外部から隔絶して閉止することができる。収容容器1は、その内部空間の雰囲気の圧力を大気圧を超える高圧に保つことが可能な耐圧性能を有している。例えば、収容容器1は、最高使用圧力を0.5MPaとし、内部空間の雰囲気の圧力を0.5MPaまで増大させることができる。収容容器1が、その内部空間の雰囲気の圧力を少なくとも0.5MPa以上、1MPa以上、または1.5MPa以上の高圧に保つことが可能な耐圧性能を有するものであってもよい。
【0013】
収容容器1の本体11及び扉12にはそれぞれ断熱材13を配しており、収容容器1の内部空間と外部との間での熱の出入りを抑制している。因みに、図2に示すように、扉12には、これを閉じた状態で外部から内部空間を覗き見ることのできるようにサイトホール14を設けてある。
【0014】
図1に示すように、ガス注入機構2は、大気圧よりも高圧の不活性ガスの供給源となるボンベ等(図示せず)と、当該ボンベ等に接続し収容容器1の本体11の一方側から不活性ガスを内部空間に導入する導入路21と、収容容器1の本体11の他方側から内部空間の雰囲気を外部に排出させる排出路22と、導入路21及び排出路22を開閉するそれぞれのバルブ23、24とを要素とする。
【0015】
収容容器1の扉12を閉じた状態で、導入路21及び排出路22上の両バルブ23、24を開弁すれば、ボンベ等から供給される不活性ガスにより収容容器1の内部空間の空気を置換することができる。さらに、排出路22上のバルブ24を開弁したまま導入路21上のバルブ23を閉弁して、高圧の不活性ガスを収容容器1の内部空間に充填することもできる。両バルブ23、24を閉弁すれば、導入路21及び排出路22を通じた雰囲気の流出入を抑止し、収容容器1の内部空間を気密に維持することができる。
【0016】
加熱機構3は、その内に焙煎対象物4を収める回転可能なドラム(焙煎カゴ)31と、ドラム31内の焙煎対象物4を加熱するヒータ32とを要素とする。ドラム31は、正面側が開通し背面側が閉塞した円筒状をなす、銅、鉄、ステンレス鋼等を素材とする金属製の部材であり、前後方向に伸びる略水平な軸Aを中心に回動する。図1に示すように、ドラム31は、その中心軸Aと略並行に延伸する駆動ローラ33及び従動ローラ34により下方から支持されている。各ローラ33、34の外周面はそれぞれ、ドラム31の外周壁に外接している。駆動ローラ33は、伝動機構35を介して駆動モータ36に接続しており、駆動モータ36から回転駆動力の供給を受けて自転し、ドラム31の外周壁を転がすようにしてドラム31を回転させる。従動ローラ34は、ドラム31の外周壁を支えながらドラム31に従動して自転する。なお、ドラム31の外周壁に、これを貫通する多数の小孔を穿っていることがある。
【0017】
ヒータ32は、ドラム31の直下、駆動ローラ33と従動ローラ34との間の領域にあって、ドラム31及び当該ドラム31に収められた焙煎対象物4を加熱する。ヒータ32は、例えば通電することで発熱するカートリッジヒータであり、収容容器1の内部空間及びドラム31内の雰囲気の温度を250℃以上まで高めることが可能である。
【0018】
図1に示すように、収容容器1の内部には、温度センサ及び圧力センサ15を設置してある。温度センサ15は、収容容器1の内部空間の現在の温度を検出し、圧力センサ15は、収容容器1の内部空間の現在の圧力を検出する。本実施形態の焙煎装置の制御を司るコントローラ(図示せず)は、駆動モータ36を起動してドラム31を回転させつつ、ヒータ32に通電してヒータ32を発熱させ、ドラム31内に収めている焙煎対象物4を加熱し、焙煎する。その際、温度センサ15を介して収容容器1の内部温度を計測し、その温度が所望の目標値に追従するようにヒータ32の出力、換言すればヒータ32に通電する電流及び/または電圧の大きさを増減調節する。並びに、同コントローラは、圧力センサ15を介して収容容器1の内部圧力を計測し、その圧力が所望の目標値に追従するように導入路21上のバルブ23を開閉し若しくはその開度を拡縮させ、及び/または、排出路22上のバルブ24を開閉し若しくはその開度を拡縮させる。
【0019】
本実施形態では、コーヒー豆その他の穀類または茶葉等の焙煎対象物4を加熱し焙煎するためのものであって、焙煎対象物4を内部に収容しその内部の雰囲気を大気圧よりも高圧としながら内部の雰囲気が流出入しないように維持できる密閉可能な収容容器1と、前記収容容器1の内部に配設され、密閉した収容容器1の内部に収容した焙煎対象物4を加熱する加熱機構3とを具備する焙煎装置を構成した。
【0020】
本実施形態の焙煎装置では、焙煎対象物4の加熱、焙煎中の少なくとも一時期または全期間に亘り、収容容器1の内部の雰囲気を高圧に維持し、かつ気密を維持してその雰囲気を外部に漏出させない。これにより、焙煎対象物4の焙煎の過程で、その香りや風味等の成分を極力逃さず、焙煎対象物4に封じ込めることができ、従来の焙煎装置では得られない味わい豊かなコーヒー等を生成することが可能となる。
【0021】
また、例えばスモークチップその他の、加熱することで香りや風味等の何らかの成分を放つような付加物を、焙煎対象物4とともに収容容器1(のドラム31)内に投入してこれらを同時に加熱、焙煎することで、当該付加物から放たれた成分を焙煎対象物4に圧をかけて封入、含浸させ、焙煎対象物4自体のものとは別の香りや風味等を焙煎対象物4に新たに付加する、いわばフレーバーコーヒーやフレーバーティーのようなものを作製するようなことも可能になる。
【0022】
加えて、本実施形態の焙煎装置は、前記収容容器1の内部に不活性ガスを注入するガス注入機構2を具備している。そして、焙煎対象物4(及び、付加物)を加熱し焙煎する際に、収容容器1の内部の空気の一部または全部を不活性ガスで置換した状態で、密閉した収容容器1の内部の焙煎対象物4を加熱機構3により加熱する。加熱中の収容容器1内部の雰囲気に占める不活性ガスの割合(分圧)は任意に調整することができ、例えば50%程度としてもよいし、99%強としてもよい。本実施形態によれば、加熱中の焙煎対象物4の酸化を効果的に防止し、その香りや風味の劣化を抑制することができる。
【0023】
本実施形態の焙煎装置は、焙煎対象物4を加熱し焙煎する際の前記収容容器1の内部の圧力を柔軟に制御可能である。従って、焙煎時の雰囲気の圧力の調整を通じて、様々な香りや味の焙煎対象物4を生成することが可能である。
【0024】
並びに、本実施形態の焙煎装置は、焙煎対象物4を加熱し焙煎する際の前記加熱機構3の温度を柔軟に制御可能である。従って、焙煎時の温度の調整を通じて、様々な香りや味の焙煎対象物4を生成することが可能である。
【0025】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。各部の具体的構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変形が可能である。
【符号の説明】
【0026】
1…収容容器
2…ガス注入機構
21…導入路
22…排出路
23、24…バルブ
3…加熱機構
31…ドラム
32…ヒータ
4…焙煎対象物
図1
図2