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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】乗員推進装置
(51)【国際特許分類】
   B64C 29/00 20060101AFI20230314BHJP
   B64C 39/00 20060101ALI20230314BHJP
   B64D 27/24 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
B64C29/00 B
B64C39/00
B64D27/24
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021167981
(22)【出願日】2021-10-13
(62)【分割の表示】P 2019503791の分割
【原出願日】2017-04-06
(65)【公開番号】P2022009082
(43)【公開日】2022-01-14
【審査請求日】2021-10-25
(31)【優先権主張番号】1653136
(32)【優先日】2016-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(31)【優先権主張番号】1654171
(32)【優先日】2016-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】518356305
【氏名又は名称】ジップエール
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フランキー ザパタ
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0062443(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0049304(US,A1)
【文献】米国特許第05395076(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0139130(US,A1)
【文献】国際公開第2015/056124(WO,A1)
【文献】特表2014-531362(JP,A)
【文献】国際公開第2014/195660(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0142644(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 29/00
B64C 39/00
B64D 27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
台及び推力ユニットを含む本体を備える推進装置であって、前記推力ユニットは、前記台に対して垂直な軸に沿って気体流を排出するように構成された第1熱スラスタを含み、前記推進装置の前記本体は前記推力ユニットの支持手段を含み、前記推力ユニットは、前記推進装置の姿勢を修正するように構成された第1電気補助スラスタをみ、
前記第1電気補助スラスタは前記台に対して垂直な前記軸に平行な軸に沿って気体流を排出するように構成され、
前記第1熱スラスタは前記第1電気補助スラスタより前記推進装置の前記本体の重心の近くに位置し、
前記第1電気補助スラスタは前記推進装置の前記本体の第1端に位置する、推進装置。
【請求項2】
前記推進置の前記本体と協働する姿勢センサと、前記姿勢センサと協働し、前記姿勢センサによって伝えられた情報から前記第1電気補助スラスタの動力コマンドを生成するように構成された処理手段とを備える、請求項1に記載の推進装置。
【請求項3】
前記推力ユニットは
前記台に対して垂直な前記軸に平行な軸に沿って気体流を排出する第2熱スラスタと
前記台に対して垂直な前記軸に平行な軸に沿って気体流を排出する第2電気補助スラスタと、を備え、
前記第1および第2熱スラスタならびに前記第1および第2電気補助スラスタは、それらのそれぞれの気体流排出軸が同一平面内に配置されるように互いに設けられ
前記第2熱スラスタは前記第1および第2電気補助スラスタより前記推進装置の前記本体の重心の近くに位置し、
前記第2電気補助スラスタは前記推進装置の前記本体の前記第1端とは反対側の第2端に位置する、請求項1または2に記載の推進装置。
【請求項4】
前記第1および第2熱スラスタならびに前記第1および第2電気補助スラスタの気体流排出の軸を備える前記平面は、前記推進装置の前記本体の重心を備える、請求項に記載の推進装置。
【請求項5】
前記第1および第2熱スラスタは、前記第1および第2熱スラスタならびに前記第1および第2電気補助スラスタのそれぞれの気体流排出の軸に平行であり、かつ前記推進装置の前記本体の心を通過する軸の両側に設けられる、請求項に記載の推進装置。
【請求項6】
前記台は員を収容するように設けられる、請求項1からのいずれかに記載の推進装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗員が敏捷性および体格によって、空中で非常に自由自在に動くことを可能にするための乗員推進装置に関する。
【0002】
本発明はまた、可能な限り多くのユーザが非常に簡単に利用することができる装置を提供する。
【背景技術】
【0003】
空間をできる限り自由に動くことは常に人類の関心事であり、実際には事実上達成できない夢である。この目的をかなえるために、最も基本的なものから最も洗練されたものまで多くの機械が考案され、より成功を収めたものも、あまり成功しなかったものもある。
【0004】
したがって、前世紀の60年代には、水面、または時には厳しい環境において動くために、米国特許第3243144号または米国特許第3381917号に記載されたような推進装置が考案された。そのような装置は、乗員を位置付けることができるハーネスまたは座席の形状の本体を備えている。そのような本体は、具体的には加圧された流体を排出して乗員を空中で支持するのに十分な推力を生み出す一対のノズルの形状の推力ユニットと協働している。乗員の飛行を簡単にし、それに伴う身体的努力を軽減するために、ノズルは乗員と本体の集合体の重心よりも明確に上部に配置され、より正確には乗員の肩の高さに配置されている。推力ユニットはまた、気体または引火性の液体として供給される流体を加圧し、かつ乗員の背中に配置されているステーションを備える。このステーションは、乗員を離陸させるためにノズルに十分に供給を行い、乗員を一種の人間ロケットにすることができる。このような装置の低い自律性と危険性とにより、それらは比較的内輪だけのものになった。
【0005】
より最近では、米国特許第7258301号または米国特許出願公開第2008/0014811号に記載されたような装置が、この教示から発想を得てそれらの危険性を低減するような適合をしている。この場合の加圧ステーションは離れている。さらには、加圧された流体はタービニングにより加圧された水であり、この点において、米国特許第3277858号に示されているように、潜水者の身体的努力を低減するために、加圧した水を利用しようとする試みから主に発想を得ている。したがって、米国特許第7258301号または米国特許出願公開第2008/0014811号は、消防ホースのような供給パイプによって、加圧された水がリモート加圧ステーションから輸送されるように適合された、先行モデルに似た空中推進装置を提案している。装置の軌道を決定するためのノズルの方向づけを可能にする手段だけでなくノズルの構成は、乗員が簡単に操作し続けられるように意図的に維持されている。しかし、特に離陸の場面では、乗員は、硬い土台に足を乗せた状態で、最初の立位姿勢を求められる。動くために簡素化された乗員の身体的努力は、水面上または水面下での動きの自由度および多様性の損失となる。さらには、米国特許第7258301号によるような、「装置+ステーション」システムは、蝶番式ノズルを備える装置の設計および専用加圧ステーションの設計のために、高価なものである。空間を動くことができるという事実自体には、娯楽的側面がある。しかし、装置の重心よりも上部に配置されたノズルの構成によって、乗員は仮想のクレーンフックで肩から吊るされている感覚を覚え、落下、即興または曲芸的な型の姿勢といった多くの興奮を奪われる。さらには、向きおよび動きの多様性が制限される。例えば、公知の装置では、「カニのように」動くこと、または、水面上での直線軌道から、水面下での複数の動きが続く潜水体勢へと瞬時に移ることは容易ではない。
【0006】
これらの欠点をほとんど克服するために、「フライボード(Flyboard)」として知られる特に効果的な装置が開発された。これは米国特許第8336805号に具体的に記載されており世界的に成功している。したがって図1はそのような推進装置10の実施形態を表す。この装置10は、乗員1が位置することが可能な、実質的に平面の台11の形状の主要本体を備える。図1に記載された推進装置は台11と協働した推力ユニットを備える。このような推力ユニットは台11の底面に固定された一対の主要ノズル12aおよび12bを含む。図1によれば、このような装置の推力ユニットはまた、その操作を容易にするための二つの補助ノズル13aおよび13bを備えることができる。補助ノズルは、固定されず、各々が乗員1の前腕または手によって保持可能であるように設計されている。十分な推力を供給し、飛行そして移動を可能にするために、装置10はまた、加圧流体例えば水を収集して主要および補助ノズルに分配するための手段を備えている。そのような流体は好ましくはリモート加圧ステーション(図1には不図示)から可とう性供給パイプ2によって運ばれる。そのような供給パイプは消防ホース、または加圧流体によってもたらされる圧力に耐えられるだけの強度がある他のどのような材料からも製造可能である。収集部14yは、例えば供給パイプ2を受け入れるように適合された溝によって供給パイプ2の先端部2aが接続される基部14cを有していてもよい。図1によれば、基部14cから加圧流体を収集しアームを通して各主要ノズル12aおよび12bに加圧流体を分配するために、収集部14yはY型に似た形状をしていてもよい。収集部14yは、主要ノズルに接続されるか、または、台11の底面に実質的に垂直な軸に沿って主要ノズルを方向づけるために相応しいエルボ15を介して主要ノズルと協働する。アームは、アームにおけるピボット式接続によって、エルボ15を介して主要ノズルに接続されている。そのような構成によって、収集部14yのアームに実質的に平行な軸Fの周りの自由回転が可能になる。したがって、収集部は、過度な傾斜時に台11の底面が果たす制止を考慮して、軸Fの周りで実質的に自由な回転r1を描くことができる。さらには、そのようなピボット式接続によって、ユーザは、水面から容易に「離陸」することが可能になり、方向付けおよび移動のための高い能力を得る。台11の底面に面する軸Fの周りの収集部の相対的な回転r1、収集部と供給パイプと2の接続部の連続的な回転は、台11の回転をもたらさない。供給パイプ2の先端部2aは、有利に、収集部14yとその基部14cでピボット式接続によって協働することができ、供給パイプ2に実質的に平行な軸Cの周りの自由回転r2が可能となる。したがって、装置は、供給パイプ2に捻じれまたは過度な負荷を引き起こすことなく軸Cの周りを自在に回転することができる。
【0007】
加圧流体を補助ノズル13aおよび13bに分配するために、一例として図1に示すように、有利に可とう性パイプの形状である補助チューブ18aおよび18bが加圧流体を収集部14yから補助ノズルへと供給できるように設けられてもよい。乗員1の邪魔にならないように補助パイプは支持手段19(ストラップ、ハーネスなど)を用いて背中に沿って肩まで導かれてもよい。乗員はまた前腕に補助ノズルを固定する手段を使用できる。
【0008】
台11は、乗員を台11の上面上に保持するための手段を備えることができる。したがって、台上の乗員の好ましい姿勢に応じて、保持手段は、図1に示すように、フットストラップとしても知られる靴、または例えばウェイクボードの実施で見られるものと同様の種類の固定ブーツ16を含んでもよい。
【0009】
図1に関連して説明される装置10のような推進装置は、流体加圧ステーションが推進装置の操作のために十分に加圧された流体を供給できる限り、どんな流体加圧ステーションからでも供給を受けることができる。推進装置、加圧ステーション、および加圧流体を運ぶために該装置およびステーションと協働する供給パイプを備える推進システム全体の費用の増加を覚悟で、このステーションを離してこの使用の専用とすることができる。そのようなステーションは、変形例として、費用を削減するために、国際公開第2013/041787号に記載されたような、適合されたパーソナルウォータークラフト(以下「PWC」)の使用を伴う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図1は好ましくは、水面上で動くために、使用される流体が加圧された水であるシステムを表す。図1に関連して説明された推進装置によって、水中および/または水面上での容易な動きが可能になり、ユーザは非常に自由に様々な姿勢をとることが可能になるものの、一定の人々にとって、該装置はいくつかの欠点を有する可能性がある。
【0011】
従来の装置のように、上記装置を有利にリモート流体加圧ステーションに接続するパイプによって装置に運ばれた加圧流体、特には水が、収集部を介してノズルに供給される。そのような解決法は、特に水域の表面上でうまく作用し、または水域の表面下でさえも作用する。したがって、水域上に浮かぶ加圧ステーション、例えば上記パイプと流体排出口で協働するように適合されたパーソナルウォータークラフトは、水を収集し、タービニングによってそれを加圧し、パイプを介してそれを運ぶ。
【0012】
加圧流体を運ぶパイプによって妨害されることなく、海上だけでなく陸上においても移動し、したがって非常に高い高度まで上昇するために、米国特許第3243144号または米国特許第3381917号に関連して上述した実験的な解決法が開発された。それらによれば、乗員は、ノズルを備えるハーネスと協働し、該ノズルは、実質的に乗員の肩の高さに位置し、背中のタンクに含まれる可燃性燃料の燃焼によって運ばれる気体排出物を供給される。加えて、他の関係者によって開発されてきた解決法があり、それらは、潜在的な市場に対して適切ではないため、または少数の特権者にこの解決法を留保するという使用条件を必要とするために、一部の者の機密となっている。したがって、米国特許第4447024号において述べられた、乗員が位置することができる架台を備える装置に言及する。上記架台は内部に乗員の足に実質的に沿って位置するジェットエンジンを含む。そのような解決手段は非常に嵩張りあまり良い可動性を有しない。事実、架台は非常に包囲的であってジェットエンジンの寸法は巨大である。そのような技術的な教示は、大多数にとって適切な解決法として優れたものではなく、そのデザインによってレジャーおよび曲芸に対して不適切なままである。対照的に、航空機のようにジェットエンジンを含む全翼機を開発したものもいる。そのような翼の全長は実質的に人間の身長と同じであり、翼はハーネスの助けによって操縦者の背中に配置される。したがって操縦者は航空機の胴体へと変身する。しかし、そのような装置は、明らかに直線移動に適しており、翼を装備した乗員が例えば飛行機またはヘリコプターのような航空機から投下されることを要する。事実、地面から離陸すること、また地面の近くでアクロバティックな体勢をとることは不可能である。さらには、着陸にはパラシュートが必要である。
【0013】
要するに、現在のところ、フライボードと同様のモビリティ機能を提供する技術的かつ現実的な解決法は存在しない。フライボードは、非常に小さい寸法を有し、事実上無制限の曲芸の機会、または陸上における高精度で高速または低速の移動を操縦者または乗員に提供し、限られた予算で広範な使用を可能にする。
【0014】
本発明によって、そのような目的が達成され、公知の解決法の欠点が解決される。その結果、乗員の移動と娯楽に関する新しい展望を誰もが利用できる。想定される用途に応じて増加する可能性があるのはおそらく自律性のみである。特にスラスタまたはバッテリ面での技術の進歩は本発明の乗員推進装置の適切性を確実にするのみである。さらには、本発明は、1人以上の乗員を運ぶために異なる台の構成に適用され、乗員の敏捷性に関わらず、身体的な挑戦またはスリルを求めようと、オートバイまたは自動車の乗員または操縦者のような快適さを求めようと、全ての乗員に新たな輸送方法を提供する。
【0015】
本発明が提供する数多くの利点の中で、以下のことに言及できる。
-本発明の装置の操作は特に直観的であって、より具体的かつ非限定的な例として、第1の実施形態によるような装置の操作は、ここまで操作性に関して参照基準となっているフライボードの操作に非常に類似する。
-本発明の装置の構成は、どのような構成であれ、推力ユニットが部分的に故障した場合にも操作可能であり続け、したがって操縦者およびあらゆる乗員の安全性を維持する。
-本発明の装置の実施形態およびそれに関連する付属品により、上記装置の自律性、したがって飛行時間および/または距離を容易に増加させることが可能である。
-そのような装置の設計は、特に数平方メートルのオーダーの小さな領域からの離陸、またはそのような領域への着陸を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
このために、まず、乗員推進装置は、乗員を収容するように設けられた台と推力ユニットとを含む本体を備える。そのような装置が特に娯楽活動に利用されるために、
-上記推力ユニットは、少なくとも2つのスラスタを備える少なくとも1つの推力サブユニットを備え、
-各スラスタからの気体流排出の方向は、台の縦平面に実質的に垂直の軸に沿って方向付けられることが可能であり、
-上記装置の本体は推力ユニットの支持手段を備え、支持手段は台と協働し、支持手段は、推力ユニットを支持するように、および、各スラスタの排出ノズルからの気体流排出の方向と、装置の本体の重心を通る中央平面への上記気体流排出の方向の正射影との間の距離を最小化するように設けられる。
【0017】
そのような装置の本体の構成に応じて、装置は台と協働する第2推力サブユニットを含んでいてもよく、推力ユニットの支持手段は第1推力サブユニットと平行に第2推力ユニットを支持するように設けられ、装置の本体の重心を通る中央平面と、各スラスタの排出ノズルによる気体流排出の方向との間の距離を最小化する。
【0018】
そのような推進装置の機動性を向上させるために、上記乗員が上記台上に実質的に直立した姿勢で立っていて、かつスラスタの排出ノズルが地面に向けられている場合に、装置の低点に対する以下の高さに乗員の足が位置を占めるように、台が設けられてもよい。
-装置の本体の重心の、上記低点に対する高さに実質的に等しいまたはより高く、
-装置と乗員とを含む集合体の重心の、上記低点に対する高さよりも低い高さ。
【0019】
そのような推進装置の推力ユニットを保護するために、装置の本体は突出手段を備えてもよく、突出手段は、台と協働し、地面と装置の推力ユニットとの間のどんな衝撃または直接的な接触も防ぐように設けられる。
【0020】
第1の実施形態によれば、上記スラスタの1つはプロペラスラスタであってもよい。
【0021】
変形例として、別の実施形態によれば、上記スラスタの1つはターボジェットであってもよい。
【0022】
有利に、推進装置の動きを妨害しないように、推力ユニットのスラスタは反対に回転するように設けられてもよい。
【0023】
変形例として、または付加的に、支持手段および/または推力ユニットのスラスタは、上記スラスタの各排出ノズルによる気体流排出の方向を台の中央軸に平行な軸に対して-45から+45の間の角度に方向付けるように設けられてもよい。
【0024】
乗員が身体的に無傷であることを保つために、本発明の推進装置は、台と協働するかまたは上記台と共に単一の物理的エンティティを形成し、推力ユニットと乗員との間のどんな直接的な接触も防ぐように設けられるフェアリングを備えていてもよい。さらに、上記フェアリングは、推力ユニットのスラスタの流体吸入口を部分的に隠して、上記流体吸入口を通した異物の吸入を防ぐように設けられるグレーチングを備えていてもよい。
【0025】
特に曲線軌道に沿って推進装置を容易に操作することを可能にするために、推力ユニットは経路修正補助スラスタを備えていてもよく、スラスタの支持手段は上記経路修正補助スラスタと協働するように設けられる。上記支持手段は有利に、上記経路修正補助スラスタを台の縦平面に対して実質的に平行な方向に保つように設けられてもよい。
【0026】
台の構成に応じて、特に、オートバイまたは自動車のような、対応する陸上輸送手段のフレームのように台が延在する場合、乗員は自らの体の向きのみでは台の姿勢に十分に影響を与えられない可能性がある。そのような推進装置の操作を容易にするために、推力ユニットは姿勢修正補助スラスタを備えていてもよく、スラスタの支持手段は上記姿勢修正補助スラスタと協働するように設けられる。上記支持手段は、有利に上記姿勢修正補助スラスタを台の縦平面に対して実質的に垂直な方向に保つように設けられてもよい。
【0027】
本発明の推進装置の推力ユニットに供給を行うために、上記装置は、有利に、上記スラスタに燃料を供給するために、推力ユニットのスラスタと流体的に連通している燃料タンクをさらに備えていてもよく、上記タンクは装置の本体または乗員と協働する。
【0028】
乗員がそのようなタンクをバックパックのように自身で運ぶことができるように、そのようなタンクは、可とう性を有する容器と、乗員の体と協働するためのハーネスとを備えていてもよく、ハーネスの留め具は、緊急事態において上記乗員が容易にはずせるように設けられている。
【0029】
上記乗員が自身の推進装置を操作できるように、推進装置は、乗員の身振りを命令に変換する命令のマン・マシンインターフェイスと、上記生成された命令を処理し、上記生成された命令に基づきスラスタの動力コマンドを生成する手段とを備えていてもよく、上記スラスタの動力コマンドは通信手段によって推力ユニットに伝えられる。
【0030】
そのような推進装置は、上記本体の重心に実質的に位置して装置の本体と協働し、処理手段と協働する姿勢および/または軌道センサをさらに備えていてもよく、処理手段は、マン・マシンインターフェイスによって生成された命令と共に、姿勢および/または軌道センサから伝えられた情報からスラスタの動力コマンドを生成する。
【0031】
装置が経路修正補助スラスタを備える場合、主に気象条件に関連して経路を失うことに対して本発明の推進装置の乗員が手動補正を行わなくて済むために、装置の本体に存在する処理手段は、マン・マシンインターフェイスにより生成された命令がない場合に、上記補助スラスタの1つを作動させて上記本体の現在の軌道を維持するために、姿勢および/または軌道センサによって伝えられた情報に基づいて、上記経路修正補助スラスタの動力コマンドを生成することができる。
【0032】
同様に、装置が姿勢修正補助スラスタを備える場合に、主に気象条件に関連して姿勢の維持ができないことに対して本発明の推進装置の乗員が手動補正を行わなくて済むために、装置の本体に存在する処理手段は、マン・マシンインターフェイスにより生成された命令がない場合に、上記姿勢修正補助スラスタの1つを作動させて上記本体の実質的に水平な姿勢を維持するために、姿勢および/または軌道センサによって伝えられた情報に基づいて、上記姿勢修正補助スラスタの動力コマンドを生成することができる。
【0033】
好ましい実施形態の一例として、そのような命令のマン・マシンインターフェイスは、乗員の1本以上の指によって作動可能なトリガを備えていてもよい。したがって、処理ユニットは、上記トリガの動きに従って推力ユニットによって生成される動力を調整するために、スラスタの動力コマンドを生成することができる。
【0034】
変形例として、または付加的に、上記命令のマン・マシンインターフェイスは、乗員の手が乗員の前腕と一直線に並ぶ基準位置と比較して、該前腕の縦軸に対する乗員の手首によって描かれる角度を測定する角度測定センサを備えていてもよい。したがって、処理ユニットは、手首の動きに従って補助スラスタによって生成される動力を調整するために、補助スラスタの動力コマンドを生成することができる。
【0035】
推進装置の本体に乗員を保持するために、推進装置は、上記乗員が台上に確実に保持されるようにする手段を有利に含んでいてもよい。
【0036】
さらなる特徴および利点は、以下の説明、および添付の図を検討することによってより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】前述した、リモート加圧ステーションによって加圧された流体を使用する従来技術による乗員推進装置を示す。
図2A図1に関連して説明した装置の台の寸法に近い寸法の台を有する本発明の乗員推進装置の第1の実施形態を示す。
図2B図1に関連して説明した装置の台の寸法に近い寸法の台を有する本発明の乗員推進装置の第1の実施形態を示す。
図2C図1に関連して説明した装置の台の寸法に近い寸法の台を有する本発明の乗員推進装置の第1の実施形態を示す。
図2D図1に関連して説明した装置の台の寸法に近い寸法の台を有する本発明の乗員推進装置の第1の実施形態を示す。
図2E図1に関連して説明した装置の台の寸法に近い寸法の台を有する本発明の乗員推進装置の第1の実施形態を示す。
図2F図1に関連して説明した装置の台の寸法に近い寸法の台を有する本発明の乗員推進装置の第1の実施形態を示す。
図3A】陸上オートバイのフレームの寸法に近い寸法の台を有する本発明の乗員推進装置の第2の実施形態を示す。
図3B】陸上オートバイのフレームの寸法に近い寸法の台を有する本発明の乗員推進装置の第2の実施形態を示す。
図3C】陸上オートバイのフレームの寸法に近い寸法の台を有する本発明の乗員推進装置の第2の実施形態を示す。
図3D】陸上オートバイのフレームの寸法に近い寸法の台を有する本発明の乗員推進装置の第2の実施形態を示す。
図3E】陸上オートバイのフレームの寸法に近い寸法の台を有する本発明の乗員推進装置の第2の実施形態を示す。
図3F】陸上オートバイのフレームの寸法に近い寸法の台を有する本発明の乗員推進装置の第2の実施形態を示す。
図4】陸上自動車のフレームの構成に実質的に近い構成の台を有する本発明の推進装置の第3の実施形態の推力ユニットの構成を非常に簡略して示す。
図5】乗員によって出された命令を、本発明の装置の推力ユニットの制御要素に伝達するためのマン・マシンインターフェイスの実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図2Aは、本発明の乗員1を推進するための装置10の好ましい第1の実施形態の斜視図である。このような装置10は、乗員1が位置することができる台11の形状を主に有する主要本体10aを備える。本発明は、台11の寸法および装置10の推力ユニット12の動力に応じて、複数の乗員が台11上に同時に位置してもよいを提供する。この目的のために、台11は、図2Dにおいてより明確に具体的に示されるように、乗員1の足または靴を受け止めるように設けられる1つ以上の表面11aを有する。
【0039】
本発明は、そのような表面11aが乗員1を台11上で保持する手段16を備えていてもよいことを提供する。したがって、本発明の装置10の台11上の乗員1が望む姿勢に応じて、保持手段16は、例えばウェイクボードの実施で見られる種類の固定靴または固定ブーツと同様のものを含んでもよい。乗員が、「脚を曲げた」姿勢で、膝をついて、または座って保持されるかによって、他の種類の保持手段が好ましい可能性がある。
【0040】
そのような台11は有利に、単独でまたは組み合わせて、乗員の体重を支持するために、したがって過度な変形を防ぐために十分な剛性を有する1つ以上の材料から作製されてもよい。
【0041】
図2Aおよび2Dに関連して説明される推進装置10の本体10aは台11と協働する推力ユニット12を備える。
【0042】
本明細書の残りの部分において、次の用語は以下の意味を有するものとする。
-「中央平面」PMは、特に台11に垂直な平面を意味し、装置10の本体10aの左半分と右半分を分離し、該半分は必ずしも均等ではない。
-「横平面」PTは、中央平面に垂直な平面を意味し、推進装置10の本体10aを2つの半分に分離し、一方は上記本体の前部を含み、他方は後部を含み、該半分は必ずしも均等ではない。
-「縦平面」PLは横平面および中央平面に垂直な平面を意味し、装置10の本体10aの上半分と下半分を分離し、該半分は必ずしも均等ではない。
【0043】
これらの平面PM、PT、PLは図2Aにおいて点線で示される。同様に、
-横平面および縦平面の両方に属する任意の軸を「横軸」と呼び、
-中央平面および縦平面の両方に属する任意の軸を「縦軸」と呼び、
-「中央軸」は中央平面および横平面の両方に属する任意の軸を「中央軸」と呼ぶ。
【0044】
本発明の推進装置10は、簡潔さのために図2Aに図示されない他の付属要素を備え、それは、例えば、推力ユニット12に供給を行うための燃料タンク、または乗員1が装置10の推力ユニット12とやり取りできるためのリモートコントロール型マン・マシンインターフェイスである。そのようなマン・マシンインターフェイスは図5に関連して説明される。
【0045】
図2B、2C、および2Dは、それぞれ、そのような本発明の第1の推進装置10の側面図および正面図である。そのような装置は、図1に関連して従来技術の一例として示されたフライボードの寸法に非常に近い寸法を有する。図2A、2B、および2Cを考慮して、そのような装置10の本体10aは、飛行時に有利に引っ込めることができ、台11と協働し、地面と装置10の推力ユニット12との間の衝撃または直接的な接触を防ぐように設けられる突出手段17を備えることがわかる。このような手段17は、推力ユニット12の排出ノズルが地面にぶつかることを防ぐように、また、図2Aから2Cに図示されてない地面または離陸ステーション上に装置がある場合に、一定の安定性を提供し、乗員が実質的に台11上に位置することができるように、特に十分な長さの4つの脚部を含んでもよい。変形例として、このような手段17は、地面の性質に応じた一定の安定性または装置の支持を確保できるスキーまたは他の要素を含んでもよい。
【0046】
図2Dは本発明のそのような装置10の本体10aの分解図である。
【0047】
図2Dが非限定的な例として示すように、公知の装置とは異なり、推力ユニット12は有利に、それぞれに2つのスラスタを備える一対の推力サブユニット12aおよび12bを含む。したがって、第1推力サブユニット12aは2つのスラスタ12a1および12a2を備える。同じことは推力サブユニット12bにも当てはまり、推力サブユニット12bは2つのスラスタ12b1および12b2を備える。変形例として、そのようなサブユニットは3つ以上のスラスタを備えていてもよい。第2の変形例によれば、推力ユニット12は有利に、1つ以上のスラスタを備えるさらに多くの推力サブユニットを備えていてもよい。図2Dに関連して説明された構成例は、本発明を限定するものではないが、推力ユニットの他の構成に対して一定の質を有する。事実、装置10は、例えば熱ターボジェット型のような、スラスタを1つのみに削減した推力ユニットで動くことが可能である。しかし、この構成は大きすぎるため、乗員1はフライボード上で動く場合のように容易に動くことができない。事実、そのような単独のスラスタの長さは、装置10およびその乗員1を空中に推進するのに十分な推力を出力することをスラスタに可能にさせるために、1メートルのオーダーまたはそれより長い。同様に、それぞれがただ1つのスラスタを備える2つのサブユニットを備える推力ユニット12を想像することができる。各スラスタの容積は削減されるであろうが、前述した単独スラスタの構成のように、そのような推力ユニット12には安全性の点において重大な欠点が残される。事実、2つのスラスタの1つが故障した場合、、ユニットの全推力は、乗員1を空中に保ち十分な機動性を維持するために不十分であろう。
【0048】
これら2つの可能な構成とは異なり、図2Dに関連して示したような1つの構成は特に興味深い折衷を提供する。その構成によれば、推力ユニット12は、一方が少なくとも2つのスラスタ12a1および12a2を、他方が少なくとも2つのスラスタ12b1および12b2をそれぞれに備える少なくとも2つの推力サブユニット12aおよび12bを備える。
【0049】
したがって、例えばジェットエンジンのような4つのスラスタが占める空間は所望の使用方法と完全に適合する。さらには、スラスタの1つが故障しても推進装置10は完全に機動性を有する。
【0050】
フライボードに近い機動性の状態を提供するために、推力ユニット12のスラスタは有利に装置10の本体10aの中心にできる限り近く配置される。したがって、好ましくは、図2Cおよび2Dが示すように、乗員1の足または靴を受け止めるように台11上に設けられる表面11aは、有利に推力ユニット12の両側に設けられる。これによって、乗員の体によって、装置10の姿勢を変えて、以下のように動くために、乗員が克服しなければならない慣性モーメントが低減される。
-乗員1が装置10の前方に向かって自身の体重をかけた場合、まっすぐ前に動く。
-乗員1が装置10の後方に自身の体重をかけた場合、後方に動く。
-乗員1が装置10の前方におよび装置10の一方または他方側に自身の体重をかけた場合、斜め前方に動く。
-乗員1が装置10の後方におよび装置10の一方または他方側に自身の体重をかけた場合、斜め後方に動く。
【0051】
特に容易に旋回して曲線に沿って移動することを可能にするために、推力ユニット12は、有利に2つの補助経路修正スラスタ19aおよび19bを備えていてもよい。これらの補助経路修正スラスタは有利に台の横軸に沿って偏心して配置される。非同期的に作動することで、これらのスラスタはそれぞれに曲線軌道を発現させるのに十分なトルクを生成する。変形例としてまたは付加的に、上記補助スラスタの使用を除外するために、本発明は、推力サブユニット12a、12bのスラスタの全てまたはいくつかに、例えば水上オートバイの流体排出口を方向付ける円錐型のような、方向付け可能な流体排出口を付加することを可能にすることを提供し、該流体排出口は、ピボット式接続または嵌込み式接続などの1つ以上の適合された各機械的接続を介して、関連する気体流排出ノズルまたはスラスタと協働する。
【0052】
推力ユニットの様々なスラスタが支持手段14によって保持及び支持されており、その構造の一例について後述する。これらの手段14は、台11を支持し、自由度を有しない有利な機械的接続、または嵌込み式接続を介して突出手段17と協働する枠と機能的に同等なものを構成し、そのような装置10の推力ユニット12に基礎および保護を提供する。
【0053】
図2Dで説明された実施形態に関して、本発明の推進装置10の本体10aは、場合によっては互いに接続された1つ以上のフェアリング要素の形状を有するフェアリング13uを備えていてもよく、該フェアリング13uは、可逆的または不可逆的な嵌込み式機械的接続(例えば、溶接、ねじ止め)によって台11および/または支持手段14と協働するか、または台11および/または支持手段14と共に単一の物理的エンティティを構成する。そのようなフェアリング13uの機能は推力ユニット12と乗員1との間の直接的な接触を防ぐことである。したがって、そのようなフェアリング13uの形態(寸法、形状)は、推力ユニット12の寸法に合うように、美的な外観を与えるように、および/または推進装置の空気力学的性質を促進するように設計され、同時に乗員に対する不便は制限される。推力ユニット12の外壁の温度は急速に非常に高くなり得るため、乗員が負傷するどんな危険性も防ぐために、乗員と推力ユニットとの間のどんな接触も制限可能であることは実際重要である。さらには、乗員1の足の間に実質的に位置する装置10の本体10aの上部は、流体吸入口18、この例では空気吸入口を含み、スラスタの各流体吸入口を介してスラスタに流体を供給する。スラスタは実際ローターを含み、乗員1が誤って手を流体吸入口18に挿入してしまった場合に該ローターによって乗員1が負傷する可能性がある。さらには、流体吸入口18を通じた異物(葉、破片、鳥など)の吸入は推力ユニット12の操作に影響を与え得る。この理由のために、フェアリング13uは有利にグレーチング(図2Dには不図示)を含んでいてもよく、グレーチングの構成は、吸入口18を部分的に隠して、吸入口18が空気吸入口18を通じた異物の吸入を制限または防止することを可能にし、同時に外部とスラスタとの間の流体のやり取りを維持する。図2Dはまた下部フェアリング13dの使用を示し、下部フェアリング13dは、任意の嵌込み式機械的接続によって協働し、乗員を保護する機能、または推力サブユニット12aおよび12bのスラスタの流体排出口もしくは気体排出ノズルの周囲環境を保護する機能も果たす。事実、上記排出ノズルの至近距離内の温度は特に高くなり得る。そのような開口したフェアリングは周方向または横方向の保護を提供する。上部フェアリングと呼ぶことができるフェアリング13u同様、フェアリング13dの幾何学的形状も、有利に、推力ユニットの気体排出に影響を与えないように、および装置10の本体10aの空気力学的性質を改善するように設計され得る。フェアリング要素13uおよび13dを形成するために想定される材料は、フェアリング要素の至近距離内の推力ユニット12の最高温度に依存し、該温度がフェアリング要素の構造に損失を与えないことを保証するように選択される。
【0054】
また、図2Dは、推力サブユニット12aおよび12bとは異なり、中央ではなく側方に配置された経路修正補助スラスタ19aおよび19bの存在を示す。ここで、図2Eに示される推力ユニットの例の詳細な提示に関連して、上記補助スラスタがもたらす寄与について説明する。
【0055】
簡潔さのために、図2Dは電子的要素の大部分を示していない。一例として、図2Eに関連した推力ユニット12の説明からわかるように、本発明の推進装置10の本体10aは、乗員からのスラスタの動力の制御命令を処理する手段を備えるかまたはそれと協働する。さらには、そのような処理手段は、非網羅的に、傾斜計、加速度計、高度計、全地球測位システム(GPS)受信機、ピトープローブまたはピトー管、および/またはジャイロスコープのような、装置10の本体10aの姿勢、速度、またはより全体的に軌道に関する情報を伝えることができる1つ以上のセンサと協働するかまたはそれを含んでいてもよい。したがって、上記処理手段は、乗員の命令および/または上記センサによって生成される情報に基づき、推力ユニット12のスラスタ、具体的に推力サブユニット12aおよび12bのスラスタの動力コマンドを生成するように設計される。これは、経路修正補助スラスタ19aおよび19bの動力コマンドの生成にも同様に適用される。上記処理手段は、特にセンサが電子カードに含まれる場合に、1つ以上の該電子カードの形態をとり、有利に推進装置10の本体10aの慣性中心CG10の近くに位置してもよい。図2Cは、推進装置10の実施形態の本体10aの重心CG10の仮想位置を具体的に示す。本明細書の残りの部分を通じて、「推進装置の本体の処理手段または推進装置の本体に存在する処理手段」という用語は、特に以下を可能にする任意の構成を包含していると考える。
-本体10a内または上に、例えば台11上および/または支持手段14、15a、15b上に上記処理手段を固定すること、および/または
-上記処理手段が乗員によって接続および/または切断されるように設けられる場合および/または上記処理手段が上記乗員によって運ばれる場合に、端子ブロックまたは結合によって上記処理手段を上記センサおよび/またはスラスタに接続すること。
【0056】
ここで、図2Cおよび2Eに関連して、本発明の第1の実施形態による推進装置10の推力ユニット12およびそのような推力ユニットの支持手段14の好ましい実施形態の構造について検討する。
【0057】
既に述べたように、そのような推力ユニット12は、それぞれに2つのスラスタを備える2つの推力サブユニット12aおよび12bを備え、該2つのスラスタは、推力サブユニット12aにおいて12a1および12a2を付され、推力サブユニット12bにおいて12b1および12b2を付されている。
【0058】
そのようなスラスタは、プロペラまたはローターを有するスラスタ、または有利にこの例では、図2Eに示すように、ターボジェットを含んでもよい。ターボジェットは、航空機に一般的に使用される熱機関であり、酸化剤、この例では本体10aの流体吸入口18を通して吸入された周囲の空気と、ケロシンまたは同等物などの燃料とを反応させ、燃料に含まれるポテンシャルエネルギーを運動エネルギーに転換する。この運動エネルギーは、気体排出物の排出とは反対方向に弾性媒体に反力を生成する。この結果、スラスタの流体吸入口とその排出ノズルとの間の一定量の空気が加速され、上記排出ノズルにおける膨張によって推力が生成される。そのようなスラスタはブレードまたはローターを有する空気圧縮機を使用する。上記のケロシンの代わりにどんな種類の燃料も使用することができる。
【0059】
図2C、2Dおよび2Eによると、推力サブユニット12aおよび12bの各スラスタは、方向付け可能であり、通常の操作において、台11の縦平面に対して実質的に垂直な軸AL12a(スラスタ12a2に対して)またはAL12b(スラスタ12b1に対して)に沿って、すなわち乗員1の縦軸AL1に対して実質的に平行に方向付けられることがわかる。また、上記スラスタは、上記スラスタの各々の排出ノズルが、乗員1の足から頭に向うように方向付けられた縦軸AL1とは逆方向に気体流を排出するように方向付けられる。このようにして、スラスタは台11を介して乗員1を「押す」。上述のように、特に装置10の操作性を改善するために、その主要本体10aは推力ユニット12の支持手段14を備える。支持手段14は、台11と協働し、本体10aの中心にできる限り近くスラスタを集めることで推力ユニット12を支持するように設けられる。したがって、支持手段14は、スラスタ12a1、12a2、12b1、12b2の各排出ノズルからの気体流排出の方向AL12a、AL12bと、装置10の本体10aの重心CG10を通る仮想中央平面PMへの上記方向の各正射影との間の距離をできる限り最小化し、上記気体流排出の方向は中央平面PMに実質的に平行である。そのような装置の場合、より正確には、支持手段14は、上記排出方向と、重心CG10を通る本体10aの仮想中央軸AM10との間の距離を最小化するように設けられる。したがって、乗員の体を用いて、装置10aの姿勢を変え、その結果、推進装置10の軌道を変えるために、乗員が克服しなければならない慣性モーメントが低減される。したがって、そのような推進装置を使用することで得られる娯楽性は増大する。図2C、2Dおよび2Eに示される好ましい例によれば、本体10aの重心CG10は、2つの推力サブユニット12aおよび12bのスラスタの中心に実質的に位置している。
【0060】
好ましいが非限定的な例として、支持手段14は推力サブユニットごとに1つのプレートを備えていてもよく、その上には、嵌込み式機械的接続によって、各サブユニットのスラスタをそれぞれに取り囲むカラーが取り付けられている。このようにして、同じ推力サブユニットのスラスタは一体的に保持されて平行な縦軸に沿って方向付けられる。したがって、2つのカラー14b1および14b2はそれぞれにスラスタ12b1および12b2を取り囲む。2つのカラーはまたプレート14b上にも固定される。これは、サブユニット12aのスラスタにも同様に適用される。2つのカラー14a1および14a2はそれぞれにスラスタ12a1および12a2を取り囲む。該カラーは、図2Eにおいてほとんどの部分が隠れているプレート14aと協働する。同じサブユニットのスラスタが互いにできる限り近くなるように、プレート14aおよび14bの厚みが中央部分で最小限まで低減されている。同様に、支持手段14は、上記推力サブユニットが互いにできる限り近くなる仕方で、上記プレートの隣接部が協働できるように設けられる。プレート14bの隣接部14mおよびプレート14aの隣接部14fは、有利にそれぞれ中空のシリンダ形状を有してもよい。また、上記シリンダの断面は、有利に上記隣接部の一方が他方の隣接部に入るように選択される。隣接部14fおよび14mの回転軸に垂直な軸に沿った各シリンダの貫通孔と、例えばピンとによって、2つの推力サブユニットを接続することが可能である。変形例として、2つのプレート14aおよび14bを接続するために、溶接による嵌込み式機械的接続を形成することが可能である。これらの2つのプレートによって、推力サブユニット12aおよび12bの各スラスタと、装置10の本体10aの重心CG10を通る台11の中央平面との間の距離を最小限に低減できる。
【0061】
2つの推力サブユニットのスラスタが、反対に回転するように取り付けられた圧縮機ローターを備える場合、スラスタノズルの排出方向、例えば図2EにおいてAL12aおよびAL12bを付された方向は、互いに平行であり、台11の縦平面に対して実質的に垂直であり得る。
【0062】
一方で、各スラスタ内のローターの回転は、推力ユニット12自体の周り、したがって装置10の本体10aの周りの回転を引き起こし得る。この欠点を克服するために、本発明は、各推力サブユニット12aおよび12bの各スラスタの排出ノズルによる気体流排出の方向を方向付け、該気体流排出の方向が本体10aの台11の中央軸AM10に対して-10から+10の間の角度βを描くように、支持手段14を設けることができることを提供する。図2Bに示すように、上記2つのサブユニット12aおよび12bの排出方向をわずかに交差させ、図2Bにおいて「2.β」を付されたβの2倍に起因する角度を形成することが可能である。絶対値が4度である角度βは、スラスタが反対に回転するように取り付けられていない場合、推力ユニット12の有効な動力に過度に低下させることなく、前述した効果を相殺するのに十分である。変形例としてその他のβの値を採用してもよい。図2Eに示すように、プレート14aおよび14bの隣接部14mおよび14fにおける複数の穴によって所望の角度βを選ぶことが可能である。変形例として、上述した通り、プレートは、工場内で溶接によって互いに方向付けられてもよい。
【0063】
経路修正補助スラスタ19aおよび19bを推力サブユニット12aおよび12bに接続して曲線軌道を可能にするために、本発明の装置10の支持手段14は、経路修正補助スラスタ19aおよび19bと協働して台11の縦軸に実質的に平行な推力方向に該経路修正補助スラスタを保つための補助支持手段15aおよび15bと協働する。したがって、図2Eが非限定的な例として示すように、プレート14aおよび14bはそれぞれアーム15aおよび15bまたはより一般的に横方向の延長部と協働してもよい。図2Eによれば、プレート14aおよび14bは前述の隣接部と正反対の位置に端部14dを備える。前述の隣接部と同様、上記端部は延長部15aおよび15bの隣接部15apおよび15bpの中空環状部よりも実質的に小さいまたは大きい中空環状部を有する。したがって、プレートと延長部とは、場合によっては溶接で完成する嵌込み式接続によって、またはプレート14aおよび14bの端部14dおよび延長部15aおよび15bの隣接部15apおよび15bpに設けられた貫通孔を貫通するピンによって協働してもよい。したがって、後者の構成によって上記プレートに対する延長部の相対的な位置または向きの調整が可能になる。各延長部15aまたは15bは、経路修正補助スラスタ19aまたは19bを取り囲むまたはより一般的に保持するように設けられる端部15adまたは15bdを備える。好ましくは、そのような補助スラスタは1つ以上の電気タービンを含んでもよい。そのような技術的な選択により、ターボジェットなどの特定の熱スラスタよりも特に応答性の高い経路修正補助スラスタ19aおよび19bが提供される。
【0064】
しかし、経路修正熱スラスタ19aおよび19bの構成は、各電気タービンの代わりに、推力サブユニット12aおよび12bのスラスタに対して実質的に平行に方向付けられるターボスラスタを使用することを含んでもよい。高い応答性を維持するために、水上オートバイの流体排出口を方向付ける円錐型のような、方向付け可能な流体排出口が、熱補助スラスタの気体排出ノズルと協働してもよい。上記円錐を台11の中央平面に方向付けることで、電気タービンを使用することで達成される全出力に非常近いものが得られる。
【0065】
本発明の推進装置の本体10aが、乗員1の命令だけでなく、空間内の本体10aの姿勢および/または軌道のセンサの命令を処理する手段を有利に備える場合に、本発明は、特に気象条件が好ましくない場合に、上記乗員が経路を維持することを補助するために、経路修正補助スラスタ19aおよび19bの存在を使用することを提供する。事実、強くて不規則な風は、乗員の意思に反して、推進装置が軌道を逸らすことにつながり得る。図5に関連して後で説明するように、乗員は命令インターフェイスの助けによって補正を行うことができるが、この補正は長い行程で面倒であり得る。本発明は、したがって、所望の軌道の変更を示す乗員からの命令がない場合に、経路修正補助スラスタ19aおよび19bが現在の経路を維持するために、本体10aに存在する処理手段を、経路修正補助スラスタ19aおよび19bに向けた動力コマンドを生成するように適合させることを提案する。例として、突風により乗員の右手側に推進装置10の軌道が逸れがちである場合、本体10aに存在する上記処理手段は、経路修正補助スラスタ19b、すなわち乗員1の右手側に位置するスラスタに向けた動力コマンドを生成し、この不測の軌道変更を相殺するのに十分に補助スラスタ19bを作動させる。経路修正補助スラスタ19bは、通常の軌道が回復され次第、スイッチオフされる。このようにして、推進装置10は自身の現在の軌道を自動的に維持し、上記乗員はあらゆる補正の努力から解放される。乗員の知らない間に、そのような経路修正補助スラスタ19aおよび19bが気象擾乱に対して補正を行うために、該経路修正補助スラスタに必要とされる高い応答性を念頭におくと、電気補助スラスタを支持する選択はこの実施形態によって特に正当化される。
【0066】
さらには、図2Eに関連して説明される装置10の支持手段14によって支持される推力ユニット12の実施形態は、支持手段14が、一対の突起部またはスペーサ15pおよび15sをそれぞれに有する延長部15aおよび15bを備えることを示す。突起部またはスペーサ15pおよび15sは、台11と協働するように各延長部15aまたは15bの縦軸に垂直な軸に沿って位置する。したがって、突起部またはスペーサ15pおよび15sはねじ止めによって固定されてもよく、この例で、上記突起部はねじ山をつけられている。本発明は支持手段14と台11との間の他の任意の協働方法を提供できる。
【0067】
図2Eによれば、突起部15pおよび15sは、各延長部15aまたは15b上に、該延長部の端部および隣接部のそれぞれの近くに位置する。これらの突起部は、台11と共に組み立てられる機能を有することに加えて、乗員1の足を受け入れるように台11上に形成された表面11aの、推進装置10の本体10aの重心CG10に対する相対的な高さを決定することを可能にする。
【0068】
内部機密の試験および試作の後に、本体10aの重心CG10に対する表面11aの相対的な高さが推進装置10の操作に影響を与えることを発見した。したがって、図2Cに具体的に示すように、乗員1が実質的に直立した姿勢をとり、かつ推力サブユニット12aおよび12bのスラスタの排出ノズルが地面に向けて方向付けられる場合に、上記表面が装置10の本体10aの低点B(突出手段17の端部によって決定される)に対して以下の高さhpを有するように、台11を配置することが特に有利である。
-装置10の本体10aの重心CG10の、低点Bに対する高さh10に実質的に等しいまたはそれより高く、かつ
-装置10と乗員1とを含む集合体の重心CGの、低点Bに対する高さhよりも低い高さ。
【0069】
したがって、突起部15pおよび15sのそれぞれの高さは、高さhpを調整することでこの構成を調整することを可能にする。図2Cに示すように、重心CG10の数センチメートル上に位置する表面11aは、推進装置10に優れた操作性を与える。
【0070】
主要スラスタに、すなわち推力サブユニット12aおよび12bのスラスタに燃料を供給するために、本発明は、上記燃料が、簡潔さのために図示されない1つ以上のタンクに運ばれてもよいことを提供する。非限定的な例として、そのようなタンクは、剛性または可とう性を有する容器、充填口、および排出口を備えていてもよい。したがって、充填口を介してそのようなタンクに液体燃料または気体燃料を供給することが可能になる。非限定的な例として、そのような燃料は、現在、従来のスラスタに一般的に適しているケロシンであってもよい。しかし、変形例として他の燃料を使用してもよい。そして、上記燃料は、簡潔さのために図示されない供給パイプと協働するように設けられる排出口を介して上記タンクから運ばれ、供給パイプの各端は、燃料を収集するために、タンクに、より正確には排出口に接続され、スラスタに燃料を供給するために、同じく図示されない収集手段に接続されている。そのような収集手段は各熱スラスタに燃料を供給する。したがって、それは上記スラスタおよびタンクと流体接続を介して協働する。
【0071】
火災が起こった場合すぐに上記タンクを投棄し得るために、そのようなタンクは、可能であればラリー(Rallye)タイプのストラップまたはハーネスの手段によってバックパックまたはパラシュートとして乗員が運ぶように設計されてもよい。そのような種類のハーネスが、事実、緊急事態において上記乗員が容易にはずせるように設計された留め具を備えることは公知である。また、そのようなタンクは、乗員の快適性を向上させるために、および例えば落下時の乗員の負傷の危険性を低減するために、可とう性を有する容器を備えていてもよい。変形例として、または付加的に、タンクは台11にまたは推力ユニットの支持手段14に固定されてもよい。好ましい実施形態によれば、タンクが乗員1によって運ばれるように設けられている場合は、上記タンクの容器は、燃料の充填前に事前にガス抜きされた袋のように有利に可とう性を有してもよい。そのような選択により乗員の快適性および特に落下時の乗員の安全性が改善され、スラスタに燃料の供給がなされないどんな危険も防止される。
【0072】
本発明はまた、電気エネルギー源が有利に推進装置10の主要本体10aに組み込まれていてもよいことを提供する。そのような電源は1つ以上のバッテリおよび/または光電池を含んでもよく、光電池は、乗員の命令を処理して推力ユニットの動力コマンドを生成する手段のような低エネルギー消費電子要素に供給を行うための補助電源として機能する。対照的に、前述の経路修正補助スラスタ19aおよび19bは、電動である場合、1つ以上のバッテリのようなより大きな電源を必要とする。
【0073】
推力ユニットの動力を制御し、また移動の軌道を決定することを可能にするために、本発明の推進装置10の乗員1は有利に命令のマン・マシンインターフェイスを使用してもよく、その主要な機能は乗員1の身振りを特定の命令に変換することである。図5は、乗員1の手に保持されるようにまたは訓練期間にインストラクターの手に保持されるように設けられるリモートコントロールの形態の上記マン・マシンインターフェイス60の例を示す。この非限定的な例によれば、インターフェイス60は銃型リモートコントロールに例えられ得る。それは具体的にトリガ61を備え、トリガの動きは、乗員1またはインストラクターがトリガを作動させた場合、推力ユニット12の動力を増大させる命令として解釈され、またユーザが上記トリガを徐々に放す場合、上記動力を低減させる命令として解釈されてもよい。また、そのようなインターフェイス60は、場合によっては1つのスラスタまたは別のスラスタへの供給を切断するために推力ユニット12を始動または停止させる命令を作成する、図5に図示されない、1つ以上のボタン、例えばプッシュボタンのような他の要素を備えていてもよい。インターフェイス60はまた、上記ユーザの手が自身の前腕と一直線に並ぶ基準位置と比較して、該前腕の縦軸に対して、インターフェイス60を手で保持するユーザの手首の1つが描く角度を測定する、ジャイロスコープ、傾斜計、または角度測定センサなどの1つ以上のセンサを含んでいてもよい。したがって、上記ユーザがインターフェイス60を右手で保持する場合、ユーザの体に向かって内側に手首を方向付けることで、装置10を左に旋回させたいという望みを示すことができる。逆に、ユーザの手首の外側への動きによって、装置10の軌道をユーザの右側に方向付けたいという望みを示すことができる。変形例として、または付加的に、インターフェイス60は傾斜計を含んでいてもよい。したがって、ユーザの右または左の方へのインターフェイス60の傾斜は、装置10の軌道を方向付ける命令に変換されてもよい。そして、そのような方向付け命令は、前述の補助スラスタ19aおよび19bの動力コマンドに変換される。そのようなユーザの身振りを解釈するために、図5に例として説明されたインターフェイス60は電子手段62を備える。電子手段62は、推進装置10の本体10aに搭載されて命令を処理する手段によって解釈され得る該命令を生成するために、インターフェイス60のトリガ61および他のボタンおよび/またはセンサによって収集された異なる情報を処理する。上記命令を上記処理手段に伝えるために、インターフェイス60、および装置10の本体10aに存在する上記処理手段は、有線通信手段または有利に例えば電磁波による無線通信手段を備える。
【0074】
有利に本体10aの重心CG10の近くに位置するように配置される上記処理手段は、インターフェイス60によって生成された命令に基づき推力ユニット12の動力コマンドを生成するように設計される。各動力コマンドは、有利に、関連するスラスタに有利に無線通信手段によって伝えられる。簡潔さのために、そのような通信手段は図示されない。
【0075】
また、推力ユニットの操作に関する情報は、上記処理手段によって処理され、画面または光源のような1つ以上のグラフィックインターフェイス20aおよび/または20bを介して乗員1に出力されることに言及できる。該グラフィックインターフェイスは、有利に、図2Dに示すように台11上に、非限定的な例として表面11aの近くに配置される。
【0076】
本発明の推進装置10の推力ユニット12の点火または始動を助けるために、推力サブユニット12aおよび12bのスラスタが実質的に水平に方向付けられるように装置10の本体10aを位置付けることが有利であり得る。事実、燃料、例えばケロシンは、スラスタが垂直のままである場合、スラスタの点火前に流れる傾向がある。この点に関して、本発明は、推力ユニット12の始動時に本体10aを傾けることができ、そして、乗員1が容易に表面11a上に位置することができるように本体10aを置くように設けられた離陸ステーションを提供する。変形例として、本発明は、推力ユニット12が台11を横切る軸に沿って回転可能に取り付けられ得、90回転を可能とし、その結果、推力ユニット12が嵌込み式接続を介して台11と協働する場合に本体10aを方向付けなければならないという欠点を解決することを提供する。そのような回転可能に取り付けられた推力ユニット12を始動させた後、図2Aから2Cに示すように、推力ユニット12は任意の手段で台11に対して固定されて保持される。
【0077】
また、本発明は本発明の推進装置の第2の実施形態を提供する。図3Aから3Fに有利な例を示す。第1の先行例(図2Aから2Eに関連して説明された)は、操縦者および/または乗員の敏捷性が頻繁に試される娯楽的適用のためにより多く想定される。より直線的でアクロバティック性の低い動きを促進するために、本発明は、現在知られているオートバイを新しく作り直すことを提供する。このような装置の第2の例は、構造的および物理的に異なるものの、図2Aから2Eに関連して説明されたものと似た設計を有する。
【0078】
そのような「飛行オートバイ」は、図3Aから3Fに、それぞれ、斜視図、正面図、背面図、底面図、および、最後の2つに対して側面図で具体的に示されている。そのような装置10は台11を備える。図3Aから3Fにおいて、台11を非常に簡潔に図示し、基本的に枠のみを判別することができる。操縦者または乗員1は、簡潔さのために図示されない台11上のサドル11a上で、従来の陸上オートバイのようにマシンを占有することができる。したがって、台11は、上記操縦者または乗員1が位置することができ、有利にしかし非限定的に座位である1つ以上の領域11aを有する。操縦者または乗員1の足は、ロードサイクリストの自動ペダルを有するペダルボードのような、乗員1の靴の下の適切なブロックと協働する自動フックを備えたフットレスト11dによって支持される。装置10に関して、車輪は、完全に無くなり、推力ユニット12で置き換えられている。推力ユニット12は、図3Aおよび3Dに関連して図示された例によれば、図2Eに関連して前述した推力ユニット12のスラスタのような、12a1から12a6を付された6つのスラスタ、好ましくは熱スラスタを備える。図2Eに示すように2つの推力サブユニット12aおよび12bを備える第1の実施形態に関連して説明された推力ユニット12とは異なり、この飛行オートバイの推力ユニット12は、少なくとも2つのスラスタ、この例では実質的に同一の6つのスラスタを備えるただ1つの推力サブユニット12aを備える。本発明は推力ユニット12の構成のこの一例のみに限定されるものではない。推力サブユニット12aのスラスタの数は6より少なくても多くてもよい。これは、推力サブユニットの数にも同様に適用される。事実、推力ユニット12は、図2Aに関連して説明された装置10のように、または、図4に上面視で非常に簡略して示され、台11および支持手段14が幅方向に延在している推進装置の例のように、互いに実質的に平行に設けられた2つの列または2つの推力サブユニットを備えていてもよいことが提供されてもよい。、図4に関連して、本発明が飛行輸送手段の作製にも適用可能であることを後ほど見ていく。
【0079】
図3Aに関連して説明された装置10は、有利だが限定されない方法で、乗員1が手を載せて休めることが可能なオートバイのハンドルバーと同等の先取要素11cを含んでいてもよい。そのようなハンドルバー11cは、例えば乗員1の好みに応じて回転可能に取り付けられた右または左グリップの形状を有し、角度測定センサ61と関連づけられた気体制御スロットルレバーを備えていてもよい。そのような気体制御スロットルレバー61は図5に関連して先に示されたリモートコントロール60のトリガ61のように使用され得る。そのようなスロットルレバー61、またはより正確にはその動きを測定するためにそこに関連付けられたセンサは、有利に推力ユニット12の動力を調整するためのコマンドの伝達を可能する。ハンドルバーは、したがって、マシンを操作するためのマン・マシンインターフェイスの役割も果たす。それは、特に推力ユニット12を始動または停止する命令を出すための図3Aには示されないボタンのような他の命令要素も備えていてもよい。
【0080】
陸上オートバイのように、上記ハンドルバーは、推力ユニット12の減速命令を伝達するための1つまたは2つのブレーキグリップ63も備えていてもよい。ハンドルバー11cは、陸上オートバイのものと同様に、回転可能に取り付けられ、ハンドルバー11cの動きの角度測定値を伝える作業を担うセンサを含む。特に装置10が低速すなわち時速数キロメートルで移動する場合、このセンサは、軌道を変更するための命令を処理し得る。より高速では、後述するように、装置10は、軌道に影響を及ぼして曲線軌道を実行するために、乗員1の体の動きによって課される装置10の本体10aの傾きに対してより多くおよび/または唯一応答性を有する。台11またはより全般的に装置10の本体10aは、乗員1の足を収容するためのフットレスト11dを含む。好ましくは、図3Aから3Fに示すように、操縦者または乗員1の足または靴を収容するように設けられたフットレスト11dは、有利に推力ユニット12の両側に位置する。そのようなフットレスト11dまたは右もしくは左フットレストの一方のみは、減速命令に変換され得る情報を伝えるための圧力センサ64を有利に含んでいてもよく、上記情報は、もしあればハンドルバー11cのコントローラ63の作動から生じる情報に付加または代替されるものである。最後に、第2フットレスト、例えば左フットレストは、本体10aまたは装置10を横切る軸の周りの上記フットレストの回転を検知するセンサ65を含んでいてもよい。乗員1が足の前部を押し下げることは、装置10の姿勢を装置の前方に傾ける命令を意味してもよく、したがって「ノーズダウン(機首下げ)」を行うことができる。反対に、乗員1がかかとを押し下げて上記フットレストを作動させることは、装置10にリアアップ(後足立ち)を命じる命令を意味してもよい。ハンドルバー11cおよび/またはフットレストの代わりにまたはそれらに加えて、他の任意の命令インターフェイスを使用してもよい。したがって、非限定的な例として、本発明は、装置10の本体10aに存在する電子処理手段が、乗員1の衣類もしくは付属品の1つに固定された傾斜計、または上記衣類もしくは付属品に組み込まれた傾斜計によって伝えられる情報を使用してもよいことを提供する。そのようなセンサによって伝えられる情報のおかげで、乗員1が自身の胴体をハンドルバー11cの方に前方に傾けた場合、乗員1の胴体の傾きは、上記電子処理手段によって、推力ユニット12の動力を増大させる命令、または後述するような該ユニット12のスラスタの傾きを増大させる命令に変換され得る。反対に、乗員1が上体を起こした場合、装置10の電子処理手段によって減速命令が生成され得る。そのような命令を生成し、それらをスラスタの動力コマンドに変換するために、図2Aから2Eに関連して説明された装置10のように、図3Aから3Fに関連して説明される装置10も、例えば、具体的にセンサ61、63、64および65によって伝えられた情報を解釈してそれを操作命令に変換するように設計すなわちプログラムされた1つ以上のマイクロコントローラまたは電子カードを含む電子処理手段(簡潔さのために上記の図には示されない)を有利に含んでいてもよい。装置10はまた、非網羅的に、傾斜計、高度計、GPS受信機、ピトープローブまたはピトー管、および/またはジャイロスコープ、より全般的に上記電子処理手段が装置10の本体10aの姿勢、速度または軌道を記録することを可能にする任意のセンサを含んでいてもよい。このために、上記センサは上記電子手段と任意の有線または無線接続を介して協働する。さらに有利には、それらは、特定の場合において、具体的な例として、本体10aの重心CG10の実質的に近くに位置する傾斜計および/またはジャイロスコープである。上記の図には示されないそのようなセンサは、前述のセンサと共にまたは前述のセンサに加えて、有線または結合によって処理手段と協働する。そのような手段は、例えば別個である場合に1つ以上のマイクロコントローラまたは電子カードを含むが、有線接続または結合(すなわちBluetooth(登録商標)または同等物のような近距離通信規格による無線接続)を介して、最終的に装置10の特定のスラスタに伝達される1つ以上の動力コマンドを生成するように設計された処理手段と協働するように有利に設計すなわちプログラムされる。該処理手段は、マン・マシンインターフェイスによって生成された前述の命令の1つと共に、上記姿勢および/または軌道センサによって伝えられた情報に基づいて動力コマンドを生成する。上記マン・マシンインターフェイスは、図5に関連して前述した主要な命令要素を集めたリモートコントロール60とは異なり、分散されたものであり、例えば、センサを含む、ハンドルバー11cおよび/またはフットレスト11dまたは他の任意の同等な要素によって形成される。本発明の推進装置の第1の実施形態を説明する図2Aと同様に、図3Aによって、「縦平面」、「横平面」、または「中央平面」と順に呼び、図3AにおいてそれぞれPL、PTおよびPMを付した異なる平面を定義することも可能になり、それを考慮して推進装置10の第2の例の本体10aの構成をより詳細に説明することができる。
【0081】
したがって、
-「中央平面」PMは、特に台11に垂直な面を意味し、装置10の本体10aの右半分から左半分を分離し、上記半分は必ずしも均等ではない。
-「横平面」PTは、中央平面に垂直な面を意味し、推進装置10の本体10aを2つの半分に分離し、一方は上記本体の前部を含み、他方は後部を含み、上記半分は必ずしも均等ではない。
-「縦平面」PLは、横平面および中央平面に垂直な面を意味し、装置10の本体10aの下半分から上半分を分離し、上記半分は必ずしも均等ではない。
【0082】
そのような平面PM、PT、PLは図3Aにおいて点線で示される。同様に、
-横平面および縦平面の両方に属する任意の軸を「横軸」と呼び、
-中央平面および縦平面の両方に属する任意の軸を「縦軸」と呼び、
-中央平面および横平面の両方に属する任意の軸を「中央軸」と呼ぶ。
【0083】
図3Aから3Fによって、飛行オートバイの好ましい例である推力ユニット12の構成の説明が可能になる。この非限定的な例によれば、そのような推力ユニット12は、6つのスラスタ12a1から12a6を備える推力サブユニット12aを備える。スラスタ12a1から12a6は、支持手段14によって位置付けられて保持され、上記スラスタが装置10の本体10aの縦軸AL10に沿って整列するように配置される。スラスタ12a1の軸AL12aなどの上記スラスタの縦軸は装置10の本体10aの中央平面PMと実質的に結合し、上記中央平面は本体10aの重心CG10を通る。スラスタ12a1から12a6の各排出ノズルは全て互いに平行である。したがって、各スラスタ12a1から12a6の各排出ノズルによる気体流排出の方向は、乗員1の胴体から頭に向かうように方向付けられた縦軸AL1と実質的に逆方向である。
【0084】
図3Eおよび3Fに関連して、スラスタ12a1から12a6の支持手段14によって、装置10の本体10aの中央平面PM内において、少なくとも図3Eに示す通常の流体排出の方向に対して、すなわち装置10の本体10aの縦軸AL10に対して実質的に垂直な方向に対して、上記スラスタを-45から45の間の角度βだけ傾けるか、または少なくとも各気体流排出口の軸AL12を角度βだけ傾けることが可能になることがわかる。したがって、図3Eによれば、推力ユニット12のスラスタは装置10を垂直軌道に沿って推進する。対照的に、図3Fに従って上記流体排出の方向が方向付けられる場合、上記スラスタにより装置10は前方に移動する。したがって、同じ推力サブユニット12aのスラスタの流体排出の方向は、非限定的な例としてジャッキなどのアクチュエータ14cの瞬間力の下で方向付けられてもよく、アクチュエータ14cの動きにより上記気体流排出口が同時に傾斜する。そのようなアクチュエータ14cは、乗員1から出される制御命令に基づいて、装置10の本体10aに存在する上述の処理手段によって制御されるコマンドによって有利に操作されてもよい。例として、センサ63および/または64が乗員1によって作動し減速命令を伝える場合、アクチュエータ14cは、図3Eに示すように休止してもよい。反対に、上記乗員が、センサ64またはハンドル63の動きに働く圧力を取り除き、同時に推力ユニット12の動力を増大させたい乗員1の希望を変換する回転グリップ61を作動させる場合、上記処理手段によって生成される適切なコマンドの動作の下で、アクチュエータ14cが実行されて推力ユニット12のスラスタの傾きを生じさせてもよい。従って、推力ユニットの動力が増大するにつれて、上記傾きは、増大し、より顕著になり、逆もまた同様である。推力ユニット12の動力を増大する命令と組み合わされた減速命令は、本体10aの垂直移動と同義であってもよい。
【0085】
図2Cに関連して具体的に説明された装置10と同様に、推力サブユニット12aのスラスタの排出ノズル(または流体排出口)が地面に向けて方向付けられる場合に、乗員1が位置する台11の領域11aが、装置10の本体10aの低点Bに対して以下の高さhpを有するように、図3Bおよび3Cによる装置10の本体10aが有利に設けられる。
-装置10の本体10aの重心CG10の、低点Bに対する高さh10に実質的に等しいまたはそれより高く、かつ
-装置10と乗員1とを含む集合体の重心CGの、低点Bに対する高さhよりも低い高さ。
【0086】
したがって、乗員1のサドル11aの高さは、上記乗員の体重または体形に応じて、および乗員1が所望する装置10の感覚または動きにも応じて、優れた操作性を有する推進装置を乗員1に提供するように有利に調整されてもよい。
【0087】
特に容易に旋回して曲線移動することを可能にするために、そのような装置10の推力ユニット12は有利に経路修正補助スラスタ19aおよび19bを含んでいてもよい。これらは、図2Aに関連して前述した装置10の経路修正補助スラスタと同様に、支持手段14によって支持されて台11の横軸に沿って偏心して配置されてもよい。変形例として、そのような経路修正補助スラスタが偏心位置にあることによって生じる不便さを制限するために、本発明は、上記経路修正補助スラスタが、本体10aの横軸に実質的に平行な軸に沿って逆方向に流体を排出するように配置される2つのスラスタの対19aおよび19bを含んでもよいことを提供する。上記2つの対19aおよび19bは、乗員1を収容するように設けられた台の領域11aの前方および後方の2つの位置で支持手段14によって保持される。有利に、これらの2つの対19aおよび19bは、それぞれ、自身の性能を向上させるような仕方で、本体10aの端部の近くに位置する。上記経路修正補助スラスタの主要な機能は、乗員が曲線軌道の実行を望まない場合に装置10の現在の経路を維持することを含む。このため、各対19aおよび19bの補助スラスタは、所望の軌道変更を示す命令が乗員1から出されない場合に、本体10aに存在する姿勢および軌道センサによって伝えられる情報を考慮して、前述の処理手段によって生成される電気的な動力コマンドによって操作されてもよい。これらのスラスタは、非同期的に作動することで、本体10aの中央軸の周りの回転を生じさせるのに十分なトルクを生成する。したがって、対19aのスラスタが本体10aの前方に位置し、その排出ノズルが本体10aの左に向かって流体を排出し、対19bのスラスタが本体10aの後方に位置し、その排出ノズルが本体10aの右に向かって流体を排出し、対19aが対19bと共に作動する場合、本体10aは自動的に自身を右に方向付け、その逆もまた同様である。例として、突風により乗員1の左または右に推進装置10の軌道が逸れがちである場合、本体10aに存在する上記処理手段は、経路修正補助スラスタ19aおよび19bのための動力コマンドを生成して、各対の補助スラスタの1つを作動させ、上記スラスタは、この不測の軌道変更を相殺するために逆の流体排出の方向に方向付けられる。上記経路修正補助スラスタは、通常の軌道が回復され次第、スイッチオフされる。このようにして、推進装置10は、自身の現在の軌道を自動的に維持し、あらゆる補正の努力から乗員1を解放する。変形例として、または付加的に、そのような補助スラスタの使用を除外するために、本発明は、推力サブユニット12a、12bのスラスタの全てまたはいくつかに、例えば水上オートバイの流体排出口を方向付ける円錐型のような、方向付け可能な流体排出口を付加することを可能にすることを提供し、該流体排出口は、例えばピボット式接続または嵌込み式接続のような1つ以上の各機械的接続によって、関連するスラスタの気体流排出ノズルと協働する。
【0088】
乗員の知らない間に、そのような経路修正補助スラスタ19aおよび19bが気象擾乱に対して自動的かつ瞬時に補正を行うために、該経路修正補助スラスタに必要とされる高い応答性によって、電気タービンの形態の経路修正補助スラスタを支持する選択は正当化され得る。しかし、先の実施形態に関連して記したように、電気タービンの代わりに、場合によって方向付け可能な流体排出口を備えた熱スラスタが使用されてもよい。
【0089】
また、経路修正補助スラスタ19aおよび19bは、乗員1が、曲線軌道を描くか、または例えば本体10aの左または右への横方向に移動することを可能にする。したがって、乗員が回転可能に取り付けられたハンドルバー11cを使用する場合、上記補助スラスタの動力コマンドの生成を担う処理手段は、各対19aおよび19bのスラスタの1つに向けた動力コマンドを処理し、曲線軌道を生成するために、上記ハンドルバーによって描かれる角度を測定するセンサによって伝えられる情報を使用する。高速移動において、乗員1が希望するように経路を変更する命令は、装置の本体10aに存在する傾斜計またはジャイロスコープによって伝えられる情報に基づいて上記処理手段によって生成される。したがって、上記乗員が自らの体を側方に方向付け、自発的に装置10の本体10aを自身の右側に傾ける場合、乗員1の右側に経路を変更する命令が上記処理手段によって生成される。したがって、上記処理手段は、上述の通りハンドルバー11cの作動に続き、経路修正補助スラスタの動力コマンドを生成する。これは、本体10aに乗員1が与える自発的な傾きにも同様に適用され、現在の経路を自身の左側に変更したいという望みを変換する。したがって、経路修正補助スラスタ19aおよび19bの存在は、本体10aの動きおよび/または乗員1から出される操作命令を変換する複数のセンサによって伝えられる情報を考慮することと関連づけられることで、推進装置10に優れた操作性を与える。有利な実施形態によれば、経路修正補助スラスタ19aおよび19bの機能はフィンまたは尾翼の存在によって強化され得る。該フィンまたは尾翼は、例えば、本体10aの中央平面に対して平行な平面に沿って方向付けられ、本体10aの中央軸に対して平行な軸を有するピボット式接続を介して方向付け可能な実質的に平らな任意の要素の形状を有する。航空機に使用される尾翼と同様に、簡潔さのために図示されないそのような任意の要素は、電気的なコマンドを受けるアクチュエータによって有利に制御されてもよい。そのような電気的なコマンドは、スラスタ19aおよび19bに向けた電気的なコマンドと共に、装置10の本体10aに存在する電子処理手段によって生成されてもよい。
【0090】
乗員1の座位だけでなく、本体10aの縦軸に沿って延伸する装置10の台11によって、乗員1にとって縦軸AL10に沿った実質的に水平に姿勢を制御することは容易ではない。この姿勢の水平性を自動的に修正するために、そのような推進装置10は、姿勢修正補助スラスタ19cおよび19dも含んでいてもよい。これらは、有利にしかし非限定的に、電気タービンの形態を有する。これらはそれぞれ装置10の本体10aの端に位置し、支持手段14によって保持される。これらは装置10の本体10aの中央軸AM10に対して平行な同一方向に方向付けられる。これらは、経路修正補助スラスタ19aおよび19b同様に、本体10aの前部を下げる目的または対照的に本体10aを「起こす」目的のどんな制御命令もない場合に、本体10aの縦軸AL10に沿った実質的に水平な姿勢を維持することを可能にする。このため、上記スラスタ19cおよび19dは、本体10aの姿勢および/または軌道センサによって伝えられる情報を解釈して装置10の本体に存在する処理手段によって生成される動力コマンドを介して、交互に作動する。したがって、装置10が突風により誤ってバランスを失い、その前部が本体10aの後部よりも高くなった場合、本体10aの後部に位置するスラスタ19dは姿勢の水平性を自動的に修正するように作動し、したがって乗員1は上記姿勢の面倒な修正から解放される。対照的に、装置10の本体10aに存在する上記処理手段によって考慮される前述の制御命令によって、乗員1が本体10aの姿勢を自発的に変更してもよい。したがって、乗員1は陸上オートバイの運転手のように極めて直観的に推進装置の移動方向の全てを自分の意志で変更できる。
【0091】
本発明は、作動しないようにできる選択肢として、経路修正補助スラスタ19a、19bおよび/または姿勢修正補助スラスタ19c、19dの自動的な使用を提供し、すなわち、本体10aに存在する姿勢および/または軌道センサの使用のみで、乗員が希望して出す制御命令から独立して経路または姿勢を維持することを可能にする選択肢を提供する。そのような作動停止および/または再作動は、例えばハンドルバー11cに存在するボタンのような適切なマン・マシンインターフェイスの手段によって乗員によって決定されてもよい。本体10aの電子処理手段は、上記インターフェイスがそのような補助の恩恵を受けたいという乗員の希望を示す場合に限り、経路および/または姿勢を維持する上記コマンドを生成して補助スラスタのみに伝達するために、該マン・マシンインターフェイスによって伝えられる情報を考慮する。操縦者および/または乗員1は、自身がそのように希望しない場合、自身が補助を望まない特定の動作を行うために、装置10を方向付ける自身の全能力のみを利用することができる。このような機能性は本発明の全ての装置10に対して一般化されてもよい。
【0092】
図3Aから3Fによる装置10の本体10aの説明は、上記装置の操作の基本的な要素に意図的に集中している。しかし、先に図2Aにおいて具体的に示した装置10と全く同様に、本発明の推進装置10のこの第2の例の本体10aは、図3Aから3Fには示されない突出手段を有利に備えてもよく、該突出手段は、台11および/または支持手段14と協働し、地面と装置10の推力ユニット12との間のどんな衝撃または直接的な接触も防ぐように設けられている。そのような突出手段は、推力ユニット12の排出ノズルが地面にぶつかることがないように、また、図3Aから3Fにまた示されない地面または離陸ステーション上に装置10が置かれた場合に、一定の安定性を提供し、乗員1が実質的に台11上に位置することができるように、十分な長さの脚部を特に含んでもよい。変形例として、そのような突出手段は、地面の性質に応じた一定の安定性または装置10の支持を確保できる一対のスキーまたは他の要素を含んでもよい。有利に、そのような突出手段は、折り畳むことまたは引っ込めることができてもよいし、例えば伸縮自在(はめ込み式)でもよい。本体10aの電子処理手段は、本体10aの移動速度が所定の速度例えば時速50キロメートルを上回るかまたは下回るとすぐに、上記突出手段の自動的な引っ込みおよび/または展開をそれぞれに制御して空気力学的性質を改善するように設計されてもよい。変形例として、そのような引っ込みおよび/または展開は、本体10aの上記処理手段と通信するかまたは直接上記突出手段のアクチュエータと通信するボタンまたはハンドルのような配置されたマン・マシンインターフェイスを乗員1が作動させることでトリガされてもよい。
【0093】
本体10aは、図3Aから3Fには示されないフェアリング要素も備えてもよく、該フェアリング要素は、可逆的または不可逆的な任意の嵌込み式機械的接続(例えば、溶接、ねじ止め)によって、台11および/または支持手段14と協働するか、または台11と共に全く同一の物理的エンティティを構成する。そのようなフェアリングの機能は推力ユニット12と乗員1との間のどんな直接的な接触も防ぐことである。したがって、そのようなフェアリングの形態(寸法、形状)は、推力ユニット12の寸法に合うように、美的な外観を与えるように、および/または推進装置の本体10aの空気力学的性質を保全するように設計され、同時に乗員1に対するどんな不便も制限される。実際に、推力ユニット12の外壁の温度は急速に非常に高くなり得るため、負傷するどんな危険性も防ぐために、乗員と推力ユニットとの間のどんな接触も制限可能であることは有利である。さらには、そのようなフェアリングはスラスタに流体を供給するための1つ以上の空気吸入口を備えていてもよい。そのような空気吸入口は異物(葉、破片、鳥など)の吸入を防止するためのグレーチングを備えていてもよい。そのようなフェアリングを作製するために提供される材料の選択は、その構造に対する損失を防止するために、上記フェアリング要素の至近距離内の推力ユニット12の最高温度に依存する。
【0094】
最後に、そのような装置10の本体10aの熱スラスタに供給を行うために、本体10aは、上記スラスタの操作に必要な液体燃料または気体燃料、例えばケロシンの1つ以上のタンクを収容するように設けられた1つ以上の凹部を備えていてもよい。そのようなタンクは簡潔さのために図3Aから3Fに示されない。経路修正補助スラスタ19aおよび19bによって自動的に補正できないどんな不安定さも防ぐために、タンクは、有利に、本体10aの重心CG10を通る横平面PTにできるだけ近く、重心CG10を通る中央平面PMに属する縦軸に沿って位置付けられる。また、簡潔さのために、図には、上記燃料を上記スラスタに運ぶための、例えば、一連のホース、収集部および/または供給ラインを備える、上記燃料タンクと本体10aのスラスタとの間の流体接続が示されない。図2Aに関連して前述した第1の実施形態と同様に、本発明は、必要に応じて上記スラスタと流体的に連通することもできる補助燃料タンクを乗員1に結合することが可能であることを提供する。さらには、乗員1が着用する衣類および/または付属品だけでなく、本体10aは、例えば、処理手段、センサ、および電気タービンのような電源供給を必要とする要素と接続された1つ以上の電気エネルギー源、例えば、1つ以上のバッテリ、太陽光パネル、または風力発電機などを含んでいてもよい。
【0095】
図4は、自動車、物品の輸送車、貨物の輸送車および/または陸上の乗客の輸送車に対応する飛行輸送手段まで本発明の利用をある程度一般化した、本発明の輸送手段10の簡略化された平面図を概略的に示す。
【0096】
図4に示すように、このような装置の本体、特に台11および支持手段14は、1つ以上の推力サブユニット、この例ではそれぞれ8つの熱スラスタを有する2つの推力サブユニット12aおよび12bを備える推力ユニットと協働するかまたはそれを含むことができる。サブユニットの数は、各サブユニットのスラスタの数と同様に、推進装置の本体の構成、運ばれる荷、ならびに所望の性能のレベルおよび範囲に基づき決定される。
【0097】
そのような輸送手段の優れた操作性を保証するために、各スラスタの排出ノズルによる気体流排出の方向と、輸送手段の本体の重心を通る中央平面への上記気体流排出の方向の正射影との間の距離を最小化するように上記推力ユニットを配置することが有利である。
【0098】
さらには、不測の経路喪失に対するどんな補正もしなくて済むために、そのような輸送手段は有利に経路修正補助スラスタ19aおよび19bを備える。図4に関連して、そのような補助スラスタは図2Aに関連して示されるように側方に位置付けられる。それらは、変形例としてまたは付加的に、図3Aに関連して説明された経路修正スラスタと同様に設けられてもよい。最後に、縦軸に沿ったそのような輸送手段の姿勢の水平性を維持または変更するために、上記輸送手段は該輸送手段の本体の両端に実質的に配置される姿勢修正スラスタ19cおよび19dを備えていてもよい。輸送手段の安定性を改善するために、輸送手段の本体の幅に応じて、図3Aに関連して説明されたもののように2つのスラスタのみ、スラスタの2つの対、またはスラスタの2つの別の集合体が使用されてもよい。この例では、図4に関連して説明された輸送手段は、該輸送手段の本体の角に位置する姿勢修正スラスタの2つの対19cおよび19dを有する。操作命令を処理するためのどんなタイプのマン・マシンインターフェイスがさらに使用されてもよい。様々なスラスタ、ならびに姿勢および/または軌道センサの動力コマンドを生成するために、そのような輸送手段は該命令を処理するための電子手段を含んでいてもよい。動力コマンドを生成するために、姿勢および/または軌道センサによって生成された情報は制御命令と共に上記処理手段によって考慮される。
【0099】
そのような本発明の推進装置の本体の構成がどのようなものであっても、上記装置は多数の娯楽用途および/またはサービスを可能にする。本発明は現在公知であるような輸送を革新し、前述の使用例にのみ限定されるものではない。
【0100】
特に、照明装置、航行援助、乗員がいる状態またはいない状態での遠隔操作などに関して、そのような装置の娯楽特性または使用状態をさらに改善するための付属品もまた提供されてもよい。例として、そのような装置は遠隔操作ステーションと相互作用するための長距離通信手段を含んでいてもよく、その結果、上記ステーションは装置10の電子処理手段によって解釈可能な制御命令を補充的に生成できる。変形例として、装置10の異なるスラスタに伝えられる動力コマンドを生成し、乗員の補助なく目的地に到着するために、上記電子処理手段は、飛行前または該飛行の間に乗員によって提供される移動座標を記録してもよい。上記電子処理手段は、前述のように、装置10の巡航中の地理的位置を常に知るために、設けられ得るGPS受信機を利用してもよい。
【0101】
また、本発明は、乗員の推進装置の操作に関する情報を、視覚的、音響的または運動感覚的に乗員に表示するように適合された任意のマン・マシンインターフェイスの存在を提供する。例えば、クラッシュヘルメットのバイザーに組み込まれた、上記情報を見るためのシステム、および/またはそのようなヘルメットを装着した乗員の片方の眼の虹彩の動きを分析して操作命令を検出するためのシステムが提供されてもよい。
【0102】
また、図2Eによる推力ユニット12の非限定的な例に関連して図2Fに示すように、本発明は、推力サブユニット12a、12bのスラスタの全てまたはいくつかに、例えば水上オートバイの流体排出口を方向付ける円錐型のような、方向付け可能な流体排出口を付加することを可能にすることを提供する。該流体排出口は、関連するスラスタの気体流排出ノズルと協働する。これは、2つの推力サブユニット12aおよび12bを備える推力ユニット12の一例の正面および側面の2つの図である図2Fに適用される。4つのスラスタの中で、図2Fはスラスタ12b1を取り上げており、その気体流排出の通常の方向AL12bは破線で示されている。スラスタ12b1の気体流排出ノズルは、図2Aに関連して説明された装置10の本体10aの横軸に対して平行な軸12axを有するピボット式機械的接続によって、方向付け可能な円錐のような、可動に設けられた流体排出口12exと協働することがわかる。そのような方向付け可能な流体排出口は、本体10aの中央平面内において軸12axの周りの角度δを描くことができる。したがって、本発明の推力ユニットのスラスタが動的に方向付けられているか否かに関わらず、特に装置の本体の横軸に対して平行な軸の周りの回転によって上記スラスタの流体排出の方向を変えるために、推進装置の本体の処理手段はそのような方向付け可能な流体排出口のアクチュエータを制御するように適合されてもよい。このようにして、スラスタおよび/または推進装置の上記本体自体を傾ける必要なく、そのような流体排出口がその後方に向けて方向付けられる場合、上記装置の前方への移動を助力することが可能になり、その逆の場合においてもまた同様である。そのような機能は、例えば、TRIMという名称で知られ、多数のボートの船外モーターに取り付けられ、モーターの保持ブラケットに位置するジャッキを含み、上記ボートの乗員によってボタンまたはトリガで制御される装置のように、適切なマン・マシンインターフェイスを作動させることで、乗員の要望により作動してもよい。TRIMの効果は、モーター式推進器のスラスト角ひいては上記ボートの姿勢を変更するために、ボートのトランサムから離れるようにまたはそれに向かってモーターを移動させることである。そのような本発明の推進装置のスラスタの流体排出口の適合は、第1、第2、または第3の実施形態、すなわち図2A、3Aまたは4において例として説明されたものに従う限り、推進装置の直線運動および移動速度を助力すると同時にその本体の姿勢の水平性を維持する。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3A
図3B-3C】
図3D
図3E
図3F
図4
図5