(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】中敷
(51)【国際特許分類】
A43B 17/00 20060101AFI20230314BHJP
【FI】
A43B17/00 E
(21)【出願番号】P 2018206322
(22)【出願日】2018-11-01
【審査請求日】2021-10-08
(73)【特許権者】
【識別番号】591025901
【氏名又は名称】株式会社村井
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【氏名又は名称】水野 浩司
(72)【発明者】
【氏名】村井 ▲隆▼
【審査官】沖田 孝裕
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-533591(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第10000207(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に3アーチを保つための凸状の内側縦アーチサポート(24)、凸状の外側縦アーチサポート(26)及び凸状の横アーチサポート(28)が形成され、踵対応領域(10a)
の周縁にヒールカップ(30)を形成した中敷本体(14)を有する中敷において、
前記中敷本体(14)の裏面には、
踵骨突起部の付近には、この踵骨突起部を含む程度の長円状穴が形成され、踵部対応領域(10a)から土踏まず対応領域部(10b)の範囲に圧着された硬度が高い補強シェル(20)を備え、
前記中敷本体(14)の表面の踵対応領域(10a)は、
前記長円状穴の中心よりも幅方向内側となる内側端付近から次第に厚みを増して幅方向外側の縁に至っており、
さらに、前記中敷本体(14)の内部には、補強芯材(32)が設けられており、
前記補強
芯材(32)は、
前記踵対応領域(10a)と前記土踏まず対応領域部(10b)との境界付近から第5中足骨及び第4中足骨を含む付近となる領域を通って、第5中足骨の骨頭~第2中足骨の骨頭の直後付近となる領域を第1の所定幅で通って、さらに第1中足骨の骨頭から第1末節骨の骨底付近の領域を覆う前記第1の所定幅より大きな幅の帯状形状である、ことを特徴とする中敷。
【請求項2】
前記中敷本体(14)は、ウレタンウォームの上部中敷本体(16)と、前記上部中敷本体(16)の裏面に接合されたウレタンウォームの下部中敷本体(18)とを接合して形成されており、
さらに、前記上部中敷本体(16)と前記下部中敷本体(18)との間には、前記補強芯材(32)が設けられており、
さらに、前記上部中敷本体(16)の表面には、表層部材が接合されている、ことを特徴とする請求項1記載の中敷。
【請求項3】
前記芯材(32)は、
合成樹脂を含浸させた織布又は不織布若しくは、合成樹脂のみによって構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の中敷。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウォーキングシューズ等の靴の内底面に敷設される中敷に関する。
【背景技術】
【0002】
着用者の足や腰の疲労を軽減するために、靴の内底面にクッション性のある中敷(インソール)を設置することがよく行われている。また、着用者の足や腰の疲労をより軽減するために、インソールの接触面に足骨のアーチを支持する凸状のアーチサポートが形成されることがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、健康増進を目的としてウォーキングを行う人が老若男女を問わず増えてきている。一方、ウォーキング中に、歩行姿勢が悪いと、足が幅方向外側に流れて、歩行効率が低下して、疲れやすくなり、却って健康を損なうことがある。そのため、歩行効率を高めて疲れにくい、快適なウォーキングを行うための中敷の開発が望まれている。
【0005】
そこで、本発明は、ウォーキング中に足が幅方向外側に流れることを十分に抑えることができる中敷を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る中敷は、表面に3アーチを保つための凸状の内側縦アーチサポート(24)、凸状の外側縦アーチサポート(26)及び凸状の横アーチサポート(28)が形成され、踵対応領域(10a)の周縁にヒールカップ(30)を形成した中敷本体(14)を有する中敷において、
前記中敷本体(14)の裏面には、
踵骨突起部の付近には、この踵骨突起部を含む程度の長円状穴が形成され、踵部対応領域(10a)から土踏まず対応領域部(10b)の範囲に圧着された硬度が高い補強シェル(20)を備え、
前記中敷本体(14)の表面の踵対応領域(10a)は、
前記長円状穴の中心よりも幅方向内側となる内側端付近から次第に厚みを増して幅方向外側の縁に至っており、
さらに、前記中敷本体(14)の内部には、補強芯材(32)が設けられており、
前記補強芯材(32)は、
前記踵対応領域(10a)と前記土踏まず対応領域部(10b)との境界付近から第5中足骨及び第4中足骨を含む付近となる領域を通って、第5中足骨の骨頭~第2中足骨の骨頭の直後付近となる領域を第1の所定幅で通って、さらに第1中足骨の骨頭から第1末節骨の骨底付近の領域を覆う前記第1の所定幅より大きな幅の帯状形状である、ことを特徴とする。
【0007】
また、前記中敷本体(14)は、ウレタンウォームの上部中敷本体(16)と、前記上部中敷本体(16)の裏面に接合されたウレタンウォームの下部中敷本体(18)とを接合して形成されており、
さらに、前記上部中敷本体(16)と前記下部中敷本体(18)との間には、前記補強芯材(32)が設けられており、
さらに、前記上部中敷本体(16)の表面には、表層部材が接合されている、ことを特徴とする。
【0008】
また、前記芯材(32)は、
合成樹脂を含浸させた織布又は不織布若しくは、合成樹脂のみによって構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、着用者のウォーキング中の歩行効率を高めて、快適なウォーキングを行って、着用者の健康増進を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るウォーキング用中敷を靴の内底面に設置した様子を示す図ある。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係るウォーキング用中敷と、足骨を含む足との関係を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係るウォーキング用中敷の平面図(接足面側から見た図)である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に係るウォーキング用中敷の側面図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態に係るウォーキング用中敷の底面図(接地面側から見た図)である。
【
図6】
図6(a)は、本発明の実施形態に係るウォーキング用中敷の背面図(後側から見た図)である。
図6(b)は、
図3におけるVI-VI線に沿った切断部端面図である。
【
図7】
図7は、
図3におけるVII-VII線に沿った断面図である。
【
図8】
図8は、通常歩行時の荷重中心軌跡及び高速歩行時の荷重中心軌跡を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について
図1から
図8参照して説明する。
【0012】
なお、本願の明細書及び特許請求の範囲の記載において、「長さ方向」とは、中敷又は足の長さ方向のことをいい、前後方向と同義である。「長さ方向一方側」とは、前方向又は前側のことをいう。「長さ方向他方側」とは、後方向又は後側のことをいう。「幅方向」とは、中敷又は足の幅方向のことをいう。「幅方向内側」とは、中敷又は足の幅方向の内側のことをいう。「幅方向外側」とは、中敷又は足の幅方向の外側のことをいう。「内側部分」とは、幅方向内側の領域に位置する部分のことをいう。「外側部分」とは、幅方向外側の領域に位置する部分のことをいう。「表面」とは、中敷の接足面側の面こという。「裏面」とは、中敷の接地面側の面ことをいう。
【0013】
図面中、「LD」は長さ方向、「LDf」は長さ方向一方側(前側)、「LDr」は長さ方向他方側(後側)、「WD」は幅方向、「WDi」は幅方向内側、「WDo」は幅方向外側をそれぞれ指している。
【0014】
図1及び
図2に示すように、本発明の実施形態に係るウォーキング用中敷10は、ウォーキングシューズ等の靴12の内底面に着脱可能に敷設される中敷(インソール)であり、快適なウォーキングを行うために開発されたものである。なお、ウォーキング用中敷10を靴12の内底面に一体的に設置してもよい。
【0015】
ウォーキング用中敷10は、足Fの踵部Faに対応する踵対応領域10aと、足Fの土踏まず部Fbに対応する土踏まず対応領域10bと、足Fのつま先部Fcに対応するつま先対応領域10cとを有している。また、踵対応領域10aと土踏まず対応領域10bの境界周辺には、踵対応領域10aの前側部分及び土踏まず対応領域10bの後側部分が含まれる。土踏まず対応領域10bとつま先対応領域10cの境界周辺には、土踏まず対応領域10bの前側部分とつま先対応領域10cの後側部分が含まれる。ウォーキング用中敷10の接足面は、踵対応領域10aの接足面と、土踏まず対応領域10bの接足面と、つま先対応領域10cの接足面とからなる。ウォーキング用中敷10の接地面は、踵対応領域10aの接地面と、土踏まず対応領域10bの接地面と、つま先対応領域10cの接地面とからなる。
【0016】
図2から
図7に示すように、ウォーキング用中敷10は、クッション性のある中敷本体14を備えている。中敷本体14は、上部中敷本体16と、上部中敷本体16の裏面に接合された下部中敷本体18とからなる2層構造になっている。中敷本体14(上部中敷本体16及び下部中敷本体18)は、ウレタンフォームにより構成されている。下部中敷本体18の裏面における踵対応領域10aから土踏まず対応領域10bに亘る領域には、凹部18dが形成されている。下部中敷本体18の凹部18dの底面における踵対応領域10aの中央部には、足骨Bの踵骨Baに働く荷重を吸収するための長円状の凸部18sが形成されている。なお、中敷本体14を2層構造する代わりに、3層構造又は4層構造等にしてもよい。中敷本体14をウレタンフォームにより構成するに代わりに、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等の熱可塑性合成樹脂の発泡体又はブタジエンラバー等のラバー素材の発泡体により構成してもよい。
【0017】
下部中敷本体18の凹部18dには、足Fの踵部Faから土踏まず部Fbを支持するための補強シェル20が整合するように設けられている。補強シェル20は、合成樹脂を含浸させた不織布と、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等の熱可塑性樹脂のシートを貼り合わせた2層構造になっている。補強シェル20の剛性(曲げ剛性)は、中敷本体14の剛性より高く設定されている。また、補強シェル20における踵対応領域10aの中央部には、下部中敷本体18の凸部18sを嵌合させるための長円状の嵌合穴20hが形成されている。なお、補強シェル20を2層構造にする代わりに、合成樹脂からなる1層構造にしてもよい。ウォーキング用中敷10の構成から補強シェル20を省略してもよい。この場合には、下部中敷本体18の構成から凹部18d及び凸部18sを省略する。
【0018】
上部中敷本体16の表面には、足Fと直接接触する表層22が接合されている。表層22は、ポリエステルにより構成されており、表層22の厚みは、例えば0.5~1.0mmに設定されている。表層22をポリエステルに構成する代わりに、ナイロン、合成繊維、人工皮革、合成皮革、又は天然皮革により構成してもよい。
【0019】
図2及び
図3に示すように、ウォーキング用中敷10の接足面の内側部分には、足骨Bの内側縦アーチBbを支持する凸状の内側縦アーチサポート24が踵対応領域10aから土踏まず対応領域10bの前側部分にかけて形成されている。また、ウォーキング用中敷10の接足面の外側部分には、足骨Bの外側縦アーチBcを支持する凸状の外側縦アーチサポート26が踵対応領域10aから土踏まず対応領域10bの後側部分にかけて形成されている。外側縦アーチサポート26の長さ方向の寸法は、内側縦アーチサポート24の長さ方向の寸法よりも短くなっている。更に、土踏まず対応領域10bの接足面の中央部には、足骨Bの横アーチBdを支持する凸状の横アーチサポート28が形成されている。
【0020】
図3に示すように、踵対応領域10aの接足面の周縁には、足Fの踵部Faを安定的に保持するためのU字状のヒールカップ30が形成されている。また、ヒールカップ30の内側端(幅方向内側の端)は、内側縦アーチサポート24の後端に滑らかに繋がっている。ヒールカップ30の外側端(幅方向外側の端)は、外側縦アーチサポート26の後端に滑らかに繋がっている。
【0021】
図6(b)及び
図8に示すように、歩行時の荷重中心が理想的な荷重中心軌跡(足圧中心軌跡)CTを沿うように歩行を幅方向内側に誘導するため、踵対応領域10aの高さは、幅方向の中心から幅方向外側に向かって徐々に高くなっている。換言すれば、中敷本体14(下部中敷本体18)の厚みは、幅方向の中心から幅方向外側に向かって徐々に厚くなっている。理想的な荷重中心軌跡CTとは、足Fの踵部Faから母趾部Fdにかけて弧を描くような軌跡のことをいう。
【0022】
図2から
図4、
図7、及び
図8に示すように、歩行時の荷重中心が理想的な荷重中心軌跡CTを沿うように歩行を幅方向内側に誘導するため、上部中敷本体16と下部中敷本体18の間には、補強芯材32が設けられている。換言すれば、中敷本体14の内部には、補強芯材32が設けられている。また、補強芯材32は、合成樹脂を含浸させた織布又は不織布により構成されており、補強芯材32の厚みは、例えば1,0mm以下に設定されている。補強芯材32の剛性(曲げ剛性)は、中敷本体14の剛性より高く設定されている。具体的には、補強芯材32の長さ方向の曲げ剛性は31N・cmであり、補強芯材32の幅方向の曲げ剛性は17N・cmである。補強芯材32の曲げ剛性値は、所定の測定条件(測定器:オルゼン型スティッフネステスター、環境温度:20℃、環境相対湿度:65%RH、偏位角度:40度)の下で測定された。なお、補強芯材32を合成樹脂を含浸させた織布又は不織布により構成する代わりに、合成樹脂のみによって構成してもよい。
【0023】
補強芯材32は、内側縦アーチサポート24、外側縦アーチサポート26、及び横アーチサポート28と重ならないように配置されている。また、補強芯材32は、長さ方向に延びた第1芯材部32aと、幅方向に延びた第2芯材部32bと、長さ方向に延びた第3芯材部32cとを有している。
【0024】
ここで、第1芯材部32aの一端(後端)は、踵対応領域10aの外側部分に位置しており、第1芯材部32aの他端(前端)は、土踏まず対応領域10bとつま先対応領域10cの境界周辺の外側部分に位置している。また、第2芯材部32bの一端(外側端)は、第1芯材部32aの他端に連結されており、第2芯材部32bの他端(内側端)は、土踏まず対応領域10bとつま先対応領域10cの境界周辺の内側部分に位置している。更に、第3芯材部32cの一端(後端)は、第2芯材部32bの他端に連結されており、第3芯材部32cの他端(前端)は、つま先対応領域10cの内側部分に位置している。なお、第1芯材部32aの一端が踵対応領域10aの外側部分に位置に位置する代わりに、土踏まず対応領域10bの外側部分に位置してもよい。
【0025】
続いて、本発明の実施形態に係るウォーキング用中敷10の作用効果について説明する。
【0026】
前述のように、中敷本体14の内部に補強芯材32が設けられ、補強芯材32が前述の構成からなる第1芯材部32a、第2芯材部32b、及び第3芯材部32cを有している。また、踵対応領域10aの高さが幅方向の中心から幅方向外側に向かって徐々に高くなっている。そのため、歩行時の荷重中心が理想的な荷重中心軌跡CTを沿うように、歩行を幅方向内側に誘導することができる。これにより、本発明の実施形態に係るウォーキング用中敷10によると、ウォーキング中に足が幅方向外側に流れることを十分に抑えて、歩きやすくなる。
【0027】
従って、本発明の実施形態に係るウォーキング用中敷10によれば、着用者のウォーキング中の歩行効率を高めて、快適なウォーキングを行って、着用者の健康増進を図ることができる。
【0028】
なお、本発明は、前述の実施形態の説明に限られるものではなく、適宜の変更を行うことにより、その他種々の態様で実施可能である。また、本発明に包含される権利範囲は、前述の実施形態に限定されないものでなく、ウォーキング用中敷10をスポーツシューズ、ジョギングシューズ、又はビジネスシューズ等の内底面に設置した場合も及ぶものである。
【符号の説明】
【0029】
10 ウォーキング用中敷
10a 踵対応領域
10b 土踏まず対応領域
10c つま先対応領域
14 中敷本体
16 上部中敷本体
18 下部中敷本体
24 内側縦アーチサポート
26 外側縦アーチサポート
28 横アーチサポート
32 補強芯材
32a 第1芯材部
32b 第2芯材部
32c 第3芯材部
Bb 内側縦アーチ
Bc 外側縦アーチ
Bd 横アーチ
CT 理想的な荷重中心軌跡