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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】エアゾール容器用キャップ
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/22 20060101AFI20230314BHJP
   B65D 83/30 20060101ALI20230314BHJP
   B05B 9/04 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
B65D83/22
B65D83/30 200
B05B9/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018247197
(22)【出願日】2018-12-28
(65)【公開番号】P2020104913
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000112853
【氏名又は名称】フマキラー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】若槻 健
【審査官】米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-056950(JP,A)
【文献】特開2015-037955(JP,A)
【文献】特開2012-236114(JP,A)
【文献】実開昭57-002150(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/16-83/30
B05B 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアゾール容器に取り付けられるエアゾール容器用キャップにおいて、
前記エアゾール容器に固定されるキャップ本体と、
前記キャップ本体に対して動きを許容するように取り付けられた可動部材と、
前記可動部材に当接して当該可動部材の動きを阻止するロック部材とを備え、
前記可動部材は、前記エアゾール容器が有するステムから噴出した内容物が流通する噴出通路を有するとともに、前記キャップ本体に対して回動可能に支持され、前記噴出通路の下流端の向きを設定可能な噴出方向設定部材であり、
前記ロック部材は、前記可動部材に当接するロック位置で前記キャップ本体に係合する第1係合部と、前記可動部材から離れたロック解除位置で前記キャップ本体に係合する第2係合部とを有し
前記エアゾール容器が有するステムの突出方向を上方向としたとき、前記ロック部材の前記ロック解除位置は、前記ロック位置よりも上であり、
前記エアゾール容器用キャップは、前記エアゾール容器に対して上方から下方へ移動させることによって当該エアゾール容器に取り付けられるように構成されており、
前記ロック位置にある前記ロック部材が、前記エアゾール容器用キャップの前記エアゾール容器への取付時に当該エアゾール容器により上方へ押圧され、前記キャップ本体及び前記可動部材に対して上方に相対移動することにより前記ロック解除位置に切り替えられることを特徴とするエアゾール容器用キャップ。
【請求項2】
請求項1に記載のエアゾール容器用キャップにおいて、
前記第1係合部は、互いに間隔をあけて複数設けられ、
前記第1係合部の数は、前記第2係合部の数よりも多く設定されていることを特徴とするエアゾール容器用キャップ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のエアゾール容器用キャップにおいて、
前記噴出方向設定部材の前記内容物の流通方向の長さは、前記エアゾール容器の直径よりも長く設定されていることを特徴とするエアゾール容器用キャップ。
【請求項4】
請求項1からのいずれか1つに記載のエアゾール容器用キャップにおいて、
前記ロック部材は、前記キャップ本体に収容されていることを特徴とするエアゾール容器用キャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール容器に取り付けられるエアゾール容器用キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エアゾール容器の上部には噴射ノズルや操作ボタンを有するエアゾール容器用キャップが取り付けられている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1のエアゾール容器用キャップは、いわゆるロングノズルを有するキャップであり、エアゾール容器の上部に固定されるキャップ本体と、キャップ本体に対してヒンジ部を介して回動可能に取り付けられたノズル保持部とを備えている。ロングノズルはノズル保持部に取り付けられており、ヒンジ部の回動軸周りに回動可能となっている。ロングノズルの基端部に、操作ボタンが一体に設けられている。
【0003】
特許文献1の場合、不使用時にはロングノズルが上下方向に延びる姿勢となるまで当該ロングノズルをヒンジ部の回動軸周りに回動させ、このとき、操作ボタンがエアゾール容器のステムから上方へ離れることになる。一方、使用時にはロングノズルが水平方向に延びる姿勢となるまで当該ロングノズルをヒンジ部の回動軸周りに回動させるとともに、操作ボタンをエアゾール容器のステムに嵌合させ、その後、操作ボタンを押動することでステムが押し下げられてエアゾール容器内の内容物がロングノズルから噴出するように構成されている。
【0004】
また、一般的に、工場等に導入された生産設備によってエアゾール容器にエアゾール容器用キャップを取り付ける際には、例えばキャッパーと呼ばれる自動取り付け装置が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開平5-10278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように可動するロングノズルを有するエアゾール容器用キャップの取り付けにおいては、自動取り付け装置を用いると、当該可動部材が予期せずに動いた場合に破損などのおそれがある。このため、可動部材があるエアゾール容器用キャップの取り付け工程において、そのままの状態では汎用の自動取り付け装置を使うことができない。そこで、自動取り付け装置は用いずに作業者が手でエアゾール容器用キャップをエアゾール容器に組み付ければ、そのような問題は生じないが、このような方法は大量生産には向かない方法である。よって、一般的な生産現場では自動取り付け装置を用いることが前提となる。
【0007】
自動取り付け装置を用いる場合、例えば、汎用の自動取り付け装置を改造して可動部材の不随意な動きにも対応できるような専用の自動取り付け装置を用意する方法が考えられるが、そのような自動取り付け装置はコストがかかる上、製造ラインの汎用性が損なわれるという問題がある。
【0008】
したがって、汎用の自動取り付け装置を用いるべく、可動部材が動かないように固定しておくためのロック部材をエアゾール容器用キャップに予め設けておき、自動取り付け装置によってエアゾール容器用キャップを取り付けた後に、当該ロック部材を製造ライン上で取り外すことが考えられる。しかし、この場合、ロック部材を取り外すためのスペースが製造ライン上に必要となるので、製造ラインの改造等のコストがかかる。
【0009】
そこで、可動部材が動かないように固定するためのロック部材をエアゾール容器用キャップに予め設けておき、自動取り付け装置でエアゾール容器用キャップをエアゾール容器に取り付けてそのまま出荷し、ロック部材は使用者が使用開始時に取り外す方法が考えられる。しかし、この場合、使用者の手間が増えるとともに、ロック部材がゴミになるという問題もある。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、後から取り外す必要のあるロック部材によって可動部材をロックすることなく、しかも、汎用の自動取り付け装置を使用して可動部材を有するエアゾール容器用キャップをエアゾール容器に取り付けることができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明では、エアゾール容器用キャップのエアゾール容器への取り付け前の状態で可動部材をロックしておくためのロック部材を、エアゾール容器用キャップのエアゾール容器への取り付け後にロック解除状態にするとともに、そのままエアゾール容器用キャップに保持できるようにした。
【0012】
第1の発明は、エアゾール容器に取り付けられるエアゾール容器用キャップにおいて、前記エアゾール容器に固定されるキャップ本体と、前記キャップ本体に対して動きを許容するように取り付けられた可動部材と、前記可動部材に当接して当該可動部材の動きを阻止するロック部材とを備え、前記ロック部材は、前記可動部材に当接するロック位置で前記キャップ本体に係合する第1係合部と、前記可動部材から離れたロック解除位置で前記キャップ本体に係合する第2係合部とを有していることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、エアゾール容器用キャップのエアゾール容器への取り付け前の状態で、ロック部材の第1係合部をキャップ本体に係合させておくと、ロック部材がロック位置となって可動部材に当接する。これにより、可動部材の不随意な動きが抑制されるので、可動部材の不随意な動きにも対応できるような専用の自動取り付け装置は不要になり、汎用の自動取り付け装置によってエアゾール容器用キャップをエアゾール容器に取り付けることが可能になる。
【0014】
また、エアゾール容器用キャップのエアゾール容器への取り付け後にロック部材の第2係合部をキャップ本体に係合させておくと、ロック部材がロック解除位置となって可動部材から離れるので、可動部材の動きが許容される。このとき、ロック部材は第2係合部がキャップ本体に係合しているので、ロック部材がキャップ本体から脱落することはなく、キャップ保持されたままになる。
【0015】
第2の発明は、前記エアゾール容器が有するステムの突出方向を上方向としたとき、前記ロック部材の前記ロック解除位置は、前記ロック位置よりも上であり、前記エアゾール容器用キャップは、前記エアゾール容器に対して上方から下方へ移動させることによって当該エアゾール容器に取り付けられるように構成されており、前記ロック位置にある前記ロック部材が、前記エアゾール容器用キャップの前記エアゾール容器への取付時に当該エアゾール容器により上方へ押圧されて前記ロック解除位置に切り替えられることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、エアゾール容器用キャップをエアゾール容器へ取り付ける際には、エアゾール容器に対してその上方から下方へ移動させることになる。この取付時には、ロック位置にあるロック部材がエアゾール容器により上方へ押圧されることになる。これにより、ロック部材の第1係合部によるキャップ本体への係合が解除されてロック部材がロック解除位置に切り替えられて第2係合部がキャップ本体に係合する。したがって、エアゾール容器用キャップをエアゾール容器に取り付ける操作を行うだけで、ロック部材をロック位置からロック解除位置に切り替えることができる。
【0017】
第3の発明は、前記第1係合部は、互いに間隔をあけて複数設けられ、前記第1係合部の数は、前記第2係合部の数よりも多く設定されていることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、ロック位置にあるロック部材を安定させた状態でキャップ本体に係合させておくことができるので、可動部材の不随意な動きがより一層起こり難くなる。
【0019】
第4の発明は、前記可動部材は、前記エアゾール容器が有するステムから噴出した内容物が流通する噴出通路を有するとともに、前記キャップ本体に対して回動可能に支持され、前記噴出通路の下流端の向きを設定可能な噴出方向設定部材であることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、噴出方向設定部材を可動させることで、例えば、噴出方向設定部材を格納状態と使用状態とに切り替えることができる。格納状態では噴出方向設定部材が邪魔にならないようにすることができ、また、使用状態では噴出方向の狙いを定めやすくなる。
【0021】
第5の発明は、前記噴出方向設定部材の前記内容物の流通方向の長さは、前記エアゾール容器の直径よりも長く設定されていることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、噴出方向設定部材の長さが一般的なエアゾールのノズルよりも長い、いわゆるロングノズルタイプになる。このように長さの長い噴出方向設定部材を使用することで、使用時に内容物の噴出方向が定まり易くなり、また、格納状態にすることによる作用効果がより一層顕著なものになる。
【0023】
第6の発明は、前記ロック部材は、前記キャップ本体に収容されていることを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、使用時にロック部材の脱落を未然に防止できる。
【0025】
また、内容物を収容した容器に対して取り付けられるキャップであって、前記容器に固定されるキャップ本体と、前記キャップ本体に対して動きを許容するように取り付けられた可動部材と、当該可動部材に当接して当該可動部材の動きを阻止するロック部材とを備え、前記ロック部材は、前記可動部材に当接するロック位置と、前記可動部材から離れたロック解除位置との間で移動可能に構成され、前記キャップが前記容器に固定された際に、前記ロック部材が当該容器によって直接または間接的に押圧させられることにより前記ロック位置から前記ロック解除位置まで移動することを特徴とするように構成することもできる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、可動部材の動きを阻止するロック部材が、当該可動部材に当接するロック位置でキャップ本体に係合する第1係合部と、当該可動部材から離れたロック解除位置でキャップ本体に係合する第2係合部とを有しているので、可動部材を有するエアゾール容器用キャップを汎用の自動取り付け装置によってエアゾール容器に取り付けることができ、しかも、ロック部材はエアゾール容器用キャップから取り外すことなく、エアゾール容器用キャップに保持したままにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施形態に係るエアゾール容器用キャップを備えたエアゾール製品の側面図である。
図2】エアゾール製品の縦断面図である。
図3】キャップ本体及びロック部材を省略した状態の図1相当図である。
図4】エアゾール容器用キャップをエアゾール容器に取り付ける前の状態を示す図2相当図である。
図5】エアゾール容器用キャップの分解斜視図である。
図6】噴出方向設定部材を使用状態にした場合の図1相当図である。
図7】噴出方向設定部材を使用状態にした場合の図2相当図である。
図8】キャップ本体及びロック部材を省略した状態の図6相当図である。
図9】内容物を噴射している状態の図2相当図である。
図10】内容物を噴射している状態を示し、キャップ本体及びロック部材を省略した側面図である。
図11】ベース部材を上方から見た斜視図である。
図12図11におけるXIII-XIII線断面図である。
図13】カバー部材を上方から見た斜視図である。
図14図13におけるXIV-XIV線断面図である。
図15】ステム嵌合部材を上方から見た斜視図である。
図16図15におけるXVI-XVI線断面図である。
図17】ノズル状部材を上方から見た斜視図である。
図18】操作ボタンの側面図である。
図19】操作ボタンを上方から見た斜視図である。
図20】ロック部材を上方から見た斜視図である。
図21】ロック部材の側面図である。
図22】ロック部材の平面図である。
図23】ロック部材がロック位置でキャップ本体に係合した状態を示す側面図である。
図24】ロック部材がロック解除位置でキャップ本体に係合した状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0029】
図1は、本発明の実施形態1に係るエアゾール容器用キャップ1とエアゾール容器100とで構成されたエアゾール製品Aを側方から見た斜視図であり、図2は、エアゾール製品Aの断面図である。エアゾール容器用キャップ1とエアゾール容器100とでエアゾール製品Aが構成されているが、これら部材以外の部材をエアゾール製品Aが備えていてもよい。
【0030】
尚、この実施形態の説明では、「前側」とは、使用者がエアゾール製品Aを使用する状態で持ったときにエアゾール容器100の内容物が噴出する方向をいい、「後側」とは、同状態としたときに内容物の噴出方向と反対側をいい、「右側」とは、同状態としたときに使用者から見て右となる側をいい、「左側」とは、同状態としたときに使用者から見て左となる側をいうものとする。これは説明の便宜を図るために定義するだけであり、どの方向が前や後であってもよい。
【0031】
(エアゾール容器100の構成)
エアゾール容器用キャップ1の説明の前に、エアゾール容器100について説明すると、図2に示すように、エアゾール容器100は、内容物である殺虫剤(薬剤)及び殺虫剤を噴出させるための噴射剤が収容された縦長の容器本体101と、容器本体101の上部に設けられた弁機構101a及びステム(噴出管)102とを備えた周知の構造のものである。容器本体101は、円筒状に形成された耐圧容器である。また、ステム102は、容器本体101の上壁部の略中心部に設けられている。ステム102の下端部は、弁機構101aを介して容器本体101の内部に連通可能となっている。ステム102は、弁機構101aによって容器本体101の上壁部から上方へ突出するように上方へ付勢されており、下方(容器本体101の内方)へ押動可能となっている。
【0032】
ステム102を下方へ押動した状態で弁機構101aが開放されてステム102と容器本体101の内部とが連通状態になり、殺虫剤が噴射剤の圧力によって噴出される。ステム102に対する下方への外力を除くと、ステム102が弁機構101aの付勢力によって元の位置に戻って弁機構101aが閉状態になる。容器本体101に収容する薬剤は、殺虫剤に限られるものではなく、例えば、虫忌避剤、消臭剤、除菌剤、芳香剤、整髪料等が挙げられる。また、噴射剤は、例えばLPガスやジメチルエーテル(DME)等を挙げることができるが、これら限定されるものではなく、各種噴射剤を使用することができる。
【0033】
(エアゾール容器用キャップ1の全体構成)
図1等に示すように、エアゾール容器用キャップ1は、エアゾール容器100の上部に取り付けられる。図3は、エアゾール容器用キャップ1をエアゾール容器100に取り付ける前の状態を示しているが、エアゾール容器用キャップ1をエアゾール容器100に一旦取り付けると、通常の使用時にエアゾール容器用キャップ1がエアゾール容器100から外れることはなく、エアゾール製品Aの廃棄時までエアゾール容器100と一体化されている。また、エアゾール容器用キャップ1は、エアゾール容器100に対してその上方から下方へ移動させることによって当該エアゾール容器100に取り付けられるように構成されている。
【0034】
図2図5に示すように、エアゾール容器用キャップ1は、エアゾール容器100に固定されるキャップ本体10と、ステム102に嵌合するステム嵌合部材30と、エアゾール容器100の内容物の噴出方向を設定するための噴出方向設定部材40と、ステム嵌合部材30をステム102の押動操作方向に操作するための操作ボタン50と、エアゾール容器100への取り付け前の状態で噴出方向設定部材40をロックしておくためのロック部材60とを備えている。噴出方向設定部材40は、図1図3に示す格納状態と、図6図8に示す使用状態とに切り替えることができるとともに、図9及び図10に示す噴出状態にも切り替えられる。使用状態と、噴出状態とでは、噴出方向設定部材40の角度は僅かに異なるだけである。また、操作ボタン50を押すことで、噴出方向設定部材40を回動操作することができるとともに、エアゾール容器100の内容物を噴出方向設定部材40の先端部から噴出することができるようになっている。
【0035】
(キャップ本体10の構成)
図11及び図12に示すように、キャップ本体10は、エアゾール容器100の上部に固定されるベース部材11と、ベース部材11とは別体とされ、該ベース部材11に固定されるカバー部材20とを有している。ベース部材11及びカバー部材20は、それぞれ樹脂製の部材である。ベース部材11は、エアゾール容器100の上部に嵌合する嵌合筒部11aを備えている。嵌合筒部11aは、エアゾール容器100の上部を囲む円筒状に形成されており、エアゾール容器100の上部に対して外側から嵌合するようになっている。嵌合筒部11aの上端部は、後側へ行くほど上に位置するように形成されている。嵌合筒部11aの下端部は、エアゾール容器100の外周面に沿って延びるように形成されている。嵌合筒部11aの外周面の前端部には、詳細は後述するが、格納状態にある噴出方向設定部材40に係合して該噴出方向設定部材40の回動を阻止する格納時用係合部11dが設けられている。格納時用係合部11dは、嵌合筒部11aの外周面の前側へ向けて突出した後、その先端部から上方へ突出するように形成されたフック状をなしている。格納時用係合部11dの形状は、フック形状に限られるものではなく、後述する噴出方向設定部材40の一部に係合する形状であればよい。
【0036】
嵌合筒部11aの上端部には、径方向内方へ向けて延びる環状壁部11bが一体成形されている。環状壁部11bには、カバー部材20を取り付けるための複数の取付孔11cが周方向に間隔をあけて形成されている。取付孔11cは環状壁部11bを上下方向に貫通するように形成されている。環状壁部11bの前側には取付孔11cが形成されておらず、環状壁部11bの左右両側及び後側にのみ取付孔11cが形成されている。
【0037】
環状壁部11bの左右両側には、それぞれ、2つの第1係合孔11e、11eと、1つの第2係合孔11fとが形成されている。第1係合孔11e、11eは、前後方向に長い形状とされるとともに、前後方向に互いに間隔をあけて配置されており、環状壁部11bを上下方向に貫通している。第2係合孔11fは、前後方向に長い形状とされるとともに、2つの第1係合孔11e、11eの間に配置されており、環状壁部11bを上下方向に貫通している。図12に示すように、第2係合孔11fは、第1係合孔11e、11eよりも上に位置している。
【0038】
詳細は後述するが、図4に示すように、ロック部材60が噴出方向設定部材40の動きを阻止するロック位置にあるときには、当該ロック部材60が第1係合孔11e、11eに係合してキャップ本体10に取り付けられる。一方、ロック位置にあるロック部材60が上方へ移動して噴出方向設定部材40の動きを許容するロック解除位置にあるときには、当該ロック部材60が第2係合孔11fに係合するようになっている。ロック部材60は、ベース部材11の内部に収容された状態で保持されるようになっており、外部からは殆ど見ることができなくなっている。また、ベース部材11の色と、キャップ本体10の色とは同じにすることができ、これにより、ベース部材11がより一層目立たなくなる。
【0039】
図11に示すように、環状壁部11bで囲まれた内方部分は上下方向に開放されている。この開放部分に、ステム嵌合部材30の下側が挿通可能になっている。環状壁部11bの左側には、左側板部12が上方へ突出するように形成されている。環状壁部11bの右側には、右側板部13が上方へ突出するように形成されている。左側板部12の前側下部には、噴出方向設定部材40の左側を回動可能に支持する左側下部軸受部12aが形成されている。左側板部12の左側下部軸受部12aよりも後側かつ上側には、操作ボタン50の左側を回動可能に支持する左側上部軸受部12bが形成されている。左側下部軸受部12a及び左側上部軸受部12bは、右側に開放した軸受孔を有するように形成されており、左側下部軸受部12a及び左側上部軸受部12bに対して、それぞれ、噴出方向設定部材40の左側軸45a(図17に示す)及び操作ボタン50の左側軸52a(図19に示す)が挿入された状態で回動可能に支持されることになる。
【0040】
図11に示すように、右側板部13の前側下部には、噴出方向設定部材40の右側を回動可能に支持する右側下部軸受部13aが形成されている。右側板部13の右側下部軸受部13aよりも後側かつ上側には、操作ボタン50の右側を回動可能に支持する右側上部軸受部13bが形成されている。右側下部軸受部13a及び右側上部軸受部13bは、左側に開放した軸受孔を有するように形成されており、右側下部軸受部13a及び右側上部軸受部13bに対して、それぞれ、噴出方向設定部材40の右側軸46a(図17に示す)及び操作ボタン50の右側軸53a(図19に示す)が挿入された状態で回動可能に支持されることになる。左側下部軸受部12aと右側下部軸受部13aとは同一高さに位置するとともに、左右方向から見たとき互いに重複するように位置している。左側上部軸受部12bと右側上部軸受部13bも、同一高さに位置するとともに、左右方向から見たとき互いに重複するように位置している。
【0041】
ベース部材11には、左側板部12と右側板部13とを連結する連結部14が設けられている。連結部14は、左側板部12の下部から右側板部13の下部まで左右方向に延びており、左側板部12及び右側板部13と一体成形されている。
【0042】
図1等に示すように、カバー部材20は、ベース部材11の上部に固定される部材であり、ステム嵌合部材30及び操作ボタン50を覆うように形成されている。図13及び図14に示すように、カバー部材20は、左側壁部21と、右側壁部22と、左側壁部21及び右側壁部22を繋ぐ下側繋ぎ部23及び上側繋ぎ部24とを有しており、左側壁部21、右側壁部22、下側繋ぎ部23及び上側繋ぎ部24は一体成形されている。
【0043】
左側壁部21は、前部左側板状部21a、中間左側板状部21b及び後部左側板状部21cを有しており、前部左側板状部21a、中間左側板状部21b及び後部左側板状部21cが一体化することによって左側壁部21が構成されている。前部左側板状部21aは、左側壁部21の前部を構成する部分であり、左右方向に貫通する開口部21dを有している。前部左側板状部21aは、上下方向に延びるとともに前後方向にも延びており、後側へ行くほど左に位置するように形成されている。中間左側板状部21bは、前部左側板状部21aの前後方向中間部に連続して後側へ延び、後側へ行くほど左に位置するように形成されている。後部左側板状部21cは、中間左側板状部21bの前後方向中間部に連続して後側へ延びている。
【0044】
右側壁部22も左側壁部21と同様に構成されており、前部右側板状部22a、中間右側板状部22b及び後部右側板状部22cが一体化することによって右側壁部22が構成されている。前部右側板状部22aは、右側壁部22の前部を構成する部分であり、左右方向に貫通する開口部22dを有している。前部右側板状部22aは、上下方向に延びるとともに前後方向にも延びており、後側へ行くほど右に位置するように形成されている。中間右側板状部22bは、前部右側板状部22aの前後方向中間部に連続して後側へ延び、後側へ行くほど右に位置するように形成されている。後部右側板状部22cは、中間右側板状部22bの前後方向中間部に連続して後側へ延びている。
【0045】
上側繋ぎ部24は、左側壁部21の上部の前後方向中間部から右側壁部22の上部の前後方向中間部まで延びる板状に形成されている。また、図14に示す下側繋ぎ部23は、左側壁部21の後側下部から右側壁部22の後側下部まで延びる板状に形成されている。カバー部材20における上側繋ぎ部24と下側繋ぎ部23との間の部分は、上方及び後方に開放されており、この開放部分に使用者が指を入れることができるようになっている。すなわち、後部左側板状部21cと後部右側板状部22cとの間隔、及び上側繋ぎ部24と下側繋ぎ部23との間隔は、使用者の指を後方や上方から入れることができるように設定されている。
【0046】
上側繋ぎ部24には、詳細は後述するが、使用状態にある噴出方向設定部材40に係合して該噴出方向設定部材40の回動を阻止する使用時用係合部24a、24aが設けられている。使用時用係合部24aは、上側繋ぎ部24の下面から下方へ突出する凸部で構成されており、上側繋ぎ部24の左右両側にそれぞれ設けられている。使用時用係合部24aの位置は、噴出方向設定部材40を使用状態またはその近傍位置で固定しておくことが可能な位置とされている。
【0047】
(ステム嵌合部材30の構成)
図15及び図16に示すステム嵌合部材30は、エアゾール容器100のステム102に常時嵌合した状態で取り付けられる樹脂製の部材であり、キャップ本体10、噴出方向設定部材40及び操作ボタン50とは別体とされている。ステム嵌合部材30は、上下方向に延び、上端部が前側へ屈曲した筒状部31と、筒状部31の下部から左右両側へ向けて突出する下側凸部31a、31aと、筒状部31の上部から左右両側へ向けて突出する上側凸部31b、31bとを有している。
【0048】
筒状部31の内部には、エアゾール容器100のステム102に連通して該ステム102から噴出される内容物が流通する流路Rが形成されている。流路Rは、筒状部31の下端部に開口し、該下端開口部から上方へ延びた後、筒状部31の屈曲形状に対応して前側へ延び、筒状部31の前端部において開口している。したがって、流路Rは、上下方向に延びる部分と、前後方向に延びる部分とを有し、中途部が略直角に曲がった形状となる。
【0049】
流路Rの下端部の内径は、流路Rの上側の内径よりも大きく設定されている。この流路Rの下端部にステム102が差し込まれて当該ステム102の上端面が流路Rに形成された下側段差部31cに当接した状態で、ステム嵌合部材30がステム102に嵌合する。この嵌合状態で、例えばステム嵌合部材30を下方へ押動すると、ステム嵌合部材30とステム102との相対的な移動が起こることなく、ステム102を押動することができる。また、ステム嵌合部材30の流路Rの内周面と、ステム102の外周面とは気密性及び液密性が確保されるように、互いに密着した状態が維持されるようになっている。
【0050】
流路Rの下流端は、筒状部31の上部における前端部に開口している。流路Rの下流端に、後述する噴出方向設定部材40のチューブ41の上流端が差し込まれて当該チューブ41の上流端面が流路Rに形成された上側段差部31dに当接した状態で、チューブ41がステム102に接続される。ステム嵌合部材30の流路Rの内周面と、チューブ41の外周面とは気密性及び液密性が確保されるように、互いに密着した状態が維持されるようになっている。
【0051】
(噴出方向設定部材40の構成)
図5に示すように、噴出方向設定部材40は、ステム嵌合部材30とは別体とされており、チューブ41と、ノズル状部材42とを備えている。図2等に示すように、チューブ41は、ステム嵌合部材30の流路Rに接続される噴出通路Sを有する部材であり、容易に屈曲可能な柔軟性を持つ材料で構成されている。
【0052】
尚、図示しないが、噴出方向設定部材40は、屈曲変形可能なチューブのみ、管部材のみ、筒部材のみ、ノズルのみあるいはノズルに類似した部材のみで構成されていてもよい。この場合、チューブや、管部材、筒部材、ノズルは、内容物の噴出方向を設定可能な程度の硬さを備えているのが好ましい。チューブ、管部材、筒部材、ノズルには蛇腹部分を設けておき、この蛇腹部分を屈曲変形可能にしてもよいし、蛇腹部分を伸縮可能にしてもよい。また、伸縮可能なチューブ、管部材、筒部材、ノズルであってもよい。
【0053】
ノズル状部材42は、チューブ41を収容する筒状本体部43と、筒状本体部43の基端部に設けられた取付部44とを備えており、筒状本体部43及び取付部44は一体成形されている。ノズル状部材42を構成する樹脂材は、チューブ41を構成する樹脂材よりも硬くなっており、これにより、ノズル状部材42が容易に変形しないようになっている。筒状本体部43の内径は、チューブ41の外径と同程度にしてもよいし、チューブ41の外径よりも大きくして、筒状本体部43の内周面とチューブ41の外周面との間に隙間を形成してもよい。隙間を形成することで、チューブ41を筒状本体部43の内部で軸方向に移動させることができる。
【0054】
図2等に示すように、筒状本体部43の先端部の外径は基端部の外径よりも小さく設定されている。また、筒状本体部43の先端には先端開口部43aが形成され、筒状本体部43の基端には基端開口部43bが形成されている。チューブ41は、筒状本体部43の基端開口部43bから内部に挿入されている。チューブ41の下流端は、筒状本体部43内において先端開口部43a近傍に位置しており、格納状態とされているときにチューブ41の下流端が筒状本体部43の先端開口部43aから出ないように、チューブ41の長さが設定されている。これにより、チューブ41の下流端に手などが触れないようにすることができる。
【0055】
また、噴出方向設定部材40が使用状態になったときにチューブ41の撓みを少なくするため、チューブ41がノズル状部材42の内部を軸方向に移動できるようになっている。例えば、図2に示す格納状態のときには、チューブ41の下流端がノズル状部材42の先端部よりも基端側に位置しているが、図6図7に示すように噴出方向設定部材40を上方へ回動させると、チューブ41の下流端がノズル状部材42の先端部から突出する。このようなチューブ41とノズル状部材42との相対的な移動は、ノズル状部材42の回動中心位置と、チューブ41の配索との関係に起因するものである。噴出方向設定部材40を上方へ回動させた際に、チューブ41の下流端がノズル状部材42の先端部から突出しないようにしてもよい。
【0056】
エアゾール容器100の内容物は、ステム102から噴出されると、ステム嵌合部材30の流路Rとチューブ41内の噴出通路Sを流通した後、チューブ41の下流端を流通して筒状本体部43の先端開口部43aから噴出する。したがって、チューブ41の下流端の向き、即ち、噴出通路Sの下流端の向きを変えることで、エアゾール容器100の内容物の噴射方向を変更することができる。噴出方向設定部材40の方向は、任意の方向に設定することができるが、好ましいのは、使用状態におけるノズル状部材42の軸線と、ステム102の軸線とのなす角度が80度以上であり、より好ましいのは85度以上である。この実施形態では、使用状態におけるノズル状部材42の軸線と、ステム102の軸線とのなす角度が90度となるように設定されている。
【0057】
筒状本体部43の内容物の流通方向の長さ(以下、単に長さという)は、エアゾール容器100の直径よりも長く設定され、いわゆるロングノズルタイプの噴出方向設定部材40となっている。筒状本体部43の長さは、エアゾール容器100の直径の1.5倍以上5倍以下の範囲で設定することができる。筒状本体部43の長さを長くすると、チューブ41の長さも筒状本体部43の長さに対応して長く設定される。これにより、チューブ41の下流端をエアゾール容器100から離すことができ、その結果、チューブ41の下流端と目的物との距離が短くなり、内容物に狙いを定めやすくなる。内容物が殺虫剤の場合、目的物は害虫となる。尚、ロングノズルタイプの噴出方向設定部材40でなくてもよく、図示したものよりも短いタイプの噴出方向設定部材40であってもよい。
【0058】
筒状本体部43の先端開口部43aと基端開口部43bとの間の部分には、複数の開口部43cが、筒状本体部43の長手方向に互いに間隔をあけて形成されている。図2に示すように噴出方向設定部材40を格納状態としたときに、開口部43cは筒状本体部43におけるエアゾール容器100の外周面と対向する部分にも形成されており、これら開口部43cのうち、格納時用係合部11dに対応する部分に形成されている開口部43cの縁部に、格納時用係合部11dが引っ掛かるようにして係合する。これにより、噴出方向設定部材40の回動が阻止されることになるが、格納時用係合部11dを開口部43cの縁部に引っ掛けているだけなので、例えば使用者が噴出方向設定部材40を故意に回動させようとして所定以上の外力を加えると、格納時用係合部11dが開口部43cの縁部から離脱して、噴出方向設定部材40の回動が許容されるようになっている。格納時用係合部11dの係合及び離脱は、樹脂の弾性を利用したものなので、複数回繰り返すことができる。開口部43cは省略してもよい。また、開口部43cの形状は、例えば、矩形状や円形状等にすることができる。開口部43cを形成することで、筒状本体部43を成形する際に使用される樹脂材の量を削減することができ、筒状本体部43を軽量化することができる。筒状本体部43を軽量化することで、噴出方向設定部材40を上方へ回動させる際に要する力が小さくて済み、操作性が良好になる。また、開口部43cを形成することで、筒状本体部43の内部のチューブ41を外部から視認することができる。
【0059】
また、格納時用係合部11dは、ノズル状部材42の開口部43cの縁部以外の部分に係合させるようにしてもよい。例えば、ノズル状部材42に突起や凹部を設け、これらに格納時用係合部11dを係合させることもできる。
【0060】
また、図示しないが、チューブ41の下流端が筒状本体部43の開口部43cの縁部に引っ掛からないようにするために、チューブ41の下流端が位置する部分にのみ、開口部43cを形成しないようにしてもよい。また、筒状本体部43の一部が樋形状であってもよい。
【0061】
図17に示すように、ノズル状部材42の取付部44は、筒状本体部43の基端部における左側から当該筒状本体部43の径方向外方へ突出する左側取付板部45と、筒状本体部43の基端部における右側から当該筒状本体部43の径方向外方へ突出する右側取付板部46と、左側取付板部45及び右側取付板部46を連結する連結板部47(図2に示す)とを有している。左側取付板部45の突出方向先端側には、左側へ突出する左側軸(第1軸)45aが形成され、この左側軸45aは、図11に示すベース部材11の左側下部軸受部12aに挿入された状態で回動可能に支持される。左側取付板部45における左側軸45aよりも基端側寄りの部分には、左側へ突出する左側カム係合凸部(係合突出部)45bが形成されている。右側取付板部46の突出方向先端側には、右側へ突出する右側軸(第1軸)46aが形成され、この右側軸46aは、図11に示すベース部材11の右側下部軸受部13aに挿入された状態で回動可能に支持される。右側取付板部46における右側軸46aよりも基端側寄りの部分には、右側へ突出する右側カム係合凸部(係合突出部)46bが形成されている。
【0062】
左側軸45a及び右側軸46aは、ステム102の押動操作方向(上下方向)と交差する方向である左右方向に延びているので、噴出方向設定部材40は、左側軸45a及び右側軸46aにより、ベース部材11に対して左右方向に延びる軸周りに回動可能に支持されることになる。つまり、噴出方向設定部材40は、キャップ本体10に対して動きを許容するように取り付けられた可動部材である。可動部材は、噴出方向設定部材40以外であってもよく、例えば、操作ボタンやレバー等の部材であってもよい。
【0063】
図1図3に示すように、ノズル状部材42の先端部である噴出通路Sの下流端が下側(エアゾール容器100の底部側)に向くまで噴出方向設定部材40が回動した状態を、噴出方向設定部材40の格納状態とする。噴出方向設定部材40の格納状態では、ノズル状部材42の長手方向と、エアゾール容器100の長手方向(中心線方向)とが略一致することになり、噴出方向設定部材40が邪魔にならないようにすることができる。
【0064】
一方、図6図8に示すように、ノズル状部材42の先端部がエアゾール容器100の径方向外方に向くまで噴出方向設定部材40が回動した状態を、噴出方向設定部材40の使用状態とする。噴出方向設定部材40の使用状態では、噴出通路Sの下流端がエアゾール容器100の外周面から大きく離れることになる。このように、噴出方向設定部材40は、格納状態から使用状態、使用状態から格納状態に切り替えることができる。使用状態にある噴出方向設定部材40は、水平状態であってもよいし、下降傾斜した状態であってもよいし、上向きに傾斜した状態であってもよい。
【0065】
図17に示すように、取付部44の左側取付板部45の基端部には左側凸部45cが形成され、また、右側取付板部46の基端部には右側凸部46cが形成されている。図2図3に示すように、格納状態では、左側凸部45c及び右側凸部46cがキャップ本体10から離れる一方、図7図8に示すように、使用状態では、左側凸部45c及び右側凸部46cが、カバー部材20の使用時用係合部24a、24aに対して後側から引っ掛かるようにして係合する。これにより、使用状態にある噴出方向設定部材40の格納方向へ向けての回動が阻止されることになるが、使用時用係合部24a、24aに左側凸部45c及び右側凸部46cを引っ掛けているだけなので、例えば使用者が噴出方向設定部材40を故意に格納方向へ向けて回動させようとして所定以上の外力を加えると、使用時用係合部24a、24aが左側凸部45c及び右側凸部46cから離脱して、噴出方向設定部材40の回動が許容されるようになっている。使用時用係合部24a、24aと、左側凸部45c及び右側凸部46cとの係合及び離脱は、樹脂の弾性を利用したものなので、複数回繰り返すことができる。また、左側凸部45c及び右側凸部46cが、カバー部材20の使用時用係合部24a、24aに対して後側から引っ掛かっているだけなので、噴出方向設定部材40を図7の矢印200方向へ向けて回動させることは許容される。
【0066】
使用時用係合部24a、24a及び左側凸部45c及び右側凸部46cの係合によって噴出方向設定部材40を使用状態で保持するようにしているが、これに限らず、一方の凹部、他方を凸部し、凹部及び凸部を係合させることによって噴出方向設定部材40を使用状態で保持するようにしてもよい。つまり、一方の部材に係合部を設け、他方の部材に被係合部を設ける構成とすることができる。
【0067】
使用時用係合部24a、24aは、噴出方向設定部材40の回動方向(例えば前後方向)に間隔をあけて複数設けてもよい。格納状態にある噴出方向設定部材40を上方へ回動させていくと、前側の使用時用係合部24aに対して噴出方向設定部材40が早期に係合し、その後、噴出方向設定部材40を更に回動させることで、後側の使用時用係合部24aに対して噴出方向設定部材40が係合することになる。例えば、ステム102を僅かしか押さないような使い方の場合、使用者が操作ボタン50を回動させる角度は小さくなり、このような使い方の場合には、前側の使用時用係合部24aに対して噴出方向設定部材40が係合して噴出方向設定部材40を使用状態で維持することができる。その後、操作ボタン50の回動角度が大きくなってステム102を押す量が増えると、後側の使用時用係合部24aに対して噴出方向設定部材40が係合して噴出方向設定部材40を使用状態で維持することができる。
【0068】
尚、噴出方向設定部材40の矢印200方向へ向けての回動量は、後述するカム形状部52b、53bによって規制されるようになっている。
【0069】
(操作ボタン50の構成)
図18及び図19に示すように、操作ボタン50の後側には、使用者が指を載置する指載置部51が設けられている。操作ボタン50の指載置部51よりも前側には、その左側に左側支持板部52が設けられ、右側に右側支持板部53が設けられている。左側支持板部52と、右側支持板部53とは、左右方向に離れており、前側へ向けて延びるとともに、上下方向にも延びている。左側支持板部52と右側支持板部53との間に、ステム嵌合部材30が挿通されるようになっている。
【0070】
図19に示すように、左側支持板部52の前後方向中間部には、左側へ突出する左側軸(第2軸)52aが形成され、この左側軸52aは、図11に示すベース部材11の左側上部軸受部12bに挿入された状態で回動可能に支持される。右側支持板部53の前後方向中間部には、右側へ突出する右側軸(第2軸)53aが形成され、この右側軸53aは、図11に示すベース部材11の右側上部軸受部13bに挿入された状態で回動可能に支持される。操作ボタン50の左側軸52a及び右側軸53aは、噴出方向設定部材40の左側軸45a及び右側軸46aと平行に延びており、操作ボタン50は、左側軸52a及び右側軸53aによってベース部材11に対して噴出方向設定部材40の回動方向と同方向に回動可能に支持される。
【0071】
左側支持板部52の左側軸52aよりも後側の下縁部に、ステム嵌合部材30の左の下側凸部31a(図15に示す)が当接し、右側支持板部53の右側軸53aよりも後側の下縁部に、ステム嵌合部材30の右の下側凸部31a(図15に示す)が当接するようになっている。操作ボタン50の回動により、左側支持板部52の左側軸52aよりも後側部分、及び右側支持板部53の右側軸53aよりも後側部分が下方へ移動すると、ステム嵌合部材30に対して下方への操作力が作用することになる。
【0072】
図19に示すように、左側支持板部52の左側軸52aよりも前側には、左側カム形状部52bが設けられている。左側カム形状部52bは、枠形をなすように形成されている。また、右側支持板部53の右側軸53aよりも前側には、右側カム形状部53bが設けられている。右側カム形状部53bは、枠形をなすように形成されている。左側カム形状部52bと、右側カム形状部53bとは同じ形状である。
【0073】
操作ボタン50は、図3に示す操作開始位置から図10に示す噴出位置まで回動するようになっている。操作ボタン50が図3に示す操作開始位置にあるときには、噴出方向設定部材40が格納状態でかつステム嵌合部材30がステム102を押動しない状態(非噴出状態)となる。一方、操作ボタン50が図10に示す噴出位置になると、噴出方向設定部材40が格納状態から使用状態に切り替えられるとともに、ステム嵌合部材30がステム102を押動する状態(噴出状態)となる。操作ボタン50を操作開始位置から噴出位置まで回動させてステム102を押動操作する際に、噴出方向設定部材40に係合し、格納状態にある噴出方向設定部材40を左側軸45a及び右側軸46a(図17に示す)周りに回動させて使用状態に切り替えるように構成されている。左側軸45a及び右側軸46aの位置は任意の位置に設定することができる。
【0074】
図8に示す状態では、図3に示す操作開始位置と図10に示す噴出位置との間に操作ボタン50が位置しており、この位置を中間位置とする。図8に示す中間位置では、噴出方向設定部材40が使用状態かつステム嵌合部材30がステム102を押動しない状態(非噴出状態)となる。図8に示す中間位置にある操作ボタン50の指載置部51に対して、図10に示す矢印300で示す方向(下方向)に力を加えると、操作ボタン50が噴出位置まで回動して、ステム嵌合部材30がステム102を押動する状態となる。つまり、操作ボタン50は、格納状態にある噴出方向設定部材40を使用状態に切り替えた後、ステム嵌合部材30をステム102の押動操作方向に操作することができるように構成されている。使用者は、図3に示す操作開始位置にある操作ボタン50を一気に図10に示す噴出位置まで回動操作することができるので、中間位置を認識することなく、内容物を噴出させることが可能である。尚、中間位置を認識させることができるように、例えば操作ボタン50の操作途中にクリック感を発生させることもできる。
【0075】
図17に示す噴出方向設定部材40の左側カム係合凸部45bが、図19に示す左側カム形状部52bの内方に挿入されて該左側カム形状部52bの内周面に係合し、また、図17に示す噴出方向設定部材40の右側カム係合凸部46bが、図19に示す右側カム形状部53bの内方に挿入されて該右側カム形状部53bの内周面に係合するようになっている。このカム係合凸部45b、46bとカム形状部52b、53bとの係合により、図3に示す操作開始位置では噴出方向設定部材40を格納状態にしておき、図8に示す中間位置では噴出方向設定部材40を使用状態にすることができるとともに、図10に示す噴出位置でも噴出方向設定部材40を使用状態のままでステム102を操作することができるようになっている。また、操作ボタン50を操作することなく、噴出方向設定部材40を格納状態から使用状態に、使用状態から格納状態に切り替えることができる。つまり、操作ボタン50は、ステム102を押動操作する際に噴出方向設定部材40に係合して該操作ボタン50の操作力を噴出方向設定部材40に伝達して格納状態から使用状態に切り替えることができる一方、格納状態にある噴出方向設定部材40が使用状態となるまで回動操作されることを許容するカム形状部52b、53bを有している。上記した操作ボタン50の操作力の伝達、及び格納状態にある噴出方向設定部材40が使用状態となるまで操作ボタン50の操作に関わらず回動操作されることを許容することは、カム形状部52b、53bの内周面形状によって実現される。
【0076】
次に、左側カム形状部52b及び右側カム形状部53bの内周面の形状、及びその形状によって実現される動作について詳細に説明する。尚、左側カム形状部52b及び右側カム形状部53bは同じ形状のものなので、左側カム形状部52bのみについて説明する。
【0077】
図18は、操作ボタン50の側面図であり、符号Bは左側カム形状部52bの内周面を示している。左側カム形状部52bの内周面Bは噴出方向設定部材40に当接する当接面であり、噴出方向設定部材40は当接面から離間させることもできる。左側カム形状部52bの内周面Bは、上下方向に延びる円弧面B1と、円弧面B1の上端部から後側へ延びる上側面B2と、上側面B2の後端部から下方へ延びる縦面B3と、縦面B3の下端部から前側へ延びる第1下面B4と、第1下面B4の前端部から前側へ向けて延びる第2下面B5とで構成されている。第2下面B5の前端部は、円弧面B1の下端部と連なっており、円弧面B1、上側面B2、縦面B3、第1下面B4及び第2下面B5によって環状の内周面Bが構成される。
【0078】
図3に示すように、操作ボタン50を操作開始位置にしたままで、噴出方向設定部材40を格納状態から使用状態に切り替える場合には、図18に符号C1で示す位置にある噴出方向設定部材40の左側カム係合凸部45bが、左側カム形状部52bの円弧面B1に沿って符号C2に示す位置まで移動する。つまり、円弧面B1は、噴出方向設定部材40の左側軸45aの軸心を中心とした円弧状に延びる面である。
【0079】
その後、左側カム係合凸部45bが、上側面B2の前端部に対して上方へ力を作用させ、操作ボタン50はその指載置部51が下に変位するように僅かに回動し、噴出方向設定部材40が使用状態になる。このとき、操作ボタン50が僅かに回動することになるが、各部の遊びや、エアゾール容器100の弁機構101aの遊び等によって吸収されて、弁機構101aが開状態になることはない。つまり、使用者が操作ボタン50を操作することなく、噴出方向設定部材40のみを格納状態から使用状態に切り替えたとしても、操作ボタン50が僅かに動くだけで、内容物の噴出は起こらない。
【0080】
また、図3に示す操作開始位置にある操作ボタン50を噴出方向に回動させると、図18の符号C1で示す位置にある噴出方向設定部材40の左側カム係合凸部45bが、第2下面B5の前端部から上向きの力を受ける。これにより、格納状態にある噴出方向設定部材40を上方へ回動させて使用状態に切り替えることができる(図8に示す)。そして、使用者が操作ボタン50を図10の矢印300方向に押動させると、操作ボタン50が回動してステム102を押動させる一方、左側カム係合凸部45bには力を作用させないようにすることができる。すなわち、図8に示す操作ボタン50が図10に示すまで回動することにより、図18の符号C2近傍に位置している左側カム係合凸部45bが、符号C3に示す位置へ相対的に変位するので、噴出方向設定部材40が動かないようにすることができる。
【0081】
左側カム形状部52bの内周面Bの形状は上述した形状に限られるものではなく、例えば、操作ボタン50を一方向に操作している途中で、噴出方向設定部材40に加える力の方向を切り替えるような形状にすることもできる。例えば、操作ボタン50を押動操作する際、可動範囲の前半領域では、噴出方向設定部材40に加わる力の方向が上方向となるように左側カム形状部52bの内周面Bの形状を設定し、可動範囲の後半領域では、噴出方向設定部材40に加わる力の方向が後方向となるように左側カム形状部52bの内周面Bの形状を設定する。これにより、操作ボタン50の押動操作によって噴出方向設定部材40を上方へ確実に回動させることができるとともに、上方へ回動した噴出方向設定部材40を使用時用係合部24a、24aに確実に係合させることができる。
【0082】
(ロック部材60の構成)
図20図22に示すロック部材60は、噴出方向設定部材40に当接して当該噴出方向設定部材40の動きを阻止するための部材であり、例えば樹脂材で構成することができる。ロック部材60は、中央近傍に上下方向に貫通する貫通孔61aが形成された円盤部61と、円盤部61の前側から上方へ突出する前側突出部62とを備えている。ステム嵌合部材30の下側は、貫通孔61a内に挿通されるようになっており、このステム嵌合部材30の下側の周囲を囲むようにロック部材60が設けられる。前側突出部62が噴出方向設定部材40に当接して当該噴出方向設定部材40の動きを阻止する部分である(図4参照)。
【0083】
図20に示すように、円盤部61の左側には、噴出方向設定部材40に当接するロック位置でキャップ本体10に係合する左側第1係合部61a、61aと、噴出方向設定部材40から離れたロック解除位置でキャップ本体10に係合する左側第2係合部61bとが形成されている。ロック部材60によるロック解除位置は、ロック位置よりも上である。左側第1係合部61a、61aは2つであるのに対し、左側第2係合部61bは1つであり、左側第1係合部61aの数が、左側第2係合部61bの数よりも多く設定されている。
【0084】
左側第1係合部61a、61aは、互いに前後方向に離れて設けられている。左側第1係合部61a、61aは、それぞれ、図11に示すベース部材11の第1係合孔11e、11eに下方から差し込まれた状態で、当該第1係合孔11e、11eの下縁部に対して上方から係合する爪形状をなしている。左側第2係合部61bは、左側第1係合部61a、61aの間に設けられており、ベース部材11の第2係合孔11fに下方から差し込まれた状態で、当該第2係合孔11fの下縁部に対して上方から係合する爪形状をなしている。
【0085】
図21に示すように、左側第2係合部61bの係合部分は、左側第1係合部61aの係合部分よりも下に位置しており、また、図12に示すように、第1係合孔11e、11eの下縁部(係合縁部)は、第2係合孔11fの下縁部(係合縁部)よりも下に位置している。このように各部の位置が設定されているので、図23に示すように、ロック部材60の左側第1係合部61a、61aがベース部材11の第1係合孔11e、11eの下縁部に対して上方から係合すると、左側第2係合部61bの係合部分は、第2係合孔11fの下縁部よりも下に位置し、左側第2係合部61bが第2係合孔11fに係合していない状態になる。このとき、ロック部材60はロック位置になり、前側突出部62が、格納状態にある噴出方向設定部材40の取付部44の突出方向先端面に当接して噴出方向設定部材40の上方への回動が阻止される(図4参照)。
【0086】
一方、図24に示すように、ベース部材11をエアゾール容器100に取り付けると、ロック位置にあるロック部材60が当該エアゾール容器100の上面により上方へ押圧される。これにより、ロック部材60がベース部材11に対して上方へ相対的に移動し、ロック部材60の左側第2係合部61bが第2係合孔11fに完全に入って当該第2係合孔11fの下縁部に係合するとともに、左側第1係合部61a、61aが第1係合孔11e、11eの下縁部から上方に離れる。ロック部材60がベース部材11に対して上方へ相対的に移動することで、ロック部材60がロック解除位置になり、前側突出部62が、格納状態にある噴出方向設定部材40の取付部44の突出方向先端面から上方へ離れる(図2に示す)。これにより、噴出方向設定部材40の回動が許容される。
【0087】
円盤部61の右側にも同様に、出方向設定部材40に当接するロック位置でキャップ本体10に係合する右側第1係合部61c、61cと、噴出方向設定部材40から離れたロック解除位置でキャップ本体10に係合する右側第2係合部61dとが形成されている。
【0088】
(エアゾール容器用キャップ1の取り付け要領)
次に、エアゾール容器用キャップ1をエアゾール容器100に取り付ける要領について説明する。エアゾール容器用キャップ1をエアゾール容器100に取り付ける前の段階では、キャップ本体10と、ステム嵌合部材30と、噴出方向設定部材40と、操作ボタン50と、ロック部材60とを組み合わせてエアゾール容器用キャップ1を構成しておく。このとき、図4及び図23に示すようにロック部材60は、下の位置、即ちロック位置にしておく。
【0089】
そして、従来から周知の汎用の自動取り付け装置(図示せず)を用いてエアゾール容器用キャップ1をエアゾール容器100に取り付ける。このとき、まず、エアゾール容器用キャップ1を自動取り付け装置に保持させ、その下方にエアゾール容器100を置いてから、エアゾール容器用キャップ1をエアゾール容器100の上方から下方向へ移動させてキャップ本体10の嵌合筒部11aをエアゾール容器100の上部に嵌合させるとともに、ステム嵌合部材30にエアゾール容器100のステム102を嵌合させる。エアゾール容器用キャップ1をエアゾール容器100に取り付けるまでは、ロック部材60がロック位置にあるので、噴出方向設定部材40が不随意に動くことはない。
【0090】
そして、エアゾール容器用キャップ1をエアゾール容器100に完全に取り付けると、ロック部材60がロック解除位置になるので、噴出方向設定部材40を回動させることが可能になる。また、ロック部材60はロック解除位置になってもエアゾール容器用キャップ1から離脱することはなく、エアゾール容器用キャップ1に保持されたままであるため、ゴミになることはない。また、エアゾール容器用キャップ1をエアゾール容器100へ取り付ける際には、エアゾール容器100に対してその上方から下方へ移動させるだけで、ロック位置にあるロック部材60をロック解除位置に切り替えることができるので、ロック部材60の存在を特に意識する必要はない。
【0091】
(エアゾール容器用キャップ1の使用方法)
次に、エアゾール容器用キャップ1の使用方法について説明する。噴出方向設定部材40が格納状態にある場合、使用者は、噴出方向設定部材40を上方へ回動させることによって格納時用係合部11dから離脱させ、使用状態にすることができる。その後、操作ボタン50を押動する。これにより、内容物が噴出される。
【0092】
また、噴出方向設定部材40が格納状態にある場合、使用者は、操作ボタン50を押動することによって噴出方向設定部材40を上方へ回動させ、これにより格納時用係合部11dから離脱させて使用状態にすることもできる。噴出方向設定部材40が使用状態になると、内容物が噴出される。
【0093】
つまり、使用者は、噴出方向設定部材40を直接回動させて使用状態にした後、内容物を噴射させる第1の方法と、操作ボタン50の操作によって噴出方向設定部材40を回動させて使用状態にした後、内容物を噴射させる第2の方法とのうち、任意の方法で内容物を噴射させることができる。いずれの方法であっても、噴出方向設定部材40が回動して使用状態になるまで内容物が噴射されないので、噴出方向設定部材40が下を向いたままで内容物が誤って噴出することはない。
【0094】
よって、使用者が噴出方向設定部材40を起こし忘れて下向きに噴出させてしまうのを防止できるので、エアゾール容器用キャップ1は、誤噴出防止機構を備えているということもできる。
【0095】
また、上述した第1の方法では、操作ボタン50を操作せずに、使用者が格納状態にある噴出方向設定部材40を回動操作して使用状態に切り替えることになるが、操作ボタン50のカム形状部52b、53bが噴出方向設定部材40の動きを許容しながらステム嵌合部材30を動かさないようにするので、ステム嵌合部材30がステム102の押動操作方向に移動しないようにすることができる。したがって、噴出方向設定部材40の動作による誤噴出を防止する機構をエアゾール容器用キャップ1が備えているということもできる。
【0096】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態に係るエアゾール容器用キャップ1によれば、ステム嵌合部材30をエアゾール容器100のステム102に常時嵌合させておき、操作ボタン50の操作によって噴出方向設定部材40を格納状態から使用状態に切り替えるとともに、ステム嵌合部材30をステム102の押動操作方向に操作することができる。これにより、格納状態から使用状態への切替を素早くかつ容易にできるとともに、長期間の使用によっても、エアゾール容器100内の内容物がステム102とステム嵌合部材30との間から漏れないようにすることができる。
【0097】
また、噴出方向設定部材40の動きを阻止するロック部材60が、当該噴出方向設定部材40に当接するロック位置でキャップ本体10に係合する第1係合部61a、61cと、当該噴出方向設定部材40から離れたロック解除位置でキャップ本体10に係合する第2係合部61b、61dとを有しているので、噴出方向設定部材40を有するエアゾール容器用キャップ1を汎用の自動取り付け装置によってエアゾール容器100に取り付けることができ、しかも、ロック部材60はエアゾール容器用キャップ1から取り外すことなく、エアゾール容器用キャップ1に保持したままにすることができる。
【0098】
また、噴出方向設定部材40の長さが一般的なエアゾールのノズルよりも長い、いわゆるロングノズルタイプにすることができる。このように長さの長い噴出方向設定部材40を使用することで、使用時に内容物の噴出方向が定まり易くなり、また、格納状態にすることによる作用効果がより一層顕著なものになる。
【0099】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【0100】
上記実施形態では、ステム嵌合部材30をエアゾール容器100のステム102に常時嵌合させる形態としているが、これに限らず、ステム嵌合部材30をステム102から離脱させてステム嵌合部材30がステム102に常時嵌合しない形態であってもよい。この場合、ステム嵌合部材30と操作ボタン50とを一体成形して一部品で構成することができる。
【0101】
また、エアゾール容器100以外の容器のキャップに上記構成を適用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0102】
以上説明したように、本発明に係るエアゾール容器用キャップは、例えば、殺虫剤、虫忌避剤、消臭剤、除菌剤、芳香剤、整髪料等を収容したエアゾール容器に取り付けて使用することができる。
【符号の説明】
【0103】
1 エアゾール容器用キャップ
10 キャップ本体
11d 格納時用係合部
24a 使用時用係合部
30 ステム嵌合部材
40 噴出方向設定部材
41 チューブ
42 ノズル状部材
45a 左側軸(第1軸)
45b 左側カム係合凸部(係合突出部)
46a 右側軸(第1軸)
46b 右側カム係合凸部(係合突出部)
50 操作ボタン
52a 左側軸(第2軸)
52b 左側カム形状部
53a 右側軸(第2軸)
53b 右側カム形状部
60 ロック部材
61a 第1係合部
61b 第2係合部
100 エアゾール容器
102 ステム
図1
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